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1.研究室の概要

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Academic year: 2021

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第 83 巻 第 2 号 (2019) (53) 139

1.研究室の概要

 当研究室は,九州の玄関口である小倉駅に程近い戸畑 キャンパス内に位置している。隣接する響灘・洞海湾沿岸 には広大な工業地帯が広がっており,「ご安全に」が挨拶と して多用される土地柄であるが,キャンパス周辺は緑も多 く比較的静かな文教地区である。当研究室ではウェット塗 布技術を研究対象の柱としており,アジアにおける塗布分 野の情報拠点の一つとなることを目指している。電池,建 材,包装,医療パッチから光沢紙に至るまで,塗布技術に よって生み出されるフィルム部材は多彩である。それらの 製造プロセスに共通の課題を抽出し,基盤技術として体系 化するアプローチは化学工学の得意とするところであり,

ウェット塗布は解決すべき課題の宝庫に感じられる。研究 室は山村方人教授,馬渡佳秀助教

,

大学院博士後期課程

2

(うち社会人学生1名),博士前期課程

10

名,学部4年生5名

(うち

6年一貫コース学生1名)

,早期配属の学部3年生1名の計

18

名で構成されている(2018年10月現在)

2.研究内容

 学術的に見た塗布は①移動現象論,界面科学,ソフトマ ター物理,トライボロジー,粉体工学などの境界分野であ ること,②時間・空間スケールの異なる現象が同時に進行 するマルチスケール問題であること,③動的な非平衡現象 が大きな役割を果たすことなどの特徴を有する。当研究室 では特にコロイド,高分子ブレンド,液晶などを利用して

「微細な界面を大面積で創る」ためのプロセス工学の一つと して塗布技術を位置づけ,諸現象の基礎メカニズムを理解 することを目的として,以下の検討を進めている。

2.1 コロイド分散液の乾燥過程における小粒子偏析  バイモーダルな粒径分布を持つコロイド分散液体フィル ムを高速乾燥させると,乾燥膜表面に小径粒子が優先的に 偏在する。この偏析現象は積層構造を発現させたい場合に は望ましいが,厚み方向に均一な小粒子分布が求められる 部材に対しては避けられるべきである。我々は小粒子を蛍 光ナノ粒子に置き換え,乾燥中の発光強度の時間変化から 表面偏析量を評価する手法を開発した1)。この手法をラ テックス−ラテックス粒子分散系1)や黒鉛−ラテックス分 散系2)に適用し,小粒子偏析が

2

段階で生じることを明ら かにしている。

2.2 非平衡相分離による乾燥促進と溶媒自己集積  互いに溶け合わない異種高分子成分を,共通溶媒に溶解

九州工業大学大学院 工学研究院物質工学研究系応用化学部門 化学プロセス工学研究室

山村方人

研究室紹介

させた溶液から溶媒が乾燥すると,スピノーダル分解また は核生成によって,液内部に相分離構造が発現する。我々 は,液内拡散律速の条件下では液中の構造発現が溶媒乾燥 を抑制3)または促進4)することを,精密な乾燥速度計測を 用いて明らかにしている。さらにこの乾燥抑制・促進効果 の発現が,相界面における溶媒集積層の動的発達・過程に 起因することを,蛍光・質量同時計測による乾燥過程の可 視化によって実証している。

2.3 高速塗布時における動的接触線の安定化

 ウェット塗布は,固体表面上の気体を液体で置換する操 作であるから,必然的に気液固

3相接触線の形成を伴う。

この動的接触線が力学的に不安定となると,液中へ気泡が 同伴され,様々な塗布欠陥が生じる要因となる。我々は液 中に固体粒子を微量分散すると,気泡同伴が生じる塗布速 度の上限が増加することを実験・理論の両面から明らかに した5)。さらに分散粒子による接触線の安定化と,慣性力 によるそれとを共存させることで,10倍の高速塗布が可 能となることを示している6)

3.人材育成

 実プロセスの課題にヒントを得て研究テーマを設定する と,現場を知らない学生の多くは,その背景を把握し自分 の言葉で研究目的を説明することに四苦八苦する。ところ が,コンサルティングや共同研究のために研究室を訪問頂 いた企業技術者から,アドバイスやコメントを受けると,

それに刺激を受けて急成長する学生が少数ながら現れる。

興味深いことに,同じアドバイスを教員が与えても同様の 効果は得られない。化学工学のような実学では,産学が適 切なタイミングで出会うことの意味は大きく,①高い目標 を設定しつつ,②第

3者から助言を受ける機会を意識的に

作ることが,組織の中で閉じた人材育成を目指すよりもよ り良い結果を与えるように思う。

参考文献

1)Langmuir, 29, 8233-8244(2013) 2)J. Coat. Technol. Res., 14, 1-6(2017) 3)AIChE J., 48, 2711-2714(2002)

4)Chemi. Eng. Process.: Process Intensification, 68, 55-59(2013)

5)AIChE J., 51, 2171-2177(2005) 6)Chem. Eng. Sci., 61, 5421-5426(2006)

公益社団法人 化学工学会 http://www.scej.org/

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参照

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