完全グラフに含まれる
非分離な絡み目の個数について
平澤実生(東海大学大学院理学研究科)
共同研究者
原正雄(東海大学理学部)
2019
年
12月
19日(木) 日本大学
目次
1.
空間グラフ関連の研究
2.
分離不可能な絡み目の個数
3. 𝑛成分キーリング
2
1.空間グラフ関連の研究
3
空間グラフ
グラフ
𝐺に対して、
𝐺の
ℝ3への埋め込み
Γを
𝐺の空間グラフとよぶ。
空間グラフ
Γに対して、
𝐺を
Γ∗と表す。
4
グラフ
𝐾4空間グラフ
𝐾4埋め込み
空間グラフに関する研究
5 Conway, Gordon (1983)
𝐾6
の任意の空間グラフは分離不可能な2成分絡み目を含む。
𝐾7
の任意の空間グラフは非自明な結び目を含む。
Flapan, Naimi, Pommersheim (2001)
𝐾10
の任意の空間グラフは分離不可能な3成分絡み目を含む。
分離不可能な3成分絡み目を含まない
𝐾9の空間グラフを示した。
DRUMMOND-COLE, O’DONNOL (2009)
任意の整数
𝑛に対して、
𝐾 7𝑛/2の任意の空間グラフは分離不可能な
𝑛成分絡み目を含む。
主定理
グラフ
𝐺に対して、
𝐺の空間グラフが含む分離不可能な
𝑛成分絡み目の 最小個数を
𝑓 𝐺, 𝑛と表す。このとき、次が成り立つ。
6
定理
1.1任意の
2以上の整数
𝑛に対してある整数
𝜇 𝑛が存在し、
𝑚 ≥ 𝜇 𝑛ならば
𝑓 𝐾𝑚, 𝑛 ≥ 3𝑚−𝜇 𝑛が成り立つ。
定理
1.2任意の
2以上の整数
𝑛に対してある整数
𝜈 𝑛が存在し、
𝑚 ≥ 𝜈 𝑛ならば
𝑓 𝐾𝑚, 𝑛 ≥ 𝑛𝑚−𝜈 𝑛が成り立つ。
2.分離不可能な絡み目の個数
7
準備 絡みグラフ
• Lk∗ 𝑘𝑖, 𝑘𝑗 ≠ 0
のとき
𝑘𝑖と
𝑘𝑗は絡んでいるという。
ここで、
Lk∗ 𝑘𝑖, 𝑘𝑗 = Lk 𝑘𝑖, 𝑘𝑗であり、
Lk∗ 𝑘𝑖, 𝑘𝑗
は無向絡み目
𝑘𝑖 ∪ 𝑘𝑗の不変量である。
• 𝑛
成分絡み目
𝐿 = 𝑘1 ∪ ⋯ ∪ 𝑘𝑛に対して、単純グラフ
𝐺 𝐿 = 𝑉, 𝐸を
𝑉 = 𝑘1, 𝑘2, ⋯ , 𝑘𝑛 ,𝐸 ∋ 𝑘𝑖, 𝑘𝑗 ⟺ Lk∗ 𝑘𝑖, 𝑘𝑗 ≠ 0
と定め、
𝐿の絡みグラフとよぶ。
•
絡みグラフ
𝐺 𝐿が連結であるとき、
𝐿は分離不可能という。
8
準備 絡みグラフ
9
4成分絡み目
𝐿絡みグラフ
𝐿
の絡みグラフ
𝐺 𝐿 𝑘1𝑘1
𝑘2
𝑘2
𝑘3 𝑘3
𝑘4 𝑘4
•
空間グラフ
Γと整数
𝑛 ≥ 2に対して、
Γが部分グラフとして含む 分離不可能な
𝑛成分絡み目の個数を
𝑓 Γ, 𝑛と表す。
•
グラフ
𝐺と整数
𝑛 ≥ 2に対して、
𝑓 𝐺, 𝑛 = minΓ∗≅𝐺 𝑓 Γ, 𝑛
と定める。
10
準備 非分離な絡み目の個数
𝑮 𝒏 𝒇 𝑮, 𝒏
参考文献
𝐾6
2 1
Conway, Gordon𝐾9
3 0
Flapan𝐾10
3 1
Flapan𝐾 7𝑛/2 𝑛
1以上
DRUMMOND-COLE,O’DONNOL
補題
便宜的な導入
• 𝑉 Γ ⊃ 𝑢1, 𝑢2, ⋯ , 𝑢𝑡
に対して、結び目
𝑢1𝑢2 ⋯ 𝑢𝑡𝑢1を
𝑢1, 𝑢2, ⋯ , 𝑢𝑡と 表し、 向きを考える際は左から順に辿るように向きがついているものと する。
•
辺
𝑒と成分
𝑘に対して、
𝑒が
𝑘の上を通る交点の符号和を
𝜔 𝑒, 𝑘と表す。
ただし、
𝑒は
𝑘の辺ではないものとする。
11
補題
2.1Γ
を空間グラフとし、
Γの頂点
𝑣を他のすべての頂点と接続しているものと
する。このとき、
𝑓 Γ, 𝑛 ≥ 3𝑓 Γ ∖ 𝑣 , 𝑛が成り立つ。
補題
2.1の証明
Γ
の図式について、
𝑣と他の頂点の間の辺上に交点がなくなるように 変形してあるものとする。
したがって、
𝑣以外の任意の頂点を
𝑢として
𝑒 = 𝑣, 𝑢とおいたとき、
Γ
内の任意の結び目
𝑘に対して
𝜔 𝑒, 𝑘 = 0が成り立つ。
12
補題
2.1の証明
𝐿
:
Γ ∖ 𝑣内の分離不可能な
𝑛成分絡み目 とし、
𝐿に向きを与え固定する。また、
𝐺 𝐿
:
𝐿の絡みグラフ
(注:𝐺 𝐿 の頂点は𝐿 の成分に対応する)𝑇
:
𝐺 𝐿の全域木
𝑘1 = 𝑢1, 𝑢2, ⋯ , 𝑢𝑡
:
𝑇において次数が1の頂点
𝑘2:
𝑇において
𝑘1と接続している頂点
𝑘1𝑖 = 𝑢1, 𝑢2, ⋯ , 𝑢𝑖, 𝑣, 𝑢𝑖+1, ⋯ , 𝑢𝑡 , 1 ≤ 𝑖 ≤ 𝑡
とすると、
𝑣 ∉ 𝑘2なので
𝑘1𝑖 ⊂ Γかつ
𝑘1𝑖 ∩ 𝑘2 = ∅が成り立つ。
13
補題
2.1の証明
𝑢𝑡+1 = 𝑢1
として、
𝑒𝑖 = 𝑢𝑖, 𝑢𝑖+1とおく。
このとき、次が成り立つ。
Lk 𝑘1, 𝑘2 =
𝑖=1 𝑡
𝜔 𝑒𝑖, 𝑘2 ,
Lk 𝑘1𝑖, 𝑘2 =
𝑗≠𝑖
𝜔 𝑒𝑗, 𝑘2 = Lk 𝑘1, 𝑘2 − 𝜔 𝑒𝑖, 𝑘2 .
14 𝑢𝑖
𝑣
𝑢𝑖+1
補題
2.1の証明
したがって、
𝑖=1 𝑡
Lk 𝑘1𝑖, 𝑘2 =
𝑖=1 𝑡
Lk 𝑘1, 𝑘2 − 𝜔 𝑒𝑖, 𝑘2
= 𝑡 Lk 𝑘1, 𝑘2 −
𝑖=1 𝑡
𝜔 𝑒𝑖, 𝑘2
= 𝑡 − 1 Lk 𝑘1, 𝑘2
≠ 0
であるから、
Lk∗ 𝑘1𝑖 , 𝑘2 ≠ 0となる
𝑖が存在する。
15
補題
2.1の証明
𝑛
成分絡み目
𝐿𝑖 = 𝐿 ∖ 𝑘1 ∪ 𝑘1𝑖について、
𝐺 𝐿𝑖は
𝑘1を
𝑘1𝑖に置き換えた
𝑇と同型の全域木を含むので、
𝐿𝑖は分離不可能である。
頂点数が2以上の木は次数1の頂点を少なくとも2つもつので、
Γ ∖ 𝑣
上の分離不可能な
𝑛成分絡み目1つに対して、
Γ上の
𝑣を含む
分離不可能な
𝑛成分絡み目が少なくとも2つ存在する。
したがって、
𝑓 Γ, 𝑛 ≥ 3𝑓 Γ ∖ 𝑣 , 𝑛が成り立つ。
16
主定理1
証明
𝜇 𝑛 = ቊ 6 when 𝑛 = 2 7𝑛/2 when 𝑛 ≥ 3
と定める。このとき、
𝑚 = 𝜇 𝑛のときは関連研究より成り立つ。
𝑚 > 𝜇 𝑛
のとき、
𝑓 𝐾𝑚−1, 𝑛 ≥ 3𝑚−1−𝜇 𝑛と仮定し、
𝐾𝑚
の任意の空間グラフ
Γに対して、
Γの任意の頂点
𝑣をとると、
𝑓 Γ, 𝑛 ≥ 3𝑓 Γ ∖ 𝑣 , 𝑛 ≥ 3𝑓 𝐾𝑚−1, 𝑛 ≥ 3𝑚−𝜇 𝑛 .
よって、数学帰納法より
𝑓 𝐾𝑚, 𝑛 ≥ 3𝑚−𝜇 𝑛が成り立つ。
17
定理
1.1任意の2以上の整数
𝑛に対してある整数
𝜇 𝑛が存在し、
𝑚 ≥ 𝜇 𝑛ならば
𝑓 𝐾𝑚, 𝑛 ≥ 3𝑚−𝜇 𝑛が成り立つ。
3.
𝑛成分キーリング
18
準備 星グラフ
•
完全2部グラフ
𝐾𝑛,1を星グラフとよぶ。
19
𝐾3,1 𝐾4,1 𝐾5,1
準備 星グラフと
𝑛成分キーリング
• 𝑛
成分絡み目
𝐿の絡みグラフ
𝐺 𝐿が星グラフ
𝐾𝑛−1,1となる全域木を もつとき、
𝐿を
𝑛成分キーリングという。
20
絡みグラフ
4成分キーリング
𝐿 𝑘1𝑘2
𝑘3
𝑘4
𝐿
の絡みグラフ
𝐺 𝐿(全域木に星グラフ
𝐾3,1をもつ)
𝑘1
𝑘2
𝑘3
𝑘4
準備
𝑛成分キーリングの個数
•
空間グラフ
Γと整数
𝑛 ≥ 2に対して、
Γが部分グラフとして含む
𝑛成分キーリングの個数を
𝑔 Γ, 𝑛と表す。
•
グラフ
𝐺と整数
𝑛 ≥ 2に対して、
𝑔 𝐺, 𝑛 = minΓ∗≅𝐺 𝑔 Γ, 𝑛
と定める。
明らかに、任意の空間グラフ
Γに対して
𝑔 Γ, 𝑛 ≤ 𝑓 Γ, 𝑛であり、
𝑔 Γ, 2 = 𝑓 Γ, 2 , 𝑔 Γ, 3 = 𝑓 Γ, 3
である。よって、任意のグラフ
𝐺で
𝑔 𝐺, 𝑛 ≤ 𝑓 𝐺, 𝑛 , 𝑔 𝐺, 2 = 𝑓 𝐺, 2 , 𝑔 𝐺, 3 = 𝑓 𝐺, 3
が成り立つ。
21
準備
𝑛成分キーリングの個数
これは、
𝑔 𝐾660𝑛, 𝑛 ≥ 1であることを示している。
22 DRUMMOND-COLE, O’DONNOL(2009)
任意の整数
𝑛に対して、
𝐾660𝑛の任意の空間グラフは
𝑛成分キーリングを
含む。
補題
証明
𝐿
:
Γ ∖ 𝑣上の
𝑛成分キーリング
𝑆:
𝐺 𝐿の星グラフと同型な全域木
とする。定理
2.1の証明と同様にして、
𝑆における次数1の頂点に対応して
Γ上の分離不可能な絡み目
𝐿′が存在する。
𝐺 𝐿′は
𝑆と同型な全域木をもつ ので、
𝐿′は
𝑛成分キーリングである。
𝑆は次数1の頂点を
𝑛 − 1個もつ
ので、この方法で新たに
𝑛 − 1個の
𝑛成分キーリングの存在が示される。
したがって、
𝑔 Γ, 𝑛 ≥ 𝑛𝑔 Γ ∖ 𝑣 , 𝑛が成り立つ。
23
補題
3.1Γ
を空間グラフとし、
Γの頂点
𝑣を他のすべての頂点と接続しているものと
する。このとき、
𝑔 Γ, 𝑛 ≥ 𝑛𝑔 Γ ∖ 𝑣 , 𝑛が成り立つ。
主定理2
24
証明
𝜈 𝑛 = 660𝑛とおき、まず
𝑔 𝐾𝑚, 𝑛 ≥ 𝑛𝑚−𝜈 𝑛であることを示す。
𝑚 = 𝜈 𝑛
のとき、
DRUMMOND-COLE, O’DONNOLより成り立つ。
𝑚 > 𝜈 𝑛
のとき、
𝑔 𝐾𝑚−1, 𝑛 ≥ 𝑛𝑚−1−𝜈 𝑛と仮定し、
𝐾𝑚
の任意の空間グラフ
Γに対して、
Γの任意の頂点
𝑣をとると、
𝑔 Γ, 𝑛 ≥ 𝑛𝑔 Γ ∖ 𝑣 , 𝑛 ≥ 𝑛𝑔 𝐾𝑚−1, 𝑛 ≥ 𝑛𝑚−𝜈 𝑛 .
したがって、数学帰納法より
𝑔 𝐾𝑚, 𝑛 ≥ 𝑛𝑚−𝜈 𝑛が成り立つので、
𝑓 𝐾𝑚, 𝑛 ≥ 𝑔 𝐾𝑚, 𝑛 ≥ 𝑛𝑚−𝜈 𝑛 .
定理
1.2任意の
2以上の整数
𝑛に対してある整数
𝜈 𝑛が存在し、
𝑚 ≥ 𝜈 𝑛ならば
𝑓 𝐾𝑚, 𝑛 ≥ 𝑛𝑚−𝜈 𝑛が成り立つ。
ご清聴ありがとうございました。
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