新入生肝機 能異 常者 に於 け る脂肪肝 と 内蔵型脂肪 蓄積 の関係 につ いて
長崎大学保健管理 セ ンター
中 尾 一 彦 大 坪 敬 子 前 田 真 由美 鷺 池 トミ子 湯 川 幸 一 石 井 伸 子
【は じめ に】
大学生 に於 ける肝機能異常 の多 くは肥満 に よる脂肪肝 が原因 と考 え られてい る。 しか し 内蔵型脂肪蓄積 と脂肪肝 に関す る報告 は少 な い。我 々 は,新入生肝機能異常者 を対 象 とし, 脂肪肝 と肥満, 内蔵型脂肪蓄積,血清脂質 ・ 尿酸値 との関係 を検討 した。
【対象 と方法】
平成10年度新入生,男577名,女625名,計 1202名 を対 象 とし,体 脂 肪 率,GOT,GPT, 血清脂質,尿酸値 を測定 した。 その うち肝機 能 異 常 (GPT≧30,GPT≧25か つGPT>
GOT)を示 した121名 中105名 (男75,女30) に 日立EUB‑315を用 いて腹部超音波検査 を 施行 した。肝 内輝度 の上昇,肝 腎 コン トラス ト陽性 を軽度脂肪肝, さ らに肝 深部 エ コーの 減衰,脈管 の不明瞭化 を認 め る もの をその程 度 に よ り中等度〜 高度脂肪肝 とした。 同時 に, 鈴木 らの方法 に よ り,AbdominalWallFat Index (AFI)を測定 した。AFI値,男1.0以 上,女0.7以上 を内臓型脂肪蓄積 とした。体脂 肪率 はイ ンピーダ ンス法 で測定 し,男25%以 上,女30%以上 を肥 満 とした。
【結 果 】
1202名 中121名 (10.0%)に肝機能異常 を認 めた。男性 は女性 よ り有意 に肝機能異常 の頻 度が高 か った。男性89名/577名 (15.4%), 女性32名/625名 (5.1%)P<0.00010
(表 1) に肝機能異常 と肥満 の関係 を示 し た。 これ までの報告 にあ るように肥満者 で は 肥満 のない もの よ り有意 に肝機能異常 の頻度
が高 く,脂肪肝 の存在が示唆 された。
肝機能異常 を示 した121名 中105名,男性75 名,女性30名 に対 して腹部超音 波検査 を施行
した (表2)。 男女 とも70%に脂肪肝 を認 め た。肝深部 エ コーの減衰,脈管 の不明瞭化 な どを伴 う中等度以上 の脂肪肝 を示す者 は男性 に多か った。
腹部超 音 波検 査 を施 行 した105名 の体 脂肪 率 とAFI値 の関係 を (図1)に示 した。男女 共,両者 は有意 な相 関 を示 した。男性 におい て,体 脂肪 率25%以下 でAFI1.0以 上 の肥 満 表1 肥満 と肝機能異常
男性体脂肪率 女性体脂肪率 25%以上 25%未満 30%以上 30%未満 肝機能異常 23/37 66/540 12/97 20/528
の 頻 度 (62%) (12%) (12%) (4%) 璽璽璽『寧■¶ 璽璽『『『『『
P<0.0001 P<0.01
表2 肝機能異常者 にお ける脂肪肝 *p<0.05
男性 女性 合計
75 30 105 正 常 21(28%) 10 (33%)31(30%) 軽度脂肪肝 31(41%) 17(57%)48 (46%) 中等〜高度 23 (31%) 3 (10%)26 (25%)
l l
脂 肪 肝 *
‑117‑
男性 75名
10 20 30 40 体脂肪率
50
図1 脂肪肝 と内臓型脂肪沈着
のない内臓型脂肪蓄積 にあた る者が14例 あ り, 全例脂肪肝 で あった 。 また,腹部超音波正常 例 は,ほとん どが体脂肪率,AFI値 ともに正 常域 に分布 していた 。一方, 中等〜高度脂肪 肝例 の多くは,両者 とも高値域 , いわ ゆる内 臓型肥満を示す領域 に分布 していた 。軽度肥 満例 は正常例 と中等〜高度脂肪
肝例 のほぼ中間 の分布 を示 した。
内臓型脂肪蓄積 と脂肪肝 の関 係 を見 て み る と,AF1億
1.0(0.7)以上 の者は,それ未
満 の者に比 べて有意 に脂肪肝 の 頻度 が高か った (表 3)。肥満 と 脂 肪 肝の関 係 も同様 の結 果 で あった(表4)。脂肪肝 の程度別 に検討すると,中等〜高度脂肪 肝例 はAFI値1.0以上 の男性, ない し,肥満者 において対照者 よ り有意に頻度 が高か った 。 一 方,軽度脂肪 肝 例 はAF1億 1.0(0.7)以上 の者 で はそれ未 満 の者に比 べ有意差 を示 したが, 肥満者,非肥満者 間で は有意差 が無 か った。 つ ま り, 図1の分 布 で も解 るように軽度脂肪肝例 の多 くの肥 満 を伴 っていない と 考 え られた。 この ことか ら,初 期段 階 の脂肪肝 は内臓型脂肪蓄
女性 30名
10 20 30 40 50 体脂肪率
(AFI値 ) な らび に体脂肪率 との関係
積 と関連 してい る こ とが示唆 された。 そ こで 内臓 型脂肪蓄積 ない し肥満 と脂肪肝 の関係 を みたのが (表5) で あ る。 内臓 型脂肪蓄積 と 肥 満 の いずれか を示 す例 は両者正 常例 に比 べ,
それ ぞれ単独 の比較 よ りも, さ らに脂肪肝 の 頻度 が高 くな った。
表 3 内臓型脂 肪蓄積と 脂 肪肝
AFⅠ 男性 (75名) 女性 (30名)
超音波 0.1以上 1.0未満 0.7以上 0.7未満
正 常 …[1 * 20 ・[2 N 8 脂 肪 肝 *28
l l *
*** 26 1l l3 *S 7軽 度 20 6
表 4 肥 満 と脂 肪肝
A F Ⅰ
男性 (75名) 女性 (̲30名)超 音 波
25%以上 25%未満 30%以上 30%未満正 常 * 1 * 20 1 9
脂 肪 肝
軽 度 ・[
1
3S8
N** 3628 ・[17. g
* 1100表 5 内蔵型脂 肪蓄積な い し肥満 と脂 肪 肝
AFⅠ
体脂肪率 男性 (75名) 女性 (30名 ) 1.0以上 1.0未満 0.7以上 0.7未満
or and or and 25%以上 25%未満 30%以上 30%未満
脂の 頻肪 肝度 3(2/3397%)l 22/4(52%)l2 1(4/182%)l7 (6/146%)l3
‑ 118‑
*P<0.05
…p<o・01
*
*P<0.001
*
次 に脂肪肝 の程度 と血清 のGPT値,脂質 値,尿酸値 との関係 を検討 した。 中等度以上 の脂肪肝例 は正常,軽度脂肪肝例 に比べて有 意 に高 いGPT値 を示 した (図2)。 しか し, 超音波正常例 と軽度脂肪肝例 の間 に,GPT値
の差 は認 め られなかった。 また,中性脂肪値, 尿酸値 も中等度以上 の脂肪肝例 では他 の2群
に比 べ て明 らか に高値 を示 し,HDLコレス テロール値 は低値 を示 した (図3)。 血清総 コ レステロール値 も有意差 は認 めない ものの, 高 い傾 向 にあった。 中等度以上 の脂肪肝例 に おいて,血清脂質,尿酸値が高 くなるのは, これ らの例 の多 くが内蔵型肥満 を伴 ってい る ことと関連 してい る と考 えられた。 しか し, 超音波正常例,軽度脂肪肝例 の間 には全 く値
の差 を認 めなか った。
同様 の検討 を血清脂質,尿酸値異常 の頻度 でみた ものを (表 6)に示 した。HDLコレス テロール は異常値 を示 した例が1例 しかな く
この検討か らはず した。中等度〜高度脂肪肝
総コレステロール HDLコレステロール NS
300
250
200
150
100
50
NS 120
1■■■■■■■
0088凸口凸U凸U0
0O日日ロ日日aRロuHR六uRY
OHUCD(︻H‖HDQ
AU
正 常 軽度 中等
〜高度
000864
○
■■**■1‑
0 0
8(‖Hnd日出URU‖0
0(︾(HH︼UHUnロRn甘口9
8凸日日RHHXuY‖
正 常 軽度 中等
〜高度
00
5 0 2 2 000505r■lrl
00000505211‑/nlld9「「* 0 0 0
■■■■■■NS ■
」「〜.〇〇日
」「〇百
」 「 08H口 uR
U 0100.<P*正常 軽度 中等度〜高度
脂肪肝 脂肪肝
図2 血清GPT値 と脂肪肝 の程度
例 では,正常者,軽度脂肪肝例, な らびに新 入生全例 と比較 して中性脂肪,尿酸値異常の 頻度が有意 に高かった。また,総 コレステロー ル も新 入生全例 に比 べ る と異常 の頻 度 が高 かった。 これ らの結果か ら中等度〜高度脂肪 肝者 は血清脂質異常,尿酸値異常 な どの代謝 異常 を伴 いやす く, よ り厳重 な健康指導が必 要 と考 え られた。
中性脂肪 NS
■■■ii面○
●
●●{●
●三●正常 軽度 中等
〜高度
図3 血清脂質,尿酸値 と脂肪肝
【考 察】
新入生健康診 断の10%に肝機能異常者 を認 め,腹部超音波検査 の結果, その70%は脂肪 肝 による肝機能異常 と考 えられた。 しか し,
8
6
4 0aU目白Y(UaロuYaRHuUO白Uロ(一RHHMロ白日ロロ OAU白U‖cm人口UQU
正常 軽度 中等
〜高度 辛p‑0.001 **p‑0.0001
残 り30%の超音波正常例 は,肥満や内蔵型脂 肪沈着 もみ られず,肝機能異常 の原因 につい
ては, さらなる検討が必要 と思われ る。 また, 今 回は肝機能異常者 を対照 として腹部超音波
‑ 1 1 9 ‑
表6 血清脂質,尿酸値異常 と脂肪肝
腹部超音波施行 105例 新入生全例1202例 正常31名 軽脂肪肝48度名 脂肪肝中等〜高度26名
総 コレステ中 性 脂 肪tj ‑ }t/
尿 酸 41((13.2.25%)9%) 3(6.3%)** 5(19.l2%)*****
l 72(6.0%)
***
I 1(2.1%)**
Il 8(30.l8%)****
10(38.4%) 67(5.l6%) l
2(6.5%) 3(6.3%)**
検査 を施行 したが,肥満者 のなか には肝機能 異常 を示 さない例 もあることか ら,脂肪肝 が あって も肝機能異常 を伴 わない例が存在 す る ことが予想 され る。 脂肪肝 と肝機能異常 を考 える上 で, これ らの検討 も必要 と思われ る。
今 回の検討で,肥満がな く, 内蔵型脂肪蓄 積 を示す例が男性 に多 く存在 し, これ ら全例 が脂肪肝 を示 した ことによ り,男性 において, 内臓型脂肪蓄積 は脂肪肝 の成立 に密接 に関与
していることが示唆 された。 また中等度以上 の脂肪肝 を示す例 は血清脂質,尿酸値異常 の 頻度 が有意 に高 く,成人病発症 のHighRisk
グループ として とらえる必要が ある と考 え ら れた。
【結 語】
1。 内臓型脂肪蓄積 は脂肪肝 の成因の一 つ と 考 えられ る。
2。 中等度以上 の脂肪肝 を示す者 は血清脂質, 尿酸値異常 を来 しやすい。
* P<0.05 ***P<0.001
**P<0.01 ****P<0.0001
【参考文献】
1.Suzuki,R.,Watanabe,S.,et al.:
AbdominalWallFatIndex,Estimated byUltrasonography,forAssessmentof theRatioofVisceralFattoSubcutane‑
ousFatintheAbdomen.
Am.J.Med.,95,309‑314,1993
2。Mahmood,S.,Taketa,K.,et al.:
Associationoffattyliverwithincreased ratioofvisceraltosubcutaneous
adipose tissue in odese men. Acta Med.Okayama,52,225‑31,1998
3.Takahashi,S.,YamamotoT.,etal.:
Closecorrelation between visceralfat accumulationanduricacidmetabolism.
Metabolism,46,1162‑1165,1997
4.戸島恭一郎,戸 田剛太郎 他 :肥満 にみ られ る各種病態 と合併症,肝 障害, 日本臨 床,53,(1995年特別号),p354‑358,1995 5.湯川幸一,石井伸子 他 :皮脂厚法 とイ
ンピーダ ンス法 による学生 の体脂肪率の比 較。第34回全国大学保健管理研究集会報告 書 ,340‑342, 1996
(本論文 の要 旨は第36回全 国大学保健管理研 究集会 で発表 した。)
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