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概要 近年 大学進学率の上昇が顕著であるが 一方で 出身家庭の所得と大学進学率には明確な相関関係がある 出身家庭の所得が個人の大学進学決定を大きく規定しているならば 教育の機会均等の観点から望ましくない状態である 本研究では 大学進学決定における出身家庭の所得の効果について 特に性別 年代別 在住地

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大学進学決定と家庭所得に関する分析

一橋大学経済学部 学士論文

2014 年 1 月 31 日

学籍番号:2110253x

氏名:森下永雅

ゼミナール指導教員:川口大司

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概要

近年、大学進学率の上昇が顕著であるが、一方で、出身家庭の所得と大学進学率には 明確な相関関係がある。出身家庭の所得が個人の大学進学決定を大きく規定しているな らば、教育の機会均等の観点から望ましくない状態である。本研究では、大学進学決定 における出身家庭の所得の効果について、特に性別・年代別・在住地域別・学校種別に よっての傾向を明らかにするため、人的資本論に基づく大学進学決定モデルを設定し、 ミクロデータを用いた二項ロジットモデル・多項ロジットモデルによる回帰分析を行う ことで推定した。分析の結果、家庭所得は個人の大学進学確率に対して正の影響を及ぼ すこと、家庭所得の効果は年代の推移によってより大きくなること、国公立大学への進 学選択では、家庭所得は有意な効果をほとんど持たない一方、私立大学の進学選択では 大きな正の効果を持つことが明らかにされた。なお、男女別の分析によって、性別によ る決定要因の違いを明らかにしようとしたが、家庭所得以外の決定要因では違いが見ら れたものの、家庭所得に関しては明確な違いは見られなかった。

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目次

概要 ... 1 序論 ... 4 第1章 先行研究と本研究の方針 ... 11 第2章 分析手法 ... 14 第3章 3. 二項ロジットモデル ... 14 1 3. 多項ロジットモデル ... 16 2 モデル ... 18 第4章 4. サンプルの分類と被説明変数 ... 18 1 4. 説明変数 ... 18 2 データ ... 20 第5章 仮説と分析結果 ... 22 第6章 6. 大学進学/非進学の二項ロジット分析(年代別) ... 22 1 6.1. 仮説 ... 22 1 6.1. 分析結果 ... 23 2 6. 大学進学/非進学の二項ロジット分析(出身地域別) ... 25 2 6.2. 仮説 ... 25 1 6.2. 分析結果 ... 27 2 6. 国公立大学進学/私立大学進学/非進学の多項ロジット分析 ... 29 3 6.3. 仮説 ... 29 1 6.3. 分析結果 ... 29 2 結論 ... 32 第7章 謝辞 ... 34 参考文献 ... 35

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序論

第1章

高等教育の拡大は、我が国の教育施策の中でも重要な課題の一つであり続けている。 図 1 は文部科学省「学校基本調査」をもとに我が国の大学進学率の推移を示したもの であるが、戦後の大学への進学率は、1950 年代から上昇を続け、1970 年代後半から 1980 年代末にかけて停滞するものの、1990 年代から急激に上昇し、2013 年には 55.1% になっている。特に女子については1990 年代からの上昇が顕著である。 こうした進学率の上昇の一方、東京大学大学院教育学研究科大学経営・政策研究セン ター「高校生の進路追跡調査第一次報告書」(2007)によると、両親の年収別に見た高 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 55 60 19 54 19 57 19 60 19 63 19 66 19 69 19 72 19 75 19 78 19 81 19 84 19 87 19 90 19 93 19 96 19 99 20 02 20 05 20 08 20 11 大 学 進 学 率 (%) 男女計 男子 女子 (年) 出所:文部科学省「学校基本調査年次統計」 図 1 大学進学率の推移

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5 校生の高校卒業後の予定進路では、4年制大学への進学予定者の割合は、両親年収が多 いほど高くなる傾向にあり、400 万円以下の家庭では 33.9%にとどまるのに対し、1,000 万円を超える家庭では60.7%に達する(図 2)。また、図 3 は、日本学生支援機構「学 生生活調査(1986 年調査は文部省〔現・文部科学省〕が実施)」による大学生の出身家 庭の所得分布調査をもとに、その累積度数分布を示し、厚生労働省「国民生活基礎調査」 における、児童を持つ世帯の所得別の累積度数分布と比較したものであるが、やはり大 学生の出身家庭は、児童を持つ全世帯と比較して高所得層に偏っており、推移をみても、 両分布の乖離は、1986 年から 2004 年にかけてはいったん縮小したものの、近年再び 拡大を見せているといえる。 図 2 両親年収別の大学進学率 0.0 10.0 20.0 30.0 40.0 50.0 60.0 70.0 200 万 円 以下 ( N = 17 0 ) 200 -400 万円 ( N= 35 2 ) 400 -600 万円 ( N= 69 3 ) 600 -800 万円 ( N= 80 7 ) 800 -1000 万円 ( N= 65 5 ) 1000 -1200 万円 ( N= 31 1 ) 1200 万円超 ( N= 33 3 ) 両親年収別大学進学率(%) 出所:東京大学大学院教育学研究科大学経営・政策研究センター 「高校生の進路追跡調査第一次報告書」(2007)69 頁、図 3-2 より抜粋 (%)

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0 20 40 60 80 100 ~ 150 万円 ~ 200 万円 ~ 250 万円 ~ 300 万円 ~ 350 万円 ~ 400 万円 ~ 450 万円 ~ 500 万円 ~ 600 万円 ~ 700 万円 ~ 800 万円 800 万円~ 家計収入別学生比 率の累積分布 家計収入別世帯数 比率の累積分布 0 20 40 60 80 100 ~ 200 万円 ~ 300 万円 ~ 400 万円 ~ 500 万円 ~ 600 万円 ~ 700 万円 ~ 800 万円 ~ 900 万円 ~ 1000 万円 ~ 1100 万円 ~ 1200 万円 ~ 1500 万円 1500 万円~ 家計収入別学生比 率の累積分布 家計収入別世帯数 比率の累積分布 0 20 40 60 80 100 ~ 200 万円 ~ 300 万円 ~ 400 万円 ~ 500 万円 ~ 600 万円 ~ 700 万円 ~ 800 万円 ~ 900 万円 ~ 1000 万円 ~ 1100 万円 ~ 1200 万円 ~ 1500 万円 1500 万円~ 家計収入別学生比 率の累積分布 家計収入別世帯数 比率の累積分布 1986 年 2004 年 2010 年 注:世帯数比率は「児童を持つ世帯」に限定した比率である。 出所:家計収入別学生比率は日本学生支援機構「学生生活調査」 (1896 年調査のみ文部省による)、 家計収入別世帯数比率は厚生労働省「国民生活基礎調査」 図 3 大学生の出身家庭所得分布と一般世帯の所得分布の比較

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7 このように、家庭所得と大学進学率には明確な相関があり、家庭所得が大学進学決定 の明確な要因になっているとすれば、世代をこえた社会格差の形成につながるおそれが ある。このような、家計所得と大学進学の関係性は、「教育の機会均等」の達成を考え る上で、重要なトピックのひとつであるといえる。 そもそも、「教育の機会均等」とは、日本国憲法第26 条1、教育基本法第3 条2におい て定められている、我が国の教育におけるもっとも基本的な概念のひとつである。そし て、「教育の機会均等」に関してはさまざまな解釈が行われ、それに基づく国や地方公 共団体の教育施策に関しては、さまざまな政策的議論がなされてきた。 特に経済学においては、「教育の機会均等」を、各個人の進学決定に影響する、家計 を始めとした進学予定者の資金調達源の資金供給能力の散らばりを均等化することで ある、と捉え(Becker,1975/訳 1976)、奨学金制度の整備や、授業料の少ない国公立 大学の設立、低所得家庭への授業料免除などを「機会均等」実現の主たる政策であると してきた。 そこで、戦後の我が国における、機会均等政策としての奨学金制度、国公立大学につ いて概観したい。 まず奨学金制度についてである。我が国における公的な奨学金制度として、日本学生 支援機構の奨学金事業が挙げられる。日本学生支援機構は、1943 年に設立された財団 法人大日本育英会、その後身である日本育英会を中心として2004 年に設立された。奨 学金事業の推移について、小林(2012)によれば、戦後の公的な奨学金事業を担って きた日本育英会は、成績優秀であるが所得の制約によって進学できない者への無利子貸 1 「すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権 利を有する。」 2 「(教育の機会均等)すべて国民は、ひとしく、その能力に応ずる教育を受ける機会を与え られなければならないのであって、人種、信条、性別、社会的身分、経済的地位又は門地によっ て、教育上差別されない。国および地方公共団体は、能力があるにもかかわらず、経済的理由に よって就学困難な者に対して、奨学の方法を講じなければならない。」

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8 与を長らく行ってきた。1984 年、有利子貸与の奨学金を創設してからは、2000 年に、 採用条件を緩和し、公的財源を投入した大規模な採用者の拡大を行うなど、低所得層に 対する奨学金は拡充されてきたといえる。 次に、国公立大学についてである。戦後の我が国における国公立大学および私立大学 の入学率推移、大学在籍者数にしめる国公立・私立大学の在籍者数の割合を示した図 4・図 5 を見る限り、全体的な大学進学率・大学在籍者数の増加に伴って、国公立大学 の在籍者数も増加し、大学全体の中では一定の割合を維持し続けてきたといえる。一方、 図 6 から分かるように、国立大学の授業料は、近年上昇傾向にあり、私立大学と比較 しても遜色のないほどの高騰をしている。 0 5 10 15 20 25 30 35 40 45 50 19 49 19 53 19 57 19 61 19 65 19 69 19 73 19 77 19 81 19 85 19 89 19 93 19 97 20 01 20 05 20 09 18歳人口に占める国公立大学 進学率 18歳人口に占める私立大学進 学率 (%) (年) 注:18 歳人口は、18 年前の出生人口を、入学者は、在籍者を 4 で割った値を代わりに用いた。 出所:文部科学省「学校基本調査」、厚生労働省「人口動態調査」 図 4 国公立大学・私立大学別進学率の推移

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0 10 20 30 40 50 60 70 80 90 19 49 19 52 19 55 19 58 19 61 19 64 19 67 19 70 19 73 19 76 19 79 19 82 19 85 19 88 19 91 19 94 19 97 20 00 20 03 20 06 20 09 20 12 国公立大学在籍者数/大学在 籍者数 私立大学在籍者数/大学在籍 者数 (%) (年) 出所:文部科学省「学校基本調査」 図 5 大学在籍者数に占める国公立大学在学者割合、私立大学在学者割合の推移 (年) (円) 0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7 0 100,000 200,000 300,000 400,000 500,000 600,000 700,000 800,000 900,000 国立大学(左軸) 私立大学(左軸) 国立/私立(右軸) 注:国立大学は標準額、私立大学は平均額。 出所:文部科学省発表資料 図 6 国公立・私立大学授業料の推移

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10 以上に述べたような、進学選択に直面する個人の、資金調達における資金供給の不均 等を抑制するような政策が機能しているならば、家計所得は大学進学決定に大きな影響 を及ぼさないはずである。本研究では、どのような条件のもとで、家庭所得が大学進学 の決定要因となるのかを明らかにし、大学教育の機会均等を達成するような政策が機能 しているかどうかを検討したい。

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先行研究と本研究の方針

第2章

第1章でも述べたとおり、出身家庭の所得と大学進学の決定要因に関しては、古くか ら人的資本論1における内部収益率仮説2の中で説明されている。Becker(1975/訳 1976) は、資本市場の完全性の仮定(この仮定の下では、進学者は一定の利子率において進学 費用を市場から調達する)は現実には成立せず、出身家庭の所得のような、個人の資金 調達能力が進学決定に影響を与えるとしている。我が国においても、荒井(1990)は その枠組みによって、マクロデータを用いた大学進学率を被説明変数とした分析を行い、 内部収益率を主眼においたモデルよりも、家計所得を主眼としたモデルの方が大学進学 率の決定要因を良く説明しており、家計所得は大学進学率に正の影響を与えることを示 している。 人的資本論によるモデルに基づく、ミクロデータを用いた分析については、特にアメ リカにおいて早くから行われてきた。Manski and Wise(1983)は、大学進学確率を はじめ、入学する大学のレベル、奨学金受給確率に家庭所得、学業成績、高校の質、親 の学歴、人種などの要因が与える影響について詳細な分析を行い、家庭所得が大学進学 確率の規定要因になっていること、また奨学金による機会均等政策の経済学的有効性に ついて述べている。 我が国においても、モデルに適合的な詳細なデータを利用することが難しい(特に、 個人が意思決定を行う際に想定する金銭的・非金銭的便益や、個人の大学進学にかかる 費用などをデータとしてそろえることが難しいため)という制約はあるものの、いくつ かの研究が蓄積されてきた。 金子(1987)は、人的資本論の枠組みの中で、ミクロデータによって観察可能な変 1人的資本論においては、進学行動は人的資本を蓄積するための投資であり、個人は人的資本 の蓄積による便益と、投資による費用を考慮して進学決定を行う、と考えられる。 2進学を行った際の将来の便益をある率𝑟で割り引いた現在価値と、将来の費用を𝑟で割り引い た現在価値が等しくなるような𝑟を内部収益率といい、個人は𝑟が市場利子率より大きければ進学 を、小さければ非進学を決定する。

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12 数から、大学進学決定の要因に関する二項ロジットモデルの手法を提示しており、金 子・吉本(1988)は、その手法を用いてミクロデータを用いた分析を行っている。そ の結果、まず家庭所得と大学進学には明確な対応があり、特に女子において所得の影響 が顕著であることを指摘している。しかし、所得以外の規定要因(出身高校の属性〔学 業成績の指標〕・父親の学歴・父親の職業)を加えて分析を行うと、男子においては所 得の独立の効果は統計的に有意でなくなる。また、国公立大学進学/それ以外の選択、 私立大学/それ以外の選択の二項ロジットモデルによる推定を、サンプルを出身高校の 属性(出身高校の進学率)に分類して行うと、国公立大学進学において、所得は男子の 進学校在学者のみ有意な負の効果を持ち、私立大学進学において、女子の進学校在学者 有意な正の効果を持つことが明らかにされた。以上のことから、男子と女子の間で所得 が進学確率に与える影響には明確な違いがあり、女子は男子に比較して進学による将来 の便益を低く見積もる分、進学確率に所得の影響が大きく現れること、また、高学力層 において、国公立大学は低所得層に対しての教育機会を供給する役割を持っていること がわかる。しかしながら、この研究では、学業成績の指標として出身高校の進学率別属 性を用いているため、各高校のカテゴリーでの成績の差異が無視されており、さらに出 身高校自体の組織単位の影響も加味されているという課題が挙げられている。また、国 公立大学・私立大学の選択を分けて分析を行う際に、二項ロジットモデルを用いている ため、各選択に対する厳密な要因の分析が行われているかどうかに疑問が残る。 中村(1992)は、家庭所得をはじめ、個人が大学進学決定の際に考慮する便益と費 用に影響するいくつかの要素(父親の学歴、母親の学歴など)を説明変数におき、ミク ロデータを用いた男女別の分析を行っている。その結果、家計所得は大学進学決定の要 因となっていること、男女の規定要因には違いが見られることを示している。 藤村(2009)は、大学進学決定について、家庭所得、学力、家庭の属性などを説明 変数としたロジットモデルによる進学確率の分析を行っている。都市規模別に行った分

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13 析では、大都市圏においてより家庭所得による進学確率の格差が強まること、国立大学 /私立大学/非進学の選択における多項ロジット分析では、学力が強く国立大学への進 学を規定している一方、低所得層であることが国立大学への進学確率を高めることから、 国立大学は低所得者層への教育機会をある程度保障していることが示された。また、他 の大学進学確率の要因として、きょうだいの数が大学進学確率を低める(きょうだい資 源希釈化説)ことを明らかにしている。 島(2010)は、高校生の進路分化の実態を中心に詳細な調査を行った「高校生の進 路についての調査」(2005)を基に、きわめて経済モデルに適合的な変数を用いて大学 進学行動の分析を行っている。各個人の大学進学に伴う主観的な便益、主観的な費用と、 資金調達能力としての家庭所得を説明変数にとったロジット回帰分析によって、家庭所 得が大学進学行動に有意に正の影響を及ぼすことを示している。 以上の研究により、家庭所得は、他の要因と独立して大学進学決定に影響を与えてい ることは明らかにされてきており、さらに選択を国公立大学/私立大学に分化させた場 合、国公立大学では家庭所得の影響が弱まったり、負の影響を持ったりして、国公立大 学が低所得層への教育機会を保障していることも示されているということがわかる。 本研究では、個人の大学進学決定について、それに対応する家庭所得との因果関係を 明らかにしたいので、ミクロデータを用いた実証分析を行う。金子(1987)の手法を 用いることで、可能な限り人的資本論の枠組みで、家計所得が大学進学確率に与える影 響、国公立大学/私立大学の選択確率に与える影響と、他の決定要因に関する分析を行 う。さらに、先行研究を踏まえ、家庭所得が進学決定に影響を与えるカテゴリーをより 詳細に明らかにするため、男女の別、進学決定を行った年代の別、出身地域の別を考慮 して分析する。

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分析手法

第3章

家計所得やその他の要因が、大学進学/非進学の二項選択、また大学非進学/国公立 大学進学/私立大学進学の多項選択の確率に与える影響を分析するために、二項ロジッ トモデル、多項ロジットモデルを用いた重回帰分析を行う。1 本章では、金子(1987)をもとに、二項ロジットモデルを用いた大学進学決定要因 の分析を整理し、それを敷衍する形で多項ロジットモデルを用いた大学進学決定要因の 分析について検討したい。なお、二項ロジットモデルの分析手法については牧(2001)、 北村(2009)を、多項ロジットモデルの分析手法については北村(2009)を参考にし た。

二項ロジットモデル

3.1

大学進学(=1)/非進学(=0)のような質的な変数を回帰し、その二項選択の確率 を分析するのが、二項ロジットモデルである。大学進学決定についての、金子(1987) のモデル設定を整理する。 大学進学の選択に迫られている個人𝑖について、大学進学が、非進学に対し持ってい る相対的な効用𝑅𝑖が、連続的な変量で表されているとすると、 𝑅𝑖≥ 0ならば進学(𝑦 = 1) 𝑅𝑖< 0ならば非進学(𝑦 = 0) [1] と定式化することができる。 ここで、相対的な便益𝑅𝑖は、大学進学によって将来期待される便益𝐵𝑖と、大学進学に よって要する費用𝐶𝑖に分けることができ、 𝑅𝑖 = 𝐵𝑖− 𝐶𝑖 [2] の関係が成り立つ。例えば、家計所得は、𝐶𝑖を高める要因として(進学費用調達の困 1 本研究の分析には、計量分析ソフト STATA を用いた。

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難さ)、本人の学業成績は、𝐵𝑖を高める要因として(学業成績が高ければ、進学する大 学のランクも高くなり、卒業後の大きな便益が見込める)はたらくといえる。 この𝑅𝑖を、観察可能な変数𝑥𝑙と、そのパラメータ𝛽𝑙を用いて、線形の関数であると仮 定する。 𝑅𝑖 = 𝛽0+ 𝛽1𝑥1+ ⋯ + 𝛽𝑙𝑥𝑙+ ⋯ + 𝑢𝑖 [3] そして、進学が選ばれる確率P(𝑦 = 1)の回帰式は、ロジスティック関数 F(𝑅) = exp⁡(𝑅) 1 + exp⁡(𝑅) [4] を用いて、次のように表される。 P(𝑦 = 1) = P(𝑅 ≥ 0) = F(𝑅|𝑅 = 𝛽0+ 𝛽1𝑥1+ ⋯ + 𝑢𝑖) [5] 最尤法によって、パラメータの推定量を得る。 ただし、これによって推定されたパラメータからは、説明変数の変動がP(𝑦 = 1)に対 し与える影響について、正負の符号以外には直観的に評価することができない。 よって、説明変数の1 単位の変動がP(𝑦 = 1)に与える影響を表す限界確率効果の平均 である平均限界確率効果1を算出し、報告する。 また、最小二乗法における決定係数𝑅2に相当する、モデルの適合度を表す指標として は、McFadden の疑似決定係数2(Pseudo⁡𝑅2)を報告する。

1限界確率効果(marginal probability effect : MPE)は次のように定義される。

𝑀𝑃𝐸𝑖𝑙= 𝜕 𝜕𝑥𝑖𝑙 P𝑖(𝑦𝑖= 1) = 𝜕𝐹(𝑅𝑖) 𝜕𝑅𝑖 ∙𝜕𝑅𝑖 𝜕𝑥𝑖𝑙 =𝜕𝐹(𝑅𝑖) 𝜕𝑅𝑖 ∙ 𝛽𝑙 [6]

この限界効果の平均が、平均限界確率効果(average marginal probability effect : AMPE) であり、次のように定義される。 𝐴𝑀𝑃𝐸𝑙= 1 𝑛∑ 𝑀𝑃𝐸𝑖𝑙 𝑛 𝑖=1 =1 𝑛∑ 𝜕𝐹(𝑅𝑖) 𝜕𝑅𝑖 ∙ 𝛽𝑙 𝑛 𝑖=1 [7] 2 全ての説明変数がゼロであると仮定したときの最大尤度の対数値を𝐿 0、当該の推定にお ける最大尤度の対数値を𝐿としたとき、 Pseudo⁡𝑅2= 1 − 𝐿 𝐿0 [8] と定義される。

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16

多項ロジットモデル

3.2

大学非進学に対する、国公立大学進学/私立大学進学のような、3 つ以上の異なる選 択の確率を分析するのが、多項ロジットモデルである。二項ロジットモデルで用いた理 論的設定を拡張し、多項ロジットモデルの手法を整理する。 個人𝑖における、大学非進学(選択肢𝑗 = 0)に対する、国公立大学進学(選択肢𝑗 = 1)/ 私立大学進学(選択肢𝑗 = 2)それぞれの選択の相対的な効用𝑅𝑖𝑗は、[2]式と同様、各選 択によって将来期待される便益𝐵𝑖𝑗と、各選択によって要する費用𝐶𝑖𝑗に分けることがで き、 𝑅𝑖𝑗 = 𝐵𝑖𝑗− 𝐶𝑖𝑗 [9] と表される。 この𝑅𝑖𝑗を、観察可能な変数𝑥𝑖と、そのパラメータ𝛽𝑗を用いて、線形の関数であると仮 定する。 𝑅𝑖𝑗 = 𝛽0𝑗+ 𝛽1𝑗𝑥𝑖1+ ⋯ + 𝛽𝑙𝑗𝑥𝑖𝑙+ ⋯ + 𝑢𝑖𝑗 [10] また、個人𝑖の選択結果𝑦𝑖が選択肢𝑗となる確率を、P(𝑦𝑖 = 𝑗) = 𝜋𝑖𝑗と表し、これらの確 率が0 < 𝜋𝑖𝑗 < 1と∑2𝑗=0𝜋𝑖𝑗 = 1を満たすものだとすると、次のような定式化ができる。 𝜋𝑖𝑗= exp⁡(𝑅𝑖𝑗) ∑2𝑗=0exp(𝑅𝑖𝑗) [11a] ここで、基準となる選択肢𝑗 = 0については、相対的な便益𝑅𝑖0が𝑅𝑖0 = 0であるといえ るので、[11a]式は、 𝜋𝑖0 = 1 1 + ∑2𝑗=1exp(𝑅𝑖𝑗) 𝜋𝑖𝑗 = exp(𝑅𝑖𝑗) 1 + ∑2𝑗=1exp(𝑅𝑖𝑗) ⁡𝑗 = 1,2 [11b] と定式化できる。 これらの確率を掛け合わせた多項選択確率関数は、

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17 𝑓(𝑦𝑖) = ∏ (𝜋𝑖𝑗) 𝑑𝑖𝑗 2 𝑗=0 ただし、𝑑𝑖𝑗= { 1(選択肢𝑗が選ばれた場合) 0(それ以外) [12] これを基に最尤法を用い、パラメータを推定する。 また、二項ロジットモデルと同様、ここで推定されるパラメータからは、説明変数の 変動が𝜋𝑖𝑗に対し与える影響について直観的に評価することができないため、相対的リ スク比1を算出して報告する。これは、説明変数の1単位の変動があったとき、基準と なる選択の確率に与える影響に対し、その選択の確率には何倍影響を与えることになる かを表示する指標であると解釈することができ、例えば相対的リスク比が1 より大きけ れば、その説明変数の変動は選択の確率に正の影響を与え、1より小さければ、負の影 響を与えるものと解釈できる。 さらに、モデルの適合度を表す指標として、二項ロジットモデルと同様 McFadden の疑似決定係数(Pseudo⁡𝑅2)を報告する。 1基準となる選択がなされる確率に対する、その確率が選ばれる確率の比をオッズ比といい、 P(𝑦𝑖= 𝑗) P(𝑦𝑖= 1) =𝜋𝑖𝑗 𝜋𝑖1 = exp(𝑅𝑖𝑗) [13] と表されるが、説明変数の限界的な変化に対するオッズ比の変化を考え、 exp⁡(𝑅𝑖𝑗+ ∆𝑥𝑖𝑙𝛽𝑗𝑙) exp(𝑅𝑖𝑗) = exp(∆𝑥𝑖𝑙𝛽𝑗𝑙) [14] という指標を導くことができ、これを限界的なオッズ比と呼ぶ。 そして、この選択肢𝑗に対する限界的なオッズ比と、基準となる選択𝑗 = 0に対する限界的なオ ッズ比の比が、相対的リスク比(relative risk ratio : rrr)であり、

𝑟𝑟𝑟𝑖𝑗 = [ exp⁡(𝑅𝑖𝑗+ ∆𝑥𝑖𝑙𝛽𝑗𝑙) exp(𝑅𝑖𝑗) ] [exp⁡(𝑅𝑖1+ ∆𝑥𝑖𝑙𝛽1𝑙) exp(𝑅𝑖1) ] ⁄ =exp(∆𝑥𝑖𝑙𝛽𝑗𝑙) exp(∆𝑥𝑖𝑙𝛽1𝑙) ≈exp(𝛽𝑗𝑙) exp(𝛽1𝑙) [15] と定義されている。

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18

モデル

第4章

サンプルの分類と被説明変数

4.1

第3章での分析枠組みを用いて分析を行うにあたって、具体的なモデルを整理してお く。第2章で示した本研究の方針に従って、サンプルと被説明変数によって次の3 種類 の分析を行う。 (1)大学進学/非進学を被説明変数とした、年代別の二項ロジット分析 (2)大学進学/非進学を被説明変数とした、出身地域別の二項ロジット分析 (3)国公立大学進学/私立大学進学/大学非進学を被説明変数とした多項ロジット 分析 なお、図 1 で示されているように、男女の進学率にはもともと大きな差があった。 両者の間には、大学進学確率の規定要因について構造的な違いがあると考えられるので、 全ての分析を通じて、サンプルを男女別に分け推定する。

説明変数

4.2

次に、第3章[2][9]式の𝐵𝑖、𝐶𝑖それぞれを高める要因を考慮した上で、[3][10]式に組 み込む説明変数について述べる。ここでは、分析全体に共通して現れると考えられる影 響について仮説を立て、のちの各分析によって異なると考えられる各変数の影響は、 各々の分析における仮説で特筆する。 まず推定にあたって最も重要な説明変数は、家庭所得である。これの大きさは、大学 進学にかかる資金調達の容易さに繋がり、𝐶𝑖を低める効果を持つため、大学進学確率に は正の効果を持つと考えられる。 他に大学進学確率を規定すると考えられる要因について述べる。学業成績は、大学進 学後の学業への興味関心や、より教育水準の高い大学に進学できる可能性を高め、人的 資本をより多く蓄積することにより期待する𝐵𝑖を高める。よって、大学進学確率に対し

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19 て正の効果を持つと考えられる。ただし、学業成績が家庭所得に影響されている場合、 家庭所得が、𝐶𝑖を低め直接大学進学確率を高める効果のほかに、大学進学より前の教育 費負担の容易さから学業成績を高め、間接的に大学進学確率を高めていると考えること もできる。よって、(1)学業成績を説明変数に含むモデル、(2)学業成績を説明変数 に含まないモデル2通りのモデルによる分析を比較し、家庭所得と学業成績それぞれの 影響について検討する。 父親の教育年数ならびに父親が管理的・専門的な職業であることは、子育ての過程に おいて伝達される意識や情報によって、期待する𝐵𝑖を高め、大学進学確率に対して正の 効果を持つと考えられる。母親の就労は、特に女子においては、母親の就労によって、 結婚後も就労を続ける意思が生じ、大学進学によって期待する𝐵𝑖を高めることで、大学 進学確率を高めると考えられる。きょうだい数は、藤村(2009)で明らかにされた大 学進学におけるきょうだい資源希釈化説によれば大学進学確率を低めると考えられる。 本研究の枠組みにあてはめるならば、個人の大学進学にかかる資金調達を困難にし、𝐶𝑖 を高める要因になっていると考えられるためである。

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データ

第5章

用いるデータセットは、東京大学社会科学研究所附属社会調査・データアーカイブ研 究センター(SSJDA)から提供を受けた「2005 年 SSM 調査」(2005 年社会階層と社 会移動調査研究会)である。「SSM 調査」は、1955 年以来 10 年ごとに実施されてきた、 社会階層や教育、職業に関する社会調査である。 「2005 年 SSM 調査」は、全国の満 20 歳~69 歳(2005 年 9 月 30 日時点)の男女 から層化二段確率比例抽出1によって標本を抽出し、調査員による個別面接調査と留置 調査を行った個票データである。2005 年 11 月~2006 年 4 月にわたって調査が行われ、 有効票数は5,742 である。(回収率 44.1 パーセント) 第2章で整理した、ミクロデータを用いた先行研究に用いられているデータセットは、 ほとんどがある年の高校 3 年生を調査対象にして収集された進路分化のパネルデータ であるのに対し、本研究で用いるデータセットは、サンプルサイズの制約上「2005 年 SSM 調査」から得られる、調査対象者の高校卒業後の進路をもとにしたプールドクロ スセクションデータである点が、先行研究との相違点であるが、全国を対象にした調査 であり、学業成績や家庭の属性、出身地域などのデータを含んでいる点で、先行研究で 用いられたデータセットと類似している。 詳細な各変数の作成方法は、本稿末尾の付表 1 を参照されたい。また、記述統計量 については、第6章で各々の分析を行う前に報告するが、ここでは、被説明変数の一つ である大学進学の有無について述べておく。6.1節で行う分析において見る限りの平 均値2と、当該年の実際の大学進学率3を表 1 に示したが、両者に大きな乖離は無く、本 データセットは大学進学確率の分析を行うのに適していると考えることができる。 1全国の区市町村を人口規模に応じて層化し、投票区を第1 次抽出単位として 1,010 地点を抽 出したのち、選挙人名簿から対象者を系統抽出法により抽出する。 2 付表 2 より抜粋した。 3文部科学省「学校基本調査」、厚生労働省「人口動態調査」に基づく18 歳人口をもとに加重 平均をとった大学進学率。

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21 サンプルの 大学進学率 実際の 大学進学率 サンプルの 大学進学率 実際の 大学進学率 1936年~1960年出生コホート 28.5% 23.6% 6.3% 6.0% 1961年~1985年出生コホート 42.8% 39.2% 20.4% 19.3% 男子 女子 表 1 サンプルと実際の大学進学率比較

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仮説と分析結果

第6章

これまでの章で述べてきた分析モデルを用いて、大学進学確率の規定要因について分 析を行う。各項において分析手順、仮説について述べ、分析結果を解釈していきたい。

大学進学/非進学の二項ロジット分析(年代別)

6.1

仮説 6.1.1 図 7は、大学進学率と、18 歳人口、大学入学者の推移を示したものである。第1章 でも述べたように、戦後の我が国における大学進学率は、概ね上昇傾向をたどってきた。 そこで、大学進学率を、18 歳人口と大学入学者に分解して概観すると、大学進学率の 変化は、そのほとんどが18 歳人口の変化によって説明されることが分かる。つまり、 大学入学者を、大学入学定員と読み替えた場合、もともと大学進学を希望する者は大学 入学定員以上に存在し、選抜を経て大学進学を決定するのではないか、と考えられる。 よって、近年の大学進学率の上昇が、大学入学定員に対する18 歳人口の減少、すなわ ち選抜によって大学非進学を決定する者の減少によって説明され、さらに低所得者層に 対する均等化政策が機能していないとすれば、大学進学確率の年代別の分析を行ったと きには、近年の学業成績が進学確率に与える影響は減少し、その分家庭所得の影響が大 きくなるのではないか、という仮説を立てる。 本分析は、サンプルを①全体に説明変数 1961 年~1985 年出生コホートダミーを加 えたもの、②1935 年~1960 年出生コホート、③1961 年~1985 年出生コホートの 3 つ に分け、それぞれにおいて行う大学進学確率の二項ロジット分析である。分析に用いる 各変数の記述統計量は、付表 1 に記す。

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23 図 7 大学進学率と 18 歳人口、大学入学者の推移 分析結果 6.1.2 分析結果を表 2に報告する。学業成績を説明変数に加えたモデルにおいて、家庭の暮 らし向きは有意な正の効果を持つが、学業成績に比べその規定力は弱いと考えることが できる。また、男女別にみると、男子において年代の変化に伴う家庭の暮らし向きの影 響の変化は、その他の規定要因との比較において、1935~1960 年出生コホートと比べ 1961~1985 年出生コホートでその影響がより強まっている。女子では、1935~1960 年出生コホートで有意な効果を持たなかったものの、1961~1985 年出生コホートでは カテゴリー1から3への移動で有意な正の効果を持つ。さらに、学業成績を説明変数か ら除いたモデルを見ると、男子では、年代の変化によって他の規定要因と比べた家庭の 暮らし向きの影響は、逆に小さくなっていることから、家庭所得の学業成績を通じた間 接的な効果は小さく、一方女子では、年代の変化によって他の規定要因と比べた家庭の 暮らし向きの影響は学業成績を含むモデルと同様大きくなっていることから、家庭所得 の学業成績を通じた間接的な効果が存在すると考えることができる。 年代の変化に伴う家庭の暮らし向きの大学進学確率への直接的影響は、特に男子に 出所:文部科学省「学校基本調査」、厚生労働省「人口動態調査」 0 10 20 30 40 50 60 0 200000 400000 600000 800000 1000000 1200000 1400000 1600000 1800000 2000000 2200000 2400000 2600000 2800000 19 49 19 54 19 59 19 64 19 69 19 74 19 79 19 84 19 89 19 94 19 99 20 04 20 09 大学入学者(左軸) 18歳人口(左軸) 大学進学率(右軸) (人) (%) (年)

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表 2 分析結果(年代別の大学進学二項ロジット分析) 注:***=1%有意、**=5%有意、*=10%有意。括弧内は標準誤差。 ダミー変数の平均限界効果は、基準となるカテゴリーからの変動の平均効果。 変数名 係数 平均限界効果 係数 平均限界効果 係数 平均限界効果 係数 平均限界効果 2 0.549*** 0.078 0.507*** 0.085 0.494 0.032 0.535 0.036 (0.170) (0.157) (0.404) (0.386) 3 0.966*** 0.144 1.027*** 0.185 1.204*** 0.092 1.407*** 0.123 (0.209) (0.192) (0.414) (0.396) 2 1.23*** 0.148 0.747* 0.031 (0.215) (0.395) 3 2.714*** 0.418 2.403*** 0.181 (0.215) (0.385) 父親教育年数 0.159*** 0.023 0.180*** 0.031 0.237*** 0.018 0.254*** 0.022 (0.023) -0.021 (0.030) (0.029) 父親管理・専門・技術的職業 1.225*** 0.178 1.254*** 0.217 0.355* 0.027 0.500*** 0.043 (0.181) (0.168) (0.195) (0.183) 母親就労 -0.175 -0.025 -0.227* -0.039 -0.092 -0.007 -0.163 -0.014 (0.132) (0.121) (0.171) (0.161) きょうだい数 -0.274*** -0.040 -0.284*** -0.049 -0.308*** -0.024 -0.306*** -0.026 (0.050) (0.047) (0.083) (0.080) 1961年~1985年出生コホート -0.063 -0.009 -0.411*** -0.071 0.807*** 0.062 0.551*** 0.047 (0.155) (0.139) (0.185) (0.174) 定数 -3.943*** -2.268*** -6.834*** -5.430*** (0.362) (0.282) (0.678) (0.543) 最大尤度の対数値 疑似決定係数 変数名 係数 平均限界効果 係数 平均限界効果 係数 平均限界効果 係数 平均限界効果 2 0.330* 0.044 0.345* 0.052 0.300 0.011 0.388 0.015 (0.201) (0.188) (0.562) (0.551) 3 0.815*** 0.117 0.910*** 0.150 0.825 0.037 1.218** 0.062 (0.260) (0.247) (0.588) (0.573) 2 1.380*** 0.135 0.856 0.014 (0.352) (1.060) 3 2.616*** 0.343 2.714*** 0.100 (0.346) (1.031) 父親教育年数 0.155*** 0.021 0.179*** 0.027 0.196*** 0.009 0.224*** 0.011 (0.029) -0.027 (0.044) (0.041) 父親管理・専門・技術的職業 1.216*** 0.166 1.258*** 0.193 0.871*** 0.038 0.821*** 0.039 (0.250) (0.236) (0.323) (0.309) 母親就労 -0.385** -0.053 -0.434*** -0.067 0.186 0.008 0.054 0.003 (0.171) (0.161) (0.294) (0.279) きょうだい数 -0.287*** -0.039 -0.291*** -0.045 -0.422*** -0.018 -0.424*** -0.020 (0.055) -0.052 (0.113) (0.111) 定数 -3.596*** -2.001*** -6.459*** -4.929*** (0.482) (0.344) (1.256) (0.751) 最大尤度の対数値 疑似決定係数 変数名 係数 平均限界効果 係数 平均限界効果 係数 平均限界効果 係数 平均限界効果 2 1.055*** 0.159 0.872*** 0.052 0.714 0.070 0.699 0.073 (0.338) (0.302) (0.582) (0.546) 3 1.408*** 0.216 1.350*** 0.063 1.519** 0.178 1.595*** 0.215 (0.384) (0.339) (0.595) (0.557) 2 1.102*** 0.171 0.736* 0.056 (0.275) (0.430) 3 2.942*** 0.537 2.360*** 0.298 (0.287) (0.420) 父親教育年数 0.169*** 0.026 0.181*** 0.007 0.276*** 0.033 0.280*** 0.039 (0.040) (0.036) (0.044) (0.041) 父親管理・専門・技術的職業 1.232*** 0.191 1.245*** 0.045 0.063 0.008 0.320 0.044 (0.266) (0.240) (0.248) (0.229) 母親就労 0.143 0.022 0.041 0.037 -0.236 -0.028 -0.269 -0.037 (0.211) (0.185) (0.212) (0.197) きょうだい数 -0.229* -0.035 -0.277** 0.022 -0.144 -0.017 -0.146 -0.020 (0.128) (0.111) (0.135) (0.125) 定数 -4.883*** -3.195*** -6.799*** -5.491*** (0.659) (0.540) (0.925) (0.784) 最大尤度の対数値 疑似決定係数 0.304 0.140 0.239 0.139 0.229 0.290 0.203 0.330 0.253 被説明変数:大学進学 15歳時家庭暮らし向き (基準カテゴリー:1) 中3時学業成績 (基準カテゴリー:1) 女子/全体(成績あり) (観測値数=2048) -801.697 15歳時家庭暮らし向き (基準カテゴリー:1) 中3時学業成績 (基準カテゴリー:1) (観測値数=1790) 男子/全体(成績あり) 被説明変数:大学進学 0.303 0.190 0.313 -512.986 -209.592 (成績あり)(観測値数=1080) 男子/1935~1960年出生 (成績あり)(観測値数=1193) 女子/1935~1960年出生 被説明変数:大学進学 15歳時家庭暮らし向き (基準カテゴリー:1) 中3時学業成績 (基準カテゴリー:1) 女子/全体(成績なし) (観測値数=2048) -584.008 男子/全体(成績なし) (観測値数=1790) -931.685 -187.624 -458.461 -520.700 女子/1935~1960年出生 (成績なし)(観測値数=1193) 男子/1935~1960年出生 (成績なし)(観測値数=1080) -415.827 -337.429 -328.558 -371.599 女子/1961~1985年出生 女子/1961~1985年出生 男子/1961~1985年出生 男子/1961~1985年出生 (成績なし)(観測値数=855) (成績あり)(観測値数=855) (成績なし)(観測値数=710) (成績あり)(観測値数=710)

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25 おいて強まっていると考えることができ、仮説に適合しているといえる。あくまで機会 均等を保障するのであれば、現状では奨学金のような、低所得者層の資金調達能力を高 められるような制度が時代の変化に対応していないのではないかと考えられる。 加えて、他の規定要因について解釈する。学業成績は、いずれの年代においても強い 正の効果を持つ。父親の教育年数・職業について考えると、いずれの年代でも、男子で は父親の職業が相対的に大きな効果を持つのに対し、女子では父親の教育年数が相対的 に大きな効果を持つ。これは、父親の職業が管理的・専門的・技術的職業をダミー変数 にとったもので、医師やその他の専門資格、会社社長など、子がそれらの職業を継承す るにあたって、大学進学が非常に大きな便益を持つものが多く含まれる。男子は女子に 比べ、その影響をより強く受けてきたと解釈できる。きょうだい数は、年代に関わらず 一定の有意な負の効果を持つ。家計における子の教育費には制約があり、きょうだい数 の増加は進学資金調達を困難にするといえる。以上は概ね仮説に適合する結果が得られ たが、母親の就労については、特に正の影響を期待した女子において、有意な結果が得 られなかった。母親が就労していることは、必ずしも結婚後、就労を継続する誘因にな っていないのではないかと考えられる。

大学進学/非進学の二項ロジット分析(出身地域別)

6.2

仮説 6.2.1 図 8 は、各都道府県の大学生数における国公立大学生数・私立大学生数の比を示し たものであるが、私立大学は都市部に集積し、地方部であるほど国公立大学の割合が大 きくなるといえる。成績による入学のハードルが私立大学に比べて高い国公立大学が大 きなシェアを占める地方部では、学業成績が大学進学確率に与える影響が大きくなり、 相対的に家庭所得の影響が小さくなるという仮説を立てる。

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26 本分析は、サンプルを①全体に三大都市圏1 住ダミーを加えたもの②三大都市圏在住者③非 三大都市圏在住者の 3 つに分け、それぞれにお いて行う二項ロジット分析である。分析に用い る各変数の記述統計量は、付表 3 に示す。 1 総務省が定義する「関東大都市圏」「中京大都市圏」「近畿大都市圏」の中心都市を含む都府 県(東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県・愛知県・京都府・大阪府・兵庫県)を三大都市圏と定 義する。 0% 50% 100% 北海道 青森県 岩手県 宮城県 秋田県 山形県 福島県 茨城県 栃木県 群馬県 埼玉県 千葉県 東京都 神奈川県 新潟県 富山県 石川県 福井県 山梨県 長野県 岐阜県 静岡県 愛知県 三重県 滋賀県 京都府 大阪府 兵庫県 奈良県 和歌山県 鳥取県 島根県 岡山県 広島県 山口県 徳島県 香川県 愛媛県 高知県 福岡県 佐賀県 長崎県 熊本県 大分県 宮崎県 鹿児島県 沖縄県 国公立学生比率 私立学生比率 出所:文部科学省「学校基本調査」 図 8 都道府県別国公立・私立大学 在籍者数比率

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27 分析結果 6.2.2 分析結果を表 3 に報告する。学業成績を説明変数に加えたモデルにおいて、男女ともに、 非三大都市圏在住者では、三大都市圏在住者よりも、相対的にみたときの家庭の暮らし 向きは有意な正の効果を持つが、その影響は小さい。学業成績が、より大きく有意な正 の影響を及ぼしていることがわかる。これは仮説に適合しており、国公立大学のシェア が大きい地方部では、学業成績が入学難易度の高い国公立大学に入学を決定するにあた って、強い規定力を持つと解釈でき、地方部においては、国公立大学が、学力の高い低 所得者層の大学進学機会を保障する重要な役割を担っていることがわかる。ただし、学 業成績を説明変数から除いたモデルを見ると、家庭の暮らし向きの影響は学業成績を含 んだモデルよりわずかに大きくなっていることから、家庭所得が学業成績を通じ間接的 に与える影響も存在することに留意しなければならない。 また、三大都市圏在住ダミーを説明変数に加え、全体で分析を行った場合、三大都市 圏在住ダミーは有意な正の効果を持ち、大学教育の供給が多い都市部に在住しているこ とが、地方部に比べ大学進学確率を高めていることがわかる。地方部に在住する学生に とって、進学に伴う移動の費用を小さくできるような支援制度が、機会均等を達成する にあたって有効であると考えられる。 他の規定要因について解釈すると、概ね6.1節の分析で得られた結果と同様の傾向 を示しており、三大都市圏在住者と非三大都市圏在住者の間で大きな差異は無いといえ る。

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注:***=1%有意、**=5%有意、*=10%有意。括弧内は標準誤差。 ダミー変数の平均限界効果は、基準となるカテゴリーからの変動の平均効果。 表 3 分析結果(在住地別の大学進学二項ロジットモデル分析) 変数名 係数 平均限界効果 係数 平均限界効果 係数 平均限界効果 係数 平均限界効果 2 0.536*** 0.076 0.501*** 0.083 0.497 0.032 0.537 0.036 (0.172) (0.158) (0.404) (0.386) 3 0.937*** 0.137 1.014*** 0.180 1.181*** 0.090 1.377*** 0.119 (0.211) (0.194) (0.415) (0.396) 2 1.217*** 0.144 0.720* 0.031 (0.216) (0.395) 3 2.750*** 0.419 2.370*** 0.180 (0.217) (0.385) 父親教育年数 0.153*** 0.022 0.175*** 0.030 0.237*** 0.018 0.254*** 0.022 -0.023 (0.022) -0.031 (0.029) 父親管理・専門・技術的職業 1.263*** 0.181 1.282*** 0.219 0.361* 0.028 0.514*** 0.044 (0.183) (0.169) (0.195) (0.183) 母親就労 -0.133 -0.019 -0.192 -0.033 -0.084 -0.006 -0.160 -0.014 (0.134) (0.122) (0.172) (0.162) きょうだい数 -0.262*** -0.037 -0.275*** -0.047 -0.303*** -0.023 -0.300*** -0.026 -0.05 (0.047) -0.084 (0.080) 1961年~1985年出生コホート -0.053 -0.008 -0.411*** -0.070 0.800*** 0.061 0.551*** 0.047 (0.156) (0.140) (0.186) (0.175) 三大都市圏 0.506*** 0.072 0.410*** 0.070 0.114 0.009 0.097 0.008 (0.136) (0.123) (0.170) (0.161) 定数 -4.101*** -2.383*** -6.847*** -5.476*** (0.368) (0.286) (0.679) (0.546) 最大尤度の対数値 疑似決定係数 変数名 係数 平均限界効果 係数 平均限界効果 係数 平均限界効果 係数 平均限界効果 2 0.856*** 0.133 0.783*** 0.148 0.752 0.054 0.789 0.059 (0.328) (0.294) (0.787) (0.760) 3 1.306*** 0.207 1.507*** 0.294 1.915** 0.186 1.939** 0.207 (0.386) (0.351) (0.798) (0.768) 2 0.676** 0.108 0.176 0.012 (0.328) (0.584) 3 2.487*** 0.440 1.854*** 0.196 (0.344) (0.566) 父親教育年数 0.150*** 0.023 0.174*** 0.033 0.223*** 0.022 0.239*** 0.026 (0.038) (0.035) -0.048 (0.045) 父親管理・専門・技術的職業 1.052*** 0.163 0.982*** 0.184 -0.004 0.000 0.253 0.027 (0.311) (0.285) (0.313) (0.296) 母親就労 -0.421* -0.065 -0.402* -0.075 -0.046 -0.004 -0.078 -0.008 (0.232) (0.210) (0.277) (0.261) きょうだい数 -0.399*** -0.062 -0.358*** -0.067 -0.325** -0.032 -0.305** -0.033 (0.105) (0.094) (0.139) (0.133) 1961年~1985年出生コホート -0.331 -0.051 -0.690*** -0.129 0.349 0.034 0.103 0.011 (0.275) (0.248) (0.297) (0.278) 定数 -2.901*** -1.779*** -6.083*** -5.221*** (0.616) (0.507) (1.110) (0.949) 最大尤度の対数値 疑似決定係数 変数名 係数 平均限界効果 係数 平均限界効果 係数 平均限界効果 係数 平均限界効果 2 0.395* 0.053 0.362* 0.057 0.461 0.027 0.483 0.030 (0.203) (0.188) (0.476) (0.452) 3 0.761*** 0.106 0.751*** 0.126 0.857* 0.056 1.144** 0.087 (0.255) (0.235) (0.496) (0.470) 2 1.574*** 0.155 1.061* 0.035 (0.298) (0.547) 3 2.989*** 0.405 2.745*** 0.172 (0.295) (0.536) 父親教育年数 0.156*** 0.021 0.177*** 0.029 0.238*** 0.016 0.254*** 0.019 (0.030) (0.028) (0.040) (0.0377) 父親管理・専門・技術的職業 1.400*** 0.191 1.473*** 0.239 0.600** 0.040 0.675*** 0.051 (0.228) (0.211) -0.253 (0.236) 母親就労 0.007 0.001 -0.071 -0.011 -0.085 -0.006 -0.198 -0.015 (0.167) (0.153) (0.222) (0.208) きょうだい数 -0.218*** -0.030 -0.244*** -0.040 -0.283*** -0.019 -0.294*** -0.022 (0.058) (0.055) (0.105) (0.101) 1961年~1985年出生コホート 0.103 0.014 -0.253 -0.041 1.065*** 0.071 0.819*** 0.062 (0.192) (0.172) (0.245) (0.231) 定数 -4.555*** -2.509*** -7.357*** -5.590*** (0.469) (0.348) (0.890) (0.679) 最大尤度の対数値 疑似決定係数 0.298 0.176 0.324 0.234 中3時学業成績 (基準カテゴリー:1) -535.046 0.313 0.230 0.312 0.196 0.315 0.198 0.296 0.217 -204.236 -183.854 -247.776 -518.937 女子/三大都市圏在住 (成績なし)(観測値数=584) 男子/三大都市圏在住 (成績あり)(観測値数=524) 女子/三大都市圏在住 (成績あり)(観測値数=584) -789.040 15歳時家庭暮らし向き (基準カテゴリー:1) 中3時学業成績 (基準カテゴリー:1) 被説明変数:大学進学 被説明変数:大学進学 男子/全体(成績なし) (観測値数=1786) (成績なし)(観測値数=524) 男子/非三大都市圏在住 (成績あり)(観測値数=1262) -289.946 (観測値数=1786) 男子/全体(成績あり) 15歳時家庭暮らし向き (基準カテゴリー:1) 中3時学業成績 (基準カテゴリー:1) 被説明変数:大学進学 15歳時家庭暮らし向き (基準カテゴリー:1) 女子/全体(成績なし) (観測値数=2040) -921.929 -581.082 男子/三大都市圏在住 (観測値数=2040) 女子/全体(成績あり) -627.187 -329.327 -373.017 女子/非三大都市圏在住 (成績あり)(観測値数=1456) 男子/非三大都市圏在住 (成績なし)(観測値数=1262) 女子/非三大都市圏在住 (成績なし)(観測値数=1456)

(30)

29

国公立大学進学/私立大学進学/非進学の多項ロジット

6.3

分析

仮説 6.3.1 第1章で述べたように、大学規模の拡大に伴って、国公立大学の規模も一定の割合で 拡大してきた。都市部・地方部にかかわらず全国に設立され、私立大学に比べ低授業料 である国公立大学は、低所得層に対し一定の教育機会を保障する役割を担ってきたと考 えられる。しかし一方で、私立大学と比べた国公立大学の学費は上昇傾向にあり、国公 立大学の、低所得者層に対する教育機会保障の役割は失われているのではないか。その 場合、家庭の暮らし向きが国公立/私立大学進学確率それぞれに与える影響に、大きな 差異が見られないと考えられるので、これを仮説とする。 本分析は、大学非進学を基準選択とし、それと比較して国公立大学進学/私立大学進 学を選択する場合の規定要因に関する多項ロジット分析である。分析に用いる変数の記 述統計量は、付表 4 に示す。 分析結果 6.3.2 分析結果を表 4 に報告する。相対的リスク比を比較すると、男女ともに、国公立大 学への進学選択は学業成績が非常に大きな正の効果を持ち、家庭の暮らし向きは有意で 無いか、規定力が微弱であるという、仮説とは逆の結果が得られた。6.2節と同様、 家庭の暮らし向きのカテゴリー1から3への変動において、家庭所得の学業成績を通じ た間接的な効果はあるものの、国公立大学は、高成績であるが家庭所得が低い者に対し 一定の進学機会を保障していると解釈できる。一方、私立大学への進学選択は、国公立 大学とは対照的に、家庭の暮らし向きが有意な正の効果を持つことが分かった。 また、三大都市圏ダミーの相対的リスク比を比較すると、男女ともに、三大都市圏に 在住していることが、地理的なアクセスの良さから、私立大学選択の確率を高める要因

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30 表 4 分析結果(大学種別選択の多項ロジット分析) 注:***=1%有意、**=5%有意、*=10%有意。括弧内は標準誤差。 変数名 係数 相対的リスク比 係数 相対的リスク比 係数 相対的リスク比 係数 相対的リスク比 2 0.530* 1.699 0.516*** 1.676 0.431 1.538 0.508*** 1.662 (0.287) (0.186) (0.269) (0.177) 3 0.418 1.519 1.045*** 2.845 0.568* 1.765 1.140*** 3.127 (0.347) (0.222) (0.324) (0.210) 2 1.311** 3.711 1.194*** 3.301 (0.634) (0.223) 3 4.146*** 63.209 2.371*** 10.707 (0.599) (0.226) 父親教育年数 0.198*** 1.219 0.138*** 1.148 0.223*** 1.250 0.156*** 1.169 (0.035) (0.025) (0.033) (0.023) 父親管理・専門・技術的職業 1.192*** 3.295 1.202*** 3.326 1.212*** 3.360 1.230*** 3.423 (0.255) (0.188) (0.234) (0.178) 母親就労 -0.274 0.760 -0.087 0.917 -0.349* 0.706 -0.132 0.876 (0.207) (0.141) (0.189) (0.133) きょうだい数 -0.232*** 0.793 -0.270*** 0.764 -0.272*** 0.762 -0.280*** 0.756 (0.084) (0.054) (0.078) (0.052) 1961年~1985年出生コホート 0.190 1.209 -0.119 0.888 -0.336 0.714 -0.432*** 0.649 (0.232) (0.163) (0.211) (0.151) 三大都市圏 0.168 1.183 0.621*** 1.861 0.0152 1.015 0.563*** 1.756 (0.216) (0.140) (0.198) (0.132) 定数 -6.932*** 0.001 -4.058*** 0.017 -3.956*** 0.019 -2.591*** 0.075 (0.777) (0.386) (0.466) (0.313) 最大尤度の対数値 疑似決定係数 変数名 係数 相対的リスク比 係数 相対的リスク比 係数 相対的リスク比 係数 相対的リスク比 2 0.0862 1.090 0.783 2.187 0.0352 1.036 0.853 2.346 (0.582) (0.535) (0.551) (0.527) 3 0.203 1.225 1.666*** 5.290 0.389 1.475 1.883*** 6.571 (0.612) (0.543) (0.582) (0.534) 2 0.068 1.070 0.870* 2.388 (0.805) (0.448) 3 2.735*** 15.410 2.207*** 9.087 (0.737) (0.441) 父親教育年数 0.321*** 1.379 0.207*** 1.230 0.335*** 1.399 0.223*** 1.249 (0.055) (0.034) (0.052) (0.032) 父親管理・専門・技術的職業 0.554* 1.740 0.296 1.345 0.755*** 2.127 0.412** 1.510 (0.309) (0.217) (0.292) (0.210) 母親就労 -0.036 0.965 -0.070 0.933 -0.160 0.852 -0.136 0.873 (0.283) -0.191 (0.268) (0.184) きょうだい数 -0.172 0.842 -0.350*** 0.705 -0.160 0.852 -0.353*** 0.703 (0.137) (0.096) (0.131) (0.094) 1961年~1985年出生コホート 1.082*** 2.951 0.711*** 2.037 0.808*** 2.243 0.478** 1.612 (0.318) (0.205) (0.306) (0.197) 三大都市圏 -0.556* 0.573 0.342* 1.407 -0.525* 0.592 0.337* 1.401 (0.306) (0.185) (0.295) (0.179) 定数 -9.103*** 0.000 -7.045*** 0.001 -7.467*** 0.001 -5.749*** 0.003 (1.212) (0.806) (0.923) (0.678) 最大尤度の対数値 疑似決定係数 0.297 0.206 中3時学業成績 (基準カテゴリー:1) 15歳時家庭暮らし向き (基準カテゴリー:1) -1106.070 -648.815 男子(成績あり)(観測値数=1786) 私立大学進学 国公立大学進学 私立大学進学 国公立大学進学 女子(成績あり)(観測値数=2040) 被説明変数:大学選択 (基準選択:大学非進学) 0.269 男子(成績なし)(観測値数=1786) 国公立大学進学 私立大学進学 女子(成績なし)(観測値数=2040) 国公立大学進学 私立大学進学 0.153 -716.355 被説明変数:大学選択 (基準選択:大学非進学) 15歳時家庭暮らし向き (基準カテゴリー:1) 中3時学業成績 (基準カテゴリー:1) -1263.348

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31 になっていることがわかる。これは、6.2節で述べた、進学に伴う移動の費用の面で の、都市部と地方部の格差をさらに裏付ける結果となっている。 加えて、他の要因について解釈する。本節の分析に特徴的であるのが、父親の教育年 数の効果である。男女ともに、私立大学の選択よりも、国公立大学の選択に対する正の 効果が大きい。高学歴な父親のもとでは、大学進学の中でも国公立大学に進学する便益 をより大きく期待すると解釈できる。

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32

結論

第7章

本研究では、大学進学決定における家庭所得の影響、およびその他の要因の影響につ いて、ミクロデータを用いた男女別、年代別、在住地域別、大学設置者による選択別の 分析を行った。前章までに行った分析によって、以下の5点が明らかになった。 第1に、男女ともに、家庭所得は個人の大学進学確率に対して正の影響を及ぼす。こ れは先行研究を支持する結果であった。 第2に、男女別の効果の強さについて見ると、前の年代では男子のみ有意な効果を持 っていたものの、女子では効果を持たなかった。全体と後の年代は男女両方において有 意な効果を持っていたが、どちらにおいて家庭所得の効果が大きいかは判別できず、他 の要因にのみ効果に違いが見られた(男子では父親の職業が、女子では父親の教育年数 がより大きな効果を持つ)。これは、女子の方が大学進学決定に対する家庭所得の影響 が強いとする先行研究とは異なる結果であった。前の年代で、学業成績を除外したモデ ルでは家庭の暮らし向きが有意な正の効果をもつことから、家庭所得が学業成績を通じ て大学進学決定に与える影響が強く、家庭所得の影響を正確に推定することができなか った可能性がある。 第3に、年代別の規定要因について、男女ともに、家庭所得の効果は年代の推移によ ってより大きくなる。特に男子では、家庭所得が進学にかかる資金調達能力として、直 接的に強い影響を及ぼす。 第4に、在住地域別の規定要因について、男女ともに、国公立大学のシェアが大きい 地方部では、学業成績が強い規定力を持ち、家庭所得の影響は相対的に小さい。ただし、 家庭所得が学業成績を規定し、間接的に大学進学決定に影響を及ぼしている可能性も存 在する。 第5に、国公立大学/私立大学/大学非進学の選択別の規定要因について、男女とも に、国公立大学では、学業成績が強い規定力を持ち、家庭所得は有意な効果をほとんど

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33 持たない。逆に、私立大学では、家庭所得は強い効果を持つ。また、都市部に在住して いることが私立大学選択の確率を高める要因になる。 なお、本研究では、分析全体を通じて男女別の分析を行い、決定要因の違いを明らか にしようとしたが、家庭所得以外の決定要因では違いが見られたものの、家庭所得に関 しては明確な違いは見られなかった。主な原因として、家庭所得を表す変数である家庭 の暮らし向きが、本人の主観であり、カテゴリー変数として組み込んだことなどが挙げ られる。年間家計所得のような、客観的で連続的な変数を用いることができれば、両者 の厳密な差異の有無を明らかにできるかもしれない。 以上によって明らかにされた、家庭所得が大学進学行動に与える影響から、今後の教 育機会均等のための政策がどうあるべきかについて考えたい。大学進学に伴う資金調達 可能性の均等化は、大学進学率の拡大に追い付いていないといえる。これに対しては、 低所得層に属する者が、より資金調達を容易にできるような奨学金等の制度が考えられ る。また、国公立大学は、これまで果たしてきた、低所得層への大学教育の機会保障の 役割を維持し続けることが、大学教育の機会均等のために有効であろう。しかし、機会 均等のための公的な財政政策にも限界は生じる。本研究で分析枠組みとして用いた人的 資本論では、個人が大学進学による人的資本の蓄積から得る将来の便益を考慮すると仮 定したが、大学進学の目的が、人的資本への投資ではなく、通常のサービスの消費と同 質化するならば、機会均等化に向けた積極的な公的負担の拡大を行う必要はあるだろう か。今回、あくまで大学教育機会の均等化という視点で大学進学決定と家計所得につい て論じたが、機会均等そのものの社会的な意義を考え、人的資本の蓄積だけではない大 学進学の他の目的も考慮に入れた、大学進学決定に関する分析を行っていかなければな らないだろう。

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謝辞

末筆ではありますが、本論文の執筆にあたってお世話になった方々に謝辞を申し上げ たいと思います。 〔二次分析〕に当たり、東京大学社会科学研究所附属社会調査・データアーカイブ研 究センターSSJ データアーカイブから〔「2005 年 SSM 日本調査,2005」(2005SSM 研 究会データ管理委員会)〕の個票データの提供を受けました。当調査データのご提供に よって、目的とする分析が行えたことに感謝いたします。 また、ゼミナール指導教員として、最後まで温かいご指導をくださった川口大司教授 に深謝いたします。

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参考文献

荒井一博(1990)「大学進学率の決定要因」、『経済研究』、41 巻 3 号、241-249 頁 金子元久(1987)「教育機会均等の理念と現実」、『教育社会学研究』、第 42 集、38-50 頁 金子元久・吉本圭一(1988)「高等教育機会の選択と家庭所得―選択モデルによる規定 要因分析―」、『大学論集』第18 集、101-123 頁 北村行伸(2009)『ミクロ計量経済学入門』、日本評論社 小林雅之(2012)『教育の機会均等への挑戦 授業料と奨学金の 8 か国比較』、東信堂 島一則(2010)「男子の大学進学行動の経済モデル分析―ミクロデータによる検討―」、 『大学論集』第41 集、97-108 頁 中村二朗(1992)「家計属性と進学行動に関する実証分析」、『経済研究』、44 巻 3 号、 212-220 頁 藤村正司(2009)「大学進学における所得格差と高等教育政策の可能性」、『教育社会学 研究』、第85 集、27-48 頁 牧厚志(2001)『応用計量経済学入門』、日本評論社

Becker, Gary Stanley/佐野陽子訳(1976)『人的資本』、東洋経済新報社

Manski, C., and Wise, D(1983), College Choice in America, Harvard University

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付表

被説明変数 大学進学ダミー 高校卒業後最初に通った学校が大学であれば1、その他の学 校や非進学を0 とする。 国公立大学/私立大学/非進 学の選択 高校卒業後最初に通った学校が国公立大学であれば1、私立 大学であれば2、その他の学校や非進学を 0 とする。 説明変数 15 歳時家庭の暮らし向き 「15 歳のころの暮らし向きのうち、あてはまるもの」に、「貧 しい」「やや貧しい」と回答したものを1、「ふつう」と回答 したものを2、「豊か」「やや豊か」と回答したものを 3 とす る。 中3 時学業成績 「中学3 年生の時の学年の中でどれくらいの成績だったか」 に、「下の方」「やや下の方」と回答したものを 1、「真ん中 のあたり」と回答したものを2、「上の方」「やや上の方」と 回答したものを3 とする。 父親教育年数 データに含まれる最終学歴をもとに算出した、「小学校入学 から当該学校を卒業するまでの最低在学年数」を教育年数と する。 父親管理・専門・技術職ダミー 15 歳時の父親の職業が「SSM 職業分類」において「専門的・ 技術的職業従事者」「管理的職業従事者」であるものを 1、 その他を0 とする。 母親就労ダミー 15 歳時母親が働いていたと回答したものを 1、その他を 0 とする。 きょうだい数 15 歳時の本人を除く兄弟姉妹数。 1961~1985 年出生コホートダ ミー 出生年が1961~1985 年であるものを 1、その他を 0 とする。 三大都市圏在住ダミー 15 歳時の居住地が東京都・埼玉県・千葉県・神奈川県・愛 知県・京都府・大阪府・兵庫県にあったものを1、その他を 0 とする。 付表 1 各変数の作成方法

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37 付表 2 記述統計量(年代別の大学進学二項ロジット分析) 変数名 平均値 標準偏差 最小値 最大値 平均値 標準偏差 最小値 最大値 大学進学 0.342 0.474 0 1 0.122 0.327 0 1 2 0.587 0.492 0 1 0.645 0.479 0 1 3 0.169 0.375 0 1 0.208 0.406 0 1 2 0.410 0.492 0 1 0.516 0.500 0 1 3 0.368 0.482 0 1 0.331 0.471 0 1 父親教育年数 9.811 3.392 6 18 10.123 3.355 6 18 父親管理・専門・技術的職業 0.155 0.362 0 1 0.154 0.361 0 1 母親就労 0.650 0.477 0 1 0.681 0.466 0 1 きょうだい数 2.323 1.652 0 11 2.308105 1.65379 0 11 1961年~1985年出生コホート 0.397 0.489 0 1 0.417 0.493 0 1 変数名 平均値 標準偏差 最小値 最大値 平均値 標準偏差 最小値 最大値 大学進学 0.285 0.452 0 1 0.063 0.243 0 1 2 0.539 0.499 0 1 0.613 0.487 0 1 3 0.143 0.350 0 1 0.182 0.386 0 1 2 0.423 0.494 0 1 0.526 0.500 0 1 3 0.379 0.485 0 1 0.334 0.472 0 1 父親教育年数 8.441 3.079 6 17 8.819 3.237 6 17 父親管理・専門・技術的職業 0.129 0.335 0 1 0.136 0.343 0 1 母親就労 0.628 0.484 0 1 0.656 0.475 0 1 きょうだい数 2.889 1.816 0 11 2.915 1.832 0 11 変数名 平均値 標準偏差 最小値 最大値 平均値 標準偏差 最小値 最大値 大学進学 0.428 0.495 0 1 0.204 0.403 0 1 2 0.661 0.474 0 1 0.689 0.463 0 1 3 0.210 0.407 0 1 0.244 0.430 0 1 2 0.390 0.488 0 1 0.502 0.500 0 1 3 0.351 0.478 0 1 0.326 0.469 0 1 父親教育年数 11.896 2.719 6 18 11.942 2.581 6 18 父親管理・専門・技術的職業 0.194 0.396 0 1 0.179 0.384 0 1 母親就労 0.685 0.465 0 1 0.715 0.452 0 1 きょうだい数 1.462 0.797 0 6 1.461 0.797 0 6 女子 全体(観測値数=2048) 15歳時家庭暮らし向き (基準カテゴリー:1) 中3時学業成績 (基準カテゴリー:1) 全体(観測値数=1790) 男子 15歳時家庭暮らし向き (基準カテゴリー:1) 中3時学業成績 (基準カテゴリー:1) 男子 女子 1935~1960年出生(観測値数=1080) 1935~1960年出生(観測値数=1193) 15歳時家庭暮らし向き (基準カテゴリー:1) 中3時学業成績 (基準カテゴリー:1) 男子 女子 1961~1985年出生(観測値数=710) 1961~1985年出生(観測値数=855)

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38 付表 3 記述統計量(在住地域別の大学進学二項ロジット分析) 変数名 平均値 標準偏差 最小値 最大値 平均値 標準偏差 最小値 最大値 大学進学 0.342 0.474 0 1 0.122 0.327 0 1 2 0.587 0.493 0 1 0.644 0.479 0 1 3 0.170 0.375 0 1 0.208 0.406 0 1 2 0.410 0.492 0 1 0.517 0.500 0 1 3 0.368 0.482 0 1 0.330 0.470 0 1 父親教育年数 9.812 3.392 6 18 10.126 3.355 6 18 父親管理・専門・技術的職業 0.155 0.362 0 1 0.154 0.361 0 1 母親就労 0.651 0.477 0 1 0.680 0.467 0 1 きょうだい数 2.324 1.653 0 11 2.311 1.655 0 11 1961年~1985年出生コホート 0.398 0.490 0 1 0.418 0.493 0 1 三大都市圏 0.293 0.455 0 1 0.286 0.452 0 1 変数名 平均値 標準偏差 最小値 最大値 平均値 標準偏差 最小値 最大値 大学進学 0.462 0.499 0 1 0.164 0.371 0 1 2 0.599 0.491 0 1 0.608 0.489 0 1 3 0.206 0.405 0 1 0.260 0.439 0 1 2 0.406 0.492 0 1 0.514 0.500 0 1 3 0.391 0.488 0 1 0.358 0.480 0 1 父親教育年数 10.807 3.673 6 18 10.834 3.496 6 18 父親管理・専門・技術的職業 0.208 0.406 0 1 0.185 0.389 0 1 母親就労 0.563 0.496 0 1 0.592 0.492 0 1 きょうだい数 1.983 1.385 0 8 2.045 1.487 0 9 1961年~1985年出生コホート 0.471 0.500 0 1 0.467 0.499 0 1 変数名 平均値 標準偏差 最小値 最大値 平均値 標準偏差 最小値 最大値 大学進学 0.292 0.455 0 1 0.104 0.306 0 1 2 0.582 0.493 0 1 0.659 0.474 0 1 3 0.155 0.362 0 1 0.188 0.390 0 1 2 0.411 0.492 0 1 0.518 0.500 0 1 3 0.358 0.480 0 1 0.319 0.466 0 1 父親教育年数 9.399 3.180 6 17 9.843 3.254 6 18 父親管理・専門・技術的職業 0.132 0.339 0 1 0.141 0.349 0 1 母親就労 0.687 0.464 0 1 0.715 0.452 0 1 きょうだい数 2.465 1.733 0 11 2.418 1.707 0 11 1961年~1985年出生コホート 0.367 0.482 0 1 0.398 0.490 0 1 中3時学業成績 (基準カテゴリー:1) 男子 女子 全体(観測値数=1786) 全体(観測値数=2040) 15歳時家庭暮らし向き (基準カテゴリー:1) 中3時学業成績 (基準カテゴリー:1) 男子 女子 三大都市圏在住(観測値数=524) 三大都市圏在住(観測値数=584) 15歳時家庭暮らし向き (基準カテゴリー:1) 中3時学業成績 (基準カテゴリー:1) 男子 女子 非三大都市圏在住(観測値数=1262) 非三大都市圏在住(観測値数=1456) 15歳時家庭暮らし向き (基準カテゴリー:1)

表 2  分析結果(年代別の大学進学二項ロジット分析)  注:***=1%有意、**=5%有意、*=10%有意。括弧内は標準誤差。      ダミー変数の平均限界効果は、基準となるカテゴリーからの変動の平均効果。 変数名係数平均限界効果係数平均限界効果係数平均限界効果 係数 平均限界効果20.549***0.0780.507***0.0850.4940.0320.5350.036(0.170)(0.157)(0.404)(0.386)30.966***0.1441.027***0.1851.204***0.

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