感染と防御・第3回
免疫の概念
免疫反応に関与する細胞や分子の種類と、
それらの働きについて解説する。
免疫とは?
病原体などの異物や癌に対する自己防御機構を 免疫と呼ぶ。
免疫系が関与する現象 感染症
癌(がん) 自己免疫疾患
アレルギー 臓器移植の拒絶反応
免疫(immunity):言葉の由来と歴史
感染により免疫が得られる
人類は病原体の存在が知られていない時代でも、
一度かかったら、二度とかからない病気がある ことを経験的に知っていた。
免疫無 感染&発症 回復 免疫有
免疫(immunity):言葉の由来と歴史
一度感染すると生涯 感染しない感染症
繰り返し感染(発症) する感染症
麻疹(はしか)、
風疹(みっかばしか)、
流行性耳下腺炎(おた ふくかぜ)など
インフルエンザ、
ノロウイルス感染症 (食中毒)など 感染によって得られる免疫(獲得免疫)の有効 性は、病原体の種類によって異なる。
経験に基づく免疫の応用
古代中国では、天然痘から回復しつつある患者の痂皮
(かひ)をとって粉末にし、鼻から吸引して感染予防 を図ったが、失敗することが多かったと言われている。
牛痘
牛痘(cowpox)は、弱毒性の牛痘ウイルス(Cowpox virus)による感染症。農夫は経験的に牛痘に 罹った者が天然痘にならないことを知っていた。
ジェンナーの功績
1796年5月14日、エドワード・ジェンナーはジェームズ・フィップスという8 歳の少年に牛痘を接種した。少年は牛痘にかかり回復した。その後、ジェン ナーは少年に天然痘を接種したが、少年は天然痘にかからなかった。
1796年、エドワード・ジェンナーは、天然痘の 予防接種法(種痘)を考案した。
種痘により、体内でなんらかの防御物質がつく られることがわかった。
現在の免疫学
生物学・医学の発展に伴い、免疫の仕組みが明 らかにされ、免疫がさまざまな生体機能と関係 していることが分かってきた。
弱毒化または無毒化した病原体や毒素は、ワク チンとして利用できる。
血清療法
免疫を獲得した動物の血液には、病原体を無毒 化する物質(抗体)が含まれる。
ある動物に病原体などに対する抗体を作らせ、
それを含む血清を使って病気などに対処する治 療法を血清療法と言う。
例:破傷風、ボツリヌス毒素、ジフテリア、ヘビ(ハ ブ・マムシ)毒など。
古典免疫学と現代免疫学
実験結果と理論に基づく科学の発展 20世紀初頭~中頃
観察 経験 (&迷信)
観察 実験 理論
物理学 化学 生物学
医学
現代免疫学
実験科学に基づく広義の免疫学
自己と非自己を認識し、非自己に対して発 現される生体の応答
免疫とは
免疫系が関与する現象 感染症 癌(がん) 自己免疫疾患
アレルギー 臓器移植の拒絶反応
その他もある
免疫の担い手
血液は有形成分と無形成分に分けられる
血液 有形成分
無形成分
血しょう 赤血球、白血球、血小板など
免疫の担い手
白血球は赤血球の1/1000程度の数
約500万個 5千~8千個 赤血球 白血球
健康なヒトの血液1μL当たりの細胞数
免疫の担い手 白血球は免疫機能を担う
赤血球 白血球
酸素と二酸化炭素 の運搬
免疫機能
免疫の担い手
リンパ球͒
(T細胞) (B細胞) (NK細胞)
マクロファージ 樹状細胞
顆粒球 (好酸球) (好中球) (好塩基球) 白血球は、免疫の中心的な働きを担っている。
免疫系の特徴
抗原として認識するには、ある程度の大きさが必要です。
免疫反応を引き起こし、生じた抗体や感作リン パ球と特異的に反応する物質を抗原という。
免疫系の特徴
免疫系は、物質のかたち(立体構造)を識別する。
免疫反応は、自己と非自己の認識に基づく反応 で、非自己を排除する。
免疫系は病原体が持つ物質を認識し、記憶する ことで、次に同じ病原体が侵入した場合に、速 やかにそれを排除することができる。
免疫系の抗原に対する特異性はきわめて高く、
決まった相手とだけ反応する。
免疫学の「自己」と「非自己」
赤血球と白血球の型の違い
赤血球
ABO型 RH型
白血球
HLA(MHC)
4通り 2通り=8通り
数万通り
p67参照
免疫学の「自己」と「非自己」
輸血と臓器移植の条件
赤血球
白血球
輸血
臓器移植
ABO型とRh型の一致性
HLAの組み合わせの一致性
免疫学の「自己」と「非自己」
自分の細胞の証 名前:○○細胞
認識番号:HLA−A24−B52−DR15 (DRB1*1502)
特記:健康優良 免疫細胞
「自己」の
細胞です 確認しました 免疫細胞は、HLA(MHC)を介して自己と非自己を 認識する。
免疫系細胞による防御機構 免疫細胞は、病原微生物やガン細胞に直 接作用し、それらを殺す作用を持つ
細胞内に取り込んだり(貪食)、分解酵 素を出して、細菌を殺滅・分解する
ウイルスに感染した細胞やガン細胞を攻 撃する
免疫系細胞による防御機構
免疫系細胞の働きを調整(活性化・不活性 化)する細胞
抗体(病原体や毒素などと結合するタンパ ク質)を産生する細胞
免疫系は、多様な免疫細胞の協調的な働き によって成り立っている。
免疫系細胞(白血球)の種類
名称 マクロファージ 樹状細胞 B細胞(形質細胞) ヘルパーT細胞 キラーT細胞 サプレッサーT細胞 ナチュラルキラー細胞
(NK細胞)
好中球 好酸球 好塩基球
肥満細胞(マスト細胞)
役割
病原体の食作用と殺菌作用の活性化 抗原提示
抗体産生
B細胞・キラーT細胞・NK細胞活性化 感染細胞の除去
免疫抑制 ガン細胞の除去
病原体の食作用と殺菌作用 寄生虫防除とアレルギーに関与 炎症反応
アレルギーに関与 グループ
単球
リンパ球
顆粒球
その他
*この分類は現在確認中のため誤りを含む可能性有り。
自然免疫と獲得免疫
自然免疫系 獲得免疫系
ママ
NK
KT
BB HT
好中
樹状
肥満細胞
(マスト細胞)
好酸球 好塩基球
(単球)
抗原依存
TLRなどによるパターン認識
自然免疫系
Toll様受容体(Toll-likereceptor:TLR)一本鎖RNA 二本鎖RNA
ペプチドグリカン、鞭毛、リポ 多糖、リポタイコ酸
ママ
NK 好中
樹状
肥満細胞
(マスト細胞)
好酸球 好塩基球
(単球)
抗原提示細胞がMHC分子上に提示した抗原を認識 する
T細胞受容体
ヘルパー T細胞
TCR
MHCⅡ
抗原
CD4
キラー
T細胞
TCR
MHCⅠ
抗原
CD8
一般的な細胞
B細胞 樹状細胞 マクロファージ など
液性免疫と細胞性免疫
ヘルパー
T細胞 B細胞
病原細菌
活性化抗体 生産
攻撃
液性免疫
ウイルス感染細胞
攻撃ヘルパー T細胞
キラー
活性化
T細胞
認識 MHCⅡ
単球 認識
パーフォリン
CD4+(Th2) CD4+(Th1) CD8+
認識 MHCⅠ
細胞性免疫
細胞性免疫と液性免疫
作用と役割が違う
細胞性免疫 液性免疫
貪食
細胞死の誘導
細胞活性の制御 抗体による攻撃 補体による攻撃
免疫系の役割分担
自然免疫 獲得免疫
細胞性免疫
マクロファージ 樹状細胞 NK細胞 顆粒球(好中球等)
樹状細胞 キラーT細胞 ヘルパーT細胞
液性免疫 補体
リゾチーム
抗体 (B細胞) 免疫は、自然免疫と獲得免疫、細胞性免疫と液 性免疫に分類される。
免疫系の分子
リゾチーム、抗体、補体は、病原体、ガン細胞、
異物などを排除する働きを持つ生体分子。
リゾチーム
リゾチームは鼻水や唾液などに含まれる酵素で、
細菌の細胞壁を溶かす働きを持つ。
抗体
抗体はB細胞(形質細胞)が産生するタンパク質 で、特定の物質(抗原)と結合し不活性化する。
可変領域の構造が抗体との反応性を決める
抗体の種類
抗体は5つのクラスに分類され、それぞれ性質 や役割が異なっている。
抗原と抗体の反応
抗原と抗体が反応すると、複合体が形成され(沈 降反応・凝集反応)、抗原の生理活性が失われる (中和反応)。
補体
常に血中に存在するタンパク質で、病原体 の侵入によって活性化される
不活性型
補体
微生物や抗原抗体複合体
活性型
補体 生理活性
炎症惹起 細胞傷害 食作用の促進
補体
補体は血液中に存在するタンパク質やポリペプ チドで、免疫系細胞や抗体の働きを補ったり、
病原体に結合して殺滅する働きを持つ。
ヒトの場合、20種類以上の補体が存在する。
古典経路、第2経路、レクチン経路の3つの経 路で活性化される
オプソニン化
貪食の効率が良くなる
ママ
XX XX
補体 抗体
細胞表面に存在し、抗体のFc部位と結合する
サイトカイン
ヘルパーT細胞 (Th1)
など
HT
IL-2
TT
NK
BB