わが国の初等・中等社会科教員養成の実態に関する基礎的研究(Ⅰ)
−大学主催の10年次研修の実態から見るわが国の教員養成−
Investigation of the Actual Situation of Teachers Colleges Training for the Students and Active Teachers in Japan (1)
: From Social Studies Teachers Training in the 10
thyear by Teachers College
渡 部 竜 也
Tatsuya WATANABE
社会科教育学* 要旨
わが国におけるこうした教員養成カリキュラムに関する研究は,教科の枠を超えた全体論的な教師教育の議論は ともかくとして,国語科,理科,音楽科などの教科専門教員育成に特化したものに関しては,特に80年代以降,活 発な議論や研究がなされなくなっていった。社会科も例外ではない。わが国における社会科教員養成のカリキュラ ムは,大枠が免許法等によって定められている他は,そのカリキュラムの具体化は各大学や大学教員にほぼ一任さ れている。そのため,教員養成カリキュラムの中身については,学内で議論することはあっても,他大学との間で は相互不介入の意識もあり,議論されることは元来少なかった。そこに,社会科教員養成に関する研究の衰退が,
こうした事態を加速させることになった。実際のところ,自分の所属する大学以外の教員育成については,多くの 大学関係者は知らないのが今日の実情である。当然,他大学の方針について情報を殆ど得ることがないままに,自 身の大学のカリキュラムを策定していたのでは,相対化して見ることが困難となり,自分の大学のカリキュラムを 抜本から問い直してみたり,改善してみたりすることが出来ないままとなる。
今後,社会科教員として最低限求められる基準を作成せよといった課題が国側からも,そして世間一般からも求 められてくることが予想される中で,社会科教員養成カリキュラムは,それを作成するだけではなく,これを相対 化して考察し,その批判検討を可能とする理論をも構築しておかないと,研修者の手によって作成された社会科教 員養成プランを画一的に,そして無批判なままに現場に押し付けてしまう危険性もある。このことに問題意識を 持った筆者は, 遅ればせながら ではあるが,わが国における教員養成の実態を調査し,わが国の社会科教員養 成の多様な動向を包括的かつ体系的に捉える類型理論を構築したいと考えている。
まず筆者は,今年度行われた「各大学社会科研究室の『現職教員の10年次研修』の実態」に関しての調査結果を 基に,わが国の教員養成カリキュラムには,大きく「社会諸科学教授型」養成,「現代課題対応型」養成,「授業理 論相対型」養成の3つが存在するのではないかと予想を立てる。そして,それらの代表的な教員養成カリキュラム を入手し,その特質と思想的背景,期待される効果と課題について考察していく。
この研究は継続研究である。今回は,わが国の社会科教員養成のカリキュラムには大きく3つのタイプが存在す るのではないか,という仮説を生み出し,その可能性を論証することに今回の研究は焦点を当てる。今後は,この 3つ以外の教員養成に関する調査や,より詳細な実態調査を進めていきたい。
* Department of Education(Social Studies)
渡部:わが国の初等・中等社会科教員養成の実態に関する基礎的研究(Ⅰ)
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