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はじめに
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血管内皮機能障害が動脈硬化の発症・維持・進展
からプラーク破綻にまで関与することが明らかに
なってきている。動脈硬化は血管内皮機能障害を第
一段階として発症し、さらに進行すると心血管合併
症を発症すると考えられ、血管内皮機能の測定は動
脈硬化の程度を評価することに加え、心血管合併症
の規定因子になり得る
1)。したがって、心血管病の
予防のためには、健診や人間ドックにおいて心血管
病のリスクファクターの評価とともに、動脈硬化の
初期段階の血管内皮機能を正しく評価することが
重要と考えられる。
血管内皮機能の非侵襲的測定法として、超音波装
置を用いた上肢の駆血開放後の血管拡張反応(flow
mediated dilataion: FMD)が汎用されている
2)。近
年、新たな非侵襲的血管内皮機能測定法として、上
腕駆血開放後の動脈拡張反応を指尖脈波で測定す
るreactive hyperemia peripheral arterial tonometry
(RH-PAT)が開発された
3)。RH-PATによって測定
される血管内皮機能はFMDと相関し
4)、アセチル
コリン負荷による冠動脈内皮機能障害の予測に有
用であったことが報告されている
5)。またフラミン
ガム研究において、RH-PATによって測定された血
管内皮機能と心血管病のリスクファクターとの相
関が示されている
6)。また最近では、RH-PATが心
血管イベント発症の予測に有用であり、RH-PATを
フラミンガムリスクスコアのリスク評価に加える
ことによりリスク予測精度を引き上げることが可
能であることが報告されている
7)。
今回我々は、人間ドック受診者を対象に、RH-PAT
〔論文受付日:2011年10月13日〕〔論文受理日:2012年1月17日〕 1)中日病院 循環器内科 2)土岐市立総合病院 循環器科 3)中日病院 健診センター 4)中日病院 臨床検査科 5)名古屋大学大学院医学系研究科循環器内科学近年、血管内皮機能を非侵襲的に指尖で測定できる reactive hyperemia peripheral arterial tonometry (RH-PAT)が開発された。本研究で我々は、人間ドック受診者を対象に RH-PAT を用いた血管内皮機能測定に ついて検討した。当院の2日ドック受診者で脳心血管病の既往がなく投薬を受けていない男性 120 名(平均年齢 53 ±9歳)を対象とし、2日ドックの検査項目に加え、アポリポ蛋白 B100、空腹時インスリン、高感度 CRP などを測定した。また、上腕駆血開放後の動脈拡張反応を指尖容積脈波として検出する reactive hyperemia index(RHI)を Endo-PAT2000 を用いて自動計測し、血管内皮機能とした。全例で所要時間 30 分で RHI の測 定が可能であった。RHI の平均値は 1.76 ± 0.41 あり、RHI は年齢、心拍数、HbA1c、アポリポ蛋白 B100、総 コレステロール、LDL コレステロール、non HDL コレステロールと有意な負の相関を示した。喫煙歴(pack-years)と空腹時血糖値は RHI と有意には至らないものの負の相関の傾向がみられた。RHI を従属変数としたス テップワイズ重回帰分析では年齢、LDL コレステロール、心拍数が RHI の独立した規定因子であることが示され た。本研究の結果より、人間ドック受診者において RH-PAT を用いて測定した血管内皮機能は心血管病の危険因 子との相関がみられ、初期動脈硬化のサロゲートマーカーとしての可能性が確認された。 (総合健診.2012;39:277-284.)
キーワード
血管内皮機能、指尖容積脈波
抄 録
原 著
原 著
健診受診者における血管内皮機能測定
-Reactive Hyperemia Peripheral Arterial
Tonometry(RH-PAT)を用いた検討-
高橋亮太郎
1)奥村 健二
2)大山 智鈴
3)小川 晃子
3)大野 正弘
3)浅野 美樹
4)田口 宣子
1)鈴木 正之
1)ァクターとの関連について検討した。
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方 法
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対象は中日病院健診センターの2日ドック受診
者で脳心血管病の既往がなく投薬を受けていない
男性で、本研究の趣旨と内容について十分に説明し
た後に同意を得られた120名(平均年齢53±9歳)
である。本研究はヘルシンキ宣言の精神を遵守し、
中日病院倫理委員会の承認を得て施行された。
通常の2日ドックの検査項目に加え、アポリポ蛋
白A1、アポリポ蛋白B100、空腹時インスリン、高
感度 CRP を測定した。インスリン抵抗性指数の
homeostasis model assessment of insulin resistance
(HOMA-IR)は空腹時血糖×空腹時インスリン/
405の計算式により算出された。
社製Endo-PAT2000を用いて上腕駆血開放後の指尖
脈波の変化を専用の指尖プローブで検出してコン
ピュータ解析で定量化し自動解析された。2日ドッ
クの2日目の午前8時の早朝空腹時に、血管内皮機
能測定専用に設けた外部から遮断された静寂な検
査室で室温を26℃に設定して測定した。喫煙者は検
査の8時間以上前から禁煙とした。被検者はベッド
上に臥位となり、利き腕でない方を駆血側(解析
側)、利き腕を非駆血側(コントロール)として両
上腕にカフを巻き、RH-PAT測定用のプローブを両
手の第2指に装着した。図1に当院健診センターで
実際にRH-PATを測定している様子を示す。15分の
安静の後に、5分間のベースライン測定、その後5
分間の駆血と駆血開放後5分間のPATを測定し、
図2に示すように非駆血側をベースにした駆血前
後のPATの“比の比”をbaseline correction factorで
図2
RH-PATの波形とRHIの計算式
駆血側上肢 非駆血側上肢 (コントロール) 駆血側の血管充血反応 非駆血側の血管充血反応図1
当院健診センターでRH-PATを測定している様子
RH-PAT を用いた血管内皮機能測定
図3
RH-PATの実例の波形
正常
血管内皮機能障害
左に正常例の波形、右に血管内皮機能障害例の波形を示す
Mean ± SD Range 年齢 ( 歳 ) 53 ± 9 30–71 喫煙歴 (pack-years) 30 ± 50 0–400 BMI (kg/m2) 23.4 ± 3.0 17.4–35.4 腹囲 (cm) 84.6 ± 8.0 66.5–111.0 収縮期血圧 (mmHg) 115 ± 17 81–164 拡張期血圧 (mmHg) 72 ± 11 40–105 心拍数 (bpm) 66 ± 10 47–99 尿酸 (mg/dL) 6.3 ± 1.2 3.3–9.7 eGFR (mL/min/1.73mm2) 76.3 ± 14.4 43.4–115.3 白血球数 (/mm3) 5271 ± 1423 2410–10810 高感度 CRP (mg/dL) 0.089 ± 0.141 0.006–0.880 空腹時血糖 (mg/dL) 101 ± 12 83–166 HbA1c (%) 5.1 ± 0.5 4.2–7.6 FIRI (μU/mL) 6.5 ± 4.8 0.9–31.1 HOMA-IR 1.68 ± 1.47 0.22–9.38 Apo A1 (mg/dL) 152 ± 28 84–249 Apo B100 (mg/dL) 105 ± 25 38–161 Apo B100/A1 0.71 ± 0.21 0.30–1.32 TC (mg/dL) 202.7 ± 37.0 81.9–282.7 HDL-C (mg/dL) 54.6 ± 14.3 28.2–95.4 LDL-C (mg/dL) 112.2 ± 27.3 40.0–177.1 TG (mg/dL) 130.1 ± 91.2 41.0–818.4 TC/HDL-C 3.91 ± 1.07 1.96–7.36 LDL-C/HDL-C 2.17 ± 0.71 0.85–4.33 Non HDL-C (mg/dL) 148.1 ± 35.8 53.8–220.8 RHI 1.76 ± 0.41 1.06–3.07BMI:body mass index,eGFR:estimated glomerular filtration rate,FIRI:空腹時インスリン,HOMA-IR:homeostasis model assessment of insulin resistance,Apo A1:アポリポ蛋白 A1, Apo B100:アポリポ蛋白 B100,TC:総コレステロール, HDL-C:HDL コレステロール,LDL-C:LDL コレステロール, TG:トリグリセライド,RHI:reactive hyperemia index
表1
症例の臨床背景(
n
=120)
変数 r p値 年齢 -0.259 0.004 喫煙歴 (pack-years) -0.155 0.092 BMI -0.014 0.877 腹囲 -0.068 0.463 収縮期血圧 -0.118 0.200 拡張期血圧 -0.145 0.114 心拍数 -0.191 0.036 尿酸 -0.082 0.372 eGFR 0.078 0.396 白血球数 0.072 0.435 Log 高感度 CRP 0.087 0.346 空腹時血糖 -0.172 0.061 HbA1c -0.179 0.049 Log FIRI 0.050 0.591 Log HOMA-IR 0.019 0.840 Apo A1 -0.058 0.529 Apo B100 -0.188 0.039 Apo B100/A1 -0.125 0.172 TC -0.225 0.014 HDL-C -0.072 0.437 LDL-C -0.246 0.007 Log TG -0.052 0.574 TC/HDL-C -0.089 0.336 LDL-C/HDL-C -0.138 0.133 Non HDL-C -0.203 0.026RHI:reactive hyperemia index,BMI:body mass index,eGFR:estimated glomerular filtration rate, FIRI:空腹時インスリン,HOMA-IR:homeostasis model assessment of insulin resistance,Apo A1: アポリポ蛋白 A1,Apo B100:アポリポ蛋白 B100, TC:総コレステロール,HDL-C:HDL コレステロール, LDL-C:LDL コレステロール,TG:トリグリセライド
波形を示す。血管内皮機能障害の症例では駆血開放
後の血流量の増加が乏しくPATの振幅が小さくな
るため、RHIは低値となる。
結果は平均値±標準偏差で表した。統計解析は
SPSS Inc社製PASW Statistics Version 18.0 を用い
た。正規性の検定はKolmogorov-Sminorv検定で行
い、高感度CRP、空腹時インスリン、HOMA-IR、ト
リグリセライドなど正規分布に従わない変数につ
い て は 対 数 変 換 を 行 っ て 解 析 し た。 単 相 関 は
Pearson検定、重回帰分析はステップワイズ検定を
用いて行った。統計学的有意水準は5%とした。
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結 果
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120名の被検者全例で、RHIは検査開始前の15分
の安静時間を含め、所要時間30分で問題なく測定可
能であった。
各パラメータの平均値は正常範囲内であった。図4
にRHIの分布図を示す。RHIは1.50 ~ 1.74で症例数
が最も多く、RHIの平均値は1.76±0.41であった。症
例の内訳をみると、高血圧症が11例(9.2%)、喫煙
歴ありが90例(75.0%)、現喫煙が51例(42.5%)、肥
満(BMI25以上)が30例(25.0%)、腹部肥満(腹囲
85cm以上)が60例(50.0%)、高LDLコレステロー
ル血症(140mg/dL以上)が16例(13.3%)、低HDL
コ レ ス テ ロ ー ル 血 症(40mg/dL 未 満 ) が 17 例
(14.2%)、高トリグリセライド血症(150mg/dL以上)
が30例(25.0%)、メタボリックシンドローム(本邦
基準)が11例(9.2%)であった。
表2にRHIと各変数との単相関分析の結果を示
す。RHI は年齢、心拍数、HbA1c、アポリポ蛋白
B100、総コレステロール、LDLコレステロール、non
HDLコレステロールと有意な負の相関を示した。喫
煙歴(pack-years)と空腹時血糖はRHIと有意には
図4
RHIの分布図
0 5 10 15 20 25 30 35 40症
例
数
0.75 1.00 1.25 1.50 1.75 2.00 2.25 2.50 2.75 3.00 3.25 3.50RHI
変数 回帰係数 SE β 除外F値 年齢 -0.011 0.004 -0.235 7.43 LDL-C -0.003 0.001 -0.209 5.85 心拍数 -0.007 0.003 -0.176 4.17 自由度補正R2=0.146, p=0.0004 RHI を従属変数とし,表2に示されたその他の全ての変数を独立変数として ステップワイズ重回帰分析を行ったRHI:reactive hyperemia index,SE:標準誤差,β:標準回帰係数, LDL-C:LDL コレステロール
RH-PAT を用いた血管内皮機能測定
至らないものの負の相関の傾向がみられた。空腹時
インスリン、HOMA-IR、高感度CRPはRHIとの相
関を認めなかった。
RHIを従属変数とし、表2に示されたその他のす
べての変数を独立変数としてステップワイズ重回
帰分析を行った結果、年齢、LDLコレステロール、
心拍数がRHIの独立した規定因子であることが示さ
れた(表3)。
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考 察
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現在臨床で用いられている血管内皮機能測定法
としては、侵襲的方法として前腕動脈・下肢動脈の
プレチスモグラフによる血流量測定や冠動脈のフ
ローワイヤーによる血流量測定と血管造影による
血管径測定が挙げられるが、これらの検査は被検者
の負担が大きく手技が煩雑となる。特に健診や人間
ドックの現場では、より非侵襲的で簡便な方法が必
要となるため、FMDやRH-PATなどによる検査法
が適しているといえる。FMD測定の問題点は、検
者や施設によってデータの再現性に差を認めるこ
とであり
8)、2002年にCorrettiらがまとめたガイド
ラインにも過去100例以上の測定者が毎年100例以上
測定を継続するように記載されている
9)。RH-PAT
は検査値がコンピュータで自動解析されるため検
者間の測定技術に依存せず、施設間でのデータの比
較検討に耐えうる可能性があり、 RH-PATによる測
定の再現性の高さについては、これまでにすでに報
告されている
10~12)。また、RH-PATによって計測さ
れるRHIがFMDと相関することはすでに報告され
ているが
4)、最近報告されたフラミンガム研究のコ
ホートにおける検討では、RHIとFMDは単相関は
示すものの年齢と性別での補正や多変量解析では
有意な相関を示さず
13)、5,000例のコホートを対象と
したGutenberg Heart StudyではRHIとFMDは有意
ではあるものの弱い相関にとどまった
14)。これらの
結果より、血管径や部位による血管内皮機能の特性
の違いが示唆され、その臨床的意義については今後
さらなる検討が必要とされている。
フラミンガム研究のコホートでは動脈硬化危険
因子とRHI、FMDとの関連が検討されており
6, 13)、
RHIについては男性、収縮期血圧、心拍数、body
mass index(BMI)、総コレステロール/HDLコレス
テロール比、トリグリセライド、空腹時血糖、糖尿
病あり、現喫煙、高血圧あり、高血圧治療あり、脂
質治療ありがRHIと有意に正相関し、多変量解析で
は年齢、男性、収縮期血圧、心拍数、BMI、総コレ
ステロール/HDLコレステロール比、トリグリセラ
イド、糖尿病あり、現喫煙、脂質治療ありがRHIの
独立した規定因子であった。それに対しFMDは、年
齢、性別、収縮期血圧、心拍数、BMI、検査前歩行
運動のみが規定因子であった。Gutenberg Heart
Studyの報告においてもFMDは現喫煙、空腹時血
糖、糖尿病ありなどの因子とは関連せずRHIとの相
違がみられ
14)、血管径や部位による血管内皮機能の
病態生理の違いが示唆される。また、最近のFerré
らの報告によると、RHIはHDLコレステロール、ア
ポリポ蛋白A1と正相関し、腹囲、トリグリセライ
ド、高感度CRP、尿酸と負の相関を示し、多変量解
析ではHDLコレステロールと喫煙歴がRHIの独立し
た規定因子であった
15)。また、Fitchらの少数例での
検討では、RHIはHDLコレステロールと正相関し、
年齢、空腹時血糖、トリグリセライド、腹囲などと
負の相関を示し、多変量解析ではトリグリセライド
のみがRHIの独立した規定因子であった
16)。今回の
我々の検討では、収縮期血圧、喫煙歴、BMI、HDL
コレステロール、総コレステロール/HDLコレステ
ロール比やトリグリセライドはRHIとは相関せず、
年齢、LDLコレステロール、心拍数がRHIの規定因
子であった。本研究は対象が心血管病の既往がなく
投薬を受けていない男性のみの少数例での検討で
あり、さらに大規模な集団での検討が必要である
が、人種差や薬剤などの影響も過去の報告との結果
の違いに寄与している可能性がある。LDLコレステ
ロールは言うまでもなく動脈硬化惹起性リポ蛋白
の最たるものであり、LDLコレステロールを低下さ
せるHMG-CoA還元酵素阻害薬(スタチン)による
FMDの改善効果に関しては数多くの報告がある
17~25)。
本研究の結果は、LDLコレステロールとRH-PATに
よって測定される血管内皮機能との関連を裏付け
るものであり、今後、スタチンによるRHIの改善効
果についての検証の結果も期待される。また、RH-PATによる測定では非駆血側を対照コントロール
として評価することにより交感神経の影響を客観的
に評価できる可能性が考えられるが、本研究ではフ
ラミンガム研究のコホートでの報告と同様に
6, 13)、
交感神経の影響を反映する心拍数がRHIの規定因子
であった。交感神経の活動がFMD反応に影響を与
えることも報告されており
26)、RH-PATとFMDは
ともに動脈血流変化を評価する測定法であるため
Bonettiらの報告によると、冠動脈内皮機能障害を
判定するRHIのカットオフ値はベースライン補正す
ると1.67であった
5)。また、男性より女性の方がRHI
が高値であることが知られているが
6)、最近の松澤
らの報告によると、日本人女性において閉塞性、非
閉塞性を含めた虚血性心疾患のベースライン補正
したRHIのカットオフ値は1.82であり、虚血性心疾
患を有さない群のRHIの平均値は2.15であった
27)。
今回の我々の検討では、RHIの平均値は1.76±0.41
であり、これは心血管病の既往がなく投薬を受けて
いない健康な日本人男性の平均値といえる。今後さ
らにRHIがサロゲートマーカーとして確立されるた
めには、大規模なコホートでの前向き研究において
心血管イベント発症を予測するRHIのカットオフ値
の検討が必要である。
RH-PATは簡便で再現性の高い検査法ではある
が、食事や緊張・ストレスの影響を受けやすいこと
が知られている。また、薬剤を内服している場合は
その影響を避けるために、検査当日の朝は休薬する
必要がある。そのため、RH-PATは早朝空腹時に施
行することが望ましく、検査前の安静時間を含め、
30分の検査時間の確保が必要となる。したがって、
通常の日帰りで行う健診や人間ドックの限られた
時間スケジュール内で行うことは困難であり、現状
では本研究で行ったように2日ドック受診者を対
象に動脈硬化健診としてオプションで施行するの
が健診領域では現実的と思われる。また、RH-PAT
測定用の外部から遮断された静寂な検査室を設け
る必要がある。Endo-PAT2000は本邦で医療機器と
して承認されているが、指尖プローブが高額であり
ディスポーザブルであるという費用面の問題が残
されている。現状では主に研究目的で導入している
施設がほとんどであるが、今後、測定機器と指尖プ
ローブが安価となり普及してくるようになれば、さ
らなるデータの蓄積により一般臨床での有用性が
期待できる。以上のように、時間、場所、費用の問
題が解決されれば、RH-PATによる血管内皮機能測
定は健診領域での導入も十分可能と思われる。
本研究は健診や人間ドック受診者を対象にRH-PATを用いて血管内皮機能を評価した初めての報
告である。しかし、男性のみを対象とした少数例で
の検討であり、今後は女性を含めたより大規模な集
団での検討が望まれる。さらに、日本人におけるRH-PATの心血管イベントのリスク予測能を検証する
ある。
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まとめ
──────────────
人間ドック受診者において、心血管病の既往がな
く投薬を受けていない健康な日本人男性を対象に
RH-PATを用いて測定した血管内皮機能の指標RHI
の平均値は1.76であった。RHIは年齢や糖・脂質代
謝のパラメータなど心血管病の危険因子との相関
がみられ、動脈硬化のサロゲートマーカーとしての
可能性が確認された。特に年齢、LDLコレステロー
ル、心拍数がRHIの規定因子として強く関連するこ
とが示された。RH-PATにより健診や人間ドックの
現場において非侵襲的に血管内皮機能を簡便に評
価することが可能であるが、今後、血管内皮機能測
定法としてその有用性を検証するためにさらなる
研究とエビデンスの蓄積が望まれる。
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謝 辞
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本研究は日本総合健診医学会の平成21年度学術
奨励助成を受けて施行されました。日本総合健診医
学会ならびに日野原重明理事長、吉田勝美学術委員
長に心より感謝申し上げます。
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参考文献
─────────────
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