高強度銅 Cu-Sn-P の動的再結晶挙動に 関する研究
渡 辺 雅 人
電気通信大学大学院 電気通信学研究科 博士(工学)の学位申請論文
2012年3月
高強度銅 Cu-Sn-P の動的再結晶挙動に 関する研究
博士論文審査委員会
主査 准教授 三浦 博己
委員 准教授 久保木 孝
委員 教授 石川 晴雄
委員 教授 村田 眞
委員 准教授 森重 功一
著作権所有者
渡辺 雅人
2012年3月
A Study on Dynamic Recrystallization Behavior in a Cu-Sn-P High Strength Copper
Masato Watanabe Abstract
Dynamic recrystallization(DRX) behavior in a newly developed Cu-Sn-P alloy was systematically investigated for better formability during hot extrusion process and further strengthening which can be included by grain refinement.
For this purpose, as-cast Cu-Sn-P alloy composed of coarse columnar grains, orientation controlled Cu-Sn-P alloy bicrystals with orientation to the columnar structure, and fine grained Cu-Sn-P alloys with different content of Sn were deformed in hot compression. The bicrystals are the ideal model samples of the columnar structured as cast alloy.
The occurrence of DRX in Cu-Sn-P alloy was much delayed compared with conventional Cu-P alloy because of Sn addition. Therefore relatively high flow stresses are necessary to extrude Cu-Sn-P alloy for the production processes. Furthermore the evolved microstructure formed at the high strain rate during the actual process in the factory line appeared to be quite
inhomogeneous due to delay of DRX.
Nucleation of new DRX grains tended to appear more preferentially at grain boundary by grain boundary serration especially at low strain rate compression, while the nucleation of new grains took place frequently in the matrices by the formation of deformation and/or shear bands when strain rate was high enough. In an actual process of the factory, however, it seemed that the microstructure was randomized, equiaxed and refined one due to
subsequent occurrence of static recrystallization after extrusion.
The obtained microstructure became finer with increasing Sn content.
However inhomogeneous microstructure still remained because extensive occurrence of DRX was much impeded. It revealed, however, that effect of Sn addition saturated over 0.3mass%. Therefore 0.65mass% Sn content which is employed for the mass production Cu-Sn-P alloy in the factory might be reconsidered for the microstructural control and cost save.
The most operative mechanism of DRX in Cu-Sn-P alloy was similar to
that in Cu or the other Cu alloys. That is formation of annealing twin during grain boundary serration and migration. Thus the most important DRX mechanism in Cu-Sn-P alloy is concluded as discontinuous type.
高強度銅
Cu-Sn-Pの 動的再結晶挙動に関する研究 渡辺 雅人
概要
本 論 文 で は 、 新 し く 開 発 さ れ た 高 強 度 銅 Cu-Sn-P の 製 管 や 組 織 制 御 に 必 要 な 熱 間 押 出 加 工 時 の 変 形 挙 動 や 強 度 上 昇 の た め の 組 織 制 御 と 結 晶 粒 微 細 化 な ど の 基 礎 的 知 見 を 得 る こ と を 目 的 と し た 。
材 料 と し て 、ま ず 工 場 の 生 産 現 場 で 使 わ れ て い る 粗 大 粒 で あ る 鋳 造 材 を 、 次 に 鋳 造 材 の 柱 状 晶 を 模 擬 し た 双 結 晶 材 を 、 更 に Sn 添 加 量 を 変 量 し た 微 細 粒 多 結 晶 材 を 、そ れ ぞ れ 熱 間 圧 縮 し て 、動 的 再 結 晶 の 挙 動 を 調 査 し た 。
従 来 材 の り ん 脱 酸 銅 管 Cu-P に 比 べ て 高 強 度 銅 管 Cu-Sn-P は 、Sn の 固 溶 の 影 響 に よ っ て 動 的 再 結 晶 の 発 現 が 遅 延 す る た め 、熱 間 変 形 時 に 高 い 応 力 が 必 要 と な る こ と が わ か っ た 。ま た 、実 機 の 押 出 条 件 に 近 い 真 ひ ず み 速 度 έ=2.0×10-1s-1で は 組 織 は 微 細 化 す る も の の 、動 的 再 結 晶 の 発 現 が 遅 れ る た め 未 再 結 晶 域 が 残 り 不 均 一 な 組 織 に な る こ と が わ か っ た 。 動 的 再 結 晶 粒 の 生 成 に お い て 、低 ひ ず み 速 度 域 で は 粒 界 の セ レ ー シ ョ ン に と も な う 粒 界 上 で の 優 先 的 な 核 生 成 が 支 配 的 で あ り 、高 ひ ず み 速 度 域 で は 粒 界 で の 核 生 成 に 加 え て 、す べ り 帯 、せ ん 断 帯 形 成 に よ り 粒 内 も 動 的 再 結 晶 粒 の 発 現 ポ イ ン ト と な る こ と が わ か っ た 。更 に は 、実 生 産 の 押 出 条 件 に 近 い 温 度 1153K、真 ひ ず み 速 度 έ=2.0×10-1s-1で は 、高 速・高 温 変 形 中 の 組 織 の ラ ン ダ ム 化 と 、そ の 後 の 冷 却 過 程 で の 静 的 再 結 晶 の 発 現 に よ る 組 織 の 均 一 化 と 微 細 化 が 起 き る こ と が 示 さ れ た 。
Sn 添 加 に よ っ て 動 的 再 結 晶 粒 の 微 細 化 が 可 能 で あ る が 、 高 い Sn 添 加 量 に よ り 動 的 再 結 晶 の 発 現 の 著 し い 遅 延 に よ っ て 、未 再 結 晶 域 が 残 る 不 均 一 組 織 に な る リ ス ク が あ る こ と や 、本 研 究 の 範 囲 で は 1073K 以 上 の 高 温 域 で の Sn の 固 溶 強 化 は 0.3mass%で 飽 和 し て い る こ と が 判 明 し た こ と か ら 、Cu-0.65mass%Sn-0.020mass%P で あ る 現 行 の 高 強 度 銅 管 に お け る 結 晶 粒 微 細 化 に お い て の Sn 量 の 最 適 化 の 必 要 性 が 示 唆 さ れ た 。
Cu-Sn-P 合 金 の 動 的 再 結 晶 の メ カ ニ ズ ム は 、一 般 的 な Cu 及 び Cu 合 金 の そ れ と ほ ぼ 同 じ で 、高 温 変 形 下 で 粒 界 の セ レ ー シ ョ ン に 引 き 続 い て 誘 起 さ れ る 焼 鈍 双 晶 の 発 現 に よ っ て 支 配 さ れ た 、不 連 続 動 的 再 結 晶 型 で あ る と 判 断 さ れ た 。
List of abbreviation
CA: Compression Axis
DRX: Dynamic Recrystallization GBM: Grain Boundary Migration GBS: Grain Boundary Sliding IQ: Image Quality
OIM: Orientation Imaging Microscopy SFE: Stacking Fault Energy
List of symbols
D: Recrystallized grain size ε: True strain
έ: True strain rate εp: Peak true strain
Q: Activation energy for deformation R: Gas constant
σ: True stress σp: Peak true stress
σs: Steady state flow stress σss: Steady-state-like flow stress T: Temperature
Tm: Melting point
Z: Zener-Hollomon parameter
高強度銅
Cu-Sn-Pの動的再結晶挙動に関する研究 目次
第 1 章 序 論 ・・・・・ ・・ ・・・・・ ・・・・ ・・・・・ ・・・ ・ ・1 1.1 緒 言 ・・・ ・ ・・ ・・ ・・ ・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・ ・・ ・・ ・・ ・1 1.1.1 銅 管 業 界 を 取 り 巻 く 環 境 と 高 強 度 銅 管 用 合 金 開 発 の 背 景 ・・1 1.1.2 高 強 度 銅 管 と は ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・2 1.2 本 研 究 の 目 的 ・・・・ ・・・ ・・ ・・・・ ・・・ ・・ ・・・・ ・3 1.3 本 論 文 の 構 成 ・・・・ ・・・ ・・ ・・・・ ・・・ ・・ ・・・・ ・4 参 考 文 献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・5
第 2 章 動 的 再 結 晶 メ カ ニ ズ ム の 理 論・・・・・・・・・・・・・・・9 2.1 再 結 晶 の 分 類 ・・・・ ・・・ ・・ ・・・・ ・・・ ・・ ・・・・ ・9 2.2 変 形 に よ る 動 的 再 結 晶 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・10 2.3 応 力 - ひ ず み 曲 線 ・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・ ・・・・・10 2.4 動 的 再 結 晶 粒 組 織 ・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・ ・・・・・12 2.5 動 的 再 結 晶 後 の 静 的 復 旧 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・13 参 考 文 献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・15
第 3 章 粗 大 粒 材 の 動 的 再 結 晶 挙 動 ・・・・・・・・・・・・・・・25 3.1 緒 言 ・・ ・・ ・ ・・ ・・ ・・ ・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・ ・・ ・・ ・・25 3.2 実 験 方 法 ・・ ・・・ ・・ ・・ ・・ ・・・ ・・ ・・ ・・ ・・・ ・・26 3.3 実 験 結 果 及 び 考 察 ・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・ ・・・・・27 3.3.1 応 力 ‐ ひ ず み 曲 線 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・27 3.3.2 粗 大 粒 材 の 高 温 変 形 組 織 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・29 3.3.3 高 温 変 形 後 の 静 的 再 結 晶 組 織 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・29 3.4 小 括 ・・ ・・ ・ ・・ ・・ ・・ ・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・ ・・ ・・ ・・30 参 考 文 献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・31
第 4 章 双 結 晶 の 動 的 再 結 晶 挙 動 調 査 に よ る 基 礎 研 究 ・・・・・・・43 4.1 緒 言 ・・ ・・ ・ ・・ ・・ ・・ ・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・ ・・ ・・ ・・43 4.2 実 験 方 法 ・・ ・・・ ・・ ・・ ・・ ・・・ ・・ ・・ ・・ ・・・ ・・43 4.3 実 験 結 果 及 び 考 察 ・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・ ・・・・・44 4.3.1 応 力 ‐ ひ ず み 曲 線 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・44
4.3.2 双 結 晶 の 動 的 再 結 晶 組 織 の 観 察 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・45 4.3.3 双 結 晶 の 動 的 再 結 晶 粒 の 母 結 晶 と の 方 位 差 の 解 析・・・・・46 4.3.4 粗 大 粒 材 と 双 結 晶 の 動 的 再 結 晶 挙 動 比 較 と 考 察 ・・・・・・47 4.4 小 括 ・・ ・・ ・ ・・ ・・ ・・ ・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・ ・・ ・・ ・・48 参 考 文 献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・50
第 5 章 微 細 粒 材 の 動 的 再 結 晶 挙 動 に 及 ぼ す Sn 添 加 量 の 影 響・・・・61 5.1 緒 言 ・・ ・・ ・ ・・ ・・ ・・ ・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・ ・・ ・・ ・・61 5.2 実 験 方 法 ・・ ・・・ ・・ ・・ ・・ ・・・ ・・ ・・ ・・ ・・・ ・・61 5.3 実 験 結 果 及 び 考 察 ・・・・・・・ ・・・・・・・・ ・ ・・・・・62 5.3.1 ひ ず み 量 、 ひ ず み 速 度 の 影 響 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・62 5.3.2 圧 縮 温 度 の 影 響 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・64
5.3.2.1 高 ひ ず み 速 度 域 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・65
5.3.2.2 低 ひ ず み 速 度 域 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・65
5.3.3 圧 縮 温 度 と ピ ー ク 応 力 及 び 動 的 再 結 晶 粒 径 の 関 係・・・・・66 5.3.4 高 温 変 形 挙 動 に 及 ぼ す Sn 添 加 量 の 影 響 ・・・・・・・・・67 5.3.5 高 温 変 形 の た め の 見 掛 け の 活 性 化 エ ネ ル ギ ー ・・・・ ・・・69 5.3.6 Zener-Hollomon パ ラ メ ー タ ー と 動 的 再 結 晶 粒 径 の 関 係・・・70 5.4 小 括 ・・ ・・ ・ ・・ ・・ ・・ ・ ・・ ・・ ・・ ・・ ・ ・・ ・・ ・・71 参 考 文 献 ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・ ・72 第 6 章 総 括 ・・・・・・・ ・・・・・・・ ・・ ・・・・・・・ ・・106 謝 辞 ・・・・・・・ ・・・・・・・ ・・ ・・・・・・・ ・・109 関 連 論 文 の 印 刷 公 表 の 方 法 及 び 時 期・・・・・・・・・・・110 著 者 略 歴 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・111
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第1章 序論
1 . 1 緒 言
1 . 1 . 1 銅 管 業 界 を 取 り 巻 く 環 境 と 高 強 度 銅 管 用 合 金 開 発 の 背 景 家 庭 用 エ ア コ ン や 冷 凍 機 、ヒ ー ト ポ ン プ 式 給 湯 器 の 熱 交 換 器 や 配 管 に は 、 世 界 的 に り ん 脱 酸 銅 管 (JISH3300 C1220T) が 広 く 使 わ れ て い る 。 熱 交 換 器 や 配 管 用 の 材 料 と し て 求 め ら れ る 要 求 特 性 と し て は 、下 記 の 項 目 が あ げ ら れ る 。
(1) 強 度 が 高 い こ と (2) 加 工 性 が よ い こ と (3) 熱 伝 導 性 が 高 い こ と (4) ろ う 付 け 性 が よ い こ と (5) 疲 労 強 度 が 高 い こ と (6) 耐 食 性 に 優 れ て い る こ と
こ れ ら の 要 求 特 性 を 実 用 レ ベ ル で バ ラ ン ス よ く 兼 ね 備 え 、満 足 し て い る 材 料 が り ん 脱 酸 銅 と 言 え る 。
し か し 、近 年 、冷 凍 空 調 業 界 で は 次 の よ う な 環 境 の 変 化 が 起 こ っ て い る 。
(1) フ ロ ン 規 制 に よ る 代 替 冷 媒 へ の 切 り 替 え
(2) 地 球 温 暖 化 防 止 規 制 に よ る 高 圧 冷 媒 CO2の 増 加 (3) 銅 価 の 高 騰
モ ン ト リ オ ー ル 議 定 書 な ど に よ る フ ロ ン 冷 媒 の 規 制 に よ っ て 、エ ア コ ン な ど 空 調 機 の 冷 媒 が 従 来 の R-22 か ら 代 替 フ ロ ン で あ る R410A に 替 わ っ た[1,2]。冷 媒 の 圧 力 は 凝 縮 側 で 2.8MPa か ら 4.2MPaへ 50% 高 く な り 、 高 い 圧 力 に 耐 え る た め 銅 管 の 厚 肉 化 が 必 要 と な っ た[3,4]。
ま た 、京 都 議 定 書 な ど に 代 表 さ れ る 地 球 規 模 で の 環 境 問 題 の 高 ま り に よ っ て 、 自 然 冷 媒 が 注 目 さ れ る と こ ろ と な っ て お り 、CO2 を 冷 媒 と し た ヒ ー ト ポ ン プ 式 給 湯 機「 エ コ キ ュ ー ト 」が 2001 年 に 市 場 に 投 入 さ れ た[5]。
経 済 産 業 省 の 後 押 し や オ ー ル 電 化 住 宅 の 伸 長 に よ り 市 場 が 急 拡 大 し て お り 、新 た な 銅 管 の 需 要 先 と し て 大 い に 期 待 し て い る と こ ろ で あ る 。一 方 で 、CO2冷 媒 も ガ ス ク ー ラ ー 側 で 冷 媒 の 圧 力 が 14MPa と R410A よ り も 更 に 3.3 倍 も 高 く な っ て お り[6]、耐 圧 性 能 を 満 足 す る た め に は 非 常 に 肉 厚 の 厚 い 銅 管 が 機 器 に 必 要 と な る と い う 課 題 が あ る 。
2
加 え て 、近 年 中 国 経 済 の 伸 長 な ど か ら 金 属 価 格 、特 に 銅 価 が 高 騰 し て い る 。2003 年 の 銅 価 の 平 均 値 が 約 250 円/kg で あ っ た も の が 、2004 年 く ら い か ら 徐 々 に 上 昇 を は じ め 、2006 年 を 過 ぎ て 急 騰 、 瞬 間 的 に 1000 円 /kg を 超 え る 状 態 と な っ て い る 。2008 年 の リ ー マ ン シ ョ ッ ク で 一 時 は 急 落 し た も の の 、最 近 ま た700~800 円/kg と 高 値 安 定 の 状 態 が 続 い て い る 。
銅 材 料 の 高 騰 は 、従 来 銅 管 が 使 わ れ て い る 機 器 の 代 替 材 料 化 、特 に 熱 交 換 器 の 場 合 に は ア ル ミ 化 の 動 き に つ な が り 、伸 銅 業 界 で は 強 く 懸 念 さ れ て い る 。カ ー エ ア コ ン の 熱 交 換 器 は 現 在 ほ と ん ど が ア ル ミ に 置 き 換 わ っ て い る が 、家 庭 用 ル ー ム エ ア コ ン な ど の 熱 交 換 器 は 依 然 と し て 銅 が 使 わ れ て お り 、伸 銅 メ ー カ ー と し て は 銅 管 の 需 要 を 何 と し て も 死 守 し た い と こ ろ で も あ る 。
1 . 1 . 2 高 強 度 銅 管 と は[7]
上 述 の よ う な 環 境 の 中 で 、従 来 の り ん 脱 酸 銅 管 の 高 強 度 化 が 市 場 か ら 要 望 さ れ る に 至 っ た 。 管 を 高 強 度 化 す る こ と に よ り 、 作 動 圧 力 の 高 い R410A や CO2の 代 替 冷 媒 、自 然 冷 媒 採 用 に よ る 厚 肉 化 を 防 ぎ 、更 に 薄 肉 化 を 図 る こ と に よ っ て 、銅 量 を 削 減 し て コ ス ト ダ ウ ン を 実 現 し て い こ う と い う も の で あ る 。
こ の よ う な 背 景 の も と に 高 強 度 銅 管 は 開 発 さ れ た 。材 料 の 高 強 度 化 に は 金 属 学 的 に い く つ か の 手 法 が あ る[8]。
(1) 加 工 硬 化 (2) 結 晶 粒 微 細 化 (3) 固 溶 強 化 (4) 析 出 硬 化
そ れ ぞ れ の 詳 細 は こ こ で は 述 べ な い が 、実 際 に は い く つ か の 手 段 を 複 合 的 に 用 い て 強 度 ア ッ プ さ れ る 場 合 も 多 い 。
現 在 、日 本 市 場 に 供 さ れ て い る 高 強 度 銅 管 は Table 1-1[9]に 示 す よ う に 3 つ あ り 、そ れ ぞ れMA5J®[10]、HRS35LT®[11]そ れ にKHRT®[12]で あ る 。 い ず れ も 従 来 の り ん 脱 酸 銅 を ベ ー ス に 、Co や Sn な ど を 添 加 し た も の で あ る 。MA5J、HRS35LT は Co 添 加 に よ り Co2P に よ る 析 出 硬 化 に よ っ て 強 度 ア ッ プ し て い る 。 ま た KHRT は Sn に よ る 固 溶 強 化 に よ っ て 、 高 強 度 ・ 耐 熱 性 が 付 与 さ れ た 高 強 度 銅 管 で あ る 。
Fig.1-1 に 3 種 の 高 強 度 銅 管 の 強 度 の 一 例 を 示 す 。高 強 度 銅 管 の 種 類 に よ っ て も 異 な る が 、そ れ ぞ れ の 高 強 度 銅 管 の 強 度 は 、従 来 材 の り ん 脱 酸 銅 C1220 比 で 、引 張 強 さ で 10~25%ア ッ プ 、耐 力 値 で 100~270%向 上 し て い る 。
3
い ず れ も 合 金 化 に よ る 強 度 ア ッ プ で あ る が 、従 来 の 黄 銅 や 復 水 器 白 銅 の よ う に Znや Niな ど の 添 加 元 素 が 数 十 % 含 ま れ て い る 高 合 金 で は な く 、 添 加 元 素 を 総 量 で も 1%未 満 に 抑 え て い る 低 合 金 管 で あ る こ と が 大 き な 特 徴 で あ る 。強 度 面 だ け を 考 え た 場 合 に は 、一 般 に は 添 加 元 素 量 の 多 い 高 合 金 の 方 が 有 利 で は あ る が 、硬 過 ぎ て 生 産 性 や 加 工 性 の 面 で 難 が あ る 。 高 強 度 銅 管 は 、銅 管 メ ー カ ー の ラ イ ン で 生 産 が で き 、か つ 従 来 の エ ア コ ン メ ー カ ー の 組 み 立 て ラ イ ン で 使 用 が 可 能 で あ り 、材 料 を 従 来 の り ん 脱 酸 銅 管 か ら な ん ら 投 資 を 必 要 と せ ず に 高 強 度 銅 管 に 切 り 替 え る こ と が 可 能 と な っ て い る 。
産 業 界 か ら の 強 い 要 請 も あ っ て 、 い ず れ の 高 強 度 銅 管 も 2009 年 7 月 に JIS H3300「 銅 及 び 銅 合 金 の 継 目 無 管 」 に 新 た に 「 高 強 度 銅 」 と い う 名 称 で 登 録 さ れ 、 そ れ ぞ れ 、C1565、C1862 そ れ に C5010 と な っ た 。 更 に は 、高 圧 ガ ス 保 安 法 冷 凍 保 安 規 則 関 係 例 示 基 準 へ の 登 録 作 業 も 行 っ て お り 、ビ ル 用 の パ ッ ケ ー ジ エ ア コ ン な ど 大 型 の 機 器 で の 使 用 も 可 能 な 環 境 を 整 え つ つ あ る 。
1 . 2 本 研 究 の 目 的
銅 管 の 製 造 工 程 を Fig.1-2 に 示 す 。 組 織 制 御 に 重 要 な 工 程 の 一 つ と し て 熱 間 押 出 が あ げ ら れ る 。高 強 度 銅 管 は い ず れ も 従 来 材 の 純 銅 系 の り ん 脱 酸 銅 に 添 加 元 素 を 加 え て い る た め 変 形 抵 抗 が 上 昇 し て い る 。い わ ゆ る 押 出 し づ ら く な っ て お り 、生 産 性 の 低 下 を 招 く 懸 念 が あ る 。ま た 熱 間 押 出 時 の 条 件 と 組 織 が 、そ の 後 の 結 晶 粒 微 細 化 に 大 き く 影 響 す る こ と は よ く 知 ら れ て い る[13,14]。
と こ ろ が 高 強 度 銅 管 は 、銅 管 用 と し て は 新 し い 材 質 で あ る た め 、製 管 や 組 織 制 御 に 必 要 な 、
(1) 熱 間 押 出 加 工 時 の 変 形 挙 動 (2) 製 品 と し て 必 要 な 塑 性 加 工 性
(3) 強 度 上 昇 の た め の 組 織 制 御 に よ る 結 晶 粒 微 細 化 な ど に 関 す る 基 礎 的 知 見 が 少 な い 。
そ こ で 3 種 類 あ る 高 強 度 銅 管 の 中 で 添 加 元 素 の 種 類 が 少 な く 、か つ 生 産 現 場 的 に 熱 間 変 形 抵 抗 が 高 く 一 番 押 出 し づ ら い 、Cu-Sn-P の 固 溶 強 化 型 高 強 度 銅 管 KHRT を 研 究 対 象 材 料 と し て 選 択 し た 。そ し て 材 料 の 動 的 再 結 晶 挙 動 の 研 究 を 通 し て 、 上 記(1)~(3)の 詳 細 で 系 統 的 な 知 見 を 得 て 、 工 業 的 に 社 会 で 活 用 し て い く こ と を 本 研 究 の 目 的 と す る 。
4 1 . 3 本 論 文 の 構 成
本 論 文 は 全 6 章 か ら 構 成 さ れ て い る 。 各 章 の 概 要 は 次 の 通 り で あ る 。 第 1 章 は 序 論 で あ り 、本 研 究 の 材 料 で あ る 高 強 度 銅 管 の 説 明 や 本 研 究 の 背 景 と 目 的 を 述 べ る 。
第 2 章 で は 、本 研 究 の 主 題 で あ る 動 的 再 結 晶 に つ い て 国 内 外 の 過 去 の 研 究 内 容 と 理 論 に つ い て 述 べ る 。
第 3 章 で は 、実 際 の 生 産 現 場 で の 熱 間 押 出 中 の 組 織 変 化 を 検 証 す る た め 、粗 大 粒 で あ る 押 出 工 程 前 の 粗 大 柱 状 晶 か ら な る 鋳 造 ビ レ ッ ト の 動 的 再 結 晶 挙 動 に つ い て 報 告 す る 。 従 来 材 の Cu-P 合 金 と 高 強 度 銅 管 で あ る Cu-Sn-P 合 金 の 熱 間 圧 縮 試 験 を 通 し て 、 変 形 挙 動 と 動 的 再 結 晶 挙 動 の 違 い に つ い て 、 比 較 検 討 を 行 う 。
第 4 章 で は 、第 3 章 で 用 い た 粗 大 粒 材 を 模 擬 し て 作 製 し た 方 位 制 御 双 結 晶 に よ り 、 動 的 再 結 晶 の メ カ ニ ズ ム に つ い て 更 に 詳 細 に 検 討 を 行 う 。 粒 界 方 位 差 を 変 え た 双 結 晶 を 使 い 、 粒 界 法 線 方 向 に 熱 間 圧 縮 を 行 っ て 、 核 形 成 サ イ ト と し て 極 め て 重 要 な 粒 界 及 び 粒 界 近 傍 で の 変 形 微 組 織 、粒 界 す べ り と 動 的 再 結 晶 粒 と の 相 関 、 結 晶 回 転 な ど に つ い て 考 察 す る 。 第 5 章 で は 、Sn の 動 的 再 結 晶 に 及 ぼ す 影 響 な ど を 調 べ る た め 、Sn を 変 量 し た 微 細 粒 多 結 晶 材 に 対 し て 、温 度 、ひ ず み 速 度 を 変 え た 熱 間 圧 縮 試 験 を 行 い 、動 的 再 結 晶 挙 動 に つ い て 更 に 系 統 的 に 検 討 を 行 う 。高 温 変 形 の た め の 活 性 化 エ ネ ル ギ ー や Zener-Hollomon パ ラ メ ー タ ー と 動 的 再 結 晶 組 織 の 関 係 な ど に つ い て 報 告 す る 。
最 後 、 第 6 章 で は 本 論 文 の 総 括 を 行 い 、Cu-Sn-P 合 金 の 動 的 再 結 晶 挙 動 に つ い て 結 論 付 け る 。
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< 参 考 文 献 >
[1] 高 市 侃: 冷 凍, 72(1997)8-16.
[2] 勝 山 潔: 冷 凍, 82(2007)11-16.
[3] 中 山 雅 弘, 隅 田 嘉 裕, 谷 村 佳 昭: 冷 凍, 72(1997)60-64.
[4] 矢 嶋 龍 三 郎: 冷 凍, 72(1997)65-71.
[5] 榊 原 久 介: 冷 凍, 79(2004)3-7.
[6] 里 和 哉, 松 本 謙 三, 山 崎 晴 久: 冷 凍, 77(2002)3-7.
[7] 渡 辺 雅 人 , 細 木 哲 郎 , 白 井 崇 , 石 橋 明 彦 : 神 戸 製 鋼 技 報 , 58(2008)74-77.
[8] 山 根 寿 己: 伸 銅 技 術 研 究 会 誌, 29(1990)12-17.
[9] 日 本 工 業 規 格:JISH3300, 日 本 規 格 協 会, (2009)
[10] 須 藤 雄 一 郎, 矢 島 健 児, 小 川 弘 晴, 渋 谷 亮 二, 山 道 哲 雄: 伸 銅 技 術 研 究 会 誌, 39(2000)113-120.
[11] 田 中 真 次, 安 田 健 一, 外 薗 孝, 大 石 恵 一 郎: 伸 銅 技 術 研 究 会 誌, 39(2000)143-149.
[12] 白 井 崇, 佐 伯 主 税: 銅 と 銅 合 金, 43(2004)302-306.
[13] H.J. McQUEEN and J.J. JONAS: Treatise on Materials Science and Technology, ed. by R.J. Arsenault, Academic Press, (1075)393-493.
[14] F.J. Humphreys and M. Hatherly: RECRYSTALLIZATION and Related Annealing Phenomena, Second Edition, ELSEVIER, (2004)1.
6
Table 1-1 Chemi cal co mpositions of the alloys for high strength copper tubes [9].
Material Che mical co mposition ( mass%)
P Co Sn Zn Ni Cu
C1220 0.015-0.040 - - - - 99.90min
C1565 (MA5J) 0.020-0.040 0.040-0.055 - - - 99.90min
C1862 (HRS35LT) 0.046-0.062 0.16-0.21 0.07-0.12 0.02-0.10 0.02-0.06 99.40min
C5010 (KHRT) 0.015-0.040 - 0.58-0.72 - 99.20min
7
Fig.1-1 Strength of high strength copper tube, (a) tensile strength and (b) yield strength [7].
(a)
(b)
8
Fig.1-2 Production process of copper tube. The re d dotted area indicates the hot extrusion process.
9
第2章
動的再結晶メカニズムの理論
2 . 1 再 結 晶 の 分 類
再 結 晶 と は 、塑 性 変 形 な ど を 受 け た 転 位 な ど の 格 子 欠 陥 を 多 く 含 ん だ 結 晶 が 、 転 位 密 度 と ひ ず み エ ネ ル ギ ー の 減 少 を 駆 動 力 に 、「 再 結 晶 粒 」 と 呼 ば れ る 転 位 と ひ ず み エ ネ ル ギ ー を ほ と ん ど 含 ま な い 熱 力 学 的 に 安 定 な 新 た な 結 晶 粒 を 形 成 す る 現 象 を い う 。
再 結 晶 は 、大 き く 静 的 再 結 晶 と 動 的 再 結 晶 に 分 け ら れ る 。静 的 再 結 晶 は 、冷 間 加 工 後 に 温 度 を 上 げ る こ と に よ っ て 、転 位 密 度 と ひ ず み エ ネ ル ギ ー の 減 少 を 駆 動 力 と し て 起 こ る 現 象 で あ る 。冷 間 加 工 さ れ た 金 属 を 加 熱 し た 時 、「 再 結 晶 核 」 と 呼 ば れ る 微 小 領 域 が 生 成 し て 、 引 き 続 い て そ の 核 の 境 界 の 移 動 、す な わ ち 粒 成 長 が 起 こ っ て 、全 域 が 新 粒 組 織 に 置 き 換 わ る も の で あ る[1-3]。高 角 粒 界 の 移 動 を と も な わ な い 復 旧 現 象 は 静 的 回 復 と 呼 ば れ 区 別 さ れ て い る 。
静 的 再 結 晶 は 更 に 、1 次 再 結 晶 、2 次 再 結 晶 、場 合 に よ っ て は 3 次 再 結 晶 に 区 別 さ れ る 。1 次 再 結 晶 は 、上 述 の 通 り 変 形 組 織 に お い て 転 位 と ひ ず み エ ネ ル ギ ー の 減 少 を 駆 動 力 と し て 引 き 起 こ さ れ る 。2 次 再 結 晶 は 1 次 再 結 晶 後 の 全 粒 界 の 面 積 、す な わ ち 粒 界 の 全 エ ネ ル ギ ー を 下 げ る た め に 結 晶 粒 が 粗 大 化 す る 現 象 で あ る 。更 に 、駆 動 力 は 粒 界 エ ネ ル ギ ー よ り も 小 さ い が 、表 面 エ ネ ル ギ ー の 減 少 を 駆 動 力 と す る 再 結 晶 を 、3 次 再 結 晶 と 呼 ぶ こ と が あ る[4]。
一 方 、動 的 再 結 晶 は 、高 温 域 で 材 料 を 変 形 さ せ た と き に 、転 位 密 度 の 上 昇 に よ り 加 工 硬 化 が 起 こ っ て 変 形 抵 抗 が 上 昇 し た 後 、変 形 中 に そ れ ら の エ ネ ル ギ ー の 減 少 を 駆 動 力 と し て 起 き る 再 結 晶 を い う 。そ の た め 、動 的 再 結 晶 粒 の 発 現 に よ り 転 位 や ひ ず み を 含 ま な い 新 粒 が 生 成 さ れ る と 、 加 工 軟 化 が 起 き る 特 徴 的 な 現 象 が 現 れ る 。加 工 硬 化 と 加 工 軟 化 の 関 係 に つ い て は 本 章 、2.3「 応 力-ひ ず み 曲 線 」 の 項 で 述 べ る[5,6]。
再 結 晶 は 、転 位 や ひ ず み が 蓄 積 さ れ た 変 形 組 織 中 に「 再 結 晶 核 」が 生 成 す る 現 象 と 、変 形 組 織 と 生 成 し た 核 の 境 界 が 成 長 し て い く 現 象 か ら な る 変 態 現 象 で あ り 、 変 形 組 織 中 に 発 現 す る 核 の 挙 動 で あ る 。 特 に 「 核 」 が 母 相 に 対 し て 大 き な 方 位 差 を 有 す る 場 合 、こ れ を 不 連 続 再 結 晶 と 呼 ぶ 。
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「 核 」が 発 現 し て 成 長 し て 新 粒 と な り 、そ の 新 粒 の ま わ り の 変 形 組 織 と の 境 界 、す な わ ち 結 晶 粒 界 が 、変 形 組 織 を 侵 食 し な が ら( 食 い な が ら )、
成 長 し て い く 。結 晶 方 位 差 が 大 き い 高 角 粒 界 ほ ど 、粒 界 の 移 動 速 度 は 大 き い 。こ の 過 程 は 、変 形 組 織 中 を 移 動 す る 粒 界 を 横 切 る 原 子 の 移 動 に よ っ て 起 き る 不 連 続 過 程 で あ る[1]。
一 方 、不 連 続 再 結 晶 に 必 須 な 高 角 粒 界 を 持 つ 核 生 成 と そ の 成 長 を 経 ず に 新 た な 結 晶 組 織 が 生 成 す る 現 象 を 、連 続 再 結 晶 と い う 。連 続 再 結 晶 で は 、加 工 組 織 内 の 転 位 を 回 復 さ せ る こ と に よ り 消 滅 さ せ な が ら 、下 部 組 織 中 に 新 た な 結 晶 粒 を 徐 々 に 生 成 さ せ る 。そ の た め 、新 粒 は 主 と し て 低 角 粒 界 に よ っ て 構 成 さ れ る 特 徴 を も つ 。
2 . 2 変 形 に よ る 動 的 再 結 晶
Fig.1-2 で 示 し た よ う に 、商 業 生 産 に お い て 銅 管 の 製 造 工 程 に は 、熱 間 押 出 工 程 や 冷 間 圧 延 工 程 が あ る 。McQueen と Jonas は Fig.2-1 に 示 す よ う に[7]、ひ ず み が 比 較 的 小 さ な 熱 間 圧 延 工 程 に お い て 、変 形 中 に 動 的 回 復 に よ っ て 結 晶 粒 の 軟 化 が 起 き 、積 層 欠 陥 エ ネ ル ギ ー の 高 い 金 属 に お い て は 、 冷 却 過 程 に お い て 静 的 回 復 が 起 き る 一 方 、 積 層 欠 陥 エ ネ ル ギ ー (Stacking fault energy, SFE)の 低 い 金 属 に お い て は 、 同 様 に 静 的 再 結 晶 が 起 き る と 述 べ て い る 。ま た 、押 出 の よ う に 高 ひ ず み 変 形 を と も な う 工 程 で は 、高 積 層 欠 陥 エ ネ ル ギ ー の 金 属 は 、動 的 回 復 に 引 き 続 い て 静 的 回 復 や 静 的 再 結 晶 が 起 き る 。一 方 、積 層 欠 陥 エ ネ ル ギ ー の 低 い 金 属 で は 、動 的 回 復 、動 的 再 結 晶 に 続 い て 静 的 回 復 、静 的 再 結 晶 が 起 き る こ と を 示 し た 。
酒 井 ら は 、 中 低 積 層 欠 陥 エ ネ ル ギ ー を 有 す る 多 く の 面 心 立 方 晶 金 属 ・ 合 金 で は 、0.5Tm(Tm は 融 点 ) 以 上 で の 高 温 変 形 中 に 新 粒 の 生 成 と 成 長 を と も な う( 不 連 続 )動 的 再 結 晶 が 生 じ や す い と 述 べ て い る 。一 方 、高 積 層 欠 陥 エ ネ ル ギ ー の 材 料 で は 動 的 回 復 が 速 や か に 働 い て 、転 位 組 織 の 再 配 列 に 続 い て サ ブ 結 晶 粒 組 織 が 既 存 の 結 晶 粒 内 に 生 じ や す く な り や す い と 報 告 し て い る[8-10]。 す な わ ち 、 連 続 再 結 晶 型 と な る こ と を 示 し て い る 。
2 . 3 応 力 - ひ ず み 曲 線
動 的 再 結 晶 に と も な っ て 現 れ る 典 型 的 な 応 力 - ひ ず み 曲 線 の 例 を Fig.2-2 に 示 す[11,12]。塑 性 変 形 に よ る ひ ず み の 増 加 と と も に 、転 位 密 度 の 増 加 や 変 形 帯 や せ ん 断 帯 の 発 生 な ど に よ る 加 工 硬 化 に よ っ て 、変 形 抵
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抗 が 増 大 し て 応 力 が 上 昇 し て い く 。そ の 後 、加 工 硬 化 は ピ ー ク を 迎 え( ピ ー ク 応 力 、 ピ ー ク ひ ず み )、 動 的 再 結 晶 の 発 現 に よ っ て ひ ず み の 解 放 が 起 こ り 、や が て 加 工 軟 化 が 起 き て 応 力 は 低 下 す る 。そ し て 、変 形 に よ る 加 工 硬 化 と 動 的 再 結 晶 に よ る 加 工 軟 化 が バ ラ ン ス し て 変 形 抵 抗 が 一 定 と な る 定 常 状 態 変 形 応 力 に 至 る と 言 わ れ て い る[5,6]。
高 温 変 形 特 性 に 及 ぼ す 温 度 と ひ ず み 速 度 の 影 響 を 解 析 す る 際 に 、一 般 的 に 温 度 補 償 ひ ず み 速 度(Zener-Hollomon パ ラ ー メ ー タ ー と も 言 わ れ る 、 以 下 Z 値 と い う ) が 用 い ら れ る[13]。
Z = έ・exp(Q/RT) (2-1) こ こ で 、έ は ひ ず み 速 度 、Q は 変 形 の た め の 見 掛 け の 活 性 化 エ ネ ル ギ ー 、R は ガ ス 定 数 、T は 温 度 で あ る 。
応 力 - ひ ず み 曲 線 は 、低 Z値 側 の 変 形 で は 多 重 ピ ー ク 型 、高 Z 値 域 に な る に し た が っ て 単 一 ピ ー ク 後 、滑 ら か に 加 工 軟 化 し て 変 形 応 力 が 一 定 と な る 定 常 状 態 変 形 を 示 す 形 と な る こ と が 報 告 さ れ て い る[11]。さ ら にZ 値 が 大 き く な る と 、加 工 硬 化 寄 与 が 大 と な り 、加 工 軟 化 は 現 れ な く な る 。
Sellars と Tegart は 高 温 加 工 下 に お け る 定 常 状 態 変 形 で は 、定 常 ク リ ー プ 変 形 の 場 合 と 同 じ よ う に 、 以 下 の 式 が 成 り 立 つ こ と を 報 告 し て い る [14]。
AF(σs) = Z = έ・exp(Q/RT) (2-2) こ こ で A は 定 数 、σsは 定 常 状 態 変 形 応 力 で 、F(σs)は 応 力 関 数 で あ り 、 低 応 力 変 形 領 域 で は F(σs) = σsn、 高 応 力 変 形 領 域 で は F(σs) = exp(βσs)で あ る 。Q の 値 に つ い て は 自 己 拡 散 の 活 性 化 エ ネ ル ギ ー に 等 し い と い う 報 告 や 、逆 に そ れ よ り も 大 き い と い う 報 告 が あ り 未 だ 不 明 な 点 が 多 い と さ れ て い る[15]。Q の 値 が 変 形 応 力 や 温 度 に 依 存 し な い と 仮 定 す る な ら ば 、 Z 値 と σsは(2-2)を 満 足 す る こ と に な る 。
高 ら は 、ひ ず み 速 度 と 定 常 状 態 変 形 応 力 の 関 係 が 、実 験 的 に ほ ぼ 直 線 に な る こ と を 示 し た 。 更 に 変 形 の 式 と し て 、
έ = C σsn exp (-Q/RT) (2-3) で ま と め ら れ る こ と を 報 告 し て い る[13](Fig.2-3)。(2-1)式 よ り 、Z 値 と
σs
が
直 線 関 係 と な り 、 銅 の 熱 間 変 形 で n の 値 は 約 7 と し て い る 。Luton と Sellars は 、 高 温 ね じ り 試 験 で の 力 学 的 挙 動 を Ni 及 び Ni-Fe 合 金 に つ い て 調 べ 、加 工 硬 化 と 加 工 軟 化 が 周 期 的 変 化 に な る 多 重 ピ ー ク 型 応 力 - ひ ず み 曲 線 か ら 、単 一 ピ ー ク 型 の 応 力 - ひ ず み 曲 線 を 示 す 連 続
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的 再 結 晶 挙 動 へ の 遷 移 は 、 再 結 晶 開 始 ひ ず み εc と 再 結 晶 終 了 ひ ず み εx
の 大 小 関 係 に よ っ て 理 解 で き る こ と を 示 し た[16]。 そ し て 次 式 で 示 さ れ る 臨 界 ひ ず み モ デ ル を 提 唱 し て い る 。
εc = εx (2-3) Fig.2-4 に 彼 ら の 応 力 ‐ ひ ず み 曲 線 の モ デ ル を 示 す が 、εc > εxの と き 再 結 晶 は 周 期 的 と な っ て 応 力 - ひ ず み 曲 線 は 多 重 ピ ー ク 型 と な り 、εc < εx
の と き 再 結 晶 は 連 続 的 に 起 こ っ て 応 力 - ひ ず み 曲 線 は 単 一 ピ ー ク 型 を と る と し た 。
2 . 4 動 的 再 結 晶 粒 組 織
高 温 加 工 中 の 組 織 変 化 に つ い て 、数 多 く の 研 究 が な さ れ て い る 。し か し 実 際 に は 、動 的 再 結 晶 に 引 き 続 い て 静 的 再 結 晶 が 起 き る た め 、動 的 再 結 晶 粒 の み を 判 別 す る こ と は 難 し い と 言 わ れ て い た 。 し か し な が ら が 、 実 験 技 術 の 進 歩 や 結 晶 学 的 解 析 技 術 の 飛 躍 的 進 歩 に よ っ て 、最 近 で は 動 的 再 結 晶 組 織 に つ い て 様 々 な 新 知 見 が 得 ら れ る よ う に な っ た 。そ の た め 、 い わ ゆ る「 再 結 晶 核 」と 呼 ば れ る も の の 生 成 と は 全 く 関 係 し な い 再 結 晶 機 構 が 提 案 さ れ 始 め た 。
酒 井 ら は 、熱 間 変 形 後 、水 素 ガ ス で 急 冷 し た 一 連 の 結 晶 粒 組 織 を 観 察 し て い る[17]。Fig2-5 に Cu-Be25 合 金 の 1123K に お け る 変 形 後 、 水 素 で 急 冷 し た 時 の 組 織 変 化 を ひ ず み ご と に 示 す 。等 軸 状 の 初 期 粒 が 、加 工 軟 化 が 始 ま る 付 近 か ら 粒 界 が 凹 凸 化 し 始 め て い る 様 子 が 示 さ れ て い る 。更 に 全 領 域 の す べ て の 粒 界 で 凹 凸 化 が 顕 著 に 生 じ る と 、そ の 所 々 で ネ ッ ク レ ス 状 に 新 し い 微 細 粒 が 生 成 し 、更 に 加 工 軟 化 の 進 展 に と も な い 粒 界 か ら 粒 内 へ 微 細 化 が 進 ん で 、定 常 状 態 変 形 域 で は 全 域 で 新 た な 微 細 組 織 が 一 様 に 生 じ る 様 子 を 報 告 し て い る 。す な わ ち 、動 的 再 結 晶 は 粒 界 セ レ ー シ ョ ン を 契 機 と し て 発 生 す る と 考 え た 。
三 浦 ら は 双 結 晶 の 粒 界 近 傍 に お け る ひ ず み 増 加 に と も な う 組 織 変 化 を 報 告 し て い る[18]。Fig.2-6 に 、Cu-Si 合 金 の 16°双 結 晶 で の 熱 間 変 形 に お け る 粒 界 近 傍 に お け る 組 織 変 化 の 観 察 結 果 を 、ひ ず み 量 ご と に 示 す 。 粒 界 す べ り 速 度 が 減 少 し 始 め る ひ ず み 域 に お い て 、粒 界 上 に 微 細 な セ レ ー シ ョ ン が 明 瞭 に 現 れ 始 め 、更 に セ レ ー シ ョ ン が 激 し く な る と 粒 界 上 に 動 的 再 結 晶 粒 が 現 れ る こ と を 観 察 し て い る 。更 に ピ ー ク ひ ず み 直 前 で は 粒 界 に 沿 っ て 典 型 的 な 動 的 再 結 晶 粒 が 双 晶 を 含 ん で 集 団 的 に 生 じ て い く 様 子 を 報 告 し て い る 。特 に 、積 層 欠 陥 エ ネ ル ギ ー が 低 い 場 合 、移 動 中
13
の 粒 界 の 背 後 に 焼 鈍 双 晶 が 形 成 さ れ 、こ の 焼 鈍 双 晶 の 形 成 が 、動 的 再 結 晶 機 構 で あ る と 結 論 付 け て い る 。こ れ が 不 連 続 動 的 再 結 晶 の 機 構 を 理 解 す る 最 も 有 力 な 報 告 と さ れ て い る 。
2 . 5 動 的 再 結 晶 後 の 静 的 復 旧
動 的 再 結 晶 後 の 静 的 復 旧 過 程 に つ い て 様 々 研 究 が な さ れ て お り 、動 的 回 復 、 再 結 晶 後 の 静 的 粒 成 長 挙 動 が 明 ら か に な っ て い る 。
徐 ら は 、 動 的 回 復 、 再 結 晶 後 の 静 的 復 旧 過 程 に お い て 、 通 常 の 古 典 的 回 復 と 再 結 晶 に 加 え て 、メ タ ダ イ ナ ミ ッ ク 回 復 と メ タ ダ イ ナ ミ ッ ク 再 結 晶 の 計 4 種 類 の 復 旧 機 構 が 働 く こ と を 指 摘 し て い る 。各 復 旧 機 構 が 働 く ひ ず み 領 域 と そ れ ら の 軟 化 に 及 ぼ す 大 き さ は 、Fig.2-7 の 模 式 図 に よ っ て 示 す こ と が で き る と し て い る[19]。 各 復 旧 機 構 の 軟 化 に 及 ぼ す 寄 与 率 の 加 工 ひ ず み に と も な う 変 化 は 、 動 的 再 結 晶 の 開 始 ひ ず み εCD定 常 状 態 変 形 の 開 始 ひ ず み εss ま で の 間 に 生 じ る 応 力 振 動 に 対 応 す る よ う に 現 れ 、 こ れ ら 動 的 再 結 晶 組 織 を 構 成 す る 3 種 類 の 結 晶 粒(A、B、C)の 体 積 率 の 変 化 に 起 因 し て 生 ず る と 説 明 で き る と 述 べ て い る 。
酒 井 ら は 、 上 述 の 動 的 再 結 晶 組 織 を 構 成 す る 3 種 類 の 結 晶 粒 (A、B、 C) は 、Fig.2-8 に 実 線 に 模 式 的 に 示 す よ う に 、 転 位 を ほ と ん ど 含 ま な い 微 細 粒 A( 動 的 再 結 晶 核 )、 粒 界 近 く で は 転 位 を 含 ま ず 粒 中 心 部 で 高 密 度 転 位 を 含 む 成 長 途 中 の 動 的 粒 B、 そ れ ら が 成 長 し て 互 い に 衝 突 し 、 ほ ぼ 均 質 で 高 密 度 の 転 位 組 織 を 有 す る 動 的 粒 C、 の 3 種 類 で あ る と 報 告 し て い る[20]。
一 方 、Fig.2-8 の 破 線 で 表 す よ う に 、こ の よ う な 特 徴 的 な 組 織 を 有 す る 各 領 域 で は そ れ ぞ れ 異 な る 復 旧 機 構 が 働 く こ と が 提 案 さ れ て い る 。す な わ ち 、動 的 核 A を 含 む 領 域 で は メ タ ダ イ ナ ミ ッ ク 再 結 晶 、成 長 途 中 の 動 的 粒 B内 で は メ タ ダ イ ナ ミ ッ ク 回 復 、均 質 な 転 位 下 部 組 織 を 有 す る 結 晶 粒 C で は 、通 常 の 動 的 回 復 に 続 き 再 結 晶 が 起 き る と 考 え ら れ る と 説 明 し て い る 。
徐 ら は 、無 酸 素 銅 に お い て 温 度 723K、真 ひ ず み 速 度 έ=2.0×10-3s-1で 、 ひ ず み ε=0.10 と ε=0.60 ま で 変 形 後 急 冷 し 、 そ の 後 各 温 度 、 各 保 持 時 間 で 再 加 熱 保 持 し た 各 試 験 片 に つ い て 、結 晶 粒 界 と 双 晶 境 界 を 区 別 せ ず 測 定 し た 結 晶 粒 径 DTと 双 晶 境 界 を 含 ま な い 平 均 結 晶 粒 径 D を 直 線 横 断 法 を 用 い て 測 定 し た 。こ れ ら の 結 果 を Fig.2-9 に 示 す[21]。ひ ず み ε=0.1 で は 粒 径 の 増 加 速 度 は 短 時 間 側 で 大 き く 、焼 き な ま し 時 間 と と も に 減 少 し
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て あ る 飽 和 値 に 向 か う よ う に 見 え る と し て い る 。 ま た ひ ず み ε=0.6 に お い て は 、 各 粒 径 は 焼 き な ま し 時 間 に 対 し ほ ぼ 直 線 的 に 増 加 し て い る が 、 そ の 成 長 速 度 は ひ ず み ε=0.1 に 比 べ て 小 さ い 。 一 方 、 再 加 熱 前 の 結 晶 粒 径 と 比 べ た 場 合 、加 熱 温 度 に も よ る が 保 持 時 間 1s あ た り ま で は 結 晶 粒 径 は 成 長 を し て い な い 結 果 と な っ て い る 。
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< 参 考 文 献 >
[1] 酒 井 拓: 再 結 晶・集 合 組 織 と そ の 組織 制 御 へ の 応 用, 日 本 鉄 鋼 協 会, (1997)2-7.
[2] F.J. Humphreys and M. Hatherly: RECRYSTALLIZATION and Related Annealing Phenomena, Second Edition, ELSEVIER, (2004)1.
[3] R.D. Doherty, D.A. Hughes, F.J. Humphreys, J.J. Jonas, D. Juul Jensen, M.E. Kassner, W.E. King, T.R. McNelley, H.J. McQueen and A.D.
Rollettl: Mater. Sci. Engng., A238(1997)219-274.
[4] 古 林 英 一: 再 結 晶 と 材 料 組 織, 内 田 老 鶴 圃, (2000)4-10.
[5] 渡 辺 義 見, 三 浦 博 己, 三 浦 誠 司, 渡 邊 千 尋: 機 械 材 料 学, コ ロ ナ, (2010)124-125.
[6] 高 木 節 雄, 津 崎 兼 彰: 材 料 組 織 学, 朝 倉 書 店, (2009)88-89.
[7] H.J. McQUEEN and J.J. JONAS: Treatise on Materials Science and Technology, ed. by R.J. Arsenault, Academic Press, (1075)394-396.
[8] 酒 井 拓, 三 浦 博 己: ま て り あ, 48(2009)491-498.
[9] T. Sakai and J.J. Jonas: Acta Metall., 32(1984)189-209.
[10] T. Sakai and J.J. Jonas: Encyclopedia of Materials: Science and Technology, Elsevier, 7(2001)7079-7084.
[11] 酒 井 拓: 鉄 と 鋼, 81(1995)1-9.
[12] 酒 井 拓, 徐 州: 電 気 通 信 大 学 紀 要, 6(1993)143-156
[13] W. Gao, A. Belyakov, H. Miura, T. Sakai: Mater. Sci. Eng.A, A265(1999)233-239.
[14] C.M. Sellars and W.J. McG.Tegart: Mem. Sci. Rev. Met., 63(1966)731.
[15] 牧 正 志, 田 村 今 男: 材 料, 30(1981)211-217.
[16] M.J. Luton and C.M. Sellars: Acta Metall., 23(1974)161.
[17] 酒 井 拓 , 三 浦 博 己 , 岩 井 健 , 村 松 尚 国 : 日 本 金 属 学 会 誌 , 57(1993)1390-1396.
[18] 三 浦 博 己, 青 山 洋, 酒 井 拓: 日 本 金 属 学 会 誌, 58(1994)267-275.
[19] 徐 洲: 高 温 加 工 オ ー ス テ ナ イ ト の 回 復 と 再 結 晶 に 関 す る 研 究, 電 気 通 信 大 学 博 士 論 文, (1992)
[20] T.SAKAI, M.OHASHI, K.CHIBA, and J.J. JONAS: Acta metal., 36(1988)1781-1790
[21] 徐 洲, 酒 井 拓: 日 本 金 属 学 会 誌, 55(1991)1298-1306
16
Fig.2-1 Microstructural change during hot rolling and extrusion [7].
(a) High SFE
(b) Low SFE
(c) High SFE
(d) Low SFE
17
Fig.2-2 Typical and characteristic flow curves of dynamic recrystallization obtained by hot deformation of carbon steel at 1123K and 1273K and at strain rates between around 10-5 and 10-1s-1 [11].
18
Fig.2-3 Relationship between steady-state flow stress (σs) and temperature compensated stain rate (Z) for 6N and 7NCu [13].
19
Fig.2-4 Predication of type of stress-strain curve during dynamic recrystallization [16].
(a) A cyclic flow curve appears when the critical strain(εc) is larger than the strain for full recrystallization(εx), εc > εx.
(b) A steady-state curve appears under the condition of εc < εx.
20
Fig.2-5 Microstructural change during deformation of a Cu-Be25 alloy with an initial grain size of 83.1μm at 1123K and at 2.5x10- 1s- 1, followed by H2 gas quenching. (a) ε=0.29, (b) ε=0.37, (c) ε=0.74 [17].
21
Fig.2-6 Optical microscopic observations of hot-deformed copper bicrystal having 16° grain boundary. An arrow mark in (b) indicate the new dynamic grain. (a) ε=0.142, (b) ε=0.223, (c) ε=0.331 [18].
22
Fig.2-7 Schematic representation of the relative contributions of the four softening mechanisms operated in hot deformed copper. The cross-hatched area,
Ⅰ
andⅡ
, indicate zones of incomplete softening. MDRV and MDRX are metadynamic recovery and metadynamic recrystallization, and the full and broken lines indicate the results for multiple peak and single peak dynamic recrystallization, respectively[19].23
Fig.2-8 Three types of dislocation density distribution developed in the dynamically recrystallized (DRX) grain structure (full lines), and the post-dynamic restoration behaviors in each of three regions (broken lines). The vertical straight lines from ρ0 to ρc indicate the edges of each DRX grain boundary[20].
24
Fig.2-9 Effect of holding time and temperature on the average grain sizes, D and DT, for OFHC copper deformed to a strain of 0.10 and 0.60 at 723K and at 2x10-3s-1. D and DT are the average linear intercept length excluding and including twin boundaries, respectively [21].
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第3章
粗大粒材の動的再結晶挙動
3 . 1 緒 言
ま ず は じ め に 、 高 強 度 銅 Cu-Sn-P 合 金 の 実 際 の 生 産 現 場 で の 熱 間 押 出 中 の 組 織 変 化 を 検 証 す る た め 、粗 大 粒( 柱 状 晶 )か ら な る 鋳 造 材 の 動 的 再 結 晶 挙 動 を 調 べ た 。
Fig.1-2 に 示 し た よ う に 銅 管 の 製 造 工 程 で は 、鋳 造 さ れ た ビ レ ッ ト の 熱 間 押 出 を 行 い 、素 管 を 製 造 す る 。こ の と き の ビ レ ッ ト の 組 織 を Fig.3-1(a) に 示 す 。鋳 造 材 は 、外 周 部 は チ ル 晶 、中 心 部 は 自 由 晶 、そ し て 大 部 分 を 占 め る 粗 大 な 柱 状 晶 で 構 成 さ れ て い る[1,2]。
ビ レ ッ ト の 熱 間 押 出 の メ カ ニ ズ ム を 、Fig.3-1(b)に 模 式 的 に 示 す 。 約 1073K~1173K に 加 熱 さ れ た ビ レ ッ ト が 押 出 機 の コ ン テ ナ に 導 入 さ れ 、 ダ ミ ー ブ ロ ッ ク を 介 し た ス テ ム で 少 し 加 圧 さ れ て ア ッ プ セ ッ ト さ れ る
( コ ン テ ナ 内 に ビ レ ッ ト を 密 着 さ せ る )。 続 い て マ ン ド レ ル に よ り ビ レ ッ ト 中 心 部 が 穿 孔 さ れ 、更 に ス テ ム が 前 進 し て ダ イ ス と マ ン ド レ ル の 間 か ら 管 が 押 出 さ れ る[3]。
押 出 条 件 は 材 質 に よ っ て 異 な る が 、 高 強 度 銅 Cu-Sn-P 合 金 の 場 合 、 加 熱 温 度 が 約1173K、押 出 速 度 は ス テ ム の 速 度 で お お よ そ 45mm/sで あ る 。 一 方 、 押 出 比 は ビ レ ッ ト 外 径 が 300mm、 押 出 素 管 の 寸 法 が 外 径 90mm、 肉 厚 10mm で あ る の で 、 お お よ そ 28 と な る 。 こ れ ら の 諸 元 を 換 算 す る と 、 押 出 速 度 は ひ ず み 速 度 で お お よ そ έ=10-1s-1~1s-1 と な り 、 ひ ず み 量 は 断 面 減 少 率 か ら ε=3.0 と な る 。
ビ レ ッ ト は 高 温 に 熱 せ ら れ て い る た め 表 面 に は 酸 化 ス ケ ー ル が 生 成 し て い る が 、酸 化 ス ケ ー ル の 巻 き 込 み は 管 の 品 質 上 有 害 で あ る た め 、シ ェ ル と い う 形 で ス テ ム 後 方 に 排 出 さ れ る 。こ の よ う に し て 管 の 押 出 が 行 わ れ る が 、Fig.2-1 で 示 し た よ う に こ の 熱 間 押 出 中 で は 材 料 の 動 的 回 復 、 動 的 再 結 晶 更 に は 静 的 再 結 晶 な ど 様 々 な 金 属 物 理・組 織 的 な 現 象 が 複 雑 に 起 き て い る[4,5]。そ の 現 象 を 新 た に 開 発 さ れ た 高 強 度 銅 に つ い て 系 統 的 に 調 べ る の が 、 こ の 章 の 目 的 で あ る 。
動 的 再 結 晶 は 、結 晶 粒 が 粗 大 化 し て い る ほ ど 発 現 し に く い[6]。こ れ は 再 結 晶 の 優 先 的 核 形 成 サ イ ト と な る 粒 界 が 少 な い た め で あ る[7]。そ の た
26
め 、こ の 粗 大 粒( 柱 状 晶 )が 鋳 造 組 織 の 動 的 再 結 晶 挙 動 と 組 織 制 御 能 を 支 配 す る こ と と な る 。
本 章 で は 、ビ レ ッ ト か ら 切 り 出 し た 新 し く 開 発 さ れ た 固 溶 強 化 型 高 強 度 銅 Cu-Sn-P の 高 温 変 形 挙 動 と 動 的 再 結 晶 挙 動 を 、 従 来 材 の Cu-P の そ れ と 比 較 し て 調 べ る と と も に 、核 形 成 サ イ ト と し て 重 要 な 粒 界 近 傍 で の 動 的 再 結 晶 挙 動 な ど に つ い て 検 討 を 行 っ た 。
3 . 2 実 験 方 法
研 究 室 の 設 備 で は 、熱 間 押 出 試 験 や 押 出 後 の 組 織 凍 結 、組 織 観 察 は 困 難 で あ る た め 、高 温 圧 縮 に よ り そ の 挙 動 を 調 べ る こ と に し た 。実 機 で の 工 程 が 押 出 で あ る た め 、引 張 試 験 で は な く 圧 縮 試 験 を 選 択 し た 。ま た 引 張 方 向 で は 伸 び 値 の 制 約 を 受 け る た め 、大 き な ひ ず み 量 を 得 る こ と が 難 し い 。
Table 3-1 に 、高 温 圧 縮 試 験 に 供 し た 試 料 の 化 学 成 分 を 示 す 。試 料 は 従 来 広 く 熱 交 換 器 用 途 に 使 用 さ れ て い る り ん 脱 酸 銅 管 Cu-0.025mass%P 合 金 ( 以 下 Cu-P と 呼 ぶ ) と 新 し く 開 発 さ れ 現 在 商 用 に 供 さ れ て い る 高 強 度 銅 の Cu-0.65mass%Sn-0.025mass%P( 以 下 Cu-0.65Sn-P と 呼 ぶ )で あ る 。 Cu-0.65Sn-P合 金 は 従 来 材 の Cu-PにSnが0.65mass%添 加 さ れ た 固 溶 強 化 型 の 合 金 で あ る[8,9]。
Fig.3-2(a)に 示 し た 柱 状 晶 の 部 分 を 寸 法 6×9×13mm3 の 矩 形 状 に 切 り 出 し 、 こ れ を 圧 縮 試 験 に 供 し た 。 初 期 結 晶 粒 径 は Cu-P が 5.84mm、 Cu-0.65Sn-Pは5.34mmで あ っ た 。Instron型 真 空 高 温 圧 縮 試 験 機 を 用 い て 、 温 度 T=1073K~1253K、真 ひ ず み 速 度 έ=2.0×10-4s-1~2.0×10-1s-1で 、真 ひ ず み ε=0.8 ま で の 圧 縮 試 験 を 行 っ た 。
本 章 の 3.1「 緒 言 」 で 述 べ た よ う に 、 実 機 で の 押 出 時 の 加 熱 温 度 が 約 1173K で あ る た め 、 圧 縮 試 験 温 度 を そ の 前 後 の 範 囲 で T=1073K~1253K と し た 。 実 機 の 押 出 速 度 か ら 実 機 で の ひ ず み 速 度 は έ=10-1s-1~1s-1 程 度 と 推 測 さ れ る が 、圧 縮 試 験 の 真 ひ ず み 速 度 は 、動 的 再 結 晶 の 挙 動 の 観 察 を 行 う こ と を 目 的 と し て よ り 遅 い 真 ひ ず み 速 度 側 も 含 め て 、έ=2.0×10-
4s-1~2.0×10-1s-1と し た 。ひ ず み 量 は 実 機 で は お お よ そ ε=3.0で あ る が 、 圧 縮 試 験 で は 圧 縮 後 の 試 料 の 取 り 出 し の た め ひ ず み 量 に 制 約 が あ る た め 、 ひ ず み ε=0.8 と し た 。 圧 縮 軸 方 向 は 鋳 造 方 向 と 平 行 で あ る 。
潤 滑 剤 と し て 、BN パ ウ ダ ( 窒 化 ホ ウ 素 ( 信 越 化 学 工 業 製 :BOLON NITRIDE SPRAY L-Type)) を 用 い 、 端 面 の 摩 擦 抵 抗 を 低 減 さ せ た 。 第 5 章 の 5.2「 実 験 方 法 」 で 述 べ る よ う な 微 細 粒 材 の 試 験 片 に 施 し た よ う な 同 心 円 状 の 溝 加 工 は 、試 料 の 形 状 に よ り 施 す こ と は で き な か っ た が 、実
27 質 的 に 樽 型 変 形 を 抑 え る こ と は で き た 。
圧 縮 試 験 後 、試 料 は 1s 以 内 に 水 冷 さ れ 、高 温 加 工 中 に 発 達 し た 組 織 の 凍 結 を 行 っ た 。そ し て 圧 縮 軸 に 平 行 な 断 面 の 光 学 顕 微 鏡 に よ る 組 織 観 察 を 行 っ た 。第 2 章 、2.5「 動 的 再 結 晶 後 の 静 的 復 旧 」で 説 明 し た が 、Fig.2-9 に 示 さ れ る よ う に 無 酸 素 銅 に お い て 、加 熱 保 持 時 間 1s 程 度 で は 結 晶 粒 径 は 成 長 し て お ら ず 、ま た 本 試 料 の Cu-Sn-P で は 、Sn の 添 加 に よ っ て 再 結 晶 の 進 行 が 無 酸 素 銅 よ り も 更 に 遅 く な る と 推 定 さ れ る た め 、1s 以 内 の 水 冷 で 高 温 加 工 中 に 発 達 し た 組 織 は 充 分 に 凍 結 さ れ て い る も の と 推 察 さ れ た 。
3 . 3 実 験 結 果 及 び 考 察 3 . 3 . 1 応 力-ひ ず み 曲 線
Figs.3-3~3-5に Cu-P鋳 造 材 を 温 度 T=1023K~1123K、ひ ず み 速 度έ=2.0
×10-4s-1~2.0×10-1s-1 で 高 温 圧 縮 試 験 を 行 っ た と き の 真 応 力 - 真 ひ ず み 曲 線 を 示 す 。応 力 - ひ ず み 曲 線 は い ず れ の 条 件 で も 、ひ ず み の 増 加 と と も に 転 位 密 度 の 増 大 な ど に よ る 加 工 硬 化 に よ っ て 応 力 が 増 加 し て い き 、 動 的 再 結 晶 の 発 現 と と も に 応 力 が ピ ー ク を 迎 え 、そ の 後 ひ ず み に よ る 加 工 硬 化 と 動 的 再 結 晶 発 現 に よ る ひ ず み 解 放 で の 加 工 軟 化 が バ ラ ン ス し た 定 常 状 態 変 形 に 収 束 し て い く 形 と な っ た 。
こ の と き 加 工 温 度 に も よ る が 、 例 え ば Fig.3-4 の 1073K の 応 力 - ひ ず み 曲 線 を み る と 、高 ひ ず み 速 度 側 の έ=2.0×10-2s-1~2.0×10-1s-1で は ピ ー ク 応 力 が 一 山 の 単 一 ピ ー ク の 形 状 を 示 し て い る が 、 低 ひ ず み 速 度 側 の έ=2.0×10-4s-1~2.0×10-3s-1で は 、 多 重 ピ ー ク の 形 と な っ て い る 。 第 2 章 2-3「 応 力-ひ ず み 曲 線 」 の 項 で も 述 べ た よ う に 、 ひ ず み 速 度 が 高 い と Z 値 が 高 い た め 単 一 ピ ー ク 、ひ ず み 速 度 が 遅 い と Z 値 は 低 く な り 多 重 ピ ー ク に な る こ と を 示 し た が 、 こ こ で そ の 傾 向 が 認 め ら れ た 。
一 方 、Figs. 3-6~3-8にCu-0.65Sn-P鋳 造 材 を 温 度T=1153K~1253Kで 、 ひ ず み 速 度 がέ=2.0×10-4s-1~2.0×10-1s-1で 高 温 圧 縮 試 験 を 行 っ た と き の 真 応 力 - 真 ひ ず み 曲 線 を 示 す 。い ず れ の 温 度 で も 、Cu-P と 同 様 に ひ ず み 速 度 が 速 く な る に つ れ て 応 力 レ ベ ル が 上 昇 す る 結 果 と な っ た 。
応 力 - ひ ず み 曲 線 の 形 は Cu-P と 比 べ る と 異 な っ て い る 。ε=0 付 近 の 初 期 変 形 域 で 大 き な 加 工 硬 化 が 顕 著 で あ る 。 こ れ は Sn の 固 溶 強 化 の 効 果 で あ る 。更 に 、ひ ず み を 加 え て い く と 動 的 再 結 晶 の 発 現 に よ り 変 形 抵 抗 の 上 昇 は 緩 や か に な っ て く る が 、Cu-P の よ う に 明 確 な ピ ー ク 応 力 と 加 工 軟 化 を 形 成 す る に 至 ら な い 条 件 が 多 く な っ た 。