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学位論文題名Critical role of Epstein-Barr Virus (EBV)-encoded RNA (EBER) for efficient EBV-induced B-lymphocyte growth transformation

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Academic year: 2021

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博 士 ( 医 学 ) 矢 島 美 彩 子

     学位論文題名

Critical role of Epstein‑Barr Virus (EBV)‑encoded     RNA (EBER) for efficient EBV‑induced     B‑lymphocyte growth transformation

    (EB ウイルスがコードする小 RNA 分子、

EBER のB リンパ球トランスフオーメーション活性に関する検討)

学 位論文内容の要旨

  Epstein‑Barrウ イル ス(EBウイ ルス )は 、ヘ ルペスウイルスの 一種で、成人の95% 以上に無症候性に感染している普遍的な ウイルスである。―方で、バ―キットリンパ腫 およ び上 咽頭 がん 、T/NK細胞リンパ腫、ホジキン病、胃がんなど 、様々な疾患への関 与も明らかにされている。主な感染の標的はヒ卜Bリンパ球で、潜伏感染の形態をとる。

また 試験 管内 にお いてBリン パ球 にEBウイ ルス を感染させると、 感染リンパ球は不死 化してlymphoblastoid cell line(LCL)と呼ばれる無限増殖する細胞株となる。EBウイ ルス によ るBリ ンパ 球の 不死 化に は、 ウイ ルス がコードする膜タ ンパク質LMP1および 核抗原EBNA2が重要な役割を果たしていることが知られているが、EBERはり′ンパ球不 死化 には 必須 では ない と 報告 され てい る。 しか しながら一方で、LMP1やEBNA2を発現 して いな いEBウイ ルス 感 染バ ーキ ット リン パ腫 細胞 にお いて 、EBERが 細胞 増殖能の 増強やアポト―シス抵抗性の賦与、細胞 増殖因子の発現を誘導するなど、様々な作用を 持つことが明らかになってきた。

  EBERは 宿主 のRNAポリ メラ ―ゼmによ って 転写 され る、3′末 端に ポリA配 列のない 小RNAであ り、EBウ イル ス感 染細 胞に おい て普 遍的 か つ多 数コ ピ― (1細胞 あたり最 大107コ ピ − ) 存 在 す る 。EBERに はEBERiお よ びEBER2の2種 類 が 存 在 し 、 複 数 の ステ ムル ープ 構造 を含 む高度な二次構造を形成すると予想されて いる。多くのEBウイ ル ス 株 間 でEBERの 塩基 配列 は良 く保 存さ れ てお り、EBER1で は100%同 ー、EBER2に おいて2塩基 置換が認められるに過ぎない。

  本 研究 では 、EBウイ ル ス感 染バ ―キ ッ卜 リン パ腫 細胞 でみ られ るEBERの 作用が、

EBウ イル スのBリン パ球 トラ ンス フオ ーメ ーシ ョン効率に寄与し うるのではないかと 考え 、EBERの 役割 を再 検 討す るこ とに した 。本 研究では、Akata細胞を用いた組換え ウ イ ル ス 産 生 系 を 用 い てEBERノ ッ ク ア ウ トEBウイ ルス およ びEBER再 導 入EBウイ ル スを作製し、そのBリンパ球トランスフオ―メーション効率の検討を 定量的に行った。

  EBERノ ック アウ トEBウ イル ス[EBER(‑)EBV]の 作製は、Akata細 胞における相同組換 え法 およ びCre/loxPシ ステムによるマーカー遺伝子の除去により 行った。また、組換 えEBウイ ルス を大 量に 調製するために、抗イムノグロプリン抗体 処理により効率よく

‑ 583

(2)

ウイルス産生可能なAkata細胞を組換えウイルス産生細胞として用いた。EBER(‑)EBV 感染Akata細胞のウイルス産生量を調べた結果、EBERが野生型であるNeoREBV感染細 胞と同程度であることがわかった。また、等量のウイルスをEBウイルス陰性Akata細 胞に感染させ、その感染効率を比較した結果、組換えEBVの感染効率に差は見られな かった。このことから、EBERノックアウトはウイルス産生と感染効率に影響しないこ とが明らかとなった。

  組換えEBウイルスのBリンパ球トランスフオーメ―ション効率は、臍帯血リンパ球 に等量のウイルスを感染させ、6週間培養後の50%不死化濃度を比較することにより検 討した。その結果、EBER(‑)EBVのトランスフオ―メ―ション効率が、EBERが野生型で あるNeoREBVの約1/100まで低下したことが明らかとなった。

  このトランスフオーメーション効率の低下が、EBERノックアウトによるものである 辜とを確かめるために、EBER遺伝子をEBER(‑)EBVゲノム上に導入した、EBER再導入 EBウイルス[EBER(+)EBV]を作製した。EBER(+)EBVの作製は、EBERノックアウトと同 様の方法で行った。

  EBER(‑)EBV、EBER(+)EBVおよびEBERが 野生型で あるNeoREBVのBリ ンパ球ト ラ ンスフオーメーション効率を比較した。その結果、EBER欠損によりNeoREBVの約1/100 ま で低下し たEBER(‑)EBVのトランスフオ―メーション効率が、EBER再導入により NeoREBVと同程度まで回復したことから、EBER(‑)EBVでみられたBリンパ球トランス フオーメ―ション効率の低下はEBER除去によるものであることが明らかとなった。

  また、LCLにおけるEBV遺伝子の発現パターンをイムノブロツ卜により調べたところ、

EBウ イルスに よるBリン パ球の不 死化に必 須である 、膜タンパク質LMP1や核抗原 EBNAの 発現量に 有意な差はみられなかった。したがって、EBERがLMP1やEBNAを介 した経路でトランスフオーメーション効率に寄与する可能性は否定できると考えられ る。

  次 に、 そ れ ぞれ の 組換 えEBVで樹 立 したLCLの 増殖 速 度 を比較し たところ 、 EBER(‑)EBV感染細胞の増殖速度が、EBERが野生型であるNeoREBV感染細胞と比較し て著しく低下していることがわかった。一方で、EBER(+)EBV感染細胞の増殖速度は NeoREBV感染細胞と同程度に回復していた。さらに、組換えEBVで樹立したLCLを低 密度で培養した時の細胞増殖を比較した結果、NeoREBVまたはEBER(+)EBVで樹立し たLCLが低密度培養時においても増殖できたのに対し、EBER(‑)EBVで樹立したLCLは 増殖できなかった。以上2つの実験結果から、組換えEBウイルスで樹立したLCLにお いて、EBERが発現していることによりその増殖能が増強されることが明らかとなった。

  組換えEBウイルスで樹立したLCLにおいて、これまで報告されたようなEBERによ るアポトーシス抵抗性の賦与および増殖因子の発現誘導などに関して検討を行ったが、

調べたものに関してはEBERの関与は認められなかった。

  本研究により、EBウイルスによるBリンパ球トランスフオ―メ―ションにおいて、

EBERが重要な貢献をしていることが初めて明らかとなった。近年、マイクロRNAなど の、タンパク質をコードしていない小RNAの機能分子としての重要性が広く認識され つっある。したがって、EBウイルスがEBERのような非翻訳RNAを感染細胞内で多量 に発現することにより、何らかのメカニズムで感染細胞が増殖優位性を獲得するよう機 能 している と考えら れる。今 後は、そ の分子メ カニズムの 解明が期 待される 。

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(3)

学位論 文審査 の要旨

     学位論文題名

Critical role of Epstein‑Barr Virus (EBV)‑encoded     RNA (EBER) for efficient EBV‑induced     B‑lymphocyte growth transformation

    (EBウ イ ル ス が コ ー ド す る 小RNA分 子 、

EBERのBリ ン ノ ヾ 球 トラ ン ス フオ ー メ ーシ ョ ン活 性 に 関す る 検討 )

  EBウイルスがコードする小RNA、EBERは、EBウイルス感染細胞において普遍的か つ多数コピ―存在している。EBERは、EBウイルスによるBリンパ球トランスフオーメ ーションにおいて必須ではないとの報告があるが、―方ではEBウイルス感染パ―キッ トリンパ腫細胞などにおいて細胞増殖能の亢進やアポト―シス抵抗性の賦与、増殖因子 の発現誘導など様々な作用を持つことも報告されている。このような背景のもとで、申 請者は、本研究の目的がEBウイルスによるBリンパ球トランスフオーメ―ションにお けるEBERの役割を再検討することであることを説明した。ついで、EBERノックアウ 卜ウイルス作製に用いたAkata細胞を使った組換えウイルス産生系について簡潔に説 明した後、EBERノツクアウトウイルスの作製法およびその表現型の解析へと話を進め た。実験結果として、EBER除去がウイルスの感染効率に影響しなかったことを示した 後、野生型ウイルスと比較してEBERノックアウトウイルスのBリンパ球トランスフオ

―メ―ション効率が低下したというデータを示した。続いて、EBER再導入ウイルスの 作製とその表現型の解析に関するデータを示し、EBER再導入によりEBER/.ックアウ トウイルスのBリンパ球卜ランスフオーメ.―ション効率が回復したこと、さらにEBER ノックアウトウイルス感染細胞においてみられた増殖速度の低下がEBER再導入により 回復したことを説明した。以上より、申請者は、EBERがEBウイルスによるBリンパ 球卜ランスフオーメ―ションに寄与していると結論した。

  質疑応答として、まず、有川教授より、@EBER再導入後にトランスフオ―メ―ショ ン効率が100%回復しなかった原因、@EBER再導入ウイルス感染細胞におけるEBER の発現量の野生型ウイルス感染細胞との比較、◎EBERのトランスフオ―メーションヘ

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司 郎藏       二 賢 谷 川田 瀬有 高 授授 授 教教 教 査査 査 主副 副

(4)

の関与にはEBERが非常に多量に発現していることが必要なのか、@他のウイルスや宿 主細胞がコ―ドする非翻訳RNAにEBERと相同性のあるものは知られているか、とい う質問があった。申請者は、O〜◎に対して、EBER再導入ウイルス感染細胞では野生 型ウイルス感染細胞と比較してEBERの発現量が低かったことが、トランスフオーメー ション効率が完全に回復しなかった原因と考えられること、また、感染細胞における EBERの発現量がトランスフオーメーション効率に影響を与えた可能性があるとの見解 を示した。@についてはアデノウイルスVA RNAと宿主細胞のU6RNAを挙げたが、―

部正確さを欠く点があった。

  続いて、瀬谷教授よりヾくDBリンパ球のEBウイルスレセプタ―がCR2であるかとい う確認、@EBウイルスの初感染のメカニズム、◎EBウイルスが上咽頭領域の粘膜に進 入するプロセス、@EBウイルスが上皮細胞に感染するエピデンスがあるのか、◎上皮

.細胞のEBウイルスレセプター、◎RNAウイルスと比較してDNAウイルスであるEBウ イルスは変異しやすいのか、◎EBERがマイクロRNAとして機能する可能性も含めて、

EBERがEBウイルスによるBリンパ球トランスフオ―メ―ションにおいてどのような メカニズムで宿主側の遺伝子発現を制御しうるのか、という質問があった。ぐD〜◎に対 して、一部の質問には適切に答えられなかったが、申請者は、Bリンパ球のEBウイル スレセプターはCR2であるが上皮細胞ではCR2レセプターを介さないメカニズムが想 定されていること、ヘルペスウイルスの中では変異の程度が低いことなどを説明した。

◎について、マイクロRNAとして機能する可能性に関しては未検討であり、メカニズ ムは現時点では不明であるとのことだった。

  最後に、高田教授より、くDEBER再導入ウイルス感染細胞でEBERの発現量が低下し た原因、◎トランスフオームリンパ球において増殖因子の発現の比較は行ったか、とい う質問があった。申請者は、スライドを示しながらEBERの発現に重要であると報告さ れている制御領域について説明し、今回行った改変がEBERの発現に影響を与えた可能 性について言及した。また、本研究のEBERノックアウトウイルスを用いた解析では、

増 殖 因 子 の 発 現 に EBERの 関 与 は 認 め ら れ な か っ た と の こ と だ っ た 。   本学位論文は、タンパク質に翻訳されない小RNA分子EBERが、EBウイルスによる Bリンパ球トランスフオーメーションに寄与することを初めて見出したものである。

EBERがどのような分子メ.カニズムでBリンパ球卜ランスフオ―メーション効率に寄与 しているかという点については今後の課題として残されているものの、全体としては優 れた実験系を用いた意義深い研究であると高く評価できる。今後、EBERの作用機序の 分子メカニズムの解明を通じて、ウイルスと細胞の相互作用の新たな局面が明らかにさ れるものと期待される。

  審査員―同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位など も併せ申請者が博士(医学)の学位を受けるのに充分な資格を有するものと判定した。

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参照

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