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細則様式第1-2号

学位請求論文の内容の要旨

領 域 総合リハビリテーション科学 分 野 老年保健学

氏 名 前田 貴哉

(論文題目)

電気刺激療法および電気刺激療法と温熱・寒冷療法の併用施行が 整形外科疾患患者の鎮痛ならびに運動機能に及ぼす影響に関する研究

主 査 高見 彰淑

副 査 尾田 敦

副 査 門前 暁

副 査 吉田 英樹

【目的】整形外科領域では腰椎疾患や変形性膝関節症(膝OA)などに伴い疼痛や運動機 能の低下が生じることで日常生活活動が制限され,リハビリテーションを行う上で問題 となることが多い。治療においては保存療法が第1選択とされやすく,物理療法はその 中の一つである。鎮痛を目的として行われる物理療法には電気刺激療法の中でも経皮的 電気神経刺激(TENS)や温熱・寒冷療法がその代表であり,これらが整形外科疾患患者 に対して単独で施行された場合の効果については数多くの報告がある。その一方で,

TENSと温熱・寒冷療法を併用施行した場合の優位性については未だ検討されていな

い。筆者は,TENSと温熱・寒冷療法を併用施行することで鎮痛面や運動機能面での相 乗効果が得られるのではないかと考えた。この仮説を検証するため、研究の第1段階で は腰椎疾患患者の下肢痛に対してTENSと温熱・寒冷療法を併用施行した場合の鎮痛効 果について検討することとした。第2段階では膝OA患者に対して同様の介入を行い,鎮 痛効果に加えて運動機能に与える影響について検討することとした。また,膝OA患者 に対して保存療法が奏功しなかった場合には手術療法が適応となるが,その中でも人工 膝関節全置換術(TKA)が選択されることが多い。

TKA術後早期には疼痛や運動機能の低

下が生じやすく,電気刺激療法が施行されることがある。電気刺激療法では前述の

TENSのほかに損傷組織の回復を促し得るマイクロカレント療法(MES)も有効である

と報告されているが,その効果については比較されていない。そこで第3段階ではTKA 後に行う電気刺激療法の種類の違いが鎮痛及び運動機能に与える影響について検討す ることとした。

(注)論文題目が外国語の場合は,和訳を付すこと。

(2)

【細則様式第1-2号続き】

【第1段階】[方法]対象は安静時下肢痛を有する腰椎疾患患者37名とし,TENS単独施 行群(単独施行群),TENSと温熱療法の併用施行群(温熱併用群),TENSと寒冷療法の 併用施行群(寒冷併用群)に振り分けた。TENSのパラメーターに関して,周波数は1~

50ppsの変調周波数とし,相幅は200μsec,刺激時間は15分,パルス振幅は対象者が

不快に感じない最大強度とした。電極は疼痛部位と同一の皮膚分節上に貼付した。温 熱・寒冷療法にはホットパックとアイスパックを用い,TENSに用いる電極上に設置 した。介入前後の安静時下肢痛の程度についてVisual analogue scale(VAS)で評価し,

群内比較を行った。また,VASの変化量を算出し群間比較も行った。加えて,パルス 振幅についても群間比較を行った。[結果]介入前後のVASは全群で有意な減少を認め た。VASの変化量は温熱併用群で単独施行群より有意に大きな改善を認めた。パルス 振幅は温熱併用群で他の2群より有意に大きい値をとった。

[考察]本研究結果から,腰

椎疾患患者の安静時下肢痛に対するTENSと温熱療法の併用はTENS単独施行と比較 して高い鎮痛効果を有することが示唆された。温熱療法の併用では痛覚閾値の上昇や パルス振幅の増大に伴う門制御の作用向上などの相乗効果が得られたと推察する。一 方,寒冷併用群に関して,低周波数TENSはAδ線維を介して作用するが,寒冷療法で はAδ線維の活動を抑制するため,効果が相殺された可能性がある。

【第2段階】[方法]対象は内側型の膝OA患者45名とし,第1段階と同様に単独施行群,

温熱併用群,寒冷併用群に振り分けた。TENSのパラメーターに関して,周波数は10

0ppsとし,相幅は200μsec,刺激時間は20分,パルス振幅は対象者が不快に感じない

最大強度とした。電極は第3,4腰椎レベルのデルマトーム上に貼付した。温熱・寒冷

療法にはホットパックとアイスパックを用い,電極上に設置した。評価に関して,

VA Sを用いて介入前後における歩行時痛(w-VAS),椅子からの立ち上がり動作時痛(s-VA S)を評価した。さらに動的パフォーマンスの指標としてTimed up & Go test(TUG)も

評価した。介入前後のw-VAS及びs-VAS,

TUGについて群内比較を行った。さらに介

入前後の変化量を算出し,群間比較を行った。[結果]介入前後のw-VAS及びs-VASは

全群で有意に改善したが,変化量は有意な差を認めなかった。TUGについて,変化量

では各群間に有意な差は認められなかったが,介入前後の比較では温熱併用群のみ有

意な差を認めた。[考察]膝OA患者の疼痛に対するTENSと温熱・寒冷療法の併用施行

はTENS単独施行と比較して有意な差は認められなかった。TENS及び温熱・寒冷療

法の即時的な鎮痛作用はゲートコントロール理論に基づくとされるが,温熱・寒冷療

法による鎮痛に関する持ち越し効果の程度については不明であり,TENSより弱い可

(3)

能性が考えられる。また,TENSと温熱療法の併用施行は動的パフォーマンスを改善 させ得ることが示唆された。これはPassive warm upと呼ばれる,温熱療法で筋が加 温されたことで動的パワーが向上し,動的バランス及び歩行能力が向上したと考える。

【第3段階】 [方法]初回TKAが施行された膝OA患者とし, TENS群,MES群,Place

bo群に振り分けた。各介入は術後3日目から術後2週まで5回/週の頻度で行った。各介

入は1日1回1時間とした。TENS群のパラメーターは,周波数は100pps,相幅は200µ

sec,電流強度は感覚閾値レベルに設定した。MES群のパラメーターは,周波数は0.2 pps,相幅を250µsec,強度を200µAに設定した。Placebo群では電極貼付のみを行っ

た。評価項目について,第2段階と同様にw-VAS及びTUGを評価した。さらに,等尺 性膝関節伸展筋力及び,

10m歩行テストによる最大歩行速度(MWS)を評価した。各評

価は術前,術後2週及び4週経過時点で行った。各群内における経時的変化について群 内比較を行った。また,術前と術後2週,術後4週でそれぞれ変化量を算出し,群間比 較を行った。[結果] w-VASについて,全群で術前より術後2週,4週で有意に小さく,

TENS群では術後2週より術後4週時点で小さかった。変化量では術後2週でTENS群は

他の2群より大きく改善しており,術後4週時点ではTENS群はMES群より大きく改善 していた。TUGについて,MES及びPlacebo群では術後2週で術前及び術後4週より有 意に遅かったが,

TENS群では術前と術後2週で明らかな変化は認められなかった。変

化量では術後2週時点では明らかな差は認められず,術後4週時点ではTENS群はMES 群より大きな改善を示した。MWSについて,MES及びPlacebo群では術後2週で術前 及び術後4週より有意に遅かったが,TENS群では術前と術後2週で明らかな変化は認 められなかった。変化量では術後2週時点でTENS群は他の2群より小さい変化を示し,

術後4週時点ではTENS群はMES群より大きな改善を示した。筋力について,全群に おいて術後2週で術前,術後4週より有意に小さかった。変化量では術後2週及び術後4 週において群間での有意差は認められなかった。[考察]本結果からTKA後にTENSを 施行することで,疼痛が強い早期から鎮痛が可能であり,歩行や立ち上がり動作など をスムーズに行うことが出来たと考えられる。また,

MESでは明確な効果が見いだせ

なかったが,MESのような微弱電流では皮膚表層での効果が主となると考えられ,T

KAのような深部の術侵襲では十分な効果を示さなかった可能性がある。

【まとめ】本研究結果より,整形外科領域の慢性疾患患者に対してTENSと温熱療法

を併用施行することは即時的な鎮痛だけでなく,運動機能も高め得ることが示唆され

た。また, TKA術後にTENSを施行することは術後早期の鎮痛を生じさせ,運動機能

の改善をもたらす可能性が示唆された。

(4)

【細則様式第1-2号続き】

学位論文のもととなる研究成果としての筆頭著者原著

論 文 題 目

Dose transcutaneous electrical nerve stimulation(TENS) simultaneously combined with local heat and cold applications enhance pain relief compared with TENS alone in patients with knee

osteoarthritis?

著 者 名 Takaya Maeda, Hideki Yoshida, Tomoyuki Sasaki, Atsushi Oda 掲載学術誌名 Journal of Physical Therapy Science

巻,号,項 Volume 29, Issue 10, Pages 1860-1864 掲載年月日 October 2017

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