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Micafungin が有効であった Candida krusei による真菌血症の 1 例 1)

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Academic year: 2021

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(1)

Micafungin(MCFG)は糸状菌の産生する抗真 菌活性物質に化学修飾を加えた半合成化合物で,

リポペプタイド構造を有し,既存の amphotericin B(AMPH-B),fluorocytosin(5-FC)およびアゾー ル系薬剤とは全く異なる骨格を有する新規抗真菌 薬である.本薬は真菌の主要細胞壁構成成分であ るグルカンの合成酵素(1, 3) - β -D-glucan synthase を特異的に阻害することにより抗真菌活性を示 し,抗真菌活性は,特にカンジダ属やアスペルギ ルス属などに対して強く,カンジダ属の一部を除 いて,同効薬以上の抗真菌活性を示す.また,flu- conazole(FLCZ)耐性または低感受性のカンジダ 属に対しても強い抗真菌活性を示す.

経口吸収が悪く, 注射薬のみの剤形ではあるが,

数少ない深在性真菌症に対する抗真菌薬にあっ て,わが国で開発・上市されたキャンディン系抗 真菌薬としておおいに期待される.

今回,MCFG が有効であった Candida krusei に よる真菌血症の 1 例を経験したので報告する.

症例:51 歳,男性.

経過:2000 年 10 月 21 日,頭痛,嘔気,嘔吐出 現.救急車にて近医を受診し,CT 検査にてくも膜 下出血との診断で当院へ緊急搬送となった. 同日,

血管造影検査を施行.管理目的にて中心静脈カ テーテル挿入. 10 ! 22, 脳動脈瘤塞栓術を施行した.

10 ! 24 頃より発熱とともに CRP の上昇が認め られたため, 10 ! 25 より ceftazidime (CAZ) 開始.

10 ! 31 に中心静脈カテーテルを抜去.その後,解熱 傾向は十分ではなかったが,CRP が改善したた め,11 ! 1 に CAZ の投与を中止した.11 ! 2 に再び CRP の上昇傾向とともに発熱がみられ,10 ! 31 の 血液培養でカンジダ属陽性(最終報告:C. krusei)

との報告から,11! 4 より FLCZ の投与(400mg!

day) を開始した.FLCZ 投与後,CRP の改善傾向 は認められたものの,明らかな解熱傾向はみられ ず,11 ! 10 には再び CRP の上昇傾向を認めた.

検査所見(MCFG 開始時) :身長 167cm,体重 56kg,体温 39.6℃,WBC 3,600 ! µ l(neut. 80.0%,

lymp. 18.0%,mono 2.0%,eosino. 0%,baso. 0%) , Hb 10.2g ! dl,Plt 7.6×10

4

! µ l,ESR 42mm ! hr,CRP 7.966mg ! dl,GOT 94IU ! l ,GPT 145IU ! l ,LDH 635U! l ,TP 6.4g! dl,T-Bil 0.9mg! dl,BUN 11mg!

dl,Cr 0.49mg ! dl, (1, 3) - β -D-グルカン( β -グルカン テストワコー(和光純薬工業株式会社))300pg ! ml 以上,パストレックスカンジダ (日本サノフィー)

陰性,胸部 X 線上明らかな異常を認めず.10 ! 31,

11 ! 1, 11 ! 2, 11 ! 3, 11 ! 9 の血液培養および 10 ! 31 に 血液カテーテル培養にて C. krusei 陽性であった.

経過:11 ! 10 より MCFG(75mg ! day)に変更.

11 ! 12 より解熱傾向がみられ,11 ! 14 には解熱し た.11! 15 より CRP の漸減傾向が認められ,11! 20

Micafungin が有効であった Candida krusei による真菌血症の 1 例

1)北里大学医学部感染症学講座,2)北里大学医学部病理,3)同病院救命救急センター

野々山勝人

1)

久米 光

2)

熊谷 謙

3)

相馬 一亥

3)

砂川 慶介

1)

(平成 15 年 5 月 2 日受付)

(平成 15 年 7 月 17 日受理)

別刷請求先:(〒228―8555)神奈川県相模原市北里 1―15―1 北里大学医学部感染症学講座

野々山勝人

Key words: micafungin, candidemia,

Candida krusei 982

感染症学雑誌 第77巻 第11号

(2)

には CRP が陰性化した.しかし, (1, 3) - β -D-グルカ ンは減少傾向を示したものの,陰性域には達しな かった.11 ! 21 の血液培養が陰性であることを確 認し,11 ! 23 に MCFG の投与を中止した.その後 も(1, 3) - β -D-グルカンは陰性化しなかったが,発 熱も認めず,CRP も陰性であったことから治癒し 得たと判断し,12 ! 6 に退院となった(Fig. 1).な お,その後の経過に特に問題はなかった.また,

MCFG 投与終了時 WBC 4,100 ! µ l,Hb 10.8g ! dl,

Plt 31.9×10

4

! µ l,CRP 7.966mg ! dl,GOT 26IU ! l , GPT 35IU ! l ,LDH 367U ! l ,T-Bil 0.2mg ! dl,BUN 8mg ! dl,Cr 0.57mg ! dl であった.

従来,深在性カンジダ症の起因菌は,その殆ど が C. albicans であったが,近年,non-albicans Can- dida と一括呼称される,いわゆる C. albicans 以外 のカンジダ属による感染症が増加傾向にある

1)

. なかでも,C. glabrata の分離率は明らかに増加傾 向にあり

1)

,また,比較的副作用の少ない FLCZ による予防投与や empiric therapy の増加に伴っ て FLCZ に耐性または低感受性を示す C. krusei,

C. glabrata の 増 加

2)

C. albicans の 耐 性 化 も 報 告 されている

3)

.わが国でも血液疾患に合併した真 菌症の原因真菌として C. krusei が増加している

施設が認められる

4)

本症例では,発症時(1, 3) - β -D-グルカンは高値 であるにも関わらず, パストレックスカンジダ (以 下パストレックス)は陰性であった.マンナン抗 原を検出する方法は,特異度は高いが感度が 30〜

50% と低いことが報告されている

4)〜8)

.この検査 は,カンジダ属のどの菌種のマンナンに対する抗 体を用いるかによって菌種ごとの検出感度は異 なってくる.抗 C. albicans マンナン抗体を用いた 場合,検出限界は C. albicans, C. tropicalis, C. parap- silosis が 1.0〜2.8ng ! ml に 対 し,C. glabrata は 20 ng ! ml,C. krusei は>50ng ! ml であると報告され ている

9)

.パストレックスが C. tropicalis 由来のマ ンナン抗原(C. albicans serotype A 由来のものと 同等)に対する単クローン抗体を用いていること

から, C. krusei に対しては感度が低いと考えられ,

C. krusei では陰性率が高い

5)7)8)

.本症例において もパストレックスを用いた検索で陰性であった が,本症の起因菌が C. krusei であったことと関連 していると考えられた.

また,成績として言及しなかったが,本症例で はラボフィット(ナカライテスク)を用いた D- アラビニトールの検出系も陰性であった.これは もともと C. glabrata および C. krusei が D-アラ ビ

Fig. 1 Clinical course

CAZ:ceftazidime, FLCZ:fluconazole, MCFG:micafungin

MCFG が有効であったC. krusei血症の 1 例 983

平成15年11月20日

(3)

Table 1 MIC of C. krusei(this case  isolated)

MIC(µg/ml)

Compound

  0.125

MCFG

  0.5

AMPH-B

  8

MCZ

32 FLCZ

  0.5

ITCZ

16 5-FC

The  antifungal  activities  were  tested  using  a  broth  microdilution  method  as  specified by the National Committee for  Clinical Laboratory Standards(NCCLS)

document M27-A.

MCFG:micafungin,  AMPH - B:ampho- tericin  B,  MCZ:miconazole, FLCZ:flu- conazole,  ITCZ: itraconazole,  5 - FC:

fluorocytosin.

ニトールを産生しないためである.

本症例において(1, 3) - β -D-グルカンは治療開始 時に高値を示し,診断の根拠となったが,治療後 に発熱および CRP 値は正常化したが, (1, 3) - β -D- グルカンは陰性化しなかった. (1, 3) -β-D-グルカン が,治療効果の判定や病勢の指標として優れてい るという報告も認められる

10)〜12)

.一方で,セル ロース膜による透析,手術等によるガーゼの大量 使用,輸血およびアルブミン製剤やガンマグロブ リン製剤の使用,Pneumocystis carinii や Alcalige-

nes faecalis による感染症,抗腫瘍性 β グルカン製

剤の使用などで偽陽性になることが知られてい る.手術によるガーゼの大量使用では胸部外科の 術後でも 7〜10 日の経過で前値に戻ることが報告 されている

13)

が,本症例では脳動脈瘤塞栓術を 行っているが,ガーゼを大量に用いる処置は行っ ていない.本剤投与直前や投与中には輸血および 血液製剤は使用していない. P. cariniiA. faecalis による感染症も否定的で,抗腫瘍剤も使用してい ないため, (1, 3) - β -D-グルカン値の遷延に関して,

これらの偽陽性を示す要因は見当たらない.

(1, 3) - β -D-グルカンを代謝する酵素をヒトは有 していないため,高値を示した場合に,その代謝 には時間がかかることが予想される.筆者は(1, 3) - β -D-グルカン高値であった他の症例で,治療後 も(1, 3) - β -D-グルカン値の正常化が遷延する症例 を経験しており,今回の症例も明らかではないが 同様の原因によるものと推測された.このことよ り, (1, 3) - β -D-グルカンはスクリーニング検査とし ては有用であるが,高値を示した場合治療効果の 判定には必ずしも有用であるとは限らない.

本症例は,くも膜下出血の術後で, (1, 3) -β-D-グ ルカンが高値であり,かつ血液培養から C. krusei が検出された.感染原因は中心静脈カテーテル留 置に伴うものか腸管からのトランスロケーション により深在性真菌症を発症したかは不明であっ た.当初,FLCZ を使用したが十分な効果が得られ ず,起因菌が C. krusei であったことから,MCFG を使用し有効であった.

MCFG は,現在わが国で使用されているポリエ ン系,ピリミジン系,アゾール系とは異なる作用

機序をもつキャンディン系の抗真菌薬で,カンジ ダ属,アスペルギルス属に対し優れた抗真菌活性 を示す

14)

.また,近年増加傾向にある non-albicans Candida や,アゾール系抗真菌薬に耐性を示す株 に対しても有効かつ交叉耐性を示さない.本症例 から分離された C. krusei も MCFG に良好な感受 性を示しており (Table 1) ,臨床的にも有効であっ た.

また,MCFG は安全性の面でもアゾール系抗真 菌薬と同等であることが報告

15)

されており,本症 例でも投与前に認められていた前投薬および真菌 血症が原因と考えられた血小板減少,肝機能障害 等の検査値異常は改善を示し,明らかな副作用は 認められなかった.

以上,MCFG が有効であった C. krusei による真 菌血症の 1 例を報告した.優れた抗真菌活性を有 し,しかも副作用の少ない MCFG は,深在性真菌 症の治療に極めて有用であると考えられた.

1)Pfaller MA, Jones RN, Messer SA, Edmond MB, Wenzel RP:National surveillance of nosocomial blood stream infection due to species of Candida other than Candida albicans:frequency of occur- rence and antifungal susceptibility in the SCOPE Program. SCOPE Participant Group. Surveillance and Control of Pathogens of Epidemiologic. Diagn 野々山勝人 他

984

感染症学雑誌 第77巻 第11号

(4)

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A Successful Treatment with Micafungin of Candidemia due to Candida krusei

Masato NONOYAMA

1)

, Hikaru KUME

2)

, Ken KUMAGAI

3)

, Kazui SOUMA

3)

& Keisuke SUNAKAWA

1)

1)

Department of Infectious Diseases, Kitasato University School of Medicine

2)

Department of Pathology, Kitasato University School of Medicine

3)

Department of Critical Care and Emergency Medicine, Kitasato University School of Medicine

We report a case of candidemia due to Candida krusei after subarachinoid hemorrage. A 51 year- old male patient consulted us for high fever and increase of CRP 10 days post operation against suba- rachinoid hemorrage. There was a temporary decrease in the CRP after administration of ceftaz- idime(CAZ)but it again when treatment with CAZ was stopped. Because of detected Candida sp.

by blood culture, fluconazole was administered i.v for 5 days, but C. krusei was positive during the treatment. Therefore, fluconazole was replaced with micafungin. The patient became better after the administration with micafungin for 14 days without side effect. Micafungin is effective against can- didemia due to C. krusei.

〔J.J.A. Inf. D. 77:982〜985, 2003〕

MCFG が有効であったC. krusei血症の 1 例 985

平成15年11月20日

Table 1 MIC of C. krusei (this case  isolated) MIC(µg/ml)Compound   0.125MCFG   0.5AMPH-B   8MCZ 32FLCZ   0.5ITCZ 165-FC

参照

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