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中華人民共和国侵権責任(不法行為責任)法 について

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(1)

中華人民共和国侵権責任(不法行為責任)法 について

浅 野 直 人 * 林   中 挙

**

(解説)

1 経過

2010 年 7 月 1 日に、中国の不法行為法に関する制定法が施行される。

中国の民法典の整備は、1987 年の「中華人民共和国民法通則法」にはじまっ たが、その後の、1999 年「中華人民共和国合同法」、2007 年「中華人民共和 国物権法」、の制定につづき、今回の「中華人民共和国侵権責任法」(以下で は新法という)の制定に至った。

日本の民法 709 条以下の不法行為法に当たる部分に関しては、前述の民法 通則法 106 条以下に、契約違反や不履行の場合の民事責任とあわせて、過失 責任の原則その他の基本的事項が定められ、さらに 117 条以下で具体的な責 任要件等を定めていたが、新法は、これらの規定をより詳細にするとともに、

個別の不法行為類型についての裁判規範を定めている。

 

* 福岡大学法学部教授

** 福岡大学大学院法学研究科研究生

(2)

この新法は、日本法と異なり「不法行為責任」でなく、「侵権責任」とい う用語を用いている。この点については、不法行為という用語は要件をさし、

その効果は責任である上、医療事故などの種々の領域に関して当事者双方の 利益の平衡をはかり適切な救済を図るための法としては、中国の特色を鮮明 にしまた現代的状況にも対応できる、との考え方によるもの、との説明(楊 立新「制定侵権責任法応着力解決的五個問題」民商法学 2008 年 10 月号 75 頁以下(原掲載「河北学刊」2008 年 3 月)がみられる。しかし、日本では、

不法行為責任という用語を用いているところから、以下の新法の紹介では、

あえて、これを「不法行為責任」と翻訳することとした。

中国での新法の検討は、2006 年頃から本格的に始まっており、同年 7 月 29 - 30 日に中国法学会民法学研究会 2006 年会、また同年 10 月 31 日には 北京で中国社会科学院法学研究所の主催で学術討論が行われたことが報じら れている(高建民ほか「侵権責任法的制定及民法其他問題」民商法学 2007 年 1 月 21 頁以下、孫憲忠ほか「侵権行為法立法学術報告会議述評」法学研 究 2007 年 2 期 149 頁以下)。

当時は、中国の民法典に関して、全国人民大会常務委員会法律工作委員 会、中国人民大学民商法律科学研究中心(センター)及び中国社会科学院法学研 究所課題組(グループ)がそれそれ草案を公表していたが、伝統的な大陸法に 従い、侵権行為を「債」の発生原因と構成し、債法に位置づけようとする法 学研究所案に対して、英米法にならって、これを独立の法体系とすることを 提案する人民大学案があった、とされる。さらに法律工作委員会案は、当時 から、名称を「侵権責任法」としており、債の発生原因としての侵権行為に とどめるのでなく、種々の法律関係に係る損害への法律責任を追及できるも のとすることを考えていたとされる。その後、2008 年頃までには、さまざ まな試案が提案されて論議が本格化し(たとえば、謝哲勝「中華人民共和国 侵権行為法草案総合分析」民商法学 2009 年 3 月 65 頁以下(原掲載「社会科

(3)

学」2008 年 9 月)などを通じてその状況を知ることができる)、2008 年の「侵 権責任法(草案)」をふまえて 2009 年 12 月 26 日に、全国人民代表大会で新 法が可決、公布された。

2 特色と内容

新法は、被害者救済・損害賠償法としての位置づけのほかに、権利保護法 としての性質さらには、民事法律関係における当事者間での民事法的義務違 反に対する責任の分配を定めるものとしての民事責任法としての性質をもつ とされる(前掲・楊論文 76 頁)。ただし、この点は、中華人民共和国物権法が、

物権侵害に対する救済規定を置いていることとの関係が新たな課題を引き起 こすことにもなる(崔建遠「侵権責任法応与物権法相衝接」民商法学 2009 年 5 月 3 頁以下(原掲載「中国法学」2009 年 1 月)。

新法は、民法通則法がそうであったように、侵権行為に対する一般規定(2-5 条)を置き、さらに過失責任原則を定める(6 条)。これは大陸法の伝統に もとづくもので、複雑なこの領域の取り扱いを弾力的に行うためには有用と 考えられているようである。しかし、他方では、英米法の考え方による不法 行為の類型的取り扱いの考え方も同時に取り入れており、これはエチオピア 不法行為法にならったものとされる(前掲・楊論文 77 頁)。ただし、過失責 任原則は、法律に別の定めがある場合は修正される(7 条)。

なお、共同不法行為の責任に関しては、求償を含めて 7 か条が置かれてい る(8-14 条)。また、不法行為責任の効果としては、損害賠償だけでなく、

差し止め請求その他の 8 種類の救済方法が規定されている(15 条)(なお、

民法通則法では、民事責任の方式を 10 種類定めていた(同法 134 条)が、

新法ではもっぱら契約違反の場合にのみ適用される違約金支払い(同条 8 号)が削除されたほか修理、交換など(同条 6 号)が原状回復との重複を意 識してか削除されている)ほか、損害賠償の算定方法等についての詳細が規 定されている(16-25 条)。このうち、他人の権益保護のため損害を受けた者

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が加害者から賠償を得ることができなかった場合の受益者の補償義務の規定

(23 条)や被害者・加害者双方が無過失の場合の損害の分担規定(24 条)は、

不法行為法の枠組みを超える裁判規範として興味深い。

26-31 条には、責任減免に関する規定が置かれるが、損害発生原因が第三 者にあった場合の責任関係規定(28 条)、不可抗力の免責規定(29 条)は日 本法に見られない規定である。また、32 条以下の責任主体に関する特別規 定では、責任能力に関する規定(32-33 条)および責任能力を欠く者が学校 等で受けた損害の賠償責任(38-40 条)、使用者責任等の規定(34-35 条)も 具体的である。このほかに、インターネット使用による不法行為の責任(35 条)、デパート等公衆施設管理者の責任(36 条)のような現代社会での具体 的場合を想定した規定が存在することも注目できる。なお、請負人の不法行 為については、日本法 716 条と異なり、新法 35 条では、注文者に一義的に 責任が生じるものとされる(成永裕「有関侵権責任主体若干特殊規定之探討」

民商法学 2009 年 5 月 9 頁以下(原掲載金陵法律論評 2008 年 1 月)参照)。

41 条以下には、不法行為類型ごとに特別規定が置かれている。

新法の掲げる類型は、生産物責任(産品責任)、自動車交通事故、医療損 害責任、環境汚染責任、高度危険責任、飼育動物(飼養動物)責任、物に係 る損害(物件損害)責任の 7 種類であり、日本民法の工作物責任及び動物占 有者責任の 2 種類に比べればはるかに整っている。立法論としてはこのほか に、労働災害事故責任、専門家責任などについても論じられたようである(前 掲・楊論文 78 頁以下)が、新法にはとりいれられていない。

このうち、生産品責任に関しては、製造者・販売者・運輸者・保管者にま で責任主体性を拡大し(42-44 条)、さらに悪質な生産・販売者に対する懲罰 的損害賠償を明文で認めている(47 条)点が注目される。また、自動車交 通事故責任に関しては、所有権留保売買の際の責任関係(50 条)や非正規 な自動車売買に係る事故を想定した責任規定(51 条)があることが興味深

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い。医療損害責任については、すでに存在する「医療事故処理条例」の規定 なども盛り込んだ形で規定が置かれており、過失推定規定(58 条)のほか、

医療機関の説明義務(55-56 条)、病歴記録等の保管義務及び開示義務(61 条)、患者のプライバシー保護義務(62 条)などに関しても規定が置かれて いる。

環境汚染責任については、汚染者側に免責・減責事由の立証責任があり(66 条)、複数汚染者の汚染については分割責任を原則とする(67 条)。第三者 の過失による損害についても汚染者は第三者とあわせて賠償義務を負う(68 条)。また、民間核施設(70 条)、民用航空機(71 条)、高速度交通機関等(72 条)の事故は経営主体に賠償義務があり、そのほかに危険物の占有・所有者

(72 条)、遺失・廃棄者(74 条)等の責任が規定されている。

飼育動物の損害責任は、日本法と同様に、飼育者又は管理者に責任があり、

所有者責任とはされていない(78 条以下)。逸走動物による損害は、原飼養 者又は管理者が責任を負う(82 条)、さらに動物園の動物についても特に規 定がある(81 条)点は、注意喚起という意味からの立法と思われる。さらに、

物件損害責任については、日本法での土地の工作物の設置・管理及び竹木の 植栽・支持と同様の場合(85 条、90 条)にかぎらず、建築物から放擲され た物品等(87 条)、堆積物の倒壊等(88 条)による損害に対する責任などに ついても、挙証責任が転換されるなど厳しい責任規定となっており、そのほ か、公共道路への物品の堆積等(89 条)、道路などの掘削等(91 条)に伴う 事故についての責任規定も置かれている。また、工作物の倒壊の場合には発 注者と施工者の連帯責任の規定があることも注目できる(86 条)。

(翻訳)

中華人民共和国侵権責任法(中華人民共和国不法行為責任法)

(2009 年 12 月 26 日第十一届全国人民代表大会常務委員会第十二次会議可決)

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目次

第一章 一般規定

第二章 責任構成と責任方式 第三章 責任免除と責任軽減の事由 第四章 責任主体に関する特別規定 第五章 生産物責任

第六章 自動車交通事故責任 第七章 医療損害責任 第八章 環境汚染責任 第九章 高度危険責任 第十章 飼養動物責任 第十一章 物件損害責任 第十二章 附則

【頒布機関】中国人民代表大会

【頒布番号】中華人民共和国主席令第 21 号

【頒布日付】2009 年 12 月 26 日

【発効日付】2010 年 7 月 1 日

「中華人民共和国侵権責任法」が、中華人民共和国第 11 届全国人民代表大 会において 2009 年 12 月 26 日に可決されたので、これを公布し、2010 年 7 月 1 日から施行する。

中華人民共和国主席胡錦涛 2009 年 12 月 26 日

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第一章 一般規定

第 1 条 民事主体の合法的権益を保護し、不法行為責任を明確にし、不法行 為(侵権行為)を防止かつ制裁し、社会の調和と安定を促進するために、こ の法律を制定する。

第 2 条 民事権益を侵害したときは、本法に基づいて不法行為責任を負う。

本法のいう民事権益には、生命権、健康権、姓名権、名誉権、栄誉権、肖像権、

プライバシー権、婚姻自主権、監護権、所有権、用益物権、担保物権、著作権、

特許権、商標専用権、発見権1、株式権、相続権などの身体、財産の権益を含む。

第 3 条 被害者は加害者に不法行為責任を負うよう請求する権利を有する。

第 4 条 加害者が、同一の行為について行政責任または刑事責任を負うとき であっても、法律に基づいて不法行為責任を負うべきことに影響を与えるも のではない。

同一の行為により不法行為責任及び行政責任ないし刑事責任を負わなけれ ばならないときで、加害者の財産が責任に基づく支払いに足りないときは、

まず不法行為責任を負う。

第 5 条 他の法律のうちに不法行為責任について特別規定があるときは、当 該規定に従う。

1 ここにいう「発見」とは、自然界または客観規律に対する新しい認識を指す。「中華人民共 和国民法通則」は、「公民は、自己の発見に対する発見権を享有する」と定めている。

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第二章 責任構成と責任方式

第 6 条 行為者が過失により他人の民事権益を侵害したときは、不法行為責 任を負う。

法律の規定により行為者に過失があることを推定するものとするときは、

行為者は自己に過失がないことを証明できない限り、不法行為責任を負う。

第 7 条 行為者が他人の民事権益を損害したときで、法律規定により不法行 為責任を負うべきときは、行為者の過失の有無を問わず、当該法律規定に従 う。

第 8 条 2 人以上が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、連 帯して責任を負う。

第 9 条 他人に不法行為の実施を教唆した者及び幇助した者は、行為者と連 帯して責任を負う。

行為無能力者、制限行為能力者を教唆した者及び幇助した者は、不法行為 責任を負う。当該行為無能力者、制限行為能力者の監督義務者が監督義務を 怠ったときは、相当の責任を負う。

第 10 条 二人以上が他人の身体、財産の安全に危険を及ぼす行為を行い、

その中の一人または数人の行為により他人に損害を加えたときで、具体的な 加害者が確定できるときは、加害者が責任を負う。具体的にいずれの者がそ の損害を加えたかを知ることができないときは、行為者が連帯して責任を負 う。

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第 11 条 二人以上がそれぞれ不法行為を行い、同一の損害をもたらしたと きで、いずれの者の不法行為も損害の発生させるに足りるときは、行為者が 連帯して責任を負う。

第 12 条 二人以上がそれぞれ不法行為を行い、同一の損害を起こしたとき で、責任の割合を確定できるときは、各自がその割合に応じて責任を負う。

責任の割合が確定し難いときは、それぞれ等しい割合で賠償責任を負う。

第 13 条 法律規定により連帯責任を負うときは、被害者は連帯責任者の全 員またはその一部に責任を負うよう請求することができる。

第 14 条 連帯責任者の負担すべき賠償額は各自の責任の割合により相応に 確定される。責任の度合いを確定し難いときは、それぞれ等しい割合で賠償 責任を負う。

自己の賠償額を超えて支払った連帯責任者は、その他の連帯責任者に対し 求償権を有する。

第 15 条 不法行為責任を負担する方法は、主に以下のとおりである。

(一)侵害停止

(二)妨害排除

(三)危険除去

(四)財産返還

(五)原状回復

(六)損害賠償

(七)謝罪(賠礼道歉)

(八)影響の除去、名誉回復

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以上の不法行為責任を負担する方法は、単独でこれを適用し、またはこれ を併用することができる。

第 16 条 他人を侵害し、他人の身体に損害を加えたときは、医療費、看護 費用、交通費など、治療および健康回復の目的で支出した合理的な費用、お よび仕事を休んで減少した収入を賠償しなければならない。障害を残したと きは、生活補助器具の費用と障害賠償金をも賠償しなければならない。死に 至らしめたときは、葬儀費用と死亡賠償金をも賠償しなければならない。

第 17 条 同一の不法行為により数人が死亡したときは、同じ金額で死亡賠 償額を確定することができる。

第 18 条 被害者が死亡したとき、その近親者は加害者に不法行為責任を負 うよう請求することができる。被害者が組織(単位)である場合で、当該組 織が分立または合併したときは、その権利を相続する組織は加害者に不法行 為責任を負うよう請求することができる。

被害者が死亡したときは、被害者の医療費や葬式費用などの合理的な費用 を支払った者は、加害者に費用の賠償を請求することができる。ただし、加 害者がすでに当該費用を支払っていたときは、この限りでない。

第 19 条 他人の財産を侵害したときは、財産の損失は、損失発生時の市場 価格またはその他の方法により計算するものとする。

第 20 条 他人の人格的利益(人身権益)を侵害し、これによって財産の損 害をもたらしたときは、被害者がこれによって被った損失に基づいて賠償し なければならない。被害者の被った損失が確定し難く、加害者がこれによっ

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て利益を取得したときは、その取得した利益を賠償するものとする。加害者 の取得した利益が確定し難く、被害者と加害者が賠償金額について合意が達 することができないために、人民法院に提訴したときは、人民法院が実際の 状況を勘案して賠償金額を確定する。

第 21 条 不法行為が他人の身体、財産の安全に危険を及ぼしたときは、被 害者は加害者に侵害停止、妨害排除、危険除去などの不法行為責任を負うよ う請求することができる。

第 22 条 他人の人身権益を侵害し、他人に重大な精神損害を加えたときは、

被害者は精神損害賠償を請求することができる。

第 23 条 他人の民事権益が侵害されることを防止または禁止をするため、

自己が損害を被ったときは、加害者が責任を負う。加害者が逃避し、または 責任を負うに足りる資力がないときは、被害者が補償を請求したとき、受益 者は相当の補償をしなければならない。

第 24 条 被害者と行為のいずれも損害の発生について過失がなかったとき は、実際の状況を勘案して、双方に損害を分担させることができる。

第 25 条 損害が生じた後、当事者は賠償費用の支払い方法を協議すること ができる。協議できないときは、賠償費用は一括払いにしなければならない。

一括払いが確実に困難であるときは、分割払いとすることができる。ただし、

相当の担保を供しなければならない。

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第三章 責任免除と責任軽減の事由

第 26 条 被害者にも損害の発生に過失があったときは、加害者の責任を軽 減することができる。

第 27 条 損害の発生が被害者の故意によるときは、行為者は責任を負わな い。

第 28 条 損害の発生の原因が第三者にあったときは、第三者が不法行為責 任を負う。

第 29 条 不可抗力により他人に損害を加えたときは、責任を負わない。た だし、法律に別段の規定があるときは、その規定に従う。

第 30 条 正当防衛により損害を生じたときは、責任を負わない。ただし、

正当防衛が必要な限度を超え、生じさせるべき限度を超えた損害を生じたと きは、正当防衛行為をした者は相当な責任を負わなければならない。

第 31 条 緊急避難により損害を生じたときは、危険の発生をもたらした者 が責任を負う。危険の発生が自然の原因によったものであるときは、緊急避 難行為をした者は責任を負わないか、あるいは相当の補償を給付するものと する。緊急避難に際しては、とった措置が不適切であった、または必要な限 度を超え、生じさせるべき限度を超えた損害を生じたときは、緊急避難行為 をした者は、相当な責任を負わなければならない。

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第四章 責任主体に関する特別規定

第 32 条 民事行為無能力者、民事制限行為能力者が他人に損害を加えたと きは、その監督義務者が不法行為責任を負う。監督義務者が監督義務を怠ら なかったときには、その不法行為責任を軽減することができる。

民事行為無能力者、民事制限行為能力者が財産を有するときは、本人の財 産で賠償費用を支払う。本人の財産で不足する部分は監督義務者がこれを賠 償する。

第 33 条 完全民事行為能力者は、過失により、自己の行為に対し、一時的 に意識を喪失し、または行為を制御できなかったため、他人に損害を加えた ときは、不法行為責任を負う。過失がなかったときは、行為者の資力によっ て被害者に相当の補償をするものとする。

完全民事行為能力者は、飲酒、麻酔薬品または精神薬品の濫用により、自 己の行為に対し、一時的に意識を喪失し、または行為を制御できなかったた め、他人に損害を加えたときは、不法行為責任を負う。

第 34 条 ある事業のために他人を使用する組織(単位)の被用者が、その 事業の執行について他人に損害を加えたときは、当該組織が不法行為責任を 負う。

労務派遣期間中、派遣された被用者がその事業の執行について他人に損害 を加えたときは、労務派遣を受けた組織が使用者としての不法行為責任を負 う。労務派遣をした組織に過失があったときには、相当の補充的責任を負う。

第 35 条 個人間において労務関係が確立された場合、労務を提供する者が 労務について他人に損害を加えたときは、労務を受ける者が不法行為責任を

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負う。労務を提供する者が自己に損害を受けたときは、双方がそれぞれ過失 の程度に応じて責任を負う。

第 36 条 インターネット使用者、インターネット接続業者は、インターネッ トを利用し、他人の民事権益を侵害したときは、不法行為責任を負う。

インターネット使用者がインターネットサービスを利用し、不法行為を 行ったときは、被害者は、インターネット接続業者に情報の削除、全部また は一部の削除、また接続の中断などの必要な措置をとるよう通知する権利を 有する。インターネット接続業者が通知を受け取った後に、速やかに必要な 措置をとらなかったときには、損害が拡大した部分について当該インター ネット使用者と連帯して責任を負う。

インターネット接続業者は、インターネット使用者がインターネットを利 用し他人の民事権益を侵害したことを知りつつ、必要な措置をとらなかった ときは、当該インターネット使用者と連帯して責任を負う。

第 37 条 ホテル、デパート、銀行、駅、娯楽施設などの公衆施設を管理する者、

または多数の来客を想定する活動を組織する者が、安全保障義務を怠り、他 人に損害を生じたときは、不法行為責任を負う。

第三者の行為により他人に損害を生じたときは、当該第三者が不法行為責 任を負う。管理者または組織者が、安全保障義務を怠っていたときには、過 失の程度に応じて補充的責任を負う。

第 38 条 民事行為無能力者が、幼稚園、学校またはその他の教育機関にお いて学習または生活をしている間に身体の損害を被ったときは、幼稚園、学 校またはその他の教育機関は責任を負う。ただし、教育や管理の義務を怠っ ていなかったことを証明できるときは、責任を負わない。

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第 39 条 民事制限行為能力者が学校またはその他の教育機関において学習 または生活をしている間に身体の損害を被ったときは、学校またはその他の 教育機関は教育や管理の義務を怠っていたときに限り、責任を負う。

第 40 条 民事行為無能力者、民事制限行為能力者が、幼稚園、学校または その他の教育機関において学習または生活をしている間に、幼稚園、学校ま たはその他の教育機関以外の者に身体の損害を加えられたときは、加害者が 不法行為責任を負う。幼稚園、学校またはその他の教育機関は、管理義務を 怠っていたときに限り、相当の補充的責任を負う。

第五章 生産物責任

第 41 条 生産物の欠陥により、他人に損害を生じたときは、製造者は不法 行為責任を負う。

第 42 条 販売者の過失により、生産物に欠陥を生じ、他人に損害を加えた ときは、販売者が不法行為責任を負う。

販売者が欠陥がある生産物の生産者または供給者を確定することができな いときは、販売者は相当の不法行為責任を負う。

第 43 条 生産物の欠陥により損害を生じたときは、被害者は当該生産物の 生産者または販売者に賠償を請求することができる。

生産物の欠陥が生産者によるものであるときは、販売者は賠償後に、生産 者に対し求償権を有する。

販売者の過失により生産物に欠陥を生じたときは、生産者は賠償後に、販 売者に対し求償権を有する。

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第 44 条 運輸者または保管者などの第三者の過失により生産物に欠陥を生 じ、他人に損害を加えたときは、生産物の生産者または販売者は賠償後に、

当該第三者に対し求償権を有する。

第 45 条 生産物の欠陥により、他人の身体、財産の安全に危険を及ぼすお それがあるときは、被害者は生産者、販売者に妨害排除、危険除去などの不 法行為責任を負うよう、請求する権利を有する。

第 46 条 生産物が流通に入った後に、欠陥の存在が発見されたときは、生 産者、販売者は直ちに警告、回収などの必要な措置(補救措置)をとらなけ ればならない。直ちに措置をとらないか、あるいは措置が足りないことによ り、損害を生じたときは、不法行為責任を負う。

第 47 条 生産物に欠陥があることを知っているにもかかわらず、生産また は販売をし、他人を死亡させ、またはその健康に重大な損害を生じたときは、

被害者は相当の懲罰的賠償を請求する権利を有する。

第六章 自動車交通事故責任

第 48 条 自動車が交通事故により、損害を生じたときは、道路交通安全法 の関係規定に基づき、賠償責任を負う。

第 49 条 車の賃貸借または使用貸借などの場合で、自動車の所有者と使用 者が同じでないときは、交通事故が発生し、事故の責任が自動車側にあると きは、保険会社が自動車強制保険責任金額の限度において賠償する。これで

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足りない部分については、自動車の使用者が賠償責任を負う。損害の発生に つき、自動車の所有者に過失がある場合は、所有者が相当の賠償責任を負う。

第 50 条 当事者間においてすでに売買の方式で自動車を譲渡し、引き渡し を済ませたが、所有権移転の登記を行っていないときで、交通事故が発生し た後に、事故の責任が当該自動車側にあるときは、保険会社が自動車強制保 険責任金額の限度において賠償する。これで足りない部分については、譲受 人が賠償責任を負う。

第 51 条 売買の方式で部品を組み立てた自動車、または廃棄基準に該当す る自動車を譲渡したときで、当該自動車の交通事故により損害を生じたとき は、譲渡者と譲受者が連帯して責任を負う。

第 52 条 窃盗、強盗または略取された自動車が交通事故により損害を生じ たときは、窃盗者、強盗者または略取者が賠償責任を負う。保険会社が自動 車強制保険責任金額の限度において救急費用を立て替え払いしたときは、交 通事故の責任者に対し求償権を有する。

第 53 条 自動車の運転者が、交通事故を起こした後に逃亡した場合、当該 自動車が強制保険に入っていたときは、保険会社が自動車強制保険責任金額 の限度において賠償する。自動車が逃亡により不明になり、または当該自動 車が強制保険に入っていないが、被害者に身体損害があり、もしくは死に至 らしめた場合で救急、または葬儀費用の支払いを必要とするときは、道路交 通事故社会救助基金により立て替え払いを行う。道路交通事故社会救助基金 は立て替え払いをした後に、交通事故の責任者に対し求償権を有する。

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第七章 医療損害責任

第 54 条 患者が受診に際して損害を被った場合、医療機関およびその医療 関係者に過失があるときは、医療機関が損害賠償責任を負う。

第 55 条 医療関係者が診療行為を行うに際しては、患者に病状および医療 措置について説明しなければならない。手術、特殊検査、特殊治療を必要と するときは、医療関係者は、速やかに患者に診療行為に伴う危険性、代替的 な医療方法などの状況を説明し、かつその書面による同意を得なければなら ない。患者に説明することが不適切であるときは、患者の近親者に説明し、

かつその書面による同意を得なければならない。

第 56 条 救急救命などの緊急事態の場合において、患者またはその近親者 の意見を得られないときは、医療機関の責任者または授権された責任者の許 可(批准)を経て、直ちに相当の医療措置を行うことができる。

第 57 条 医療関係者が診療活動において、当時の医療水準にかなう診療義 務を尽くさなかったことにより、患者に損害をもたらしたときは、医療機関 が賠償責任を負わなければならない。

第 58 条 以下のいずれかの状況によって患者に損害を生じたときは、医療 機関に過失があったと推定する。

(一)法律、行政法規、行政規定およびその他の診療規範に関する規定に 反したとき。

(二)紛争に関連する病歴資料を隠匿し、またはその提供を拒絶したとき。

(三)病歴資料を偽造、改ざんまたは廃棄したとき。

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第 59 条 医薬品、消毒薬剤、医療器械の欠陥、または不合格な血液の輸血 により、患者に損害を生じたときは、患者は生産者または血液の提供機関に 賠償を求めることができ、また、医療機関に賠償を求めることもできる。患 者が医療機関に賠償を求めたときには、医療機関は賠償した後、責任を負う べき生産者または血液の提供機関に対し求償することができる。

第 60 条 以下のいずれか状況によって患者に損害を生じたときは、医療機 関は賠償責任を負わない。

(一)患者またはその近親者が、医療機関が診療規範に応じた診療を行う ことに協力しないとき。

(二)医療関係者が救急救命の患者などの緊急事態の診療に際して、適切 な診療の義務を尽くしたとき。

(三)当時の医療水準に照らして、診療が難しいとき。

前項第一号の場合、医療機関およびその医療関係者にも過失があったとき は、相当の賠償責任を負わなければならない。

第 61 条 医療機関およびその医療関係者は関係規定に基づき、入院記録、

処方箋、検査報告、手術および麻酔記録、病理分析、看護記録、医療費用な どの病歴資料を記入し、確実に保管しなければならない。

患者が前項に規定する病歴資料の閲覧や複写を請求したときは、医療機関 はこれを提供しなければならない。

第 62 条 医療機関およびその医療関係者は、患者のプライバシーを守らな ければならない。患者のプライバシーを漏らし、または患者の同意なくその 病歴資料を公開することによって患者に損害をもたらしたときには、損害賠 償責任を負わなければならない。

(20)

第 63 条 医療機関およびその医療関係者は、診療規範に反し必要のない検 査を行ってはならない。

第 64 条 医療機関およびその医療関係者の合法的権益は法律によって保護 される。医療秩序を妨害し、医療関係者の仕事や生活を妨げる者は、法律に 従って法的責任を負わなければならない。

第八章 環境汚染責任

第 65 条 環境汚染により損害を生じたときは、汚染者が不法行為責任を負 う。

第 66 条 環境汚染により紛争が生じたときは、汚染者は、法律に定める責 任免除または責任軽減の事由、およびその行為と損害の発生に因果関係が存 在しないことについて挙証責任を負う。

第 67 条 二人以上の汚染者が環境を汚染したときは、汚染者が負う責任の 割合は、汚染物の種類、およびその排出量などの要素によって確定する。

第 68 条 第三者の過失により環境を汚染し、損害を生じたときは、被害者 は汚染者、および当該第三者に賠償を請求することができる。また、汚染行 為者は賠償後に、第三者に対し求償権を有する。

第九章 高度危険責任

第 69 条 高度の危険な作業により、他人に損害を加えたときは、不法行為

(21)

責任を負う。

第 70 条 民用核施設で核事故を生じ、他人に損害を加えたときは、民用核 施設の経営者が不法行為責任を負う。ただし、損害が戦争などの原因または 被害者の故意によるものであることを証明できる限り、責任を負わない。

第 71 条 民用航空機により他人に損害を加えたときは、民用航空機の経営 者が不法行為責任を負う。ただし、損害が被害者の故意によるものであるこ とを証明できる限り、責任を負わない。

第 72 条 易燃、易爆、劇毒、放射性などの高度の危険物を占有し、または 使用し、他人に損害を加えたときは、占有者または使用者が不法行為責任を 負う。ただし、損害が被害者の故意または不可抗力によるものであることを 証明できるときは、責任を負わない。被害者に損害の発生について重大な過 失があるときは、占有者または使用者の責任を軽減することができる。

第 73 条 高空、高圧、地下掘採活動に従事し、または高速鉄道運輸車両(工 具)を使用し、他人に損害を加えたときは、経営者が不法行為責任を負う。

ただし、損害が被害者の故意または不可抗力によるものであることを証明で きる限り、責任を負わない。被害者には損害の発生について過失があるとき は、経営者の責任を軽減することができる。

第 74 条 高度の危険物を遺失または廃棄をし、他人に損害を加えたときは、

所有者が不法行為責任を負う。所有者が高度の危険物の管理を他人に委ねた ときは、管理者が不法行為責任を負う。ただし、所有者に過失があるときは、

管理者と連帯して責任を負う。

(22)

第 75 条 法律に違反して高度の危険物を占有し、他人に損害を加えたとき は、違法占有者が不法行為責任を負う。所有者、使用者が他人の違法占有の 防止について高度の注意義務を尽くしたことを証明できない限り、違法占有 者と連帯して責任を負う。

第 76 条 許可なく高度危険な活動区域または高度危険物放置区域に立ち入 り、損害を被った場合については、管理者が警告措置を講じ、かつ警告義務 を尽くしたときは、その責任を軽減または免除することができる。

第 77 条 高度危険責任を負う場合につき、法律が賠償限度額を定めている ときは、その規定に従う。

第十章 飼養動物責任

第 78 条 動物を飼養し、他人に損害を加えたときは、動物の飼養者または 管理者が不法行為責任を負う。ただし、損害が被害者の故意または重大な過 失によるものであることを証明できる限り、その責任を軽減または免除する ことができる。

第 79 条 管理規定に反し、動物に対して安全措置を講じていないことによ り、他人に損害を加えたときは、動物の飼養者または管理者が不法行為責任 を負う。

第 80 条 猛犬などの飼養を禁じられた危険な動物を飼養し、他人に損害を 加えたときは、動物の飼養者または管理者が不法行為責任を負う。

(23)

第 81 条 動物園の動物が他人に損害を加えたときは、動物園が不法行為責 任を負う。ただし、管理職責を尽くしたことを証明できる限り、責任を負わ ない。

第 82 条 遺棄された動物、または逸走動物が、遺棄された期間中または逸 走期間中に、他人に損害を加えたときは、動物の原飼養者または原管理者が 不法行為責任を負う。

第 83 条 第三者の過失により、動物が他人に損害を加えたときは、被害者 は動物の使用者もしくは管理者、または第三者に賠償を請求することができ る。動物の飼養者または管理者は賠償した後に、第三者に対し求償権を有す る。

第 84 条 動物を飼養するに際しては、法律を遵守し、社会公徳を尊重し、

他人の生活を妨害しないようしなければならない。

第十一章 物件損害責任

第 85 条 建築物、工作物またはその他の施設およびこれに設置され、また はこれに繋留された物が脱落、または墜落したことにより、他人に損害を加 えたときは、所有者、管理者、または使用者は自己に過失がないことを証明 できない限り、不法行為責任を負う。所有者、管理者、または使用者は賠償 後に、他の責任者が存在する場合には、その他の責任者に対し求償権を有す る。

(24)

第 86 条 建築物、工作物またはその他の施設が倒壊し、他人に損害を加え たときは、発注者(建築単位)は施工者(施工単位)とが連帯して責任を負 う。発注者、施工者は賠償後に、他の責任者が存在する場合には、その他の 責任者に対し求償権を有する。

その他の責任者の原因によって、建築物、構築物またはその他の施設が倒 壊して、他人に損害を加えたときは、その他の責任者が不法行為責任を負う。

第 87 条 建築物の中から放擲された物品、または建築物から墜落した物品 により、他人に損害を加えたときは、具体的な不法行為者が確定し難い、か つ自己が不法行為者でないことを証明できない限り、加害原因となった建築 物の使用者がこれを補償する。

第 88 条 堆積物が倒壊し、他人に損害を加えたときは、堆積者は自己に過 失がないことを証明できない限り、不法行為責任を負う。

第 89 条 公共道路に通行妨害の物品を堆積し、倒置し、散乱させて他人に 損害を加えたときは、関係単位(道路管理者)または個人が不法行為責任を 負う。

第 90 条 公園、果樹園等(園林)の樹木の折断により、樹木の所有者また は管理者は自己に過失がないことを証明できない限り、不法行為責任を負う。

第 91 条 公共場所または道路に掘採し、地下施設の修繕または取り付けを 行うような場合に、明らかな標識を設置していないとともに、安全措置を講 じていないことにより、他人に損害を加えたときは、施工者は不法行為責任 を負う。

(25)

マンホール等の地下施設により他人に損害を加えたときは、管理者は管理 責任を尽くしたことを証明できない限り、不法行為責任を負う。

第十二章 附則

第 92 条 本法は、2010 年 7 月 1 日から施行する。

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