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企業社会の変容と民事責任システム の新たな構築

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Academic year: 2021

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1.全体像

規制緩和時代における民事責任のあり方に ついて,民事責任の原理,救済手段の多様性,

刑事責任ないし行政的規制との関係,法政策 の実現と民事責任の役割など,多様な視点か ら検討し,企業社会における民事責任像のあ らたな構築を目指す。本企画は若手研究者の 育成をも目的とするものであり,全国から研 究者が集う場にしたいと考える。

2.民事責任システムの課題と展望

―法制度全体の中での新たな役割

¸ 企業活動に伴う民事責任を論じる場合,

企業社会のあり方を考える上で拠点とすべき いくつかの基本概念を挙げることができる。

安全性,公正な取引,環境,人格権,知的財 産権などであるが,本企画では安全性と公正 な取引を中心に民事責任が関る問題に多面的 にアプローチし,刑事責任,行政的規制,さ らには憲法との関連を踏まえた法制度の全体 の中で,民事責任の役割を提示することを目 的としている。これはヨコ軸としての他の法 制度との協働と,タテ軸としての民事責任の 原理の探究の二本立ての構想を目指すもので あり,民事責任論の発展にあらたな地平を拓 こうとするものである。

¹ 企業社会の変容を表わすキーワードは,

規制緩和である。損害賠償の目的は損害の填 補にあるとするのが伝統的理解であるが,規 制緩和時代においては企業の自律的活動に委 ねたあとの制裁という問題が重要になる。制 裁は政策的判断を伴うことから,損害賠償の 制裁的側面を検討するには刑事的規制や行政 的規制など他の制裁手段との連携を視野に入 れる必要がある。これによって制裁としての 損害賠償の意義が明らかにされるであろう。

民事責任に関連するものとして,懲罰的損害 賠償,私人による権利実現の問題も法制度全 体の中で検討する必要がある。

損害賠償の制裁的側面に光が当てられるこ とにより損害賠償本来の目的である損害填補 の現代的役割が究明されることになるであろ う。民事責任固有の問題としては過失責任と 無過失責任の協働の問題があるが,責任保険 など保険制度や社会保障制度といった民事責 任の隣接分野との関連,さらには総合救済シ ステムなど民事責任を止揚するシステムへの 展望を検討する必要がある。損害賠償におけ る損害填補と制裁の関係の構築は過失責任な いし民事責任の基本原理の解明なくしては達 成しえない作業であり,この原理の解明を まってはじめてヨコ軸における民事責任の意 義が確定されることになるであろう。本企画 の重要な柱はこのタテ軸の解明にある。

º ところで,損害賠償は違法な行為が行 われた場合の事後的な救済方法であるが,違 法な行為は事前に抑止できるならばそれに越 したことはない。救済方法の多様化は民事責 任の現代的課題であり,本企画ではとくに差

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企業社会の変容と民事責任システム の新たな構築

藤岡康宏

* 早稲田大学大学院法務研究科教授

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止を取り上げ,差止と損害賠償の関係,差止 の要件,効果について,独禁法,知的財産法,

環境法など特別法の領域を含めた法体系全体 の問題として,その基礎理論を開拓したい。

» 企業活動はさまざまな局面で生活世界 に不利益な負担をもたらしてきたが,企業の 民事責任はどのような内容を持つべきである のか。民法上は企業の不法行為責任(企業自 体の不法行為責任)として議論の蓄積はある が,十分な展開を示しているわけではない。

規制緩和時代には自己責任が強調され,過失 責任主義の復権に転ずることも予想できない わけではないが,この動きと企業の不法行為 責任は連動することになるのであろうか。

この問題に関連して,企業活動を担う者の 責任を検討する必要がある。法人の理事の責 任はもちろんであるが,会社法上の取締役の 責任は民法の理論とは切り離されて論じられ る傾向があった。両者の連携を図り基礎理論 を構築する必要があると思われる。

¼ 民事責任システムの再構築を目指すた めには不法行為法(損害賠償法)のみならず,

契約法についても制裁という視点から考究を 進める必要があろう。これには契約責任の問 題と契約内容の規制の問題がある。契約責任 については不法行為との関係をどのように律 するかが重要であるが,この点において契約 責任の拡大現象(契約の再生)をどのように 評価すべきであろうか。契約責任の縮減化は 不法行為の再生につながるが,安全性をキー ワードとするアプローチではどちらが妥当な 選択肢なのであろうか。契約責任と不法行為 責任の関係は民法の基礎理論でありながら,

残された課題は多いと思われる。

½ 以上は民事責任システムのあらたな構 築にとって不可欠な基礎的課題である。本企 画では 2004 年度にこれらの課題に関連する 具体的テーマを洗い出す予定であるが,その 他にも個別的テーマとして考えられるものに,

消費者契約法と企業のコンプライアンス,不 法行為法リステイトメント(契約責任と債権

総論を含む),製造物責任法の現状と課題,

団体訴訟(消費者団体,環境権訴訟),知的 財産権と損害賠償などがある。

3.若手研究者の育成

本企画は民事責任の最先端を切り拓くとと もに,若手研究者の育成を目的とするもので ある。学内においては《民事法研究会アモル フ》(若手研究者を中心とする研究会)と協 力し研究活動の裾野を広げるが,必要に応じ て研究会をオープン化し,全国から研究者が 集う場にすることを最終目標としたい。

【研究会】

研究期間は,2003 年度から 2007 年度まで。

定期的研究会は年6回を予定。必要に応じて

『民事法研究会アモルフ』と共催。第1回研 究会は 2003 年3月 13 日¼開催。報告者:窪 田充見(神戸大学)「規制緩和社会における 制裁の役割―損害賠償」

【会員】

¸ 企画責任者

藤岡康宏(早稲田大,民法),後藤巻則

(早稲田大,民法),上村達男(早稲田大,商 法)

¹ 研究員

厚谷襄児(帝京大,弁護士,経済法),小 川浩三(桐蔭横浜大,ローマ法,比較法,民 法),窪田充見(神戸大,民法),手嶋豊(神 戸大,民法),藤原正則(北海道大,民法),

曽野裕夫(九州大,民法),水野謙(学習院 大,民法),大塚英明(早稲田大,商法),首 藤重幸(早稲田大,行政法),松澤伸(早稲 田大,刑法),一木孝之(北九州市立大,民 法),須加憲子(福岡大,民法),金岡京子

(民法,保険法),和田宗久(神奈川大(4月 から),商法),都筑満雄(早稲田大助手,民 法),根本尚徳(早稲田大助手(4月から),

民法)。ほか若干名追加予定。

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