関係性の集積としての内集団認知の効果についての 実証的研究
著者 塩谷 尚正
発行年 2013‑03‑31
学位授与機関 関西大学
学位授与番号 34416甲第481号
URL http://doi.org/10.32286/00000182
博士学位論文
関係性の集積としての内集団認知の効果についての 実証的研究
平成 25 年 3 月
関西大学大学院社会学研究科 社会心理学専攻
塩谷尚正
関 係 性の 集積 とし ての 内集 団認 知 の効 果に つい ての 実 証 的研 究
社 会 学 研 究 科 社 会 心 理 学 専 攻
社 会 心 理 学 特 殊 研 究 ・ 文 化 行 動 論
07D5203 塩 谷 尚 正
第 1 章 関 係 性 の 集 積 と し て と ら え る 集 団 の 理 論 と 展 望
第 1 節 集 団 の 機 能 と 定 義 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・1 第 2 節 内 集 団 認 知 研 究 の 動 向 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・3
1-2-1. 集 団 間 か ら 集 団 内 へ /1-2-2. 関 係 性 に 基 づ く 自 己 概 念
/1-2-3. 関 係 性 か ら と ら え ら れ る 集 団 /1-2-4. 集 団 凝 集 性
第 3 節 集 団 の 機 能 と 集 団 内 関 係 性 認 知 と の 関 連 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・9 1-3-1. 所 属 欲 求 、集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ と 集 団 内 関 係 性 認 知 / 1-3-2. 集 合 効 力 感 と 集 団 内 関 係 性 認 知 /1-3-3. 社 会 的 現 実 と 集 団 内 関 係 性 認 知 /1-3-4. 安 心 感 と 集 団 内 関 係 性 認 知
第 4 節 集 団 内 関 係 性 認 知 の 適 用 対 象 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・18 第 5 節 集 団 内 関 係 性 認 知 の 適 用 範 囲 と し て の 地 域 コ ミ ュ ニ テ ィ 研 究 に
対 す る ア プ ロ ー チ の 検 討 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・1 9 1-5-1. 問 題 の 背 景 / 1-5-2. ソ ー シ ャ ル ・ キ ャ ピ タ ル / 1-5-3. コ ミ ュ ニ テ ィ 感 覚 / 1-5-4. 地 域 コ ミ ュ ニ テ ィ に 対 す る 集 団 内 関 係 性 認 知 / 1-5-5. 集 団 内 関 係 性 認 知 の 応 用 可 能 性
第 6 節 本 論 文 の 実 証 研 究 の 構 成 と 概 要 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・32
第 2 章 原 子 力 発 電 に 関 す る 政 府 へ の 信 頼 の 規 定 因
第 1 節 問 題 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・36 2-1-1. 政 府 へ の 信 頼 と 政 治 的 集 合 効 力 感 / 2-1-2. 市 民 同 士 の 関 係 性 に つ い て の 認 知 / 2-1-3. 本 研 究 の 目 的 と 現 実 問 題 へ の 適 用
第 2 節 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・39 2-2-1. 調 査 の 概 要 と 回 答 者 / 2-2-2. 測 定 項 目
第 3 節 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・42 2-3-1. モ デ ル の 検 討 / 2-3-2. 多 集 団 同 時 分 析
第 4 節 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・46
第 3 章 ま ち づ く り へ の 参 加 意 図 を 規 定 す る プ ロ セ ス の 検 討
目 次
第 1 節 問 題 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・49 3-1-1. 地 域 コ ミ ュ ニ テ ィ に お け る 集 合 効 力 感 / 3-1-2. 社 会 的 結 び つ き の 認 知 的 側 面 / 3-1-3. 調 査 地 に つ い て / 3-1-4. 本 研 究 の 目 的 と 仮 説
第 2 節 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・53 3-2-1. 調 査 概 要 / 3-2-2. 測 定 項 目
第 3 節 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・54 3-3-1. 回 答 者 / 3-3-2. 尺 度 の 信 頼 性 と 相 関 分 析 / 3-3-3. パ ス 解 析 に よ る 検 証 / 3-3-4. 補 足 的 分 析 : 属 性 に よ る 差 の 検 定
第 4 節 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・59 3-4-1. 集 合 効 力 感 と 社 会 的 結 び つ き の 行 動 、 集 団 内 関 係 志 向 的 認 知 に つ い て / 3-4-2. 示 唆 と 課 題
第 4 章 集 団 内 関 係 性 認 知 が 大 学 に お け る 安 全 の 協 働 意 図 及 び 集 合 効 力 感 に 与 え る 影 響
第 1 節 問 題 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・63 4-1-1. 背 景 / 4-1-2. 集 合 効 力 感 と 成 員 の 社 会 的 結 び つ き
第 2 節 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・68 4-2-1. 調 査 概 要 / 4-2-2. 測 定 項 目
第 3 節 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・69 4-3-1. 尺 度 の 検 討 / 4-3-2. パ ス 解 析
第 4 節 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・74
第 5 章 集 団 内 関 係 性 認 知 が リ ス ク 施 設 へ の 態 度 に 与 え る 影 響
第 1 節 問 題 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・78 5-1-1. 集 団 放 散 効 果 / 5-1-2. 原 子 力 発 電 に 対 す る 態 度 と 地 域 住 民 の 関 係 性 / 5-1-3. 本 研 究 の 目 的
第 2 節 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・82 5-2-1. 調 査 概 要 / 5-2-2. 測 定 項 目
第 3 節 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・82 5-3-1. 尺 度 の 信 頼 性 / 5-3-2. 仮 説 の 検 証
第 4 節 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・85 5-4-1. 得 ら れ た 知 見 / 5-4-2. 本 研 究 の 課 題
第 6 章 集 団 内 関 係 性 認 知 と 危 険 性 認 知 が 協 議 行 動 意 図 に 及 ぼ す 影 響 第 1 節 問 題 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・88
6-1-1. BSE 騒 動 の 社 会 的 背 景 / 6-1-2. 本 研 究 の 目 的
第 2 節 方 法 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・94 6-2-1. 調 査 概 要 / 6-2-2. 測 定 項 目
第 3 節 結 果 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・95 6-3-1. 回 答 者 の 属 性 / 6-3-2. 尺 度 の 信 頼 性 / 6-3-3. 仮 説 の 検 証
第 4 節 考 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・97
第 7 章 総 合 考 察
第 1 節 本 論 文 の 知 見 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・99 7-1-1. 得 ら れ た 知 見 / 7-1-2. 主 な 結 果 の ま と め / 7-1-3. 集 団 内 関 係 性 認 知 と 効 力 感 / 7-1-4. 集 団 内 関 係 性 認 知 と 行 動 意 図 / 7-1-5. リ ス ク 状 況 下 に お け る 集 団 内 関 係 性 認 知 / 7-1-6. 集 団 内 関 係 性 認 知 の 効 果 に 関 す る 総 合 的 モ デ ル の 提 起
第 2 節 今 後 の 課 題 と 展 望 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・113 7-2-1. 残 さ れ た 課 題 / 7-2-2. 応 用 と 展 望
文 献・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・119 論 文 要 旨 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・136 本 論 文 を 構 成 す る 研 究 業 績・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・140 巻 末 資 料 : 本 論 文 で 用 い た 調 査 項 目 一 覧
謝 辞
第1章
第 1 章 関 係 性 の 集 積 と し て と ら え る 集 団 の 理 論 と 展 望
第 1 節 集 団 の 機 能 と 定 義
人 類 が 動 物 と し て 優 れ た 身 体 能 力 を 持 た な い に も か か わ ら ず 地 球 上 の 広 範 囲 に 繁 殖 し 今 日 に 至 る ま で 生 存 し 続 け て き た の は 、 集 団 を 形 成 す る 能 力 に 負 う と こ ろ が 大 き い と 考 え ら れ て い る 。 す な わ ち 、 集 団 の 形 成 は 人 に と っ て 生 存 に 有 利 な 条 件 と な る 。 集 団 を 形 成 す る こ と に よ っ て 個 人 が 得 る 利 点 を 、 釘 原(2011) は 次 の 4 つ に ま と め て い る 。第 1に 、 他 者 と の 絆 を 結 ぶ こ と に よ っ て 愛 情 や 親 密 さ に 対 す る 欲 求 が 充 足 さ れ る こ と で あ る 。 人 は 他 者 と の 関 係 を 結 び 社 会 集 団 を 形 成 し な け れ ば 生 存 で き な い こ と か ら 、 他 者 と の 関 係 性 に 対 す る 欲 求 が 根 源 的 に 備 え ら れ て い る と 考 え ら れ る(e.g., Ba u meister & Lear y, 199 5)。そ の た め に 、 社 会 か ら 孤 立 し そ う な 状 況 で は 警 告 信 号 と し て 自 尊 感 情 が 低 下 し た り(Leary
& Baumeister, 2000)、 他 方 で 不 安 感 情 が 高 め ら れ た 状 況 で は 他 者 へ の 親 和 欲 求 が 高 め ら れ た り す る(Schachter, 1959)。 こ の よ う な 親 和 欲 求 や 所 属 欲 求 を 集 団 は 満 た す こ と が で き る 。
第 2 の 利 点 は ア イ デ ン テ ィ テ ィ の 確 立 で あ る 。人 は 性 格 や 能 力 な ど 内 的 属 性 に 基 づ く 個 人 的 ア イ デ ン テ ィ テ ィ の み な ら ず 、 さ ま ざ ま の 社 会 集 団 の 一 員 と し て の 位 置 付 け に 基 づ く 社 会 的 ア イ デ ン テ ィ テ ィ に よ っ て 安 定 し た 自 己 概 念 を 獲 得 す る 。 集 団 が 無 け れ ば 、 自 分 自 身 が 何 者 で あ る か と い う 問 い か け に 応 え る 根 拠 が 曖 昧 に な り 、 自 己 概 念 の 危 機 事 態 と な る 。
第 3 に 、 個 人 で は 達 成 で き な い 課 題 で あ っ て も 集 団 で は 達 成 で き る こ と が あ る 。 行 く 道 を 塞 ぐ 巨 大 な 障 害 物 に 一 人 で は 対 処 で き な く て も 複 数 人 が 協 力 す る こ と で 乗 り 越 え ら れ る と い う よ う に 、 集 団 を 形 成 す る こ と に よ っ て 課 題 を 解 決 で き る 可 能 性 は 大 幅 に 高 め ら れ る 。
第 4 に 、 自 分 や 世 界 に 関 す る 理 解 の 枠 組 み を 広 げ ら れ る こ と が 挙 げ ら れ る 。 人 は 他 者 の 持 つ 情 報 や 判 断 と の 比 較 を 経 て 自 身 の 持 つ 情 報 や 判 断 の 確 か ら し さ の 根 拠 を 得 よ う と す る 。 自 身 で 直 接 は 見 聞 き で き な い 事 柄 に つ い て 、 他 者 や 何 ら か の 媒 体 を 通 じ た 情 報 を 受 け 入 れ る こ と で 「 理 解 し た 」 と 知 覚 す る 。 ま た 具 体 的 な 情 報 や 判 断 の み な ら ず 、 常 識 や 規 範 な ど 社 会 的 に 共 有 さ れ た 事 象 に 関 す
第1章
る リ ア リ テ ィ も 社 会 的 関 係 性 か ら の 産 物 と し て 獲 得 さ れ る 。
上 記 の よ う な 利 点 を も た ら す 集 団 と は 何 で あ る か 、 ど の よ う に 定 義 さ れ る も の で あ ろ う か 。 私 た ち が 集 団 と し て み な す も の に は さ ま ざ ま の 種 類 が あ り 、 そ の 定 義 も ま た 多 様 に な る 。た と え ば Lewin (1948)は 成 員 同 士 が 共 通 の 運 命 を せ お う と い う 点 を 、Sherif & Sherif (1969)は 役 割 や 地 位 の 構 造 が あ る と い う こ と を 、 集 団 の 定 義 と し て 挙 げ た 。 そ れ ら を 踏 ま え て 蜂 屋(1986)は 、 集 団 の 要 件 を 以 下 の 6 点 に 整 理 し て い る 。 ① 集 団 を 形 成 し て い る 成 員 の 間 に 何 ら か の 共 通 の 目 標 、 す な わ ち 集 団 目 標 が も た れ て い る こ と 、 ② こ の 目 標 を 達 成 す る た め に 成 員 間 に 相 互 に コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン が 交 わ さ れ 協 力 し あ う 関 係 が で き て お り 、 あ る 程 度 持 続 的 な 相 互 作 用 が も た れ て い る こ と 、 ③ 成 員 間 に 役 割 分 化 が 見 ら れ 、 各 役 割 が 全 体 と し て 1つ の 組 織 と し て 統 合 さ れ て い る こ と 、④ 成 員 の 行 動 や 態 度 に つ い て の 標 準 的 な 枠 組 み や 規 範 が で き て い て 、 成 員 が そ れ に 従 っ て い る こ と 、 ⑤ 成 員 の 間 に 仲 間 意 識 が で き て お り 、 成 員 以 外 の 人 び と と 自 分 た ち と を 区 別 す る よ う な 気 持 ち が で き て い る こ と 、 ⑥ 成 員 は そ の 集 団 に 所 属 す る こ と に 魅 力 を 感 じ て お り 、 集 団 に と ど ま ろ う と す る 強 い 愛 着 を 持 っ て い る こ と 。 こ れ ら の 特 徴 は 常 に す べ て の 集 団 が 備 え て い る わ け で は な く 、 こ れ ら の う ち の い く つ か を 、 し か も 弱 い 程 度 に し か 備 え て い な い 場 合 も あ れ ば 、 逆 に す べ て の 特 徴 を 高 度 に 備 え て い る 集 団 も あ り え る 。 ま た 同 時 に 、 同 じ 構 成 員 に よ る 集 団 で あ っ て も 、 備 え た 集 団 の 条 件 が 時 間 の 経 過 に 伴 っ て 強 く な っ て い っ た り 弱 く な っ て い っ た り と 変 化 す る も の で も あ る 。 す な わ ち 、 集 団 と は そ れ が ど の よ う な 種 類 の も の で あ れ 、 集 団 と し て 存 在 す る か し な い か と い う 二 元 論 的 あ る い は 離 散 的 事 象 で は な い 。 人 の 集 合 状 態 が 、 ど の 程 度 「 集 団 ら し い 」 と い え る か と い う 連 続 的 事 象 と し て と ら え ら れ る も の で あ る 。
集 団 ら し さ に 程 度 の 差 が あ る と い う こ と は 、 個 人 と 集 団 と の コ ミ ッ ト メ ン ト に 程 度 の 差 が あ る と い う と ら え 方 も で き る 。 そ し て 集 団 に 対 す る コ ミ ッ ト メ ン ト の 個 人 差 は 、 成 員 間 の 社 会 的 結 び つ き の 認 知 に お け る 程 度 の 差 と し て と ら え る こ と も で き よ う 。 村 本(2003, p. 51; 村 本(1996)も 参 照)は 、「 同 じ 集 合 体 に 属 す る 人 々 の 、 心 理 的 な 結 び つ き の こ と 」 を 関 係 性 と 表 現 し 、 そ の 関 係 性 の 集 積 と し て 文 化 や 社 会 を と ら え る 視 点 を 提 起 し て い る 。 同 様 の 視 点 と し て 、 後 に 詳 述 す る Yuki(2003)の 議 論 が あ る 。本 論 文 で は そ れ ら と 同 様 に 、集 団 と は 人 と 人
第1章
と の 社 会 的 結 び つ き そ の も の 、 ま た は そ の 集 積 に よ っ て 形 成 さ れ る も の 、 す な わ ち 関 係 性 の 集 合 体 で あ る と い う 観 点 に 立 ち 、 集 団 と そ の 成 員 、 そ し て 集 団 の 所 産 と の 関 連 を 検 討 し て い く 。
成 員 間 の 社 会 的 結 び つ き に 対 す る 認 知 は 、 集 団 の パ フ ォ ー マ ン ス に お い て も 個 々 の 成 員 と っ て の 集 団 の 意 義 に お い て も 影 響 を 及 ぼ す も の と 考 え ら れ る 。 次 節 で は 、 人 が 集 団 を 認 知 す る 過 程 が ど の よ う な 機 序 に 裏 付 け ら れ 、 ま た ど の よ う な 現 象 を 伴 う の か 、 社 会 心 理 学 に お け る 集 団 認 知 研 究 の 知 見 を 概 観 す る 。
第 2 節 内 集 団 認 知 研 究 の 動 向
1-2-1. 集 団 間 か ら 集 団 内 へ
集 団 に 対 す る 認 知 に つ い て の 最 初 期 の 研 究 は ス テ レ オ タ イ プ に 関 す る も の で あ っ た と い わ れ る(Ha milton, Sher ma n, & Rodg ers, 200 4)。 そ れ 以 降 、 集 団 に 対 す る ス テ レ オ タ イ プ や 印 象 形 成 に つ い て 数 多 く の 研 究 が な さ れ て き た が 、 Ha milton & Sher ma n (1 996)の レ ヴ ュ ー に よ る と 、 そ れ ら の 大 半 が 外 集 団 か 、 も し く は 認 知 者 が 特 に メ ン バ ー と し て 想 定 さ れ な い 集 団 を 対 象 と し た も の で あ っ た 。 ま た 、 集 団 認 知 や 集 団 行 動 を 説 明 す る 理 論 と し て 大 き な 影 響 力 を も っ て き た 社 会 的 ア イ デ ン テ ィ テ ィ 理 論( Tajfel, 19 74)に よ る と 、 人 は 自 己 評 価 の 維 持 ・ 高 揚 に 対 す る 根 源 的 欲 求 を 備 え て お り 、 そ の 欲 求 を 満 た す た め に 有 利 な 社 会 的 ア イ デ ン テ ィ テ ィ を 獲 得 し よ う と す る も の で あ る と 想 定 さ れ る 。 そ し て 有 利 な 社 会 的 ア イ デ ン テ ィ テ ィ の 獲 得 の た め に 集 団 間 の 社 会 的 比 較 が な さ れ 、 そ の 文 脈 で は 脱 個 人 化 が 生 じ る と 考 え ら れ る 。 以 上 の 仮 定 か ら 、 集 団 内 他 者 と 自 己 と の 関 係 に つ い て の 関 心 は 比 較 的 大 き な も の で は な か っ た と い え る 。
と こ ろ が 最 近 十 数 年 の 間 に 、 集 団 認 知 に 関 す る 研 究 の な か で も 内 集 団 に 対 す る 関 心 が 高 ま っ て き た( e. g., Corr ell & Par k, 2 005 ; Jackson & Smith, 199 9; Yuki, 2003 ; Yz erb yt, Casta no, Leyens, & Pa la dino, 2 000 ; Yzer b yt, Cor neille, & Estra da, 2001)。 た と え ば Yuki (20 03)は 、 い わ ゆ る 集 団 主 義 的 行 動 を 動 機 づ け る 志 向 性 は 、 内 集 団 の 相 対 的 地 位 に 対 す る 関 心 や 内 集 団 の 均 質 性 認 知 を 特 徴 と す る 「 集 団 間 比 較 志 向 」と 、集 団 内 の 人 間 関 係 へ の 関 心 を 特 徴 と す る「 集 団 内 関 係 志 向 」 と い う 2 種 類 に よ っ て 解 釈 で き る と し て い る 。こ の よ う に 集 団 に 対 す る 認 知 と
第1章
し て 、 従 来 の 社 会 的 ア イ デ ン テ ィ テ ィ 理 論 な ど に よ っ て 説 明 さ れ る よ う な 集 団 間 比 較 の 文 脈 に 焦 点 化 す る 次 元 の み な ら ず 、 自 己 を 含 む 内 集 団 成 員 同 士 の 関 係 性 に 焦 点 化 さ れ る 次 元 が 存 在 す る こ と を 提 唱 し 、 ま た 実 証 す る こ と で 、 そ の 重 要 性 が 高 め ら れ て き て い る 。
1-2-2. 関 係 性 に 基 づ く 自 己 概 念
集 団 認 知 研 究 の な か で も 内 集 団 に 対 す る 関 心 が 高 ま っ た 背 景 と し て 、 自 己 概 念 に 他 者 と の 関 係 性 や 集 団 成 員 性 を 取 り 込 ん で い く と い う 自 己 拡 張 の 達 成 が 根 源 的 な 欲 求 と し て 人 に 備 え ら れ て い る 、 と い た こ と を 主 張 す る 理 論 が 1990 年 代 に 提 出 さ れ 、支 持 さ れ て き た こ と が 挙 げ ら れ る 。た と え ば Ba u meister & Lear y (1995 )は 、 進 化 論 的 観 点 か ら 所 属 欲 求 仮 説 を 提 唱 し た 。 そ れ に よ る と 、 人 に は 他 者 と の つ な が り や 集 団 へ の 所 属 に 対 す る 欲 求 が 根 源 的 な 欲 求 と し て 備 え ら れ て お り 、こ の 所 属 欲 求 が 人 の 感 情 や 認 知 に も 大 き な 影 響 を 与 え て い る と さ れ る 。 Brewer (1991)は 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ が 、 他 者 と 同 じ で あ り た い と い う 欲 求 と 、 反 対 に 個 性 的 ・ 独 立 的 で あ り た い と い う 欲 求 と の 、2 つ の 根 源 的 欲 求 に 由 来 す る と い う 最 適 弁 別 理 論 を 提 起 し た 。 も し 個 人 が 集 団 の 中 で の 孤 立 を 感 じ る と 、自 分 と 他 者 と の 相 違 が 目 立 た な い よ う な よ り 上 位 の 集 団 へ の 内 包 の 欲 求( 同 化 欲 求 ) が 高 ま り 、 反 対 に 個 人 が 集 団 に 内 包 さ れ て い る と い う 感 覚 を 強 く 抱 け ば 、 そ の 中 で 独 自 の 存 在 で あ り た い と い う 欲 求 ( 分 化 欲 求 ) が 高 ま る 。 そ し て 同 化 欲 求 と 分 化 欲 求 と が 均 衡 す る ( 最 適 弁 別 点 に 達 す る ) と き 、 そ の 集 団 の 成 員 と し て の ア イ デ ン テ ィ テ ィ が 最 も 強 ま る と 議 論 し た 。 最 適 弁 別 理 論 は 社 会 的 ア イ デ ン テ ィ テ ィ 理 論 を 基 盤 に し な が ら も 、 成 員 と 自 己 と の 関 係 性 と い う 視 点 が 加 味 さ れ 、そ の 関 係 性 が 可 変 的 に 認 知 さ れ る こ と を 仮 説 化 し た も の と い え る 。 Jackson & S mith (1 999)は 、 社 会 的 ア イ デ ン テ ィ テ ィ に つ い て 、 集 団 間 の 比 較 に よ っ て ア イ デ ン テ ィ テ ィ が 脅 か さ れ る 可 能 性 の あ る 不 安 定 性(insecur e social identity)と 、 集 団 間 比 較 に よ る ア イ デ ン テ ィ テ ィ へ の 影 響 を 受 け に く い 安 定 性 (secur e social identity)と の 2次 元 が 存 在 す る こ と を 主 張 し た 。 安 定 性 社 会 的 ア イ デ ン テ ィ テ ィ は 集 団 間 関 係 よ り も む し ろ 集 団 内 関 係 へ の 関 心 に 由 来 し 、 脱 個 人 化 が 比 較 的 ゆ る や か で あ り 集 団 間 バ イ ア ス と の 結 び つ き も 弱 い と さ れ る 。 Pr entice, Miller, & Lightda le (1 994)は 、 人 が 集 団 に 対 し て 抱 く 愛 着 に つ い て 、 集
第1章
団 そ の も の に 対 す る 愛 着 と 、集 団 内 成 員 に 対 す る 愛 着 と の 2つ の タ イ プ が 存 在 す る と し た 。Karasa wa (19 91)も ま た 同 様 に 、 集 団 に 対 す る 同 一 視 に は 、 集 団 そ の も の に 対 す る 同 一 視 と 集 団 成 員 に 対 す る 同 一 視 と の 2因 子 が 概 念 的 に 想 定 で き る と し て い る 。 ま た Br ewer & Gar dner (19 9 6)は 、 自 己 概 念 に お け る 社 会 的 側 面 が 、 具 体 的 な 人 間 関 係 に お い て 拡 張 さ れ る 関 係 的 自 己 と 、 な に が し か の 象 徴 的 な 集 団 そ の も の や 社 会 的 カ テ ゴ リ ー に お い て 拡 張 さ れ る 集 合 的 自 己 と に 分 類 で き る と し て い る 。 従 来 の 社 会 的 ア イ デ ン テ ィ テ ィ 理 論 に お け る 自 己 概 念 は 社 会 的 カ テ ゴ リ ー 化 に よ る 脱 個 人 化 を 表 象 す る も の で あ っ た か ら 、 そ の 関 心 は Brewer & Gar dner (199 6)の 分 類 に よ る と こ ろ の 集 合 的 自 己 に 偏 っ て い た と い え よ う 。
社 会 的 ア イ デ ン テ ィ テ ィ 理 論 も ま た 、 自 己 評 価 を 維 持 ・ 高 揚 さ せ よ う と す る 根 源 的 な 動 機 づ け に よ っ て 人 は 集 団 へ の 所 属 性 、 あ る い は 成 員 性 を 自 己 概 念 の 重 要 な 一 部 と す る 、 と い う 従 来 の 動 機 的 ア プ ロ ー チ か ら の 新 た な 拡 充 が 図 ら れ て き た 。H ogg ( 200 0)は 、人 は 自 己 を 内 集 団 に カ テ ゴ リ ー 化 し た り 、集 団 成 員 性 を 自 己 概 念 に 取 り 込 ん だ り す る こ と で 、 自 己 を 社 会 的 に 位 置 付 け て 自 己 概 念 の 不 確 実 性 を 低 減 さ せ よ う と す る 欲 求 を 満 た す と い う 、 不 確 実 性 低 減 理 論 を 唱 え て い る 。 こ の 理 論 に 基 づ き Reid & H ogg (20 0 5)は 、 不 確 実 性 低 減 の 欲 求 が 社 会 的 比 較 に よ る 自 己 高 揚 の 欲 求 と と も に 、 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ に 影 響 を 与 え る こ と を 実 証 し た 。
他 者 と の 関 係 性 に 基 づ く 自 己 概 念 の 重 要 性 は 、 さ ら に 比 較 文 化 的 視 点 か ら も 相 次 い で 指 摘 さ れ た 。 た と え ば Markus & Kitayama (1991)は 、 あ る 文 化 に お い て 歴 史 的 に 作 り 出 さ れ 、 暗 黙 の 内 に 共 有 さ れ て い る 人 の 主 体 の 性 質 に つ い て の 通 念 と し て 「 文 化 的 自 己 観 」 を 提 唱 し 、 そ し て 典 型 的 な 文 化 的 自 己 観 の タ イ プ と し て 2つ を 提 示 し た 。 そ の ひ と つ は 欧 米 文 化 で 優 勢 に み ら れ る と さ れ る 相 互 独 立 的 自 己 観 で あ る 。 相 互 独 立 的 自 己 観 で は 、 自 己 と は 他 の 人 や 周 り の こ と ご と と は 切 り 離 さ れ た 実 体 で あ り 、 周 り の 状 況 と は 独 立 に あ る 主 体 の 持 つ さ ま ざ ま な 属 性 に よ っ て 定 義 さ れ る 。 も う 一 方 の 相 互 協 調 的 自 己 観 は 日 本 を 含 む 東 ア ジ ア に お い て 優 勢 と さ れ 、 こ の 場 合 自 己 と は 他 の 人 や 周 り の こ と ご と と 結 び つ い て 高 次 の 社 会 的 ユ ニ ッ ト の 構 成 要 素 と な る 本 質 的 に 関 係 志 向 的 な 実 体 で あ る 。従 っ て 自 己 の 定 義 は 、あ る 特 定 の 状 況 や 他 者 の 性 質 に よ っ て 大 き く 異 な る 。
第1章
上 述 の よ う な 異 な る 自 己 観 の 様 態 は 、 必 ず し も 対 立 し た り 相 互 背 反 的 で あ っ た り す る も の で は な く 、 文 化 ( あ る い は 地 域 ) に よ っ て 一 義 的 に 規 定 さ れ る も の で も な い 。 個 人 内 に そ れ ら の 自 己 観 が 併 存 し 、 社 会 的 文 脈 に 応 じ て 活 性 化 さ れ る と 考 え ら れ る 。 個 人 に お け る 相 互 独 立 的 自 己 観 ・ 相 互 協 調 的 自 己 観 そ れ ぞ れ の 程 度 を 2次 元 で と ら え る 心 理 尺 度 の 開 発 も な さ れ て い る(Kashima & Hardie, 2000; 高 田, 2000)。
1-2-3. 関 係 性 か ら と ら え ら れ る 集 団
前 項 の よ う に 、 人 が 他 者 と の 関 係 性 や 集 団 成 員 性 を 自 己 概 念 の 一 部 と し て 取 り 入 れ る の は 、 必 ず し も 集 団 間 の 比 較 に よ る 自 己 高 揚 を 得 た い が た め の み な ら ず 、 人 に は 他 者 と の 社 会 的 な 結 び つ き に 対 す る 根 源 的 欲 求 が 存 在 し 、 他 者 と の 関 係 性 や 集 団 と の 同 一 視 が そ う し た 欲 求 を 満 た す た め で あ る と い う 側 面 が 強 調 さ れ る よ う に な っ て き た 。 そ う し た 研 究 動 向 は 、 本 節 第 1 項 で 指 摘 し た 内 集 団 に 対 す る 関 心 の 高 ま り と ほ ぼ 時 期 を 同 じ く し て い る 。 す な わ ち 、 集 団 を い か な る 表 象 と し て 認 知 す る か と い う 観 点 に お い て も 成 員 の 関 係 性 が 鍵 概 念 と し て 注 目 さ れ る よ う に な っ た と い え よ う 。
社 会 的 ア イ デ ン テ ィ テ ィ 理 論 と 社 会 的 カ テ ゴ リ ー 化 理 論(Turner, Hogg, Oakes, Reicher, & Wetherell, 1987)以 降 の 集 団 研 究 で は 、 あ る 集 団 成 員 は 脱 個 人 化(depersonalization)さ れ た 均 質 な 存 在 で あ り 、 成 員 の 類 似 性 ・ 共 通 性 が 強 調 さ れ る 一 方 で 、 個 別 性 や 相 互 の 役 割 と い っ た 関 係 構 造 へ の 視 点 は そ ぎ 落 と さ れ た 。 最 少 条 件 パ ラ ダ イ ム(e.g., Tajfel, Billig, Bundy, & Flament, 1971)は そ の 端 的 な 例 で あ る 。こ れ に 対 し て Yuki (2 003)は 、集 団 主 義 的 行 動 を 動 機 づ け る 志 向 性 と し て 、 内 集 団 の 相 対 的 地 位 に 対 す る 関 心 や 内 集 団 の 均 質 性 認 知 を 特 徴 と す る 「 集 団 間 比 較 志 向 」 と 、 集 団 内 の 人 間 関 係 へ の 関 心 を 特 徴 と す る 「 集 団 内 関 係 志 向 」と に 弁 別 す る こ と を 提 起 し た 。Yuki は 比 較 文 化 的 検 討 に よ っ て 北 米 で は 集 団 間 比 較 志 向 が 優 勢 で あ り 、 日 本 で は 集 団 内 関 係 志 向 が 優 勢 で あ る こ と を 示 し た が 、 同 時 に そ れ ら の 認 知 傾 向 が 文 化 固 有 の も の で は な い と 指 摘 し て い る 。 す な わ ち 、 個 人 の 自 己 概 念 に お い て 相 互 協 調 的 自 己 観 と 相 互 独 立 的 自 己 観 が 併 存 す る よ う に 、 あ る 文 化 や 社 会 の 内 部 で 集 団 間 比 較 志 向 と 集 団 内 関 係 志 向 が 併 存 し 、 い ず れ が 顕 在 化 す る か は 社 会 的 文 脈 に 応 じ る も の と 考 え ら れ る 。
第1章
そ し て 集 団 間 比 較 志 向 を 説 明 す る た め に 適 し た 理 論 が 社 会 的 ア イ デ ン テ ィ テ ィ 理 論 や 社 会 的 カ テ ゴ リ ー 化 理 論 で あ る と 指 摘 し 、 一 方 で 集 団 内 関 係 志 向 に よ く 類 似 し た 概 念 と し て は 「 集 団 実 体 性 」 を 挙 げ て い る 。
集 団 実 体 性 と は Ca mpb ell (1 958)に よ っ て 初 め て 導 入 さ れ た 概 念 で あ り 、そ の 定 義 に つ い て は 集 団 が「 実 体 と し て の 性 質 を も つ 程 度 」と だ け 言 及 さ れ て い る 。 Ca mpb ell の 議 論 は 、 個 人 の 集 合 が 「 集 団 ら し い 」 と 認 知 さ れ る 、つ ま り 集 団 が 実 体 と し て 存 在 し て い る と 認 知 さ れ る こ と の 意 味 を 明 確 に し よ う と す る も の で あ り 、 集 団 の 実 体 性 を 規 定 す る 要 因 と し て 集 団 成 員 の 「 近 接 性 」「 類 似 性 」「 運 命 の 共 有 」「 連 続 性 」を 挙 げ て い る 。そ れ ら の 要 因 の 測 定 上 の 定 義 や 操 作 に つ い て Ca mpb ell の 議 論 は 曖 昧 で あ り 、 問 題 を 残 す も の で あ る と 指 摘 さ れ て い る (Ha milton, Sher ma n, & Ca stelli, 20 02)。 し か し 、Ca mpb ell以 降 の 研 究 者 ら に よ っ て 、 集 団 実 体 性 の 認 知 の 手 が か り と し て 成 員 間 の 類 似 性 の 効 果 に 注 目 す る 研 究 (Brewer, Web er, & Carini, 1 995)や 、集 団 成 員 の 均 質 性 、行 動 の 一 致 度 に 注 目 す る 研 究( McConnell, Sher ma nn, & Ha milton, 1 997)な ど が 報 告 さ れ て き た 。Ca mpb ell が ゲ シ ュ タ ル ト の 概 念 を 基 盤 に し て 議 論 し た た め か 、 当 初 の 集 団 実 体 性 研 究 で は 集 団 全 体 に 対 す る 認 知 と し て の 均 質 性 や 類 似 性 に 関 心 が 集 ま り 、 集 団 内 で 各 成 員 が ど の よ う な 役 割 を 果 た し て い る の か と い う 側 面 へ の 関 心 は 比 較 的 低 か っ た と い え よ う 。 こ の よ う に 類 似 性 や 均 質 性 に 表 象 さ れ る 集 団 認 知 の 傾 向 は 、 社 会 的 ア イ デ ン テ ィ テ ィ 理 論 や 社 会 的 カ テ ゴ リ ー 化 理 論 に よ っ て 説 明 さ れ る 認 知 プ ロ セ ス と 一 致 す る も の で あ っ た 。
し か し 近 年 で は 、 成 員 の 均 質 性 や 類 似 性 と い う 視 点 に 加 え て 、 成 員 間 の 相 互 作 用 性 や 関 わ り 合 い の 程 度 と い う 視 点 も 取 り 入 れ た 集 団 実 体 性 の 概 念 化 が な さ れ て き て い る( e. g., Ha milton et al., 20 02 ; Yz er b yt et al., 20 01)。 た と え ば Lickel, Ha milton, Wiecz or kowska, Lweis, Sher ma n & Uhles (2 000)は 、40種 類 の さ ま ざ ま な 集 団 に つ い て 、 そ れ ぞ れ の 集 団 実 体 性 と い く つ か の 集 団 特 性 と の 関 連 を 調 査 し た 。そ の 結 果 、規 模 、歴 史( 集 団 の 継 続 期 間 )、境 界 の 透 過 性( 成 員 の 加 入 ・ 脱 退 の 容 易 さ ) は 集 団 実 体 性 と の 相 関 が 認 め ら れ な か っ た 一 方 で 、 成 員 間 の 相 互 作 用 性 が 集 団 実 体 性 と 最 も 高 く 相 関 す る こ と を 見 出 し て い る 。 そ の 他 に 集 団 実 体 性 と の 高 い 相 関 が 認 め ら れ た 集 団 特 性 と し て は 、 重 要 度 、 共 通 の 目 標 、 運 命 の 共 有 、成 員 間 類 似 性 の 認 知 が 挙 げ ら れ て い る 。こ の よ う に し て Lickel et al.
第1章
(2000)は 、集 団 実 体 性 と は あ る 集 団( ま た は 集 合 )に 対 す る 客 観 的 評 価 で あ り 、 人 に よ る 主 観 的 認 知 の 概 念 で あ る と い う 視 点 を 明 ら か に し た 。 さ ら に 集 団 実 体 性 の 規 定 因 に つ い て 、Casta no, Yz erb yt , & Bo urguignon (20 03)は 、 集 団 の 重 要 度 と コ ミ ッ ト メ ン ト が 高 ま る ほ ど 集 団 実 体 性 認 知 が 高 ま る こ と が 示 さ れ て い る 。 ま た Ga ertner & Schopler ( 199 8)は 、 集 団 内 成 員 間 の 相 互 作 用 が 高 ま る こ と に よ っ て 集 団 実 体 性 の 認 知 が 高 ま る こ と を 実 験 に よ っ て 示 し た 。 集 団 実 体 性 を さ ら に 多 次 元 的 に と ら え よ う と す る 試 み と し て は 、 成 員 間 に 共 通 の 結 果 の 経 験 や 、 集 団 成 員 性 の 重 要 性 な ど も 測 定 項 目 に 加 え た 集 団 実 体 性 尺 度 を 用 い た Rydell &
McConnell (2 005)や Casta no, Sa cchi, & Gr ies ( 2003)が 挙 げ ら れ る 。
Brewer & Harasty (19 96)の レ ヴ ュ ー に よ る と 、集 団 実 体 性 研 究 は そ の 多 く が 外 集 団 か 、 ま た は 認 知 者 が メ ン バ ー と し て 想 定 さ れ な い 集 団 を 対 象 と す る も の で あ っ た と 指 摘 さ れ て い る 。 し か し な が ら 、 上 述 の よ う に 集 団 実 体 性 の 認 知 に お け る 集 団 成 員 間 の 相 互 作 用 性 や 共 有 性 の 重 要 さ を 示 す 研 究 が 増 え る に 伴 い 、 や が て 内 集 団 の 実 体 性 認 知 に 関 す る 研 究 が 注 目 を 集 め る よ う に な っ て き た( e. g., Casta no, 2 004 ; Yz erb yt et a l., 2 000)。 以 上 の よ う な 特 徴 か ら 集 団 実 体 性 は 、 集 団 内 関 係 志 向 や 関 係 的 自 己 と の 関 連 が 深 い 概 念 と 考 え ら れ る 。 す な わ ち 、 成 員 間 の 関 係 性 に よ っ て 特 徴 づ け ら れ る 集 団 は 、 社 会 的 カ テ ゴ リ ー の よ う な 明 確 な 境 界 を 必 ず し も 備 え ず 、 ま た 外 集 団 と の 対 照 が な く と も 実 体 と し て 認 知 さ れ る 表 象 と 考 え ら れ る 。
1-2-4. 集 団 凝 集 性
前 項 で 詳 し く 取 り 上 げ た 集 団 実 体 性 と 類 似 す る と 思 わ れ る 概 念 と し て 集 団 凝 集 性 が あ る 。 こ こ で 集 団 凝 集 性 の 定 義 を 確 認 し 、 集 団 実 体 性 と の 概 念 上 の 相 似 と 相 違 に つ い て 整 理 し た い 。 集 団 凝 集 性 概 念 は 社 会 心 理 学 に お い て 、 長 ら く 主 要 な 研 究 テ ー マ で あ る と 同 時 に 、 非 常 に 扱 い に く い 概 念 で あ っ た と い え よ う 。 そ の 扱 い に く さ の 大 き な 原 因 は 、 集 団 凝 集 性 と い う 術 語 の 、 一 般 的 用 語 と し て の 意 味 と 心 理 学 上 の 構 成 概 念 と し て の 意 味 と の 隔 た り に 求 め る こ と が で き る で あ ろ う 。 ま ず 構 成 概 念 と し て は 、 も っ と も よ く 用 い ら れ る の は 「 集 団 成 員 が も つ 集 団 へ の 魅 力 の 総 合 あ る い は 平 均 」 と い っ た 定 義 で あ る 。 こ れ は Festinger, Schachter, & Back (1950)に よ っ て 提 起 さ れ 、 追 随 し た 多 く の 研 究 者 に よ っ て
第1章
成 員 間 の 対 人 魅 力 と し て 操 作 さ れ た(e.g., Cartiright, 1968; Hogg, 1992)。し か し な が ら こ の 定 義 は 、た と え ば 魅 力 は ど の よ う に し て 測 定 す る べ き な の か と か 、 そ も そ も 対 人 魅 力 が 集 団 凝 集 性 の 指 標 と し て ふ さ わ し い と い え る の か 、 な ど と い っ た 批 判 に さ ら さ れ 、 必 ず し も 生 産 的 と は い え な い 議 論 に 多 く の 労 力 が 費 や さ れ た う え 、 そ れ ら の 批 判 と 議 論 は 未 解 決 の ま ま 残 さ れ た(参 照 と し て 、 廣 田, 1994)。そ の 後 停 滞 し て い た 集 団 凝 集 性 研 究 に 対 し て Hogg (1992)は 、凝 集 性 を 集 団 や 集 団 成 員 に 対 す る 魅 力 と し て と ら え る の で は な く 、 社 会 的 ア イ デ ン テ ィ テ ィ と し て と ら え る ア プ ロ ー チ を 提 起 し た 。 こ の ア プ ロ ー チ で は 、 社 会 的 ア イ デ ン テ ィ テ ィ 理 論 及 び 、そ れ と 密 接 に 関 連 す る 自 己 カ テ ゴ リ ー 化 理 論 に 基 づ き 、 集 団 の 魅 力 を 集 団 成 員 性 か ら な る 自 己 カ テ ゴ リ ー 化 の 帰 結 で あ る と す る 。 社 会 的 ア イ デ ン テ ィ テ ィ 理 論 及 び 自 己 カ テ ゴ リ ー 化 理 論 が 集 団 過 程 を 説 明 す る た め の 理 論 と し て 発 展 し て い っ た 一 方 で 、 対 人 魅 力 に 基 づ く 集 団 凝 集 性 概 念 は 構 成 概 念 と し て の 有 用 性 を 失 っ て い っ た と 思 わ れ る 。
Hogg (1992)の 指 摘 に よ る と 、 集 団 凝 集 性 は そ も そ も 、 研 究 上 の 概 念 的 定 義 が な さ れ る 以 前 か ら 集 団 の 特 徴 を 記 述 す る た め の 一 般 的 用 語 と し て 、 連 帯 性 と い う 言 葉 と 同 様 の 意 味 で 用 い ら れ て い た 。 そ の た め か 、 あ る い は 定 義 を め ぐ る 混 乱 の た め か 、 社 会 心 理 学 の テ キ ス ト ブ ッ ク に お い て 集 団 凝 集 性 は 、 た だ 集 団 の ま と ま り の よ さ を 示 す 記 述 的 な 概 念 と し て 用 い ら れ る こ と も あ る 。 こ の 場 合 は 社 会 心 理 学 理 論 と し て の 独 自 の 役 割 や 定 義 を も た な い 一 般 的 用 語 に す ぎ な い も の と 考 え る べ き で あ り 、 現 在 の 社 会 心 理 学 で は 大 半 の 場 合 で 、 こ の よ う な 意 味 で 集 団 凝 集 性 は 用 い ら れ て い る と 思 わ れ る 。
以 上 の 議 論 を 踏 ま え て 、 既 に 確 認 し た 定 義 か ら 内 集 団 実 体 性 を 集 団 凝 集 性 と 関 連 付 け る な ら ば 、 そ れ は 一 般 的 用 語 と し て の 集 団 凝 集 性 の 広 範 な 概 念 に 含 ま れ る 1 つ の 分 析 概 念 と し て 位 置 づ け る こ と が で き る 。 す な わ ち 、Hogg (1992) が 集 団 凝 集 性 に 対 す る ア プ ロ ー チ と し て 社 会 的 ア イ デ ン テ ィ テ ィ に 焦 点 を 当 て た よ う に 、 集 団 実 体 性 認 知 に 注 目 す る こ と も 有 用 な ア プ ロ ー チ に な る と 考 え ら れ る 。
第 3 節 集 団 の 機 能 と 集 団 内 関 係 性 認 知 と の 関 連
前 節 で 概 観 さ れ た よ う に 、 内 集 団 認 知 に 関 す る 研 究 の 視 点 は 漸 次 多 元 化 さ れ
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て き た と い え る 。 そ れ と 同 時 に 集 団 間 の 文 脈 に 集 中 し て い た 焦 点 が 集 団 内 の 文 脈 に も 当 て ら れ る よ う に な り 、 社 会 的 ア イ デ ン テ ィ テ ィ に 関 す る 研 究 も ま た 、 集 団 間 の 文 脈 か ら 集 団 内 の 文 脈 へ と そ の 理 論 的 基 盤 を 拡 充 し て き た 。 こ の よ う な 過 程 で 内 集 団 認 知 に お け る 重 要 な 変 数 と し て 集 団 内 成 員 の 均 質 性・類 似 性 に 、 新 た に 相 互 作 用 性 や 共 有 感 覚 と い っ た 要 因 が 加 え ら れ 、 よ り 多 様 な 次 元 か ら 内 集 団 を と ら え る よ う に な っ て き た 。
な か で も 、 集 団 ら し さ を 表 象 す る 概 念 と し て 導 入 さ れ た 集 団 実 体 性 は 、 集 団 成 員 間 の 相 互 作 用 性 や 相 互 依 存 性 、 共 有 感 覚 に よ っ て 構 成 さ れ る こ と が 実 証 さ れ て き た (2 節 )。 ま た 、Yuki (2003)は 集 団 内 の 人 間 関 係 や 役 割 構 造 に 注 目 す る 認 知 傾 向 を 集 団 内 関 係 志 向 性 と 呼 び 、 内 集 団 に 対 す る 実 体 性 認 知 と の 概 念 的 類 似 性 を 指 摘 し た 。 こ の よ う に 、 集 団 実 体 性 あ る い は 集 団 内 関 係 志 向 と い う 分 析 の 視 点 は 、 内 集 団 を 対 象 と し た 成 員 の 認 知 や 行 動 の 過 程 の 研 究 に 適 し て い る と い え る 。 集 団 の 機 能 を 分 析 す る 上 で 、 集 団 内 の 成 員 の 関 係 性 に 対 す る 認 知 の 重 要 性 は 高 い 。 す な わ ち 、 集 団 内 の 関 係 性 認 知 の 高 さ は 、 集 団 の 機 能 が い か ほ ど に 発 揮 さ れ る か と い う 帰 結 を 予 測 す る 要 因 に な り え る で あ ろ う 。
集 団 内 の 関 係 性 が 高 く 認 知 さ れ る か 低 く 認 知 さ れ る か と い う こ と は 、 ど の よ う な 意 味 を も つ の で あ ろ う か 。 本 節 で は 集 団 成 員 に よ る 集 団 内 の 関 係 性 の 認 知 の 度 合 い が 、 集 団 の 機 能 と い か に 関 連 す る と 考 え ら れ る か 検 討 し て い く 。 先 行 研 究 と し て は 特 に 集 団 実 体 性 を 扱 っ た も の を 主 軸 と し 、集 団 の 機 能 に つ い て は 、 釘 原(2011)が 挙 げ た ① 所 属 欲 求 の 充 足 、 ② ア イ デ ン テ ィ テ ィ の 確 立 、 ③ 課 題 達 成 の 可 能 性 、 ④ 社 会 的 リ ア リ テ ィ の 形 成 、 に 加 え 、 ⑤ 安 心 感 の 付 与 、 の 5 つ の 視 点 に 即 し て 検 討 す る 。
1-3-1. 所 属 欲 求 、 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ と 集 団 内 関 係 性 認 知
集 団 を 形 成 す る こ と は 人 間 に と っ て 根 源 的 な 欲 求 と し て 備 え ら れ て い る と い う 進 化 論 的 仮 説 が 、近 年 で は 広 く 受 け 入 れ ら れ て い る 。そ う し た 仮 説 の 下 で は 、 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ の 獲 得 は 所 属 欲 求 の 充 足 と 深 く 関 連 す る も の と し て 説 明 さ れ る(Hogg, 2000)。 そ こ で 本 項 で は 、 所 属 欲 求 と 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ 、 そ し て 同 時 に そ れ ら と 内 集 団 実 体 性 と の 関 連 に つ い て 先 行 研 究 を 確 認 す る 。
内 集 団 実 体 性 認 知 と 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ と の 関 連 内 集 団 実 体 性 の 認 知
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の 度 合 い は 、 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ の 度 合 い と 正 の 相 関 を も つ と 考 え ら れ て い る(Ca sta no, 20 04; Yz erb yt et al., 200 0)。し か し そ れ は 、直 ち に 両 者 が 同 一 の 概 念 で あ る こ と を 意 味 す る も の で は な い 。 で は 内 集 団 実 体 性 認 知 と 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ と が ど の よ う に 相 似 す る の か 。 た と え ば H ogg, Sher ma n, D ier selhuis, &
Maitner (2 007)は 、不 確 実 性 低 減 理 論 を 援 用 し て 集 団 実 体 性 と 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ と の 関 連 を 検 証 し た 。 自 己 が 曖 昧 な 存 在 で あ る と 感 じ る と き 、 自 己 概 念 の 不 確 実 性 を 低 減 さ せ る よ う な 集 団 と は 、 成 員 間 の 相 互 作 用 や 均 質 性 、 集 団 の 境 界 の 明 確 さ 、 目 標 や 運 命 の 共 有 と い っ た 資 質 を 有 す る 集 団 、 す な わ ち 実 体 性 の 高 い 集 団 で あ る と 予 測 さ れ る 。 研 究 1 で 参 加 者 に 自 身 の 人 生 に 確 実 さ 、 ま た は 不 確 実 さ を 感 じ る 面 を 記 述 さ せ る と い う 方 法 で 自 己 概 念 の 不 確 実 性 を 操 作 し 、 そ の 後 で 支 持 政 党 の 実 体 性 認 知 と 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ と が 測 定 さ れ た 。 そ の 結 果 、 自 己 不 確 実 性 が 低 い 場 合 は 実 体 性 認 知 と 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ の 関 連 は 認 め ら れ な い が 、 自 己 不 確 実 性 が 高 い 場 合 は 実 体 性 認 知 が 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ の 有 意 な 予 測 因 と な る こ と が 示 さ れ た 。 研 究 2で は 、 実 験 室 実 験 に お け る 一 時 的 な 集 団 に お い て も 研 究 1 と 同 様 の 結 果 を 得 て お り 、 内 集 団 実 体 性 認 知 に よ っ て 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ が 推 測 さ れ う る こ と を 示 し て い る 。
Hogg et al. (20 07)は 、 不 確 実 性 低 減 理 論 を 検 証 す る 立 場 か ら 集 団 実 体 性 認 知 を 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ の 規 定 因 と す る 関 連 性 を 想 定 し 実 証 し た が 、 人 の 日 常 に お け る 内 集 団 の 実 体 性 認 知 と 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ と の 関 連 性 は 、 そ の よ う に 一 義 的 に 解 釈 で き る 場 合 の ほ う が む し ろ 少 な い で あ ろ う 。 た と え ば Ca sta no, Yzerb yt et al. (2 003)で は オ ー ス ト リ ア の 大 学 生 を 対 象 に 、EUに 対 す る 内 集 団 実 体 性 認 知 が EU へ の 同 一 視 に 与 え る 影 響 が 検 証 さ れ て い る 。 参 加 者 に 対 し て 内 集 団 実 体 性 認 知 を 操 作 す る こ と で 、 そ れ が 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ の 規 定 因 と な る こ と を 検 証 し た が 、 内 集 団 実 体 性 認 知 と 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ と の 関 連 は 限 定 的 で あ っ た 。 す な わ ち 、 集 団 実 体 性 認 知 の 操 作 以 前 に E U に 対 し て 予 め 有 し て い た 態 度 が 肯 定 的 ・ 否 定 的 の ど ち ら で も な い と い う 人 に お い て の み 、E U に 対 す る 同 一 視 の 程 度 が 内 集 団 実 体 性 認 知 の 程 度 に 影 響 さ れ る と い う 結 果 が 示 さ れ た 。 こ の よ う に 、 内 集 団 実 体 性 と 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ と の 因 果 関 係 の 実 証 は 非 常 に 困 難 で あ る 。 ば ら ば ら の 個 人 の 単 純 な 集 合 ( た と え ば 電 車 を 待 つ 人 の 行 列 や 、 バ ス の 中 の 乗 客 ) に 対 し て は 、 集 団 実 体 性 認 知 が 低 い と 同 時 に 、 集 団
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ア イ デ ン テ ィ テ ィ を 形 成 し え な い と 考 え ら れ る 。 反 対 に 、 成 員 間 の ま と ま り や 相 互 作 用 性 が 高 い 集 団 ( た と え ば 家 族 や ス ポ ー ツ の チ ー ム ) に 対 し て は 、 集 団 実 体 性 認 知 が 高 ま る と 同 時 に 、 強 い 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ が 形 成 さ れ う る で あ ろ う 。 内 集 団 実 体 性 認 知 と 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ と は 、 こ の よ う に 相 互 に 深 い 関 連 を も つ も の と 考 え ら れ 、H ogg et al. ( 200 7 )や Casta no, Yz erb yt al. ( 200 3)の 知 見 は 、 そ れ を 実 証 す る も の と い え よ う 。
さ ら に 内 集 団 実 体 性 認 知 と 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ と の 相 関 関 係 を 示 し た 研 究 と し て Casta no, Yzer b yt, Pa la dino, & Sa cchi ( 2 002)が 挙 げ ら れ る 。 彼 ら は 存 在 脅 威 管 理 理 論( Solomon, Gr eenb erg, & Pysz cz ynski, 19 91)に 基 づ き 、死 の 顕 現 性 が 内 集 団 認 知 に 与 え る 影 響 を 検 証 し た 。 存 在 脅 威 管 理 理 論 に よ る と 、 人 は 死 に よ る 自 己 の 存 在 の 喪 失 に 対 し て 潜 在 的 な 脅 威 を 抱 い て お り 、 そ の 脅 威 を 和 ら げ る 心 理 的 シ ス テ ム と し て 、 自 己 の 所 属 す る 社 会 の 文 化 的 世 界 観 に 対 す る 信 念 と 、 そ の 文 化 に お け る 自 己 の 価 値 を 認 め る た め の 自 尊 感 情 と が 備 わ っ て い る 、 と さ れ る 。 人 は 自 己 を 所 属 集 団 と 同 一 視 す る こ と に よ っ て 、 空 間 的 ま た は 時 間 的 に 自 己 が 拡 張 さ れ て 、 個 人 の 死 の 脅 威 を 克 服 す る こ と が で き る 。 し た が っ て 死 の 顕 現 性 が 高 め ら れ た と き 、 そ の 脅 威 を 和 ら げ る た め に 人 は 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ を 高 め る で あ ろ う 。 さ ら に 、 所 属 集 団 が 死 の 脅 威 を 和 ら げ る た め に は 、 そ の 集 団 は よ り 実 体 性 の 高 い 集 団 と し て 認 知 さ れ る 必 要 が あ る で あ ろ う 。 こ の よ う な 仮 説 が 、 死 の 顕 現 性 の 操 作 を 含 む 質 問 紙 を 用 い た 調 査 に よ っ て 検 証 さ れ た 。 そ の 結 果 、 死 の 顕 現 性 が 高 め ら れ た 群 は 統 制 群 よ り も 、 内 集 団 実 体 性 認 知 と 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ が と も に 高 め ら れ る こ と が 示 さ れ た 。 こ れ ら の 研 究 に よ っ て 示 さ れ た 内 集 団 実 体 性 認 知 と 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ と の 結 び つ き は 、 実 体 性 の 高 い 集 団 ほ ど 、 他 者 と の 社 会 的 結 び つ き を も ち 集 団 を 形 成 ・ 維 持 し よ う と す る 欲 求 を よ り よ く 満 た す で あ ろ う 、と い う 先 述 の 問 題 提 起 に 沿 う も の と い え よ う 。 あ る 集 団 成 員 は 、 内 集 団 に 対 し て 実 体 性 認 知 と 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ を と も に 高 い 状 態 で 獲 得 す る 場 合 に 、所 属 欲 求 が よ り 強 く 充 足 さ れ る も の と 考 え ら れ る 。
内 集 団 実 体 性 認 知 と 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ と の 弁 別 こ れ ま で に 内 集 団 実 体 性 認 知 と 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ と の 相 関 関 係 を 示 す 研 究 を 紹 介 し た が 、 で は そ れ ら の 弁 別 は い か に な さ れ る の か 。内 集 団 認 知 の 研 究 者 に お い て は 多 く の 場 合 、 内 集 団 実 体 性 認 知 と 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ と は 関 連 は あ っ て も 別 の 概 念 で あ る
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と さ れ て い る( e. g., Ca sta no, 20 04; Spears, Scheepers, J etten, D oosje, Ellemer s, &
Post mes, 2 004)。概 念 的 定 義 と し て は 、集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ が 自 己 概 念 に 取 り 込 ま れ た 集 団 成 員 性 、 ま た は 他 者 と の 関 係 性 と し て 定 義 さ れ る の に 対 し て 、 集 団 実 体 性 認 知 は 集 団 が 実 在 す る も の と し て 認 知 さ れ る 程 度 で あ り 、 つ ま り 集 団 認 知 の 概 念 的 指 標 で あ る か ら 、 そ の 認 知 が 自 己 の 一 部 と し て 自 己 概 念 を 構 成 す る も の で は な い と い う 点 で 異 な る 。 し た が っ て 内 集 団 実 体 性 認 知 は 高 い が 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ は 低 い と い う 状 態 も あ り え る か ら 、 内 集 団 実 体 性 認 知 が 脱 個 人 化 を 必 ず し も 随 伴 す る と は い え な い 。 ま た 、 内 集 団 実 体 性 認 知 は 成 員 間 の 関 係 の 認 知 を 構 成 要 素 と す る た め 、 集 団 内 成 員 の 没 個 性 化 を 前 提 条 件 と は せ ず 、 む し ろ 多 様 性 の 認 知 を 伴 う 。 個 人 内 で 内 集 団 実 体 性 認 知 と 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ が 共 に 高 い 水 準 で 形 成 さ れ る 場 合 、 そ の 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ は 集 団 間 比 較 志 向 よ り も 集 団 内 関 係 志 向 と し て 特 徴 づ け ら れ 、 集 団 間 バ イ ア ス を 引 き 起 こ し に く い タ イ プ(Jackson & Smith, 1999; Yuki, 2003)に な る と い え よ う 。
集 団 実 体 性 認 知 の 重 要 な 構 成 要 因 は 、成 員 間 の 相 互 作 用 性 、均 質 性・類 似 性 、 運 命 や 経 験 の 共 有 な ど で あ っ た 。 一 方 の 社 会 的 ア イ デ ン テ ィ テ ィ の 形 成 は 、 自 己 ( 内 集 団 ) と 他 者 ( 外 集 団 ) と を 弁 別 ・ 比 較 し 自 己 評 価 を 維 持 ・ 高 揚 さ せ よ う と す る 欲 求 と 、 他 者 と の 絆 を 形 成 し 集 団 に 所 属 し よ う す る 欲 求 と に 基 づ く こ と が 指 摘 さ れ た 。 こ こ で 内 集 団 に 対 す る 実 体 性 認 知 と 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ と の 対 応 を 試 み る な ら 、 内 集 団 実 体 性 の 高 さ は 、 他 者 と の 絆 や 集 団 へ の 所 属 に 対 す る 欲 求 と は 直 接 的 に 適 合 す る も の と い え よ う 。 そ の 一 方 で 、 内 集 団 実 体 性 の 高 さ は 内 集 団 と 外 集 団 と の 弁 別 と 比 較 の 顕 現 性 を 高 め る こ と は で き る が 、 比 較 の 結 果 と し て ポ ジ テ ィ ブ な 集 合 的 自 己 評 価 を 得 ら れ る か ど う か と は 直 接 に 結 び つ か な い で あ ろ う 。 集 団 実 体 性 は ポ ジ テ ィ ブ な 集 合 的 自 己 評 価 と 直 接 に は 結 び つ か な い 点 で 、 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ と 弁 別 さ れ る も の と 考 え ら れ る 。
概 念 的 に は 弁 別 さ れ る 集 団 実 体 性 と 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ に つ い て 、 そ の 弁 別 性 の 実 証 的 な 研 究 は ま だ 少 な い 。Ca sta no (20 04)は 、Castano, Brewer &
MacDonald (2000)に お け る 確 証 的 因 子 分 析 の 結 果 、集 団 実 体 性 と 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ と を 1因 子 と す る モ デ ル よ り も 2因 子 と し て 弁 別 す る モ デ ル の 方 が 適 合 度 は よ か っ た と し て 、 集 団 実 体 性 と 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ と の 弁 別 モ デ ル の 妥 当 性 を 唱 え て い る 。 し か し な が ら 内 集 団 実 体 性 認 知 と 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ
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と が 、 集 団 認 知 や 集 団 行 動 の 過 程 に お い て ど の よ う に 異 な る 機 能 を 果 た す の か と い う こ と に 関 す る 知 見 は ま だ 十 分 に 蓄 積 さ れ て お ら ず 、 今 後 の 課 題 と し て 実 証 的 な ア プ ロ ー チ が 望 ま れ る 。
1-3-2. 集 合 効 力 感 と 集 団 内 関 係 性 認 知
さ ま ざ ま の 集 団 の 中 に は 、 特 定 の 課 題 の た め だ け に 組 織 さ れ る プ ロ ジ ェ ク ト チ ー ム の よ う な 集 団 も あ る が 、 そ の 一 方 で 時 間 的 継 続 性 を 備 え 次 々 と 新 規 の 課 題 に 取 り 組 み 続 け な け れ ば な ら な い よ う な 集 団 も あ る 。 後 者 の タ イ プ の 集 団 で は 、 集 団 と し て の 課 題 達 成 に 先 行 す る 概 念 と し て 、 あ る 問 題 や 目 標 に 対 す る 影 響 力 が 多 く の 他 者 と 自 己 と に よ っ て 共 有 さ れ て い る と い う 信 念 で あ る 集 合 効 力 感(Bandura, 1997, 2000)が 重 要 な 役 割 を も つ 。個 人 的 な 目 的 に 向 か っ て 行 動 し 努 力 し 続 け る に は 自 己 効 力 感 が 必 要 と な る よ う に 、 集 合 的 な 目 的 の た め に は 、 そ の 目 的 に 共 通 の 課 題 と し て 直 面 す る 人 た ち の 集 合 効 力 感 が 必 要 に な る 。 た と え ば 犯 罪 に 巻 き 込 ま れ な い よ う に 日 々 安 全 ・ 安 心 に 暮 ら し た い と い う 願 望 は 個 人 的 な 目 標 と も い え る が 、 む し ろ 社 会 全 体 が 治 安 の よ い 安 心 で き る 環 境 で あ る 必 要 が あ り 、 成 員 ( 市 民 ) に 共 通 の 課 題 で あ る 。 集 合 効 力 感 の 低 さ は 社 会 環 境 を 変 化 さ せ る こ と が で き る と い う 信 念 の 欠 如 を 意 味 し 、 そ の よ う な 人 は 目 的 に 向 か っ て 努 力 す る こ と や 、 行 動 を 起 こ す こ と を す ぐ に あ き ら め て し ま い 、 集 団 が 直 面 す る 課 題 は 解 決 さ れ な い ま ま 残 さ れ て し ま う 。 実 際 に 多 く の 場 面 で 集 合 効 力 感 は 、 集 合 行 動 に 対 す る 説 明 力 を も つ 要 因 と な る こ と が 知 ら れ て い る (Thomas, McGarty, & Mavor, 2009; van Zomeren, Leach, & Spears, 2010;
van Zomeren, Spears, Fischer, & Leach, 2004)。
Brewer, Hong, & Li (2004)は 、 内 集 団 実 体 性 認 知 が 成 員 に 集 団 と し て の 効 力 感 を も た ら す と 主 張 し て い る 。 集 団 実 体 性 は 成 員 間 の 相 互 作 用 に よ っ て 高 め ら れ る も の で あ り 、 集 団 内 で 自 己 と 他 者 と が 実 際 に 社 会 的 な 関 係 を 結 ぶ こ と は 、 目 標 や 体 験 や 価 値 観 の 共 有 を 伴 う 。 そ う し た 過 程 で 、 あ る 目 的 や 目 標 に 対 す る 影 響 力 の 主 体 が 個 人 か ら 集 団 レ ベ ル に 拡 張 さ れ る 。 ま た 同 時 に 、 各 成 員 が 個 人 と し て 保 有 す る 人 的 資 本 へ の ア ク セ ス 可 能 性 が 高 ま る 。Brewer et al. (2004) は 、 こ の よ う な 過 程 を 背 景 と し て 内 集 団 実 体 性 認 知 と 集 合 効 力 感 と の 正 の 関 連 を 説 明 し 、Yz erb yt et al. ( 200 0)も ま た 同 様 の 主 張 を 示 し て い る 。 し か し な が ら
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そ れ ら の 主 張 は い ず れ も 理 論 的 予 測 に と ど ま っ て お り 、 実 証 的 知 見 が 蓄 積 さ れ て い な い 点 で 課 題 を 残 し て い る 。 内 集 団 実 体 性 認 知 が 集 合 効 力 感 に ポ ジ テ ィ ブ な 影 響 を 与 え る こ と が 実 証 的 に 示 さ れ る な ら ば 、 さ ら に 集 合 効 力 感 が 集 合 行 動 に 対 し て ポ ジ テ ィ ブ な 影 響 を 与 え る と い う プ ロ セ ス が 予 見 さ れ 、 課 題 達 成 の 可 能 性 を 高 め る と い う 集 団 の 意 義 を 裏 付 け る こ と が で き る 。
1-3-3. 社 会 的 現 実 と 集 団 内 関 係 性 認 知
一 般 に 人 が 現 実 と し て 認 識 し て い る 諸 々 の 事 象 や 世 界 観 は 、 必 ず し も 物 理 的 現 実 と は 一 致 す る も の で は な い 。 た と え ば 、 日 本 で は 「 虹 は 7 色 」 と い う の が 常 識 で あ り 、 実 際 に 私 た ち の 目 に は そ の よ う に 見 え る 。 し か し ア メ リ カ で は 6 色 、 メ キ シ コ の 原 住 民 に は 5 色 で 表 現 さ れ る こ と が 多 い と い う 。 と こ ろ が 虹 と は 、 空 気 中 の 水 滴 が プ リ ズ ム の 役 割 を は た し て 太 陽 光 線 を 分 解 す る こ と に よ っ て 生 じ る 現 象 で 、 そ の 色 の 数 を 限 定 す る こ と は 不 可 能 と い う の が 物 理 的 な 現 実 で あ る 。「 虹 の 色 の 数 」は 文 化 に よ っ て 異 な る 社 会 的 現 実 が 作 ら れ て お り 、し か も そ れ が 物 理 的 現 実 と 必 ず し も 一 致 し な い 例 と い え る 。
社 会 的 現 実 は 、 そ も そ も Festinger (1950, 1954)に よ っ て 提 起 さ れ た 概 念 で あ る 。Festinger は 社 会 的 現 実 の 定 義 を 、 自 分 の 意 見 や 能 力 の 妥 当 性 の 判 定 と い う 自 己 評 価 の 過 程 に お い て の み 適 用 す る 概 念 と し て 限 定 し て い た 。 し か し 、 そ の よ う な 限 定 は 社 会 的 現 実 の 意 味 を 十 分 に と ら え る も の で は な い と 池 田 (2007, 2009)が 指 摘 し て い る よ う に 、 近 年 で は よ り 広 範 に 態 度 、 行 動 、 信 念 、 あ る い は 上 述 の 「 虹 」 の 例 の よ う に 物 理 的 事 象 に 対 す る 認 知 な ど の 主 観 的 妥 当 性 も 包 含 す る 概 念 と し て 用 い ら れ て い る 。 社 会 的 現 実 が 必 ず し も 物 理 的 現 実 に よ っ て 裏 付 け ら れ な い 場 合 は 、 社 会 的 現 実 と は ど の よ う に し て 成 り 立 つ で あ ろ う か 。 池 田(2000)は 、 人 々 が 共 有 す る 社 会 的 現 実 の 基 盤 と し て 、 ① 社 会 的 な 制 度 に よ る 基 盤 、 ② 対 人 コ ミ ュ ニ ケ ー シ ョ ン や 常 識 、 慣 習 化 に よ っ て 共 有 さ れ る 集 団 的 基 盤 、 ③ 個 人 の 信 念 に よ る 内 在 的 基 盤 の 三 つ を 挙 げ て い る 。 そ れ ら の う ち 本 論 文 の 観 点 か ら 、 特 に ② の 集 団 的 基 盤 が 、 集 団 内 関 係 性 認 知 ( ま た は 内 集 団 実 体 性 認 知 ) と 関 連 す る も の と 考 え ら れ る 。
人 は 不 確 か で あ っ た り 曖 昧 で あ っ た り す る 事 象 に つ い て 、 他 者 と の 会 話 や マ ス メ デ ィ ア か ら の 情 報 、 集 団 内 の 慣 習 な ど を 参 照 す る こ と に よ っ て 現 実 と し て
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の 主 観 的 な 確 か ら し さ を 得 よ う と す る(池 田, 1993)。 集 団 が 支 え る 社 会 的 現 実 の 成 員 に 対 す る 強 力 な 効 果 は こ れ ま で に 数 多 く の 形 で 示 さ れ て き た 。 他 者 の 意 見 に さ ら さ れ る こ と で 、 実 際 に は 動 か な い 光 点 の 動 き の 判 断 値 が 近 似 し た り (Sherif, 1935)、長 さ の 異 な る 2つ の 線 分 を 同 じ 長 さ と し て 報 告 し て し ま っ た り す る(Ash, 1951)。ま た 、実 験 の た め に 集 め ら れ た 一 般 市 民 が 状 況 に 応 じ て 囚 人 や 看 守 の 役 割 に な り き っ た り(Zimbardo, 1975)、 ご み が 散 乱 し て い る 場 所 で は 新 た に 来 た 人 が や は り 無 秩 序 に ご み を 投 棄 し た り(Reno, Cialdini, & Kallgren, 1993)す る こ と が 起 き る 。 こ れ ら の 場 面 で は 、 役 割 や 規 範 が 共 有 さ れ る こ と に よ っ て 社 会 的 現 実 と な り 、 行 動 へ の 影 響 を 与 え る の で あ る 。 さ ら に 、 以 上 の よ う に 状 況 や 環 境 か ら 付 与 さ れ る 行 動 モ デ ル が 、 集 団 規 範 に よ っ て 内 在 化 さ れ る こ と に よ っ て 行 動 や 態 度 を 規 定 す る 過 程 が 実 証 さ れ て い る 。 た と え ば 、 所 属 集 団 に お い て 個 人 主 義 的 行 動 が 価 値 の あ る こ と と し て 意 識 づ け ら れ た 人 は 、 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ を 高 め る こ と を 動 機 づ け ら れ た 場 合 に 、 個 人 主 義 的 行 動 傾 向 を 示 す よ う に な っ た り(Jetten, Postmes, & McAulffe, 2002)、 他 の 成 員 へ の 評 価 に お い て も 個 人 主 義 的 行 動 に 対 し て ポ ジ テ ィ ブ に な っ た り す る の で あ る (Hornsey, Jetten, McAuliffe, & Hogg, 2006; McAuliffe, Jetten, Hornsey, &
Hogg, 2003)。
こ の よ う に 規 範 的 影 響 は 、 集 団 が 支 え る 社 会 的 現 実 と し て 成 員 の 行 動 や 態 度 を 規 定 す る 。 す な わ ち 、 そ の 内 容 が 複 数 の 他 者 に よ っ て 共 有 さ れ て い る と い う 認 知 が 、 社 会 的 現 実 と し て 行 動 に 対 す る 規 範 的 影 響 力 を 生 む の で あ る 。 成 員 間 の 共 有 感 覚 は 集 団 実 体 性 認 知 の 構 成 要 素 で あ る か ら 、 実 体 性 の 高 い 集 団 で は 、 よ り 強 い 社 会 的 現 実 の 認 知 が な さ れ る も の と 考 え ら れ る 。
1-3-4. 安 心 感 と 集 団 内 関 係 性 認 知
集 団 の 形 成 と 安 心 感 と の 関 連 は 、 生 物 進 化 の 理 論 で 説 明 さ れ る 。 他 の 動 物 に よ る 捕 食 か ら 気 候 や 災 害 、 あ る い は 出 産 や 保 育 、 狩 猟 採 集 や 農 耕 、 そ の 他 の 生 産 及 び 経 済 活 動 な ど 、 あ ら ゆ る 課 題 に 人 類 は 集 団 で 対 処 す る こ と で 個 体 の 生 存 確 率 を 高 め た と 考 え ら れ る 。 そ う し た 進 化 と 適 応 の 歴 史 か ら 、 人 は 集 団 状 況 に お い て 単 独 状 況 よ り も 安 心 感 を お ぼ え る 心 理 的 特 性 が 備 え ら れ た 、 と い う 考 え が 基 本 的 な 仮 説 と な る 。
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こ の よ う な 仮 説 を 基 に Park & Hinsz (2006)は 、 行 動 制 御 の 接 近 / 回 避 の 2 つ の 動 機 づ け シ ス テ ム 仮 説(Gray, 1972)を 取 り 入 れ た 議 論 を 展 開 し て い る 。 そ こ で は 、 人 は 集 団 を 形 成 す る こ と に よ っ て あ る 行 動 の 報 酬 や 成 功 の 可 能 性 と い っ た ポ ジ テ ィ ブ な 側 面 の 認 知 が 活 性 化 し 、 そ の 帰 結 を 志 向 す る 行 動 を 増 加 さ せ た り 、反 対 に 損 失 や 失 敗 の 可 能 性 と い っ た ネ ガ テ ィ ブ な 側 面 の 認 知 が 抑 制 さ れ 、 そ の 帰 結 を 回 避 す る 行 動 を 減 少 さ せ た り す る こ と が 動 機 づ け ら れ る 、 と い っ た 予 測 が 示 さ れ た 。 ま た Houghton, Simon, Aquino, Goldberg, & Goldberg (2000)は 、 ビ ジ ネ ス ス ク ー ル の 学 生 に 経 営 判 断 を 模 し た 課 題 を 与 え 、 チ ー ム 討 議 後 の 意 思 決 定 と 単 独 で の 意 思 決 定 と を 分 析 し た 。 そ の 結 果 、 リ ス ク 認 知 に 対 す る バ イ ア ス の 起 こ し や す さ の 心 理 的 特 性 と リ ス ク 認 知 と の 関 連 が 、 単 独 条 件 よ り も チ ー ム 討 議 条 件 に お い て 強 く な る こ と を 示 し た 。 す な わ ち 、 コ ン ト ロ ー ル 幻 想 を 持 ち や す い 人 ほ ど 経 営 判 断 の リ ス ク を 低 く 認 知 す る と い う 相 関 が 、 チ ー ム 討 議 条 件 に お い て よ り 強 く 示 さ れ た の で あ る 。 さ ら に Yamaguchi (1998) は 、 集 団 状 況 に お い て リ ス ク 評 価 が 低 く 見 積 も ら れ る 効 果 が 、 集 団 の 規 模 が 小 さ い 場 合 (2 名 か ら 10 名 程 度 ) の み な ら ず 大 集 団 (100 名 か ら 10 万 人 ) 状 況 に お い て も み ら れ る こ と を 明 ら か に し て い る 。 こ れ ら の 議 論 や 知 見 か ら は 、 人 が 集 団 を 形 成 す る 、 あ る い は 集 団 に 所 属 す る こ と に よ っ て 安 心 感 を 得 る こ と が で き 、 そ の 感 情 状 態 は リ ス ク 認 知 に バ イ ア ス を も た ら す と い う 過 程 が 読 み 取 れ る 。 リ ス ク 認 知 と 感 情 状 態 と の 相 互 関 係 は 一 義 的 と は い え な い も の の(e. g., Loewenstein, Weber, Hsee, Christopher, & Welch, 2001)、 集 団 で あ る か 単 独 で あ る か と い っ た 条 件 に よ っ て 影 響 を う け る と い う 点 に お い て 共 通 し た 性 質 を も つ も の と 考 え ら れ る 。
述 べ る ま で も な く 、 集 団 が 安 心 感 に 寄 与 す る 効 果 は 、 本 節 第 1 項 で 議 論 し た 所 属 欲 求 の 充 足 と 深 く 関 連 し て い る 。そ の 観 点 か ら は Castano (2004)が 、Sa cchi
& Casta no (20 02)を 引 用 し て 、内 集 団 実 体 性 が 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ と 安 心 感 と に 対 し て 正 の 相 関 を も つ こ と を 示 し て い る 。 人 が 他 者 と の 社 会 的 結 び つ き を も ち 、 集 団 を 形 成 し よ う と す る 欲 求 を 備 え て い る の は 、 そ れ が 個 体 ( 個 人 ) の 生 存 と 種 の 存 続 に 有 利 で あ っ た か ら と い う の が 所 属 欲 求 仮 説 の 基 本 的 な 考 え 方 で あ る 。 内 集 団 実 体 性 と 集 団 ア イ デ ン テ ィ テ ィ 、 安 心 感 と の 相 関 関 係 も 、 同 様 の 進 化 論 的 解 釈 に 基 づ く 。 つ ま り 、 所 属 集 団 の 実 体 性 が 低 い よ り も 高 い ほ う が 適