高等学校家庭科における住居分野の教材開発 一色彩を用いて一
教科・領域教育専攻
生活・健康系(家庭)コース 加 島 靖 江
1.研究の背景と目的
住まいは高校生にとって生活の基盤で、あり,
成長を担う重要な場であるが,その住まいにお いてストレスを感じている生徒は少なくない。
近年では,災害の被害が続き,さらに追い討ち をかけるように,住宅に関する事件・事故が多 種多様になりながら頻発している。このような 現代社会において,生活者が健康で安全な住ま いを手に入れるためには住教育の意義は大きい。
しかし,住教育の実情として,長年にわたり高 校生は住居学習に関心が低く,教師は住居分野 をもっとも苦手な分野とするため,授業時数を 少なくし,住居分野を避けている傾向がある。
そこで,生徒や教師にとって身近で、あり,共通 認識を持つことができる生活の中にある「色彩j
に着目した。本研究では,住まいと色彩の関係 性を探り,色彩を用いた住教育教材開発とその 有効性を明らかにすることを目的としている。
2.色彩を用いた住教育教材の有効性
色は人の感情面に影響し,安らぎゃくつろぎ 感を与え,ストレスを緩和するなど生体にも影 響する。また,私たちに視覚的情報を伝達し,
それにより生活行動を安全かヴ快適にすること ができる。家庭科教科書・資料集においてこの 色について記載している項目は,①住まいの工 夫・インテリアデザイン②住まし、と健康③住環 境④高齢者の安全な住まいの4項目で取り扱わ れているが,内容は非常に少なく充実している
指導教員 金 貞 均
とはいいがたい。住まいに必要な「安全性J
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保健性J
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利便性Jr
l肉菌性jに加えて,r
人と共に 住むJの5つのキーワードと色の効果と照らし 合わせたところ,色の効果はこれらと一致する ことがわかったo 特に,インテリアの色彩計画 は5つのキーワードをすべてふまえて計画しな ければならず,色の効果と住まいは関連性が高 い。よって,健康で安全かつ』肉薗な住まい環境 を作るための1つの方法として,色の効果を題 材として取り上げることは有効であると考える。3.居住空間に取り入れられている色の効果 居住空間とは,個々の住宅だけでなく,それ を取り囲む地域環境も含んだ広い空間を意味す る。ここでは居住空間における色の効果を「色 彩と行動J
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色彩と感情jの2つのテーマに分類し,それぞれに関する身近な事例を取り上げた。
まちの中にあるサイン計画は,安全かつb関直に 行動するために配置されており,不特定多数の 人に対してすばやく情報を伝達するため,色使 いは重要な役割をもっ。また,最近では,精神 的負荷を緩和させる目的で優しい色調を基調に した内装を施した病院や施設が増加している。
近年,この2つのテーマは居住空間の中で積極 的に取り入れられており 個人住宅でも意識し てとりいれてみることができると考える。
4.住まいと色彩に関する高校生の関心 ーアンケート調査を通して一
住まいに対して大半の生徒が建物の大きさや
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部屋の広さに不満を持っているo また,自分の 部屋についての関心は高いが,家族と共有する 部屋についての関心は低い。さらに,内装(天 井・壁・床)やインテリア(カーテン・カーペ ット・敷物)の決定権はほとんどないため,要 望はあるが今の自分ではどうしようもないとい
うあきらめの気持ちが生徒からうかがえたo
一方,理想、の住まい像から,
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居心地の良さj「家族との暮らしJ
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それを取り巻く住環境jに ついて様々な意見や願望を持っており,住まい について,一概に関心が低いとはいえないと考 えられる。また,色彩については,室内の色は,居心地の良さや落ち着きなどの感情面・満足 感・環境面に影響するため,色の効果を知りた いという要望もあったo 以上から,建物の大き さや広さにとらわれることなく,居心地がよく,
かつ客観的に住まいに目を向け家族と共に過ご す空間を考えられるような授業展開が望ましい0 5.色彩を用いた教材開発
生徒は,自分の部屋には関心が高く,居心地 の良い空間を求めているが,家族と共に暮らす 空間にも目を向け,家族の生活スタイルや家族 の身体的・精神的特徴に配慮できる心を身につ ける必要がある。また,他の人と共に暮らす空 間(地域)に関心を持つことは社会を構成する 一員として,重要なことである。そこで,色彩 を通して家族や地域の人を考えるきっかけとな る授業計画を提案した。
指導案では,アンケート調査より得た生徒の 住まいと色彩についての関心と問題点をふまえ ながら,家族と共に居心地良く住む住まいにつ いて意識づけができるようにすることを念頭に 置いた。教材作成においては, Power Pointを 使った視覚耕オを開発し,本研究の関連研究の 考察や,居住空間における色の活用事例の調査
から得られたデータや図表を利用し工夫した。
なお,スクリーンに映し出すことで,より色の 効果を実感できるように心がけながら作成を行 ったo また,発展型として,街並みの色彩から 人と共に住むことについて考えるきっかけにな
る指導案及び教材を作成した。
6.開発教材の有効4全寸受業実践を通して一 高等学校家庭基礎において,開発した教材の 授業実践を行ったo 色を使って健康で、安全かっ 快適にできる色の効果についての理解度は非常 に高く,実際に住まいに帰って色の効果を活用 してみたいと考える生徒がほとんどだった。事 前に行った生徒の実態調査においては,生徒は もともと生活の中にある色の影響について漠然 と意識していた。しかし,実際にはどのように 影響し,どうすればよし、かを考える機会がなか ったことから,より興味をひきつけやすく,住 まいへ目を向けさせることができたと考えられ る。建物を変えなくても居心地を良くする方法 を考えるきっかけになり,色の効果を住居分野 で取り上げることは有効であると考えられた。
しかし,それがすぐに家族への理解や自己慮、につ ながるとはいえない結果であったo その改善点 として,①まずは,生徒の関心が高い自分の部 屋について考えさせること②家族分野々福祉分 野と連携させて行うことなどがあげられる。
7.まとめと今後の課題
色の効果を通して住まいを見つめることで,
住まいの安全性・快適性・利便性・健劇主を高 めることができ,居心地のよし、住まいをつくる ことができる。生徒の授業評価からも色の理解 度と住まいへの実践意欲は高かったoそのため,
住教育教材としての有効性は高いと考えられる。
今後は,教育現場での授業実践を通してより使 いやすい教材に改善していきたい。
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