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浅大腿動脈および膝窩動脈近位部の慢性完全閉塞病変に対する自己拡張型ナイチノールステント留置後 5 年の臨床成績 済生会横浜市東部病院循環器内科 阪本泰成先生平野敬典先生 [ 目的 ] 浅大腿動脈および膝窩動脈近位部 (SFPA) の慢性完全閉塞 (CTO) 病変に対して自己拡張型ナイチノールステント

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(1)

[ 文献紹介 ]

浅大腿動脈および膝窩動脈近位部の

慢性完全閉塞病変に対する自己拡張型ナイチノール

ステント留置後5年の臨床成績

REAL

-

FP

CTO

www.cordisjapan.jp

上記サイトでは医療従事者を対象として様々な情報をご提供しています。

平野 敬典

先生

済生会横浜市東部病院 循環器内科

阪本 泰成

先生

済生会横浜市東部病院 循環器内科

Sakamoto Y, et al., Five-year outcomes of self-expanding nitinol stent implantation for

chronic total occlusion of the superficial femoral and proximal popliteal artery.

Catheter Cardiovasc Interv. 2013

(2)

 経皮的血管形成術(PTA)と引き続くプロビジョナルなステン

ト留置による血管内治療(EVT)は、その合併症発生率およ

び周術期死亡率の低さや再治療の簡便さから、鼠径靭帯以

下の症候性閉塞性動脈硬化症患者に対する第一選択の治

療方法となっており

1

、鼠径靭帯以下の動脈に狭窄または閉塞

を有した多くの症例に対する有用な血行再建方法として確立

されつつある

2

。無作為化比較試験のメタ解析では、SFPAに

短い病変を有する症候性患者に対して、バルーン拡張術にプ

ロビジョナルなステント留置を加えた場合とルーチンでステント

留置を施行した場合の標的血管血行再建術(TVR)を比較

した結果、その施行率には有意差がないことが報告されてい

る。しかし、次世代のナイチノールステントではTVR施行率は

低い傾向が示唆されたため、SFPAにおいてステントはバルー

ン血管形成術後のベイルアウトとして使用するのが望ましい

3

技術やデバイスの進歩により、SFPAの慢性完全閉塞(CTO)

など複雑な病変へのEVT成功率は約90%に達し

4, 5

、また病

変長が15cm以下であれば自己拡張型ナイチノールステント

の方がバルーン血管形成術単独よりも開存率が高いため

6-9

EVTの適応は近年拡大しつつある。しかし、SFPAのCTOに

浅大腿動脈および膝窩動脈近位部の慢性完全閉塞病変に対する

自己拡張型ナイチノールステント留置後5年の臨床成績

PVD-末梢血管疾患、血管内治療、自己拡張型ナイチノールステント

キーワード

[ 目的 ]

浅大腿動脈および膝窩動脈近位部(SFPA)の慢性完全閉塞(CTO)病変に対して自己拡張型ナイチノールステント留置後の5年

開存率および再狭窄の予測因子を検討する。

[ 背景 ]

SFPAのCTOに対する自己拡張型ナイチノールステント留置後の長期開存率に言及した報告は少ない。

[ 方法 ]

日本の計4施設で、2004年1月~2009年12月の期間に自己拡張型ナイチノールステント留置による血管内治療を施行したSFPA病

変を有する下肢閉塞性動脈硬化症患者861例、1,017肢のうち、SFPAのCTOに対して自己拡張型ナイチノールステントを留置し

た352例、383肢の経過を5年間観察し、開存率や再狭窄の予測因子について後ろ向きに検討を行った。

[ 結果 ]

平均年齢は72±9歳で、34%が女性症例であった。64%の症例が糖尿病を有し、25%が重症虚血肢であった。平均閉塞長は194±

89mm、平均総ステント長は198±87mm、平均ステント径は7.1±0.9mmであった。治療後5年間の一次開存率および二次開存率は

それぞれ51.8%および79.5%であり、外科的血行再建回避率、肢切断回避率および全死亡回避率はそれぞれ96.1%、96.2%および

78.4%であった。多変量解析の結果、女性(OR=1.95、p=0.0051)および平均ステント径(OR=0.77、p=0.0324)が、独立した再狭窄

の予測因子であった。

[ 結論 ]

女性および径の小さいステント留置が必要なSFPAのCTO病変に対する自己拡張型ナイチノールステント留置後の一次開存率

維持は難しかったが、二次開存率については許容できる結果であった。

INTRODUCTION

済生会横浜市東部病院 循環器内科 

阪本 泰成

先生

 平野 敬典

先生

(3)

対する自己拡張型ナイチノールステント留置後3年以上の開

存率に言及した報告はない

2

。本試験では、より多い症例数を

対象とした長期間の追跡試験の結果から、自己拡張型ナイチ

ノールステント留置後の成績を検討した。

 本検討は、日本国内の4施設(済生会横浜市東部病院、

関西労災病院、仙台厚生病院、小倉記念病院)による多施

設共同研究である。このREAL-FP1000(Retrospective

Analysis for Femoropopliteal Stenting of 1,000 Limbs)

は、医学雑誌編集者国際委員会(International Committee

of Medical Journal Editors)によって認められ、大学病院医

療情報ネットワーク-臨床試験登録システム(UMIN-CTR)に

登録されている (登録番号 UMIN000004425)。このデータ

ベースには、2004年1月から2009年12月の期間に新規SFPA

病変に対する自己拡張型ナイチノールステント留置によるEVT

の施行に成功した861例、1,017肢を登録した。いずれの症例

もSFPAに症候性病変(Rutherford分類2~6)を有し、運動

療法や十分な薬物療法にもかかわらずQOLの低下が顕著で

あった。サブ解析である本検討はSFPAのCTOに対して、自己

拡張型ナイチノールステントであるS.M.A.R.T.

®

CONTROL

®

ステントを留置し治療を行った352例、383肢を対象とした。

CTOの定義は造影で血管内腔に順行性血流が認められない

ものとした。すべての症例は6ヵ月以上のフォローアップがなさ

れた。この試験実施計画書はヘルシンキ宣言に従ってデザイン

し、各病院の倫理委員会の承認を得た。また、すべての患者

から書面による同意を得た。

 すべての症例、特にTASCⅡ分類のC型およびD型病変

については、血管外科医と協議した上でEVTの適応を決定

した。本検討におけるSFPA病変へのEVT適応は、狭窄率

が70%以上で流入血管病変がないものとした。EVT手技の

方法は、各医療機関の術者の判断にゆだねられた。一般的

には、大腿動脈から6Frのシステムを使用したが、閉塞部が

総大腿動脈分岐部に近い場合は、対側大腿動脈アプロー

チを選択した。オーバーザワイヤーバルーンまたはマイクロカ

テーテルのバックアップ下に、0.014インチまたは0.035インチの

ガイドワイヤーを進めて閉塞部位を通過させた。Subintimal

angioplastyを行ったか、経皮的な超音波ガイドで手技を行っ

たかについては、術者の判断にゆだねられた。順行性アプロー

チが不成功の場合は、膝窩動脈からの逆行性アプローチに

て手技を施行した。ガイドワイヤーを通過させた後、十分な径

のバルーンを用いて病変を60秒間拡張した。ステント留置は

ACC/AHAガイドライン

1

に従い、バルーン拡張後の病変部圧

較差10mmHg以上、残存狭窄率30%以上、および/または順

行性血流を妨げる動脈解離の認められる場合に行った。ステ

ント径は対照血管径よりも約1~2mm大きいものを使用した。2

剤併用抗血小板療法(シロスタゾール100mg 1日2回、チクロピ

ジン100mg 1日2回またはクロピドグレル75mg 1日1回のいずれ

かとアスピリン100mg 1日1回を併用)をEVTの1週間以上前よ

り内服を開始し、追跡期間終了時まで継続した。リエントリーデ

バイスについては、この試験の実施時点で厚生労働省の認可

を受けていなかったため使用していない。

 自覚症状や足関節上腕血圧比(ABI)測定などの臨床項

目の評価は、手技前、手技から24時間後、72時間後および1ヵ

月後に行い、以後3ヵ月ごとに実施した。また、手技後は6ヵ月

ごとに超音波検査も実施し、再狭窄の有無を評価した。評価

項目は、一次開存率、二次開存率、主要有害事象(全死亡、

肢切断の有無、EVT後の外科的な血行再建術の必要性)、

Rutherford分類、ABI、超音波検査による再狭窄の有無、お

よびX線検査で評価したstent fractureの有無であった。再

狭窄は、超音波で測定したpeak systolic velocity ratioが

2.4以上と定義した

10

。Stent fractureの有無は、来院時に4方

向からのX線撮影を実施し、EVT症例の経験が1,000例を超

える2名の観察者が判定することによって、ステント支柱の明

確な離断(>1~2mm)ならびにそれに付随するステントのキン

クまたは位置ずれを評価した。膝関節屈曲位でのX線撮影は

実施しなかった。一次開存は、再狭窄がないこと、または再血

行再建未施行の場合と定義した。二次開存は、標的血管が

完全閉塞したが、再血行再建術により再開存したことと定義し

た。一次開存が維持されず、間歇性跛行または重症下肢虚

血の症状がある患肢については、外科的な血行再建術の方

が適切か否かを血管外科医と協議した上で、必要であれば

再度EVTを施行した。再狭窄病変に対して、バルーン血管形

成術またはステント留置のどちらを施行するかの選択につい

ては、各病院の術者の判断にゆだねた。石灰化は血管造影に

より評価した。肢切断はすべての切断と定義した。冠動脈疾患

(CAD)の既往は、安定狭心症、経皮的冠動脈インターベン

ション治療、冠動脈バイパス術または心筋梗塞の既往と定義し

た。脳血管疾患は、医師による一過性脳虚血発作または虚血

性脳卒中の診断の既往と定義した。膝下動脈のrunoffは手

技前後の血管造影により評価した。主要評価項目は、治療後5

年間の一次開存率であった。

PVD-末梢血管疾患、血管内治療、自己拡張型ナイチノールステント

SUBJECT AND METHODS

Follow-up and Outcomes

(4)

浅大腿動脈および膝窩動脈近位部の慢性完全閉塞病変に対する自己拡張型ナイチノールステント留置後5年の臨床成績

0

1.00

0.80

0.60

0.40

0.20

0.00

365

730

EVT後日数(日)

一次開存率

二次開存率

%/100

1460

1095

1825

   一次開存率

   二次開存率

 統計解析はすべてSAS 6.10ソフトウエアを用いて実施し

た。連続変数は平均±標準偏差で示した。一次開存率、二次

開存率および主要有害事象はKaplan-Meier法で評価し、患

者群間の生存率をlog-rank検定で比較した。多重ロジスティッ

ク回帰分析を使用して、一次開存に至らなかった予測因子を

検討した。単変量解析でp値が<0.1の因子を多変量回帰分

析モデルに投入した。単変量モデルに投入した共変量は、性

別、年齢、糖尿病、高血圧、脂質異常症、喫煙継続者、血液

透析、跛行(Rutherford分類2または3)、組織欠損または壊疽

(Rutherford分類5または6)、TASCⅡ分類のC型およびD型

病変、病変長、膝窩動脈下でのrunoff、使用したステント数、総

ステント長、平均ステント径、stent fracture、病変部位の石灰

化およびシロスタゾール投与であった。いずれの解析もp<0.05

を統計学的な有意差とした。

 SFPAのCTOに対して、S.M.A.R.T.

®

CONTROL

®

ステント

を留置した患者背景を

表1

に示す。女性患者は34%(119/352

例)で、平均年齢は72±9歳であった。計64%の患者(224/352

例)が糖尿病に罹患しており、13%の患者(46/352例)は腎

不全のため維持血液透析中であった。冠動脈疾患または脳

図1

ステント留置後5年間の

一次および二次開存率

一次開存(%) 100 79 69 63 58 52 No. at risk 383 258 152 92 35 13 二次開存(%) 100 91 86 84 82 80 No. at risk 383 294 185 114 43 20

患者数352例

年齢(歳)

72 ± 9

女性(%)

119 (34)

喫煙者(%)

115 (33)

高血圧(%)

325 (92)

脂質異常症(%)

147 (42)

糖尿病(%)

224 (64)

血液透析(%)

46 (13)

冠動脈疾患の既往(%)

188 (53)

脳血管疾患の既往(%)

103 (29)

表1 患者背景

383肢

治療前ABI

0.58 ± 0.14

Rutherford分類(%)

 カテゴリー2/3

68 (18)/219 (57)

 カテゴリー4/5/6

39 (10)/48 (13)/9 (2)

平均閉塞長(mm)

194 ± 89

TASC II分類(%)

 A/B

26 (7)/77 (20)

 C/D

112 (29)/168 (44)

膝下動脈のrunoff(%)<1/<0

117 (31)/21 (5)

平均ステント数(n)

2.2 ± 0.9

平均ステント径(mm)

7.1 ± 0.9

平均総ステント長(mm)

198 ± 87

シロスタゾール治療(%)

245 (64)

表2 患肢背景

Statistical Analysis

RESULTS

(5)

0

1.00

0.80

0.60

0.40

0.20

0.00

365

730

EVT後日数(日)

回避率

%/100

1460

1095

1825

   肢切断回避率

   外科的血行再建回避率

   全死亡回避率

0

1.00

0.80

0.60

0.40

0.20

0.00

365

730

EVT後日数(日)

一次開存率

%/100

1460

1095

1825

   TASC II A/B

   TASC II C/D

p=0.1125

血管疾患の既往がある患者は、それぞれ53%(188/352例)

および29%(103/352例)であった。75%(287/383肢)に間歇

性跛行、25%(96/383肢)に重症下肢虚血、15%(57/383肢)

に潰瘍または壊疽が認められた。患肢背景を

表2

に示す。治

療病変の平均閉塞長は194±89mmであり、病変はTASCⅡ

分類のA型が7%(26/383肢)、B型が20%(77/383肢)、C型

が29%(112/383肢)およびD型が44%(168/383肢)であっ

た。病変あたりの平均ステント数は2.2±0.9本、平均ステント径

は7.1±0.9mm、平均総ステント長は198±87mmであった。64%

(245/383肢)の症例にはステント留置後シロスタゾールが

投与された。観察期間中に、SFPAへのステント留置後stent

fractureが13%(49/383肢)の症例で認められた。治療5年

後の一次開存率および二次開存率はそれぞれ51.8%および

79.5%であり

図1

)、外科的血行再建回避率、肢切断回避率、

および全死亡回避率は、それぞれ96.1%、96.2%および78.4%

であった(

図2

)。また、治療5年後の一次開存率および二次開

存率をTASCⅡ分類A/BとTASCⅡ分類C/Dの2群間で比較

した結果、一次開存率は61%および48%(p=0.1125)

図3

)、

二次開存率は89%および76%であった(p=0.0574)

図4

)。単

変量解析の後に行った多変量解析による一次開存に至らな

かった予測因子は、女性(OR=1.95、95%CI=1.22~3.10、p=

0.0051)および平均ステント径(OR=0.77、95%CI=0.61~0.98、

p=0.0324)であった(

表3

)。

図2

ステント留置後5年間の

肢切断回避率、

外科的血行再建回避率

および全死亡回避率

図3

ステント留置後5年間の

一次開存率

(TASCⅡ分類A/Bvs.C/D)

肢切断回避率(%) 100 98 96 96 96 96 No. at risk 383 315 212 137 50 23 外科的血行再建回避率(%) 100 98 97 96 96 96 No. at risk 383 315 212 134 48 23 全死亡回避率(%) 100 94 90 83 80 78 No. at risk 383 325 220 138 55 25 TASCⅡ A/B(%) 100 85 77 70 67 61 No. at risk 103 75 46 26 11 5 TASCⅡ C/D(%) 100 76 66 61 55 48 No. at risk 280 183 107 66 24 8

(6)

浅大腿動脈および膝窩動脈近位部の慢性完全閉塞病変に対する自己拡張型ナイチノールステント留置後5年の臨床成績

 静脈グラフトを用いた大腿膝上膝窩動脈バイパス術は、

SFPAにあるTASCⅡ分類C型またはD型に分類される、より

閉塞長の長い病変に対する標準的な血行再建方法と考えら

れているが

2

、治療技術やデバイスの進歩により、ナイチノール

ステントを用いたPTAが今後、標準的な血行再建方法の選

択肢のひとつとなる可能性がある。また、新しいデバイスはこの

10年間で大きく進歩しており、SFPA領域の治療戦略は変容

を遂げている。6cm前後の病変長の場合には、通常のバルー

ン拡張術と比較しパクリタキセル溶出性バルーンが再狭窄を

有意に抑えることが可能である(19% vs. 47%、p=0.035)

11

経皮的なステントグラフト留置術後4年での一次開存率は、人

工血管を用いた大腿動脈膝窩動脈バイパス術と同程度である

(59% vs. 58%)

12

。最近の報告では、ポリマー不使用のパクリ

タキセル溶出性自己拡張型ナイチノールステントZilver PTX

をTASCⅡ分類C/D型病変へ留置した12ヵ月後の一次開存

率は77.8%であることが報告され、この結果は外科的な血行

再建術と同等であると結論づけられている

13

。自己拡張型ナ

イチノールステント留置を第一選択の治療法と位置づけるた

めには、SFPA病変へのステント留置による長期成績を示す

必要がある。本検討では、64%をも占める多数の糖尿病症例

を含み、13%は腎不全のため維持血液透析を施行中であっ

た。このような症例はいずれも、ナイチノールステント留置による

EVT後の造影成績または臨床予後が不良であると報告され

ている

14, 15

。また、病変の複雑性についても、TASCⅡ分類のC

型およびD型病変が73%を占め、平均総ステント長も既存の報

告より長い198±87mmであった

6-9

。これらは治療後成績が不

良な症例であったが、本検討におけるSFPAのCTOに対する

S.M.A.R.T.

®

CONTROL

®

自己拡張型ナイチノールステント留

置後1年、3年および5年の一次開存率および二次開存率は、

それぞれ78.5%および91.9%、63.3%および83.5%、51.8%および

79.5%であった。最近では、RESILIENT試験の結果から、間

歇性跛行症例におけるSFPAへのLifeStent自己拡張型ステ

ントの留置後3年の標的病変再血行再建回避率は75.5%であ

16

、本検討の3年後の一次開存率と同等であることが示され

た。さらに、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)グラフトを用い

た大腿膝上膝窩動脈バイパス術、または自家静脈グラフトを用

いた大腿膝上膝窩動脈バイパス術を検討したこれまでの無

作為化試験のデータと5年開存率を比較すると、S.M.A.R.T.

®

CONTROL

®

ステント留置による一次開存率は、PTFEグラフト

(39~52%)と同等であることが示された。また、5年後の二次

開存率も、自家静脈グラフトを用いた大腿膝上膝窩動脈バイ

パス術(71.9~77.2%)と同等であり、この結果は許容できるもの

であると考えられた

17-19

 多変量解析では女性(OR=1.95、95%CI=1.22~3.10、p=

0.0051)および平均ステント径(OR=0.77、95%CI=0.61~0.98、

DISCUSSION

p=0.0574

0

1.00

0.80

0.60

0.40

0.20

0.00

365

730

EVT後日数(日)

二次開存率

%/100

1460

1095

1825

   TASC II A/B

   TASC II C/D

図4

ステント留置後5年間の

二次開存率

(TASCⅡ分類A/Bvs.C/D)

TASCⅡ A/B(%) 100 93 92 92 89 89 No. at risk 103 80 51 29 13 7 TASCⅡ C/D(%) 100 90 84 80 79 76 No. at risk 280 214 134 85 30 13

OR

95%信頼区間

p値

女性

1.95

1.22〜3.10

0.0051

間歇性跛行

1.65

0.95〜2.86

0.0747

平均ステント径

0.77

0.61〜0.98

0.0324

脳血管疾患の既往

0.73

0.43〜1.24

0.2471

表3 多変量解析の結果

(7)

p=0.0324)が再狭窄の予測因子であった。開存率への性差

の影響に関しては、腸骨動脈領域においてインターベンション

治療後の開存率が女性でより低い傾向にあると報告されてい

20

。この理由のひとつとして、女性の血管径がより小さいこと

が可能性として推測される。ステント径は血管径を正確には反

映していないが、本検討では平均ステント径も再狭窄の予測

因子のひとつであった。性差に関しては閉経後の女性ホルモ

ン濃度低下と、それに引き続く血管合併症の発生に女性ホル

モンの抗動脈硬化作用の低下の関与が考えられる

21

。しかし

新生内膜増殖との関与は不明であるため、これはあくまでも推

測にすぎず、この点を明確にするには、今後さらなる検討が必

要である。SFPAと冠動脈は解剖学的に同じではないが、イン

ターベンション治療後の最小ステント面積は、ベアメタルステント

を用いた経皮的冠インターベンション治療後早期の再狭窄予

測因子のひとつであると報告されている

22

。最近の臨床試験で

は、患者および解剖学的特性を十分に考慮して血行再建方

法を選択した場合、SFPA領域に疾病のある患者の長期成績

は、外科的血行再建術に匹敵することが示唆されている

23

 Stent fractureは新生内膜の過形成を生じ、大腿膝窩動

脈へのステント留置後早期の再狭窄を引き起こす

24

。本検討に

おけるその発生率は12.8%であったが、これは留置した総ステ

ント長が長い割には比較的低率で、単変量または多変量解析

において再狭窄の予測因子とはならなかった。SFPA領域の

治療後の成績は数多くの因子による影響を受けると考えられ

ているため、低い発生率の因子を検討するには、より大規模な

コホートで試験を実施する必要があると考えられる。

 本試験では前向きに蓄積されたデータベースを使用した

が、後ろ向き非無作為化試験であり、またインターベンション治

療の際の手技的側面が慢性期成績に与える影響を評価でき

なかった。

 SFPAのCTO病変で、特に女性および小さい径のステント

留置を必要とする症例では、自己拡張型ナイチノールステント

留置後の一次開存率維持が困難であったが、二次開存率は

許容できる値であった。

 済生会横浜市東部病院の中野雅嗣先生、関西労災病院

の岡本慎先生、土肥智晴先生および南都清範先生、小倉記

念病院の浦川知子先生、登坂淳先生および三浦崇先生、仙

台厚生病院の槇田俊生先生に感謝いたします。

Study Limitations

ACKNOWLEDGMENTS

CONCLUSION

参考文献

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腸骨・浅大腿動脈用スマートステント

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