[紹介] アメリカの来たるべき20年間
その他のタイトル [Book‑Review] Peter F. Drucker, America's Next Twenty Years
著者 鯰江 城夫
雑誌名 關西大學經済論集
巻 11
号 2
ページ 180‑190
発行年 1961‑06‑20
URL http://hdl.handle.net/10112/15521
の対策を論究するものであるが︑政に採上げられた諸問題は何
れも我国にとつても同様に︑現在既に直面するところのもので
あつて︑例えば︑労働力不足の問題にしても︑オートメーショ
ンの問題を採つても︑企業に於ける新しい支配者階級の問題に
於ても︑大学教育の一般化とその対策︑資源不足の問題等︑何
れも解決を要すべき重要な課題を提供するものと云えよう︒斯
様な問題に付て資本主義的先進国たる米国に於て之等が如何様
に採上げられ又︑その解決策が考察せられつつあるかは誠に興
味あり︑且示唆を与え得るものがあると思料される︒ は近い将来に解決を必要とする諸問題を課題として提起し︑そ 本書は米国の経営学者ドラッカーが米国の現在当面し︑或い
ア メ
紹 介
リ カ の 来 る ベ
本章に於ては米国に於ける強力な人口増加傾向が経済に如何
なる影響を及ぼすかを課題とするものであり︑即ち米国に於て 第一章労働力不足の到来 以下本書の内容を章に従って略述すれば次の通りである︒ 第六章 第五章 第一章第二章第三章新しい支配者第四章大学教育の転期
き 二 十 年 間
労働力不足の到来
オートメーションの期待
﹁持たざる国﹂アメリカ
アメリカの政治的問題点 本書は次の各章からなつている︒ 鯰
江
P e t e r F•
D r u c k e r , A m e r i c a ' s N e x t T w e n t y Y e a r s ,
1 9 5 5
城
七
夫
I 81
(1)
一九六五年頃から総人口と生産人口とは略︑均衡を保つ
かということを論証するものである︒ 上昇に向いつつある傾向が看取され︑ る 為には生産性の向上が絶対必要な条件となり︑そして又その為 らす︒而して斯様な労働力の不足︑インフレーションを避ける ンフレーションの深刻化は﹁失業なき不況﹂という現象をもた するが此事は一層叙上の傾向を助長することとなり︑又他面イ 殊に経済の成長と発展は将来︑大学卒業生の数の増加を必要と 働力の不足とインフレーションが深刻化する可能性が大きく︑
もの
であ
る︒
米国出生率は一九五四
l
一九五六年に亘りかなり低下したが 之は一九三三年
i
一九三四年の恐慌による出生率の低下に伴ふ 特殊な現象であって最近の米国出生率は統計局の予測に反して
一九四二年以降の﹁ベビ ープーム﹂に出生した者が成年に達する頃よりは更に強い上昇 傾向を示すものである事を指摘し︑斯様な人口増加傾向が生産 人口と如何なる関係にあり如何にして労働力の不足を結果する が如くであるが総人口の増加にも拘らず︑生産人口の増加は緩
アメリカの来るぺき二十年間︵鯰江︶
には資本の蓄積とイノベーションを必要とするに至ると結論す
七 ︱
④而も斯様な生産性の向上に不可欠なものは資本であり︑ (3)
経済政策の面に於て失業問題よりも寧ろィンフレ問題を提供す
る ︒ る︒かくして総人口に対する生産人口の相対的増加率の減少は 場合は失業問題よりもインフレ問題の方が深刻化する可能性が
生産人口の不足は又︑大学生数の増加によっても強めら れる︒経済の生長と発展の為には将来︑大学卒業生の増加を必 要とするが此事は当面︑非生産人口として︑
︱つ
の制
約要
因と
なる︒而して一九七五年に亘る間に於ける米国経済の基本的人 口に於て四
0
%増︑生産可能人口三
0
彩増︑労働人口二〇彩 増︑年間総労働時間一0%
︑生産性の増大分は余暇に費され 斯くして労働人口の減少は長期に亘る大規模な失業を生
ぜしめなくなるであろうが︑此事は必ずしも慢性的不況をなく する事を意味するものではなく︑高い雇用水準を保ちつつ︑イ ンフレーションが進行する事となるが︑之を防ぐ唯一の方策︑
労働力不足を打解する条件が生産性の向上であり︑
頃に於ける必要なそれは現在の二倍である︒
一九
七五
年
(2)
大き
い︒
は総人口に対する生産人口の増加が相対的に減少する結果︑労慢である為に︑労働不足の状態が継くものと思はれ︑従つて此
本書はオートメーションの機構とその作用を説くものであっ て
いる
︒
アメリカの来るべき二十年間︵鯰江︶
とする︑経済成長とは︑より少い貨幣でもつてより大なる生産 性を絶えず獲保する過程であると云う事が出来よう︒
解してにならない︒過去に於けるイノベーションで米国経済に 大なる影響を与えたものは︑田分配の分法︑②設備︑在庫︑建 設に付ての︑③予算︑原価計算︑生産計画︑在庫統制に関する 測定及び管理統制等に関する︑非技術的領域に於けるそれであ り︑かかる社会的イノベーションが生産性の増大に︑より大き り︑︐新しい時代のイノベーションは第一にマーケッティングの
分野に於て︑第二に労務管理と労働組織の分野に於て発達しな ければならない︒要するに人口革命が経済の成長と安定とをお びやかす要因を生ずるとしても社会的イノベーションは生産性
第二章ォートメーションの期待
の向上を通じて此問題の解決に貢献し得るものであると説明し 技術的分野に於けるそれなくしては生産的たり得ないからであ く貢献したのである︒蓋し技術的イノベーションといえども非
固唯︑此場合のイノベーションを単に技衆的意味でのみ理
資本自体の生産性を引上げる事従つて又イノベーションを必要
企業中心に之を実行しなければならない︒ 険の増大を防ぐ為に生産中心に部分的に為されるぺきではなく 来ぬばかりではなくコスト増大︑危険負担の増大によって企業 ない︑何の準備もなくして之を企業に導入する事は単に利用出 はそれ自体としては必ずしも生産性の向上をもたらすものでは る︒而してその経済的意義としては先第一にオートメーション な経営者︑技術者の必要性︑及びオートメーションの経済変動に対する安定化作用と所得分配の均等化に付述べている︒即ちオートメーションとは﹁機械を操作する為の機械の使用﹂であり︑大量生産が二十世紀の第一︑四半期の技術的革命であった様に︑オートメーションは第二︑四半期のそれである︒一般に機械がその機能を果すためには︑︐①材料が機械に投入される事︑③機械を稼動せしめる為の人間の判断︑⑧稼動されるまで要するが︑オートメーションは之等の過程が人間の手によらず機械によって︑より早く︑より低いコストで為されることであを破滅せしめる事となる︒オートメ
r
ションは企業分析とその原則に則った企業の再編を経て後に導入さるべく︑又︑企業危 の準備過程︑④機械に関する知識︑資料︑の四条件を充す事を て︑オートメーションを採用し得る為に必要な条件︑特に有能
七四
I 8 3
アメリカの来るぺき二十年間︵鯰江︶ 第四にオートメーションが単なる技術ではなく多分に経済
七五
のである︒一九五一年及び五四年の景気後退が短期の小波動で の本質から生ずるもので資本主義経済に於ける利潤に相当する 方策並びに生産物︑技術進歩に対処する入念な計画︑情報や施策︑企業体の目標︑環境︑諸資源︑機構に関する配慮等︑即ち有能なマネージメントを求めるものである︒
第三にオートメーションの論理を構成する基本的原則には︑
①過程としての経済活動の原則︑②秩序の原則︑③自已調節の
原則の三原則があり︑①③の両者は企業活動が継続性を有った
統一体としての活動である事を意味し︑③はオートメーション
のも
であ
る︒
業は︱つの教育制度の役割を有つことにある︒
第六にオートメーションは従来経済を不安定ならしめていた
時に︑此事は投資が景気循還から独立的に行はれる事を意味
し︑循遠の波を平準化し極端なプームとスランプをなくするも 険は増大するが故に適正な投資に対する決意を必要とすると同 て調節︑又は一度投下した資本は之を引上げる事が出来ず︑危 ある︒即ちオートメーションの下では投資は好況︑不況に応じ 二つの要因︑投資と雇用とを安定化せしめる事が出来るもので な経営者︑技術者を養成する為には高度な教育が必要であり企 ンは見透しのきく︑安定した︑しかも拡大性ある市場を必要とするばかりでなく︑経営者をして企業の基本的諸問題︑生産市場︑需要供給関係︑生産計画︑価格決定︑サービスに関する諸而して第五に斯様な単なる直感︑形式的経験に頼らない優秀 る ︒ 技術者へと引上げられる事によりその所得は倍加するものであ 下に於ける単位時間当り﹂へと変化する︒更にオートメーショ 少し︑生産単位は﹁生産物一単位産り﹂から﹁所与の生産能率 る一定の生産水準の維持が要求される為︑危険防止の機能は減資格と機能は変化しォートメーションの進展によって種々の高 第二に一般に企業は好況期に生産を拡大し︑不況期には之を縮少する事によって経済変動からする危険を防止する事が出来るのであるがオートメーションによる生産の場合は長期間に亘 的︑社会的なものである事と共にそれは機械化によって単に人度に熟練した労働者や高度の教育を受けた技術者︑及び有能な経営者が必要とされ︑現在の半熟練機械工は高度に熟練化した 雇用に於ける量の問題ではなく質の問題である︒即ち労務者の 間労働を駆逐するだけのものではない事であって︑重要な点は
又その果すべき役割如何を論ずるものである︒即ち現在米国株
企業経営に参画する事を行ふぺきではないが又︑資本源泉の保 本書は経済界に於ける﹁新しい支配者﹂とは何人であり︑且 第三章
式会社所有の中約三分の一は制度的財産保有機関である投資信 の保護者としての国家に負う義務との二つの責任の統一に於て捉えられねばならない︒従つて信託投資機開は所有権に基いて 新しい支配者 調和と均衡を有った有機的構成体なのであると説いている︒ が漸次此方向に向いつつある事は最早疑ふ余地がないものであ アメリカの来るぺき二十年間︵鯰江︶
終ったのは此傾向の現はれであり︑此事は又生産量の大幅な変
用化して景気変動による影響を蒙らなくなり高い雇用水準を維
持する事によって労働者を中産階級化するに至る︒
第七にオートメーション革命は既に始まり︑急速に進展しつ
つあるが之が経済全般に亘り浸透するには猶多くの時間と資本
オートメーションは以上の様な機能と機構及び経済上の諸変
化を有するものであるが更に重要な点は︑オートメーションは
決してドラマチックではないがその速度は目覚しく現在の経済
り︑労働者の質の向上︑投資と雇用の安定化︑生活水準の向上等
をもたらす事も確かである︒殊に之は単なる技術ではなくして
経済生活の構成と秩序とに関する社会的︑制度的概念であり︑りして所謂︑新しい金融的支配者が企業経営に直接参画する事 とを必要とし︑危険も増大する可能性がある︒ 支配者﹂である︒ところで米国の投資力をその手中に収めつつある投資信託の機関は法律上は企業の所有者であるが事実上そないが故にその所有する株式の投票権の行使を為さないものであるか如何か︒此問題に付ては﹁彼等の関心は純粋に金融的なものであり︑従って所有者又は経営者でもなく︑その能力をも有しない︒唯受託者としてのみ行動するものであり経営へ干渉する事は彼等の有する職能の範囲外である﹂事を例証する処よ
を否定するものの如くである︒唯︑信託投資機関という概念は
それがその基金の受益者に負う義務と︑それが一国の資本源泉 如何様に対処するものであろうか︒投資家ではあるが企業家で 者の任免︑転換︑決定事項に対する批判なり承認なりに付ては の経営を支配する権利を有しているのであろうか︑例えば経営 至っている︒随つて之等の機関の運営の任に当る者が﹁新しい 動及び雇用量の変動をもなくする事を意味する︑賃銀は一般費所有を通じて企業を支配し︑経済界に支配的な地位を占めるに 託︑年金保険︑銀行等によって保有せられ︑之等の機関は株式
七六
I 8
sアメリカの来るべき二十年間︵鯰江︶
点を探る﹂と述べている通り︑大学教育に於て一︑運営費不足 の問題︑二︑教員給料︑待遇の問題︑三︑寮制の問題︑四︑家計
七七
て調達するかに付ては国家による援助が考えられるが此場合︑ を見込むとしても七%への上昇が予想され︑此差額を如何にし 本章は著者が﹁主として財政的立場から大学の姿とその問題める割合は約四%であり一九七五年頃にはその国民所得の増加
第四章大学教育の転期
事等が考えられている︒又︑現在大学教育費の国民所得中に占
ある事を説明している︒ 護者として経営に全く無関心である事も亦許されない︑蓋し信託投資機関は個々の貯著者︑投資家よりの受託者であると共に米国に於ける最も重要な組織化された経済制度の受託者でもある
らか
であ
る︒
石はれるべき信託投資機関は経済制度従って新しい支配者と︱
としては重要な使命を果しつつ企業の経営に直接関与し︑支配 者として行動する事に付ては現在の段階では慎重でなければな らないとされている︒唯︑信託機関の中には実業家︑官吏︑学 者の中より﹁助言者﹂を委嘱し︑多額の資本を投下する会社の 経営を監査せしめる場合もあり︑又︑公共性の大なる企業に於 ては企業とその所有者との間に連繋を設け︑株式所有者の要求 を経営に反映させると共に︑又経営計画を彼等に伝達する新し い型の経営者を有つ傾向のある事を指摘している︒又︑米国以 外の諸国に於て﹁政府による所有﹂が生じつつあるが米国に於 ては﹁所有権の民主化﹂として株式所有の分散現象が支配的で
案を為すものである︒即ち︑米国に於ても大学教員は薄給と労 働条件の点から漸次志望者が減少の傾向にある事を指摘︑その 改善の必要性を強調し︑寮制問題に付ては現在支配的である寮 制度を将来も維持する為には巨額の資金を必要とするが之を如 何にして調達するか︑又︑家計予算から見た場合の教育費の負担 額が平均所得以下の約五割の家庭は勿論︑平均所得者に於ても`
負担し難い額である事を具体的諸例を挙げて述べているが之等 の問題に関する対策として︑財政上の点に付ては奨学資金によ る解決策と小規模な私立大学の設立が考えられるがその効果の 不充分な事より︑更に一︑綜合大学はその傘下に専門課程の単 科大学を併設し相互協力体制をつくる︑二︑財政上の諸問題は 計画性の欠如に基因するものであるから教育目的︑履修課程︑
教員数︑研究計画︑施設計画に関する綜合計画を作成する事︑
三︑他の州立大学への入学生には出身州から援助費を支出する 予算と教育費の問題を採上げて之等に対する具体的諸対策の提
海外からの輸入を必要としている︒米国の工業原料消費高は全 勢が一面︑資源の枯渇を予想させるに至り他面︑国際的にも孤立
第五章 アメリカの来るべき二十年間︵鯰江︶
事からして特定の利害関係を生じ易い方法として不適当であり
結局﹁教育年金﹂制度が望ましいと結論づけている︒
﹁持たざる国﹂アメリカ
本章に於ては著者が米国が従来その有する資源の無尽蔵を誇
り又︑他面自国のみの繁栄︑経済的孤立主義を堅持するその情
主義の不可能なる事態の招来を認識しその対策を焦るところの
論旨を見出すものである︒即ち米国の国際経済政策は戦後の緊
急事態に対処適合する様に立案されたものであるが現在は新し い状態に適合する政策が必要であるとする︒即ち従来の米国の
対外政策の特徴としてはその対外援助計画は余りにも被援助国
中心であるが為にその政策の脊景に対する疑惑を生ぜしめ︑
又︑豊富な資源を基調とする経済的孤立主義もその条件が変化 し最近米国内に於ける工業用原材料資源は予想以上に枯渇し︑
批界の五
0
形に達し︑しかもその必要度は急速に増加しつつあり︑長期的な国際経済関係に於ける米国の地位は将来低下する 助は大学教育が階級的差別のない教育を目的とするものである
と︑此種の産業の発展は他種の産業に対し経済的連鎮反応を生 ③他産業部門に対し乗数的効果をもつ産業が開発さるべきこ 目標とするものである事を要し︑後進国開発に必要な条件とし
健全な対外政策は又成長過程にある後進諸国の経済的発展を 政策を立案実行せねばならない︒ な
場合
︑ る事を要する︒即ち工業用原材料の不足分を輸入する事が必要
之に見合ふ丈の輸出が必要である︒従ってその為に
よって輸出を促進せしめる政策をとる事︑R全世界の原料生産 を拡大する事︑但しその原料資源の獲得が他の自由諸国を犠牲 とし︑又は原料提供国自身の産業開発を圧迫する事のない様注 意する事︑③米国と自由諸国との利害関係を調和せしむる様な 長期経済政策をとる事︑④而も之等の政策は社会的︑政治的に 自由諸国を強化するものであり︑その為には原料生産国たる後 進未開発国を自由世界の一員として迎え入れ︑その経済的発展 を促進する為米国が主導的役割を果す事︑の四つの条件を充す ては︑①投資需要を換起する事︑後進国には資本に対応する投
資の機会の不足する場合が多いので之を開発せねばならない︒ は︑①外国の潜在的消費を開発し︑購買力を増大せしめる事に
大学教育の自主性の喪失の危険があり︑又︑企業団体による援可能性さえ見出される現状に於ては米国の対外政策を再検討す
七八
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ぜしめ後者を活澄にするものであって︑その第一は十九世紀後
半の西部鉄道︑又は
TVA の如き投機的産業であり︑第二は運 ある︒第三は消費需要を創造する分配制度と効果的投資需要を 付ての配慮を欠くなれば﹁植民地主義者﹂
﹁搾取者﹂と看倣さ アメリカの来るべき二十年間︵鯰江︶
れる事となる︒マーシャル︒フランは相互協力的︑生産的世界経
米国の政治的問題点
最後の章に於て本書は米国の近い将来に当面する︑或いは現
第六章
図が如何に優れたものであり︑利已的なものでなくとも此点に
決定するものであると結んでいる︒
七九
策に対する不満が含まれている︒従って米国の新対外政策の意
だ朋芽の段階にあり︑之の実現が米国の経済体制の存在如何を の中には指導的人材の養成を極度に避けていた之等の諸国の政
に於てすら企業家精神と経営に関する体系的な知識の形成は未 満は大なるものがある︒
﹁西欧の経済的帝国主義﹂という言葉
指導力を要求するものであると述べている︒しかも最後に米国
なるであろう︒④此点に於て後進諸国の欧州先進国に対する不 人材を養成する事に失敗するならば此事は結局は援助の失敗とばならない︒米国の必要を充し得ると同時に後進国の急速な成 ことは出来ない︒故に若し米国が後進国に必要な土着の有能な 企業者・販売担当者・銀行家・技術者等なくしては生産を営む のは他でもなく﹁人材﹂である︒如何なる産業と唯も優秀なる の例である︒⑧併しながら急速な産業成長の為に最も必要なも 車産業がその地域に新しい工業地帯を現出するが如きものは之 部門の産業が他部門産業の発展を誘発する様な型のもので自動 創造する信用制度との結合したサービス産業である︒第四は或
え︑人間を純粋に経済的なものとしてではなく︑社会的︑知 輸施設︑動力供給の様な地域を統一化する作用を有する産業で
費用として考えるものではなく︑逆に人間を基礎的な資源と考 又は巧妙な工夫ではなく知的訓練と道徳的態度である︒労働を 済の形成の為に人材の挫成に重点を置いた︑重要なことは技術 的︑道徳的︑精神的な資源と見る事が必要であり︑人間こそ自
由主義陣営に於ける資本資源である事を認識せねばならない︒
後進国経済開発は外国に対する援助ではなくして米国の将来 の経済に対する投資であり︑それは飽迄相互協力の形式を採 り︑政府は後進国の開発に必要な資金を準備し︑海外にある米 国企業をして資産没収︑平価切下げに充分対処し得る丈の条件 をつくると共に之等企業に有能な人材を提供するものでなけれ 長を促進し得る責任ある政策は創造力に富んだ︑しかも大担な
を要し︑之等の資源保存に関する適正な立法が要求されるので
るが多額の費用を必要とする医学教育に付ては特に奨学金の支
アメリカの来るべき二十年間︵鯰江︶
に解決を迫られつつある諸問題点を採上げその対策に付ての著 者の見解を述べるものであるが︑先︑第一に人口及び産業の移 により特に膨脹した地域の例としては最西部・西南部・南オン
タリオの三地域であるが︑新しい移動の特徴は都市集中化現象 である︑カリフォルニアは最も都市集中化した地方の一っとな り︑農村から都市への人口流動は旧南部の性格を変化し工業地 帯化させつつあり︑農村は漸次都市に統合され︑地域的な先進 に達している地域に人口移動と工業集中化が生じて居り︑此
為︑水不足は一層激しくなり工業用水を浄化して再使用する事
又︑同様な事が土壌︑森林︑牧草地︑石油︑大気︑観光資源 第三に動力︑運輸︑住宅問題に付ては︑将来は水力発電より るにつれて此問題に関する国家と私企業の相互協力体制が確立 されねばならない︒運輸に付て最も重要な事は人口と産業に適 応した鉄道︑道路︑航空の綜合的運輸システムを建設する事で 第四に教育の問題に付ては現在に於ても設備の拡充が行はれ
つつあるが︑人口の増加は大学教育の一般化と相侯つて施設並 令者に対し医療費を支給する事にまで発展せしめる必要があ
り︑人口増加に伴い医師の不足︑医学教育の拡充が必要とされ 水資源に付ては﹁持たざる国﹂であるが︑水の供給が既に限界
て計画が為されているが此制度が個人営業者︑農民︑貧民︑老 次に第二の問題点は水資源に関するものである︒即ち米国は
第五に医療問題の解決に付ては積極的な社会協力機関を通じ 帯の対策に関するものでなければならないとする︒
は第四章に述べられたところである︒
国内政策の甚本的問題点は斯かる稲密な人口密度を有つ工業地
に教員の著しい不足を生ぜしめるものであって之に対する対策 後進の格差は急速に過去のものとなりつつある︒従つて今後の
業による建設計画の必要性を述べている︒ あり︑又都市住宅に対する需要に付ては国家の介入のない私企
しかも人口の移動は産業の移動を随伴するものであり︑此移動 口移動現象が見受けられ︑特に第二次大戦後此傾向は著しい︑
も火力発電に主力を注ぐべきであり︑更に原子力開発が進展す 動は終るものと予想されたがそれにも不拘︑現在でも激しい人 動現象に付ては開拓者の消滅以来︑米国の人口増加並にその移等についても云い得られる︒
ある
︒
八〇
189
危くする手段としての意味しか有たない様なストラィキは是か
非か︑R組合活動と労働する権利との矛盾︑⑧労働組合の同業
組合化への制限︑④俸給生活者︑技師︑牧師等︑非工業労働者
の組織化に関する斗争等があり︑労働人口には早晩ホワイトカ
ラー族となるものである事かBヤ彼等が組織化を受容するか否か
によって労働組合が産業社会に強力な圧力団体として働きかけ
第七のネグロ問題に付ては︑雇用の機会と労働条件の側面か
らその平等化を説くものである︒
第八に財政問題に付ては︑今後政府支出は益々増大し景気調
整にも重要な意義を有つこととなり︑財政問題の比重は一層大
きくなるが財政支出を消費視する考は修正されねばならず︑長
期経済計画を基準とする年度計画が必要である︒
アメリカの来るぺき二十年間︵鯰江︶ いる︒インフレーションは階級間の憎悪と中産階級の没落をも
八
ョンによる不況であり︑米国では此点に付ての認識が不足して た如く︑来るべき不況は失業を伴はない︑例えばインフレーシかくして最後に結論として葱に掲げた種々の問題及び提案は 第九にインフレーシ.ヨンの問題に付ては第一章に於て既に視経済開発が緊急的課題となるという事である︑と説いている︒ 第十一に資源の不足に関しては︑従来の慢性的ドル不足は解消し米国は輸入に必要な外貨の不足を来す事となろう︒輸入の増大傾向は原料不足の結果であるが︑米国が原料欠乏国になる事から次の二つの結果が生ずる︒その第一は工業製品に対する関税率の引下げが決定的であり︑自由な関税政策こそ高い生産性の維持に絶対必要である事︑第二は国内未開発地域の急速な
国際的関係に成功して始めて実現されるものであり︑此事は独
り米国の将来のみならず自由主義陣営全体の経済的社会的発展 ることが出来るか否かを決定するものと考えている︒集中しているのを地方に分散︑移動せしめなげればならない︒ 第六に労働組合に対しては未解決の諸問題として︑①国富を 給とその償還に関する制度の計画実施が必要である︒たらすものである︒多くの人々が長期の債権者であり︑且︑雇用人口の半数の給料が貨幣価値の変動に応じて変動しない固定的なものである場合︑インフレーションの弊害は曽ての失業以上に大なるものであり従つて貨幣価値の安定化に付て充分の配慮が必要である︒
第十に州︑都市圏の再編成の問題は︑州と都市間の交流の頻
繁化に伴い︑政府︑地方自治体の関係も統一化される傾向にある
が︑核戦争に備える為に人口と産業の大部分が極一部の都市に
の衝動を励ますところのものを感ぜさせずに置かないものであ ずるものであって︑唯其等に対する結論が梢表面的︑楽観的に過ぎる虞なしとせざる為に懸念を感じつつも︑る点に於て充分価値があると共に︑而も国際協調を特に強調せ排除︑私企業至上主義︑民主的平等の観念等︑飽迄︑米国人の思想の甚調に潜む自由主義︑民主々義︑資本主義への無条件の
肯定と憧憬が却つてそれ以前の︑無碍なるものへの我々の思索 ざるを得ざる客観的情勢と︑至るところに貫かれる国家統制の 一面の示唆を得 き処の課題であり︑米国に於ける悩みは︑即又我国の悩みに通 付ては︑何れも奇しくも︑我国に於ても当面解決を迫られるべ 本書が各章の課題︑就中最後の章に︑もるところの内容論旨等かする処の企業経営に関する考察ではなく︑経営学者の時事評論であるとしても︑唯それなりにもその掲げられた個々の内容に らして云い得る事は︑勿論本書は特定の問題︑殊に著者の専攻 之を要するに本書の全篇を通じて看取されるところのものは する施策如何にあると述べている︒ を左右するものであり之等すべてが国際関係の動向とそれに対 アメリカの来るぺき二十年間︵鯰江︶
る ︒
八