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(戸次鎮宗)論文内容の要旨

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Academic year: 2022

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(戸次鎮宗)論文内容の要旨

主 論 文

Serum kynurenine levels are a novel biomarker to predict the prognosis of patients with hepatocellular carcinoma

血清キヌレニン値は肝細胞癌患者の予後を予測する新規バイオマーカーである

戸次 鎮宗、橋元 悟、山崎 一美、小森 敦正、阿比留 正剛、長岡 進矢、佐伯 哲、

末廣 智之、釘山 有希、別府 麻美、黒木 保、中村 稔、伊東 正博、八橋 弘

PLoS One 15(10) e0241002 2020 年 doi.org/10.1371/journal.pone.0241002

長崎大学大学院医歯薬学総合研究科新興感染症病態制御学系専攻

(主任指導教員:八橋 弘教授)

緒 言

肝細胞癌は致命的な新生物の一つであり、日本では C 型肝炎が肝細胞癌の主な危険因 子である。肝細胞癌では、アミノ酸の一種であるキヌレニンが発症リスクと正の相関 があることが報告されている。しかしながら、肝疾患患者における血清キヌレニンレ ベル、また肝細胞癌において血清キヌレニンが生命予後に対して果たす役割について は不明である。我々は C 型肝炎ウイルス感染患者の血清キヌレニンレベル、および肝 細胞癌と C 型慢性肝炎患者における血清キヌレニン値と予後との関係を調査した。

対象と方法

国立病院機構長崎医療センターで、1999 年 1 月から 2015 年 12 月の間に肝細胞癌と診 断された 604 人の患者と、2014 年 10 月から 2017 年 11 月の間に受診した肝細胞癌を 発症していない 288 人の患者を遡及的に分析した。血清キヌレニンは肝細胞癌患者で は癌診断時の、肝細胞癌を有しない患者では直接作用型抗ウイルス薬導入時の保存血 清を用いて測定した。血清キヌレニンと予後との関連は Cox 比例ハザード回帰分析を 使用して評価した。

結 果

肝細胞癌患者は肝細胞癌を有しない患者と比較して高齢であり(P=0.010)、AST、ALT、

総ビリルビン、AFP、DCP は有意に高値(P<0.001)であった一方、アルブミン、PT、

血小板数は有意に低値であった(P<0.001)。肝細胞癌患者は、肝細胞癌を有しない患 者よりも血清キヌレニン値が有意に高かった(中央値:557.1 対 464.2ng/mL、p<0.001)。 血清キヌレニン値は DCP と弱い相関関係を認めた(r=0.207)が、その他の因子との

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相関関係を認めなかった。

肝細胞癌患者の予後と関連する因子について多変量解析を用いて検討したところ、年 齢、総ビリルビン、アルブミン、Child-Pugh クラス、BCLC ステージ、AFP、DCP、治 療(手術)、および血清キヌレニンレベルが独立した因子であった。血清キヌレニン が 900 以上(n=65)、600〜899(n=194)、および 600ng/mL 未満(n=345)の肝細胞癌 患者の 5 年生存率は、それぞれ 30.6%、47.4%、および 61.4%であった(p=0.001、

ログランク検定)。Child-Pugh A のみの集団、また BCLC stage 0 または A のみの集団 の解析でも同様に、血清キヌレニンが高値であるほど生存率が低かった。血清キヌレ ニン<600ng/mL と比較した血清キヌレニン≥900 および 600-899 のハザード比は、それ ぞれ 1.91(p<0.001)および 1.37(p=0.015)であった。

考 察

C 型慢性肝疾患患者では血清キヌレニン値、キヌレニン産生酵素であるインドールア ミン 2,3-ジオキシゲナーゼ(IDO)発現および血清キヌレニン/トリプトファン比の上 昇が示されているが、肝細胞癌を発症するとキヌレニンの産生がより高まると考えら れる。

高レベルの血清キヌレニンは、肝細胞癌患者の予後不良と相関していた。キヌレニン は、IDO およびトリプトファン 2,3 - ジオキシゲナーゼ(TDO)によって生成される トリプトファン代謝産物である。IDO や TDO 高値は、種々の腫瘍で予後不良因子と報 告されている。体系的レビューおよびメタアナリシスでは、IDO1 の発現が高い患者に おいて全生存期間がより短く、無病生存率がより悪かったと報告されている。血清キ ヌレニンレベルは、肝細胞癌患者の予後を予測するための新しいバイオマーカーであ る可能性がある。

キヌレニンはアリール炭化水素受容体(AhR)の特異的アゴニストであることが示さ れている。キヌレニンによる癌細胞 AhR の活性化は、細胞移動を促進する遺伝子の発 現を増加させる。キヌレニン経路の活性化は癌細胞の悪性度の増強および腫瘍免疫回 避機構に影響し予後と関連していると考えられる。

細胞レベルでは TDO および IDO1 経路の阻害薬が腫瘍免疫を活性化させることが報告 されており、複数の IDO 阻害薬が悪性腫瘍の治療薬としての治験を受けている。キヌ レニン高値の肝細胞癌患者では IDO が活性化していることが想定され、IDO 阻害薬が 奏効することが期待される。

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