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過食嘔吐を呈する女子大学生に対する心理的支援

 ― 対人関係療法と認知行動療法を用いた自分を認めるプロセス ―  山 蔦 圭 輔

(神奈川大学人間科学部)

Psychological support for female college students with binge-eating and purging

―Support using interpersonal therapy and cognitive behavioral therapy―

Faculty of Human Sciences, KANAGAWA University

【要 約】

 本事例は,クライエント A の有する食行動の問題(過食・嘔吐)と対人関係の問題,自 身の不安定な自己イメージについて支援を行ったものである。ここでは,対人関係療法なら びに認知行動療法の観点から支援を行った。支援の過程で,思春期に体験した原家族の問題 や,大学生活において友人から認められない体験が,クライエント A の過食・嘔吐や痩身 欲求を引き起こす一要因であることが明確化された。また,自動思考的に生じている他者評 価への懸念や痩せ願望について,Acceptance and Commitment Therapy の要素を用いた介 入を行った。その結果,身体に関する他者評価不満足感や食物摂取コントロールの頻度が低 減したことが確認された。本心理的支援の過程は,クライエント A の新たなアイデンティ ティや自身の価値を見出すことにつながったものといえる。

 キーワード:過食・嘔吐,対人関係療法,認知行動療法,自己イメージ,他者評価懸念

1.はじめに

 摂食障害は,思春期・青年期女性を中心に蔓延する精神疾患であり,効果的な予防的介入 ならびに治療的介入が望まれる。摂食障害の発症維持要因について,幼少期の母子関係の問 題や痩身を賞賛する社会文化的風潮の影響など,いくつかの要因が示されているものの,こ れらの要因が複雑に絡み合い成立していることが指摘されている(Ward, Tiller, Treasure,

& Russell, 2000)。また,摂食障害の治療について,認知行動療法(Cognitive Behavioral Therapy:以下,CBT)の効果や対人関係療法(Interpersonal Psychotherapy 以下,IPT)

の効果が実証されている。たとえば,NICE(National Institute for Clinical Excellence)ガ イドラインをはじめとした国際的ガイドラインにおいても,CBT ならびに IPT は有効な治 療法として第一選択肢とされている(西園,2013)。

 摂食障害治療について,CBT や IPT が第一選択肢とされる背景には,こうした治療法を 用いた治療のエビデンスが確保されていることが挙げられる。たとえば,CBT は,治療

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後,4 週間から 6 週間以内に治療効果が認められること(Agras et al., 2000)や無作為化対 象試験の研究計画において,介入群において有意な治療効果が認められること(Fairburn, Agras & Wilson,1992)などが示されている。また,IPT による介入が長期的治療効果を もたらすこと(Fairburn, 1995)や IPT による治療群は CBT による治療群と比較して寛解 率は低いものの,その後の効果が持続し,一定期間後には CBT の寛解率と相違なくなるこ と(Agras, 2000)などが示されている。

 以上の通り,CBT または IPT の治療効果については単独で検討されているものや,両者 を比較する研究が多く,両者を組み合わせた介入の治療効果について検討されたものは数少 ない。こうした中,近年,心理療法を統合する重要性について指摘されている。たとえば,

田々井(2006)は,心理療法の統合について,技法的折衷(理論より実践を取り上げ,症状 や問題に合った方法を選択する立場)・理論的統合(2 つ以上の心理療法の理論を統合し,

より良い理論を創造する立場)・共通因子(異なる心理療法の共通項を探し出す立場)・同化 的統合(1 つの心理療法を基盤として,他の心理療法を取り入れる立場)の 4 つを紹介し,

心理療法を統合する必要性や可能性について言及している。

 摂食障害の発症維持要因が多様であり複雑に混在していることを考えると,摂食障害に対 する治療的介入を実践する際,効果的な心理療法を統合し適用することや,支援対象者の状 態像にマッチした方法を柔軟に適用する必要性がうかがえる。

 以上から,ここでは,過食・嘔吐を主訴とする女子大学生を対象に,摂食障害の治療法と して効果が実証されている CBT および IPT を取り入れた支援のプロセスを報告する。

2.事例の概要

 本事例は,過食・嘔吐を主訴とするクライエント A に対する,大学卒業までに実施した 12 回(1 回 60 分)の面接プロセスである。クライエント A は 21 歳の女子大学生である

(短期大学卒業後,都内近郊の 4 年制大学の 3 年次へ編入学)。真面目な印象で年齢相応であ り,ファッション雑誌から切り取ったようなファッショナブルな女性である。

 主訴は,「ストレスが溜まると,過食・嘔吐がはじまりセルフ・コントロールができな い」,「こうした状況に陥っている理由を知りたい,こうした状況を解決したい」とのことで ある。なお,過食・嘔吐が認められることから体重・身長について聴取したところ,身長 156㎝,体重 49㎏,Body Mass Index は 20.14㎏/ m2(普通体型)であった。

 ここでは,IPT ならびに CBT の観点から,A にとっての重要な他者(友人)との関係を テーマに面接を行い(第Ⅰ期:#2~#6),また,他者評価への懸念や痩せ願望などに囚われ ないスキルを修得する体験的なセッション(第Ⅱ期:#7~#11)を設け介入した。

 第Ⅰ期では,過食・嘔吐は,A に痩身をもたらす行動であり,痩身を維持することで,

友人から“認められる”ことを希求するための行動であることを確認した。そして,友人か ら“認められる(役割期待に応える)”ことから A 自身が自分を“認める(自己決定し自身 の役割を生きる)”ことへシフトすること,こうした変化を通じて友人との関係を調整する スキルを高めることを目的とした面接を行った。

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 第Ⅱ期では,他者評価への懸念や痩せ願望など,いわば自動思考のように浮かぶ考えに囚 われないために,Acceptance and Commitment Therapy(以下,ACT)を参考に開発され た方法を用い介入を行った。介入後,身体に関する他者評価不満足感が低減するとともに,

摂食障害の臨床症状を呈するリスクが軽減している可能性が示唆された。なお,A に対 し,本事例研究について,十分な説明を行い,書面にて同意を得た。

3.家族構成

 小学生時代から母方の祖母(74 歳)と二人暮らしで現在は,一人暮らし。父(54 歳)・母

(49 歳)・兄(27 歳)とはそれぞれ別居の状態とのこと。小学生時代より A が祖母と生活を 共にする一方,兄は母と生活していたとのこと,現在,兄は独居。父・母とはほとんど連絡 をとらず,兄とのみ数カ月に 1 度連絡をとるとのこと。本人の学費は祖母が負担しており経 済的な余裕はないとのこと。

4.当ケースが開始されるまでの経過

 A が所属する大学学生相談室において,X 年 4 月より相談開始。

 X-2 年 3 月に短期大学を卒業後,X-2 年 4 月に 4 年制大学の 3 年次へ編入学。高校時 代に急激に太り(現在よりも 10㎏程度増加と報告),過食・嘔吐を伴う極端なダイエット行 動を短期間実行し,X-1 年(大学 3 年次)の 10 月までは過食・嘔吐とも再燃しなかった ものの,X-1 年 10 月から X 年 4 月までの約 6 カ月間,過食・嘔吐を続けているとのこ と。X-1 年 10 月の時点で,就職活動のストレスや友人との価値観の相違を感じ,「自身の 存在価値はどこにあるのかがわからなくなってしまった」といった自己否定感に言及し,こ の頃から過食・嘔吐が再燃する。生理不順など身体的な問題はなし。医療歴・投薬歴なし,

相談歴は本相談室への来談のみである。

5.測定

 面接の過程で,#1,#7,#10,#12 において心理尺度を用いた測定を行った。

1)新版TEG II(東京大学医学部心療内科TEG研究会,2002)

 5 つの自我状態を測定するものである。5 つの自我状態は,Critical Parent(CP),Nur- turing Parent(NP),Adult(A),Free Child(FC),AC(Adapted Child)であり,各自 我状態をプロフィールに表す。3 件法 53 項目の検査であり,プロフィールにより,普段の 生活の中で用いることが多いだろう自我を評価することができる。

2)Self-rating Depression Scale(以下,SDS)(Zung, 1965)

 抑うつ状態を測定可能な自己評価式の検査であり,日本語版も刊行され,標準化されてい る。4 件法 20 項目で,素点合計得点が 35±12 点で正常,49±10 点で神経症と同等,60±7 点でうつ病と同等と評価される。

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3)State Trait Anxiety Inventory(以下,STAI)(Spielberger, 1970)

 状態不安と特性不安を測定可能な事故記入式の検査であり,日本語版も刊行され,性別毎 に標準化されている。状態不安および特性不安をそれぞれ 20 項目で測定する,4 件法 40 項 目の検査である。

4) 食行動異常傾向測定尺度(Abnormal eating behavior scale;以下,AEBS)(山蔦ら,

2005)

 食物摂取コントロール不能(カットオフポイント 16 点),不適応的食物排出行動(カット オフポイント 2 点),食物摂取コントロール(カットオフポイント 7 点)の全 19 項目 6 件法 の検査であり,カットオフポイントより得点が高い場合は,摂食障害の臨床的症状を呈する リスクが高いものと判断する検査である。

5) 身体像不満足感測定尺度(Body image dissatisfaction scale;以下,BIDS)(山蔦ら,

2009)

 全身のふくよかさ不満足感尺度(“今よりもっと痩せたい”など,全身と身体部位の不満 足感と痩身願望について尋ねる尺度),身体に関する他者評価不満足感尺度(“他の人は私の 腰回りが太いと評価している”など,他者評価に対する認識について尋ねる尺度),顔に関 する不満足感尺度(“今よりもっと顔を小さくしたい”など,顔に対する満足感を尋ねる尺 度)から構成される 24 項目 4 件法の検査である。

 なお,初回面接時は 1)から 5)の全心理検査に回答を求め,#7・#10,#12 では 4)と 5)にのみ回答を求めた。

6.面接の過程

 以下に面接の過程をまとめる。# は面接回,「 」は A の言葉,〈 〉は Co の言葉を表す。

初回面接

 #1 では,過食・嘔吐の問題を中心に,友人関係の困難さについて語られた。Co からの問 いかけについて笑みを浮かべながら快活に応えるものの,過剰ともいえる真面目さや努力を 続ける姿勢に危うさを感じ,どこか摑み処がない印象を持った。大学生活では気を張って生 活していて,疲労感が辛い,太ると他者から馬鹿にされる気がし,ストレスの発散も兼ねて 過食・嘔吐を行っていることのことである。過食・嘔吐が再燃した理由として,就職活動が うまく行かず,周囲の友達に置いていかれると感じることを挙げる。

 「就職活動が上手く行かなくて,周りの友達は(就職が)決まって,自分はダメで,また 馬鹿にされると思って痩せようと思う。自分が馬鹿だから友達に追いつけない気がするし,

価値観が合わなくてすごく疲れる,せっかく無理して大学まで進学したのに……」と述べ る。〈就職活動のことと大学の友人関係が A さんの苦しさの種になっている……〉と伝える と,「今はだいたいそうです。本当の自分じゃないというか,今の環境は自分に合っていな いというか,自分がいるべき場所ではないというか……」〈だいたいというと?〉「就活とか 友達とかどうでも良いって時もあるんです。だからだいたい」という。

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 友人との関係の難しさと過食・嘔吐との関連性について尋ねると,痩せることで,周囲か らの評価が高まると感じていること,ダイエットやファッションの話題は,友人と共有でき る話題であり,こうした話題の時にだけ価値観が合うと感じることが語られる。「痩せてい れば周りからは凄いねって言われるし,痩せたとか太ったとかいう話をしていると価値観が 合うっていうか,認め合えると言った方が良いかな」と述べる。友人との関係の難しさの中 で,友人との価値観の相違,また,友人から認められる体験の希薄さ,居場所のなさや本来 感のなさなどが語られ,A が痩身を維持することが,唯一“友人から認めてもらう体験”

を引き出す手段であることが推察できる。

 こうした中,過食・嘔吐は,その頻度や特徴から,摂食障害の診断からは除外されるもの と評価し,医療機関に関する情報を提供しながら,#2 以降では,他者から“認められてい ない”ことや“自分の存在価値がない”ことをテーマとした心理的支援を行うこととした。

 なお,この時点で,TEG:CP16,NP13,A5,FC18,AC18,SDS:65,STAI:特性不 安 57,状態不安 50,AEBS:食物摂取コントロール不能 28,不適応的食物排出行動 9,食 物摂取コントロール 8,BIDS:全身のふくよかさ不満足感 41,身体に関する他者評価不満 足感 28,顔に関する不満足感 16 であった。この結果から,自己の価値基準を強く持ち,自 己表現の欲求を持ちながら周囲に適応する自我状態であり,不安は特性・状態とも段階 3

(中程度)と判断した。また,AEBS は全ての下位尺度でカットオフポイントより得点が高 いことが確認された。

第Ⅰ期(#2~#6)重要な他者との関係と自身を認めるプロセス(IPTの観点から)

【概要】

 #2 および #3 は,友人から高い評価を受けること(認められること)を目的に痩身を求 め,痩身を維持するために過食・嘔吐が生じるという悪循環を Cl とともに確認し,悪循環 を引き起こす対人関係上の問題について扱うセッションであった。

 こうした中,#2 では,特に原家族との関係について語られた。A は小学生時代から祖母 に預けられ両親および兄と別離(母親と兄は同居)しており,こうした経験は,A の,“見 捨てられた感覚”や“認められない感覚”を創り出しているものと考えられる。そして,こ れらの感覚は,A の自己イメージを定める困難さにつながっているものと推測される。

 こうしたことから,#3 では,A の自信のなさと,それに相反する“硬さ”や“地に足が つかない自信”との間で定まらない自己イメージをテーマとし,A の成育歴や友人関係の 在り方を考慮して,他者から“認められる”ことを取り挙げることとした。

 なお,成育歴や過食・嘔吐を自傷行為としての行動と捉えると,境界性パーソナリティ障 害の存在を疑うこともできる。しかしながら,問題を抱えながらも一定の健康度を保ち,対 人関係機能も維持していることから,病的な状態というよりも,パーソナリティの偏りであ ると評価し,支援を進めることとした。

 #2 および #3 を受けて,#4~#6 では,ITP の観点から,重要な他者との関係を調整する ことを目的として支援を進めた。他者からの役割期待に応えるために行動することの価値と A 自身の決定や選択の価値について取り上げ,A が自分自身で自分を“認める”ことや

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“許す”ことの重要性を扱った。

#2~#3:原家族との関係や大学生活における友人関係の不全感などが語られ,自分自身の 存在価値の希薄さが主題となる。

 「私って自分がこうだと思ったら絶対こうなんです。だから,自分が認められるだけでは ダメで,自分も認めないと表面だけの友達なんです」と述べる。これまでの友人関係につい て尋ねると,これまでの人生がさみしかったことや味方がおらず,唯一祖母だけが A の味 方であることが語られる。

 「私,おばあちゃんを○○(都市名)に独りおいてきているんです。おばあちゃんに育て てもらったから,独りにしているのが辛いし,(おばあちゃんを独りにしてまで)大学に進 学したのに」と語る。祖母との関係,また父母,兄との関係について尋ねると,「普通じゃ ないです……,自分の境遇を認めてくれる友達と出会えると思ったけど,大学でもダメで,

こんなこと(友人関係)で悩んで食べて吐いて,本当に自分って馬鹿だなって思います」と 答える。

 〈A さんの普通じゃないっていうご家族ってどういった感じなのかな?〉と尋ねると,

「父親と母親の仲が悪くて,お兄ちゃんもいるのですが,お兄ちゃんとは話はしますが,父 親も母親も,いないのと変わりないって感じです」〈というと〉「小さいころからおばあちゃ んに預けられて,私のことなんかどうでも良いって感じ」と明るい口調(無理に明るく振舞 っている印象)で述べる。

 〈そうかそうか,A さんが普通じゃないって思う家族は,A さんといつも一緒にいること がなかった家族ってことなのかな?〉と尋ねると,「いつも一緒じゃなくても良いんです が,一緒にいるのが普通で,自分たちの子どものことをちゃんと考えるのが普通じゃないで すか! 家はそんなことなく,ずっとひとりでしたから」と語る。

 A の幼少期の祖母との関係や母親と兄は同居しているものの,自分だけは祖母の元で暮 らしている境遇への不満やさみしさを感じ,〈本当は一緒にいたかったのに,さみしかった ね〉と伝えると,「お兄ちゃんはお母さんと一緒にいるのに,何で私だけって」とうつむき 加減で涙を浮かべる。〈ずっとひとりの A さんが,おばあちゃんの元から巣立って,本当に 独りぼっちになっちゃった……〉と伝えると,「家族だけでなく,大学の友だちにも認めら れることがなくて……私の存在価値はどこにあるのか,もう居なくなっても良いんじゃない かって思うこともあります」と語る。

 〈A さんにとって認められることの価値ってなんだろう〉と尋ねると「他人から認められ ることで,生きていても良いって感覚が生まれる,これが価値だと思います」と語る。

#4~#5:過去の自分と現在の自分とを比較したときの相違について尋ねると,「随分大人に なったというか,他人のことを正確に判断できるようになったと思います」と回答する。

〈具体的に例を挙げることはできるかな?〉と尋ねると,「親との関係でしょうか。高校時代 までは,他の家族と違うことを隠すことしかしてこなかったけど,今は違うというか,受け 入れられているというか」と答える。

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 〈こういう変化は A さんにとって良い変化だったのかな?〉と尋ねると,「はい,少し楽 になりました。いろいろな家族の形というか,親子関係もあるし,こだわっていても仕方な いかなと」と述べる。

 〈変わっていないところは?〉と尋ねると,「周りからダメな人って思われてるんじゃない かって気にしてるところ,服装もそうだし,体型もそうだし,家のこととか」〈服も身体も 家もいってみれば A さんの持ち物みたいなものだよね〉「私はあまり良いもの持ってないか ら,だからダメなんです。周りの人が羨ましい」〈良いものをもっていないか。良いものは 持っているんだけど,それを良いものと思えない……〉「そうかもしれません。ある時は自 信がある,たとえば痩せていることを褒められるとき,それは良いものかも……」〈今,A さんのことを認めてくれる人だとか,A さんのこれまでの道のりを許してくれる人とかが いると,A さんの周辺にあるいろいろなものは良いものになるのかな?〉「これまで親にも 認められることなく生きてきました,認められないことが染みついちゃってるみたいです」

と語る。

 #4 および #5 を通して,父母や大学の友人など他者からの役割期待に応えることにエネ ルギーを費やす状況で疲弊しているものと推察された。ここから,#6 では,役割期待に応 えること,すなわち A 自身が他者から“認められた”と実感することの難しさやメリッ ト・デメリットなどについて取り上げた。

 また,IPT では,重要な他者(significant other(s))との「現在」の関係に焦点を当 て,症状と対人関係問題との関連を理解し,対人関係問題に対処する方法を見つけることで 症状に対処できるようになることを目指す(水島,2011)。A の問題は過食・嘔吐であり,

大学の友人関係の問題が過食・嘔吐の維持要因として想定できる。したがって,本ケースに おける A にとっての重要な他者は,大学の友人と設定した。

#6:〈A さんが持っているもの,物理的なものではなくて,目に見えない心とか,気持ちと か,とても良いものがあるよね?〉と尋ねると,「たくさんはないけど……少しなら」〈見え ないものの全部を誰かに認めてもらうってできそう? 例えばお友達とか〉「難しいと思い ます……」と述べる。

 IPT における対人関係質問項目を参考に,“重要な対人関係において期待すること”,“そ の関係において満足できる面,満足できない面”,“その関係を変えたいと思っているか”な どを尋ねた。

 〈仮に誰かから認められたら,A さんにとってどんな良いこと,満足できることがあるか な?〉「自分が居て良いというか……」〈それじゃあ,誰かから認められるデメリットって,

何か想像できるかな?〉「認められるために自分を抑えなきゃいけない……こと」と述べる。

 〈そうか,じゃあどうしよう? 誰が A さんの良いものを認めてあげるんだろう?〉「そ んな人がいたら良いのに……」〈A さんが大学のお友達に認められることって,A さんが本 当にしたいことなのかな? それとも,お友達の求めていることに合わせていることなのか な?〉「合わせていると思います,考えてみると,痩せて着たい服着れるのはうれしいけ

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ど,それで友達にかわいいっていわれるのもうれしいけど,でも,それは私じゃない」〈A さんが本当にしたいことって何なんだろう?〉「難しいです。痩せていたいし食べ吐きした くないし,友達に認められたいし」〈友達に認められること,言い換えてみると友達の期待 に応えることができたら,A さんはとても良いんだね〉「少しは楽になれるかも」〈そのた めには痩せ続けなくてはならない?〉「他の方法があると良いんですが……」

 他者の役割期待に応えることの難しさを確認し,必ずしも役割期待に応える必要はなく,

自分自身にとって,安全性の高い対人関係について検討する。

 〈A さんのことを仮に友達が認めてくれないんだったら,A さんが認めてあげたらどうか な?〉と尋ねると,「私自身が認めるって,どういうことですか?」と困惑にも近い表情を みせる。〈自分で自分を認めるということは,自分自身を許すことに近いと思います〉と伝 えると,「自分自身のことを許すこと……,そのためには親や友だちから逃れなければなら ないのでしょうか?」と Co に訴えかけるように尋ねる。

 〈逃れるとは A さんにとってどういうことなのかな?〉「ダメな家族とかダメな自分,そ れを評価されないように(沈黙)変な親とか家とかからも逃げたいけど,もうどうでも良 い,それよりも周りからの評価から逃れたいのかも知れません」〈そうかそうか,周りから の評価から逃げること,だから周りから認められることを求めて痩せて細くいたい……〉

「そうです。食べて吐いて痩せると認められるみたいな」〈A さんの価値って,細い身体だ けだと思う?〉「本当はそうじゃないと思うけど,痩せなきゃって思っちゃう,こんな自分 が本当に嫌です」と述べる。

 〈これまでの生活で請け負ってきたさみしさだとか苦しさ,他人から認められないくやし さとか,痩せなきゃいけないって想いとか,少しだけでも許してあげたらどうだろう〉「許 すと自分ではなくなってしまうようにも感じちゃいます」〈許すというのは,捨てちゃうん じゃなくて,持っていても良いもので,相手の期待に全て応えなきゃいけない自分を少しシ フトして,自分のできる範囲でできるようにやっていくっていう感じかな〉「それができた ら楽になりそうですね」〈これが,A さんが A さんを認めることにつながるんじゃないか な〉「私自身が認めるか……」〈認めながら囚われない,白か黒かではない灰色も大切〉「何 だかしっくりきます」と述べる。

 〈自分自身を認めることができると,A さんが誰かから認められたいって考えはどうなる かな?〉「それはなかなかなくならないと思います」〈痩せたいって考えはどうかな?〉「そ れも染みついちゃってるから」という。〈お友達にどう見られているかな,とか痩せなきゃ って考えって変えることはできそうかな?〉と尋ねると,「どうかな,難しいんじゃないか な」と述べる。

 〈全ての考えを変えることも,考えることを止めることもすごく大変なこと,小さい頃か ら今までで,たとえ自分を困らせるような考えであっても,ずっと使ってきたんだから,全 部手放しちゃうのは……〉「難しいです」〈ただ,その考えは大事に取っておいて,もっと自 分が楽になる考え方,やり方を見つけると良いかもしれないね〉と伝え,他者評価への懸念 や痩せ願望など,自動思考的に浮かぶものであることを説明し,#7 以降で CBT のひとつ である ACT(Acceptance and Commitment Therapy)の方法論を用いた介入を行うこと

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を提案・説明し,A に同意を得た。

第Ⅱ期(#7~#11)心理教育と非評価的感情体験の導入(CBTの観点から)

【概要】

 #1 から #6 では,重要な他者からの役割期待に応えることが必ずしも最優先される事柄 ではなく,A 自身を大切にすること,自己決定の上,対人関係のバランスを取ることにつ いて取り上げた。一方で,他者評価への懸念や痩せ願望は自動思考として浮かんでくること から,対処しきれない可能性もあり,ここでは,ACT の方法論に基づく非評価的感情体験 を用いた介入を行うこととした。また,併せて,A の食行動の問題の成り立ちなどについ て心理教育を行った。

 非評価的感情体験(山蔦,2011)は ACT の手法を取り入れたものであり,川に葉が浮か んでおり,その葉の上に自身の感情を置き,流し,一定の距離を取るといったイメージ体験 を用いるものであり,自身の情動体験から一定距離を置く方法(Hayes, Strosahl, & Wil- son,1999)に基づく体験的な方法である。

#7:ワークシートを用い,日常生活で生じる他者評価への懸念が過食・嘔吐につながるプ ロセスを確認した。ワークシートで確認したプロセスが,A が現実の生活を送る上で,同 様に体験できるか否かを確認するため,ホームワーク(以下:HW)として 1 週間観察する よう求めた。

 この時点で,AEBS:食物摂取コントロール不能 29,不適応的食物排出行動 7,食物摂取 コントロール 18,BIDS:全身のふくよかさ不満足感 35,身体に関する他者評価不満足感 26,顔に関する不満足感 16 であった。また,AEBS は全ての下位尺度でカットオフポイン トより得点が高いことが確認された(Figure. 1, Figure. 2)。

#8:1 週間観察した結果を尋ねると,対人関係場面における他者評価への懸念が痩せ願望や

“食べて吐きたい気持ち”を引き起こすことが A により言明された。他者評価への懸念が想 起される際の感覚を尋ねると「恥ずかしいような,カーッとする感じ,もっと痩せなくちゃ と焦る感じもあります。でも痩せることができていない気もして,もっと痩せたいと思いま す」と述べる。

 次に,ワークシートを確認しながら,他者評価への懸念に対する対処法について検討し た。〈たとえば,お友達からの評価が低いなって感じて痩せなきゃて思う時の対処法って何 かあるかな?〉「痩せなきゃって思うと,痩せなきゃがぐるぐる回ってしまいます」〈ぐるぐ る回って〉「痩せなきゃって思っているんだけど,食べちゃって,食べ過ぎてまた吐き出す」

〈ということは痩せなきゃという考えが生まれた時,その気持ちをコントロールすることは できそうかな?〉「難しいです。思わないようにすると,もっと強く思っちゃうんです」〈そ れでは,そう思っている自分から少し距離を置くことはできそうかな?〉と尋ね,非評価的 感情体験を紹介すると,興味を示し,次回のセッション(#9)で体験することとなった。

 非評価的感情体験を導入することで,A 自身を苦しめる“他者評価への懸念”と“痩せ

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願望”に囚われることがない経験をすることが #9 以降のメインテーマとなる。また,この 時点で,A は「何か手がかりがみつかりそう」と述べ,次回以降の体験的セッションへ期 待を見せる。

#9:A に他者評価不満足感が生じる情景をできるだけ鮮明に思い出すように促した。ま た,体験の最中に身体的反応を尋ねると「背中に汗が噴き出るような感じがある」と答え る。つぎに,上述した川と葉のイメージ体験を促し,情動体験や身体的変化について尋ねる と,「緊張というか嫌な感じが消えて行って,すーっとします」と述べる。こうした情動体 験や身体的変化は,自身の否定的感情にとらわれないことから生じるものであることを伝 え,また,自己否定的感情から離れ,客観的に観察する体験が,他者評価への懸念から解放 され,過食・嘔吐の発現・持続要因である痩せ願望の低減につながる可能性を説明した。次 回面接までの期間,特に否定的感情が喚起される場面で用いることをホームワーク(以下,

HW)とした。

#10~#11:HW について尋ねると「難しかったです。イラっとしたときに使おうと思って もイラッとしちゃう。でもひとつ変わったことは,家に帰ってから嫌だったことを思い出し た時に葉っぱを思い出してみると,スーッとして嫌な気持ちにならなくて済んでいます,自 分の価値観に飲み込まれないっていうか」と語る。瞬時に体験ができなくても,A のよう な使い方は有効であることを伝えると笑顔を見せる。

 〈今言ってくれたように,自分の価値観に飲み込まれないことは大切だよね〉「はい,でも 価値観って葉っぱに乗らないんですよね」〈確かに葉っぱには乗らないけれど,A さんの価 値観に飲み込まれないということを別の,これまでに使った言葉で言い換えるとどんな言葉 で言い換えられるだろう?〉と尋ねると,「自分の価値観を認めることですか」と答える。

 #4~#6 で同様のやり取りをしたことを振り返り,その時と今の状態との相違を尋ねる と,以前と比較し,A 自身を認めることや許すことができるようになっていることに言及 される。その理由を尋ねると,「今の感情に振り回されないで済んでいるから」と述べる。

そして,こうした変化は,A が自分自身で起こした変化であること,それは,A が自分自 身を許し認めることと密接に関係していることを伝えた。

 なお,#10 の始め 5 分程度を使い,AEBS および BIDS に回答を求めた。AEBS:食物摂 取コントロール不能 18,不適応的食物排出行動 5,食物摂取コントロール 9,BIDS:全身 のふくよかさ不満足感 36,身体に関する他者評価不満足感 20,顔に関する不満足感 15 であ った。また,AEBS は全ての下位尺度でカットオフポイントより得点が高いものの,#7 と 比較して,食物摂取コントロール不能では 11 ポイント,不適応的食物排出行動では 2 ポイ ント,食物摂取コントロールでは 9 ポイント得点が降下したことが確認された(Figure. 1, Figure. 2)。

#12:卒業間近となり,終結回となる。#1 からの A 自身の変化や変化に関する感想などに ついて思いのまま話すよう促した。また,他者から認められることを目指している状況か

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Figure. 1 食行動異常傾向測定尺度(AEBS)得点の変化

Figure. 2 身体像不満足感測定尺度(BIDS)得点の変化

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ら,自分自身で自分のことを認める姿勢へと移行し,その結果として,他者に過剰に振り回 されることのない,本来的な安定した自己イメージを形成する下準備ができた可能性につい て伝え,終結とした。

 なお,#12 の始め 5 分程度を使い,AEBS および BIDS に回答を求めた。AEBS:食物摂 取コントロール不能 16,不適応的食物排出行動 5,食物摂取コントロール 9,BIDS:全身 のふくよかさ不満足感 35,身体に関する他者評価不満足感 19,顔に関する不満足感 16 であ った。また,食物摂取コントロール不能および食物摂取コントロールは,Cut off point と同 値まで降下したことが確認された(Figure. 1, Figure. 2)。

7.考察

 本事例では,重要な他者から“認めてもらう”(役割期待へ応える)ことから自分自身を

“認める”こと,食行動の問題を導く要因を整理して理解すること,対人関係スキル(他者 評価に囚われないスキル)を学び,それを日常生活で適用することを目的として IPT およ び CBT の観点から支援を行ったものである。

 #2 および #3 を通して,“こうであるべき自分”にマッチしない,“不安定な自己イメー ジ”や“アイデンティティの脆弱性”が A を苦しめる要因であると見立てた。また,A に とって“生きていても良い価値ある自分”は他者から認められる自分であり,その方策とし て痩身を手に入れ,痩せていてファッショナブルな自分を維持しているものと推察された。

一方で,痩身でいるための過食・嘔吐という行動は,A 自身にとって認め難い行動であ り,“認めることができない行動(過食・嘔吐)”により“認められる自分”を手に入れると いった矛盾も,A の苦しみを作り出す要因といえるだろう。

 A の過去と現在に共通することは,A が他者(過去は両親,現在は友人)から“認めら れていない”という認識を持っていることである。したがって,本支援では,IPT の観点 から,A の過食・嘔吐に影響を与えている大学の友人を重要な他者と想定し,“重要な他者 との役割期待のズレ”を扱い,支援を続けた。

 #4~#6 では,A 自身が抑えることができない“他者評価への懸念”や“重要な他者から の役割期待に対する認識”をテーマとして面接を進めた。ここでは,A が大学の友人から 受けている期待(A が認識する友人からの期待)に応えることは必須ではなく,A が望む ことを自己決定し,自身を“認めること”についての理解を促すことを目的に支援を進めた。

 こうした中,A の原家族の関係機能不全が A の現在の問題に影響するとも考えられる。

今回は,重要な他者として,友人を想定したものの,祖母や父母,兄を設定した IPT を施 行することも有益だろう。そして,面接の中では,A が一人の成人として,傷つきを抱え ながらも家族の関係機能不全を受け入れる態勢を整えているような印象を受けたものの,A の過食・嘔吐やその背景にある他者評価への懸念などを,より深く理解し本質的な解決を目 指すためには,A の家族システムをテーマとした家族療法を用いた支援なども有益である と考えられる。

 第Ⅰ期を通して,難しい人間関係を生き抜き,自分自身を大切にする意味を Cl と Co が

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Figure. 3 食行動異常発現・維持モデル(山蔦,2017)

共に考え,他者との関係の在り方を深く検討したプロセスは,A の新たな自身の価値を見 出すことにつながったものともいえる。しかしながら,第Ⅰ期の関わりが,A のパーソナ リティの変容までには至ったとは言い切れず,Co に大切にされた体験に基づく若干の認知 の変容に留まったと振り返ることもできる。

 第Ⅱ期では,他者評価への懸念や痩せ願望はいわば自動思考的に浮かぶことが言明された ことから,他者評価への懸念や痩せ願望に囚われることなく生活を送ることを目標とした介 入を行うこととした。I 期で扱った重要な他者との新しい関係の発見と合わせて,認知・感 情面への介入も A の苦しい状態を改善させることに奏功するという見立てのもと,ACT の 要素を用いた介入を行った。

 介入前後における心理尺度得点の変化をみると,身体に関する他者評価不満足感が大幅に 低減し,非評価的感情体験を実施した #10 から #12 にかけて,食物摂取コントロール不能 および食物摂取コントロールが Cut off point と同値まで降下したことが認められた。食行 動異常のモデル(Figure. 3)では,身体に関する他者評価不満足感が身体像不満足感(痩せ 願望)を喚起し,非機能的ダイエット(食物摂取コントロール)および食事へのとらわれ

(食物摂取コントロール不能)に影響することが示されている。本モデルに基づくと,第Ⅰ 期において,自身の身体を評価する友人との関係性を扱い,第Ⅱ期において,身体に関する 他者評価不満足感や痩せ願望そのものをターゲットとした介入を行うことで,身体に関する 他者評価不満足感が低減し,結果として食物摂取コントロールや食物摂取コントロール不能

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得点が低下した可能性が推測される。

 以上の通り,本事例では,IPT と CBT とを統合(技法的折衷あるいは同化的統合)し,

過食・嘔吐を主訴とする A を支援した。A の内省力や知的水準の高さより,降りかかる難 題(原家族との問題や友人との問題,就職活動のストレスなど)を高度に言語化することが でき,面接が進むとともに,A 自身で,自身が置かれた状況や進むべき方向性について現 実検討が可能であったことも本ケースの特徴といえる。また,アセスメントの結果,過食・

嘔吐について摂食障害の診断基準から除外され,境界性パーソナリティ障害を疑うことがで きるものの,パーソナリティの偏りとして評価した。こうした A の一定の健康度の高さも 本ケースの特徴であり,Cl と Co との関係が促進した要因であると考えられる。加えて,こ れらの特徴は,第Ⅱ期における CBT による介入とのマッチングの良さにもつながったもの といえる。

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【Abstract】

 In this case, client A received psychological support for abnormal eating behavior (binge eating and purging), interpersonal issues, unstable self-image. This psychological support was provided from the viewpoint of interpersonal therapy and cognitive behavioral thera- py. In the process of support, it was clarified that the problems of the original family dur- ing adolescences and difficulty in relationships with friends are one of the factors that cause binge eating, purging and desire to be slim. In addition, using the elements of Accep- tance and Commitment Therapy, Aʼs automatic thoughts (sensitivity to other peopleʼs evaluations and desire to be slim) was approached. As a result, it was indicated that the dissatisfaction with other peopleʼs opinion of oneʼs body and the frequency of food intake control were reduced. This process of psychological support helped to find Aʼs new identi- ty and new value.

 Key words: binge-eating and purging, Interpersonal therapy, Cognitive behavioral ther- apy, Self-image, sensitivity to other peopleʼs evaluations

参照

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