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論文審査の結果の要旨

氏名: 伊東 良晴

博士の専攻分野の名称: 博士(理学)

論文題目: 微小細孔を持つ粘土鉱物および堆積岩の熱物性 審査委員: (主査) 教授 藤森 裕基

(副査) 教授 永井 尚生 (副査) 准教授 竹村 貴人

本申請論文は,「微小細孔を持つ粘土鉱物および堆積岩の熱物性」と題し,熱分析を用いて,天然物であ る粘土鉱物および堆積岩の熱物性およびそれらの微少細孔が水を含む場合の熱物性を明らかにすることを 目的として行われた研究成果をまとめた論文である。

粘土鉱物および堆積岩は,セラミックスや薬剤,塗料などに利用されており,それらが持つ微小細孔の利 用によって,人工障壁や吸着材,塗り壁材などに使用されている。特に,放射性廃棄物処分のための人工障 壁材料として考えると,粘土鉱物は安価であり,吸着能が高く,膨潤性を富むことから,周辺環境への影響 を緩和できる材料として期待されている。しかしながら,粘土鉱物および堆積岩に含まれる水の熱物性に 関してはまだ解明されていない。粘土鉱物および堆積岩内に存在する微小細孔の大きさは必ずしも一様で 無く,また粘土鉱物においては水を含むことによって微小細孔の大きさが変化することが知られている。

ナノサイズ領域に存在する水の物性は,バルク状態の物性と異なることが知られているため,まずは,均一 な細孔を持つシリカゲルをモデルケースとして,細孔内に存在する水の融解温度および脱着温度を測定し,

その結果を基に,天然物である粘土鉱物および堆積岩内に存在する水の評価を行った。

シリカゲル内に充填した水の融解温度は,その細孔形状には依存せず細孔径のみに依存し,細孔径の減 少に伴い低下した。また,脱着温度は細孔径の減少に伴い上昇することが見出された。シリカゲルの結果を 基に,熱分析から粘土鉱物および堆積岩内に存在する微少細孔を評価すると,主な細孔のサイズはマイク ロサイズオーダーであることが見出された。しかし堆積岩の一種である珪藻土に関しては,細孔内に充填 した水の融解温度が他の鉱物に比べて大きく低温側にシフトすることが見出された。水の融解温度から細 孔径を見積もると,平均20.2 nmであることが見出された。これは,珪藻土のマイクロメートルオーダーの 細孔内に,ナノメートルオーダーの細孔が存在することを示している。また,粘土鉱物の一種であるNa ントナイト内に存在する水は,脱着時に三つの異なる温度で脱着することが見出された。このことからNa ベントナイト内に存在する水は,自由水,吸着水,層間水の三つの異なる状態で存在していることが示され た。さらに,高圧下で同様の測定を行ったところ脱着温度は高温側にシフトすると共に,四つの異なる温度 で水が脱着することが見出された。これは,Naベントナイトに圧力を加えると一部の層間が広がるためで あると考えられる。他の粘土鉱物と比較すると,Naベントナイトに含まれる水は低融点かつ高沸点であり,

高圧下でも広い温度範囲で水を液体状態で保持し続けることを指摘した。また,Naベントナイト内に存在 する水の脱着エンタルピーは,シリカゲル細孔に充填した水の脱着エンタルピーより大きいことから,数 ナノメートルサイズの微少細孔が存在している可能性も指摘した。

以上のように,本申請論文は,熱分析を用いることによって,天然物である粘土鉱物や堆積岩の熱物性お よびそれらの微少細孔が水を含む場合の熱物性を明らかにした。これらの結果は,粘土鉱物や堆積岩の基 礎科学的研究としての新たな知見を得たものであり,今後の実用的研究の発展に寄与するものと評価でき る。

よって本論文は,博士(理学)の学位を授与されるに値するものと認められる。

以上 平成29年 1月24日

参照

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