弘 前 医 学 59:65‑70,2008
原 著
透析患者の二次性副甲状腺機能元進症 に対す る副甲状腺摘出術後の 再発について
寺 山 百合子 須 藤 美穂子 封 馬 恵 山 谷 金 光 斎 藤 久 夫 百 瀬 昭 志 舟 生 富 寿
抄録 透析患 者 の進行 した二次性 副 甲状腺機 能克進症 (SHPT)に対 して副 甲状腺全摘 出術 後 自家移植術 (PTx・AT) が行 われてい る,副 甲状腺 の局在部位 は一定せず,4腺 以上存在す る例 もあ るので,最初 の手術 で全摘 出で きない こ と
もあ る. 時 にPTx・AT後 残存 腺 や移植腺 か らのPTH分泌 克進 に よ りSHPTが再発 す る. われ われ はPTx・AT後 の再発率 を検討 した.対 象 は92例,101回のPTxで あ る.摘 出腺 数 と手術 翌 日の血清PTHに よ り5群 に分 けた.捕 出 腺 数 とpTH (pg/ml) は 平 均 値 で そ れ ぞ れ,A群4.1,15,B群4.1,280,C群2.8.29,D群2.8,371お よ びE 秤 (再 手術 例 )1.4,28で あ った. 再発 の基準 はPTH>300pg/mlと した.手術 翌 日PTH<60pg/mlのA,Cお よび E群 の再 発率 はそ れぞ れ11.9,20.0,16.6% と低 く, 手術 翌 日PTH≧60pg/mlのBお よびD群 で は再 発 率 は約70%
と高か った.再発 時 のPTH産生 はA,C群 お よびE群 で は ほ とん どが移植 腺,Bお よびD群 で は残存 腺 で あ った. 弘前 医学 59:65‑70,2008 キー ワー ド :透析患者 ;副 甲状腺 ホルモ ン ;二次性副 甲状腺機能克進症 ;副 甲状腺摘 出術 ;再発率.
ORIGINALARTICLE
RECURRENCEAFTERPARATtIYROIDECTOMYINDIALISISPATIENTS WITHSECONDARYHYPERPARATHYROIDISM
YurikoTerayama,MihokoSuto,MegumiTsushima,KanemitsuYamaya, HisaoSaito,AkishiMomose,andTomihisaFunyu
Abstract Totalparathyroidectomywithautotransplantation (PTx・AT)isperformedindialysispatientswith advancedsecondaryhyperparathyroidism (SHPT).Thelocationofglandsisnotdefinite,some,patientshave morethan4,andsoallparathyroidglandsarenotalwaysremovedduringinitialPTx.Occasionally.SHPT after PTxrecursbecausePTH over‑secretionfrom remnantglandsorautograft.Weexaminedrecurrenceafter PTx・AT.Subjectswere92patientswithSHPT,101PTxwereperformed.Thepatientsweresubdivided into5groupsaccordingtonumberofremovedglandsandserum PTH onthenextdayaftersurgery,mean numberofremovedglandsandserum PTH (pg/ml)ineachgroup,respectively,groupA;4.1,15,groupB;
4.2,280,groupC;2.8,29,groupD;2.8,371andgroupE (casesofre‑operation);1.4,28.Criterionforrecurrence wasdefinedasPTH>300pg/ml.Recurrenceratewaslow inserum PTH<60pg/mlonthenextdayafter PTx,ingroupA(ll.9%),groupC (20.0%)andgroupE (16.6%). ontheotherhand,recurrenceratewas highingroupB andgroupD almost70% inthesegroupofserum PTH≧60pg/mlonthenextdayafter PTx.PTH almostsecretedfrom autograftingroupA,C andE,andfrom remnantglandsingroupB andD.
HirdsakiMed.J.59:65‑70,2008 Keywords:Dialysispatients;Parathyroidhormone;Secondaryhyperparathyroidism;
Parathyroidectomy;Recurrencerate.
OyokyoKidneyResearchInstitute Correspondence:Y.Terayama
Receivedforpublication,October23,2007 Acceptedforpublication,December4,2007
財 団法 人鷹揚 郷 腎研 究所 弘前病 院 別刷請求先 :寺 山百合子
平成19年10月23日受付 平成19年12月4日受理
は じめ に
慢性 腎不全 による透析患者では透析期 間が長 く なるにつ れ二 次性 副 甲状 腺 機 能克 進症 (SHPT) の発症率が高 くな り,内科 的治療 に抵抗性 となっ た場合 には副 甲状腺摘 出術 (PTx)が行 われ る.
SHPTに対 す るPTx施行 例 の割 合 は透析 期 間2 年末満 の1.7%か ら透析期 間が長 くなる とともに 漸増 し,10年以上 で9.4%,25年以上では33.7%
に達 し, 全 期 間 で み る と, 透 析 患 者 の5.4% に pTxが施行 されているL).
SHPTに よるPTxで は術 後 の再発予 防のため 副 甲状腺の全摘 出が原則であ り,術後 の副 甲状腺 機 能低 下症 を防 ぐため に,摘 出腺 の一部 を前腕 に 自家移植 す るのが一般 的である2).副 甲状腺 は 通常4腺存在す るが,SHPTに よる過形成副 甲状 腺 は5腺以上存在す る場合や,胸腺 内や縦 隔内な ど異所性 に存在す ることがあ り3・4),1回の手術 で 全腺 を摘 出す るのは必ず しも容易 ではない.PTx
に際 して全摘 出す る予定で始 めて も4腺以上摘 出 で きず,亜全摘 出術 になる場合や, 自家移植 され た副 甲状腺 が過形 成 とな り,再 びSHPTとな る 場合 も散見 される2・5)
われ われ はPTxが行 われた症例 につ いて術前 お よび術後 には手術翌 日か ら定期 的に血清副 甲状 腺 ホ ルモ ン (PTH)を測 定 してい るので,全摘 出で きたか,亜 全摘 出 に終 わ ったか,経 過 中 に SHPTが再発 したか を確認で きる.そ こで,PTx 時の摘 出腺 数 と手術 翌 日の血清PTHレベ ルに よ
り群別 し,SHPTの再発率 について検討 した.
対象と方法
対 象 は1996年4月〜2007年7月 に 高 度 の SHPTの た めPTxを施 行 され た20‑78 (52.9± ll.9)歳,透析 期 間1‑293 (120±56)ヵ月の維 持 透 析 治療 中 の患 者92例 で あ る. 透 析 方 法 は 血 液透析84例,腹 膜透析8例 であ る.SHPTの 診 断基準 はK/DOQIガイ ドラ イ ン6'に よるPTH 300pg/ml以 上 と した. また,PTxの適 応 基 準
は 日本透析 医学会のガイ ドライン7)に従 ってPTH 500pg/ml以 上,6.0mg/dl以 上 の 高 リ ン血 症, 10mg/dl以上 の高 カル シウム血症 が存在 し,骨 関節痛,痛 棒 な どの 臨床症 状 を有 し,且 つ超 音
波 検 査,CT画 像 お よ び99mTc一methoxyisobutyl isonitrileシ ンチ グ ラム に よる副 甲状 腺 の画像 診 断で2腺 以上 の腫大 を認 め た場合 と した.89例 で1回 目のPTxが行 われ,89例 中9例 に2回 目 のPTxが行 われた. さ らに過去 に亜全摘 出術 が 行 われた1例 と過去 に甲状 腺半切 除術 が行 われ, 片側の副 甲状腺が摘 出 された と思 われる2例の計 101回PTxが行 われ た.手術 時 に摘 出 され た副 甲状腺 はそれぞれの重量 を測定 し,病理組織学 的 に副 甲状腺であることを確認 した.摘 出 された副 甲状腺 の中か ら原則 として最 も小 さい腺 を1.5× 1.5×1.5mm程 度に細切 した切片5‑20個 を前腕 に 自家移植 した.術後PTHが300pg/mlを超 え た時期 をSHPTの再発 とした.
術 前, 手 術 翌 日, 術 後1カ月,3カ月,6カ 月,以後6カ月毎 に最長120カ月 まで採血 し,血 清PTHを測 定 した.PTHは,1996年〜2002年 にはア レグロIntactPTH (日本 メジフ ィジ ック ス) にて,2003年 か らはエ クルー シス イ ン タク トPTH (ロ シュ ・ダイアグ ノシス) にて測定 さ れた.
結果 は平均値±SDで示 した.群 問の比較 はⅩ 2
検 定,Kruska1‑Wallis検 定 お よ びKaplan‑Meier 法 によ り,p<0.05を有意 とした.
結 果
92例101回のPTxを手術 時の摘 由腺数 と,辛 術 翌 日の血清PTHに よ りA〜Eの5群 に分類 し
た.A群 は摘 出腺 数4以上 で翌 日PTH<60pg/
mlの42例,B群 は摘 出腺 数4以上 であ るが翌 日 PTH≧60pg/mlの13例,C群 は摘 出腺数3以下 で翌 日PTH<60pg/mlの10例,D群 は摘 出腺 数3以 下 で翌 日PTH≧60pg/mlの24例 お よび E群 は2回 目のPTx施行例 で,A群 とC群 の再 発各1例,D群 の7例お よび1回 目の結果が な く 2回 目のみの3例 の12例 であ る (表 1).A群 と C群 は全摘 出 され た群,B群 とD群 は亜 全摘 出 に終 わった群 とみなせ る. これ ら5群 において年 齢,透析期 間に差が な く,PTx前 のPTHは平均 値が全群 1000pg/mlを超 え,差が なか った.翌 日のPTHは当然A群,C群,E群がB群,D群 よ り低値 であった (表 1).
A〜Eの各群 における摘 出腺数,摘 出腺 の重量
透析患者 にお ける副 甲状腺摘 出術 後の再発 表 1.A〜E群の背景
67
例数 (男 /女) 年齢 (読) 透析期 間 (月) PTx前PTH (pg/ml) PTx翌 日PTH (pg/ml) A 群 42(22/20 )
B 群 13(6/7) C 群 10(3/7) D 群 24(15/9) E 群 12(7/5) p 値 (0.499)
51.2±11.5 58.2±13.4 50.3±10.1 54.3±ll.4 48.8±9.2
0.125
113±48 108±32 137±79 127±65 164±55
0.097
1212±600 1416±586 1179±414 1284±793 1165±436
0.759
15± 9
2
80±2132
9±183
71±3692
8±25<
0.00 1結果 :平均値±SD,A群:4腺以上摘乱 翌 日PTH
<6
0pg/ml,B群:4腺
以上摘 出,翌日PTH≧60pg/ml,C群:3腺以下 摘 出, 翌 日PTH< 60pg/ml.D群 :3腺以下摘 出 ,翌 日PTH≧60pg/ml,E群
:2回PTx.表2.A〜E群 にお ける摘 出副 甲状腺 量 と自家移植切 片数
摘 出腺数 総重量 (g) 最大腺 (g) 最小腺 (g) 移植切 片数 A群 4.1±0.3
B群 4.2±0.4 C 群 2.8±1.0 D群 2.8±0.6 E群 1.4±0.6
p値 <0.001
2.93±1.87 2.68±1.89 2.41±1.14 1.85±1.58 2.31±1.52
0.085
1.49±1,08 1.69±1.73 1.40±0.88 1.01±1.07 1.98±1.32
0.061
0.25±0.29 0.15±0.09 0.35±0.13 0.29±0.21 0.51±0.22
0.016
7.4±4.4 6.8±4.5 7.1±5.2 5.3±3.1 8.3±4.7 0.433 結果 :平均値±SD.
表3.A〜E群 にお け る術後 のPTHの推 移
術後期 間 1カ月 6カ月 1年 2 年 3 年
A群 B群 C群 D群 E群
12±14 (38) 374±395
(13) 77±77
(10) 314±446
(23) 20±14
(12) p値 <0.001
21±26 (36) 416±414
(ll) 109±128
(10) 412±619
(20) 37±37
(12)
<0.001
23±19 (33) 405±534
(9) 161±281
(9) 230±449
(16) 56±60
(ll)
<0.001
48±71 (27) 408±436
(6) 445±544
(4) 356±321
(ll) 137±164
(9)
<0.001
96±154 (26) 401±213
(4) 147± 45
(3) 534±344
(6) 278±324
(7)
<0.003 結果 :平均値±SD, (n):測 定 例 数
お よび 自家移植 に用 いた切片数 を見る と (表2), A群 とB群では ともに4‑5腺摘 出 されたに もか かわ らず,B群 では手術翌 日のPTHの低下が不 十分 なので残存腺の存在が疑われた.C群ではB 群 とは逆 に3腺以下の摘 出にとどまったのに,翌
日のPTHレベルか らは全摘 出 といえる.D群 は 明 らかに残存腺があ り,E群では全摘 出 とみなせ た.各群の摘 出組織の総重量 と最大腺の重量 には 差がなかった.最小腺の重量 に有意差がみ られた が,総重量 に占める割合が低 いので, この差 は臨 床的にあ まり意味がない と思われる.移植切片数 には5群で差がなかった.
A群〜E群の各例で術後の観察期 間は種 々であ るが,PTHを測 定で きた例 につ いて術後3年 ま での平均PTHの変化 を見た (表3).A群が最 も
低値域 を推移,ついでE群,C群の順 とな り,B 群 とD群では高値であった.
PTHが300pg/mlを超 えた時期 をSHPTの再 発 として,各群 における再発例数 とPTH産生源 についてみた (表4).再発率 はA群で最 も低 く ll.9%, つ い でE群16.6%,C群20.0%とな り, B群 とD群 で はほぼ70%の再発 であった.再発
時 のPTH産生源 はB群 お よびD群 で はいず れ も残存腺,A群 の4例 とC群 の1例 で は移植腺 であ った.残 るA群 の1例 で1回 目に5腺摘 出 されたに もかかわ らず,3年9カ月後 に頚部 に残 存腺が見つか り2回 目のPTxが行 われたので残 存腺 由来の再発であ り,C群の1例では1回 目に 3腺摘 出 され,7年3カ月後 に頚部の残存1腺 と 縦隔内の1腺の計2腺の摘 出が行われ,やは り残
表4.A〜E群 における再発例数 とPTH産生源
PTH産生源
例数 再発例数 (%) 残存腺 移植腺
群群群群群ABCDE
42 5(ll.9) 13 9 (69.2) 10 2 (20.0) 24 17(70.8) 12 2 (16.6)
1.0 0.9 0.8 0.7 0.6 a
# 0.5
牡 00.000....43201 ●■I:II■●■■ ■●■■■.:B群D群 C群 A群
. E群
l l
0 20 40 60 80 100 120 140
図・4A㌫ TIE農 主講 豊 AKa離 nBM雛 と琵 青 野 畏 Hが高値 であったB群で再発率が高 く (。<..0..1),3腺以 下摘 出 されたC群 とD群 で も手術 翌 日PTHが高値 であったD群 の再発率が高か った (p‑0.0054).A群,C
群お よびE群では再発率 に差が なかった.
存腺 による再発 であった.
最後 に, 各群 にお け る再発率 をKaplan‑Meier
法 にてみた (図).B群お よびD群では手術 直後 か らほぼ同程度の再発率,C群 で は50カ月頃 ま で はA群 と同様であったが, その後上昇,A 群
とE群では100カ月頃 までほぼ同 じであった.4
線 以上摘 出 されたA群 とB群,3腺 以下摘 出 さ れ たC群 とD群 で は と もに手術 翌 日のPTHが 高値であったB群(p<0.0001)とD群(p‑0.0054)
の再発 率 が有意 に高 か った.A群 とC群,B群 とD群 とには再発 率 に差が な く,A群 とC群 お よびE群 とで も再発率 に差 はみ られなかった.
考 察
透 析 患 者 のPTHレベ ル に 関 して は,intact PTHの測 定 が普 及 した1995年 に180‑360pg/ mlをnormoPTHと して 全 国 調 査 が 行 わ れ8',
2003年 には K/DOQIガイ ドライ ン6)が作成 され,
PTHを150‑300pg/mlにコン トロールす るべ き とされた. これ ら二つのガイ ドライ ンは骨代謝回 転 を正常 に維持す るためのPTHレベル として設 定 された. しか し,活性型 ビ タ ミンDの経 口投 与 による治療 に加 えて静注用製剤が用い られるよ
うに な った2000年 以後150‑200pg/mlを 目標 に治療 されるようになって きた9).2006年の 日本
透析患者 における副 甲状腺摘 出術後の再発
透析 医学会の 「透析患者の二次性副 甲状腺機能克 進症 治療 ガイ ドライ ン
」 7 )
で は骨代謝 よ りも生 命 予 後 を優 先 す る レベ ル と して60‑180pg/mlを 設定 した とされている.透析患者で は ビタ ミンDの活性化 に障害が あ るので活性型 ビタ ミンDの経 口投与 は補充療法 で もあ り,多 くの例 に投与 されている. しか し, 経 口投与でPTHレベルの コン トロールが困難 に なる と静注 に よるパ ルス療法が行 われ,投与 開 始基準 となるPTHレベ ルの 目安が300pg/mlで あ る10).今 回はSHPTの再発 をK/DOQIガイ ド ライ ンの上 限の300pg/mlとパ ルス療法 開始 の 目安 である300pg/mlを便宜的にPTx後の再発 基準 とした.PTxの適応基準 は 「透析患 者の二 次性副 甲状腺機能克進症治療 ガイ ドライン
」 7 )
で, 内科 的治療 に抵 抗 す る高pTH血 症 (イ ンタ クトPTHで500pg/ml以上 ),高 リン血症 (≧6.0 mg/dl) また は高 カル シウム血症 (≧lomg/dl) が存在 し, さらに自覚症状や骨 回転の克進 などを 認め,超音波検査で2腺以上腫大 している例 に施 行す るべ きとしている.今 回は全例 この基準 を満 た していた.
PTxに際 して,副 甲状腺 が全摘 出 されたか ど うかの判断基準 として冨永 は手術翌 日のPTHが 正常上限の60pg/ml以下になっていることとし, 60pg/ml以下 にな らない例 を持続性SHPTとし ている11).pTx後の適正 なPTHレベ ルについて はPTxを行 わない患者 と同 じで よい とし,その 後PTHの再上昇 に よ り再 度PTxを施行 した例 を再発PTx例 と定 義 し, そ の割 合 は1156例 中 19例 1.6%であった としている.
PTx・AT後の再発 は残存腺 または移植腺か ら のPTH分泌克進 に よるが,移植腺 の場合 は移植 に用いた切片数 と元の副 甲状腺の組織像す なわち 結節性過形成かぴまん性過形成かが関係す る.今 回検討 した5群 で は移植切 片数 には差 が なか っ た.PTxで摘 出 された腺 の重量 と病理組織像 に ついて腺重量が500mg以上では大部分が結節性 で,200‑500mgで も約1/4しかびまん性でない との報告12)がある.我 々は移植 には摘 出 した腺 の 小 さい ものを用 いるように しているが,摘 出腺の 重量か ら推測 して大部分結節性部分が移植 されて いると思われる.
69
PTH 300pg/ml以上 を再発 の基準 とす る と手 術 翌 日のPTH 60pg/ml未満 を示 したA群,C 群お よびE群 では再発率が低 く,再発 時のPTH 産生源 はA群 お よびC群 の各1例 を除 き移植腺 であった.A群 とB群の比較か ら,摘 出腺数が4 腺以上で も全摘 出されているとは限 らず,手術翌
日のPTH60pg/ml以下 との基準 を併用す るとよ り診 断率が高 くなる と思 われ る.現在 ではPTH の迅速測定 も可能 になっているので,手術 中特 に 副 甲状腺摘 出後 に血清PTHを測定 し,PTHの低 下が十分 であることを確認 して1回 目のPTxを 終了すればよ り確実 になる と思われる13).しか し, 手術 中のPTH測定で残存腺 が疑 われて も,B群 には過剰副 甲状腺の存在が,D群 には縦隔内など の異所性副 甲状腺の存在が考 えられ,小 さい臓器 のため摘 出 しきれない場合 もある.
PTx後のPTH低値 については,全摘 出後 自家 移植 を しない14)とか,PTH 180pg/ml未満群 が 360pg/ml以上群 よ り生存率が高い15'との報告 も
あ り,PTHは低 レベ ルで も生命予後 に影響 はな い ように も思 える.骨代謝 について も,われわれ はPTHが低値 で も骨代謝マー カーの オステオカ ルシンがそれほ ど低下 しない例 も存在す ることを み てい る16)ので,PTHが低値 で も骨代謝が正常 の場合 もあることを示唆 している.
PTx後 には移植腺 機能 を低 下症 または克進症 に な らない よ うPTHレベ ル を コ ン トロー ルす るのが大切 であ る.活性型 ビタ ミンDのパ ルス 療 法前後で副 甲状腺体積 を測定 した報告17)では, PTHは平均値で865pg/mlか ら409pg/mlまで 低下 したが ,副 甲状腺体積 は増加 した. しか し.
その一方 で,安 定 して200pg/ml以下 に維持 で きた例 で は副 甲状腺 は縮小傾 向 を認 めた として いる.機能克進 してい る副 甲状腺 の腫大抑制の面 か らも透析 医学会のガイ ドライン60‑180pg/ml は適切 であることになる. このPTHレベ ルを維 持 す るため には注意深 い活性型 ビタ ミンDに よ
る治療 を行 うべ きであるが,移植腺が強い結節性 過形成由来であれば術後経過期 間が長 くなるにつ れPTHの コン トロールは困難 になって くる.そ の際は局所麻酔で手術可能な腫大移植腺の摘 出術 を速やかに施行すべ きと考 える.
ま と め
SHPTの透析患者92例 に対 して101回PTxを 施行,摘 出腺数 と手術翌 日の血清PTHによ りA 群〜E群の5群 に分けて,術後の再発率 を検討 し た.再発 の基 準 はPTH>300pg/mlと した.捕 出腺数 に関係 な く,手術翌 日のPTH<60pg/ml のA粁,C群 お よびE群 で再発 率が低 く,再発 時のPTH産生源 は移植腺が多 かった.手術翌 日 のPTH≧60pg/mlのB群 お よびD群 で は再 発 率が高 く,PTH産生源は残存腺であった.
文 献
1)日本透析 医学会統計調査委員会 同小委員会. わ が 国の慢性透析療法 の現況 (2004年12月31日現 在).透析会誌2006;39:1‑22.
2)冨永 芳博, 貴 田岡正 史,秋津忠男,深川雅 史, 弓 田 滋,角 田隆俊,小岩文彦,他. わが 国の腎性 上皮小体 (副 甲状腺 )機能克進症 に対す る上皮小 体摘 出術 の現況‑ ア ンケー ト調査結果‑ .透析 会 誌2003:36:1361‑9.
3)OhtawaT,KatagiriM,OhtaK,YoshikawaK, YasudaK,HakataH,HaradaT.Location of theparathyroidglandsinpatientswithrenal hyperparathyroidism.Endocrine Surgery 1992;9:267‑72.
4)冨永芳博.上皮小体 (副 甲状腺)摘 出術 の適応 と 予後.腎 と透析2002;52:457‑63.
5)TominagaY,KatayamaA,SatoT,Matsuoka S,GotoN,HabaT,HibiY,etal.Re‑operationis frequentlyrequiredwhenparathyroidglands remainafterparathyroidectomyforadvanced secondary hyperparathyroidism in uraemic patients.NephroIDialTransplant2003;18(supp1 3):iii65‑iii70.
6)NationalKidneyFoundation.K/DOQIclinical practiceguidelinesforbonemetabolism and
diseaseinchronickidneydisease.Am ∫Kidney Dis2003;42(supp13):S1‑S202.
7)透 析 医 学 会.「透 析 患 者 に お け る 二 次 性 副 甲 状 腺 機 能 克 進 症 治 療 ガ イ ドラ イ ン」. 透 析 会誌 2006:39:1435‑55.
8)秋津忠男,深 川雅 史,塚本雄介,栗 原 怜,衣笠 え り子.代謝性骨疾患 に関す る研 究.平成7年度 厚生科学研 究補助金 長期慢性疾患総合研 究事業
(慢性腎不全)研究報告書 :1996.p29‑35.
9)椎崎和弘,秋津忠男.maxacalcitol開発時の ターゲ ッ トと臨床 上の問題点.臨林透析2003;19:49‑54. 10)小 岩文彦.河嶋英里. カルシウム, リン代 謝異常
の対策.腎 と透析2006;60:753‑8.
ll)冨永芳博. 上皮小体 (副 甲状腺 )全摘 出後 自家移 植 術 後 の フ ォロー ア ップー 再 発予 防の ため に‑ . 臨林透析2003;19:79‑89.
12)冨 永 芳 博, 田 中勇 治, 高 木 弘. 腎性 上皮 小 体 機 能 克 進 症 病 理 組 織 と病 態 生 理. 内分泌 外 科 1997:14:87‑95.
13)小原孝男.副 甲状腺外科領域 における最近の進歩.
内分泌外科2003;20:128‑34.
14)FranciscoALM,FresnedoGF,RodrigoE,Pinera C,Amado∫A,AriasM.Parathyroidectomyin dialysispatients.KidneylntSuppl.2002;(80):161‑6.
15)岩元則幸,小野利彦,保井 明春, 矢島息吹, 青木 正,馬捌非砂 夫.二次性上皮小体機 能克進症患者 の術 後 上皮 小 体 機 能 と生 存 率 の検 討. 透 析 会誌 1998:31:1185‑8.
16)寺 H」百合子, 山谷金光,舟生富寿.透析 患者 にお ける副 甲状腺全摘 出術後 の副 甲状腺 ホルモ ンとオ ステオカルシンについて.内分泌外科2007;24:30‑6. 17)二次性 副 甲状腺 機 能克進症 に対す るMaxacalcitol (オキサ ロ‑ル亘)に よる静注パ ルス療法 は臨床症 状,骨塩量 の改善 と副 甲状腺 の縮′」、に効果が あ る か.透析 会誌40;573‑9,2007.