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1 質問の焦点:「15

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(1)

Ⅰ はじめに

2020年より広がった新型コロナウィルスは,私たちが「将来の予測が困難な社会」(文部科学省  2015,p. 30)に生きていることを実感させる出来事である。

奇しくも新たな学習指導要領の中で,生徒が育むべき資質・能力として「未知の状況にも対応でき る思考力・判断力・表現力」が掲げられ,そのような力を育むための活動として「物事の中から問題 を見いだし,その問題を定義し解決の方向性を決定し,解決方法を探して計画を立て,結果を予測し ながら実行し,振り返って次の問題発見・解決につなげていく過程」(答申p. 30)が示されたことは,

このような時代の理にかなったことだろう。

しかし,答申が求めるような活動を行うために,教員はどのような支援ができるのだろうか。本論 文では生徒自らが質の高い問いを立て,思考・判断・表現するための具体的な方法を提案し,その効 果と課題の検証を行う。

Ⅱ 目的と方法

1 研究の目的

目指したのは,生徒の問いを立てる力を段階的に育むことと,立てた問いを解決する活動を通じて,

生徒の思考力・判断力・表現力を高めることである。

生徒が問いを立て,探究的な学習をするための方法としては,桑田てるみの「6プロセス9アクショ ン」(桑田 2016)など優れた実践例がある。桑田が提唱する方法は,探究活動のレベルを3つに分け,

先ずは「指導者が用意した問いと手順にしたがって学習する,トレーニングのための探究」からはじ め,「指導者が問いや手順を児童生徒が選択できるように用意し支援する探究」に進み,最終的に「問 いも手順もすべて児童生徒自身で準備する本格的な探究」に向かうというものである。段階的に生徒 の探究する力を育むという点は,本研究の目的と重なるところだが,新たな学習指導要領で,「深い 学び」の実践が目指されていることを鑑みれば,生徒が問いも手順もすべて準備する探究の場合,生

高等学校地理歴史科における,生徒自らが問いを 立てる力を段階的に育む授業の開発

渡 辺 研 悟

早稲田大学教職大学院紀要 第

13

号 2021年

3

実践研究論文

(2)

徒が立てる問いの質についても考慮する必要があるのではないだろうか。

そこで,本研究では生徒が問いを立てる力を2段階に分けることとした。第1段階で目指すのは,

問いを立てる力であり,この段階では問いの質は重視しない。なぜなら,問いを立てる授業は生徒に はなじみが薄く,先ずは問いを立てることに慣れる必要があると考えたからである。第2段階で目指 すのは,「社会的事象の歴史的な見方・考え方1」(以下,「歴史的な見方・考え方」)を踏まえた「深 い学び」をもたらすような問いを立てる力である。本研究では,高等学校地理歴史科において,これ らの力を育むための教師による支援の方法を提示し,その効果と課題の検証を行う。

2 研究の方法

研究対象は,神奈川県立A高校の3年生「発展日本史」の受講者(2クラス計68名)である。

第1段階の力を育むにあたっては,ダン・ロスステイン(2015)の「質問づくり」を参考に授業開 発を行い,第2段階の力を育むにあたっては,新指導要領に示された「歴史的な見方・考え方」を踏 まえた問いの一覧表を作成するとともに,田中博之(2017)の「深い学びを生み出す学習理論」を応 用した学習の手引きを作成し授業開発を行った。

第1段階では,4月から各単元の導入として「質問づくり」を実施し,問いに対して100字程度の 作文を書かせる活動を繰り返した。最初の分析では,この段階で生徒がつくった質問の質を見ていく。

次の第2段階では,10月から行った,問いの一覧表を利用した「質問づくり」による質問の質の変 化を見ていく。また,11月の単元「近代国家の成立」(18時間)では,立てた問いに対して,習得し た知識を活用して考察する活動を行ったが,学習の手引きを活用することで,生徒の「深い学び」が 実現できたのかを見ていきたい。

効果の検証については,①生徒の成果物(200字程度の小論文),②アンケートを用いることとする。

なお,②のアンケートは,4月と12月に研究の成果を図る指標として実施したもので,質問項目は,

「疑問を持つことは学ぶ上で大切だと思う」「疑問を持つことで興味関心が高まると思う」「疑問をもっ て授業を受けることができる」「疑問を持つことは得意である」の四つである。

Ⅲ 先行研究の概観と問題提起

1 「質問づくり」の概観

ロスステインは著書の中で,「教師はこれまで,生徒たちの思考を促進するための完璧な問いを 見つけ出そうという,問われることの無かった悪しき伝統(習慣)にとらわれていた」(Rothstein

2015,p. 55)と述べており,生徒が主体的に課題に取り組むためには,生徒たちこそが自分たちに

とって大切な質問を一生懸命に考えなければいけないとする。このようなロスステインの信念は,「質 問づくり」の基底をなしている。

「質問づくり」のやり方は以下の六つのステップに分かれる。①教師が「質問の焦点」を決める,

②生徒に4つのルール2を紹介する,③生徒たちが質問を出す,④質問を書き換える3,⑤質問に優

(3)

先順位をつける4,⑥質問をつかって何をするのか考える。①の「質問の焦点」とは短い文章,写真,

短い動画,表・図など何でもよく,生徒たちが質問をつくり出すためのきっかけとなるものである。

2 「質問づくり」の利点と課題

「質問づくり」の利点は,ルールが整っていて生徒が集中して取り組めることである。実際にやっ てみると,どの班でも多くの質問を作ることができる。また,問いを自分たちで作ることで,学習 内容について知りたいという気持ちが生まれ,授業を受ける際の着目点ができるのが良い。「質問 づくり」は「質問づくりを使ったとしても,これまでに行ってきた授業の9割は元のままでいい」

(Rothstein 2015,p. 11)とされ,現場の教員の取り組みやすさに配慮していることも特徴である。

一方,課題としては,生徒が立てる質問の質がどうしても低くなってしまうという点が挙げられる。

「質問づくり」は教員も生徒も取り組みやすい一方で,生徒が作る問いは基礎的な知識や用語の定義 を問うものが多く,「質問づくり」を繰り返しただけでは,習得した知識を活用し生徒の「深い学び」

に結びつくような問いを立てることには壁があると言える。

3 「深い学び」に結びつく問い

「深い学び」に結びつくような問いとはどういったものだろうか。文部科学省視学官の澤井陽介

(2017)は,中央審議会答申で示された「深い学び5」について次のように述べている。

少々むずかしい言葉が使われていますが,要するに「見方・考え方」「深い理解」「問題解決の思 考や構想」などの要素を組み合わせた説明です。このうち,「深い理解」とは「概念的な知識の 獲得」と読み替えることができます(澤井 2017,p. 32-3)。

澤井によれば,社会科においての「深い学び」によって目指されるものは「概念的な知識の獲得」

である。さらに,「日々獲得される知識を体系化(構造化)することで,生徒が生きて働く知識,子 供が後々使える知識にしていく(概念的な知識を形成する)ことが求められる」(澤井 2017,p. 34)

と述べ,「深い学び」と問いの関係を以下のように整理している。

知識を体系化(構造化)し,概念を膨らませていく授業を行うために大切になるのが「問い」で す。問いは,知識を体系化(構造化)し,概念にまで高めていくための箱の役割を果たします。(澤 井 2017,p. 38)

問いがあることで,事実をまとめて概念化の箱に仕舞えるようになります。逆に問いがないと事 実を仕舞いようがなくなり,知識と知識がつながるチャンスを逃してしまいます。/社会科では,

「時間」「空間」「相互関係」といった,問いを立てる際に大事になる「視点」(見方)とその視点 のもとにまとめる「思考」(考え方)があると言えます。これが,「深い学び」で大事だとされる

(4)

「各教科の特質に応じた見、 、方・考、 、 、え方」です。(澤井 2017,p. 38)

以上のことを踏まえると,概念的な知識を獲得するための「深い学び」をもたらすような問いは,

社会科の「視点」(見方)と「思考」(考え方)を働かせる問いであると考えられる。

Ⅳ 授業開発の実際

1 「質問づくり」の実施とその結果

1学期の「質問づくり」は授業の導入として取り入れ,グループワーク(グループの人数は3〜4名)

として行った。「質問づくり」はグループで行うことを前提としているが,これは多様な質問を知る ことと,話し合いを通じてよい質問はどれかを考えることを目的としているためである。

資料1は,4月に行った「質問の焦点」および,あるクラスのすべての生徒が立てたすべての問い である。9つのグループが7分間で立てたもの全部のため,いくつかの問いが重複している。

表中の●で示した問いは,言葉の定義や単純な理由などの事実的な知識を聞くもので,〇で示した 問いは,知識を構造化した概念的な知識を聞くものである。ここには全部で110個の問いがあるが,

●と〇の割合は101:9となっており,言葉の定義や事実的な知識を問う問いが多く,内容としても 中学校で習得するような基本的な知識を問うものも少なくない。〇の問いについても,「何で」や「違 い」といった言葉を単に加えたものが多く,問いの作り方が画一的であると言える。

その後,1学期中に同クラスで4回の質問づくりを実施したが,各回で立てた問いの質については,

上記に示したものとほぼ同様であった。基礎的な知識が十分に習得できていない生徒に対して,授業 の導入として「質問づくり」を取り入れるとこのような傾向になることが分かった。

一方,毎回の授業で生徒が真面目に「質問づくり」に取り組み,懸命に問いを作っていたことは確 かである。また,作られた問いの数も,当初は一班の平均が12個程度であったのが,回数を重ねる ごとに個数は増え,1学期の最後には平均して20個程度にまでなった。

以上のことより,「質問づくり」を取り入れ,続けることは,生徒の興味・関心を引き起こし,問 いをつくることに慣れさせるといった一定の利点は認められるものの,そのこと自体では「深い学び」

をもたらす授業にはならないということが分かった。

2 問いの一覧表の提示

そこで2学期は,生徒の立てる問いのレベルを引き上げるため,「歴史的な見方・考え方」を踏ま えた問いの一覧表(資料2)を作成した。

この表は,高等学校学習指導要領(平成30年告示)解説,地理歴史編に問いの例(p. 131-4)と して示されているものを土台に,筆者自身の手を加えて作成したものである。 0 から12番の問いの 分類のうち,ゴチック体になっているものは,知識を構造化した概念的知識を問うもの(深い問い),

そうでないものは定義や事実的知識を問うもの(浅い問い)である。深い問いに関しては,ほとんど

(5)

資料

1 質問の焦点:「15

世紀になると戦国大名が登場した」

戦国大名の定義・基礎的知識

戦国大名ってなに 戦国大名って何

戦国大名は何をしてきたのか 戦国大名とは

戦国大名とは 戦国大名とは 戦国大名とは何 戦国大名って何 戦国大名って何 戦国大名とは何か 大名とは

そもそも大名とは何 戦国大名は何をしたのか 戦国大名は何をするのか 何をしたのか

何をしたのか 誰?誰?

戦国大名って誰 戦国大名とは誰 戦国大名は誰なのか 戦国大名は誰なのか 名前は

戦国大名はどのような人を指 すのか戦国大名のトップは誰 誰が一番強かったのか

戦国大名の出現

戦国大名が登場する前は何が いたのか

戦国大名が登場する前は何が いた

その前はいなかったのか 戦国大名の前は誰が大名だっ たの

それまで戦国大名はいなかっ たのか最初に登場したのはどこか どのくらいの期間したのか いつまでいたの

いつまで戦国大名はいたのか いつまで戦国大名が活躍した のか

戦国大名はその後どうなった のか

人  数

大名は一人

戦国大名って今まで何人い たの

戦国大名は何人いるのか 戦国大名って何人

東と西はどちらが多かった のか

どのくらいの人数が大名に 従っていたのか

戦国大名の人物像

性別はどうなのか 性別はどうなのか 子どもがいるか 妻はいるのか ダンディか 大名はおじさんか 強いのか 太っている その時代の髪型は 何才で引退するのか どのくらい偉いの

戦国大名の存在理由

なんのために戦国大名がいる そもそも何のために戦国大名 がいるのか

何のために戦国大名という位 ができたのか

何でその役職ができたのか 戦国大名はどんな組織なのか

戦国時代

なぜ戦う時代がきたのか なぜ戦う時代がきたのか なぜ戦う時代がきたのか 戦国大名が登場したが何に対 して争っていたのか 平和に解決できないのか 仕事 大名の仕事とは

どのような仕事内容なのか どこで仕事をしていたのか

相続 戦国大名が戦で死んだ場合,

次はだれが引き継ぐのか

15

世紀末

15

世紀は何があったのか

15

世紀末に登場したのはな ぜか

なぜ

15

世紀からなのか なぜこの時期

な ぜ

15

世 紀 末 に 登 場 し た のか

なんで

15

世紀末になって戦 国大名が出てきたのか なんで

15

世紀末に戦国大名 が登場したのか

何 で

15

世 紀 末 に 登 場 し た のかなぜ

15

世紀末なのか なぜ

15

世紀末まではならな かったのか

なぜ

15

世紀末と分かるのか

15

世紀っていつ頃

15

世紀はどういう時代か

15

世紀末のはやりは

比較 戦国大名と大名の違い 戦国大名と他の武士の違いは 戦国大名の他に何がいたか

登場

戦国大名が登場した理由は なぜ登場したのか なにがあって登場したのか 戦国大名が登場した理由とは なぜ登場したのか

どうやって登場したのか きっかけ?

何をきっかけできたの 戦国大名はなぜできたのか 登場するまでは

登場するまでは 登場のしかたは どこに登場した

戦国大名の条件

年齢?

年齢?

何才?何歳くらいが多いのか 何才くらいの人がなったのか 強ければなれるのか 頭が良ければなれるのか どんな人が戦国大名になるか どんな人が戦国大名になった のか

どのような人がやっていたか どのような人が登場したのか 戦国大名になるのに血筋は関 係するのか

(6)

資料

2 問いの一覧表

問いの分類 問いの性質 ぶつける問いの「型」 取りだされる問いの例(参考)

用語説明 0 定義や方法

とは何か誰がしたのか 何をしたのか どうやって どこでしたのか

〇〇とは何か

〇〇をしたのは誰か

〇〇は何をしたのか どうやって○○をしたのか

〇〇が起こったのはどこか

時系列

1 時期や年代

いつのことか いつからか いつまでか 時間順にしたら どのような経緯か 同じ時期に

○○はいつの出来事か

〇〇はいつから始まったのか

〇〇はいつまでの出来事か

〇〇を時間順に整理したらどうなるか

○○はどのような経緯で起こったのだろうか

同じ時期に○○の地域ではどのようなことが起こっていたのか 2 過去の理解

なぜしたのか なんのためにしたのか どのような時代背景が

○○はなぜそのような選択(行動)をしたのだろうか

○○はなんのために××をしたのだろうか

○○が起きたとき,現代とは異なるどのような時代背景があった だろうか

諸事象の 推移

3 変化と継続

(浅い問い)

何が変わったのか 何を変えようとしたのか 何が変わらなかったのか

○○をして(することで)何を変えようとしたのだろうか

○○の結果,何が変わったのだろうか

○○のあとも何が変わらなかったのだろうか 3 変化と継続

(深い問い)

なぜ変わってきたのか なぜ〇〇が発展したのか どのような違いがあったのか どのように実現しようとしたのか

〇〇はなぜ××のような変化をたどったのだろうか なぜ〇〇は発展することができたのだろうか

○○の変化と××の変化にはどのような違いがあるだろうか

○○はどのように××を実現しようとしたのだろうか 事象相互

のつな がり

4 背景や原因

(浅い問い)

なぜ起こったのか 背景(原因・要因)は何か 根拠は何か

もともとは何か

なぜ,○○は起こったのだろうか

○○の背景にはどのような状況(事情)が存在したのだろうか

○○と言えるのか根拠は何か

〇〇が起こったのはもともと何のせいだろうか 4 背景や原因

(深い問い)

最も重要な原因(要因)は何か 最も深いつながりがある事象は何か なぜ最も重要(つながりが深い)か

○○が起こった最も重要な要因(原因)とはなんだろうか 今まで学習したものの中で,○○と最も深いつながりがあると考 えるのは何だろうか,また,それはなぜそう考えるのだろうか 事象相互

のつな がり

5 影響や結果

(深い問い)

なぜ同時に起こったのか どのような影響を与えたか 影響を与えた変化は何か どうなったのか 分類をしたら 対策は何か

同じ時期に××という共通の特徴をもった○○が同時に起こっ たのはなぜだろうか

○○は,××に(例:社会全体に)どのような影響を及ぼしたか その後の社会(政治・経済)に最も大きな影響を与えた変化(出 来事・事象)はなんだろうか

〇〇の結果,××はどうなったのか

〇〇が起こったことに対する対策は何か

現在との つながり

6 歴史と現在

(深い問い)

同じような現在の事象は何か 現在の出来事とどう関連があるか 現在の事象をもたらした要因は なぜ現在も同じような事象があるのか

○○(という出来事・事象)と,同じような現代の事象は何か

○○は現在の出来事とどのような点が関連しているのだろうか 現在の××をもたらした変化の要因は○○ではないか なぜ現在も〇〇と同じような事象(出来事)が ×× で見られる のか

7 歴史的な 見通し,展望

(深い問い)

その後にどのようになるか どのような展開になると望ましいか どのようなことが必要か 過去を参照すると

○○は,この後の時代にどのような考え(課題)をもたらすと考 えられるだろうか

現在の××という出来事(事象)は,過去を参考にすると,ど のような展開になると考えられるだろうか

現在の××という出来事(事象)は,どのような展開になると 望ましいと考えるか,そのために過去の事例を踏まえると,どの ようなことが必要だろうか

8 自己との 関わり

(深い問い)

どのような意味があるか どのような価値があるか どのように考えが変わったか 自分ならどのようにするか

○○を学ぶことは,あなた(私,現在の人々)にとってどのよう な意味(意義)があると考えられるだろうか

○○を学んだことで,あなたの考えはどのように変わったか 自分が〇〇ならばどうするか

諸事象の 比較

9 類似と差異

(深い問い)

比べると,どこが同じか 比べると,どこが違うか 比べると,どのような傾向があるか 違いが生じたのはなぜか 対立することは

一般的には〜だが,なぜなのか

○○と××を比べると,どのような点が同じか

〇〇と××はどのような点が異なっているだろうか

○○と××の違いが生じたのはなぜだろうか

○○と××の共通点から,どのような傾向が見いだせるだろ

〇〇と××の中で対立する部分はどのようなところだろうかうか 一般的には××になるのに,なぜ○○は△△になったのか 10 意味や意義と特色

(特徴)

(深い問い)

どのような意味があるか どのような特徴があるか あなたはどう考えるか

○○は,当時どのような意味を持っていたのだろうか

○○は,将来に対してどのような意味を持っていただろうか

○○は,△△の立場から考えると,どのような意味(意義・特徴)

があったと考えられるだろうか

他の生徒が発表した意見について,あなたはどう考えるか 11 相対化

(深い問い)

良い面(悪い面)は何か 他の場所(地域)ではどうか 他の時代(時期)ではどうか 他の人物(立場)ではどうか

〇〇の良い面は(悪い面)は何だろうか ほかの地域では〇〇は発生していただろうか ほかの時代に○○はどうしていたのだろうか

〇〇ならば××の出来事にどのように対応しただろうか

諸事象の 判断

12 評価や 創造

(深い問い)

どうするべきか どうするべきだったか どうしたらできたか どうしてできなかったのか 本当によい(わるい)ことなのか 本当に成功(失敗)だったのか 本当に可能(不可能)だったのか 本当に必要だったのか 原因(根拠)は本当に正しいのか 妥当だったのか

価値(意味)はあったのか

××の状況で○○はどうするべきだと思うか

○○は,どうするべきだったのか どうしたら○○ができたのか

〇〇したことはよいことだったのか

○○がした××は本当に失敗だったのか

○○は本当に必要だったのか

〇〇は本当に不可能なことだったのだろうか

○○を行ったことは妥当だったのか

〇〇という原因は本当だろうか

○○の価値は何か

○○を行った意味は何だろうか

(7)

が知識の習得を前提とし,学んだ知識を深められるような「型」になっているのが特徴である。問い の一覧表を理解することで,引き出せる情報を意識しながら,問いの分類に応じた問いの型を使用し,

多角的な視点から問いが立てられると考えた。2学期の「質問づくり」では,この問いの一覧表を活 用して,問いを立てることを繰り返し指導した。

資料3に示すのは「享保の改革」の授業の導入として,教科書の記述から生徒が立てた浅い問いと 深い問いである。四角でかこんだ数字は問いの一覧表における問いの分類を表している。また矢印

(→)の先の記述は,授業を受けたのちに,改めて問いへの答えとして生徒自らが書いたものである。

資料3からは,問いの一覧表を利用することで,生徒が「歴史的な見方・考え方」を踏まえた問いを 上手に立てられていることが見て取れる。また,問いに対する答えについても,マンションの件のよ うに,やや的を外れたものもあるが,漢訳洋書の輸入の緩和や吉宗自らが政策決定に携わったことな ど,他の時代との比較を考慮に入れた上で,概ね妥当な答えを書くことができている。

これ以後も,2学期の「質問づくり」は生徒に「今日は 6・7・8 をつかって問いをつくろう」

などと投げかける形で,「歴史的な見方・考え方」を意識させながら行っていった。

3 生徒が立てた問いから主体的・対話的で深い学びを実践する

問いの一覧表を使用し,「歴史的な見方・考え方」を踏まえた問いをつくる活動に慣れてきた段階 で,生徒がつくった「深い問い」を考察する授業を実践した。教材開発において参考にしたのは田中 博之の学習理論における「深い学び」を生み出す15の技法6である。

本実践では,生徒の「深い学び」を導くための案内書として,15の技法を取り入れた冊子型の学 習の手引きを作成し,この学習の手引きに沿って授業を進めていった。

(1)立てた問いの中から深める問いを選択する

生徒には先ず,これまでの単元で習得した知識を手引きに記述させ(15の技法② 学んだ知識・技

資料

3 生徒の立てた問いとその答え

2

なぜ定免法を採用したのか(浅い問い)

 → 定免法の前の検見法は,役人の不正が多かったため

3

町人請負新田で何が変化したか(浅い問い)

 → 商人資本のため耕地が増加し,百姓の生活が安定した

3

なぜ吉宗の時代には蘭学が盛んになったのか(深い問い)

 →  漢訳洋書の輸入の緩和による実学の奨励をうけ,オランダ語による西洋科学が発達した ため

6

堂島米市場で行っていた先物取引は現在どのように行われているか(深い問い)

 →  先物取引とは未来の商品を「今」買うことで,物価の安定をはかった方法。自分の考えと しては,マンションや家を買う時がこの方法に似ていると感じた

11 8

代吉宗の時代と

7

代家継の政治方法の違い(深い問い)

 →  家継は一般町人や地方商人が経済の担い手であったが,吉宗は側近を巧みに使い,たくさ んの経済政策を行った。また吉宗自身も経済の中心的な担い手であった。

(8)

能を活用して思考や表現をする・15の技法⑬ 学んだ知識・技能を活用して事例研究をする),その 上で問いの一覧表の分類のうち,9・10・11・12を使用した質問づくりを行った。資料4は資料1 の問いを作ったクラスの生徒たちが立てたすべての問いである。

4月に立てた問いと同様,●で示したのは,言葉の定義や事実的な知識を聞くもので「浅い問い」

と言えるものである。一方,〇で示した問いは,「歴史的な見方・考え方」を踏まえ,知識を構造化 した概念的な知識を聞くもので「深い問い」と言えるものである。生徒が立てた問いは全部で55個 であり,●と〇の割合は21:34である。4月の「質問づくり」における●と〇の割合が101:9であっ たことを鑑みれば,問いの一覧表を活用することで,「深い問い」を立てることが容易になったと言

資料

4 質問の焦点:「日本は国民国家を形成した」

9

類似と差異

欧米列強と日本の国民国家の違い

フランス革命の国民国家と比べて日本の国民国 家は何が違うか

フランスの国民国家と日本の国民国家を比べる とどこが違うのか

イギリスなどと同じように一体化させたが,他 の国民国家の国と何か違うところはあるのか 中国など他のアジアの国では国民国家を形成で きなかったが,他のアジアの国と日本を比べる とどのような点が異なっていたか

10

  意味や意義と特色

日本の国民国家の一体性はどのような特徴を 持ったものだったか

日本が国民国家を形成した意味はなんだった のか

日本が国民国家をつくった意味はなにか 国民国家の形成にはどのような意味があったか 徴兵令を行った意味は何か

11

  相対化

日本が国民国家を形成した良い面は何か 日本が国民国家を形成して良かった面は何か 日本を国民国家にするメリットはなにか 国民国家の良い面・悪い面は何か

国民国家により一枚岩となった日本の悪い面は どこか

日本が国民国家を形成して悪い面は何か 国民国家を形成して前と比べてどう変わった 日本が国民国家を形成して,形成する前と何が 違うのか

国民国家を形成する前と後の日本は何が違う 国民国家を形成する前とした後で何が違うか 国民国家を形成する前の江戸時代とは政治はど う違うのか

国民国家が形成されるとき北海道では何か起 こったのだろうか

12

  評価や創造

国民国家の形成は本当に必要だったか 国民国家を形成する必要性は何か 国民国家の形成は,必要だったのか 国民国家は本当にする必要があったのか 日本で国民国家を形成することによって国民は それに対してどうするべきなのか

フランス革命が起こって国民国家が一般的と なったが,なぜそれが良いとされるのか フランスとアメリカに同調したん日本にはどの ような良いことがあったのか

国民国家の実現は本当に必要だったのか 身分制がまだ残る中で平等に国民が一体となる にはどのようなことが必要なのか

国民を一体にするにはどうすべきだったのか 国民国家の形成はよいことなのか

国民国家の形成に徴兵令は必要だったのか

その他

国民国家とは何か       国民国家って何?

なにをもって国民国家なのか          日本だけ?

何のために?       国民国家をどうしてしなくてはならなかったか なんのために形成したのか       日本より前はどこが形成したか

いつの時代の話?       日本のどこで?

国民国家によって何が変わったのか       国民国家を形成して日本がどのように変わったか 国民国家を形成したことで何が変わったか    何が目的で国民国家を形成したのか

なぜ国民を一体にしたかったのか        日本はどこの国を見本にしたのか 日本の国民国家は誰が主導で始まったのか    国民国家を形成するために何をしたか 国民国家を形成するために何をすべきか     国民国家を形成する理由はなにか 国民国家を形成するうえで必要なことは何か

(9)

える。下線の引いてある問いは,国民国家に関する知識だけではなく,これまでの学習で習得した知 識(北海道,身分制,中国)を踏まえているものである。

生徒が立てたこれらの問いをどのように活用するかは,その後の展開によって様々である。生徒が 深めたい問いを選んで,調べ学習を行う場合もあるだろう。しかし,本実践では残念ながら生徒に問 いを選ばせる時間が確保できなかったため,授業者の判断で,下線の問いに関係があり,生徒が興味 を持ちそうな問いということで,12の中から「国民国家の形成はよいことなのか」を選択し,学習 を進めることにした(15の技法⑮ 視点・観点・論点を明確にして思考や表現をする)。

(2)資料から必要な情報を読み取る

深める問いが決まったら,次はその問いに答えるための資料を調べる活動である(15の技法① 資 料やデータに基づいて考察する)。資料探しも生徒自らが行うことが望ましいが,時間的な制約から 授業者が必要な資料を選択した。示した資料は牧原憲夫(2006)の『民権と憲法』からアイヌの強制 移住に関する記述と,加藤博文/若園雄志郎編(2018)の『いま学ぶアイヌ民族の歴史』からアイヌ への民族教育とアイヌ小学校の記述である。

生徒は資料を読んでわかったことを学 習の手引きにまとめ,資料を読んで得た 情報を,視覚的に分かりやすくするため 資料5の学習ツールに書き込んだ(15の 技法⑧ 理由や根拠を示して論理的に説 明する)。次に資料の情報を小論文にま とめるために,学習モデルとして表現の

型(資料6)を提示する(15の技法⑨ 

学習モデルを活用して思考や表現する)

とともに,小論文の評価をルーブリック

(資料7)で提示した。

資料

6 学習モデル(表現の型)

内 容 割 合 基本形・書き出し

問いの提示

10%以下

例:○○したことはよいことだったのか

例:○○は当時どのような意味をもっていたのだろうか

意見提示

30〜40%

「先ずいえるのは……」 「第一に……」 「一般的には……」

展 開

40〜50%

「一方で……。」「しかしながら……。」「見方を変えると……。」 など

結 論

10%以下

「以上より,××…… は □□□□…… であるということが言える。」

「したがって,××…… は □□…… なので○○…… である。」

資料

5 学習ツール

(10)

Ⅴ 生徒の成果物と学習評価アンケートの分析と考察

1 生徒の成果物としての小論文の考察

提出された生徒の小論文は評価がすべて「A」であった。以下に示すのは,異なった価値判断を下 しているXとYの小論文,評価は「A」であるが記述にやや問題のあるZの小論文である。

生徒Xの小論文

「国民国家を形成したことはよいことだったのか。一般的には,アジアで唯一近代化に成功し欧米 列強の植民地にならずに,先進国として発展したことなど良い評価がある。一方でアイヌ民族への影 響はどのようなものだったのか。新政府は彼らにアイヌの儀式や風習などを禁じ,日本風の生活に変 えようとした。住む場所も制限された。アイヌは日本人でありながらその固有の文化は否定されたの である。以上より国民国家の形成は本当に良いことだったのか考える必要があると言える。」

生徒Yの小論文

「日本に大きな変化をもたらした国民国家の形成はよいことだったのか。まずいえるのは,この急 激な変化によって少なからず混乱や反発を引き起こしたということです。特に廃刀令による士族の反 乱が挙げられます。またアイヌ人は儀式や風習などを禁止されたり,移住を強制されたということも ありました。この事実があるため当時の国民やアイヌ人にとっては決して良い変化とはいえなかった でしょう。ただし,現在の私たちから見れば,現在の国のしくみを作るための大切な変化であるとも 考えられるため必ずしも悪いとは言えないと思われます。」

生徒Zの小論文

「国民国家の形成は本当によいことなのか。調べた内容は,アイヌ民族の生活や風習にふれてみま した。国民国家の形成をして良いと思った事は,日本人としての扱いをしてくれたこと。他の国の 良い事を調べると,産業革命ができました。産業革命は機械を使用して人々を助けることができま す。その反対の悪いところは,アイヌ民族は今まであった伝統や儀式が禁止され,アイヌ民族は日本 政府から強制的に移住させられてしまった。他国の状況をみると,形成された事によって良い方向へ と行っていると思います。アイヌ民族の状況をみると,形成して一番良いものができたとは思いま せん。」

上記の小論文はいずれも「国民国家の形成はよいことなのか」という問いに対して自分なりの考え を,根拠を持って述べられている。また,「良いことだったのか考える必要がある」「悪いとは言えな

資料

7 小論文の評価基準(ルーブリック)

A

評価

B

評価

C

評価

小論文の 評価規準

今までに習得した知識を活用し,根拠を踏ま えて多面的・多角的な視点(二つの立場の考 え)が盛り込まれた作文が書けている。

今までに習得した知識を 活用し,根拠を踏まえて 作文が書けている。

今までに習得した知識を 活用せず,根拠を踏まえ ず作文を書いている。

(11)

い」「良いものができたとは思いません」などの価値判断は概念的知識である。これらの小論文から は生徒が学習の結果として,概念的知識を身につけたことが見て取れる。

一方で,XとYの小論文は「欧米列強の植民地にならず」「廃刀令による士族の反乱」などといった,

それまで習得した知識を活用して書かれている一方で,Zの小論文は文章的な問題のほかにも「日本 人としての扱いをしてくれたこと」「人々を助けることができます」などと,知識に関するあいまい さが見て取れる。Zは欠席の多い生徒であり,知識の結びつきが弱いことがその原因だと考えられる。

全体の進捗としては,学習の手引きのうち,小論文の作成までたどりつけた生徒は68名中26名,

学習ツールの作成までたどり着いた生徒は29名,残りの13名の生徒はそれ以下の進み具合だった。

小論文まで進んだ生徒が半数未満であるのは時間的な制約が主な理由であるが,積極的に取り組まな い生徒がいたことも事実である。一方で,小論文を書いた生徒については,全員が習得した知識や資 料を根拠として用い,「国民からしたら良い政策であった」「国民国家の形成は本当によいものである とはいえない」などといった形で価値判断を行う文章を書けていた。ただし,Zのように知識にあい まいさの残る生徒は3名ほどいた。概念的な知識を伴う表現は,知識を構造化して書く難しさがある ため,それまでの学習の積み重ねが必要であることを改めて実感した次第である。

資料8はXの小論文に対するグループのメンバーからフィードバックである。(15の技法④ 友だ ちと練り合いや練り上げをする),こうしたフィードバックを受け,生徒は最終的な文章を完成させ た。また,単元の終わりには授業の振り返りを書かせた(15の技法⑪ 学習成果と自己とのかかわり を振り返る)。以下は上記の生徒X・生徒Yの振り返りである。

生徒Xの振り返り

「たくさんの情報量から自分が一番必要だと思う一文を選んで文をつなげる力が身についた。文章 を書くときに問いの提示を書いたことがなかったので,文の書き方や流れ,書き出しを学べた。」

「思っていたよりも小論文の書き方や流れを理解していれば書きやすかった。小論文を書いて終わ りだけじゃなく読んでもらいアドバイスをもらうことで自分とはちがう視点で見てくれるのが面白い と思った。」

資料

8 他者からのフィードバック

(12)

生徒Yの振り返り

「この学習の時間により,多くの資料の中から必要な情報を引き抜き,小論文にまとめるという今 後も活用できる文章のたてかたや書き方を学ぶことができました。」

「小論文を書くためにグループで協力して必要であると感じた文章を抜き出したり,まとめたり,

感想を話し合うという時間は自分では気づけなかったことが気づけたり,1人で行う勉強よりも小論 文の内容がしっかりと頭に入ると感じました。」

他の生徒の振り返りを見ても,「プロセスが小論文をつくることが分かった」「順序よくすすめてく れたから難しく考えることなく小論文を書けた」など,11名の生徒が文章を書く力について言及し ていた。このことから,学習の手引きを活用するメリットを実感した生徒は少なからずいたと言える だろう。また,「国民国家について深く学ぶことができた」「一連の流れをつかむとわかりやすくて楽 しかった」など,学びの深まりに関する振り返りをした生徒は14名おり,この点でも研究の目的を ある程度は達せられたと考える。

2 学習評価アンケートから見られた生徒の意識の変化

授業開始前の4月と授業後の12月に生徒に行ったアンケートの結果(資料9・10)を見てみると,

資料

9 4

月のアンケート結果(単位%)

資料

10 12

月のアンケート結果(単位%)

(13)

「疑問を持つことは学ぶ上で大切だと思う」「疑問を持つことで興味関心が高まると思う」の項目では,

「まあそう思う」が減り,「そう思う」が10〜15%程度増えている。このことから,問いを立てるこ との意義について,授業を通じて実感することができたと言えるだろう。一方で,後者の質問に対し て「あまり思わない」が4月の1.5%から12月は9.4%増えている。これは,継続的に問いを立てる 授業を繰り返してきたことで,問いを立てても授業への興味関心は高まらないと確信した層が少なか らずいたということだろう。問いを立てる授業は「問いの意義を実感する生徒」と「問いの意義を実 感しない生徒」の二極に分かれる性質のものであると言えそうである。

また,「疑問を持って授業を受けることができる」の項目でも同様に「まあそう思う」が減り,「そ う思う」が10%程度増えている。このことは,意識的に疑問を持って授業を受ける生徒が増えてき たことを示している。一方で,「あまり思わない」の生徒の割合は19.7%から20.8%とほぼ変化がな い。これは,一部の生徒については,その態度や考え方を変えることができなかったことを示してい る。 「疑問を持つことが得意である」の項目については,「そう思う」「まあそう思う」の合計割合

は50.0%から62.2%と増えているが,「そう思う」の生徒の割合は12月の方が減少している。これも

推測だが,問いを立てる活動について,考えたことのなかった4月の段階と比べて,質問づくりや問 いの一覧表の活動を通じて,問いを立てることの難しさに気づいた結果ではないだろうか。

以上のことより,多くの生徒は授業を通じて,問いの意義を理解し,意識して問いを立てながら授 業を受けることができるようになったと言えるだろう。一方で,「深い問い」のような抽象的な概念 を扱う高度な「質問づくり」は,問いを立てることの難しさを認識させるものでもあったと考えら れる。

Ⅵ 研究成果と今後の課題

成果としては,生徒が問いを立てることの大切さを実感し,学びの中で問いを意識するようになっ たことである。これらは問いを立てる力を育む土台と言えるだろう。また,生徒の問いの例からも分 かるように,深い問いを作る力が学習を重ねる中で高まった。さらに,成果物や振り返りからは,生 徒が主体的・対話的で深い学びを実践し,思考力・判断力・表現力を育めたことが見て取れる。

課題として,十分な時間が確保できず,すべての生徒が時間内に成果物までたどりつけなかった点,

自分が立てた問いを考察し深めていくような活動ができなかった点,授業の対象者が68名に過ぎず,

より正確な効果の検証を図るためには,多くの生徒を対象にした実践が必要である点,問いを作るこ とへの苦手意識を思ったようには払しょくできなかった点が挙げられる。また,生徒の成果物を考察 することにより,問いづくりの力の育成を図る取組の充実だけでなく,小論文の書き方を通した,考 察や検証の力を育てる方法の解明を合わせて行うことの必要性も明らかになった。

今後も,生徒の「生きる力」を育むため,生徒が自ら問いを立て,自ら答えを考える学習を通じて,

自分自身の成長を実感できるような,そのような実践を重ねていきたい。

(14)

【注】

1

高等学校学習指導要領(平成

30

年告示)解説では,「社会的事象を時期,推移などに着目して捉え,類似や 差異などを明確にしたり事象同士を因果関係などで関連付けたりし」て働かせるもの,と定義。

2

できるだけたくさん質問する。質問について話合ったり,評価したり,答えたりしない。質問は発言のとお りに書き出す。意見や主張は疑問文に直す。の四つ。

3

「閉じた問い」と「開いた問い」を書き換える作業のこと。例えば「あなたは猫が好きですか」(閉じた問い)

を「なぜあなたは猫が好きなのですか」(開いた問い)に書き換えるといった作業。

4

「重要だと思う質問」「もっとも興味深い質問」などの観点でグループの質問に順位をつけること。

5

習得・活用・探究という学びの課程の中で,各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら,知 識を相互に関連付けてより深く理解したり,情報を精査して考えを形成したり,問題を見いだして解決策を 考えたり,思いや考えを基に創造したりすることに向かう(学び)

6

田中博之『アクティブ・ラーニング「深い学び」実践の手引き』2017,p32-48

【参考文献】

鹿島真弓・石黒康夫(2018)『子どものつぶやきから始める主体的で深い学び 問いを創る授業』 図書文化社 加藤博文・若園雄志郎編(2018)『いま学ぶアイヌ民族の歴史』 山川出版社

合田哲雄(2019)『学習指導要領の読み方・活かし方 学習指導要領を「使いこなす」ための

8

章』 教育開発研 究所

澤井陽介(2017)『授業の見方「主体的・対話的で深い学び」の授業改善』 東洋館出版社 澤井陽介・加藤寿朗(2017)『見方・考え方 社会科編』 東洋館出版社

田中博之(2017)『アクティブ・ラーニング「深い学び」実践の手引き』 教育開発研究所

桑田てるみ(2016)『思考を深める探究学習 アクティブ・ラーニングの視点で活用する学校図書館』 全国学校 図書館協議会

戸田山和久(2012)『新版 論文の教室 レポートから卒論まで』 NHK出版 牧原憲夫(2006)『民権と憲法 シリーズ日本近現代史②』 岩波新書

ダン=ロスステイン・ルース=サンタナ(吉田新一郎訳)(2015)『たった一つを変えるだけ クラスも教師も自 立する「質問づくり」』 新評論

文部科学省(2015)「幼稚園,小学校,中学校,高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方 策等について(答申)」

https://www.mext.go.jp/b_menu/shingi/chukyo/chukyo0/toushin/1380731.htm

文部科学省(2017)「高等学校学習指導要領(平成

30

年告示)解説 地理歴史編」

https://www.mext.go.jp/content/1407073_03_2_2.pdf

参照

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