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小学校建築における「学級ユニット型」に関する研究-クラススペース拠点型学習に着目して- [ PDF

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Academic year: 2021

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42-1 1. 研究の背景と目的  ” 教育システムのオープン化 ” に伴い、わが国では 学習活動の多様な展開を可能にするスペースをもつ オープン・プラン型学校建築が登場した。1985 年の 多目的スペース補助制度制定を期に全国的な広がりを みせたオープン・プラン型学校建築は、一般に “ クラ ス単位の一斉学習に特化する学級教室を確保しながら これに連続・近接した位置にオープン・スペース、多 目的スペースを設けるようなかたちで普及、発展して きた文 1)”。そこでは、学年のまとまりとの対応関係の もとに、空間の「連続性」や「多目的性」、「フレキシビ リティ」が重視され、学年合同での運営を主としたス ペース(以下、「学年ユニット型」)として一体化されて きた。  しかしながら、実際のオープン・プラン型学校建 築では、学級単位の学習活動がクラススペース(以下、 CS) において展開し、必要に応じてその周辺スペース にて学習活動が同時展開する「CS 拠点型学習」が多く みられ(図 1)、隣接する多目的スペース(以下、MS) は CS 内における学習活動の展開を補助するスペース として重要となる。このため一方で、他学級に対す る配慮等により MS での学習活動の展開を控え、CS 内 における学習活動の無理な展開が多くみられるなど、 CS 拠点型学習の観点より「学年ユニット型」は見直さ れる必要性が高まっていると考えられる。今後は学級 単位での運営を主としたスペース(以下、「学級ユニッ ト型」)として、CS とその周辺スペースの再体系化が 重要となる。  本研究では、まず「学年ユニット型」の空間計画で の CS の位置づけを、① MS における活動の実態、②教 員のスペース利用に対する認識、③ CS とその周辺ス ペースにおける家具・物品の設置状況により整理する。 次に、CS 拠点型学習について、④学習活動が展開す るスペースを整理し、さらに、⑤学習活動の展開の時 系変化に着目し、②・③の視点と併せてスペースの環 境的側面について詳細な分析を行うことで、小学校建 築における「学級ユニット型」に関する知見を得るこ とを目的とする。

小学校建築における「学級ユニット型」に関する研究

クラススペース拠点型学習に着目して

-鵜口 和也 2. 研究の方法  本研究の概要を表 1 に示す。まず公立小学校を対象 として、①「施設台帳」、「学校要覧」を中心とした資料・ 文献調査、②児童と教員の行動観察を行い、本調査に おける分析の視点を明確化した。本調査では、オープ ン・プラン型学校建築であり、開校当初から先進的な 教育的実践が展開されている Hm 小と Mk 小(「取り出 し学習」専用のスペース)を調査対象とし(図 2)、③教 員へのヒアリング・アンケート調査(12 名、回収率 100%)、及び、④児童と教員の行動観察調査を行った。 行動観察 行動観察調査 資料・文献調査 県教育委員会 本調査の対象校を選定するために、県内の公立小学校 103 校分の「施設台帳」を入手した。 対象校の基本情報、運営方針等を把握する ために、「学校要覧」、「授業計画」を入手した。 本調査における分析の視点を明確化するため に、児童と教員の行動観察を行った。 クラススペース拠点型学習の実態を分析する ために、教員へのアンケート・ヒアリング調 査を行った。〔12 名,回収率 100%〕 クラススペース拠点型学習の実態を分析する ために、児童と教員の行動観察調査を行った。 2010.9.24 2010.7 2010.11 2010.4∼ 2010.9 2010.10∼ 2010.12 2010.10∼ 2010.12 Mk 小学校 県内の 公立小学校 Hm 小学校 Mk 小学校 Hm 小学校 Mk 小学校 Hm 小学校 方法 時期 対象 内容 アンケート・ ヒアリング調査 特別教室棟 管理部門棟 昇降口 至 体育館 MS CS CS CS MS CS CS CS 7500 2500 9950 2050 「取り出し学習」専用スペース MS CS CS CS MS CS CS 学年ユニット :  1年生ユニット     :  2年生ユニット     :  3年生ユニット     :  4年生ユニット 凡例 〔1F〕 配置図〔Hm小〕 〔2F〕 「取り出し学習」専用スペース〔Mk小〕 学年 竣  工 : 1991年 学 級 数 : 19〔特3〕 児 童 数 : 496 人 ※ 低学年は35人以下学級 学級数 1年 79 3年 103 76 5年 89 6年 児童数 3※ ※ 3 2 2 2年 71 4年 78 3 3 学年 竣  工 : 2000年 学 級 数 : 29〔特2〕 児 童 数 : 920 人 学級数 1年 120 3年 143 167 5年 6年 児童数 4 4 2年 145 4年 4 5 178 167 5 5 クラススペース〔中央〕 クラススペース拠点型学習の概要 クラススペース前方 クラススペース後方 クラススペース横 多目的スペース 少人数指導専用のスペース 学習活動〔担任指導〕 の連続的展開 Type1 学習活動①が展開するスペース〔学①〕 学① 学② 学① 学② 学① 学② 学① 学② 学③ T = t0 T = t0 T = t0 T = t0 学習活動〔担任指導〕 の分節的展開 連携指導 クラススペース中央において、担任指導による学級単位での学習活動が展開し、 必要に応じてその周辺スペースにて学習活動が同時展開する。 T = t0 Type2 Type3 T = t0 表 1. 研究概要 図 2. 調査対象 図 1. 研究の視点

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42-2 3. クラススペースの位置づけ 3-1. 多目的スペースにおける活動の実態   ヒアリング・アンケート調査より、MS での活動実 態を表 3 に示す。これによると、制作、問題演習等は 学級単位と学年合同において多く、個別指導、遊び、 展示・鑑賞等は学級単位において多くみられる。次に、 これらを MS の利用形態の分類文 2)(表 2)により整理す ると、学級単位は最も多くみられるが、制作等はす べての利用形態で最も多く、占有利用では展示・鑑賞、 個別指導等、また同時利用においては個別指導、集会 等が多くみられる。 3-2. 教員のスペース利用に対する認識  ヒアリング調査より、CS 拠点型学習において、国 語、算数、理科、社会等の座学系授業が多い教科(以 下、座学系教科)と生活科、図画工作、音楽等の実習 系授業の多い教科(以下、実習系教科)での利用した いスペースを図 3 に示す。これによると、座学系教科 にて利用したいスペース(以下、座学系スペース)の 多くは CS 内のスペースであり、CS 内は高い集中が必 要な学習活動のためのスペースとして教員に認識され ていることがわかるが、ヒアリング調査によると、他 学級においても座学系教科の学習活動が展開しており、 MS での学習活動の展開が他学級の視界に入ることを 問題視していることがわかった。また、実習系教科に て利用したいスペース(以下、実習系スペース)につ いてはCS内のスペースにMSを加えたものが多くみら れ、ヒアリング調査によると、他学級においても同一 教科の学習活動が展開しているためとわかった。 3-3. スペースの分類と家具・物品の設置状況  観察調査より、CS とその周辺スペースの詳細を図 4 にまとめ、スペースを分類した。これによると、MS においては学年の教具等や学級の工作材料、成果物、 教具等が設置され、図 3 によると学年の物品は MS に 分散して設置されており、学級の物品は各学級の座学 系・実習系スペースを中心として設置されている。  一方で、一斉教授のために学習机が配置される <CS-中 > においては、絵具やファイル、ランドセル等の児 童の物品が棚に多く設置され、最後列の学習机と後面 壁の間である <CS- 後 > においても同様の傾向がみられ る。また、最前列の学習机と前面壁の間である <CS-前 > においては、教師コーナー、担任の物品、提出物、 教具等が設置され、水道・配膳台が設置された <CS-横 > においても同様の傾向がみられるが、担任指導の 多くが <CS- 前 > とその近傍を中心として行われている ことがわかる。 凡例 3-1 3-2 3-3 : 実習系スペース : 座学系スペース : 物品・家具〔1組〕 : 物品・家具〔2組〕 : 物品・家具〔3組〕 : 物品・家具〔学年〕 : 教具等 (ランドセル、楽器、絵具、学習机は除く) 4-2 4-1 特支 2-1 2-2 2-3 1-1 1-2 1-3 1 年生ユニット 2 年生ユニット 3 年生ユニット 4 年生ユニット Ht Bs Bs BsBs Wa Ss Ss Ms Tt St St St Ta Or Ss Ms Pi 学年の教具等,工作材料,図書,成果物,楽器 楽器,ファイル,ランドセル,算数セット,教具等 教具等,提出物,担任物品,工作材料,模造紙 MS CS-中 CS-横 教具等とは教科書,プリント教材,指導に使用する物品をさす CS-前 CS-後 担任物品,教具等,提出物,成果物,模造紙 ランドセル,楽器,絵具,図書,工作材料,成果物 低学年ユニット〔1-2〕 家具と物品 中学年ユニット〔4-1〕

Ta : キャレル St : 学習机 Tt : 教卓 Ht : 配膳台 Wa : 水道 Bs : 本棚 Ms : 可動式棚 Ss : 棚 Or : オルガン Pi : 絵画ラック バルコニー MS CS-前 CS-中 CS-後 Bs Bs Bs Ss St St Tt Ta Ta Ms Or Ss Ms Ms Ht Tt Tt Tt Pi CS-前 CS-中 CS-横 MS CS-後 異学年 合同 学年 合同 学級 占有利用 交互利用 同時利用 合計 N=10 N=67 N=84 3 22 18 16 3 27 33 35 4 占有 利用 類型 合計 類型 交互 利用 同時 利用 N=33 N=16 N=35 ① ② ③ ⑤ ⑦ ⑧ ⑨ ⑩ ⑪ 0 20 40 60 80 100〔%〕 0 20 40 60 80 100〔%〕 6 3 6 3 9 222 2 2 1 2 2 7 1 11 3 17 1 7 22 0 10 20 30 40 50 60 読書 , テスト , プリント等問題演習 , 一斉教授 丸付け・成果物確認 , 個別指導 活動名称 類型 ① ② 調べ学習 , 制作〔小〕 制作〔大〕 ③ 発表 〔全体〕, 話し合い〔小集団〕 ⑤ 合唱 ・楽器 ⑥ あそび ⑦ 集会 ⑧ イベント・行事 ⑨ 生活指導・相談 ⑩ 展示・鑑賞 ⑪ 読み聞かせ ④ 学級と学年合同における活動 利用主体と利用形態 学級単位の活動 6 8 9 9 9 4 3 7 3 8 10 6 7 5 3 1 0 0 0 0 33 学級 学年合同 20 学習活動 生活活動 数字〔回答数〕÷各活動の有効回答数×100 割合〔%〕 〔N=24 ( 学級 ) , 26 ( 学年 )〕 〔N=60 ( 学級 ) , 41 ( 学年 )〕 MS のみを利用 CS と MS を交互に利用 MS と CS を同時に利用 ■占有利用 ■交互利用 ■同時利用 合同活動の場合 学級活動の場合 合同活動の場合 学級活動の場合 合同活動の場合 学級活動の場合 CS CS MS MS CS CS CS CS CS CS MS MS CS CS CS CS CS CS MS MS CS CS CS CS : 学習活動の展開するスペース 凡例 図 4. CS とその周辺スペースの詳細 図 3. 利用したいスペースと物品・家具の設置状況 表 3. MS における活動の実態 表 2. MS の利用形態

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42-3 4. 担任指導の学習活動に関する分析 4.1 学習活動が展開するスペース  観察・ヒアリング調査より、CS 拠点型学習の担任 指導による学習活動を音・動きの発生度合により分 類(以下、音類型)し、展開するスペースを表 4 に示 す。これによると、座学系教科において音類型の小さ な学習活動が多く、実習系教科においては音類型の大 きな学習活動が多くみられ、学習活動の多くは座学 系スペース内である <CS- 中 > を中心として展開してい る。一方で、座学系教科の < テスト >、< 個別指導 > 等 は MS において展開し、また実習系授業の < 制作(大) >、< 成果物あそび > 等の大きなスペースが必要な学習 活動は、CS 内と MS において連続的に展開している。 4.2 学習活動の連続的展開  観察調査より、CS 拠点型学習の担任指導において、 単一の学習活動が <CS- 中 > で展開し、必要に応じてそ の周辺スペースへ連続的に展開する場面がみられた (図 5)。図 5 によると、<CS- 中 > において < 制作(大) > が展開し、その一部による MS への連続的展開がみ られるが、ヒアリング調査によると学年での時間調整 を行い、他学級においても同一教科の学習活動が MS で展開していることがわかった。 4.3 学習活動の分節的展開  観察調査より、CS 拠点型学習の担任指導において、 複数の学習活動が同時展開する場面が多くみられ(表 5)、特に座学系教科においては、<CS- 前 > を中心とし て担任指導の多くが行われ、音類型の異なる学習活動 がスペースを分けて同時展開する傾向(以下、分節的 展開)がみられた(図 6・7)。図 6 によると、<CS- 中 > で < プリント等問題演習(音類型Ⅰ)> が展開し、<CS-前 > 近傍では < 個別指導(音類型Ⅲ)> が同時展開して おり、また図 7 によると、<CS- 前 > と <CS- 中 > で < 一 斉教授(音類型Ⅱ)> が展開し、<CS- 前 > 近傍では < テ スト(音類型Ⅰ)> が同時展開しているなど、座学系 スペース外であっても座学系教科の学習活動が展開し ていることがわかる。これはヒアリング調査により、 担任指導は <CS- 前 > を中心として行われており、学習 活動の分節的展開において学級の全児童を指導するた めには、<CS- 前 > もしくはその近傍での学習活動の展 開が必要なためと判明した。一方で、音類型の異なる 学習活動が CS 内の同一スペースにて同時展開する場 面もみられた(図 8)。図 8 によると、<CS- 中 > で < プ リント等問題演習(音類型Ⅰ)> が展開し、<CS- 前 > と <CS- 中 > では < 丸付け・成果物確認(音類型Ⅲ)> が同 時展開しているが、丸付けを待つ児童が <CS- 中 > にな テスト 調べ学習 個別指導 一斉教授 丸付け・成果物確認 プリント等問題演習 発表〔全体〕 少しの音 を生じる 学習活動 動き、少 しの音を 凡例 学習活動〔横軸〕 : MS : CS内のスペース 学習活動〔縦軸〕 学習活動の同時展開の組み合わせ 一斉教授 読書 テスト プリント 発表〔全〕 成果確認 個別指導 調べ学習 制作〔大〕 制作〔小〕 話し合い あそび 合唱・楽器 音類型Ⅲ 音類型Ⅱ 音類型Ⅰ 学習活動の名称は表 4 に掲げたものを略した。 ※ ※ プリント〔音類型Ⅰ〕× 個別指導〔音類型Ⅲ〕の場合 音類型Ⅳ 対象学級の座学系スペース 他学級からの視界 対象学級の実習系スペース 他学級からの視界 対象学級の座学系スペース b a c CS-前 CS-前 b a c 他学級からの視界 他学級の実習系スペース : <制作〔小〕>を行う児童〔対象学級〕    : <制作〔小〕>を行う児童〔他学級〕    : 教員  事例 1 図画工作〔実習系教科〕 <作品制作〔小〕> b a c 凡例 凡例 CSとMSにて、学習机の間隔を広げて絵画の制作〔小〕〔音類型Ⅲ〕を行う。絵具を使用するため、児童は適 宜水道へと向かうが、学年ユニットの他学級も同じ学習活動を学級単位で行っている。 : <問題演習>を行う児童     : <個別指導>を受ける児童     : 担任 <CS-中>にて、算数の復習を問題演習〔音類型Ⅰ〕により行う。MSのキャレルにて、独力で解答できない問 題についての個別指導〔音類型Ⅲ〕を受ける。 <問題演習> <問題演習> 休憩 休憩 休憩 <個別指導> <個別指導> <問題演習> 授業終了 35 30 25 40 45分 事例 1 算数〔座学系教科〕 <問題演習>×<個別指導> 〔t=40〕 b c a 15 : <一斉教授>を受ける児童     : <テスト>に解答する児童     : 担任 <CS-中>にて算数の復習を一斉教授〔音類型Ⅲ〕により行う。MSのキャレルにて、欠席のために未解答で あったテスト〔音類型Ⅰ〕に解答し、テストを終えた児童より、<CS-中>にて一斉教授を受ける。 <一斉教授> <テスト> <テスト> 休憩 休憩 休憩 授業開始t=0 20 25分 事例 2 算数〔座学系教科〕 <一斉教授> × <テスト> 〔t=15〕 凡例 <一斉教授> <一斉教授> : 最も多い利用形態     : 次に多い利用形態  ※教員の巡回は含まない 凡例 個別指導※ 学習活動 音類型 Ⅰ Ⅱ Ⅲ Ⅳ 名称 テスト 一斉教授 高い集中 が必要な 学習活動 少しの音 を生じる 学習活動 動き伴い、 少しの音 を生じる 学習活動 動き伴い、 多くの音 を生じる 学習活動 読書 丸付け・成果物確認 プリント等問題演習 発表〔全体〕 調べ学習 話し合い〔小集団〕 あそび 合唱・楽器 制作〔小〕 制作〔大〕 座学系〔低学年〕 MS CS 前 CS 中 CS 後 CS 横MS CS 前 CS 中 CS 後MS CS 前 CS 中 CS 後 CS 横MS CS 前 CS 中 CS 後 座学系〔中学年〕 実習系〔低学年〕 実習系〔中学年〕 表 4. 担任指導の学習活動が展開するスペース 表 5. 複数の学習活動の同時展開 図 6. 分節的展開の場面 図 7. 分節的展開の場面 図 5. 連続的展開の場面

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42-4 する傾向がみられること。 5)連携指導による「取り出し学習」では、掲示物や教 具等を多用した少人数指導が行われ、専用スペースに おいて指導が行われる傾向がみられること。  以上より、クラススペースとその周辺スペースでは、 担任が学級の全児童を指導できるスペースの確保が最 も重要と考えられ、今後は担任指導が行われるスペー スを中心とした体系化が重要と考えられる。 らび、他の児童の問題演習に支障をきたしていると考 えられる。これはヒアリング調査により、学習活動の 分節的展開が必要であるが、他学級への配慮より MS での学習活動の展開を控えており、座学系スペース内 である <CS- 前 > とその近傍にて学習活動が展開してい るためと判明した。 5. 連携指導の学習活動に関する分析 5-1. 「取り出し学習」の展開  観察調査より、CS 拠点型学習において、担任指導 の学習活動が CS とその周辺スペースにおいて展開し、 異なるスペースにおいて加配教員指導の「取り出し学 習」が同時展開する場面がみられた(図 9)。「取り出し 学習」とは、習熟度が学級全体のそれと比べて低い児 童を対象とした学習補助的な意味があるが、本調査対 象では児童の習熟度と希望を事前確認し、対象となる 児童を決定する方式を採っていた。図 9 によると、「取 り出し学習」専用スペースにおいて、学習姿勢や計算 の基本等を示した掲示物、教具等が多く設置されてい るが、< 個別指導 >、< 話し合い > 等の学習活動がこれ らの掲示物、教具等を多用し、展開していることが わかる。これは、「取り出し学習」の対象となる児童は、 基礎的な学習内容の理解が不十分で、その多くは口頭 説明・板書のみでは学習内容の理解を深めることが難 しく、掲示物を用いた基礎内容の復習や教材等を用い た視覚的な指導が必要なためであった。 6. まとめと今後の課題  本研究により明らかとなった事柄を以下にまとめ、 想定される「学級ユニット型」を図 10 に示す。 1)座学系教科にて利用したいスペースの多くは、ク ラススペース内となっており、クラススペース内は所 属する児童に対して高い集中力が必要となる学習活動 のためのスペースとして認識されていること。 2)クラススペース拠点型学習の指導形態には、主に 担任指導によるものと連携指導によるものがあるが、 特に担任指導によるものでは、クラススペース前方を 中心とした指導が行われており、学級の全児童を指導 するためには、その近傍における学習活動の展開が重 要となること。 3)担任指導による実習系教科では、他の教科に比べ 大きなスペースを必要とし、そこでの学習活動はクラ ススペース中央からその周辺スペースへ連続して展開 する傾向がみられること。 4)担任指導による座学系教科では、学習活動はクラ ススペース前方もしくはその近傍で展開するが、特に 音類型の異なる学習活動はスペースを分けて同時展開 他の「学級ユニット型」 と接続する 児童の学習机が設置され 学習活動の展開の中心と なる 音類型の異なる学習活動が スペースを分けて展開する ■ 分節的展開 単一の学習活動が連続的 に展開する ■ 連続的展開 クラススペース前方か らの担任指導 ※ ※ ※ ※ 「学級ユニット型」のイメージ 音や動きの発生度合の異 なる学習活動の同時展開 を許容する 多目的スペース 大きなスペースを必要と する学習活動の展開を補 助する 多目的スペース クラススペース前方 「取り出し学習」が展開し 掲示物や教具等が設置さ れている 教師コーナー、成果物、教 具等が設置され、担任によ る指導の多くが行われる 「取り出し学習」専用スペース クラススペース中央 0 授業開始 授業の準備 授業終了 t= 6 15 24 33 42 45 時系変化 計算法 課題について、児童 同士で話し合う。 今回学習する課題 について説明する。 前回内容の 復習を行う。 休み時間に移 動を完了する。 課題について、学習のまとめを行う。 学習内容に関する問題演習を行う。 次回予告を行う。 移動 <テスト> 移動 <一斉教授> 移動 <一斉教授> <一斉教授> 「取り出し学習」専用のスペース 所属学級 <話し合い> <問題演習><個別指導> 計算法 長さ単位 球の模型 球の模型画用紙 球の模型画用紙 計算法長さ単位 球の模型 球の模型 立方体の模型 a 21 ④ 学習内容の掲示物 ② 教具の収納棚 図工用の教具 児童への心理的影響 を考え、授業中の視界 に入りにくいスペース 隅に設置する a ① 計算プリント棚 ④ 学習内容の掲示物 ③ 学習姿勢の掲示物 : <話し合い>を行う児童     : 加配教員  凡例 プレテストを行 い、児童の習熟 度と希望により 対象とする児童 を決定する。 人数 内容 時間 ① 3-6 人〔最大 10〕/学級 学年 3・4・5・6 年生 算数の基礎・基本 2-3 時間/週 場所「取り出し学習」専用スペース〔図工室〕 「立体の表面積を求める」における<話し合い>  〔t=21〕 概要 教材 授業中や宿題の課題に利用するため、算数 のプリントを備える ② ③ ④ 視覚的説明に利用するため、立体模型、カー ド、時計、おはじき等を多数備える 基本事項の理解・定着のため、分数計算、割 り算、単位換算等を示す掲示物を備える 学習姿勢の定着のため、物事の考え方、発 表の仕方等を示す掲示物を備える CS-前 対象学級の座学系スペース a b 凡例 : <プリント等問題演習>を行う児童    : <丸付け・成果物確認>を待つ児童     : 担任 <CS-中>にて、算数のまとめを問題演習〔音類型Ⅰ〕により行う。<CS-前>にて、演習を終えた児童は、担任の丸 付け〔音類型Ⅲ〕を受けるが、<CS-中>に児童がならび、演習を行う児童の集中に支障をきたしている。 <問題演習> 待つ 休憩 a 休憩 <問題演習> 授業開始t=0 20 30分 事例 1 算数〔座学系教科〕 <問題演習> × <丸付け> 〔t=25〕 b 待つ 25 <丸付け> <丸付け> 図 10. 本研究の総括 図 8. CS 内における同時展開 図 9. 「取り出し学習」が展開するスペース 〔謝辞〕 本研究を行うにあたり、Hm小、Mk小の先生方をはじめとする多くの先生方に多大な     ご協力をいただきました。 記して感謝いたします。 文2) 赤木建一、岩本結、古屋進太郎、志波文彦、竹下輝和:利用集団と利用方式からみた熊    本市の多目的スペース利用実態,小学校における多目的スペースの建築計画史とそ    の空間構成(2),日本建築学会大会学術講演梗概集E1,P115∼116,2008.9 文1) 上野淳、連健夫:小学校オープンスペースにおける場・コーナーの形成に関する分析,    小学校オープンスペースの使われ方に関する調査・研究(1),日本建築学会計画系論    文報告集,第386 号,P90∼100, 1988.4

参照

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