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合成洗剤の諸問題について(第1報)
一アルキルベンゼンスルホン酸塩の毒性一
衣政学科衣料学研究室吉 田 紘 子
(昭和48年10月29日受理)
たため石ケン製造用に食用油脂の使用が禁止され・石ケま え が き
ンに代る洗浄剤の研究が進められた。1916年に合成洗剤 合成洗剤とは,石ケン以外の界面活性剤を主成分とす 1号と通称されているブチルナフタリンのスルホン酸塩 る洗浄剤の通称であるが,現在では石油から合成された が製造され,戦時中は家庭用洗剤として使用された。
アルキルベンゼンスルホン酸塩(以下ABSという)が 1930年までに現在使用されているほとんどの界面活性剤 代表的なものとされている。ABSは,食料である天然 についての基礎研究は行なわれていた。高級アルコール 油脂を原料とする石ケンに代る洗浄剤として・第二次世 系洗剤(脂肪族アルコール硫酸塩)もこの時期開発され 界大戦中に研究開発され・戦後市販されたが,使用上の 1932年米国において市販され,続い1て日本において,初 便利さ,電気洗たく機の普及などと相まって急速に普及 の合成洗剤として市販されて・現在も毛,絹用中性洗剤
した。日本においても,昭和26年に輸入され,衣料用洗 として使用されている。
剤,台所用中性洗剤,また,シャンプー,住居用洗剤な その後・輸入油脂の国家管理食糧統制などのため合成 どにと広く使用されるようになり,現在では全洗浄剤の 洗剤の研究は国策という支柱に支えられて発展した。当 80%をABSが占めるに至っている。 時の合成洗剤としてはFisher法のパラフィン酸化によ
ABSの安全性については,皮膚への影響,催奇形性 る合成脂肪酸の石ケン,高級アルキルスルホン酸塩 野菜への残留,河川・地下水の水質汚濁など,問題があ (Mersolate),第二級アルキル硫酸エステル塩くTe一 り様々な立場から論議がなされている。厚生省は昭和37 epole)ケリルベンゼンスルホン酸塩(IgepQI Na, Na一 年台所用中性洗剤の安全性が論議されたとき,「通常の cconoI NR・ABSの前身)などがあった。
使用では無害である」と結論を出したが,今年になって 戦後・アメリカにおいてProeter&Gamble社がケ 食品衛生法の一部を改正して,中性洗剤の成分規格,使
@ 図一1 石ケン合成洗剤生産量推移図用基準を設け食品添加物と同じ取り扱いをすることを決 (通産省統計による)
めた。この問,催奇性・発ガン性などABSの毒性を示 60
す内外学者の研究報告があり・また,消費者の間に石ケ 〆
ンを使う」翻や「帷洗剤禁止」翻が大きくな・て 生,。 合成漏
きている。しかし・家庭科教育の中では合理的な家事処 産 ノ 量 理という観点から・無条件に合成洗剤の使用を認めてお _ !
り嫁政学関係においても・蹴の問題をも含めて合㌘4° 石けん /
成洗剤にっいて検討した論文はみられない。 )
@第1報においては,主として,合成洗剤の毒性,環境 30
? などの問題にっいて論じ・第2報においてABSの
ォ能,家政学及び家庭科教育でのこの問題の取り扱い方, 20 蝠wの意識などについて検討したいと考えている。
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1. 合成洗剤の歴史と化学
@ 01−1合成洗剤の歴史
@ 〆ノノ ー引9■go6
Q0 25 30 35 40 44
第一次世界大戦中,ドイツにおいて食用油脂が欠乏し 昭和(年)
リルベンゼンスルホン酸塩を改良したアルキルベンゼン 作られている。界面活性剤は界面活性を示す物質で,分 スルホン酸塩を主原料とする新合成洗剤を石ケンに替わ 子中に疎水基と親水基を有しており疎水基は長鎖の炭化 り得るものとして開発した。続いてLever Brothers社, 水素・親水基はカルボキシル基(COO−)ヌ、ルホン基 Colgale社など大洗剤メーカーも石ケンからの転換を図 (SO3つ・酸化エチレン基〔(CH2−CH2−0)。〕などの原 り,ABSを主原料とする新製品を相次いで出した。三 子団で構成される。界面活性剤を水に溶かした時の水溶 大洗剤会社の激しい宣伝・石油化学の発展,ABSの性 液の電気的性質から,陰イオン系界面活性剤,陽イオン 能向上,およびアメリカの水質,国民性などと相まって 系界面活性剤,両性界面活性剤,非イオン系界面活性剤
に普及した。 関係など多種多様の方面に応用されている。石ケン,
日本においては昭和26年に輸入されたが,図一1の様 ABSは陰イオン系界面活性剤の一種であり,洗浄作用,
に我国の経済の復興後・昭和34年より急速に生産量が増 乳化作用,分散作用,浸透作用などにおいて優れた性質 3)
大している。表一1の様に繊維用,台所用などとABS を示す。
の使用は増大してお ABSはベンゼン核にアルキル基とスルホン基が結合表1合成洗剤の各種用途別内訳
(昭和13年) り,現在では全洗浄 したもので搬式として鴫+・《》sq血
品 種 一@ 一一一一一ラ萬量 剤の80%を占めてい
驕Bまた,電気洗た で表わされる。高オクタン価ガソリン製造時に副生する 弱アルカリ性洗剤 363,000 く機が登場して,粉 プロピレンを重合させて四量体とし,これをベンゼンに
中性洗剤(繊維用)
苡蒲p洗剤(粒状)
8,000 P1,000
石ケンが,普及し始 付加させてアルキルベンゼンとし,次に発煙硫酸などを ゚その後,粉石ケン 作用させてスルホン化したものを中和して作る。プロピ
(液状) 99,000 その他(住居用輸出
@ 用,その他) 41,000
が合成洗剤に置き替 レン四量体は多くの分岐をもった多数の異性体からなっ 墲チたが・電気洗た ており,それより得られるABSには多くの異性体か含ま 小 計 522,000 4)ュ機と合成洗剤は相 れている。Cg_、6のアルキル基をもったABSが市販洗 工 業 用 42,000 2)
ン進展を示した。 剤の中に存在するが合成洗剤の主成分としてはC、2の
シ ャ ン プ ー 33,000 1−2合成洗剤の ドデシルベンゼルスホン酸ナトリウム(DBS)が一般的
合 計 597,000 化学 である。
合成洗剤は主成分 市販されている合成洗剤の成分を表一2に示した。
の界面活性剤と無機及び有機の添加剤(ビルダー)から
表2 家庭用合成洗剤の組成
衣料用洗剤5) i 台 所 用 洗 剤6)
一」
一一一 @一一一
強洗浄用洗剤i粉 剤1液 剤
ABS(LAS) 20〜25% ABS(LAS) 20〜40%lABS(LAS) 15〜30%
Na 3P30ユ0 20〜30% 硫酸ナトリゥム60〜30% 硫酸アンモニウム5%以下 Na2SO4 60〜45%
i アルコール 20%以下
CMC 1〜2% i 水
その他 l I
2・合成洗剤の間題点 であると主張している。
2−1 日本におけるABSの有害論争 ABSの有害論争は昭和3e年頃より起り,次の様な経
止4),15)
ABSの安全性にっいて検討した研究は内外に種々報 過をたどった。
7),8).9) 且0)
告されている。日本においても,柳沢,門奈らは・ABS 昭和31年,厚生省は,国立衛生試験所薬品部長池田良 は催奇性,発ガン悔肝臓障害など毒駐が有るので,食品 雄博士による台所用中性洗剤ライポンFの急性毒性試験 食器洗浄への使用は危険であると主張しており,一方, についての報告を基にして,中性洗剤は野菜,食器洗い
11) 12) 13)
富山,藤井,今木ら及び厚生省は適正条件で使用すれば に使用できるとABSの安全性を保証した。厚生省外郭 無害でありむしろ,ABSの洗浄陸能を高く評価すぺき 団体である,日本食品衛生協会もライポンFを始め他の
吉 田:合成洗剤の諸問題について(第1報) 137
台所用中性洗剤を「日本食品衛生協会推奨品」に指定し 2−2ABSの生体への作用 た。 (1)急性毒性
昭和37年1月,柳沢文正,文徳両氏の「石油系合成洗 物質の毒陸の強弱を判断する際に,実験に用いた動物 剤ABSは①野菜に残留する・②マウスの体重増加曲線 の半数が死ぬ量「LD・・」が判断の目安として用いられて が対象動物の曲線より低い,③洗剤工場の従業員の尿に いる。ABSのマウスに対するLD5・は研究者により若 ウロビリノーゲン反応が認められるなどの点で無害では 干の差はあるが,約29/kgである・この数値に対して・
ない。使用に当っては充分注意が必要である。」 との見 食品衛生調査会は「ABSの急性毒性は大きいと考え 解を新聞に発表した。また,お茶の水医学会にも「ドデ られるものではない」との結論を出している。しかし・
t召犠r欝灘灘総鷲報告表3ABS一ウスに対一叢欝}1潔
ことについて」諮問を行なった。 1.6〜乳61Hine 20) の脂肪酸およびソ
6月,食品衛生調査会は国立衛生試験所,慶応大学, 2.o iHooper 8) ルビタン酸などの ト国立公衆衛生院,労働科学研究所などにおいて,野菜な 『 界面活性剤はLD5り
どに残留して体内に入るABSの量,食品以外の経路か 20g/kg以上の物質であるし,禁止になったチクロは ら体内に入るABSの量, ABSの急性毒性,慢性毒性 129/kgであることから考えても,ABSの毒性が低いと などについての研究が始められた。 はいえない。
11月,食品衛生調査会は「中性洗剤を野菜・果物類・ 人間の:場合には0.59/50kg以下の量で死亡している 食品等の洗浄に使用することは洗浄の目的から甚しく逸 例があり,動物実験で得られたLD、。をそのまま人間に 脱しない限り,人の健康を害うおそれはない」との答申 適用するのは危険である。
を出した。この後,厚生省は・業者に対し,標示,広告
等について・使用目的,使用法を明示する・「完全に無 (2)慢性毒性 21)
Qである」などの過大広告はしないよう指導した。 Tusing等は離乳後間もない体重62〜649のラットを しかし,この答申はABSを適正条件(0.2%濃度で 用いて,2年間に亘る慢臨毒性試験を行なった。食餌に 2〜3分間洗浄する)で使用する場合は無害であるが,高 混入した場合・ABS O・1%混入ではなんら変化なく,死 濃度で長時間洗浄した場合は有害であることを意味して 亡後の病理学組織学的な検査においても臓器に異常は認 おり,各々の研究結果からもABSは絶対に安全である められなかった。 ABS 1%混入の場合,初期に体重増加
との結論は出ていない。 が停止したので,17日目から1週間ABS投与を停止し また,この年9月にライポンFを少量飲んで数時間後 た後0.5%混入を2年間続けたが,0・1%群と同様・変化 に死亡した事件が起ったが,アイマイなまま処理され, はなかった。飲料水に0・04〜0・06%ABSを添加した場 このことも有害なのではないかとの疑いを深めさせた。 合も体重増加,食餌,飲料水摂取量は対照と大きな差を
以後も,中性洗剤の有害論争は様々な形で続き,昭和 示さなかった。さらに,ABS添加食餌投与ラットにつ 45年には,厚生省により「シャボン玉遊びの材料として いて3代に亘る妊娠率・分娩仔数初期死亡率に検討を加
中性洗剤の使用」が禁止された。 え,ABSによる影響はみられないと報告している。
18)
コ和i8年4月には,食品衛生法関係省令の一部を改正 岡原らによるとシロネズミにABSを30mg/kg・0・3 して,台所用洗剤の成分規格と使用基準を設け,これに mg/kg 6ヵ月間投与した結果,体重増加や一般症状は もとついて,メーカーに対し,中性洗剤で手が荒れる人に 対照と似たものであったが,6ヵ月後に各臓器を観察し
脂肪酸系石ケンへの切り替えをすすめる表示や,使用基 た結果・脾臓の平均重量が・各被検群とも対照群よりも 16)準に従った使用方法を表示することなどを義務づけた。 低かった。
22)
チ費者の間にも,自主的な学習会などから「石ケンを 池田らは雄ラットを用いてABSを0・02%・0・1%・
使う運動」や,学校給食などへの「中性洗剤の使用禁 0.5%・2.5%混入した固型飼料を自由に摂取させる実験 止」運動が起り,次第に大きくなってきている。 を行なった。6カ月間における1日平均ABS摂取量は
表4 ABS長期投与におけるラット検体摂取量(mg/kg/day)
禽\犠
n錨\
1 2 3 4 5 6
一
0.02 17〜 24 15〜 17 12〜14 11〜 12 11〜 12 10〜 11
0.1 80〜100 70〜 80 70〜80 60 60 50〜 60
0.5 400〜500 300〜400 300 300 300 300
2.5 23〜2000 90〜1400 1250〜1480 1400〜2000 1500〜2000 1600〜2400
表一4 に示した。2・5%群では初期に高濃度のABS食餌 であり・また,体重増減白血球の減少など さらに検討を を摂取しない例があり,ABS摂取量に個体差が現れた。 必要とする問題ではないだろうか。
2.5%群では投与初期に食餌摂取量低下により体重増加 各研究者達はいずれも・ABS摂取が少量であれば,
が停止し6ヵ月までに13例が死亡した。また,下痢・体毛 人体に影響を及ぼすことはないといっているが,岡原,
の光沢が無くなる・総毛立つ,運動が不活擁になるなど Freemanの研究からは,少量でも影響を与えることが の中毒症状を示した。死亡後の主要臓器については0・5 容易に推測できる。
%以下の群では・対照との変化は認められなかったが, (3)催奇形性
2,5%群では死亡例や・3.6カ月期のものに・胃の下部の ABSの催奇形性についてはTusingのABSの慢匿 充血,腸管の充血と軽度の浮腫・肺臓の充出血・化膿部 毒性試験の世代に亘る研究があるが,催奇形性を認めて 24)
ハの存在がみられた。また・心臓,肝臓・脾臓および内 いない。大森等は妊娠ラット,マゥスへABSをα025〜
分泌器官一般の重量が減少していた。この結果から,1 2.0%食餌に混入して投与し,胎仔ならびに新生児に及 日摂取量300rng/kg以下ならば害は無いと報告してい ぼす影響について検討した。ラットでは0.025%群及び
る。 1.0%群で外反足及び外脳症の例が1母体に認められた。 23)
人体実験としてはFreeman等の研究がある。成人男 20%群では対着床数が著しく減少した。また,妊娠マウ 子6人に1日100mg(体重60kg平均として1・7mg/ スを用いて,7〜13日間ABSを24mg/kg,240mg/kg kg)を4ヵ月間与えた。体重については・初期と4ヵ月 投与すると240mg/kg群において胎仔の死亡率が増加
後の差は減少3名(−4.7kg,−7・5kg,−2・2kg)・増加 し1例の口蓋裂が認められた。 25)
3名(+3.2kg,+2.8kg,+3,5kg),白血球は減少4名 三上等はマウスの発育について表一5のような実験結
(−1.400,−2.200,−1.000,−200),増加2名(+200, 果を報告している。微量で口蓋裂,外脳症,出血班など
+900)・赤血球Hbの変化はなかった。2名に食欲不振 の奇形が生じている。
の症状がみられた。この結果,ABSは人体に影響を及 三上氏はまた・親の皮膚からABSを吸収した場合に 26)
ぼさないと結論を出している。しかし,2名にみられた も奇形が生じることを報告している。妊娠中のハツカネ 食欲不振は・Tusing・池田等に共通に現れている症状 ズミの背中に市販の台所用中性洗剤15%溶液を0.5酩
表5 ABSによるマウスの胎仔(各群180匹)への影響 実験のため
フ 濃度 投 与量 ABSの量 体重1kg当閧フ換算量 口 蓋 裂 外 脳 症 出 血 班 使用量の@ 8.5倍 0.021c.c. 0.1mg 2.5mg 35.2% 1.8彩 3%
使用量のニ お り
iO.021 1 0.01 1
0.25 22.3 0.6 3
使用量の@ 10分1 O.021 0.001@ } 0,025 15.5 1.0 13
一『〔
ABSを与えない時の出現率 0.82 lq14 0
r
吉 田:合成洗剤の諸問題について(第1報) 139
塗った。受胎直後から妊娠13日目まで塗り,17日目に胎 し易いことが考えられるといっている。三浦らは主婦湿 仔を取り出したところ・全身出血98%,背椎破裂,中心 疹の問題として(1)洗剤の使用条件・(2}皮膚のアルヵリ中 管閉鎖70・2%,口蓋i裂40.7%,浮腫39%,外脳症2.5% 和能・(3)脱水力,(4)角質変性作用,(5)既往症の影響,(6}
の割合で奇形が現れており,死仔2・5%であった。この 感作性,非感作性の充進などをあげている。また,渡辺 時のABSの濃度は池田らの慢性毒性試験により・無作 らは,洗剤は非炎症性病変群については何らかの影響を 用量とされた300mg/kg以下である。 与えるが,日常主婦が接触する器物,食品・気温などの
この他,田中・柳沢らもABSの催奇形性について報 影響が大きいといっている。
告している。ABSは界面活性剤の特性として,他の化 Peukertの界面活性剤についての皮膚刺激の強さにつ 合物のとりこみ作用を手伝うので他の催奇形性物質との いての研究,野波,Kirkらの脱脂作用についての研究,
相互作用にっいても充分考慮しなければならない。 Scott,飯盛,武井らの皮膚蛋白のSH基の変動につい ての研究によると高濃度においてはいずれもABSの影
(4}皮膚への影響 響が認められると報告されている。
2)
̀BS系合成洗剤の使用によって「手が荒れる,湿疹 以上の結果から藤井は通常の条件で使用した場合,よ ができる,爪が変形する」などといわれ,主婦湿疹とい く水洗いをしてぬぐい,必要あれば油分を補ってやれば
う言葉もできている。国民生活センターの食器,野菜用 手荒や角化異常をきたすことは極めて少いといってい
27) 9)
合成洗剤の使用実態に関する調査報告においても,台所 る。一方柳沢は,現実の使用実態より見て無害ではない 用合成洗剤によって使用者の35%がなんらかの皮膚障害 といっている。また,皮膚科領域においても皮膚の炎症と
を経験しており,障害の発生は昭和38年以降に多くなっ 合成洗剤との関係についてはいまだに論議されている状 ている。 態であり結論は得られていない。しかし東京逓信病院に
28ノ
?ォ洗剤の皮膚に及ぼす作用について・次の様な論文 おいて接触性皮膚炎の調査をした結果,洗浄剤が原因と がある。笹川らの昭和24年から34年の間に来院した患者 なるものが51例中11例,手の湿疹変化と診断さ才、たもの の統計によると・図一2の様に皮膚障害の発生は男性に (390例)は洗剤が多分に関係すると推測している。合成
洗剤と皮膚の湿疹との関連については,その発生機序が 図一2家婦皮膚炎の年度別患者数および男女曲線 明きらかになっていないが,高濃度,長時間使用すると
(東大分院皮膚科) 皮膚炎を起すことは何れの研究においても認められてい
100
90患
/ また,皮膚から吸収されたABSの毒性にっいても報/ 29)
者80数
(70l)60
, \ / 中に塗布すると,原液群では翌日から発赤がみられ,10
50
40 ㌧!ノ は3〜4日後に塗布面の発赤・被毛の脱落,浸潤肥厚が
30 みられた。1.0および0・25%群では変化は認められな
女 かった。組織学的所見では,各群に共通して,塗布部分 男\v!・一一〆\一一・・一・一 !
@ の皮下脂肪の減少,濃度に比例して血管の増成,充出血
0 像,細胞浸潤の炎症像などが認められた。柳沢らも追試
日召禾目25 26 27 28 29 30 31 32 33 34
験を行なって同じ結果を得ている。また三上の低濃度使
年度 用によっても皮膚から吸収され胎児に影響を及ぼすとの
はほとんど増加がないが,主婦では32年以降に増大して 表6 台所洗剤の使用実態
いて,台所用中性洗剤が普及し始めた時期と一致してい 使 用 法 隣璽劉夢鵤
る。久保らは貼布,浸漬試験によって合成洗剤は陽性と
ネらなかったと報告している。また,石原らは手指皮膚 標準量を水に溶かして使う a7%1 6%
炎は夏季女性に多く(80%)・貼布試験の結果は洗剤の 適当量を水に溶かして使う 57.0 46 使用濃度が適正である場合は,全例陰匹であったが・洗
ワ使用直後に接触した物質の影響によって皮膚炎を発生 原液のまま使用する 35g 奄S3
報告もある。 表7界面活性剤の試験管内溶血作用
主婦の洗剤使用の実態をみると,表一6の様に,厚生 (一:非溶血,+:部分溶血,什:完全溶血)
省メーカーが指定している使用条件を守っている主婦は ュく・数%にすぎない。ほとんどの主婦が高濃度または エ液のまま使用していること,毎日繰り返し使用してい
1
̀B釧石ケン素地 ラウリル ー酸ソーダ
ポリオキシエ1
̀レンノニル tェノールエ [テル ることなどを考慮に入れると,ABS系合成洗剤は「通 0.2
_ 1 _ 「
常の使用では無害であるとの厚生省の見解は,一般主婦 0.3 }
達の通常の使用」には適用できないものである。 0.4 一 一
0.5 士
(5)その他の生化学的作用
0.6 十 一
界面活性剤には溶血作用(赤血球の殻が壊れて,内容
0.7 十 Il l
が血球外に出る)があるが・表一7に示した様にABS 0.8 粁 十 の溶血作用が一番強い。ABSの試験管内における溶血 0.9 升
作用は生理的食塩水中で0.6mg/41の濃度で起り始め, 1.0 軒 十 一 0・8mg/ゴ1では完全に溶解する。石ケンは0,7〜0.8mg/ 1.2 十 一
41で溶血が始まり1.4mg/41で完全に溶解する。 1.4 什 一 一
酵素活性への影響については,国立衛生試験所で行な 1.6 升 一
_ 1 「
われた実験がある。ABS・粉石ケン,ステアリン酸ナト 1.8 升 ± _ !
リウムの3種について消化酵素パンクレアチンとペプシ 2.0 什 ± 一
ン酵素活性に及ぼす影響が報告されている。パンクレア 2.2
Q.4
十十 士士
チンというのは動物の膵臓から作られる製剤で,でんぶ
2.6 升 十
ん,脂肪,たん白質を分解するいく種類かの酵素を含ん 2.8 卦 十
でいる。ABSは比較的低濃度で急激に阻害度が高くな 3.0 粁
り(0.02%で48%阻害),0.05%では95%阻害とほとん 3.2 1 →十 1 ど完全に阻害されてしまう。これに比して・粉石ケンや 3.4 i
ステアリン酸ナトリウムは,その濃度の増加に従って徐 i3・6 l l 1
々に阻害が起り,ある場合には阻害度が20%前後で止っ
表8 試験管内の消化酵素阻害試験(国立衛生試験所)
ABS 粉 石 ケ ン ステアリン酸ナトリゥム
10 さ
刀@せj る Q 濃 度
墨局阻害 最起必度
bウ要jせな Qる最xの小
10 さ d義器度刀@せ
塁局阻害 最起必度
bウ要jせな Qる最xの小
10 さ
「義暴度刀@せ
翻阻害
羅野阻せな害る最度の小
起 度 をに濃 起 度 をに濃 起 度 をに濃
たん白消化酵素
@(パンクレアチン)
% O,005 1 %
@ 80
%}
O.5
%0.08 %
Q0 %
O.5
%
O.1
%
Q5* %
O.2
『
たん白消化酵素pl{216 0,012 95 0.1
一 一 一 一 一 一
1 一一一一
(ペプシン)
o・ 0,060 73* 0.5 0.21 65* 0.5 0.13 50* 0.5
←一ぼ一r一 一一 黶g一 一一一一一
でんぷん消化酵素
@(パンクレアチン) 0,005 95 0.05 0.02 95 1.0
@ [
0.ユ3 16* 0.2
w一 闊一}一
脂 肪消化酵素 一
@(パンクレアチン) 0,012 1⑪0 0.5 0.06 99
l
k° P働 86*o
住5
*これ以上の濃度の阻害剤を用いればさらに最高阻害度は大きくなると思われる。
吉 田:合成洗剤の諸問題について(第1報) 141
てしまう。表一8に同一条件下での3者の阻害の様子を 所による残留の差はほとんどないが,切口からの浸透が 比較した。ABSは粉石ケンや,ステアリン酸ナトリウ 葉の面からの2〜3倍量になる。また,洗剤濃度が4倍 ムに比して,数倍から20倍位薄い濃度で,これらの酵素 になる戯野菜に付着するABSの量は約3倍に増加す を阻害する。 ることが報告されている。
この他,肝機能への悪影響・発ガン性および,発ガン 水洗の効果については,浸漬時間の短いものでは,
補助作用についてのABS影響も報告されている。 〜3回の水洗でκ以下の量になるが,30分以上浸漬した ものでは1〜3回の水洗で%程度しか減少せず,さらに 2−3ABS系合成洗剤の体内への吸収および排泄 水洗を繰り返しても効果はない。
(1)ABSの体内への吸収 果物への残留としてはリンゴ,及びいちごについての ABSが人体に入る経路としては,台所用中性洗剤で 報告がある。リンゴは浸漬時間に関係なく0・5ppm前後 野菜,果物,食器などを洗った後,これらに残留または のABSが付着した。いちごについては, q o5%ABS溶 付着したり,洗浄後の汚水が河川,地下水に流入して, 液34中で10秒間かきまぜた後・一定時間浸漬して,そ 飲料水に混入したり,また,使用中に手などから浸透し の後34の留水中で5秒間かきまぜながら水洗を3回繰 たりなど,経口および経皮的吸収が考えられる。 り返したのち,生いちご中の残留量を測定した。表一11
野菜類の囎については,公衆衛生院における実験馨 の様にこの場合も轍根のものほど履漬時間の長い ある。市販中性洗剤0.25%溶液(0.1%ABSを含む)に ものほど残留量が多くなっている
キャベツを2,5分間浸漬した後・各々2,4分間水洗しキャ
表11生いちご中のABSの残留量(ABS濃度0.1%)ベツに残留しているABSを放射化学的に測定した結果 (mg/kg)
を表一9に,同様に小松菜についての結果を表一10に示
した。キャベツ,小松菜共に浸漬時間が長くなるとABS 浸漬時間 残 留 量
の汚染が増大しており,また,鮮度不良の野菜には新鮮 (分) 轍の高いもの徽の低いもの3
な野菜の2〜3倍量のABSが吸収され,水洗した後に 1
も多量のABSが残留している。葉の中心,周辺など場 1 0.4 1 3.74
@ i
3 一 1 4.94
表9 キャベツを0.1%ABS溶液に浸漬した後水洗し 20 ユ.3 たときの残留量 (mg/kg) 9.34
1\難職
g漬時商\
「 0 1 3 5 10
食器へのABSの残留についても・国立公衆衛生院に 10秒 39.3 3.8 1.5
一 一 よる磁器,ガラス・プラスチックの食器をα15%ABS i ユ分 39.9 5.2 1.9 一 一 溶液に5分間浸漬した後・2〜60秒間水洗して,食器の
38.0 8.1 3.9
一 一 表面に付着しているABSの量を測定した表一】2の様な 1 10
@ 30
46.OI10.8 Uα・i1氏8
5.7 P1.8
4.0 W.9
一9.0 結果がある。プラスチックは磁器やガラスビンに比し,
5倍のABSが付着しており・水洗が不完全だとさら に付着量は多くなっている。
表10小松菜を0・1%ABS溶液に浸漬したのち水洗 洗剤使用中に皮膚を通して吸収されることは,先の三 したときの残留量 (mg/kg)
上,小谷らのABSの毒j生実験からも明きらかである。
試料形 鮮度 浸漬 未水洗 水 洗 川崎市高津保健所の報告によると,尿中のABS量は,
時間 2分14分 職業的に洗剤に接触している調理師などは・通常の人の 全 葉
S 葉
良良 2分
P0 126 P67
44 R2
26
R0 3倍以上である。また,富山らによると,両手を手首ま
切片葉 良 2 2561 126 87
で0・3%の洗剤液に浸すと0・046mgのABSが体内に 2)
切片葉 良 10 2691139 105 吸収されるという。
全 葉 不良 2 418i 321 214 2)。木らは全経路から人体に入るかも知れない1人1日 全 葉 不良 5 437 324 271 当りの洗剤量を表13の様に推定している。
全 葉 不良 10@ 1 448 P379 315 しかし,先に述ぺた,国立衛生院の実験において,
一一一
表12各種食器を¢157%ABS溶液で洗浄したのち水 ABS残留量の多い,鮮度不良の小松菜・いちごを食ぺ 洗したときの付着量(mg/cm2) た時の体内に入るABS量を推定して「推定されうる最 A 磁 器 . 大摂取量」としーて示した。今木らの推定量に比して10倍
「水洗時聞
@(秒) 水洗後の付着量葬;鞭護間綱 以上の量が体内に入ることになる。
@実際の生活を考えた場合に・新鮮な野菜,果物を食べ
0 5.7×10−3 られることは稀であり,鮮度の良くないものを食べてい
る。美容食,健康食などと・野菜類の摂取が多くなって 2 3.9×10−4 1.9×10−6 1.5×10−6
いる。また,表一6に見られる様にほとんどの主婦が高
4 2.9×10−6 1.8×10−6 1.4x10−6 濃度で洗剤を使用している。これらのことから実際に1
8 3.1×10−6 1.6×10−6 1.3x10−6 日に体内に入るABS量は100mgを超えている可能性 20 1.9×10『6 1.8×10ロ6 1.3x10−6 は充分に考えられる。
60 2.Ox10−6 1.5x10−6 1.6×10−6
脚一一_ (2}ABSの排泄
一r−一一一 }一
B ガラス
経口的に投与されたABSの体内分布と排泄について 31)
ほ労働研究所および,国立衛生試験所の研究がある。池
0 8.2×10−3 田らはネズミに胃ゾンデを用いて,経口的に投与し,各
2 1.1×10−5 9.2×10−7 2.1x10−6 種内臓,大腿骨,皮膚,および尿尿中のABSを放射化
4 6.4×10−6 7.2x10−7 5.7×10−7 学的に測定した。経口投与されたABSは消化管から吸
8 2.1x10−6 1.2x10}6 6.0×10−7 収され各臓器にとりこまれる。その後,肝臓,消化管以 外の臓器では1週間までとりこみが増加し,その後,各 20 2.3×10−6 4.4×10−7 8.9x10−7 臓器とも急減し・17日までに痕跡以下になる。尿中には 40 1.4x10−6 3.5x10−7 6.6×10−7 第1日目に投与量の5.3%,7日目までに6%弱が排泄さ
C プラスチック 図一3ウサギの尿中への積算排泄率
0 6.9x10−3 %
2.2x10−5 Q.8×10−5
1.3×10−5 P.2x10−5
8.0×10−6 U.7×10}6
排50
謔S・ 30
300磁g投与
T0mg投与 8 1.8x10−5 9.7x10−6 8.4x10−6 20
10 8.9x10−6 5.1x10−6 5.2x10−6 10
20 5.9x10−6 3.5x10−6 3.6x10−6 1 2 3 4 5 6 7 8
@ (日)
れている。尿には第1日目に83 表131人1日当りのABS摂取量 %,7日目までに約95%が排泄さ
(1人1日野菜2209,果物1009食ぺるとして) れている。
ABSの残留量 ロ 取 量1人1日当りの 推定される最大摂取量
1蝉らはウサギにABSを °m島
w?P錨黎99mg くるABSの量の変化を見た。一
野菜類
{30ppm 6.6mg i
鮮度不良の小松菜
果物類 2 i α4 鮮度不良のいちご 2 時投与の場合は図一3の様に50mg 食器具類 ユ人が1日茶ワン10コ
M5〔牧使う 0.01〜0.03 0.01〜0.03 投与では第1日目に投与量の5%
手・皮
ヨ簗驚48時
0,046 0.046 料 水 0.8がその後徐々に排泄され,総排泄 ハは20%くらいである。300mg投
計 7,076 101,876 与では,最初の尿に30%近い量が
排泄され,後は減少している。長
吉 田:合成洗剤の諸問題について(第1報) 143
期投与では,いずれもABS投与量の数%ないし20%程 工ASへの切り替えをした。日本においては,1965年・
度の尿中排泄が常時みられる。また・尿中のABSの定 合成洗剤協会が自主的にソフト化を始め・1968年には80 量値が低いことから,たん白質とABSの結合を推定し %以上がLASに切り替えられた。しかし・LASの分 ている。 解には4日ほどの時間がかかり・微生物によって分解す ABSは1週間,各臓器に存在すること,そのままの るので・河川の流れがゆるやかであり,終末処理施設の 形で排泄されること,たん白質と結合する可能性のある 完備した外国においては・ソフト化による効果は上った
ことなど考慮すると,ABSの体内における作用が非常 けれども,日本においては川が急流であるため,微生物 に問題となってくる。 に接触する時間が短い・下水処理施設が不備である(終
末処理施設を備えた施設は全国平均10%にすぎない)な
2_4河川,地下水の汚染 どのため・ソフト化しても環境汚染は進む一方である。 32) 33) 34) 35) 36)ABS系合成洗剤の台所用・衣料用・工業用への使用 村上ら・大沢ら・太田ら,三浦ら・小林らによると多
量が増大してくると,河川,湖沼,井戸水・地下水など 摩川水中のABSは1964年以降年々増加の傾向にある。 37)の合成洗剤による水質汚染が問題となってきた。この原 また,小林らは横浜市内の河川水,飲料水についての調
因のひとつとして,石ケンは下水中で微生物によりかな 図_4那珂川のおけるABS量
り急速に分解されてしまうが,ABSはその作用を受け (8,9,10,12月の平均)
難く長く水中に残留,ときに蓄績されるということがあ げられる。この問題を解決する方法として,生物学的に 分解消失する洗剤を作ることが考えられた。従来のABS
1.0
(ハードABSと呼ばれる)は(a)のようにアルキル基 ABS 濃
CH3 C、3 CH3 竺
氏j
?争黶s耐く了勲 噌 CH3 CH3 CH3
0.5
(b) CH3−CH−CH2−(CH2)8−CH3
SO3Na
那珂川大橋 千代橋 水府橋 湊大橋 が分岐しているため生分解性が悪いが・(b)の様に直線
上の構造にすると微生物による分解性が良くなると云わ 査から,水道水および,いずれの家庭の井戸水中にも低 れている。この直線上ABS(Linear ABS)をソフト洗 濃度であるが, ABSが含まれており・許容濃度以上の 剤,あるいは,LASと呼んでおり,ハードABSをLAS 1・2PPm含まれている例が一例あったと報告している。
に替えることをソフト化といっている。 本研究室においても・1972年,那珂川及びその周辺の家 外国においては,1962年頃より合成洗剤による水質汚 庭の井戸水について調査した。比較的汚染されていない 濁の問題が現われ始めた。ドイツにおいては,ライン といわれている那珂川においても,図一4の様に0・37〜
川の美観が発泡によって害われるなど,水質汚染が大問 α85ppm含まれていた・季節によってもABS量は異 題となり,1964年:法令により生分解率80%のABSに なり・多い時は1PPrnを越える場合もあった・いずれ 切り替えた。これによってルール地方での下水処理場で の家庭の井戸水中においても,0・5ppm以下であるが の合成洗剤の分解率は1961年2α9%であったのが,ヱ964 ABSは含まれており中には4・73 PPmものABSが含 年55.5%,1965年72%に上昇した。イギリスにおいても まれている例があった。茨城県においては,下水処理施 同年,難分鯖牲のABSの製造が中止になった。アメリ 設が全くなく・使用後の洗剤は地下に浸み込むか・川に カにおいては,1962年,浅井戸の泡立った事件があり, 流れこむため,地下水,河川が汚染される恐れが大き 飲料水のABS混入を0.5ppm以下とする連邦法令が い。その上,水道の普及率も低いので・飲料水として井 定められた。また,1965年,合成洗剤協会が自主的に 戸水を使用している家庭が多く・この問題にっいてはさ
らに検討して,別の機会に報告したいと考えている。 5・湖沼,河川,地下水などの環境汚染の原因となつ もうひとつの水質汚濁の原因としては・合成洗剤の中 ている。
に洗浄効果を上げるために20〜30%加えられている、トリ , ポリリン酸塩がある。琵琶湖のくさい水,瀬戸内海など
参 考 文 献における赤潮の異常発生などはこのリン酸塩に因るもの
である。リン酸塩は肥料となるため,川や湖に流れ込ん 1)富山新一:工化誌68,2029−2034(1965)
で,藻を異常に繁殖させる。その結果・水中の酸素が不 2)今木・・大木幸介・富山新一:洗剤の科学r臥ユ8(ド ォし,魚や生物を死に至らせる,いわゆる富栄養化現象 メス出版)(1970)
を起す。このことは,外国でも問題になっており,アメ 3)小田良平・寺村一広:界面活性剤の合成とその応用 ∪
(1972)リカやカナダでは洗剤の中のリン酸塩含有量を8〜7%
4) 木村鎮,永山升三他:表面,6,767−755(1968)に下げるよう規制している。
5) 矢部章彦,林雅子:被服整理学;染色化学,P.18(1970)この外,魚類に対するABSの毒陛についても多くの ト6) 日本食品衛生協会:中性洗剤と食品衛生P.31(1965)
報告がある。 7)柳沢文徳:公衆衛生,26,365−377(1962)
この様に,ABS系合成洗剤に因る問題は年々大きく 8)柳沢文徳:公衆衛生,26,459_476(1992)
なってきており,アメリカのロングアイランド,サフオ 9)柳沢文徳:公衆衛生,26,569藁581(1962)
一ク郡において・「下水処理にさしつかえる,リン酸塩 10)門奔仁之:洗剤の恐怖(新時代社)(1972)
によって藻類の異常発生を引き起す」などの理由で,合 11)富山新一:油化学,18,89−104 (1969)
成洗剤の販売が条令により禁止された。日本においても 12)藤井徹也:油化学,18,16−−25 (1969)
下水処理施設の普及率が低い・河川が急流であるなどの 13)前掲2)P.76−81
事情でソフト化による効果はほどんと見られないので, 14)柳沢文正:日本洗剤その総点検(績文社)(1973)
「合成洗剤の使用を禁止することが,もっともよい解決 15)前掲6)μ1−8
策である卑られる・ 16)塞欝掌蝋使購設る:欄聞1昭和48)
、 L
S. ま と め 17)井関統裕:生活衛生・9・107−141(1965)
ABS給厳剤の安全駐ら匠は種々蔽がなさ 18)岡原蹴蔵臓雄他:食鰍生15−31(1963)
19)前掲6)p.81
れて・ る・輪文にお・《・各々の意見1二ついて検討し ,。)C、。。1、且H、nel e,。1、αA_Ph。,maceu,、。dl たがいずれの研究においても,ABSは毒性を有すると A、s。q XLIL 48g.495(1953) 1
の結果が見られた。無害であるという主張も,「明きら 21)TW. Tusing、 et al;T。xyco1。gラ&Applied かに有害であることが証明されるまでは使用基準内で使 phamacology,2,464.473(1960)
用しても良い」という結論となっており安全性に対する 22)前掲6)P.85−100
見解の相違に過ぎないことが解った。 23)Freeman・S・et・al;GastroeuteroL 4・332(1945)
ABSの問題点としては次の点が挙げられる。 24)大森義仁・森村司他:食衛試・9・473−480(1968)
1.急性毒性は約29/kgであり,かなり毒性が強い。 25)三上美樹:第9回先天性異常学会発表抄録集(1969)
2.慢憧毒性は,症状としては,下痢,食欲不振,体 26)三上美樹:第13回先天性異常学会発表抄録集(1973)
重の増加の停止が現れる。溶血作用,酵素の阻害,脾臓 27)皮膚障害3人に1人:朝日新聞・昭和48年8月30日
(1973)およびその他の内臓への影響がある。
28)斎藤勲:繊消誌,14,237−239(1973)3ボ催奇形性がある。妊娠ネズミに経口および,経皮 29)前掲14)P.119
的に与えると・仔に外脳症・口蓋裂・などの奇形が現れ 30)前掲 6)P.168−189
る。 31)前掲 6)μ158−167
4・ 人体に入る経路としては野菜果物食器などに残留 32)村上武彦他:油化学,13,217−220(1964)
したり,飲料水などと共に経口的に・また使用中に経皮 33)大沢勇他:油化学,14,635−637 (1965)
的に吸収され,1日100mg以上の摂取が推測される。 34)太田耕右他:油化学,16,360−369(1967)
体内入ったABSは肝臓,脾臓など各種臓器に吸収さ 35)三浦千明他:油化学・17・635−637 れ,7日間くらいで排泄されるが,体内での作用機構は 36)小林勇他:第26回公衆衛生学会
吉 田:合成洗剤の諸問題について(第1報) 145
Studies on the Problems of Synthetic Detergent(1)
_Studies on Toxicity of Sodium−alkyl−benzensωfonates(ABS)
Hiroko YOSHIDA
r
oharmacological actions of alkylbenzensulfonates are as follows;
1 LD 500f ABS for mice are about 2g/kg.
2 Slight effects are observed with respect to growth, food consumpt量on, organ weights. .
3 0ccurrence of congenital malformation, assumed to be originated from ABS admin1stration,
was observed.
Lakes, Rivers and Underground water has been heavily polluted by domestic sewage and industrial waste.