国立国語研究所学術情報リポジトリ
現代新聞の漢字
著者 国立国語研究所
発行年月日 1976‑02
シリーズ 国立国語研究所報告 ; 56
URL http://doi.org/10.15084/00001253
r国立国語研所究報告56
現代新聞の漢字
国器立:国語研究所
薯馨7§
刊行のことば
圏立国語研究所は,現代語の語彙ならびに表記の実態を明らかにするために,これまで各種の調 査を実施してきた。用掌に関する調査の成果としては,購合雑誌の用字』(昭和35年),『現代雑誌 九十種の用語用字一第二分冊漢宇表一』(昭和38年)などがある。語彙調査としては,昭和4王年の 朝日・毎N・読売三紙の一年分について総語数約二百万語について調査を行ってきたが,それらに ついては『電子計算機による新聞の語彙調査(1 A. rv)』という闘冊の報告書をすでに公にした。
それらの語彙に用いられた用宇についての調査としては,語彙調査の中間集計の段階で取りあえず
『現代新聞の漢宇調査(中間報告)』(昭和46年)をi:ij行したが,このたび,語彙調査が一…応完了し たのに伴って,そこに用いられた漢籍金体について調査を行った。その結果をド報告563として刊 行する。
今翻の調査の第一の特徴は,漢字を調査したものとしては,規模が従来のものに比して飛躍的に 大きいことである。延べ字数に限って見れば,約百万宇に及び,前購の現代雑誌九十種の調査にお ける延べニー亀卜八万宇の約四倍に相当する。今回の調査は電子計算機を利用して行ったが,各種の翻 約があるために,さらに入手による作業を併用して完全を期した。
今團の調査の第二の特徴は,個々の漢字についてそれぞれの用法を精細に分析した点である。一 々の漢字がどういう語あるいは語構成要素として使われるかを明かにすることは,国立国語研究所 の従来の漢字調査においてもとられてきた方針であるが,今回の溺法分析は,これまでの調査より
もさらに精密に行った点に特色がある。
電子計算機による新聞の用語用字調査の担当者については,本文申(25ページ)に濡したとおり であるが,この漢宇の調査に関しては,主として野村雅昭が当たり,報皆書の執筆も聾心が当たっ た。野村は50年4月より筑波大学講師に転じ,たため,報告書刊行の事務は,器語計量研究部長の斎 賀秀夫が当たった。校正その飽の作業については,前記野村のほかに,書語計壷研究部第二研究室 の田申感心,佐竹秀雄,田島道子が協力した。
昭和51年1月10臼
国立国語研究所長
岩淵悦太郎
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霞 次
1:Jj?ffのことはご……・
第1部調査の概要 1 調査の臼的………
1・1調査全体の9的………一
1・2 この報告書の欝的……一………・・……
2 調査の対象…
2・1語彙調査の対象・………
2・2 漢字責周査a)対象・・一 ・・・・・・・・・・・… @ 一一・・・・・・…
3 調査の経過・……・
4 調査の方法・…一…………・・
4・1処理手順………・………・………・
4・2 詞掌と妙趣の認定…………・・…
4・3 単位語の認定………・……・…・………・・……一 4・4 代表形態の認定………
4・5 用法の分類………・………◎ … 4・6 層別の分類…・……・
5 この報告書の性格………・……・… 噸…
5・1語彙調査との関係……一
5。2 中問芸当告との閣峯系・…………+・・……
5・3表記調査との閣係…………一・・
6 実施機関と担嘉考
7 参考文献・・…第2部 調査結果の概要
1 使用度数分窟………◆………・……・一 1。1全体の使用度数分布………・・………・・
王・2 纒捌の使絹度数分布…・…………一 2 漢字の種類■■
2・1新聞と雑誌の字種の比較………・……
2・2制限範囲別の漢字の種類………
2。21全体の傾向 2。22表外漢宇の使用状況
2・23 当用漢宇補正案にしめされた漢宇の使用状況一ii一
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−王2・44婆 ーエー12222222
・27
..Q7
・・R0・
・・R2
・・R2
・一R6
2。3層携の漢宇の種類・…
3 音訓使用状況・一一…・……・ ・……
3・1 当用漢宇音訓表との関係…・……
3・11 :金体の傾向 3・12 腔内音・訓の分析 3・13 表同音謂の分析
3・2 字訓の胴法分析………・…・ … t ……ウ
4 用法別使用状況………・……・…・…………・………
4・1 全体の使用状況………・… ・… ……◆ ○……
4・2 語の種類からみた状況……・……
4・21漢語と和語 4・22 病名と地名 4・23数詞
4・3語構成単位からみた状況一一般用法の分析一・……4・31〜苅胴法の量的構造 4・32自立用法 4・33結記法
4・34 接辞的用法 4・35 略語
4・4語表記からみた状況………
4・4! 借字 4・42 特殊訓
・・S3
..SiS
・・S4
・一S7
・・S9
・・S9
・・T2
・・T5
・・U3
第3部主要調査結果一覧
第1表 全体使用率順表・………・…・…
第II表用語例表一…………・・………
第∬一1表 使用度数10回以上の漢字の用語例表・・
第H辺表使用勝:9回以下の由宇の用語{臓
第類表 層別使用率順表…………・…・・…… ……
第w表 総合用法別表一 三V表 類別用法別表…
第V−1表 宇音構成単位別表・・…・…
第V・一2表 字訓構成単位別表・…
第v−3表略語使用漢字表…
第V−4表 人名使用漢字同一………・………
第v一一5表地名使用漢宇表一 策V−6表機器品詞別表…
73丞幽ρ06 629嗣Q︶5 11点44
7 46
付一1 付一2 付一3 三一4
第4部 付録
標本タト宇種一覧…
漢字調査に1・槻しなかった回内音訓一覧…
昭和41年度重要:事件および主要連載記事・連載小説一覧 五十音順漢字表(検字)一一一……
508 508 510 512
一iii一
12345678912345678910111213!41516171819 図
表
図表の目次
作業全体の流れ図___漢字表記語カード……・……
漢字カーード…………
主入カデータ・フォーマット………… ・・、・
計算機処理ブロック・チャート…………
使用順位と使用度数累積百分率の関係……・
使用順位と使用度数百分率の関係…・
度数匿分ごとにみた用法別使用量の比較・……
度数区分ごとにみた語構成単位別使用量の比較・
標本金轡の使需度数分布……
薪聞と雑誌の使用度数分布の比較・………… ・…
層別の使用度数…
層別の使用度数分布の憎憎…………
制限範囲別の使用度数…………・・…
使用率のたかい表外漢字・………
層別の表外漢宇の使用率…・………・・
当用漢字補正案にしめされた漢字の使用状況…
選別にみた異なり宇数のちらばり………一 制限範囲別の音訓使用状況…・………・…・…・
層別にみた表外音訓の使用率(延べ)……・…
調査に出現しなかった門内音訓の数…・
訓の品詞性による分類………tt一 用法別の使用度数………・………・
度数区分ごとの用法別使用度数………
人名・地名と表外漢宇………・
語構成単位別の使用度数…一
度数区分ごとの語構成単位別使用度数………一・
略語の語構成単位劉使用度数……
V
一・一・一・・・・…一… 7
. ....・・...… 8
9 9 ・IO ・・28
..P 9
一・一・…一一・・一52 . ..H......・58
・・27 ...P.8 一一・一一・一・一30
・・31 ・・37 ・・39 ・・40 ・・41 ・・43 .・44 ・・45 一・45 ・・48 ・・se ・・51 ・・55 +・56 ・+57 ・・63
第:1部 調査の概要
1.調査の目的
1・1調査全体の霞的
この報欝書は,言語計量研究部第二研究室G臼第四研究部第三資料研究室)でおこなった噺 聞語彙調査に伴う漢宇および表記の研究」の一部門なすものである。調査の開始にさきだって,
われわれが設定した中心テーマは,現代の新聞における漢字の用法および語表記の実態を調査・
分析することによって,現代語の蓑記法を確立するための基礎資料をえようとすることであっ た。そして,具体的な研究項員としては,次の二つをたてた。
(1)語の表記に用いられた漢字の種類と用法の分析・記述 ② 個々の語の表記形式の実態の分析・訳述
新聞を対 象として,このような目的を設定することには,つぎのような意味がある。「当用漢 字表」の捌定(昭和21年)に1まじまる,戦後の一連の国語施策は,すでに二十年以上の歴史をも
っている。もちろん,それらが同一の時期から整然とした体系をもっておこなわれたのでないこ とは,「送りがなのっけ方」が告示されたのが目溢034年であることからもあきらかである。さら に,最近において,「当用漢心音譲測と「送りがなのっけ方」が改定されたことは,記憶にあ たらしいところである。しかしながら,この二十余年の間,多少の麟折はあったにせよ,国民の 文宇生活あるいは表記行動において,これらの国語施策は,徐々に浸透し,学校教育の面におけ る徹底とあいまって,現代の国罠階層の中宮層・青年層の識字能力とふかくかかわりをもつにい たっている。そして,学校教育のみならず,報道・出版など一般の社会生活においても,これら の施策が,単なる影響の域をこえて,その用字の中核となっていることは,一部にねつよい反対 論があるにもかかわらず,いなめない事実である。
と!わけ,薪闘は,一貫して国語施策のもっとも強力な推進者であったといっても過言でない。
範囲としての「当用漢字表」やr当用漢宇音訓表」をまもろうとすることは,単に用字の爾のみ でなく,馬語の面にもかかわる問題である。薪聞は,平易な文章をめざす姿勢のなかで,蓑外漢 宇や表外音訓をふくむ語の書きかえや言いかえをこころみてきた。それに対するそとからの批判 やうちからの修正は決してすくなくはなく,現在の新聞の文章は,いくつかの試行錯誤をへっつ 形成されたものである。それは,決して圃定されたものでなく,これからもさらに変化していく ものであろう。しかし,「当用漢字表」制定以前の戦前の文章と比較してみたときに,そうした 努力がみをむすんで,一応の安定したスタイルをもちうるようになったことを評価してもよいの ではないかとおもわれる。
この調養のもととなった旧聞語彙調査の開始された昭和四十一年という時期は,昭和二十年代 の試行錯誤期をすぎて,ほぼ安定した文章のスタイルをとらえるという意味で,適当な時期であ 一 1 一
つたと考えられる。その衝、今Nまでに,「音訓表」や「送りがな」の改定がおこなわれたこと は,前述のとおりであり,いまここに報告しようとすることは,いささかおそきに失した感がな いでもない。しかし,〔当用漢字表」そのものの審議は現在もなお国語審議会で継続されており,』
むしろ改定以前の実態をしめす大規模な調査資料として,はじめにかかげた目的は,効力をうし なっていないとおもわれる。
テレビの発達にともない,現代の新聞は,報道のメディアとしての重要性をいくぶんか炎いっ っあるようにもみられる。しかし,おなじ視覚媒体とはいえ,映像が中心となるテレビと活宇を 主体とする新聞とは,おのずから性格をことにする。そして,油津によるマス・メディアのなか で,薪聞は依然として他のそれを圧倒して,中心的な存在である。あらゆる階層にわたって,は ばひろい読者をえている点で,薪聞は,国民の文字生活ともっともふかいかかわりをたもってい るといえよう。また,読む行為のみならず,書く行為にもなんらかの影響をあたえているはずで ある。そのような性格をそなえた新聞の用宇の実態を把握し,その要因を分析することがこの調 査全体の目的である。
1・2 この報告書の目的
瞬第四研究部第三資料研究室では,前述の(1),すなわち,漢字に関する研究から着手した。そ の概要は,新聞文章中にもちいられた一定の単位語のうち,漢字をもちいて衷認されたもの(以 下では漢字表記語という)を抽出し,もちいられた漢字の種類を確定するとともに,個々の漢字 がどのような単位語にどのような性格でもちいられているかをあきらかにすることであった。
(調査の経過および方法についてはのちにくわしく述べる。)
ここに報告しようとすることは,おおむね,うえに述べた範囲をこえるものではない。ただし,
なぜ漢宇に着Kするのかということについて,いささかふれておく必要があろう。
一般社会においても,漢字調査あるいはそれに類するものは決してすくなくない。それらのお おくは,文字使用頻度調査というような名称をもち,どのような文宇(活宇)がどのような確率 で嵐現するかをあきらかにすることに主眼炉ある。そして,その結果は,活宇ケースの内宇と外 字の分甥,文字鍵盤の排列などを決定する際に利用される。そうした調査では,漢宇は,かなな
どの他の文掌や句読点などの記号とともに,表記記号の一種としてあっかわれる傾向がつよい。
われわれの調査も一薦では,そういう性格をもっている。しかし,漢字を他の表記記号と区:溺 して特に注目する理由は,漢字が単に語の分節的な音をあらわすだけでなく,幽愁によってあら わされる単位が,現代語で語彙論的にも有意味な言語単位であることにある。かりに,その単位 をr語」ということばであらわすとするならば,漢字は,その表語性によって,他の文宇と区別 されるといいかえることができる。これまでに,われわれがおこなってきた,いくつかの漢宇調 査は,いずれも語彙調査と並行してこころみられた。今園の調査も,その例外ではない。それは,
漢字調査の作業が,単に語彙調査の作業と大部分において重複することから,作業能率上の損失 をすくなくしょうとする理由だけではなく,ある意味では,語彙調査を補完する役割を漢宇調査 がになっていたからでもある。
たとえば,語彙調査の単位語は,急冷一字であらわされる単位よりもながいのが普通である。
絵をもよおす]・「会がはじまる」などの「会(カイ)」は,どのような単位を採朋しても,
一 2 一
一見嵐し語となるが,「会費」・「会報」・「開会」・「司会jなどのように他の単位と結合し たものは,それぞれ別見出しとしてたてられ,「会」という単位が全体で何回繊現したかという ことは,語彙表からは,あきらかにされない。また,「運動会」・r音楽会」などの場合は,調 査単位によって,全体が一単位となったり,あるいは二単位となったりする。ところが,漢字調 査では,「会」という文宇を一単位として集計するから,それをふくんで表記された語例のなか から,「会をもよおす]の「会(カイ)」に相当する単位を容易に抽嵐することが可能になるわけ である。
これまでの漢字調査に一貫していたものは,うえにのべたような漢字と語とのむすびつきのな かで,欄体としての漢字の使用度を確定しようとする姿勢であった。今回の調査では,そうした 立場をさらに強化して,漢宇使用の構造を,語の種類・語構成上の機能・表記上の機能などの灘 から総合的にとらえることを目的とした。そして,個々の古宇について,それらの用法をしめす のみでなく,量的な構造として把握することにつとめた。すなわち,ともすれば,漢宇の基本度 を確定する作業が,文鳥としての漢字の使用頻度に重点をおいておこなわれることから生ずるマ イナスを.その機能の爾から量的にうらづけることによっておぎなおうとするものである。さら にいいかえれば,計一量語彙論における語種構成論や品詞構成論に相当するものを漢宇調査におい てもこころみようとすることにほかならない。
そうした目的のためには,大量のデータを分析することが必要になる。そして,その要請は,
語彙調査においても,かわるところがない。本研究所において,語彙調査のために電子計算機が 導入されたのは,そのような要請にこたえるものであった。そして,漢字調査もまた,電子計算 機による処理を必要とした。しかし語彙調査において各単位語につけられた情報では,漢字の用 法を分析するためには,かならずしも十分ではない。そこで,いったん出力された結果を人手に よって分析し,さらに再入力するという方法をとった。そうした何段階もの分類・整理という過 程のなかで,われわれは,漢字に関するいくつかの情報を選別することを要求された。たとえば,
燭による使用分野の区分は,話題によるもののみとし,文章の種類・執筆者の種別・紙面上の位 置などの情報は,途中ですでなければならなかった。
それらのなかで,もっとも価値:がたかいとかんがえられるのは,屍体に関する情報であった。
原稿清書→漢字テレタイプ入力→漏出カー→カード転記→台帳作成→コード化→カードパンチ入力 という過程で,字体に関する質のたかい情報をたもちつづけることは,原理的には可能であった が,実際上ほとんど不可能であった。したがって,漢字調査ではありながら,文宇論的観点から の分析は,おおきな舗約をうけざるをえず,語彙論的考察に傾斜した調査匿的にとどまらざるを えなかった。
さらにもうひとつ,この調査でこころみなかったことをつけくわえるならば,漢字と語との対 応を厳密にとらえる一方,意味の問題には,ほとんどたちいらなかった。「機(キ)」という単位 は,二字漢語の要素として,「機械・機業・機能・枢機・危機・敵機」のようにもちいられる。
o e e o e o
精細にみれば,これらの「機」という単位によってあらわされる意味は,いずれもおなじではな い。しかし,この調査では,その区別をしなかった。(ただし,接辞的な驚法については,「機
(洗濯〜)」・「機(得点〜)!・「機(民間〜)」のように分類してある。)その理由は,字体の
一 3m r
揚合とはやや事情がことなるが,人手による処理結果を計算機ベースであつかうことの困難さと いうことのほか,積極的には,つぎのようなものである。
一般に最盛は表意文宇であるといわれる。ただし,その表意性は,漢字が語相当の単位をあら わし,語を介して,語のさししめす概念と結合することにより保障される。宇翻の場合には,語 相当の単位は,おおむねf単語」とかんがえてよいが,字音の喰合には,ほとんどが自立性をも たず,「形態素」とみなすことはできても,「単語」とは認定しがたい。さらに,字音形態素には,
七曜との対応があいまいなものがすくなくない。「挨拶」・「曖昧」など,現代語としては,漢 字褒記されることさえすくなくなったものはともかくとしても,H常よくもちいられる,「貿 e
易」・「陛下」・「機械」などの紅貿」・「陛」・「械」によってあらわされるところの意味は,
o o
きわめて不明瞭なものである。「委員」と「委細」の「委」の相違は,現代語としては,むしろ,
o o
語源の問題となりつつあるといってもよいかもしれない。そうした漢宇と意昧との対応を分析す ることは,漢字の機能を検討するうえで,決して価値のひくい問題ではない。しかし,このよう な大量調査で,そうした領域にふみこむことは,おおきな危険をおかすことになるとかんがえら れる。そのような理由から,この調査では,意味の問題はとりあっかわなかった。
以上に述べたことを整理すると,この報告書で目的とするところは,次のように要約される。
(1}どれだけの数の漢字が,どのような分野で使用されたか。(使用度数とその分布)
② どのような種類の羅宇が,どのような分野で使用されたか。(国語施策による字種の別)
(3)それぞれの漢字は,どのような形態をあらわすのにもちいられたか。(音訓使用の状況)
(4>それぞれの漢字は,どのような種類の語を表記するのにもちいられたか。(語種・晶詞)
㈲ それぞれの漢字で表記された需語単位は,語構成上,どのような性格をもつか。
(6)以上の各項において,それはどのような量的構造として把握することができるか。
2.調査の対象
2・1 語彙調査の対象
対象としたのは,既述のように新嘗であるが,とりあつかいの便宜と適当な調査規模というこ とを考慮して,昭和41年1月1H付から同年12月31 H付までの三種の新聞各1年分とした。三種 の新聞とは,朝鳶新聞・毎日新聞・読売新聞である。それぞれの葦簾特別版をのぞく朝夕刊全紙 灘が対象となった。(欄外の呼名・H付・ページ数などは,対象からのぞいた。)いずれも,東京 本社版の最終版をもちいたが,一部,最終版以外の版をふくむ。
以上が母集囲に相轟するものであるが,語彙調査では,金数調査をおこなわず,サンプリング による調査方式によっている。すなわち,薪聞1ページを30ブ獄ックに分け,エリア・サンプジ ングの方式により,抽出比60分の1でランダムに抽出したものが標本である。概念的には,三種 の新聞の朝夕刊全紙薦の6H分にほぼ相当する量を抽患したことになる。サンプリングの方法に ついては,下院の論文にその詳細がある。
田中章夫・斉藤秀紀「珍聞語彙調査のサンプリング・プmグラム」(国立国語研究所報告31 『電子計算機による国語研究1』所収)
2・2 漢字調査の対象
漢字調査では,全体集計にあたっては,語彙調査で標本としたもののうちから,つぎにあげる 一 4 一一
もの合計約80万字をのぞいた。数字は,推定延べ漢宇数である。
。案内広告…45万
。ラジオ・テレビ番組表…12万 。株式相揚表…11万
。その他の表(野菜卸売億天気予報,碁・将棋・運動などσ)一覧表)…12万
これらの表をのぞいた理由は,一般の文章の用字法とことなるものがみられ,かつ,最的にも おおく,岡〜の漢掌が反覆して出現するため,全体の結果におおきな影響をおよぼすことによる。
ただし,中閣報告では,これらをふくんだ集計をおこなっており,量的には,それで十分に推定 ができる。また,具体的な用法については,標本の約9分の1にあたる分墨を対象として,分析 をおこなっている。すなわち,最終集計の対象としたのは,新聞の〜般記事繭の文章を構成する のにもちいられた門門であるということになる。(商業広告は,一般記事と区別して,対象に含
めた。)
以上をまとめると,漢宇調査に関する母集団および標本の推定字数は,つぎのようになる。
(語数は,「長単位:語」とよぶ,ほぼ文節相当の単位による。)
全体 。愚集団延べ語数 8400万 。標本延べ語数 140万 。9]:集団延べ字数 10800万 。標本延べ字数 180万 3. 調査の経過
この調査は, 昭和42年4月に,
始された。語彙調査は,
最糸冬集言予ラ>
4800万 80万 6000万
100万
「新聞語彙調査に伴う漢字および表記の研究」という.題肖で陽 それにさきだち,昭和4エ年にはじまり,岡48年に一応完了した。漢字調 査は,その後も継続され,49年度で実質的な作業をおえ,50年度の本報告書の刊行をもって,終 了した。なお,表記に関する調査は,継続しておこなわれている。
調査は,昭覇45年度の中問報告の刊行をさかいとして,その前後に二分される。前半のおもな 作業は,機械処理システムの作成,全体の約三分の一の量にあたる一紙一年分データの度数集詐 全体の約九分の一の量に相当する,AO(朝日新聞朝刊1〜6月分)の用語例表の作成,および,
一紙一年分の集計結果についての申問報告の刊行であった。以下に,年度の順に作業内容をしる
す。
42年度 漢字調査の機械処理システムの設計 機械処理プログラムの作成(開始)
43年度 機械処理プログラムの作成(終了)
AO用語下表の作成(開始)
1紙1年分データの機械処理
44年度 AO用語例表の作成(継続)1紙1年分度数表の作成
45年度 AO用語例表の作成(終了)一 ro 一
獅
︐
Ψ問報告の刊行
全体処理システムの設計
46年度に,語彙調査の全体集計のための機械処理がほぼ終了したのと前後して,漢字調査の全 体集計のための作業が開始された。前半渉機械処理を主としたのに対し,後半は,人手による処 理に重点をおいたため,作業の内容は一変した。詳細については,以下の章で説明することにし,
概略のみをしるす。
46年度 全体用語例台帳作成のための機械処理 漢字表記語台鰻の作成(開始)
47年度 漢字褒記語台帳の作成(終了)
48年度 漢字表台帳の作成(開始)
49年度 漢字衰台帳の作成(終了)
電子計算機再入力のためのパンチ用原稿作成 各種表作成のための機械処理
報告書用原稿作成のための作表・分析・執筆 50年度 報告書の刊行
4.調査の:方法
4・1 処理毒司【厘
前章にのべたように,この報告書は,46年度以降の作業によってえられた結果をその内容とし ている。したがって,ここでは,後半の作業について,その手順を概説する。処理の概略を流れ 図によってしめしたのが図1である。以下,それによって,説明をくわえる。
〔全体用語例台帳の作成〕
漢字調査のソース・データとなったのは,語彙調査の基本ファイルの一一つで「出典台帳」と称 するものである。このファイルには,糠本として採集されたすべての長単位語(文籔から付属語
をのぞいたものとほぼ等概念。くわしくは,参考文献中の語彙調査に関する報告=書を参照された い)が第一宇翼の読みかたにより,五十音順に排列され,層および出典(原文中¢)所在)に関す る情報をもって,おさめられている。このファイルから,層別情報によって,表と案内広告をと
りのぞき,6種の層別区分に編集しなおす①。つぎに,見繊し語(長単位語)を一文字ずつ読ん で,漢字をふくんだもののみをとりだす②。これが漢宇蓑記語ファイルである。これから各見出 し語を紙テープにアウトプットし,漢字テレタイプで印宇したものと,層およびiM典に関する情 報をラインプリンタでアウトプットしたものとをあわせたのが,全体用語例台帳である。この台 帳が以降の作業の基礎となるもので,これにより,個々の見出し語がどのような文脈でもちいら れたかを,原文にもどってしらべることが可能になったわけである。また,ラインプジンタ印字 の際に,各見韻し語の層別および金壷の使用度数をカウントして印字してあるので,その度数が 以下の集計のもとになる。
〔漢宇表記語台帳の作成〕
全体用語例台暖の見出し語を作業規測(次節で説明)によって,さらにみじかい単位に分割し,
それぞれの単位語に読みがなをつける③。その際に,人名および地名としてもちいられたものに 一 6 一
図1 作業全体の流れ図
⑧ 請彙調査
Iミ挙/}}:、轟
fハ㌧でル
カ…1ごの内容
台 に転記
①
奪円田撮による 撃撃倦沛゙整理
漢字表記i;吾
艨@ 帳
汲字式、、し1語
梶@ 出 漢字カー}・作成
漢字人、;乳五冶
潤Eイ、1レ
{灘鴛(言凹凹…韓国1記ノ
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i・rl.一姑出し漢
嘯イとに分類
③ ⑫
単位分}1諜
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1}ε1一昆出し漢字
o蛇分引・川州
④
か・レ
カ…ドの内姦 蔽に転説
⑤
漢㌻麦記。!鈴日・
吝ll分疲数集計
⑥ }
@獄記漏
⑦
i・・1.曳串し、膚 数 、il幽
(ilS)・
用請1蝦こ ;;} 算機処理用
コード変換
(iL一
カ…ドパンチ用 脚 橋 作 成
qg・
;;i−算機処理
度数ファイル 用法ファイル
州、
F
数度
咽疑
︸石 数跡4 叡・鯛法劉表
.津﹂
各種衷
原稿作成
報告書用原稿
7
は,その情報を付す。また,読みがなをつけるためには,原文にさかのぼることが必要となるか ら,第一一次の同表記半語の糊別をおこなうことにもなる。たとえば,つぎのような場合である。
金→きん(gold)・きん(〜○円也)・きん(将棋の駒)・きん(人名)・きん(金曜日の 略)/かね(money)・かね(金属の意)
通っ→かよっ(て・た)/とおっ(て・た)
工夫→こうふ/くふう
上手→うわて/かみて(〜から登場)・かみて(地名)/じょうず
③の作業がおわった段階で,台帳で分割・分類された単位語ごとに,その内容をカードに転記 する①。内容とは,見娼し語形・表記形・語についての注詑・度数などの情報をいう,この際,
すべての単位語の数だけカードを作成するわけでなく,同一内容のものは,1枚に記入できるよ うに整理してある。ただし,表記形がことなれば,別カードとして採集する。このようにして作 成されたものが,漢宇表記語カード(図2)である。このカードを見早し語形によって,五十音 順に配列する⑤。そして,二一見出し語形にふくまれるものを整理して,単位語の種類を確定す
る⑥。これが岡表記異語と異表記詞語の判別である。(たとえば,「月(moon)」と「月(month)」
は,岡表記異語であり,「上げる」と「揚げる」は,異表記同語である。)層別の基準は主として,
現代雑誌の用語調査の際のそれによった。(くわしくは,国研報告25r現代雑誌九十種グ)用語用 宇一分析編一』を参照されたい。)ただし,漢字調査であることを考慮して,雑誌の調査の照合
よりも.同語と判定する範囲は,いくらかせまくなっている。
こうして,同一単位語と認定したカードが複数枚ある揚合は,代表カードを作成する。一・枚し かない揚合は,それが代表カードとなる。異表記形は,それぞれごとに小見出しカードを作成す る。そして,度数を集計して⑦,結果を代表カードに記入する⑧。各代表カードおよび小見出し カードの内容を,台帳に転記したもの魁漢字表記語台帳である。すなわち,これによって,調 査に嵐現した単位語が,どのように表記されているかを一覧することが可能になったわけである。
(なお,小見出しカードは,異表記形の揚合だけでなく,「的」のように,単位翰墨によって1 単位語とされた接辞的用法をもつものについては,その結合の対象となった語(「近代〜」・個 襟〜」・「ヨーロッパ〜」など)の情報を示すぼあいにも作成される。)
〔杉舟表台帳の作成〕
図2 漢字表記語カード
〈一一般:カーード〉 〈代表カーード〉
奇想
一一V外
ll iM lN I V I VI 1 ,,I
ll 31 ,1
一8
漢宇表記語三年の各単位語の表記形にふくまれた漢才一一字ごとに,それを見出し漢宇として作 成する⑨のが漢宇カーードである。漢字カードには,見出し漢字をふくむ単位語(用語例)および その表記形(異表記形)や度数などが転記される。そのカードに,さらに,代表形態(音訓),
用法に関する情報,見回し漢字の排列コード(数宇4けた)が記入される⑩(図3)。そして,
記入のすんだカーードを排列コードによってならべなおし,同一見嵐し漢宇をもつカードが,すべ て一箇所にあつまるようにする⑪。
図35莫字カーード
圖
Fチコム囲
匪ロユ]持込む
倒ちこむ6) 〔もち込む、〕
;DT.一:
・蜜、1,
LLLS 1
27 正1
12 川
4 5 v
s 1
議
57
ig 1 o 17 io
あつまったカードを,代表形態・用法によって,一定の順序に分類・俳列し⑫,台帳に転記す る⑬。そして,各用法ごとに,部分度数の集計をおこなう⑭。(各漢字ごと,代表形態ごと¢)集 計は,計算機処理によっておこない,のちに記入する。)これが漢宇表台帳であり,この報四書 の用語例表のもととなるものである。粥語例表のための原稿作成愈は,この段階からはじまる。
〔計算機処理〕
漢字表台帳の内容を,計算機に入力するために,字種・代表形態・用法などを数宇耳一ドに変 換する⑱。ただし,字種(当用漢字・耳当絹三日の別など)・代表形態(音訓)などは,別途に テーブルとして作成しておき,排列コードや音訓順序コードなどによって,メイン・デー一一タ(主 入力データ)とのマッチングを可能にしておく。このようにコーデKングしたものを,カード・
パンチのためにシートに転記⑰したものが入力用原稿となるわけである。
主入カデータのフォーマットをしめしたのが図4である。主入力データの数は,レ=一ド数に 図4 主入力データ フォーマット
排 音
音 用 全
列 訓順 訓内 法
層 別 度 数 コ 一 ド
体壌:
コ 序 容 コ 数
1 コ﹇ コ 1 (4)× 6 コ
1 ヨ
ド ド ド ド
}ご
(4) (2) (2> (3) (5) 勿
0288*03*11*102*
一「T}iY
鹿 ぱな泓一名剛性
一一褒内訓
eoo7 * oo3s * ooo4 * eo3s * ee21 * oeso * oolss
t一一一一一一一一結合用法
層内度数
一.一一.
全体度数
9
図5 計算機処理ブmックチャート
観タ刃⁝
窪高
一入孝力︑四聖
カード パンチ
譲三7㌧ブ」テ『一タ
データ談みこみ
第1次 主入力 ファイル
封髭 窪コードJilgt ソ 一 ト
第2次 主入カ フアイル
カードパン.チ携
言翼・・華φフー一一一フノレ
原 輪
テーープル作成
ルーチ ン
ロにコヨ ノノニサ i.異 ・.重.博
アーーフル
1論葦9チェック
イi多鶯三ル.一チン
修正済 主入力 ファイル
鞭コー
膏諾きこみ
マスタ…
フ i fル
第 1 次
1摂朋浸ξ別表
詮:.母男il}葉:数舞きi言 1
上ヒ線矯.卜鱗〔胴
ファイル
上ヒ導{舞.} 参碁
ルーチン
圭ヒ率計婁輌斉
ファイル
」・月 i去 渉1
笠警珊i・.毅〈}
lsu・S iS{・ Sll
ファイル
1斐.数1頗ソー.一ト 第 2 次
原罵法璃衷
房{1:f£一.i..雪ii;1頓
度数 7アイル
膜=:数踊負 f月}}ミ男ll ファイル
1藤内1順f立{吏用薄二
き こ み
fflf.一1.・至斧用貢
度数 ファイル
度 数 瀬
全f塞声碧湛謬ll・褒 コード溺
エディット
三if,・..}一馨;1績
全体度数表 乏寒.薮曜{ソート
」斐7数1順
度数 ファイル
使∫羅埣{ノ1贋
金体刑数表
種珊ル
下層各用フ
各;種1用1表鴉爽
一le一
して,約12, OOOである。この数は,第IV表(467ページ)の総合用法別表の総異なり数とほぼ一 致する。
計鋒機処理⑱の手順は複雑なので,図1では一ステップとしてまとめ,その部分を図5にしめ した。ただし,この図でも,細部は省略してある。特に修正ルーチンは,各所にもうけてあるが,
一一モ所をのぞきすべてはぶいた。また,ルーチン化したものは,省略にしたがった。
処理の内容は,漢字調査マスターファイルを作成するまでと,それ以後とに二分される。前半 は,カードパンチされた主入力データを読みこみ,〜定の順序に排列し,別途に作成した削回テ ーブルとつきあわせて,必要な内容をかきこむことが,そのおもな内容となる。このようにして 作成されたマスターファイルをもとにして,各字母ごとの度数集計をおこない,五十音順と使用 率順の度数表を作成する作業と,用法別に各種の集計をおこない,結果をアウトプットすること が,後半の内容である。そして,各種の表を原稿としてまとめ⑲,それをもとに分析をおこなう
というのが処理手順の概要である。
計鋒機処理によって作成した,各種漢宇蓑および分析用の集計表は,以下のようなものである。
○全体五十音順度数衰 ○全体使驚率難度数表
○層別使用率1繊度数表(1〜IXI層)
○総合用法別表 ○類別用法甥表(7種)
・語構成単位溺表(字音・字訓それぞれ4種)
。略語使用漢宇表 。数詞使用漢宇表 。無名使用漢宇表 。地名使用漢掌表 。借字使用漢字表 。特殊訓使用漢字表
C)ξ罰〜言責野三}二丁(掌言舞16置据)
○使驚度数分擶表(全体・層別・用法溺の3種)
○宇種甥集計表 ○音訓内容溺集計褒 ○用法別集計表 ○騰別出現分布表 4・2 問字と別字の認定
嵐現した漢宇の種類を確定するためには,岡宇か別書かの判定をおこなわなければならない。
そして,岡宇と判定した場合には,代表門形を決定する必要がある。さきにものべたように,今 圓の調査では,異体字の問題,いいかえれば,同字とみなされた,各字母の形態の異同に関する 問題は,あっかわないことにしたが,同字と認定する管粥,代表字形選択の基準については,ふ れておく必要があろう。
それにさきだっては,漢宇とはなにかということを定義しなければならないが,それについて はふかいpをせず,常識的な判断にしたがった。具体的な方針としては,諸橋轍次著駄漢和辞 典雌に字母として収録されているものは,すべて漢宇とみなした。嗣辞典に収録されていないも 一11一
のについては,その同形を構成する基本点画およびその文字としてめ用法が,一一般の論旨とこと ならないかぎりにおいて,漢字とみなした。実際の処理上,これらの基準が問題になることは,
ほとんどなかった。
細字と認定する範囲は,墨形の異同の大小にかかわらず,語との対応において,形態的にも意 味的にも一致し,用法上のつかいわけが存在しないものとした。すなわち,一一方の漢字が挾用さ れている文字列において,それを他方の漢宇におきかえることが,どのような場面でも可能な場 合に,それらは,同字の範囲内にあるといえる。逆に,正字と俗宇とよばれるような閣係にあっ
たり,当用漢字表の欄限による書きかえが,特定の語に関しては成立したりしているものでも,
うえのようなおきかえが不可能または不自然なものは,別字と判定した。以下に,その例を示す。
〔同字と認定したもの〕
体瓢膿 万=萬 桟篇淺 餅=耕 梯=樫 橘瓢挿 〔別宇と認定したもの〕
連←一・聯 園・画→廻 総←→綜 修←一・脩 雁←一・鷹
※当用漢宇補正案による宇体の変更の「燈→灯」は,別字あつかいとした。
つぎに,同宇と判定される字母が複数個存在する揚合に,どれを代表字形とするかの基準をし めす。まず,当規漢字表内の字をふくむ場合は,当用聖節宇体表の字体にしたがった。また,入 営用漢字表および当用漢字補正案にしめされた漢字をふくむ場合は,それぞれの表および案の字 体にしたがった。(「竜(補正案)」と「龍(人名用漢宇表)」は,「竜」を代表字形とした。)表 外漢字どうしの二合は,原則として,一般に正掌(本字)とされているものを,代表字形とした が,略字や俗字とされているものでも,使用度数に圧倒的な差のあるものは,それを代表字形と した。(「藍・芦」→「芦」など。)また,同字か沢蟹かの判定が問題にならないものでも,表外 漢宇の字形については,上の基準を適用した。
4・3 単位語の認定
個々の漢宇がどのような語(言語単位)をあらわすのにもちいられているかをみるための基準 となる単位語として,この調査では,語彙調査で短単位語とよぶものを採用した。短単位語とは,
全体用語例台帳所載の漢宇をふくむ長単位語を短単位規則によって分割したもので,処理手順の なかでふれた羅宇表記語台緩の見出し語は,すべて,短単位語である。本書の驚語例表は,見趨 しとした漢宇をふくむ短単位語を整理してしめしたものである。以下では,この単位語を用語例 ともよぶことがある。短単位規則の詳細は,国璽報告37『電子計算機による新聞の語彙調査灘に のっているので,ここでは,あらためてとくことはしない。ただし,漢宇調査では,多少変更を
くわえた部分があるので,その部分を中心に解説をする。
短単位とは,「最小単位(現代語として意味をになっている最小の言語形式)」を基礎として,
操作的に定義されたものである。最小単位とは,たとえば,つぎのようなものである。
和語…「母親」・「青白い」・「読み終わりました」の「母」・「親」・「青」・r白い」
・「読み」・「終わpj・「まし」・「た」など。
漢語∴「社会」・「運動」・「新国家」の「祉」・ヂ会」・「還」・「動」・「新」・「国」
「家」など,漢掌一字であらわされる部分。
一12一
外来語…「スケッチブック」・「ウォーミングアップ」の「スケッチ」・「ブック」・「ウ オーミング」・「アップ」などQ
なお,語彙調査では,漢語(字音語)に関して,三代語では分割しがたいとかんがえられる二 字漢語,たとえば,瑚麻」・「沙汰」・「獅子」・「無駄」・「留守」などについては,全体 を一最小単位とする例外規期をもうけているが,漢字調査では,これらの揚合も,…字が一最小 単位に相当するものと仮定して処理した。ただし,外来語の音訳に話するもの,「旦那」・「倶 楽部」・「曹達」などは,全体を一最小単位とした。
これらの最小単位が,ある条件をみたす形で結合した(または結合しない一これは。翻結合と 湾える)結合体が,短単位とよばれるものである。「結合」とは,いわゆる文節内での書語要素 のむすびつきのことをさし,さらに,そのむすびついたひとまとまりが意味・機能のうえでもひ
とまとまりになることが条件となる。
この最小単位をもとにして,作業規則がたてられるわけであるが,おおまかないいかたをすれ ば,つぎのようになる。
(1)人名,地名,数詞,付属要素(接頭語・接尾語・形式体需・補助用書など),助詞・助 動詞は,一最小単位を一短単位とする。
② 〜般の最小単位は,最小単位二個の一次結合形を一短単位とする。
(3}以上の(1)・(2)で一短単位とみとめられたものに,前または後から順次に結合した一最小 単位は,それだけで一短単位とする。
(4)他と結合せずにもちいられた…最小単位は,一短単位とする。
これに関して,漢宇調査では,つぎのようなあつかいをした。
(1γ語彙調査では,上記の(1)または(3)と(4}のいずれの場合でも,それぞれを短単位として等 質にあつかうが,三管調査では,区別をする。
例:「度がすぎる」・「度をこす」の「度」と「氷点下三度」・「北緯三十八度」・「:
O O O O
度目の訪米」・「知名度」・「難易度」の「度j
o o o
「大は小をかねる」・「声を大にする」の「大」と「大規模」・「大科学者」・「た
o o o o
まご大のヒョウ」のr大」
O
{2)!語彙調査では,上記(2)の場合に,結合体の音節数(モーラ数)が六音節をこえる揚合は,
それぞれの最小単位を一単位とするが,漢字調査では,外来語と和語,外来語と漢語の 結合体の場合,和語・漢語の音節数にかかわらず,外来語の音二三が三音節をこえる場 合は,それぞれを一最小単位とする。
例llスカートi地l iホームランi王1 !ヤングマン1向きi l新彗システム【
i白 iブラウス !
cfIペン先i iクラス会i l紙パルプl l純ジャンプi
みつか いっか か
(3}「語彙調査では,「三賃」・「五則のrNJを一最小単位とみとめてないが,漢字調査
o o
では,一最小単位(付属要素)とみとめ,一短単位とする。
{4)「語彙調査では,「史的」・「物的」など,一字の漢字と結合したr的」も,付属要素と
Q O
して一一短単位とするが,漢字調査では,付属要素としない。したがって,結合体全体が
一13一
一短単位となる。
このほかにも,部分的にあつかいをかえたところがいくつかあるが,大勢にはひびかないとお もわれるので省略する。また,具体的な処理事例については,以下の舗でもふれる。
4・4 代表形態の認定
漢字によってあらわされる三二単位の音声形態を,ふつう,音(字音)または訓(字訓)とよぶ。
一般に,二二によってあらわされる単位は,ほぼ形態素に相当するとかんがえられるから,かな らずしも音訓にこだわらずに,形態論的な処理をすることによって,代表形態をさだめることは,
不可能ではない。しかし,漢宇と音訓との伝統的なむすびつきや一般の漢字についてのあつかい かたをかんがえると,それからあまりにかけはなれた処理をすることは,実際的ではないので,
ここでは,漢字と言語単位との対応を,音訓を媒介としてとらえることにする。(実際的でない というのは,新聞の漢字使規の実態を国語施策との関係からながめる場合の便宜などをさす。)
実際の手1慎としては,つぎのような方法をとった。まず,用語空中の漢宇で表記された部分の 形態を抽鷹する。ついで,その形態の代表形態を決定する。その際に,当用漢字については,
[改訂当用漢字音訓表」にしめされた音訓を代表形態とし,表外漢宇については,それに準じて 処理することにした,たとえば,「根性」の「性」は,用語例中の形態は{ジョウ}であるが,
代衰形態は,/ショウ/ということになる。また,「合併」のf.合」については,/ガツ/とせ ず,「音訓表」の/ガッ/を代蓑形態とした。あるいは,訓の丁合では,「基づく!のr基:」の代 表形態を/もとつく/とせずに,/もと/とするような例である。
字音の寄合は,音訓表の冤出しのたてかたにほぼしたがったが,字訓の揚合は,音訓表を基準 としっっも,かなり,手をくわえた部分がすくなくない。以下に,そのおもなものをしめす。
(1>形容詞は,その語幹部分を代表形態とした。また,その語幹部分を語根として派生したと かんがえられる動詞などは,それぞれを代表形態とせず,形容詞の語幹部分を代表形態 とした。この処置は,語幹部分に名詞としての用法があるなしにかかわらずおこなった。
例・黒{
広 くろ くろい ひろい N ひろまる ひろめる ひろがる
、ひろげる
}一/くろ・
→/ひろい/
親{説9一/・た吋 薄/l饗すL・1/
(2)形容動詞語幹に相奏する訓で,その語根にあたる部分が各種の派生形をもつものは,そ の語根の部分を,代表形態とした。
例:
(3)動詞の連用形から転成したとみられる名詞で,音翻表では,独立の訓として見出しにた てているもののうち,つぎのようなものは,動詞を代表形態とした。
一14一
鯛周蹴る}一/・たえ・/ 踊論叢言}一/お・・/
輔 名詞で,結合形の揚合に,母音が交代するものについては,単独で出現する場合の形態 を代表形態とし,例のようにしめした。ただし,一音節からなるものは,別の訓として あつかった。
例:酒{1斯/・け(さか)/
船鷹}一/ふね(繍/
腓木にに磯回にゴ簑二
代表形態を決定する以前に,嗣語例中の読みかたが問題になるものについては,原文にあたっ て検討したが,それでも判定できないものは,下記のように処理した。問題となったケースは,
おおむね,つぎの三つのタイプにわけることができる。(3)の場合は,対象が昭和41年の薪闘であ ることを考慮し,新聞社のハンドブックなどを参照して,当時の新聞の用宇原測を尊重した。
ω 原文の文脈によって,担嶺者の判断で決定したもの。
例二夜(よ・一よる) 工場(こうじよう←吟こうば)
埋もれる(うもれる←吟うずもれる) 抱く(だく←→いだく)
② 原期として,いずれかの読みかたをきめておき,文脈によって,あきらかに他の読みか たと判定されるもののみを別にしたもの。
例;私(わたくし〉わたし) 博士(はくし〉はかせ)
○年前(まえ〉ぜん) 幸子(さちこ〉ゆきこ)※人名にはこの処理がおおい。
(3)改定前の音訓蓑にあるものを優先し,あらたにくわえられたものを例外的にあつかった もの。
例:執着(しゅうちゃく←しゅうじゃく) 手数(にんずう←にんず)
分泌(ぶんぴつ←ぶんぴ) 爾酉(めんもくそ『めんぼく)
このほか,数字が連続する場合は,くらいどりによる読みかたをせず,一宇ずつにきって,一 義的に読みを決定した。
いちいちきゆう いちきゅうごに さんし ろくしちはち
例:一一九番 一九五二年 三四,六七入株 4・5 用法の分類
漢字一宇によってあらわされる言語単位は,ふつう,現代語で意味をになう最小の単位と一致 するとかんがえられる。われわれがおこなってきた,語糞調査や漢字調査では,そうした前提の もとに,調査単位を設定してきた。しかし,個々の漢宇のもちいられかたを仔細に検討してみる と,この前提は大筋において承認されるものの,かならずしもすべての揚超にあてはまるわけで はないことがわかる。いいかえれば,この前提は,作業上の仮説であって,それがどの程度のた しからしさでみとめられるかということは,これから証明しなければならない命題〔である。その ためには,漢宇と書語単位との対応関係について,あらかじめ,なんらかのものさしを用意して 一15一
おくことが必要となる。この調査で用法と称するものは,実は,そのものさしにほかならない。
具体的な例をあげるならば,「家」という字は,/カ/という形態をあらわす場合に,「家屋」
o
・眠家」のようにく建物〉の意味や「家族」・「家長」のようにく血縁組織〉の意味にもちい
o o o
られる。また,「画家」・「作家」のようにく人〉の意味にもっかわれる。しかし,「音楽一家」・
o o o
「評論一家」・「専門一家」のように,すでに一一次結合している単位と二次的に結合する場合には,
む くう
〈入〉の意味にしかもちいられない。このような差違は,語構造上の機能にか漆わる問題である。
また,「家庭裁判所」の略語として,「家裁」のようにもちいられる似合は,「家庭」の「家」の 意味するものとは,ことなるレベルの意味単位をさすことになり,語形成の問題とかかわりをも
つ。
また,おなじ/カ/という宇音でもちいられているようであっても, 「住み家」・「隠れ家j o o
の場合は,「ありか」の「か」とおなじく和語をあらわすために借用されたものであ!,「家盤」
o o
や「民家」と同列にあつかうことはできない。さらに,「家鴨(あひる)」となると,「家」とい う単字と対応する形態は抽出できなくなる。これらは,表記にかかわる問題である。
さらに,人名にもちいられた「家康(徳潤〜)」・「定家(藤原〜)」となると,前者の場合に は,「家」が/いえ/という形態をあらわしていることは明瞭であるが,それがどのような意味 とむすびついているかとなると,もはやはっきりしない。f家路」・「四二」の/いえ/と無関 係ではありえないが,それは語形成のレベルに関することがらに属する。そして,後者のr定家」
となると,「家」のさす形態が/カ/であるのか/いえ/であるのかさえ,さだかではなくなる。
この調査で用法というのは,以上のようなことをさす。すなわち,漢字一宇で表記されるとこ ろの単位:が,現代語で意味をになう最小の言語形式であるという命題に関して,どのような対応 関係が存在するかという観点からの分類が,ここでいう用法の偶々の項目となる。大別すれば,
漢宇一字が最小形式と対応するかいなかという点で二分され,さらにいくつかの小項鼠にわかれ る。つぎに,分類項目をあげるとともに,それぞれについて,説明をくわえる。
綱⊥1:{:雛驚ll鷺蹴細網
o
l……借字……阿弥陀・瓦斯・顔見響:・目趨度い・熱合
以下の説明にさきだって,全体に共通することがらとして,のべておかなければならないのは,
語彙調査と漢宇調査の基本的な観点の相違である。語彙調査では,採用された単位によってさだ められた単位:語が唯一の基準となり,語種・贔詞などは,それによって判定される。漢字調査で も,一定の手順により単位語(この調査の場合は,短単位語)をさだめ,それを基準として用語 の分類をする点ではおなじである。ただし,漢字調査の場合には,単位語はあくまでも分類を決 一一ユ6一
定する判断の根拠であって,分類されるのは,個々の漢字によってあらわされた単位(この調査 では,最小単位と称するもの)である。たとえば,「訪米」という単位語は,それ自体では地名 ではない。だから,語彙調査では,一般の名詞としてあっかわれる。しかし,「米」という単位 に着撫すれば,それは,「米英」・「米ソ」・「H米」・「米(〜大統領)」などの「米」となん らことなるところはない。したがって,この気宇調査の分類では,「訪米」・「渡米」・「反 米」などの「米」は,「米英」・「日米」の「米」と岡一項目としてあっかわれることになる。
この点に,この調査のこれまでの調査とことなる特徴があり,短単位語を用語例と称する理由も,
そこにある。
〔自立・結合・接辞的〕
対応用法のうち,〈数詞〉とく略語〉をのぞく一般的な用法は,短単位語を認定する際の語構 成上の機能によって,三種に分類した。したがって,この分類は,他の項鼠においても,なりた ちうるわけであ1),他の項目と同列にならぶのは,一般とか普通といった名称であって,自立・
結合・接辞的というのは,その下位区分の項であるはずだが,この項目に属するものが最的にお おいため,こういう分類法をとった。よって,〈数詞〉やく人名〉などでは,語構成上の機能に よる分類はおこなっていない。ただし,〈略語〉については,量的にもおおく,字音語の機能を さぐるうえで重要だとおもわれるので,岡三の分類をし,分析の際の参考とした。
〈自立〉用法とは,付属要素をのぞいて,最小単位一個からなる短単位語に相当するものをい う。ただし,狭義のfree formとはことなり,付属要素にふくまれなv・接辞や助辞をともなって,
派生・屈折したものをもふくむ。たとえば,字音語の二合には,「急な」・「特に」・「冠たる],
和語の場合には,「白さ」・「弱み」・「広げる」・「高まる」などという類である。宇音の三 二単位が「するjと結合した「愛する」・「感ずる」・「転ずる」なども,ここにふくめた。ま た,単位規則によって,〜短単位語となる助詞・助動詞も,ここにふくまれる。この類を自立形 式とするのは,異質なものを混入させるようだが,実際には,漢字表記されることがあまりなく,
漢字表記されるものは,「位」・「迄」など形式体雷にちかいものがおおいことから,全体には,
おおきな影響はないとおもわれる。
〈結合〉用法とは,付属要素をのぞく最小単位どうしが〜次結合した短単位語における,それ ぞれの最小単位に相議するものをいう。したがって,単位規則こよって付属要素とされなかった 最小単位である「真夏」・F小州」・「割れ目」などをもふくむ。また,字音最小単位三個から
0 0 0
なる結合体で,それ以上分割不可能なr重軽傷」・r陶磁器」・「祖父母」の類や,現代語では 分割意識のない「有頂天」・r短兵急」・「雰囲気」などの,それぞれ冷雨一宇であらわされる 単位も結合形式に相当する。
〈接辞酌〉用法とは,付属要素と認定される最小単位,および,一短単位と認定された単位語 に前後より順次に結合した最小単位をいう。したがって,狭義の接辞にかぎらず,自立形式をと ることのできるものでも,うえの範囲にふくまれるものは,この項昌にふくめる。〈接辞的〉と o
した理由は,そこにある。
字音語で問題となるのは,この規鰯にしたがえば,「無能」・「全国」・帝人」・「汽車」
ゆ くフ くコ くユ
などの「無」・「全」・「入」・「劇が,〈結合〉用法となるのに,「無一能力」・「全一一一世界j O O