アメリカ法における合理的期待保護の法理の展開
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(2) 横浜国際経済法学第 19 巻第2号(2010 年 12 月). Doctrine of Reasonable Expectations)と呼ばれた保険証券解釈に特有の理論 がある。保険証券の解釈原則であるとともに、主として免責条項の制限原理で あるとされる 1)。この法理は、正面から保険契約の内容を規制するという特徴 がある。平均的な保険契約者の抱く客観的合理的期待は、たとえ保険証券中に そのような期待を否定する条項が含まれていたとしても、裁判所の保護を受け、 強行することができるとの判例法理が確立した。 Keeton 氏は、つぎのように定式化されている。 「保険契約の用語に関する申 込者及び受益者の客観的に合理的な期待は、保険証券の条項の詳しい検討によ れば、 それが否定されたであろう場合といえども保護されなければならない。2)」 この法理が判例を分析することにより確立した Keeton 氏は、次のように説 明した。 第 1 に、この原則は、保険証券の用語は、素人が理解するように解釈される ということを示す。このことは「疑わしきは作成者の不利益に」の原則のコロ ラリイとして従来から認められていたが、定式の後半部の限りでは、それを越 えるものである。期待は客観的に合理的でなければならないというかぎりで、 安定性、予測可能性・被保険者間の衡平は確保される。第 2 に、右原則のコロ ラリイとして、保険者は、ある種の保険の担保内容に対する合理的な期待と相 反する制限(limitation)ないし除外(exclusion)の条項を設けてはならない。 このことは、保険証券が明確かつあいまいでないとしても許されない。なぜな らば、通常の保険契約者は、保険証券を読まないことは周知のことだからであ り、さらには、保険証券は、通常、契約締結が終わった後にはじめて保険契約 者に交付されるからである。ただし、保険者は、契約締結に際して、契約者の 注意を喚起して、 不意打(surprise)を防止することを妨げられるものではない。 しかし、大多数の保険契約者を誤解させるような基本的に非良心的なものは許 されない 3)。 同時に、Restatement(second)of Contracts 211 条 3 項は、これを一般化し ている。211 条第 1 項「第 3 項に定める場合を除き、合意の当事者の一方が署 146.
(3) アメリカ法における合理的期待保護の法理の展開. 名をし、または他の方法で同意を表明した書面については、それに類似する書 面がその種類の合意の内容を具体化するために通常用いられるものであると信 ずべき理由のある場合、彼はその書面に含まれる条項を、合意内容に統合され るものとしてその書面を採用するものである。 」 第 2 項(略) 第 3 項「作成者側から見て、そのような同意を示した相手方当事者がもしそ の特定の条項の存在を知っていたならば同意していなかったであろうと信ずべ き理由があった場合には、その条項は合意の一部とならない。 」 この第 3 項は、アメリカ法律協会による合理的期待の法理の解釈である。公 式の解説によれば、 「その特定の条項の存在を知っていたならば同意していな かったであろうと信ずべき理由」とは、 「その条項が異様なものであったり、 酷な内容であったりする事実、あるいはその条項が、明示的に合意されたが標 準化されていない条項を骨抜きにするものであったり、その取引の主たる目 的を達しえないものにしてしまうようなものであるという事実から推論されう る」という 4)。 ま ず、 こ の 合理的期待保護 の 法理 に 関 す る Restatement(second)of Contracts 211 条以前の判例を紹介する。例えば、New Jersey 州最高裁 Kievit v. Loyal Protective Life Ins. Co. の判決(1961)5)は、傷害保険を加入した保険契 約者である原告が、材木で頭を強打したため、断続的に震顫に悩ませれること になった。被告保険会社側の診査医の証言によれば、契約当時、原告はパーキ ンソン病にかかっている(ただし原告もこれを知らずにいた) 。原告の保険金 支払い請求に対し保険会社は、 「契約締結時に存していた疾病を原因もしくは 原因の一部とする廃疾は保障されない」との免責条項をもってこれを拒否した。 これに対して、裁判所は、 「保険に加入した場合人々には、彼らの合理的な期 待を満たすに必要な広範囲の保障が与えられなければならない。 (中略)ある 約款上の規定を機械的に適用すれば保障範囲が極めて限定されたものとなり、 保険としての効用が大幅に減殺される場合には、その適用に当たっては慎重で 147.
(4) 横浜国際経済法学第 19 巻第2号(2010 年 12 月). なければならない」とし、本件のように、病気が潜在的で保険契約者にその自 覚症状がない場合には適用はないものとした。 もう 1 つの例として、New Jersey 州最高裁 Gerhardt v. Continental Ins. Cos. の判決(1966)6)は、個人損害賠償責任保険の証券の第 1 頁に「傷害を理由と する損害賠償責任を保障する」と記載されていたが、別の頁に「労働災害補償 法もしくは職業病法により給付が支払われる場合には保障されない」の免責条 項が挿入してあった。これに対し、裁判所は、 「契約者は常に約款を読むもの と期待されてはいるものの、本件のように数多くの条件が細かい文字で書かれ ている場合に、それを理解しようと努めるのは、よほど辛抱強い人ぐらいなも のであろう」とし、 「約款の奥深くにこっそりと挿入された免責条項に効力を 認めるのは公正ではなく、契約者は、そのような法技術的な制限もしくは隠さ れた落し穴に拘束されるものではない」として、免責条項の効力を否定した。 そ の 後、Iowa 州 最高裁 C & J Fertilizer, Inc. v. Allied Mut. Ins. Co. の 判 決 (1975)7)は、 当時の Restatement(second)of Law of Contract 237 条(1976) (現 在の Restatement(second)of Contracts 211 条(1981)と同じ)を引用してい る。この事件は、盗難保険契約については、保険金支払の条件として、店舗の 外面に盗難の証拠が残っていなければならないとしていたが、そのような証拠 が残っていない盗難事件について、裁判所は、保険会社の保険契約者への保険 金支払義務を認めた。裁判所は、保険契約者の合理的期待は、そのような損害 も保険でカバーされるというものであった、としたのである。判旨の内容は、 次のとおりである。 「保険契約の用語に関する申込者及び受益者の合理的な期 待は、保険約款の条項の詳しい検討によれば、それが否定されたであろう場合 といえども保護されなければならない。 (中略)取引相手方が作成した標準条 項を一括採用することによって契約をする者は、もしも標準条項を一括して受 入れる相手方がその特定の条項が含まれていることを知っていたなら合意して いなかったであろうと信ずべき理由を、標準条項の作成者が知っていた場合に は、標準条項に一括同意する側は拘束されない」として、その免責条項の効力 148.
(5) アメリカ法における合理的期待保護の法理の展開. を否定した。 東京大学の山下友信教授は、アメリカ 1980 年代以前の判例を整理して合理 的期待の法理の意義を次のように整理されている 8)。 第 1 に、担保範囲の確定ないし免責条項の妥当性が問題とされている。すな わち、合理的期待保護の法理は、担保範囲の確定ならびに免責条項の規制のた めに用いられている。 第 2 に、問題となった条項に、少なからず不明確さが包蔵されている。そこ で、解釈による保険契約者保護という伝統的な手法が併用される。 第 3 に、判例の結論を導いた実質的理由は、次の両側面にある。内容的側面 として、平均的保険契約者がどのような期待を持ってその保険契約を締結した か、さらに形式的側面として、主たる担保範囲を決定する条項と免責条項との 位置関係、あるいは「包括的」という名称を検討すること、さらに契約前に保 険証券の内容が開示ないし説明されたかを問題とする。 第 4 に、保険者側の利益、並びに保険契約者間の衡平ということは、表立っ てほとんど考慮されていない。 (日本では保険の団体性を重視する) 第 5 に、合理的期待の侵害と並んで、非良心性を理由に免責条項を無効にし ているものがある。 合理的期待保護の法理と非良心性の法理との関係については、非良心性の法 理は、まさに保険証券条項そのものへの裁判所の介入であるのに対し、合理的 期待保護の法理は、その背景は同じであるが、契約環境全体を基礎として裁判 所が当該保険の合理的期待に沿ったあるべき内容を作り出しているように思わ れる 9)。さらに、判断基準としての特徴としては、合理的期待保護の理論が、 より手続き的な側面に着目するのに対して、非良心性の理論は、実質的な内容 に重点を置くという差異があると分析されている 10)。 全体的に言えば、1970 年代は、この合理的期待保護の法理の成長期ともい える。この法理は、Keeton 氏の論文をはじめ、広く議論され、いくつかの州 では、定義通りに採用された。 1980 年代は、合理的期待の法理の利用は、以 149.
(6) 横浜国際経済法学第 19 巻第2号(2010 年 12 月). 前から適用され続けられた州でも、弱体化の傾向があった。1990 年代におい ては、いくつかの州では、この合理的期待保護の法理が比較的安定的に採用 されていた。その一方、いくつかの州では、立場を変更した。以上のように、 Keeton 氏の理論について対応の違いが存在するにもかかわらず、基本的に、 合理的期待保護の法理の概念は、近代的な保険証券の解釈に大きな影響を与え た 11)。2000 年以降現在では、全米の 35 州が、この法理を採用している 12)。. 2.合理的期待保護の法理に対する批判 アメリカにおいて、Keeton 氏の論文を発表された後、合理的期待保護の法 理に対する批判が多く現れ、梅津昭彦教授は、主に次のようにまとめた 13)。 第 1 に、この法理は、保険契約者並び保険者の当事者として意思を無視して、 契約自由を害する結果を招くことが懸念されている。 第 2 に、契約文言のあいまいさを合理的期待に基づいて解釈しているにすぎ ないと考えられる。すなわち、場合によっては、合理的期待保護の法理の拡張 的適用である(あいまいさが擬制されている constructive ambiguity)といわ れている。 第 3 に、この法理は、非良心性の法理による解釈の一要因として保険契約者 の合理的期待を取り上げているにすぎないと思われる。 第 4 に、各州に対応において、この法理を適用するために要件は(a)契約 文言のあいまいさが存在する場合に限る(b)拒絶する(c)消極的、制限的、 他の解釈原則との組み合わせでのみ適用などがある。 第 5 に、保険証券にあいまいさがない場合には、結果的に妥当でないと思わ れるとき、この法理を適用するにすぎないといわれている。 第 6 に、この法理の不確実性が保険事業におけるリスク発生の予見可能性、 計算可能性に与える影響を指摘されている。ひいては保険制度の効率的運営、 保険契約者間の公平を害することが懸念されている。 上述したように、アメリカでは各州において、合理的期待保護の法理に対す 150.
(7) アメリカ法における合理的期待保護の法理の展開. る態度が異なる。主に 3 種類に分けられる。第 1 に、Keeton 氏によって設定 された合理的期待保護の法理をそのまま採用する。第 2 に、あいまいな約款条 項がある場合のみ、この保険契約者の合理的期待保護の法理を適用する。そし て、第 3 に、この法理を完全に拒否するものである。. 3.合理的期待保護の法理の発展 1990 年以降、アメリカ判例法上では、合理的期待保護の法理を採用した州は、 主に以下の 4 つに類型化される 14)。 第 1 に、保険契約の条項にあいまいさがある場合かつ保険契約者の合理 的期待 が 持 て る 場合 の み こ の 法理 を 適用 す る(Ambiguity and Traditional Insurance Policy Rules of Construction) 。後に最近の判例を通じて検討する 15)。 第 2 に、非良心的な結果あるいは不合理的な結果を避けるためにこの法理を 適用する(Avoiding Unfair Results)16)。後に最近の判例を通じて検討する 17)。 第 3 に、稀であるが、保険加入の目的を達成するためにこの法理を適用する (Promoting the Purpose of Insurance)18)。 第 4 に、非常に稀であるが、第三者利益の保護のためにこの法理を適用する (Protection of Third-Party Interests)19)。 以下では詳細に議論する。. 二.合理的期待保護の法理適用の 4 類型(Four Different Approaches to the Doctrine of Reasonable Expectations) 1.保険契約条項のあいまいさを解決するために合理的期待保護の法理を適用する (Ambiguity and Traditional Insurance Policy Rules of Construction)。 裁判所は、保険契約条項の文言にあいまいさがある場合のみ、この合理的期 待保護の法理を適用する。もし合理的あるいは公正的に条項文言に 2 つ以上の 意味が認められるなら、この場合はあいまいさがあるといえる。このアプロー 151.
(8) 横浜国際経済法学第 19 巻第2号(2010 年 12 月). チでは、あいまいさが存在した場合は、作成者すなわち保険者に不利に解釈さ れる。これは、伝統的な契約の解釈原則と呼ばれている起草者に不利に解釈原 則(Contra Proferentem)20)である。 このアプローチの下では、裁判所は、保険契約にあいまいさがあることを基 本的な前提とする。圧倒的多数の保険契約では、保険者が一方的に保険契約を 作成する。また、近代的な契約理論では、保険者が保険契約の内容を明確にか つ効果的に被保険者に説明する必要があると認識されている(保険者は保険契 約条項を説明する義務がある)21)。実質的に、このアプローチは、次のような 考え方が表明されている。すなわち、保険者は担保範囲及び免責事由を決めて も、その明示をなさなかった場合は、責任を負わなければならないという考え 方である 22)。 従来の契約の解釈原則から発展したこのアプローチでは、ほとんどの学者が、 異議を唱えることなく支持する。しかし、裁判所の間で、保険契約の文言にあ いまいさがあるかどうかの定義については、また一致していないという現状で ある。したがって、あいまいさに対する裁判所間の意見の相違は、合理的期待 の法理の適用に影響を与える 23)。 合理的期待保護の法理と作成者に不利の原則との関係については、次のよう な分析ができる。保険契約文言にあいまいさがあるかどうか判断する前に、最 初に当事者間で契約の合理的な意味を確定しなければならない。実際に裁判所 は、多かれ少なかれこのことを考慮する。すなわち、裁判所は、あいまいさが 存在するかどうかを判断するとき、自然的に、被保険者の保険保護の期待ひい ては一定の状況(保険契約の文言を含む)下でこの期待は合理的か否か考慮す るのである。保険者が意図的に保険担保範囲を制限するにもかかわらず、もし 保険証券の文言にあいまいさが十分にあり、合理的期待の存在が許される程度 ならば、それは、2 つ以上の妥当な契約解釈が存在するとされる。したがって、 当該の保険証券は、あいまいさがあると決めることができる。 以上のように分析すると、被保険者の合理的期待の法理の配慮は、単に作成 152.
(9) アメリカ法における合理的期待保護の法理の展開. 者に不利の原則に訴えることができるためのプロセスにおいて、最初のステッ プであるということがわかった 24)。後述する最近の California 州最高裁の判例 により、この分析は証明することができる。. 2.非良心的な結果あるいは不公正的な結果を回避するために合理的 期待保護の法理を適用する(Avoiding Unfair Results) 。 いくつかの裁判所は、非良心的な結果あるいは不公正的な結果を避けるため に合理的期待保護の法理を採用する。基本的な公正性と手続き的な公正性を確 保するために、裁判所は、明確な保険契約の文言を無視する。このアプローチ の支持者は、保険契約が典型的な附合契約であると主張している。もう 1 つの 理由として、保険者が保険の担保範囲の面で保険取引の慣行と詳細なリスクの 決定権を持っている以上、リスク・コントロールができることをあげる。また、 保険者は、ほとんどの被保険者が保険契約を読んでいないだけではなく理解す ることもできないことについては、認識している。結果として、裁判所は、保 険契約の政策的な公正性を保つための監督の必要性がある(court must police the fairness of the insurance policy)と強調している。 このアプローチは、3 つの不公正から被保険者を保護する。①手続き的な不 公正(procedural unfairness) 、 保険の販売方法あるいは勧誘実態で問題があり、 保険契約が除外した危険についても被保険者にカバーしたいという期待が存在 しているという可能性がある。②構造的な不公正(structural unfairness) 、保 険証券のレイアウトと構成自体が、被保険者に混乱させる可能性がある。③状 況的な不公正(situational unfairness) 、標準書式的な保険証券を使うことで、 特定の者に対して相応しい保険を提供できないという可能性がある 25)。 もちろん、この不公正な結果を回避するために使われているアプローチには、 懐疑的に反対する者もいる。主たる理由あるいは批判として、明確な保険文言 を無視した司法的な干渉となる、保険料コストが増えるなどの問題を指摘する。 具体的に、この非良心的な結果を避けるために合理的期待保護の法理を利用す 153.
(10) 横浜国際経済法学第 19 巻第2号(2010 年 12 月). るアプローチは、3 つの悪い結果をもたらす。すなわち ①不当な裁判干渉、 ②多くの標準保険証券の担保範囲は、不安定的な状況になる、③保険者が引き 受ける危険の不測定で、保険料を引き上げることにつながる 26)。 この批判に対して、このアプローチの支持者は、次のように反論した。ま ず、信義則(good faith) 、衡平法上 の 禁反言(estoppel)及 び 文書訂正命令 (reformation)などの原則が、当事者不測の事態を考慮し、当事者の義務を調 整するとき、場合によっては、違法であるか公共政策に違反するかの面におい ても適用される。したがって、すでにこのような多くの契約上の原則が存在す る以上、合理的期待保護の法理だけをとらえて、過度な司法干渉になりかねな いという理由にはならない。次に、不確実性の可能性もそれほど大きくはない。 第 3 に、必要であれば、消費者は、高い保険料を支払うから、このようなこと は、市場に任せてよいとする 27)。. 3.保険契約の目的を実現するために合理的期待保護の法理を適用する (Promoting the Purpose of Insurance)。 非常に稀ではあるが、裁判所が保険契約の目的を実現するために合理的期待 保護の法理を適用する。結果として、保険の機能を果たすため、裁判所が自ら 保険契約を作成する。 いくつかの状況では、裁判所は、保険証券に書かれた 文言を厳格な解釈で判断すれば、保険取引の基本的な目的を骨抜きにすること もあり得る。つまり、裁判所は、保険証券に書かれた文言の適用を拒否するこ とになり、合理的期待保護の法理を使って正当な判決を下す。 このアプローチにも疑問が出される。このアプローチの下では、裁判所は、 対等な関係に立つ保険会社と被保険者間の仲裁人ではなくなる。裁判所は、保 険取引の目的を分析した後に、何をカバーされるかを自ら決定することができ るようになった。すなわち、裁判所は、契約内容を変更する権限を持つ。結果 として、 裁判所は、 伝統的な司法的役割から逸脱し、 立法機関の役割を果たす(a common-law-making function)ことになる。立法機関には、ある約款条項を禁 154.
(11) アメリカ法における合理的期待保護の法理の展開. 止する権限がある。確かに保険監督官(insurance commissioner)に保険約款 を許可するかしないかの権限があることは間違いない。同様に確かに、 コモン・ ロー裁判所にも、以前から保険基本的な目的を実現するために保険用語の意味 を決定する権限があるが、基本的には、このような問題は、保険法などの立法 によって解決すべきであろうといわれる 28)。. 4.第三者の利益を保護するために合理的期待保護の法理を適用する (Protection of the Third-party Interests) 非常に稀ではあるが、裁判所は、第三者の利益を保護するために合理的期待 保護の法理を採用することもある。保険では、保険契約者以外に、利害関係者 の第三者である家族、従業員、被害者などもある。したがって、保険契約をど う解釈するかについては、第三者の利益にも関わっている。裁判所は、ときに は合理的期待保護の法理を採用し、第三者の利益を守っている。 被害者の損害賠償を最大限にするため、このアプローチが使用されている。 ここでは、被害者の保護を目的として保険契約の解釈を行っている。合理的期 待保護の法理は、このような結論を出すために最も便利な原理となった 29)。 以下 で は、主 に 最近 の Arizona 州、California 州、Florida 州 に お い て、上 述したアプローチが適用された判例を通じて検討する。この 3 つの州を取り 上げたのには、それぞれ以下の理由からである。まず、Arizona 州は、完全に Keeton 氏に定義された合理的な期待保護の法理をそのまま適用していること である。次に、California 州は、条件付きで合理的期待保護の法理を適用して いることである。最後に、Florida 州は、合理的期待保護の法理を拒否してい ることである。このように、3 つの州ではそれぞれ合理的期待保護の法理に対 する態度が異なっているため、この法理を考察するための最も適切な事例を得 ることができると考える。. 155.
(12) 横浜国際経済法学第 19 巻第2号(2010 年 12 月). 三.Arizona 州における合理的期待保護の法理 Philadelphia Indemnity Insurance Company v. Barerra(2001)事件 30) (Supreme Court Arizona). 1.事案の概要 訴外 A は、飲酒した後、レンタカーを借り(このレンタカー契約には、自 動車責任保険が含まれている) 、運転したところ、通行人 B と衝突し、B は死 亡した。B の法定相続人として原告 X は、A の飲酒運転で B を死亡させたこ とに対して、保険会社である被告 Y に対して保険金を請求した。Y は、保険 約款の免責条項「Driving Under the Influence of Alcohol」 (以下 DUI)すなわ ち、アルコールの影響下での運転に起因した損害が免責となる条項に基づき保 険金の支払を拒否した。 地裁(the trial court)は、Y の主張を支持した。高裁(the court of appeals)は、 地裁の判決を維持した。最高裁(the Arizona Supreme Court)は、この免責 条項が通常の消費者の合理的期待保護の法理(the reasonable expectations of the ordinary consumer)に違反したため、無効となると判断した。. 2.判旨 最高裁は、合理的期待保護の法理を適用し、この紛争を解決した。その理由 は、次のとおりである。 まず、Y は、保険契約の免責条項が、レンタル契約の最初のページに書いて あり、内容も分かりやすく、理解できると主張するが、保険契約の規定が形式 的に違反しただけで全部免責となるのは保険契約者に対して酷であると言わな ければならない。 次に、訴外 A に提供された保険証券では、DUI 条項は保険証券の責任を定 め る 部分(the liability insurance section)で は な く、禁止事項 の 部分( the 156.
(13) アメリカ法における合理的期待保護の法理の展開. prohibited use of car section)に書かれている。消費者にとってはわかりにくい。 第 3 に、裁判所は、消費者が約款の免責条項を読み、理解する義務を負うこ とについても、反対する。本件の保険契約の場合は、附合契約であるとともに、 当事者間のやり取りは、契約を締結する際の効率とスピードも求めて、15 ~ 20 分という短い時間で行われた。この時間では保険契約を読んだ上で、説明 することは不可能であると判断した。 第 4 に、Y は、DUI 条項の規定が明確であるために、一般的な被保険者の 客 観 的 合 理 的 な 期待(the objective, reasonable expectations of the average insured)に基づいて解釈すべきであると主張するが、Y が訴外 A に DUI 条項 を注意するという情報を提供しなかったり、専門用語を使ったり、DUI 条項 の位置もわかりにくいなどのことを総合的に考慮すれば、Y は訴外 A にアル コールの影響下で運転しても保険が適用されると誤解させたという事実があっ た。結局、通常の消費者の合理的な期待を支持し、X の請求を認めた。. 3.分析 裁判所は、Keeton 氏に定義された合理的期待保護の法理をほぼそのまま、 採用した 31)。すなわち、保険契約の文言が客観的に明確であっでも、通常の 消費者に保護を与える必要性があると考えた場合は、合理的期待の法理を適用 した。同時に、第三者の利益を保護する(被害者)という考慮もあった。これ は、実質的に「解釈」の名の下に契約内容を変更したといえる。合理的期待の 法理に反する保険契約条項は、無効とするという考え方である。. 四.California 州における合理的期待保護の法理 Mackinnon v. Truck Insurance Exchange(2003)事件 32) (Supreme Court of California). 157.
(14) 横浜国際経済法学第 19 巻第2号(2010 年 12 月). 1.事実の概要 被保険者 A は、原告の X 会社が所有するアパートを借りて住んでいた。とこ ろで、X 会社は、スズメバチを駆除するために、そのアパートの壁に殺虫剤を 吹きかけた。それが原因で、A が死亡した(death from pesticides exposure) 。 本 件 で は、 企 業 総 合 賠 償 責 任 保 険( Comprehensive General Liability Insurance Policy)の 中 の 免責条項 で あ る 汚染免責条項(pollution exclusion) の意味について、争いがある。すなわち、問題は、アパートの中で殺虫剤を使っ た行為に起因する傷害について保険者を免責しているかどうかである。約款条 項の内容は、汚染物質を原因とする身体の傷害は、免責事由となる。汚染ある いは汚染物質(pollution or pollutants)の定義は、約款中にもある。原告 X は、 保険証券の中の汚染あるいは汚染物質の定義に当たるとしても、環境汚染中の 汚染行為のみ保険者を免責し、住宅用の殺虫剤を使用することについては免責 事由には含まれないと主張した。 地裁(the trial court)は、汚染免責条項の文言は、明確でありかつあいま いでないため、Xの請求を認めなかった。 高裁(the court of appeals)は、保険証券の汚染免責事由は、環境汚染とは 限らないとして、地裁の判決を維持した。 最高裁は、汚染免責条項は、環境汚染のみ免責事由となると判断して、原告 X の請求を認容した。. 2.判旨 最高裁は、まず、文言どおりに汚染物質の意味を理解することに反対した。 辞書に記載されている意味をそのまま解釈するのではなく、普通の人々の立場 で言葉の意味を合理的に解釈すべきとした。保険会社 Y の主張したように解 釈すると、すべての物質が汚染物質とみなされる可能性がある。結果として、 汚染免責条項の免責範囲は、広すぎで、不合理な結果になった。次に、汚染物 質の意味は、保険証券の中で使用された意味で解釈しなければならないとした。 158.
(15) アメリカ法における合理的期待保護の法理の展開. 第三に、汚染免責条項の作成の歴史から見ても、一般的に環境汚染のことを表 したと判断することができるとした。 したがって、最高裁は、本件の保険証券の明白な文言にあいまいさがあると 考えた。なぜなら、殺虫剤という物質は、ある状況の場合では、汚染物質かも しれないが、本件のような場合での殺虫剤の使い方では、合理的であり、保険 契約者としては、汚染物質とは言えない。以上のように汚染免責条項の意味に は 2 つ以上の合理的な解釈があるから、作成者に不利の原則に基づき、裁判所 は被保険者に有利に解釈することとなり、原告 X の請求を認めた。. 3.分析 California 州の保険証券の解釈方法により、3 段階に分けて分析すること(the three-step analysis)がわかった。すなわち、第 1 に、契約一般の解釈原則と し て は、明白 な 意味 の 原則(the plain meaning of the policy language)と 呼 ばれるものがあった 33)。使用された文言には唯一明白な意味があり、その文 言が明白に意味するところに従って解釈しなければならないということであ る 34)。第 2 に、被保険者の合理的期待を考慮している(a consideration of the insured’s reasonable expectation of coverage) 。第 3 に、保険契約 の 文言 が 不 明確な場合に限り、作成者に不利の原則に基づき、被保険者に有利に解釈さ れ る(the doctrine that ambiguous policies are strictly construed against the drafter of the policy the insurer) 。結論としては、California 州では被保険者 の合理的な期待の法理の重要性を認め、それは保険証券にあいまいさが認めら れた後で採用されていた 35)。. 159.
(16) 横浜国際経済法学第 19 巻第2号(2010 年 12 月). 五.Florida 州における合理的期待保護の法理 Deni Associates of Florida Inc. v. State Farm Fire & Casualty Ins. Co.(1998)事件 36) (Supreme Court of Florida) 1.事実の概要 原告 X1 会社の従業員は、建物内にオフィス用品を運搬したところ、誤って、 ある機械を倒れさせ、機械の中からアンモニアを漏らした。結局、アンモニア の流出が原因で、建物内の人々は、外に 6 時間避難しなければならない状況に なった。同時に換気のため、窓ガラスも割られた。従って、建物内のテナント は、その損失について X1 に請求した。 裁判所が審理を併合した共同訴訟のもう 1 つの事件は、原告 X2 会社が、ヘ リコプターを使って、果樹園の果物に殺虫剤を噴霧したところ、地上にいた二 人に殺虫剤を原因とする傷害を与えた。この二人は、X2 に損害賠償を請求し た。 X1 と X2 は、企業総合賠償責任保険(Commercial General Liability Policy) に加入していたため、保険会社 Y に保険金を請求した。しかし、当該保険契 約には、汚染免責条項(the pollution exclusion)が含まれていた。したがって、 保険会社 Y は当該免責条項に基づき保険金の支払を拒否した。 地裁(the trial court)は、絶対的 な(absolute)汚染免責条項 の 文言 で は、 あいまいさがあるから、合理的期待保護の法理を適用し、合理的な人の立場で、 汚染という用語を解釈なければいけないとして、X らの請求を認容した。 高裁(the court of appeals)は、地裁の判決を取り消した。その理由は、次 のとおりである。 本件の汚染免責条項は、明確であり不明確ではないため、合理的期待保護の 法理を適用できない。なぜなら、機械からアンモニアを漏らしたという行為 160.
(17) アメリカ法における合理的期待保護の法理の展開. と空中から殺虫剤を吹きかけたという行為は、明確に汚染物質の放出といえ る。これらの汚染物質の放出があったことを原因として X らが損害賠償責任 を負った。 高裁は、特に、合理的期待保護の法理は、契約の客観理論 37) (the objective theory of contract)に反するため、保険契約を解釈するときには、採用できな い。すなわち、契約は、客観的な意味に従って解釈しなければならない。これ に対して、被保険者の合理的期待保護の法理を採用することは、被保険者の主 観的な期待に基づき保険補償された結果になる。. 2.判旨 最高裁は、合理的期待保護の法理が適用される前提として、このような期待 は客観的な(objectively)期待でなければならないとした。 最高裁は、合理的期待保護の法理の採用に反対する。なぜなら、この法理を 適用する必要性がないことを理由とする。もし保険証券の文言にあいまいさが あるならば、Florida 州裁判所は作成者に不利の原則に基づき被保険者に有利 に解釈する。保険証券の文言が明確な場合に、合理的期待の法理を適用する ことは、保険契約を書き直した(rewrite)ことになる。結果として、この場 合現行の保険料では合わなくなる。被保険者の主観的な(subjective)期待は、 合理的ことか否かに基づいて保険契約を解釈すれば、不確実性の結果につなが ると判断した。. 3.分析 この判決には、疑問を呈されている 38)。以下のようにまとめた。 第 1 に、辞書で汚染あるいは汚染物質という単語を調べて明確であるからと 言って、問題ないとはいえない。裁判所に対する期待は、辞書で調べる以上で あろう 39)。 第 2 に、最高裁判所は、合理的な期待の法理が客観的なルールであるという 161.
(18) 横浜国際経済法学第 19 巻第2号(2010 年 12 月). ことについては、理解していない 40)。 第 3 に、汚染免責条項の目的は、環境汚染あるいは工業汚染のみが排除され るべきである。すなわち、環境汚染によって生じる財物損害および賠償責任を カバーするという汚染保険が別にあるからである 41)。 第 4 に、裁判所の保険契約の解釈のやり方で、結局としては、不条理な判決 結果(absurd result)になった。すなわち、著しく不合理な結果を招くことと なった 42)。. 六.合理的期待保護の法理の意義 以上の判例を見れば、合理的期待保護の法理は、作成者に不利の原則を単に 強く採用するだけより裁判所にほかの選択肢を提供することができる。同時に、 契約の文言を辞書に書かれている意味で解釈すれば、不条理な結果を導くよう な場合は、異なる解釈方法を裁判所に与えることができる。 具体的に言えば、合理的期待保護の法理のメリットは、保険契約者と保険者 の間で、異議がある条項の意味を解釈するとき、保険契約者と保険者双方の客 観的合理的期待に基づき考えることにある。多くの判例では、合理的期待保護 の法理を採用することによって、契約の文言が文字どおりにあるいは辞書に記 載されている意味で解釈されることには、異議がある(例えば、不合理な結果 を生じさせる場合)時に判断基準として役立つものとされている。すなわち、 合理的期待の法理は、1 つの判断基準として、保険証券の文言が、明確である かどうか、文字どおりに理解されるかどうかというプロセスにおいて、利用さ れている。裁判所は、一般的には辞書で定義される意味だけではなく、その言 葉が保険証券のコンテクストの中で暗示される意味、特に契約の目的を考慮し た上で解釈しなければならないとする 43)。 伝統的な二段階(two-step)の契約の解釈のやり方は、すなわち、まず、契 約文言を辞書に記載された意味で判断し、次に、不明確な場合には作成者に 162.
(19) アメリカ法における合理的期待保護の法理の展開. 不利の原則に基づき被保険者に有利に解釈するというものである 44)。しかし、 合理的期待保護の法理を採用した分析方法では、裁判所が不条理な結果を避け ること、明確ではない文言をチェックすることができる。同様に、合理的期待 保護の法理は、伝統的な作成者に不利の原則だけによりもさらに一層被保険者 を救済することができる。保険契約の内容以外の事情を考慮した上で、初めか ら契約の文言にあいまいさがあるかどうかを判断できるようになる 45)。 前述した California 州最高裁の判例では、合理的期待保護の法理を採用して 保険契約の解釈のあり方を示している。California 州でも、Keeton 氏の主張し た合理的期待保護の法理の重要性を認識しているが、この法理をそのまま認め るわけではない。前述した判例で示したように保険証券にあいまいさがあると きに限って、合理的期待保護の法理を適用している。すなわち、まず被保険者 の合理的期待を考慮している。次に被保険者は、保険証券の中にあいまいさが あることを証明しなければならない。これにより、契約内容自体の定めが、無 意味にならないように保障することができる。 この California 州のハイブリッド式のやり方では、被保険者に有利に解釈す る前に保険契約の文言にあいまいさがあることを要件として求めている。同時 に、合理的期待保護の法理を採用して保険証券を解釈しなければならない。こ のような追加要件を採用することで、伝統的な作成者に不利の原則と純粋な Keeton 氏の合理的期待保護の法理との間でバランスを取っている 46)。また、 保険契約の文言にあいまいさがあると自動的に被保険者に有利に解釈するわけ ではない。被保険者の合理的期待が証明できなければ、被保険者に有利に解釈 することができない。つまり、被保険者は、合理的期待を見つけることの立証 責任を負っている 47)。 California 州では、 一般的に保険契約当事者の間で実質的な交渉がある場合は、 合理的期待保護の法理を採用しない。この法理を採用する理由としては、保険 会社と比較して保険契約者側が情報量、交渉力などに格差があるから、特別に 保護する必要があるということがある。したがって、この点については、まだ 163.
(20) 横浜国際経済法学第 19 巻第2号(2010 年 12 月). 明らかになっていない。いくつかの裁判所では、保険証券が両当事者共同起草 された場合のみ、合理的期待の法理を排除できる。単に当事者間に同程度の交 渉力があり、協議したことがあるだけでは不十分であるという見解もある 48)。. 七.おわりに 以上、アメリカにおいて、保険証券を解釈する時に合理的期待保護の法理を 採用した現状を検討した。まとめると、第 1 に、Keeton 氏が合理的期待保護 の法理の論文を発表した直後の状況を示した上、その後その論文に対する批判 的な意見が多く現れていたことを紹介した。第 2 に、1990 年以降の特徴として、 合理的期待保護の法理を適用したケースは、主に 4 つに類型化されていること が示された。第 3 に、合理的期待保護の法理に対する態度を異なる 3 つの州の 最近の判例を取り上げて考察・分析した。第 4 に、合理的期待保護の法理の今 日の意義を論じた。特に、この法理の保険証券の解釈方法としての機能を注目 すべきであろう。すなわち、合理的期待保護の法理と作成者に不利の原則とが 組合わされて使われていることで、裁判所は保険契約者と保険者双方の客観的 合理的期待を考慮した上、保険証券を解釈しなければならないというやり方で ある。 日本の現状では、保険約款を解釈するとき、客観的解釈を強調する一方で、 明確な判断基準がなく、裁判所で解釈の判断基準、根拠というものを明らかに していない。したがって、 約款解釈のルールを明確化する必要性がある。法律上、 日本のように契約の解釈については、何の規定も置かずに、裁判官に裁量に広 く任せるのに対し、アメリカにおいて判例上様々な個別的解釈原則が存在して いる。すなわち、アメリカにおける解釈原則を認める態度を取ることを考える と、裁判官に対して解釈の基本的枠組みや考慮すべき点を示すことにより、契 約の解釈の安定性、予見可能性が増すことを期待しうることがその長所として 考えられようという指摘もある 49)。最近、債権法改正の基本方針の中で、約 164.
(21) アメリカ法における合理的期待保護の法理の展開. 款の解釈の場合は、条項使用者不利の原則を適用するという考え方が固まって いることは、このようなことの反省であろう 50)。アメリカ判例法における合 理的期待保護の法理は、保険契約の条項の合理性・不当性を規制するものであ る。合理的期待保護の法理に反する契約条項は、無効である。特に California 州の解釈方法は、合理的期待保護の法理を考慮した上で保険証券のあいまいさ を判断するというやり方は、日本の保険約款の解釈にも参考になるところがあ ると思われる。. 1)山下友信「普通保険約款論」法学協会雑誌 96 巻 12 号(1979) 、1604 頁。 2)Keeton 氏 の 合理的期待 の 法理 の 定義 は、“The objectively reasonable expectations of applicants and intended beneficiaries regarding the terms of insurance contracts will be honored even though painstaking study of the policy provisions would have negated those expectations.” Robert E. Keeton, Insurance Law Rights at Variance with Policy Provisions, 83 Harv. L. Rev. 961, at 1281(1970). 3)山下友信・前掲注 1)1604 頁、参照。 4)Restatement(Second9 of Contracts §211(1981). 龍雄史「米国保険判例法における合理 的期待保護の理論について」生命保険経営 63 巻 1 号(1995) 、199 頁、参照。 5)34 N. J. 475(N. J. 1961). 6)48 N. J. 291(N. J. 1966). 西川正敏「米国保険判例法にみる消費者保護の動向」保険学雑誌 478 号(1977) 、148 - 150 頁、参照。 7)227 N. W. 2d 169(Iowa 1975). 8)山下友信・前掲注 1)1621-1623 頁、参照。 9)梅津昭彦「保険契約者の合理的期待と保険証券の解釈」文研論集 117 号(1996) 、188-189 頁、 参照。 10)山下友信・前掲注 1)第 97 巻 1 号(1980) 、43 頁、参照。 11)Dudi Schwartz , Interpretation and Disclosure in Insurance Contracts, 21 Loy. Consumer L. Rev. 105, at 125-127(2008). 12)Barry R. Ostrager & Thomas P. Newman, Handbook on Insurance Coverage§1.03 (b), at 22(11th ed. 2002). 現在、以下 の 35 州 は、合理的期待保護 の 法理 を 採用 し て い る。 Alabama, Alaska, Arizona, Arkansas, California, Colorado, Connecticut, Delaware, the District of Columbia, Georgia, Hawaii, Indiana, Iowa, Kansas, Kentucky, Louisiana, 165.
(22) 横浜国際経済法学第 19 巻第2号(2010 年 12 月). Maine, Massachusetts, Michigan, Minnesota, Missouri, Montana, Nebraska, Nevada, New Hampshire, New Jersey, New Mexico, New York, North Carolina, North Dakota, Pennsylvania, Rhode Island, Texas, West Virginia, Wisconsin. 13)梅 津昭彦・ 前掲注 9)193-195 頁、 参照。Squires, A Skeptical Look at the Doctrine of Reasonable Expectation, 6 Forum 252(1971); Note, A Common Law Alternative to the Doctrine of Reasonable Expectations in the Construction of Insurance Contracts, 57 N. Y. U. L. Rev. 1175(1982); Rahdert, Reasonable Expectations Reconsidered, 18 Conn. L. Rev. 323( 1986 ); Mayhew, Reasonable Expectations: Seeking A Principled Application, 13 Pepperdine L. Rev. 267(1986). 14)Mark C. Rahdert, Reasonable Expectations Revisited, 5 Conn. Ins. L.J. 107, at116-144 (1998). 15)Mackinnon v. Truck Insurance Exchange, 31 Cal. 4th 635(Cal. 2003). 16)昔の判例としては、空港に設置されていた保険自動販売機で、定期便航空機旅行保険に 加入申込をした X が、非定期便に搭乗して墜落事故に遭い死亡した。保険金受取人が保 険金を請求したところ、保険会社は保険約款の免責条項で非定期便での事故による死亡 を免責としていると主張した。X が保険に加入した自動販売機は、非定期便航空会社の カウンター前に設置している事実があった。 裁判所は、非定期便カウンターの前に自動販売機を設置したことにより、誤解を与える ことになったため、保険金の支払いを命じた。Lachs v. Fidelity & Casualty Company of New York(1954),306 N. Y. 2d 357. 17)Deni Associates of Florida Inc. v. State Farm Fire & Casualty Ins. Co., 711 So. 2d 1135(Fla. 1998). 18)昔の判例としては、損害賠償責任保険の被保険者 X は、Y に対して故意に暴行を加えた として Y から訴えられたため、保険契約に基づき保険会社に弁護の提供を求めた。しか し、一般に故意的に暴行を加えた被保険者が負うべき賠償責任に担保は免責とされてい る。保険会社は、意図的な暴行を与えた場合の損害賠償責任については免責であるから、 そのような責任を問う訴訟において弁護の提供を拒否した。 判決は、保険会社の主張するような制限はその保険に加入する基本的な目的を無視した ものであると判示した。Gray v. Zurich Insurance., 419 P. 2d 168(Cal. 1966). 19)Philadelphia Indemnity Insurance Company v. Barerra, 21 P. 3d 395, 397(Ariz. 2001). 20)この原則は、第 2 次契約法リステイトメント第 206 条に規定されている。Restatement (Second)of Contracts §206(1981). 21)David J. Seno, the Doctrine of Reasonable Expectations in Insurance Law, 85 Warq. L. Rev. 859, at 866-867(2002). 22)Barry R. Ostrager & Thomas R. Newman, Handbook On Insurace Coverage, Section 1.03 166.
(23) アメリカ法における合理的期待保護の法理の展開. [b]at 21-22(1998). 23)David J. Seno, supra note 21), at 867-868. 24)Mark C. Rahdert, supra note 14), at 126. 25)Id., at 128-129. 26)Jeffrey Stempel, Unmet Expectations: Undue Restriction of the Reasonable Expectaions Approach and the Misleading Mythology of Judicial Role, 5 Conn Ins. L.J. 181, at 211 (1998). 27)Rahdert, Reasonable Expectations Reconsidered, 18 Conn. L. Rev. 323, at 381( 1986); Mark C. Rahdert, supra note 14), at116-144. 28)Richard B. Cappalli, the American Common Law Method, at 91-96( 1997 ); Mark C. Rahdert, supra note 14), at 140-141. 29)Mark C. Rahdert, supra note 14), at 116-144. 30)21 P. 3d 395, 397(Ariz. 2001). 31)Jeffrey A. Hursh, DUI Exclusionary Clauses in Insurance Contracts and the Reasonable Expectations of the Ordinary Consumer, 43 Ariz. L. Rev. 1001, at 1006(2001). 32)31 Cal. 4th 635(Cal. 2003). 33)Harry G. Prince, Contract Interpretation in California, 31 Loy. L. A. L. Rev. 557, at 569 (1997). 34)しかし、明白だといっても、それは結局、裁判官がそう考えているだけではないかとい う批判がある。樋口範雄『アメリカ契約法 第 2 版』弘文堂、 (2008)165-166 頁、参照。 35)Daniel Sanchez-Behar, California's Approach to the Interpretation of Insurance, 38 U.S.F. L. Rev. 577, at 596(2004). 36)711 So. 2d 1135(Fla. 1998). 37)客観理論とは、契約の本質を受約者(promisee)の履行に対する客観的、合理的な期待 に求める見解(ほぼ表示主義ないし信頼理論に相当)である。この考え方は、英米法で の主流とされている。滝沢昌彦「表示の意味の帰責について」法学研究 19 号(一橋大 学研究年報) (1989) 、237 頁、参照。 38)Jeffrey W. Stempel, Unreason in Action: A case study of the Wrong Approach to Construing the Liability Insurance Pollution Exclusion. 50 Fla. L. Rev. 463 at 494(1998). 39)Id., at 504. 40)Id., at 595. 41)Id., at 503 ; Daniel Sanchez-Behar, supra note 35), at 588. 42)Jeffrey W. Stempel, supra note 38), at 507-512. 43)Id., at 519. 44)Id., at 521. 167.
(24) 横浜国際経済法学第 19 巻第2号(2010 年 12 月). 45)Id., at 522. 46)Peter Nash Swisher, Judicial Interpretations of Contract Disputes, 59 Ohio St. L.J. 543, at 634(1996); H Walter Croskey, the Doctrine of Reasonable Expectations in California, 5 Conn. Ins. L.J. 451, at 473-474(1998). 47)Daniel Sanchez-Behar, supra note 35), at 595-596. 48)Id., at 596-597. 49)上田誠一郎「英米法における表現使用者に不利に解釈準則」民商法雑誌第 100 巻第 5 号 (1989) 、860 頁、参照。 50)民法改正検討委員会『債権法改正の基本方針』別冊NBL、No 126 商事法務(2009) 、 123 頁、参照。. 168.
(25)
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