超音波_頸部表紙.indd
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(2) 目 次 日本超音波医学会超音波診断講習会の開催にあたって ……………………………………………………… 2 超音波診断講習会開催要項 ……………………………………………………………………………… 3 超音波診断講習会スケジュール ………………………………………………………………………… 4 超音波診断講習会抄録 甲状腺のびまん性病変 …………………………………………………………………………… 5 村上 司 (野口病院内科) 甲状腺の結節病変 ………………………………………………………………………………… 9 福島俊彦 (福島県立医科大学甲状腺内分泌学講座) 甲状腺の血流評価と組織弾性評価 ………………………………………………………………13 鈴木眞一 (福島県立医科大学甲状腺内分泌学講座) 頸部リンパ節の超音波診断 ………………………………………………………………………19 尾本きよか(自治医科大学附属さいたま医療センター総合医学第1講座(臨床検査部)) 甲状腺健診(検診)における精査基準 ……………………………………………………………23 志村浩己 (福島県立医科大学臨床検査医学) 福島県民健康調査甲状腺検査 ……………………………………………………………………27 鈴木 悟 (福島県立医科大学甲状腺内分泌学講座) 甲状腺の吸引細胞診 ………………………………………………………………………………35 佐々木栄司(伊藤病院診療技術部臨床検査科).
(3) 超音波診断講習会(頸部)の開催にあたって. 甲状腺を含めた頸部の超音波診断は、最近さらにその臨床的重要度を増してきています。 福島第一原発事故後の福島県民健康調査の一環として、当時 18 歳以下であった全県民を対 象とした甲状腺超音波スクリーニングは第1回がほぼ終了し、2順目に入りつつあります。 そのため依然として甲状腺癌の有病率についても国民の強い関心を集めています。 また、頸動脈エコー、PET、CTscanをはじめとする他の目的で行われる画像診断の普及に 伴い、偶発的に甲状腺内の限局性病変が検出されることが多くなり、その結果として、臨 床的には精査を必要としない症例まで専門医療機関に紹介される事例が多発し、関係者の 困惑を生んでいるのが現状であります。従って、限られたリソースを有効に活用し、受診 者の不安を理解しつつ、本来必要とされる医療の供給に支障をきたさないために検出病変 を精査対象とすべきか否かの判断がより重要となってきています。 本講習会では、甲状腺結節の超音波診断基準の解説と共に、検診時の所見の取り方とそ の後の対応に対する指針や、現在、新しい診断基準に取り入れるべく検討されている血流 評価と弾性評価を含めて、受講者にわかりやすい研修を行い、さらに頸部リンパ節のみか た及び甲状腺細胞診と病理所見についても解説致しますので、受講生の皆様の明日からの 診療に役立つ実践的な講習会になると確信しております。. 一般社団法人日本超音波医学会 教育委員会 超音波診断講習会(頸部) 当番世話人. 貴田岡正史 鈴木眞一.
(4) 一般社団法人日本超音波医学会 「超音波診断講習会(頸部)」 開催要項 日. 時. :平成27年11月8日(日). 9:25~16:05. 会. 場. :福島県文化センター. 主. 催. :一般社団法人日本超音波医学会. 3F「展示室」. (福島県福島市). 参加者への単位認定: 日本超音波医学会超音波専門医、超音波工学フェロー、及び超音波検 査士には、本講習会の全ての講義を受講した者に限り、講習会終了後 に受講修了証明書を発行し、資格更新に必要な以下の単位を付与する ものとする。 超音波専門医 超音波工学フェロー 超音波検査士. 10単位 10単位 5単位. 【問い合わせ先】 一般社団法人日本超音波医学会. 「超音波診断講習会」係 宛 〒101-0063 東京都千代田区神田淡路町2-23-1 お茶の水センタービル6F TEL:03-6380-3711 FAX:03-5297-3744 mail:[email protected].
(5) プログラム 9:25~9:30 開講の挨拶 世話人:貴田岡正史(公立昭和病院内分泌代謝科) 9:30~9:40 Over view 講師:貴田岡正史(公立昭和病院内分泌・代謝内科) 9:40~10:30 甲状腺のびまん性病変 座長:貴田岡正史(公立昭和病院内分泌・代謝内科) 講師:村上 司 (野口病院内科) 10:30~11:20 甲状腺の結節病変 座長:村上 司 講師:福島俊彦. (野口病院内科) (福島県立医科大学甲状腺内分泌学講座). 11:20~12:10 甲状腺の血流評価と組織弾性評価 座長:福島俊彦 (福島県立医科大学甲状腺内分泌学講座) 講師:鈴木眞一 (福島県立医科大学甲状腺内分泌学講座) 13:00~13:50 頸部リンパ節の超音波診断 座長:鈴木眞一 (福島県立医科大学甲状腺内分泌学講座) 講師:尾本きよか(自治医科大学附属さいたま医療センター総合医学第1講座(臨床検査部)) 13:50~14:30 甲状腺健診(検診)における精査基準 座長:尾本きよか(自治医科大学附属さいたま医療センター総合医学第1講座(臨床検査部)) 講師:志村浩己 (福島県立医科大学臨床検査医学) 14:30~15:10 福島県民健康調査甲状腺検査 座長:志村浩己 (福島県立医科大学臨床検査医学) 講師:鈴木 悟 (福島県立医科大学甲状腺内分泌学講座) 15:10~16:00 甲状腺の吸引細胞診 座長:鈴木 悟 (福島県立医科大学甲状腺内分泌学講座) 講師:佐々木栄司(伊藤病院診療技術部臨床検査科) 16:00~16:05 開講の挨拶 世話人:鈴木眞一. (福島県立医科大学医学部附属病院甲状腺内分泌学講座 ).
(6) 甲状腺のびまん性病変 野口病院 内科. 村上 司. 結節性甲状腺腫の存在診断、質的診断に超音波検査が必須であることは言うまで もないが、甲状腺に結節を触れなくてもびまん性甲状腺腫を認める場合や甲状腺の 異常を疑った場合にはすべて超音波検査の適応である。 びまん性に甲状腺が腫大する橋本病(慢性甲状腺炎)、バセドウ病においては、甲 状腺腫の大きさの評価や結節性病変合併の有無を診断するのに超音波検査が必要 である。また、内部エコーから組織変化の程度を推測することもある程度可能である し、血流の評価が甲状腺中毒症の鑑別診断に有用なことがある。亜急性甲状腺炎は 特徴的な臨床所見と超音波所見から容易に診断できることが多い。 最後に急性化膿性甲状腺炎とびまん性甲状腺腫をきたす可能性のある悪性腫瘍も 紹介する。. 1. 橋本病(慢性甲状腺炎) 橋本病は臓器特異的自己免疫疾患のひとつで女性に好発する。甲状腺内にリンパ 球浸潤、線維化および濾胞構造の破壊がみられるが、組織学的変化の程度は症例 によりさまざまである。橋本病の診断には抗サイログロブリン抗体、抗 TPO 抗体のい ずれかが陽性であることを確認するか、細胞診または病理検査で甲状腺内のリンパ 球浸潤を証明する必要がある。さらに甲状腺ホルモン、TSH、抗 TSH 受容体抗体の 測定などによってバセドウ病を除外する必要がある。超音波検査だけでは橋本病と バセドウ病の鑑別はできない。 橋本病の超音波所見の特徴は、びまん性甲状腺腫、甲状腺表面の不整、内部が 低エコーで不均質なことである(図 1)。しかし、その程度は症例によりさまざまである。. ─5─.
(7) 甲状腺機能低下症を示す症例の中には甲状腺が萎縮している場合がある。このよう な症例に超音波検査を行うと、甲状腺内部が低エコー不均質な場合とほとんど正常 と変わらない内部エコーを示す場合がある。前者は橋本病のために組織破壊が進ん で甲状腺組織が萎縮したものであるが、後者の場合は阻害型抗 TSH 受容体抗体に よる可能性を考える必要がある。また、橋本病にまれに合併する悪性リンパ腫を見落 としてはいけない。. 図1. 橋本病の超音波像. 甲状腺の表面は不整、内部は低エコーでびまん性に腫大 している。. 2. バセドウ病 甲状腺中毒症状、びまん性甲状腺腫、特有の眼症状を3主徴とするバセドウ病も女 性により高頻度に発症する自己免疫疾患である。診断は甲状腺ホルモン高値、TSH 抑制、抗 TSH 受容体抗体陽性、放射性ヨウ素摂取率高値などによる。超音波検査は 診断そのものに必須ではないが、ドプラで甲状腺内に血流増加を認める場合は破壊 性甲状腺中毒症を除外する根拠になる場合がある。ただしバセドウ病の全例で血流 増加がみられるわけではなく、破壊性甲状腺中毒症でも軽度の血流増加はありえる ことに注意を要する。 バセドウ病の超音波所見は橋本病に共通する所見が多いが、甲状腺腫の大きさの 評価と結節合併の有無を診断することが超音波検査の目的である。. ─6─.
(8) 3. 無痛性甲状腺炎 無痛性甲状腺炎はバセドウ病との鑑別に注意を要する疾患である。バセドウ病との 鑑別には抗 TSH 受容体抗体が陰性であること、眼症状がないことが参考になるが、 確定診断のためには放射性ヨウ素摂取率の抑制を確認する必要がある。 超音波検査では軽度のびまん性甲状腺腫を認めることが多く、内部エコーは不均 質でやや低エコーを示す。急性期を過ぎればエコーレベルが正常に回復することが ある。甲状腺内の血流は正常かまたは軽度の増加にとどまる。. 4. 亜急性甲状腺炎 可逆性の破壊性甲状腺中毒症にあわせて甲状腺の圧痛を伴う腫大、発熱を伴う疾 患である。甲状腺に痛みを伴う疾患は多くはないので急性期に特徴的な臨床所見が そろっていれば診断は容易である。超音波検査では甲状腺はびまん性に腫大し圧痛 を示す部に一致して境界不明瞭な低エコー域を認める(図 2)。甲状腺の一部に限局 する場合と両葉に散在する場合とがある。また経過中にこの低エコー域が移動するこ と(creeping 現象)が特徴である。痛みや発熱、CRP や甲状腺機能の異常が改善した 後まで低エコー域が残ることが多い。急性期を過ぎて受診した症例では、触診で硬く 触れ、超音波で低エコー結節として認められることがあるので乳頭癌との鑑別が必要 である。. 図2. 亜急性甲状腺炎の超音波像. 甲状腺右葉はびまん性に腫大し境界不明瞭な低エコー域 が描出される。. ─7─.
(9) 5. 急性化膿性甲状腺炎 遺残した下咽頭梨状窩瘻からの細菌感染による甲状腺周囲の炎症である。大部分 は小児期に発症し、適切な治療が行わなければ再発を繰り返す可能性がある。左側 に圧倒的に多く、前頚部の腫脹、疼痛、皮膚の発赤や熱感をきたす。白血球増多、血 沈亢進、CRP 陽性を示し、超音波では甲状腺周囲の不均質な低エコー域を認める。 このため患側甲状腺片葉の輪郭が描出できなくなる。. 6. びまん性甲状腺腫を呈する悪性腫瘍 甲状腺に原発する悪性リンパ腫はびまん性に病巣が広がる場合と結節様に限局し た病変を示す場合とがある。基礎に橋本病を有するので悪性リンパ腫が甲状腺内の 一部にとどまる場合でもびまん性甲状腺腫は認めるが、超音波では悪性リンパ腫の 病変は周囲甲状腺に比べ低エコーに描出される。限局した病巣であれば周囲との対 比で診断は比較的容易であるが、これが甲状腺全体に広がると橋本病との鑑別が困 難になる。 甲状腺乳頭癌の特殊型のひとつであるびまん性硬化型乳頭癌は、乳頭癌が甲状 腺内のリンパ流を介して甲状腺内にびまん性に広がる病態である。超音波ではびま ん性甲状腺腫とびまん性にひろがる多数の微細点状高エコーが特徴的な所見である (図 3)。触診では橋本病と紛らわしく、抗甲状腺自己抗体が陽性になるので超音波検 査、穿刺吸引細胞診をしないと診断を誤ることになる。比較的若い女性に好発する。. 図3. びまん性硬化型乳頭癌の超音波像. 甲状腺全体に多数の微細点状高エコーが描出される。. ─8─.
(10) 甲状腺の結節性病変 福島県立医科大学甲状腺内分泌学講座. 福島俊彦. 最近、頸動脈エコー、CT、MRI、FDG-PET/CT など各種画像検査の普及に伴い、甲状腺 結節が偶発的に発見される機会が増え、その精査のため専門外来を訪れる患者も多い。精 査の場合、他のモダリティに比べ、安価、簡便、低侵襲、空間分解能が高い、得られる情 報量が多いなどの利点から、超音波検査が推奨されており、甲状腺超音波検査の重要性が 益々高くなってきている。本稿では、日常臨床上遭遇する頻度が高い甲状腺結節性病変に ついて概説し、甲状腺結節の超音波診断基準に則した各種病変の主にBモード所見につい て解説する。 1. 嚢胞、腺腫様結節、腺腫様甲状腺腫 実臨床上、超音波検査で高頻度に認められる結節性病変は嚢胞、腺腫様結節、腺腫様甲 状腺腫である。腺腫様甲状腺腫とは、甲状腺が非腫瘍性に結節性に増殖し増大する多発 性病変と定義されており、出血、嚢胞変性(形成)、石灰化、線維化、硝子化などの 2 次的な変化を伴う。結節が数個までで甲状腺腫大を伴わないものは腺腫様結節と呼ばれ る。 a. 腺腫様甲状腺腫、腺腫様結節の超音波所見 形状は整で円形ないし楕円形、境界明瞭、平滑、内部エコーは先述した 2 次的変化 を反映し、低から高エコーまで多彩であり、不均質な場合も少なくない。境界部低 エコーは認めない。 b. 嚢胞の超音波所見 形状整、円形、楕円形、境界明瞭、内部は無エコーであることが多いが、網状、点 状多重高エコースポット(コメットサイン図1)を認めることもある。後方エコー が増強する。 2. 濾胞腺腫 濾胞上皮由来の良性腫瘍であり、実臨床上は濾胞癌との鑑別が問題となる。超音波所見 は、形状整、円形ないし楕円形、境界明瞭、平滑、内部エコーは等から低で均質、微細 高エコーは認めず、境界部低エコーを認め、整である。濾胞癌、特に微小浸潤型につい ては、Bモードのみでは鑑別が困難であるが、血流評価、組織弾性評価を加味すること により、より詳細な解析が可能となってきた(次稿参照)。濾胞腺腫では、腫瘍辺縁中 心の血流パターンが特徴である。 3. 乳頭癌 組織診断は、その特徴的な核所見;核溝、核内細胞質封入体、微細顆粒状クロマチン によってなされる。甲状腺癌取り扱い規約による分類では、濾胞型乳頭癌、被包型乳頭 癌、大細胞型乳頭癌、好酸性細胞型乳頭癌、びまん性硬化型乳頭癌、高細胞型乳頭癌、. ─9─.
(11) 篩(・モルラ)型乳頭癌が亜型として記載されている。 超音波所見は、形状不整、境界不明瞭、粗雑、内部エコーは低、不均質、微細多発点 状エコーを伴い、境界部低エコーなない。組織弾性評価では、硬く描出される。また、 喉頭前、気管前、気管傍、深頚リンパ節の転移が描出されることも多く、参考になる(リ ンパ節の稿を参照)。 a. 濾胞型は組織学的には、乳頭癌の各所見を呈するが、乳頭状構造を示さず、濾胞 状構造からなる。超音波所見は、典型的乳頭癌の所見から、被包型乳頭癌の所見 まで様々である。 b. 被包型は、組織学的に、全周性に線維性被膜を有しており、超音波所見は濾胞性 腫瘍に類似しており、鑑別診断が問題となる。内部に嚢胞形成を呈することが多 い。 c. びまん性硬化型は、甲状腺内に明らかな腫瘤を認めず、腫瘍細胞のびまん性浸潤、 リンパ管の腫瘍栓、砂粒小体、著明なリンパ節転移、若年者に多い、橋本秒病の 併存を特徴とする。超音波所見では、微細多発高エコースポットが片葉から全体 に多発し、甲状腺実質のエコーレベルがやや低く、不均質であることが多い。 d. 篩(・モルラ)型は、被包型乳頭癌と類似の超音波所見を呈する。若年女性に多 く、リンパ節転移を認めない。家族性大腸腺腫症(FAP)の一部分症としても知 られており、詳細な家族歴聴取が重要である。 4. 濾胞癌 組織診断は、浸潤所見:脈管侵襲像、被膜浸潤像によってなされる。あるいは肺、骨 などの遠隔転移を認めた場合に、臨床診断がなされる。 微小浸潤型と広範囲浸潤型に 分類されるが、微小浸潤型濾胞癌と濾胞腺腫の術前鑑別診断は困難である。 濾胞癌を疑うべき超音波所見として、①. 内部エコーが低く、不均質であること、②境. 界部低エコー帯の消失あるいは不整、③結節サイズが大きいことが知られている。すな わち、実臨床上は、良性の濾胞性腫瘍の第 1 印象でも、特に結節サイズが大きい場合は、 超音波診断基準に則して、注意深く観察することが重要である。 血流パターンは、内部優位で、貫通血管を認める。組織弾性評価では、硬く描出される ことが多い(次稿参照) 。 5. 髄様癌 C 細胞を発生母地とする甲状腺癌で、腫瘍細胞からのカルシトニンの分泌を免疫組織 学的に証明することで診断される。超音波所見は、形状整ないし不整、円形~楕円形、 内部エコーは低で、微細から粗大高エコー(典型的には牡丹雪状)を伴う。甲状腺中部 より頭側、特に頭側 1/3 部分に発生し、両側病変の場合は、多発性内分泌腫瘍症 2 型 の併存を想起した精査が必要となる。 6. 未分化癌 急速に増大する頚部腫瘤で、圧排、浸潤に伴う臨床症状を呈する。超音波所見は、腫. ─ 10 ─.
(12) 瘤が大きいことが多く、全体の形状を評価することは困難であることが多い。特徴とし ては、内部エコー不均質、高濃度の非定型石灰化、びまん性低エコーリンパ節の壊死像、 周囲への浸潤などがある。. 超音波診断の基本は、B モード所見であり、甲状腺結節超音波診断基準に則した、観察、所 見記載が、正確な診断の近道である。. ─ 11 ─.
(13) (memo).
(14) 甲状腺の血流評価と組織弾性評価、とくに結節性病変について 福島県立医科大学 甲状腺内分泌学講座 鈴木眞一. 1.. はじめに 甲状腺超音波検査では B モード画像が基本である。B モード自体の画像の解像度の進歩 により、かなりの診断が可能になった。とくに結節においては日本超音波医学会甲状腺 結節(腫瘤)超音波診断基準に基づく診断が2011年に改訂され普及している(図1)。 しかしこの基準は B モードによるものであり、最近の超音波機器には、カラードプラ法 は大半の機器に装着され、また組織弾性評価に関しても10年前に比べるとその進歩は 著しく日常での使用がなされている。カラードプラ法による血流評価と組織弾性評価に ついて解説する。. 2.. 血流評価 (カラードプラ法) 結節の診断において血流評価の目的は二つある。一つは機能性結節の診断であり、も う一つは良悪性の鑑別診断である。前者は結節内血流の増加から、血液検査で TSH、 FT3、FT4ないし99mTc、131I シンチグラフィにて診断を行う。後者はとくに結節内 の血流分布、血流の多寡(図 1、2)や血流解析(FFT 解析:PI、RI)を測定して良悪 性の鑑別を行う。良悪性の鑑別、とくに濾胞性腫瘍(腺腫様結節も含む)の鑑別が重 要となる。血流の分布では内部や内部及び周辺への血流が多い場合、悪性を疑う。と くに内部に貫通する血管を認める場合に悪性とくに濾胞がんを疑うことが多い。甲状 腺超音波ガイドブックの改訂2版の診断の進め方にも、10−20ミリの充実性病変に おいて、上記診断基準の全てが悪性所見を認めない場合でもカラードプラ法で結節内 の血流(貫通血管)を認めた場合、穿刺吸引細胞診を行うとしている。これは B モー ドで良性に見えても、濾胞がんや濾胞型乳頭がんがあり、とくに細胞診が後者を鑑別 するのに有用なためである。乳頭がんの場合、石灰化や間質の増生から必ずしも血流 増加を認めない場合もある。嚢胞内結節の充実部分の血流の増加は嚢胞内乳頭がんを 疑う。 また、血流の多寡については定性分類であり、FFT 解析などで良悪性を鑑別すること も多い。しかし、これらの評価は現時点では、多くの文献で腫瘍内部の血流の増加は 悪性を疑う一つの因子とはなっており、あくまでも悪性を疑う感度は増加するが、い. ─ 13 ─.
(15) まだ特異度は十分ではない。 各機器の血流評価を行う場合の機器設定の標準化は今の所不十分であるが本稿で は現行でできる標準化を示したい。. 3.. 組織弾性評価. 甲状腺領域に組織弾性評価法(Elasticity Imaging、EI)が最初に使用されるようになり 10 年以上を経た。触診は術者の習熟度に依存することが多く、一定の診断を得るには困難であっ たが、本法の開発で触診に変わる硬さの評価が超音波施行時に可能になることが期待されてい る。外部からの圧迫などによる歪みを指標とする static elastography の一つである Real-time tissue elastographyTM. (RTE, 日 立 ア ロ カ ) が 最 初 に 開 発 さ れ 、 そ の 後 多 く の static. elastography が開発されてきている。 しかし、これもまた術者依存性の部分があり、 新たに shear wave speed を用いた EI も開発され、客観的定量性にも期待が寄せられている。甲状腺でのこれ らの EI について述べる。 1). 分類(表2). エラストグラフィの分類表2に示す。多くは用手圧迫を行う static elastography と音響 圧迫 (ARFI excitation)を用いるものに大別される。. 2)static elastography 多くの場合用手圧迫によるものであるが、RTE が最初に開発され普及度は高い。定性反応と して、硬さ、歪みを4つの Grade に分類している。Grade1 は結節の大半が歪むもの、 Grade 2 は一部が歪まないもの、 Grade 3 は結節の大半が歪まず、一部のみが歪むもの、 Grade 4 は 大半が歪まないものとしている(図4)。Grade が高いほど歪まないすなわち、硬い結節とな る。良性結節は Grade1、 2 が多く、悪性の大半は Grade 3、4 となる。定性反応だけでなく 図5に示すような、他部位を対照とした半定量法では Strain ratio (SR)として求められるが、 SR が 0.4 未満で悪性を疑う。本法は甲状腺濾胞腺腫と濾胞がんの鑑別に血流情報よりも特異 度が高く有用である。前項の血流情報で機能性結節も悪性結節も血流が豊富であるが、その 場でエラストを追加すると、Grade 1, 2, SR>0.4 であれば機能性結節を、Grade3,4、SR<0.4 であれば悪性結節を疑うことがリアルタイムな鑑別が可能となる。. 3). ARFI excitation. ARFI、shear wave speed を用いたエラストグラフィには表3に示すものがある。機器依存性 が高く未だ標準化はされていない。それぞれ良悪性を比較すると差は出るものの RTE を超え るものではない。再現性の高さを期待して開発されているが、得られているデータは依然と. ─ 14 ─.
(16) してそれぞれの測定者によって異なり未だ相対的であり、本法でのアーチファクトを十分に 把握し改良する必要が有る。. 4.. おわりに. 血流情報も組織弾性評価も現実の診療に使用されているが、いまだ標準化されていなが その中で、これらの情報を B モードに上乗せすることでさらなる精度向上が期待される。. ─ 15 ─.
(17) 図1 辺縁型. – 日本超音波医学会編. (辺縁のみに認めるもの). 甲状腺結節(腫瘤)超音波診断基準. 内部型 (腫瘤内部に認めるもの). 混合型 (辺縁・内部両者に認めるもの). 図1 ドプラ法血流分布パターン. Grade1. Grade2. (血流をほとんど認めないもの). (中間). 表2 エラストグラフィの分類. Grade3 (血流の豊富なもの). Measured physical quality method. Excitation method. PTC. AG. AFTN. 図3 ドプラ法血流Grade. Strain or Displacement. Shear wave speed. Strain Imaging. Shear wave imaging. Manual compression*. Strain elastography. Acoustic radiation force impulse excitation. ARFI imaging. *;Palpation, Cardiovascular pulsation, Respiration. (血流の多寡). ─ 16 ─. Point shear wave elastography.
(18) Soft (elastic) 胸鎖乳突筋 のStrain 腫瘍の Strain. Grade1 FFA FA. Hard (no strain). Grade 3. FTC. Grade 1:Strain (+++). Strain Ratio (SR)= 腫瘍のStrain / 胸鎖乳突筋のStrain. 2:Strain (++). 悪性. 3:Strain (+). Grade 2. FA. 4:Strain (-). Grade 4. PTC. 図5 エラストグラフィにおける半定量反応. 鈴木眞一、他.外科 68: 745-753,2006、鈴木眞一,MEDIX53:4-7,2010鈴木木眞一、臨床画像 27:92-97,2011. 図4 Grading of RTE. 表3 ARFI、shear wave speedを用いたエラストグラフィ ARFI imaging. Virtual TouchTM imaging (VTI) (Siemens). Acoustic radiation force impulse (ARFI) excitation. SR,<0.4. Point shear wave elastography Virtual TouchTM Quantification (VTQ) (Siemens) ElastPQTM (Phillips) Shearwave Elastography (Shear wave speed imaging) Shear wave TM Elastography SWE (Supersonic Imaging) Virtual TouchTM Image Quantification (VTIQ/ARFI ) (Siemens). 用手圧迫(Manual compression) vs 音響圧迫 (ARFI excitation). ─ 17 ─.
(19) (memo).
(20) 超音波診断講習会(頸部). 『頸部リンパ節の超音波診断』. 自治医科大学附属さいたま医療センター. 臨床検査部. 尾本きよか. 1. リンパ節の役目と解剖 人間には頸部、腋窩、鼡径部、腹腔内ほか総計 500 個以上のリンパ節が存在する。 正常なリンパ節の多くは扁平な卵形を呈しており、一側の中央部はやや陥凹してリ ンパ門となり、動脈が流入し、静脈が流出していく。 リンパ節は異物の侵入を防ぐ重要な臓器であるが、組織に侵入した抗原はまず毛細 リンパ管に入り、リンパ流にのって末梢からリンパ本管や胸管へと向かう。このリン パ管の途中にあるのがリンパ節 lymph node(LN)で、リンパ液とともに流れてきた抗 原を捕捉し、抗体産生や細胞性免疫などの免疫応答を担っている。 リンパ流はまずリンパ節の皮質から注ぎ込み、輸入リンパ管を経由して辺縁洞に入 る。さらに皮質洞、髄洞を経て輸出リンパ管から流出していく。. 2.正常リンパ節の超音波画像 正常リンパ節は、楕円形の形状で、境界明瞭、内部はほぼ均一、皮質のエコーレベ ルは低く、リンパ門や髄質は高エコーであることがある。カラードプラ法では、複数 の小血管(動脈等)がリンパ門から皮質に向かって分布しているのが観察される。. ─ 19 ─.
(21) 3.リンパ節の名称 頭頸部癌取り扱い規約や甲状腺癌取り扱い規約などのリンパ節区分を参照. 4.超音波所見のチェック項目 ① ② ③ ④ ⑤ ⑥. 形状、大きさ 個数、左右の対称性 内部エコー(エコーレベル)、リンパ門構造物(高エコー域) 血流の有無、分布 分布・形態:孤立性、数珠状、癒合、周囲組織への浸潤 特異的所見:点状高エコー(微細石灰化)、無エコー域(嚢胞変性) ⇒原発巣検索. ≪各論≫ 1.非特異的リンパ節炎 non-specific lymphadenitis 口腔、咽頭や頸部の何らかの炎症性刺激が原因で、反応性にリンパ節が腫大するも ので、病理学的にはリンパ濾胞の腫大・増生が著明となる。臨床的には軽度の圧痛を 伴い、ウイルス等の全身性感染症に伴うことが多い。SLE などの膠原病においても 非特異的反応による頸部や腋窩リンパ節の腫大をみることがあるが、その場合は両側 対称性である。. ─ 20 ─.
(22) ≪超音波像≫楕円形の形状やリンパ門の高エコー域などの構造は維持され、カラー ドプラでは血流が明瞭、豊富に観察される。 2.急性化膿性頸部リンパ節炎 acute suppurative lymphadenitis 頸部の感染性リンパ節炎の多くは、口腔、咽頭の粘膜や頭頸部の皮膚などに一次感 染が原因でおこり、起因菌としては化膿連鎖球菌や黄色ブドウ球菌などがあり、リン パ節は疼痛を伴って腫脹する。 ≪超音波像≫腫大したリンパ節に圧痛を認め、内部に無エコー域(膿瘍形成)を 認める。 3.結核性リンパ節炎 tuberculous lymphadenitis ヒト型結核菌が気管・気管支より侵入し、肺内に初期感染巣を形成し、次いで所属 リンパ節へと病変を生じる。臨床上結核性リンパ節炎として重要なものは頸部リンパ 節結核あり、肺外結核の約 70%は頸部に出現する。病理学的には乾酪壊死や肉芽・ 線維化・硝子化・石灰化をきたし、癒合すこともある。 ≪超音波像≫他の炎症性のリンパ節腫大と類似しているが、壊死に伴う嚢胞変性 や石灰化(high echo spot)が観察されれば、結核を疑う根拠となる。 4.転移性リンパ節 まず癌細胞は、輸入リンパ管が流入するリンパ節の辺縁部に着床し、増殖していく。 この増殖、増大の程度でいろいろな超音波像を呈する。 ≪超音波像≫転移巣が大きくなるにつれて、リンパ門の高エコー域が圧排、変形し、 全部腫瘍細胞で置換されると類円形~円形の低エコー腫瘤となる。 カラードプラでは、血管新生のためリンパ門から広がるような血流分 布とは異なった同部分への他方向からの血流シグナルが確認される ようになる。リンパ節が癒合したり、周囲組織と癒着することもある。 5.悪性リンパ腫 頸部のリンパ節腫脹は、悪性リンパ腫における臨床症状の一部分症として気づかれ ることが多い。無痛性で、両側多発性、数珠状、敷石状に観察される。分類上は多様 で、B 細胞系腫瘍の頻度が高い。病理学的には単調な腫瘍細胞が増殖していることが 多く、そのことが超音波では反映され輝度が低下する。 ≪超音波像≫楕円~類円形に腫大し、境界明瞭、内部均一、後方エコー増強。 エコーレベルはかなり低く、数珠状に連なって観察されることも多い。. ─ 21 ─.
(23) (memo).
(24) 甲状腺健診(検診)における精査基準 . . . . 福島県立医科大学医学部臨床検査医学 志村浩己 . はじめに 近年,超音波検査による甲状腺検診が人間ドックや集団検診の場で実施されることが増加して いる。さらに昨年,福島第一原子力発電所事故後の小児/若年者に対する超音波検査による甲状 腺健康調査が始まり,その重要性が高まっている。その反面,臨床上治療対象にならない病変が 高頻度に発見されるため,受診者に過剰な心配を与えてしまう弊害も指摘されている。超音波検 査による甲状腺疾患のスクリーニングを行う場合,エビデンスに基づいた有所見者の精査基準の 設定とそれに基づいた適切な健診(検診)が望まれている。なお,通常のスクリーニングは「検 診」と表記するが,福島県の小児・若年者に対する超音波スクリーニングにおいては,長期の見 守りを目的とするため「健診」と表記している。 I 結節性甲状腺疾患に対するスクリーニングの有効性と問題点 A. 甲状腺結節の発見率 結節性甲状腺疾患のスクリーニングは従来集団検診時の触診により行われてきた. 1). 。触診によ. る甲状腺結節の発見率は,本邦よりの報告によると 0.8%から 5.3%(男性 0.2%〜8.3%,女性 1.0% 〜4.1%)と報告されている. 2). 。男女別頻度が記載された本邦の論文において,検討対象となった. 対象者数と有所見者数の総和を求め,触診による甲状腺結節の発見頻度を求めた結果,男性 0.6%, 女性 1.6%であった。一方,超音波検診では甲状腺結節の発見率は 6.9%から 31.6%(男性 4.4%〜 18.4%,女性 9.2%〜31.6%)と報告されている。同様に超音波検査による甲状腺結節の発見頻度を 求めた結果,本邦の論文の集計では男性 16.7%,女性 27.9%であった。以上より,触診・超音波 ともに,男性と比較して女性において甲状腺結節の発見率が高い傾向があり,超音波検査超音波 検診による甲状腺結節の発見率は触診に比較して10倍以上高い傾向があった。 B. 甲状腺癌の発見率 触診による甲状腺癌の発見率は,本邦からの報告によると 0.08%から 0.9%(男性 0%〜2.6%,女 性 0%〜0.6%)であり 2),超音波検査による検討では,甲状腺癌は 0.1%から 1.5% (男性 0.07%〜2.0%, 女性 0.15%〜1.5%)であった。上記のごとく報告例の集計を行うと,本邦の論文では甲状腺癌の 発見率は触診では男性 0.08%,女性 0.18%であり,超音波検査では男性 0.27%,女性 0.66%であっ た。以上より,甲状腺癌の発見率も女性の方が高い傾向があり,超音波検診による甲状腺癌の発 見率は,触診に比較して約3倍高かった。 C. 甲状腺超音波検診の問題点 上記のごとく既報の論文の集計においても,触診に比較して超音波検診による甲状腺癌の発見 率が高く,超音波検診の有効性は明らかである。しかし,超音波検診における甲状腺癌の発見率 は,臨床的な甲状腺癌の有病率と比較すると解離が認められる。さらに,韓国においては 2000 年以降のがん保険制度の変更後,女性に対する甲状腺超音波検診の増加により,甲状腺癌の発見 率が年間 24.5%増加し,過剰診断の可能性が指摘されている。3) 甲状腺は,剖検によって初めて発見されるラテント癌の多い臓器の一つであり,日本人を対象 とした報告においても,甲状腺癌発見率は 11.3 から 28.4%と報告されている。それらのほとんど. ─ 23 ─.
(25) は 5 mm 以下の微小乳頭癌であることから,検診において微小乳頭癌の発見に努めることは,こ のようなラテント癌を多く発見してしまうため,好ましくないと考えられる。 以上より,超音波検診による結節性病変のスクリーニングには,高い発見率および客観性が利 点としてあげられるが,非常に高頻度に良性病変および微小癌を拾い上げてしまう点に留意すべ きであり,甲状腺超音波検診の実施にあたっては,その有効性を高めるとともに,受診者にデメ リットをもたらすことが無いように,検診方法および精査基準を十分検討しておく必要がある。 II 結節性病変の評価方法と精査基準 A. 結節性病変の評価 結節性病変が発見された場合,精査の必要性を決定するため,まず,嚢胞性か充実性かを評価 した上で,充実性結節と嚢胞性病変の充実部に関して,日本超音波医学会の甲状腺結節(腫瘤) 超音波診断基準に照らし合わせて評価する 4)。 甲状腺悪性腫瘍の90%以上を占める甲状腺乳頭癌 については,超音波診断が高い正診率を持つ。我々の検 討. 5-7). においては,特に境界粗ぞうと内部エコーレベル. 低下が最も重要な所見であった。 B. 結節性病変の精査基準 甲状腺検診において発見される結節性甲状腺疾患症 例から精密検査を勧める症例の選定基準については,濾 胞癌は超音波診断にて診断が難しい症例が多いこと,ま た前述したラテント癌を考慮し,日本乳腺甲状腺超音波 診断会議甲状腺用語診断基準委員会が提唱する超音波 診断フローチャート. 8). に準拠した取り扱い基準を提唱. する(図)。充実性病変は最大径が>5 かつ≦10mm は日 本超音波医学会の甲状腺結節(腫瘤)超音波診断基準に 照らし合わせて悪性を強く疑う場合や明らかな腫瘍径 増大が認められた場合,甲状腺癌の手術の既往がある場 合,周囲への浸潤が疑われる場合,リンパ節転移が疑わ れる場合は精密検査とする。>10mm かつ≦20mm は前述 診断所見のうち一つでも悪性所見がある場合要精密検 査とする。また頻度は低いものの臨床上問題となる髄様 癌,未分化癌,悪性リンパ腫,AFTN についても念頭に おく必要がある。嚢胞性病変は,>20mm は精密検査と するが,嚢胞内結節がある場合は,結節部が>10mm,充 実部形状不整,微細高エコー多発,または豊富な血流が ある場合は精密検査とする。 III びまん性甲状腺疾患のスクリーニング A.びまん性甲状腺疾患のスクリーニングの意義 . ─ 24 ─.
(26) 甲状腺にびまん性に病変がみられる代表的疾患は橋本病とバセドウ病である。いずれも自己免 疫性甲状腺疾患であり,甲状腺機能低下症や亢進症といった甲状腺ホルモンの分泌異常をきたす。 成人において甲状腺機能異常症は,甲状腺機能低下症が 1%前後,潜在性低下症が 5%前後(機能 正常を含む橋本病は 10%),亢進症が 0.5%前後にみられる。甲状腺機能異常症は,たとえそれが 潜在性の段階であっても,低下症はコレステロールの上昇,動脈硬化,虚血性心疾患の誘因とな り,亢進症も骨粗鬆症,心房細動を引き起こすため,高い有病率と合わせると甲状腺検診におい てもびまん性甲状腺疾患に留意すべきと考えられる。 B.超音波検診によるびまん性甲状腺疾患のスクリーニング 甲状腺機能異常症のスクリーニングには血中 TSH の測定が最も有用な検査であるが,集団検診 や人間ドックにおいて施行することはコストの面で困難な場合が多い。一方,橋本病やバセドウ 病といった自己免疫性甲状腺疾患では,びまん性腫大または萎縮,内部エコーレベル低下・不均 質の超音波所見がみられることが知られている。我々は,びまん性超音波所見の有無を判定した 結果,自己免疫性甲状腺疾患による顕性甲状腺機能異常症の全例,また潜在性機能異常症の約 7 割において異常所見を認めた。さらに抗甲状腺自己抗体(TgAb, TPOAb, TRAb)が陽性である症例 の約半数においても超音波上異常と判定された。以上より,甲状腺超音波検診が自己免疫性甲状 腺疾患,特に甲状腺機能異常症例のスクリーニングに非常に有用であることが示唆された。 一方,機能正常・自己抗体陰性の健常者においてもびまん性変化を認める場合があり,B-モー ドのびまん性所見のみによる精査基準では,偽陽性が生じることが少なくない。バセドウ病や橋 本病などによる原発性甲状腺機能低下症では,甲状腺内血流のびまん性増加が認められることが 多いため,びまん性変化を認めた場合,カラードプラ検査を合わせて行う事により,特異度を高 めることが可能である。 C.びまん性甲状腺病変の評価方法 甲状腺のびまん性病変のスクリーニングのため,下記の超音波所見を評価する。 ①甲状腺のびまん性腫大または萎縮:通常峡部厚 3mm 以上を腫大とする。峡部の肥厚がなくても 葉部の肥厚があれば腫大と判定する。 ②甲状腺内部エコーレベルの低下:筋肉のエコーレベルと比較して判定する。 ③甲状腺内部エコーレベルの不均質 ④甲状腺表面の凹凸不整 ①〜④いずれかの所見が認められた場合,びまん性甲状 腺疾患の有無について検討を要する。 . 表1.甲状腺機能異常症を疑うべき所見 . D.びまん性甲状腺疾患の精査方針 . 甲状腺機能低下症を . 甲状腺機能亢進症を . 疑うべき所見 . 疑うべき所見 . 原則的には甲状腺機能検査として TSH・Free T4・ Free T3. コレステロール高値 . コレステロール低値 . の測定を行うことが望ましいが,少なくとも TSH の測定. CPK 高値 . ALP 高値 . が必要である。特に疾患頻度の高い女性では甲状腺機能. 徐脈・心不全 . 頻脈・心房細動 . 検査を積極的に行うべきであろう。また,甲状腺機能低. 体重増加 . 体重減少 . 下症あるいは亢進症が疑われる所見(表1)がみられた. 便秘 . 下痢 . 場合,強く甲状腺機能検査を勧める必要がある。また,. 皮膚乾燥 . 多汗 . 診断の正確性を高めるためには,超音波検査と併せて注. うつ状態 . 不安感・イライラ感 . 超音波検診にてびまん性甲状腺疾患が疑われた場合,. ─ 25 ─.
(27) 意深く甲状腺の触診を行うことが重要である。 IV 福島県甲状腺検査における精査基準 福島県甲状腺検査の詳細は,別章にて詳細を参 照頂きたいが,持ち運び可能なポータブル型超音 波診断装置を使用した学校や公共施設等での出 張超音波検査ならびに,福島県内外の検査委託医 療機関における超音波検査よりなる一次検査と, 診察,詳細な超音波検査,血液尿検査等からな る二次検査が行われている。本検査においては,一次検査から二次検査の要否を決定するための 基準と,二次検査における穿刺吸引細胞診の要否を判定するための基準を設けている。 A. 一次検査の判定基準 福島県内および県外の検査にて記録した超音波画像は,県民健康管理センターに集積し,一次 検査判定基準(表2)に従い,複数の専門医による判定委員会において判定を行っている。その 結果 B あるいは C 判定となった場合は,二次検査対象となる。なお,C 判定は,直ちに二次検査 を要するものと定義しており,具体的には甲状腺結節の甲状腺外への浸潤が疑われる場合,3cm 以上の巨大リンパ節転移(Large N)が認められる場合などを C 判定としている。また,嚢胞性病 変に充実組織が認められる場合,結節として取り扱う。 B, 二次検査における細胞診実施基準 二次検査としては,(1) 問診および診察,(2) ハイエンド超音波診断装置による詳細な甲状腺 超音波検査,(3) 血液検査 (TSH, Free T3, Free T4, サイログロブリン,TgAb,TPOAb),(4) 尿 検査(尿中ヨウ素)を行い,超音波検査では B モード所見を日本超音波医学会甲状腺結節(腫瘤) 超音波診断基準 4)に基づき評価するとともに,結節内血流やエラストグラフィによる評価を加え, 前述した JABTS による診断フローチャート 8)に従い穿刺吸引細胞診の適応を決定する。適応あり と判断された受診者のみに,超音波ガイド下穿刺吸引細胞診を行う。 h 文献 om.
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