第
3
章NOx
とSoot
を同時に低減する燃焼法の実現第 3 章 NOx と Soot を同時に低減する燃焼法の実現
本章では,第
1
章において提案したディーゼル燃焼コンセプトを実験に適用した際の結 果について述べる.近年,ガソリンエンジンの燃費向上策として実用化されている可変バ ルブタイミング機構を,ディーゼルエンジンの排出ガス低減策として用いる方法について 実証し,NOxとSoot
を同時に低減する燃焼制御の方向性を明らかにする.3.1. 基本性能試験
乗用車用ディーゼル機関として使用頻度の高いエンジン回転数
1800 rpm,20%,33%負
荷率の低負荷条件それぞれにおいて,基本性能試験を行った.その実験条件を表3.1
に示 す.これらの各負荷率において,従来の燃焼技術の適用によってNOx
とSoot
の排出を低 減した結果を図3.1
に示す.ここでは可変バルブタイミング機構による有効圧縮比の変更 は行っておらず,吸排気バルブの動作は通常のカムでのみ行っている.なお,燃料噴射時 期は最小燃費となる条件に設定した.表
3.1 基本性能試験の実験条件
1.86 Swirl ratio
Adjust MFB50% position at 7deg.ATDC Fuel injection timing deg.ATDC
φ0.153 mm x 5 holes (145 deg.) Fuel injection nozzle
(Spray angle deg.)
15.4 (constant) Expansion ratio
Reentrant (φ40.9 mm) Piston cavity design
21.5 (33) 14.6
(-150) Effective compression ratio εeff
(IVC timing deg.ATDC)
12.5 (20) Fuel quantity mg/st.(Load %)
Conventional diesel (Cetane number: 58) Test fuel
1800 Engine speed rpm
w/o VVT
33% Load 20% Load
1.86 Swirl ratio
Adjust MFB50% position at 7deg.ATDC Fuel injection timing deg.ATDC
φ0.153 mm x 5 holes (145 deg.) Fuel injection nozzle
(Spray angle deg.)
15.4 (constant) Expansion ratio
Reentrant (φ40.9 mm) Piston cavity design
21.5 (33) 14.6
(-150) Effective compression ratio εeff
(IVC timing deg.ATDC)
12.5 (20) Fuel quantity mg/st.(Load %)
Conventional diesel (Cetane number: 58) Test fuel
1800 Engine speed rpm
w/o VVT
33% Load 20% Load
第
3
章NOx
とSoot
を同時に低減する燃焼法の実現EGR EGR
-5 0 5 10 15 20 25 30
0 1 2 3 4 5 6 7
NOx g/kWh
Smoke %
: 12.5 mg/st.(20% Load)
Cooled-EGR:40%
Boost:
20 kPa Pinj: 80 MPa : 21.5 mg/st.(33% Load)
60%
Cooled- EGR:40%
Boost:
50 kPa Hot-EGR:
NA, Pinj: 80 MPa
10 % Cooled- EGR:40%
Boost:
50 kPa Hot-EGR:
NA, Pinj: 80 MPa
10 % Pinj: 120 MPa
Pinj: 160 MPa Pinj: 120 MPa Pinj: 160 MPa
VVT
図
3.1 各負荷において過給, EGR,高圧燃料噴射を適用した際の燃焼改善効果(1800 rpm)
20%負荷率
(燃料噴射量12.5 mg/st.)では,燃料噴射圧 80 MPa
において60%の Cooled-EGR
を行うことにより,NOx とSoot
の大幅な同時低減が可能であった.この負荷率では,燃 料噴射圧の大幅な高圧化は必要なく,80 MPa程度の燃料噴射圧でも,多量EGR
により十 分な排出ガスの低減が可能となった.このとき,EGR
による燃費の悪化は最小限に抑える ことができており,EGRの増加に伴い最大圧力上昇率も低減し,燃焼騒音も低くなった.一方,33%負荷率(燃料噴射量
21.5 mg/st.)の場合は,図 3.1
に示すように40%の EGR
により
20%負荷率の場合と同様に NOx
の大幅な低減は可能となるが,Sootの急激な増加を伴った.このとき,燃料噴射圧を
160 MPa
まで高圧化することにより,Sootは減少する 傾向を示したものの,なお一層の低減が求められる.そこで,この
33%負荷率条件に焦点を当て,第 1
章で提示した燃焼コンセプトに基づき 可変バルブタイミング機構を用いて有効圧縮比を低減させることで着火遅れを長期化させ て予混合化を促進し,Soot の排出を低減することをねらいとした.すなわち,大量EGR
により吸気酸素濃度を低下させることで燃焼温度を低温化しNOx
の生成を抑制した上で,このような低酸素雰囲気条件下でも
Soot
を発生しない程度まで予混合化を促進すること で,NOxとSoot
の同時低減を図る燃焼コンセプトの成立を目指すことにした.3.2. 予混合型燃焼( PCCI 燃焼)の着火時期制御
前節での検討をもとに,エンジン回転数
1800 rpm,33%負荷率(燃料噴射量 21.5 mg/st.)
第
3
章NOx
とSoot
を同時に低減する燃焼法の実現において,着火遅れを長期化して予混合化を促進させるために,160 MPaまでの燃料噴射 圧の高圧化とあわせ
40%の EGR
を行ったうえで,燃料噴射時期の進角を試みた.このと きの実験条件を表3.2
にBaseline
として示し,その燃焼特性を図3.2
に細線(赤色)で示す.同図には,筒内平均燃焼圧力,熱発生率,燃料の噴射開始を判断する目安であるインジェ クタへの通電信号,吸気バルブのリフトおよび指圧より算出した筒内平均温度を付記する.
なお,このとき設定した過給圧
50 kPa
(gauge)は,本供試機関と同等サイズのターボチャ ージャ付き多気筒機関の同等負荷率において得られる過給圧である.同図に示すように,単に燃料噴射時期の進角を行うのみでは,
EGR
により燃焼反応速度を抑制しても急峻な圧 力上昇率を有する過早着火が起こり,振動,騒音の観点から運転が困難であった.表
3.2 有効圧縮比の可変化を利用した着火時期の能動制御
40 Cooled-EGR rate %
Low εeff
160 50 10.5 Fuel injection duration deg.
Intake and exhaust gas pressure kPa(gauge)
-14.0 Fuel injection timing deg.ATDC
10.5 (-100) : LIVC
with VVT
1.86 Swirl ratio
Fuel injection pressure MPa
φ0.153 mm x 5 holes (145 deg.) Fuel injection nozzle
(Spray angle deg.)
15.4 (constant) Expansion ratio
Reentrant (φ40.9 mm) Piston cavity design
21.5 (33) 14.6
(-150) Effective compression ratio εeff
(IVC timing deg.ATDC) Fuel quantity mg/st.(Load %)
Conventional diesel (Cetane number: 58) Test fuel
1800 Engine speed rpm
w/o VVT Baseline
40 Cooled-EGR rate %
Low εeff
160 50 10.5 Fuel injection duration deg.
Intake and exhaust gas pressure kPa(gauge)
-14.0 Fuel injection timing deg.ATDC
10.5 (-100) : LIVC
with VVT
1.86 Swirl ratio
Fuel injection pressure MPa
φ0.153 mm x 5 holes (145 deg.) Fuel injection nozzle
(Spray angle deg.)
15.4 (constant) Expansion ratio
Reentrant (φ40.9 mm) Piston cavity design
21.5 (33) 14.6
(-150) Effective compression ratio εeff
(IVC timing deg.ATDC) Fuel quantity mg/st.(Load %)
Conventional diesel (Cetane number: 58) Test fuel
1800 Engine speed rpm
w/o VVT Baseline
第
3
章NOx
とSoot
を同時に低減する燃焼法の実現そこで,過早着火を防ぎ,局所的過濃部をもたない混合気を形成するための着火遅れを 確保する燃焼制御を行うために,膨張比は維持したうえで実質的な圧縮比のみを下げるこ ととした.このときの実験条件を表
3.2
にLow ε
effとして示す.2つの吸気バルブ双方を遅 く閉じる(LIVC: Late Intake Valve Closing)制御を行うことにより,有効圧縮比を下げた場 合の燃焼特性を図3.2
に太線(茶色)示す.このとき,吸気バルブの閉弁時期は,ベース の-150 deg.ATDCから-100 deg.ATDCに変更しており,それに伴い有効圧縮比は10.5
まで 低下させている.ただし,吸気バルブが開く時期および排気バルブの開閉時期に関しては 変更を加えていない.図3.2
に示すように,有効圧縮比の低減によって,圧縮後の筒内ガ ス温度が大幅に低温化している.これにより,過早着火となったBaseline
条件と同じ燃料 噴射時期に設定しても,着火遅れが長期化し,熱発生率の重心位置を上死点後に移行する ことが可能となった.すなわち,LIVC を行うことにより,燃料噴射時期を早期化しても 過早着火とならず,着火時期を遅らせることができた.これは,反応速度の支配因子であ るガス温度が制御可能となり,着火遅れ期間中のガス温度を低温に保つことが実現した効 果によるものであり,燃料噴射開始から着火までの予混合気形成時間が大幅に長期化して いる.以上より,有効圧縮比の低減による圧縮端温度の低温化は,予混合型ディーゼル燃焼の 着火時期の制御を行う上で有効な手段となることが示唆された.また,図
3.2
に示すよう に,過早着火条件と比較して,最高筒内圧力を低減することが可能となったため,エンジ ンへの機械的負荷も軽減しており,これも好ましい効果といえる.図
3.2
に示すように,低温度自着火を経ていずれも場の温度が900 K
付近まで上昇した のち,熱炎に移行しているのが特徴的である.このときのIMEP
は0.75 MPa
であるが,低 温酸化反応の出現は予混合燃焼(PCCI燃焼)の成立を裏付けている.ここで,燃料噴射時 期が同一である図3.2
の2
条件の熱発生率の拡大図を図3.3
に示す.有効圧縮比の低減によ り冷炎反応が発現する時期が遅れ,かつ冷炎反応を上死点後まで持続することが可能とな っている.冷炎反応を持続する間に生じた熱炎反応までの時間的余裕により,燃料の良好 な予混合化がもたらされていることが示唆される.このときサイクル間の燃焼変動は少な く,着火時期が上死点に近いために安定した着火,燃焼が実現した. さらに,有効圧縮比 を10.5
としたときには,低温酸化反応を呈したうえで膨張行程での燃焼となるため,この とき同時に最大筒内圧力上昇率も低減し,燃焼騒音が低下する効果も得られた.第
3
章NOx
とSoot
を同時に低減する燃焼法の実現0 2 4 6 8 10
In-cylinder pressure MPa
0 50 100 150 200 250 300 350
R.H.R. J/deg.
-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 50 60 Crank angle deg.ATDC
Injector current
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000
-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 50 60 Crank angle deg.ATDC
In-cylinder temperature K
0 5 10
-360 -300 -240 -180 -120 -60 0 Crank angle deg.ATDC
Valve lift mm
IVC: -150 deg.ATDC
IVC: -100 deg.ATDC (εeff: 10.5) (εeff: 14.6)
図
3.2 吸気バルブの遅閉じ(LIVC)による着火時期制御
(1800 rpm,33% load(21.5 mg/st.),EGR40%,Boost:50 kPa(gauge),Pinj:160 MPa)
-50 0 50 100 150 200 250 300
-30 -20 -10 0 10 20 30 40
Crank angle deg.ATDC
R.H.R. J/deg.
IVC: -150 deg.ATDC (εeff: 14.6)
IVC: -100 deg.ATDC (εeff: 10.5) Cool-flame
reaction
Hot-flame reaction
Fuel injection duration
図
3.3 吸気バルブの遅閉じ(LIVC)による着火時期制御を行った際の熱発生率の変化
第
3
章NOx
とSoot
を同時に低減する燃焼法の実現3.3. Miller-PCCI 燃焼による NOx と Soot の低減効果
前節で示した相対的に高膨張比,低圧縮比となる燃焼制御を加えた
PCCI
燃焼条件の排 出ガス特性を従来の燃焼条件と比較することにする.ここでは,可変バルブタイミング機 構を用いずにEGR
を0%, 40%行ったそれぞれの場合における最小燃費条件を取り上げる.
これらの実験条件をそれぞれ表
3.3
に示す.エンジン回転数は1800 rpm,33%負荷率(燃
料噴射量21.5 mg/st.)である.ここでも,燃料噴射圧は 160 MPa,過給圧は 50 kPa(gauge)
にそれぞれ一定になるよう設定した.ここでは,燃焼質量割合(MFB: Mass Fraction of
Burned fuel)が 50 %となる位置(以後 MFB50%)が 7 deg.ATDC
になるようそれぞれの条 件において燃料噴射時期を調整した.その結果として,いずれの条件においてもほぼ上死 点で着火することになる.これにより,過早着火による急峻な圧力上昇を抑制するととも に,着火時期をそろえたうえで,排出ガスと燃費の評価を行った.表
3.3 エンジン運転条件
Reentrant (φ40.9 mm) Piston cavity design
φ0.153 mm x 5 holes (145 deg.) Fuel injection nozzle
(Spray angle deg.)
1.86 Swirl ratio
Conventional diesel (Cetane number: 58) Test fuel
1.2 1.5
Excess air ratio λ 2.5
10.5 Fuel injection duration deg.
40 0
Cooled-EGR rate %
Intake and exhaust gas pressure 50 kPa(gauge)
-14.0 -7.0
Fuel injection timing deg.ATDC -3.5 (Adjust MFB50% at 7deg.ATDC)
160 Fuel injection pressure MPa
15.4 (constant) Expansion ratio
10.5 (-100) : LIVC 14.6
(-150) Effective compression ratio εeff
(IVC timing deg.ATDC)
21.5 (33) Fuel quantity mg/st.(Load %)
1800 Engine speed rpm
with VVT w/o VVT
EGR40%+LIVC (Miller-PCCI) EGR40%
EGR0%
Reentrant (φ40.9 mm) Piston cavity design
φ0.153 mm x 5 holes (145 deg.) Fuel injection nozzle
(Spray angle deg.)
1.86 Swirl ratio
Conventional diesel (Cetane number: 58) Test fuel
1.2 1.5
Excess air ratio λ 2.5
10.5 Fuel injection duration deg.
40 0
Cooled-EGR rate %
Intake and exhaust gas pressure 50 kPa(gauge)
-14.0 -7.0
Fuel injection timing deg.ATDC -3.5 (Adjust MFB50% at 7deg.ATDC)
160 Fuel injection pressure MPa
15.4 (constant) Expansion ratio
10.5 (-100) : LIVC 14.6
(-150) Effective compression ratio εeff
(IVC timing deg.ATDC)
21.5 (33) Fuel quantity mg/st.(Load %)
1800 Engine speed rpm
with VVT w/o VVT
EGR40%+LIVC (Miller-PCCI) EGR40%
EGR0%
第
3
章NOx
とSoot
を同時に低減する燃焼法の実現このとき,吸気バルブの遅閉じ制御を行った条件(EGR40%+LIVC)では,圧縮行程中 にもなお吸気バルブが開弁していることになる.したがって,吸気行程において筒内に導 入した吸気ガスの一部を吸気ポートに逆流させて戻してしまうため,燃焼に使われる空気 量(動作ガス)が減少することになる.本試験条件では
1
サイクルあたりの燃料噴射量を 一定としているため,吸入空気量の減少に伴い排出ガスの酸素濃度は低下する.したがっ て,表3.3
に示すように同じEGR
率40%の条件でも,有効圧縮比を低下させた条件では,
空気過剰率λはさらに低くなる.従来の拡散燃焼を主体としたディーゼル燃焼では,全体 のλの低下は
Soot
の増加につながるため,第1
章でも述べたように,この条件下ですすの 生成を抑制するには,λの低下によるSoot
の増加を打ち消すほどの予混合化が求められる ことになる.このときの
3
条件の燃焼特性を図3.4
に比較して示す.同図中には,これら3
条件の指 圧と熱発生率,燃料噴射時期の目安となるインジェクタ電流,吸気バルブのリフト,指圧 から計算した筒内の平均温度とPV
線図をそれぞれ示す.EGRにより燃焼反応速度が抑制 されるため,EGRを0%から 40%にすることによって,着火時期をそろえたうえでわずか
に燃料噴射時期を進角することが可能となっている.一方,40%の EGR
に加えて吸気バル ブの遅閉じ制御を行った条件では,有効圧縮比の低下により圧縮端のガス温度が低温化す るため,着火時期を他の2
条件と同等としたうえで最も燃料噴射時期を進角することが可 能となっている.これによって,着火までの燃料と空気の予混合時間は長期化したことに なる.本研究における予混合型燃焼では,Millerサイクル(低圧縮比,高膨張比サイクル)を用いていることから
Miller-PCCI(Miller-Premixed Charge Compression Ignition)燃焼と呼
ぶことにする.同図のPV
線図に示すように,従来燃焼条件と比較して圧縮仕事の低減を 可能としたうえで,膨張仕事をこれまでどおり確保している.また,Miller-PCCI
燃焼では,従来燃焼条件と比較して筒内の最高圧力が低減していることから,エンジンにかかる機械 的な熱負荷は低減しているものと推察される.さらに,指圧から算出したみかけの燃焼後 筒内平均ガス温度は大幅に上昇している傾向が認められるが,これは
LIVC
による動作ガ スの低減に伴い,動作ガスの熱容量が低下したためである.第
3
章NOx
とSoot
を同時に低減する燃焼法の実現0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000
-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 50 60 Crank angle deg.ATDC
In-cylinder temperature K
100 1000 10000
0 100 200 300 400 500 600 In-cylinder volume cm3
In-cylinder pressure kPa
EGR 40%+LIVC
-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 50 60 Crank angle deg.ATDC
Injecton rate 0 2 4 6 8 10
In-cylinder pressure MPa
0 50 100 150 200 250 300 350
R.H.R. J/deg.
0 5 10
-360 -300 -240 -180 -120 -60 0 Crank angle deg.ATDC
Valve lift mm
EGR40%
EGR0% EGR40%+LIVC
LIVC (εeff=10.5)
EGR40%
+LIVC
EGR 40%
EGR 0%
IMEP:
0.75 MPa
Fuel
EGR40%+LIVC: Miller-PCCI combustion
図
3.4 従来燃焼と Miller-PCCI
燃焼の比較(1800 rpm,33% load(21.5 mg/st.),Boost:50 kPa(gauge),Pinj:160 MPa)
NOx g/kWh 0
0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 0.14 0.16 0.18 0.2
0 1 2 3 4 5 6 7 8
So ot g /k W h
0 0.02 0.04 0.06 0.08 0.1 0.12 0.14 0.16 0.18 0.2
0 1 2 3 4 5 6 7 8
So ot g /k W h
1800 rpm 21.5 mg/st.
160 MPa EGR40%
LIVC
EGR0%
Miller-PCCI
(IMEP: 0.75 MPa)
図
3.5 Miller-PCCI
燃焼によるNOx-Soot
の大幅な同時低減(1800 rpm,33% load(21.5 mg/st.),Boost:50 kPa(gauge),Pinj:160 MPa)
第
3
章NOx
とSoot
を同時に低減する燃焼法の実現これまでに示した
3
条件に対する排出ガス特性を図3.5
に比較して示す.EGR0%,EGR40%の 2
条件の結果から,過給,高圧燃料噴射を前提としてEGR
を行うことによってNOx
は低減する反面,Soot
が増加する従来のディーゼル燃焼特有のトレードオフ関係が認 められた.これに対し,40%の EGR
を行ったうえでLIVC
を適用した条件では,NOx
の排 出をさらに抑制したうえでSoot
の排出を大幅に低減することが可能となった.EGR によ りNOx
の生成を抑制したうえで,LIVCにより圧縮端温度を低温化し,燃料と空気の予混 合化を促進させることにより,Soot
の大幅な低減が可能となったものと考えられる.前述 のように,Miller-PCCI
燃焼では全体の空気過剰率が減少しているが,このような条件下で も予混合化の促進によりSoot
の排出を抑制できることを明らかにした.以上により,NOx
の低減が可能となるEGR
条件下でのSoot
の生成を抑制する本燃焼コンセプト(Miller-PCCI 燃焼)の適用により,従来のNOx
とSoot
のトレードオフ関係から脱却し,それらを同時 に低減できることを実証した.このときの燃費性能,燃焼騒音の目安となる燃焼圧力の最大圧力上昇率,排気温度を図
3.6
にそれぞれ示す.図から明らかなように,EGR40%の条件をベースとした場合に,Miller-PCCI
燃焼では約3.7%の図示燃費の悪化を伴った.しかしながら,有効圧縮比のみ
の低下にとどめ膨張比は維持していることから,幾何圧縮比を低下させた場合に比べると 燃費の悪化を最小限に抑制しているといえる.また,正味燃費はその悪化が
2.0%にまで抑
制されている.これは筒内最大圧力の減少や圧縮仕事が低減した効果によるものと考えら れる.さらに,Miller-PCCI燃焼では,低温酸化反応を経た燃焼となっているため,今回のEGR0%や EGR40%の条件と比較すると燃焼が急峻になることがなく,最大筒内圧力上昇率
の低減が可能となった.また,動作ガスの熱容量の減少に伴い,排出ガス流量は減少し,
排気温度は大幅に上昇した.このとき,燃焼効率が等しいと仮定した場合,排出ガスの有 するエンタルピーは一定であり,排気エネルギー自体が大幅に増加したわけではない.し かしながら,流量の減少と共に排気温度が上昇するという本燃焼法の特徴は,後処理シス テムの併用を想定した場合,その触媒の活性を維持する上で有用である.
以上の検討から,EGRと
LIVC
の組み合わせによって得られた排出ガスの改善効果を図3.7
に示す.図に示すように,本燃焼法の適用により,NOx の排出をさらに抑制した上で のSoot
の大幅な低減が可能となることを明らかにした.第
3
章NOx
とSoot
を同時に低減する燃焼法の実現187 188 195
170 180 190 200 210 220 230
ISFC g/kWh
335 346 386
300 320 340 360 380 400
Ex.temp. deg.C
1.22
1.05 0.93
0 0.5 1 1.5
dP/dθ MPa/deg.
EGR 0% 40% 40%+LIVC EGR 0% 40% 40%+LIVC (Miller-PCCI) (Miller-PCCI)
dP/dθmaxMPa/deg.
356 368 375
300 320 340 360 380 400 420
BSFC g/kWh
図
3.6 従来燃焼と Miller-PCCI
燃焼の比較(燃費,圧力上昇率,排気温度)(1800 rpm,33% load(21.5 mg/st.),Boost:50 kPa(gauge),Pinj:160 MPa)
EGR EGR
-5 0 5 10 15 20 25 30
0 1 2 3 4 5 6 7
NOx g/kWh
Smoke %
: 12.5 mg/st.(20% Load)
Cooled-EGR:40%
Boost:
20 kPa Pinj: 80 MPa : 21.5 mg/st.(33% Load)
60%
Cooled- EGR:40%
Boost:
50 kPa Hot-EGR:
NA, Pinj: 80 MPa
10 % Cooled- EGR:40%
Boost:
50 kPa Hot-EGR:
NA, Pinj: 80 MPa
10 % Pinj: 120 MPa
Pinj: 160 MPa Pinj: 120 MPa Pinj: 160 MPa
VVT
図
3.7 可変バルブタイミング機構を利用した Miller-PCCI
燃焼による 排出ガスの改善効果(1800 rpm)第
3
章NOx
とSoot
を同時に低減する燃焼法の実現以上の検討から,多量の
EGR
と吸気バルブの閉弁時期を遅延して有効圧縮比を低下させ る制御を組み合わせることにより,PCCI燃焼が成立することを明らかにした.そこで,エンジン回転数
1800 rpm,負荷率 33%
(燃料噴射量21.5 mg/st.),過給圧 50 kPa
(gauge),燃料噴射圧
160 MPa
の同様の運転条件において,EGR
率を40%一定とし,有効
圧縮比を変化させて試験を行い,有効圧縮比の変動に対するPCCI
燃焼の成立範囲を明確 化することをねらいとした.このときの実験条件を表3.4
に示す.吸気バルブの閉弁時期を変化させたときの有効圧縮比と吸入新気量,および指圧から求 めた圧縮始めの筒内平均温度,圧力をそれぞれ図
3.8
に示す.同図には,上死点近傍の-20deg.ATDC
における筒内平均温度と圧力もそれぞれ示す.これらの結果から,圧縮行程中の吸気バルブの閉弁時期を遅延するほど有効圧縮比は低下し,上死点近傍の筒内圧力が下 がるのと同時にガス温度が低温化していることが確認でき,吸気バルブの閉弁時期の変更 によって筒内ガス温度の能動的な制御が可能となっていることがわかる.
ここでは,吸気バルブの閉弁時期の変更に応じて燃料噴射時期を適宜調整し,燃焼質量 割合(MFB: Mass Fraction of Burned fuel)が
50%となる位置(MFB50%)を 7 deg.ATDC
に 制御した.各有効圧縮比における燃焼特性を図3.9
に比較して示す.このように各実験条 件の着火時期をそろえることで,過早着火を抑制した上で排出ガスと燃費性能の評価を行 った.吸気バルブを閉じるタイミングを遅延することにより,圧縮行程中のガス温度が低 温化していくため,有効圧縮比を低下させた条件ほどMFB50%を 7 deg.ATDC
に保ったう えで燃料噴射時期の進角が可能となっている.表
3.4 有効圧縮比の変更に伴う燃焼特性の変化
10.5 Fuel injection duration deg.
Intake and exhaust gas pressure 50 kPa(gauge)
1800 Engine speed rpm
Adjust MFB50% position at 7deg.ATDC
40 Cooled-EGR rate %
Fuel injection timing deg.ATDC
15.4 (constant) Expansion ratio
14.6, 13.4, 12.1, 11.3, 10.5 (-150, -130, -115, -107, -100) Effective compression ratio εeff
(IVC timing deg.ATDC)
21.5 (33) Fuel quantity mg/st.(Load %)
10.5 Fuel injection duration deg.
Intake and exhaust gas pressure 50 kPa(gauge)
1800 Engine speed rpm
Adjust MFB50% position at 7deg.ATDC
40 Cooled-EGR rate %
Fuel injection timing deg.ATDC
15.4 (constant) Expansion ratio
14.6, 13.4, 12.1, 11.3, 10.5 (-150, -130, -115, -107, -100) Effective compression ratio εeff
(IVC timing deg.ATDC)
21.5 (33) Fuel quantity mg/st.(Load %)
第
3
章NOx
とSoot
を同時に低減する燃焼法の実現8 9 10 11 12 13 14 15 16
-180 -140 -100 -60 IVC timing deg.ATDC Effective compression ratio εeff
300 350 400 450 500 550 600
In-cylinder temperature K 0 1 2 3 4 5 6 7
-180 -140 -100 -60 IVC timing deg.ATDC
Fresh air L/s
100 150 200 250 300 350 400 450 500
In-cylinder pressure kPa(abs)
Base Base
LIVC
Base
1 1.5 2 2.5 3 3.5 4
-180 -140 -100 -60 IVC timing deg.ATDC Pressure at -20 deg.ATDC MPa(abs)
660 710 760 810 860
Temperature at -20 deg.ATDC K
TTDC≒TIVCεκ-1
LIVC
図
3.8 吸気バルブの遅閉じ(LIVC)によって可能となる圧縮端ガス温度の低温化
0 2 4 6 8 10
In-cylinder pressure MPa
0 50 100 150 200 250 300 350
R.H.R. J/deg.
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000
-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 50 60 Crank angle deg.ATDC
In-cylinder temperature K
0 5 10
-360 -300 -240 -180 -120 -60 0 Crank angle deg.ATDC
Valve lift mm
-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 50 60 Crank angle deg.ATDC
Injector current
100 1000 10000
0 100 200 300 400 500 600
In-cylinder pressure kPa
In-cylinder volume cm3 (εeff: lowered)
LIVC LIVC Earlier
Low er Prolonged
Ignition delay
①
②
③ Low
er ②
図
3.9 吸気バルブの遅閉じによって可能となる燃焼噴射時期の進角化
(1800 rpm,33% load(21.5 mg/st.),EGR40%,Boost:50 kPa(gauge),Pinj:160 MPa)
図
3.9
に示した各条件の諸特性を図3.10
に示す.同図では,横軸に燃料噴射時期をとっ ているが,噴射時期を早期化させた条件ほど有効圧縮比を低下させていることになる.有 効圧縮比を低下させるために吸気バルブの遅閉じ量を増加させると,一度筒内に吸気した ガスの一部が吸気ポートに逆流し,正味の吸入空気量が減少する.したがって,同図にお いて燃料噴射時期を早期化した条件ほど,空気過剰率λは小さくなり,全体として混合気第
3
章NOx
とSoot
を同時に低減する燃焼法の実現がリッチになっている.しかしながら,
MFB50%を 7 deg.ATDC
に制御しているため,燃料 噴射時期を早期化した条件ほど,予混合時間τmix が確保できていることになり,着火前に 局所的な燃料過濃部が低減された混合気が形成されている可能性がある.なお,ここでの 予混合時間τmixは図3.11
のように定義した.τmixは,針弁リフトから判断した燃料噴射終了 後から,燃焼質量割合(MFB)が2%となるまでの時間と定義して求めており,全燃料の
噴射が終了した後で着火が起こる場合にτmix は正となる.また,τmix が負となる場合はMFB2%位置が噴射期間中であることを意味する.
図
3.10
には,図3.4
において従来燃焼条件として引き合いに出したEGR
率0%と 40%の
条件の結果も付記するが,EGR率を0%から 40%に増加させたときは,燃料の高圧噴射を
行っているもののτmixが短く,空気過剰率λの減少がSoot
の生成に大きく影響する傾向が 見られた.しかしながら,さらに燃料噴射時期を進角して,同時に有効圧縮比を低下させ ると,λが1
に近づくにもかかわらず,Sootは減少する傾向を示した.このとき,LIVCに 伴う吸入空気量の減少は,排気流量の低減を意味するため,同図のようにSoot
の単位仕事 量あたりの排出量も低いレベルとなった.このことは,λの低下によるSoot
生成の効果以 上に,τmixが確保されSoot
の生成が抑制される効果が支配的となり,τmixが増えるほどSoot
は低減したと理解できる.このことから,全体のλが低くても,τmixを長期化して予混合化 を促進すれば,Sootを低減できる可能性があることを実証した.一方,NOx に関しては,EGR0%の条件と比較して
EGR40%の条件ではその排出が大幅
に低減しており,さらに同率のEGR
において燃料噴射時期を早期化し有効圧縮比を低下す るにつれてNOx
は低減する傾向を示した.このとき,有効圧縮比の低下に伴い吸気酸素濃 度が低下し,吸気CO
2濃度は増加している.これは,λの減少から排気中の酸素濃度が低 下し,この条件下で排出ガスを同じ割合だけ吸気に還流しているためである.NOx
の低減 にはEGR
による吸気酸素濃度の低下が支配的な因子となっていることが示唆される.第
3
章NOx
とSoot
を同時に低減する燃焼法の実現0 0.05 0.1 0.15 0.2
-20 -16 -12 -8 -4 0 Fuel injection timing deg.ATDC
Smoke g/kWh
0 0.5 1 1.5 2
NOx g/kWh
1 1.2 1.4 1.6 1.8 2 2.2 2.4 2.6
-20 -16 -12 -8 -4 0 Fuel injection timing deg.ATDC
Excess air ratio
-4-3 -2-1 01 23 4 5
Mixing time mixdeg.
10.5 12.1 11.3 13.4 εeff:
Soot g/kWh
50 ppm 21 ppm
0.045 g/kWh
EGR 40%+LIVC EGR 0%
EGR 40% (εeff: 14.6) (εeff: 14.6)
0 2 4 6 8 10 12
-20 -16 -12 -8 -4 0 Fuel injection timing deg.ATDC
Exhaust gas flow L/s
-5 0 5 10 15 20 25 30
Smoke%
10 12 14 16 18 20 22
-20 -16 -12 -8 -4 0 Fuel injection timing deg.ATDC
In.O2 vol.%
0 1 2 3 4 5 6
In.CO2 vol.%
λ τmix deg.
図
3.10 有効圧縮比の低下にあわせて噴射時期を進角したときの諸特性
(1800 rpm,33% load(21.5 mg/st.),EGR40%,Boost:50 kPa(gauge),Pinj:160 MPa)
τ
mix>0 τ
mix>0
MFB2%
Needle lift R.H.R.
MFB50%
Crank angle End of injection End of injection Injector current
MFB (Mass Fraction of Burned fuel)
Conventional diesel
(Premixed+Diffusion)
Conventional diesel
(Premixed+Diffusion)
Needle lift
R.H.R.
Needle lift
R.H.R.
τ
mix=0
τ
mix<0
図
3.11 予混合時間τ
mixの定義第
3
章NOx
とSoot
を同時に低減する燃焼法の実現0 10 20 30 40 50 60 70 80
-20 -16 -12 -8 -4 0 Fuel injection timing deg.ATDC
CO g/kWh
0 1 2 3 4 5
THC g/kWh
170 180 190 200 210 220 230
-20 -16 -12 -8 -4 0 Fuel injection timing deg.ATDC
ISFC g/kWh
330 340 350 360 370 380 390
Ex.temp. deg.C
10.5 12.1 11.3 13.4
εeff: EGR 40%+LIVC EGR 0%
EGR 40% (εeff: 14.6) (εeff: 14.6)
図
3.12 有効圧縮比の低下にあわせて噴射時期を進角したときの燃費と排気温度特性
(1800 rpm,33% load(21.5 mg/st.),EGR40%,Boost:50 kPa(gauge),Pinj:160 MPa)
図
3.8
に示した各条件における燃費性能と排気温度およびCO,THC
の排出特性をそれ ぞれ図3.12
に示す.有効圧縮比の低下に伴い,λが1
に近づくためにCO
とTHC
の増加が 顕著となり,特に燃料噴射時期を大幅に早期化し有効圧縮比を低下させた場合には,膨張 比を確保しても燃費が悪化する傾向が認められた.すなわち,THC,CO の増加が燃費の 大幅な改善を困難にした原因であると考えられる.また,同図に示すように,動作ガスの 熱容量の低下に伴い排気ガス流量は減少し,排気温度は上昇したが,この効果は,後処理 の触媒活性を高める上で有利に作用する可能性がある.以上の結果より,多量
EGR
条件下において有効圧縮比を低下させつつ燃料噴射時期を早 期化させることで,NOx とSoot
の大幅な低減が可能となり排気温度も上昇する効果が得 られるが,この条件ではCO,THC
の排出が増加し,燃費の悪化につながることを明らか にした.これまでに,多量
EGR
条件下における有効圧縮比の変動が排出ガスおよび燃費特性に及 ぼす影響を調査したが,過渡運転においてこのような多量EGR
の利用を想定すると,VVT
による有効圧縮比制御の応答性は十分高いとしても,EGRガスの還流遅れやEGR
システ ムの熱容量による応答遅れが避けられない可能性がある.このことから,EGR
率の変動に よる燃焼特性の変化を明らかにする必要がある.そこで,EGR0%から
50%までの範囲において,有効圧縮比を変化させる試験を行い,
NOx
とSoot
の排出を大幅に低減できる運転条件を調査した.表3.5
に示すようなエンジン第
3
章NOx
とSoot
を同時に低減する燃焼法の実現圧
160 MPa
の運転条件において,EGR
率を0%から 50%まで変化させた場合それぞれに対
し,吸気バルブの閉弁時期の変更を行いつつ燃料噴射時期の調整を行い,MFB50%を
7
deg.ATDC
に一定制御した.このときの燃焼および排出ガス特性を図3.13
に示す.各EGR
率において,燃料噴射時期を早期化している条件ほど有効圧縮比を低下させた条件となる.
NOx
に関しては,いずれの燃料噴射時期においてもEGR
率を増加させるほどNOx
は低 減する傾向を示す.EGR0%の場合には,有効圧縮比を低下させながら燃料噴射時期の進角
させても,NOx
の低減効果は得られない.しかしながら,20%~50%のEGR
を行った各条 件においては,有効圧縮比を低下させるほど,吸気酸素濃度は低下し吸気CO
2濃度は増加 するため,いずれのEGR
率においてもNOx
は低減する傾向を示した.特にEGR
率40%
以上の条件では,いずれの有効圧縮比の場合も大幅に
NOx
が低減している.一方,
Soot
に関しては,EGR40%あるいは 50%の多量 EGR
条件下においても,有効圧縮 比を低下させつつ燃料噴射時期の進角させると,Sootは低減する傾向を示した.このことから,NOxと
Soot
が大幅に同時低減するのは,多量EGR
かつ有効圧縮比を低 下させた条件に限定されることがわかる.表
3.5 有効圧縮比と EGR
率を変更した際の燃焼特性10.5 Fuel injection duration deg.
Intake and exhaust gas pressure 50 kPa(gauge)
1800 Engine speed rpm
Adjust MFB50% position at 7deg.ATDC
0, 20, 30, 40, 50 Cooled-EGR rate %
Fuel injection timing deg.ATDC
160 Fuel injection pressure MPa
15.4 (constant) Expansion ratio
14.6, 13.4, 12.1, 11.3, 10.5 (-150, -130, -115, -107, -100) Effective compression ratio εeff
(IVC timing deg.ATDC)
21.5 (33) Fuel quantity mg/st.(Load %)
10.5 Fuel injection duration deg.
Intake and exhaust gas pressure 50 kPa(gauge)
1800 Engine speed rpm
Adjust MFB50% position at 7deg.ATDC
0, 20, 30, 40, 50 Cooled-EGR rate %
Fuel injection timing deg.ATDC
160 Fuel injection pressure MPa
15.4 (constant) Expansion ratio
14.6, 13.4, 12.1, 11.3, 10.5 (-150, -130, -115, -107, -100) Effective compression ratio εeff
(IVC timing deg.ATDC)
21.5 (33) Fuel quantity mg/st.(Load %)
第
3
章NOx
とSoot
を同時に低減する燃焼法の実現0 0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6
-20 -16 -12 -8 -4 0 Fuel injection timing deg.ATDC
Smoke g/kWh
1 1.2 1.4 1.6 1.8 2 2.2 2.4 2.6
-20 -16 -12 -8 -4 0 Fuel injection timing deg.ATDC Excess air ratio λ
-4 -2 0 2 4 6
-20 -16 -12 -8 -4 0 Fuel injection timing deg.ATDC
Mixing time tmix deg.
0 2 4 6 8 10
-20 -16 -12 -8 -4 0 Fuel injection timing deg.ATDC NOx g/kWh EGR0%
EGR20%
EGR40%
EGR50%
EGR0%
EGR20%
EGR30%
EGR40%
EGR50%
Soot g/kWh
EGR30%
EGR20%
EGR30%
EGR40%
EGR50%
EGR0%
10 12 14 16 18 20 22
-20 -16 -12 -8 -4 0 Fuel injection timing deg.ATDC
In.O2 vol.%
0 0.5 1 1.5 2
-20 -16 -12 -8 -4 0 Fuel injection timing deg.ATDC dP/dθ MPa/deg.
0 100 200 300 400 500
-20 -16 -12 -8 -4 0 Fuel injection timing deg.ATDC
Ex.temp. deg.C
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3 3.5
-20 -16 -12 -8 -4 0 Fuel injection timing deg.ATDC
THC g/kWh
0 10 20 30 40 50 60 70
-20 -16 -12 -8 -4 0 Fuel injection timing deg.ATDC
CO g/kWh
7.5 8 8.5 9 9.5
-20 -16 -12 -8 -4 0 Fuel injection timing deg.ATDC Pmax MPaλ
τmix deg. dP/dθmax
図
3.13 各 EGR
率条件に対し吸気バルブの遅閉じに伴って噴射時期を進角させたときの燃焼特性(1800 rpm,33% load(21.5 mg/st.),Boost:50 kPa(gauge),Pinj:160 MPa)
第
3
章NOx
とSoot
を同時に低減する燃焼法の実現EGR rate % EGR rate %
Effective compression ratioεeffEffective compression ratioεeff
NOx g/kWh Soot g/kWh
τmixdeg. λ
EGR rate % EGR rate %
Miller-PCCI Miller-PCCI
τmix<0
τmix>0
NOx Soot
Mixing time τ
mixExcess air ratio λ
Effective compression ratioεeff
・ : Experiment point
Effective compression ratioεeff
EGR EGR
IVC deg.ATDC
-150
-130
-115 -107 -100
IVC deg.ATDC
-150
-130
-115 -107 -100
LIVC LIVC
図
3.14 高 EGR
率と低有効圧縮比の組み合わせによるクリーンディーゼル燃焼(1800 rpm,33% load(21.5 mg/st.),Boost:50 kPa(gauge),Pinj:160 MPa)
これまでに示した各
EGR
率に対して有効圧縮比を変化させた各試験結果を,横軸EGR
率,縦軸有効圧縮比のマップで整理すると図3.14
のようになる.同図中の黒点が実験点で あり,各点における実験値をもとにNOx,Soot,予混合時間τ
mix,空気過剰率λをマップ化 して表記している.ここでも過給圧は50 kPa
(gauge),燃料噴射圧は160 MPa
で一定とし,燃料噴射時期を調整することで着火時期をそろえている.このとき,同図中には,図
3.4
で示した3
条件の位置付けを付記した.有効圧縮比が高い従来のディーゼル燃焼に相当する条件では,EGR 率の増加に伴い
NOx
は減少するものの,Soot
が増加するトレードオフの関係を示している.しかしながら,EGR
を行ったうえで有効圧縮比を低下させた条件においてSoot
は大幅に低減しており,この領 域でNOx
とSoot
の同時低減が可能となっている.これは,EGR
とLIVC
の増加によってλ は低下していくものの,予混合時間τmixが長期化し,Soot の生成を抑制する効果が支配的 となったためであると考えられる.第
3
章NOx
とSoot
を同時に低減する燃焼法の実現Effective compression ratioεeff In.O2vol.% dP/dθmaxMPa/deg.
EGR rate % EGR rate %
In.O
2dP/dθ
maxIVC deg.ATDC
-150
-130
-115 -107 -100
Effective compression ratio εeff Ex.temp deg.CISFC g/kWh
EGR rate % EGR rate %
Ex.temp ISFC
Miller-PCCI Miller-PCCI
Effective compression ratio εeff
・ : Experiment point
IVC deg.ATDC
-150
-130
-115 -107 -100
EGR EGR
LIVC LIVC
Effective compression ratio εeff
図
3.15 高 EGR
率と低有効圧縮比を組み合わせた際の燃費特性(1800 rpm,33% load(21.5 mg/st.),Boost:50 kPa(gauge),Pinj:160 MPa)
以上より,可変バルブタイミング機構の導入により有効圧縮比を低下させることで,
NOx
とSoot
のトレードオフを脱却する一つの方向性が示唆された.しかしながら,この 燃焼条件では,図3.13
に示すようにCO, THC
が増加している.これらの条件では,図3.15
のように排気温度の上昇は認められ酸化触媒での低減は期待できるものの,CO,THC の 排出が増加したことにより膨張比は確保しても燃費の維持ができなかった原因である考え られるため,これらの一層の低減が求められる.3.4. 過給圧の増大による CO,THC の低減と燃費の改善
本節では,前節までと同様のエンジン運転条件において,CO,THC の排出を低減しつ つ燃費を改善するために行った検討結果について述べる.
有効圧縮比を
10.5
まで低下させた過給圧一定条件で,EGR
率を増加させた場合の燃焼特第
3
章NOx
とSoot
を同時に低減する燃焼法の実現れら
3
条件の諸特性を図3.18
にまとめた.有効圧縮比を低下させたうえでEGR
を増加さ せると,NOx
は大幅に低減する傾向を示し,特にEGR40%において NOx
排出は0.11 g/kWh
を得た.また,EGR
を増加させるにつれて圧力上昇率も低減する傾向を示し,燃焼騒音は 大幅に低下した.さらに,このような低有効圧縮比条件では,十分な予混合時間が得られ るため,いずれの条件においてもSoot
の大幅な低減が可能となっている.多量EGR
と低 有効圧縮比の組み合わせは,NOx とSoot
および燃焼騒音の同時低減が可能となる.しか しながら,図3.17
に示したように,これらの条件ではEGR
の増加に伴ってCO,THC
の 排出が顕著となる.したがって,これらの排出を抑制し,燃費の改善を図ることが課題と いえる.0 2 4 6 8 10
In-cylinder pressure MPa
0 50 100 150 200 250 300 350
R.H.R. J/deg.
0 5 10
-360 -300 -240 -180 -120 -60 0 Crank angle deg.ATDC
Valve lift mm
-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 50 60 Crank angle deg.ATDC
Injector current
0 200 400 600 800 1000 1200 1400 1600 1800 2000
-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 50 60 Crank angle deg.ATDC
In-cylinder temperature K
εeff: 10.5
EGR:
40%
30%0%
IVC: -100 deg.ATDC
図
3.16 低有効圧縮比条件において EGR
の増量に伴う燃焼特性の変化(1800 rpm,33% load(21.5 mg/st.),Boost:50 kPa(gauge),Pinj:160 MPa,εeff:10.5)
第
3
章NOx
とSoot
を同時に低減する燃焼法の実現EGR rate % EGR rate %
Effective compression ratioεeff THC g/kWhCO g/kWh
CO THC
Effective compression ratioεeff NOx g/kWh Soot g/kWh
EGR rate % EGR rate %
NOx Soot
・ : Experiment point
Effective compression ratioεeff
IVC deg.ATDC
-150
-130
-115 -107 -100
IVC deg.ATDC
-150
-130
-115 -107 -100
EGR EGR
EGR EGR
図
3.17 低有効圧縮比条件において EGR
の増量に伴う排出ガス特性の変化(1800 rpm,33% load(21.5 mg/st.),Boost:50 kPa(gauge),Pinj:160 MPa)
8.03
0.59 0.11 0
2 4 6 8 10
NOx g/kWh
0.027 0.033 0.045 0
0.05 0.1 0.15 0.2 0.25 0.3
Smoke g/kWh
1.56 1.23
0.93
0 0.5 1 1.5 2
dP/dθ MPa/deg. Soot g/kWh
197 194 195
170 180 190 200 210 220
ISFC g/kWh
EGR 0% 30% 40% EGR 0% 30% 40%
図
3.18 低有効圧縮比条件において EGR
の増量に伴う排出ガス特性第
3
章NOx
とSoot
を同時に低減する燃焼法の実現CO, THC
の排出が増加した原因として,LIVC
に伴って吸気ガスが減少したことが考え られる.そこで,40%のEGR
を行った低有効圧縮比条件(図3.18
のEGR40%の条件)に
おいて,EGR率一定のまま過給圧を87 kPa(gauge)まで増大させ,それによって燃焼に
使用されるガスを増加させることを考えた.そのときの実験条件を表3.6
に示す.またこ れら2
条件の燃焼特性を図3.19
に,CO, THC
の排出特性を図3.20
にそれぞれ示す.LIVC
を行った上で過給圧を増加させた結果,圧縮端温度が低減しつつ正味吸入空気量が増加す るため,空気過剰率が上昇しCO,THC
の低減が可能となったものと考えられる.このと きの燃費性能の比較を図3.21
に示す.同図に示すように,低有効圧縮比と高過給圧の組み 合わせにより,有効圧縮比の低下を適用しないEGR
条件と同等まで燃費は改善する傾向を 示した.このとき,筒内圧力の上昇に伴い着火遅れが短縮化しているが,ここでも燃料噴 射終了後の着火は実現しており,予混合型のディーゼル燃焼形態(Miller-PCCI燃焼)であ る.しかしながら,空気量の増大に伴い,NOxの抑制効果は低くなる.表
3.6 高過給 Miller-PCCI
燃焼40 Cooled-EGR rate %
1.5 -9.0 -14.0
Fuel injection timing deg.ATDC (Adjust MFB50% at 7deg.ATDC)
87
Excess air ratio λ 1.2
Intake and exhaust gas pressure 50 kPa(gauge)
10.5 Fuel injection duration deg.
160 Fuel injection pressure MPa
15.4 (constant) Expansion ratio
10.5 (-100) : LIVC Effective compression ratio εeff
(IVC timing deg.ATDC)
21.5 (33) Fuel quantity mg/st.(Load %)
1800 Engine speed rpm
with VVT
High Boost Miller-PCCI Miller-PCCI
40 Cooled-EGR rate %
1.5 -9.0 -14.0
Fuel injection timing deg.ATDC (Adjust MFB50% at 7deg.ATDC)
87
Excess air ratio λ 1.2
Intake and exhaust gas pressure 50 kPa(gauge)
10.5 Fuel injection duration deg.
160 Fuel injection pressure MPa
15.4 (constant) Expansion ratio
10.5 (-100) : LIVC Effective compression ratio εeff
(IVC timing deg.ATDC)
21.5 (33) Fuel quantity mg/st.(Load %)
1800 Engine speed rpm
with VVT
High Boost Miller-PCCI Miller-PCCI
第
3
章NOx
とSoot
を同時に低減する燃焼法の実現0 2 4 6 8 10
In-cylinder pressure MPa
0 50 100 150 200 250 300 350 400 450 500
R.H.R. J/deg.
-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 50 60 Crank angle deg.ATDC
Needle lift
-360 -300 -240 -180 -120 -60 0 Crank angle deg.ATDC
Valve lift
Boost: 50 kPa(gauge)
Boost: 87 kPa(gauge)
ISFC: 195.0 g/kWh
ISFC: 188.9 g/kWh
εeff: 10.5
IVC: -100 deg.ATDC : Calc.
図
3.19 低有効圧縮比条件において過給圧を増加させたときの燃焼特性の変化
(1800 rpm,33% load(21.5 mg/st.),EGR40%,Pinj:160 MPa,εeff:10.5)
10.8 41.3
0 10 20 30 40 50
CO g/kWh
1.60
0.81
0 0.5 1 1.5 2 2.5 3
THC g/kWh
Boost: 50 kPa +LIVC
87 kPa +LIVC
Boost: 50 kPa +LIVC
87 kPa +LIVC
図
3.20 低有効圧縮比条件における過給圧の増加による CO,THC
の低減(1800 rpm,33% load(21.5 mg/st.),EGR40%,Pinj:160 MPa,εeff:10.5)
第
3
章NOx
とSoot
を同時に低減する燃焼法の実現0.045 0.048 0
0.05 0.1 0.15 0.2
Smoke g/kWh
0.110
0.331
0 0.2 0.4 0.6 0.8 1
NOx g/kWh
195.0 188.9
160 180 200 220 240 260
ISFC g/kWh
Boost: 50 kPa +LIVC
87 kPa +LIVC
Boost: 50 kPa +LIVC
87 kPa +LIVC
Boost: 50 kPa +LIVC
87 kPa +LIVC
Soot g/kWh
図
3.21 低有効圧縮比条件において過給圧を増加させたときの排出ガス特性の変化
(1800 rpm,33% load(21.5 mg/st.),EGR40%,Pinj:160 MPa,εeff:10.5)
3.5. Miller-PCCI 燃焼の高速回転条件への適用
本節では,前節までに実証した
Miller-PCCI
燃焼を高速エンジン回転条件へ適用し,そ の成立を検証した結果について述べる.エンジン回転数が高回転化すると,1 サイクルあたりの燃料噴射量が一定でも実時間あ たりに投入される燃料量は増加するため,シリンダおよび燃焼室の壁温が上昇し,実時間 でみた着火遅れの確保が困難となる可能性がある.そこで,本論文において提案する
表
3.7 高速回転時の Miller-PCCI
燃焼50 Cooled-EGR rate %
15.0 Fuel injection duration deg.
1.3 1.5
Excess air ratio λ 1.5
2700 Engine speed rpm
Intake and exhaust gas pressure 50 kPa(gauge)
-18.4 -5.6
-12.4 Fuel injection timing deg.ATDC
160 Fuel injection pressure MPa
15.4 (constant) Expansion ratio
11.3 (-107) : LIVC 14.6
(-150) Effective compression ratio εeff
(IVC timing deg.ATDC)
20.0 (30) Fuel quantity mg/st.(Load %)
with VVT w/o VVT
EGR50%
+ LIVC EGR50%
+Retard EGR50%
50 Cooled-EGR rate %
15.0 Fuel injection duration deg.
1.3 1.5
Excess air ratio λ 1.5
2700 Engine speed rpm
Intake and exhaust gas pressure 50 kPa(gauge)
-18.4 -5.6
-12.4 Fuel injection timing deg.ATDC
160 Fuel injection pressure MPa
15.4 (constant) Expansion ratio
11.3 (-107) : LIVC 14.6
(-150) Effective compression ratio εeff
(IVC timing deg.ATDC)
20.0 (30) Fuel quantity mg/st.(Load %)
with VVT w/o VVT
EGR50%
+ LIVC EGR50%
+Retard EGR50%
第
3
章NOx
とSoot
を同時に低減する燃焼法の実現0 5 10
-360 -300 -240 -180 -120 -60 0 Crank angle deg.ATDC
Valve lift mm
-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 50 60 Crank angle deg.ATDC
Injector current0 2 4 6 8 10
In-cylinder pressure MPa
0 50 100 150 200 250 300
R.H.R. J/deg.
LIVC
LIVC Retard
injection
LIVC(εeff:11.3) Baseline
Baseline
Retard injection (w/o LIVC)
(w/o LIVC)
400 600 800 1000 1200 1400 1600
-40 -30 -20 -10 0 10 20 30 40 50 60 Crank angle deg.ATDC
In-cylinder temperature K
LIVC
Baseline
Retard injection
図
3.22 エンジン回転数を高速化した際の Miller-PCCI
燃焼特性(2700 rpm,30% load(20.0 mg/st.),EGR50%,Boost:50 kPa(gauge),Pinj:160 MPa)
Miller-PCCI
燃焼をエンジン回転数の高い運転条件への適用し,そのエンジン回転数に対するロバスト性を調査した.ここでは,表
3.7
に示すような回転数2700 rpm, 30%負荷率(20
mg/st.)を対象として試験を行った. NOx
の抑制をねらい50%の多量 EGR
を行うことを前提とし,このうえで,燃料噴射時期を遅角化した条件および
LIVC
により有効圧縮比を低 下させた条件を比較対象とした.それらの燃焼特性を図3.22
に比較して示す.このときEGR50%条件の IMEP
は0.78 MPa,噴射時期を遅角化した条件の IMEP
は0.72 MPa,
Miller-PCCI
条件のIMEP
は0.77 MPa
であり,これまでに1800 rpm
においてMiller-PCCI
第
3
章NOx
とSoot
を同時に低減する燃焼法の実現ても,LIVCを行うことにより圧縮行程後期の平均ガス温度が低下するため,LIVCを適用 した場合には着火時期をベースラインと同等とした上で,燃料噴射時期を進角できている.
すなわち,LIVC によって予混合時間の長期化が可能となっており,これにより,燃料と 空気の予混合化が促進していることが示唆された.
上記
3
条件に対する諸性能値を図3.23
に示す.ベースライン条件では燃料の高圧燃料噴 射のみではこのような多量EGR
条件下ではSoot
の低減が困難であったのに対し,LIVC
を 適用した低圧縮比,高膨張比燃焼により,燃費性能の悪化を最小限に抑制したうえでNOx
とSoot
の大幅な同時低減が可能となった.これにより,従来のは極めて困難であったIMEP:
0.77 MPa
の負荷率までPCCI
燃焼の成立範囲を拡大することができた.これと比較して,燃料噴射時期を遅角させた場合では,Sootの低減効果は低く,また燃焼時期の遅角化に起 因して燃費は大幅に悪化しており,この点において着火時期を上死点近傍に保持できる
Miller-PCCI
燃焼の優位性が認められる.ここでも,LIVCを行った場合には排出ガス流量は減少し,動作ガスの熱容量の低下は排気温度の上昇につながった.
178.8 194.4
179.8 170
180 190 200 210 220
ISFC g/kWh
0.179
0.107 0.114 0
0.1 0.2 0.3 0.4 0.5 0.6 0.7
NOx g/kWh
Baseline Retard LIVC
injection Baseline Retard LIVC
injection 0.175
0.075 0.022 0
0.05 0.1 0.15 0.2
Smoke g/kWh
333 346
367
300 320 340 360 380
Ex.temp. deg.C
Soot g/kWh
図
3.23 エンジン回転数を高速化した際の Miller-PCCI
燃焼の排出ガス特性(2700 rpm,30% load(20.0 mg/st.),EGR50%,Boost:50 kPa(gauge),Pinj:160 MPa)
第
3
章NOx
とSoot
を同時に低減する燃焼法の実現燃料噴射量,
EGR
率を一定とし,エンジン回転数を1800 rpm
から2700 rpm
まで300 rpm
ごとに変化させ,各有効圧縮比に対して試験を行った.このときの実験条件を表3.8
に示 し,Soot
とNOx
の排出特性および予混合時間τmixと空気過剰率λを図3.24
にそれぞれ示す.このとき,同図中の黒点が実験点であり,各点における実験値をもとにマップ化して表示 した.なお,ここでも各実験点において,上死点近傍で着火が生じるよう燃料噴射時期を 調整している.
48%の EGR
を行うことにより,全条件においてNOx
を40 ppm
以下に抑制することが可 能となった.しかしながら,高速回転時には,単位時間あたりの投入熱量が増加し,シリ ンダ内壁温度の上昇により,実時間での着火遅れの確保が困難になる.そのため,吸気バ ルブの遅閉じを用いない条件(εeff=14.6)において回転数を増加させると,Soot
は増加す る.しかしながら,いずれの回転数においても,有効圧縮比を減少させることによって圧 縮後のガス温度が低温化するため予混合時間が長期化し,有効圧縮比を低下させるほどSoot
は低減する傾向を示した.これは同図に示すように,LIVC に伴う空気過剰率の低下 によってSoot
が増加する効果に比べ,予混合化の促進によりSoot
の生成が抑制される効 果が支配的になった結果であると推察される.このように,広範なエンジン回転数におい て多量EGR
と低有効圧縮比の組み合わせは,NOxとSoot
の大幅な同時低減につながるこ とを明らかにした.表
3.8 エンジン回転数に対する Miller-PCCI
燃焼のロバスト評価試験Intake and exhaust gas pressure 54 kPa(gauge)
1800, 2100, 2400, 2700 Engine speed rpm
Adjust MFB50% position at 7deg.ATDC
48 Cooled-EGR rate %
Fuel injection timing deg.ATDC
160 Fuel injection pressure MPa
15.4 (constant) Expansion ratio
14.6, 13.4, 12.1, 11.3 (-150, -130, -115, -107) Effective compression ratio εeff
(IVC timing deg.ATDC)
21 (33) Fuel quantity mg/st.(Load %)
Intake and exhaust gas pressure 54 kPa(gauge)
1800, 2100, 2400, 2700 Engine speed rpm
Adjust MFB50% position at 7deg.ATDC
48 Cooled-EGR rate %
Fuel injection timing deg.ATDC
160 Fuel injection pressure MPa
15.4 (constant) Expansion ratio
14.6, 13.4, 12.1, 11.3 (-150, -130, -115, -107) Effective compression ratio εeff
(IVC timing deg.ATDC)
21 (33) Fuel quantity mg/st.(Load %)
第
3
章NOx
とSoot
を同時に低減する燃焼法の実現Effective compression ratioεeff Soot g/kWh NOx g/kWh Engine speed rpm
Soot NOx
: Experimental points
Engine speed rpm
IVC deg.ATDC
-150
-130
-115
-107
Miller-PCCI
Effective compression ratioεeff
τmixms λ
Mixing time τ
mixExcess air ratio λ
Engine speed rpm Engine speed rpm
LIVC
1.30 1.33 1.35 1.38 1.40 1.43 1.45 1.48 1.50 1.53 1.55
図
3.24 各回転数において高 EGR,低有効圧縮比制御を行うことによる NOx
とSoot
の低 減(2700 rpm,33% load(21.0 mg/st.),EGR48%,Boost:54 kPa(gauge),Pinj:160 MPa)3.6. まとめ
本章では,第
1
章で提案したディーゼル燃焼コンセプトをもとにエンジンベンチ試験を 行った際の実験結果について述べた.本章の内容をまとめると以下のとおりである.極低負荷運転条件においては,多量の
EGR
を適用することで,NOxとSoot
の同時低減 が可能となる.しかしながら,負荷率を増加させると,多量EGR
によりNOx
の低減は可 能となる反面,たとえ燃料噴射圧を高圧化してもSoot
の低減が極めて困難となる.そこで,このような特徴が現れる
1800 rpm, 33%負荷率の多量 EGR
条件に対し,可変バ ルブタイミング機構により吸気バルブの閉弁時期を変更し,低有効圧縮比,高膨張比とな るサイクルを適用することで,従来の燃焼技術のみでは成立が不可能であった負荷域にお いて大幅に排出ガスを低減することをねらいとした.吸気バルブの遅閉じ(LIVC)により有効圧縮比を低下させると,燃焼反応の支配因子で ある圧縮行程の平均ガス温度が低温化するため,着火時期をベースラインと同等に制御し