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博 士 ( 医 学 ) 後 藤 数 智

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 医 学 ) 後 藤 数 智

学 位 論 文 題 名

肥 大 型 心 筋 症 患 者 の 左 室 局 所 に お け る 拡張 機 能 :

左 室 全 体 に お け る 拡 張 機 能 と の 関 係 お よ び そ の 臨 床 的 意 義

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

【 背景 ]

  肥大 型心 筋症 (HCM)は ,左 室 心筋 が不 均一 に肥 厚し ,左 室拡 張障 害を 主体とす る心機能 異 常を きた す.HCMに おい て, 心筋 局所 の収 縮機 能が左室内の部位によって異なる ことが知 ら れて いる .し かし ,心筋 局所の拡張機能については十分には検討されていない. 心筋局所 の 収縮 ・拡 張機 能は ,超音 波クリスタルや金属製マーカーを直接心筋内に植え込む 方法は,

極 めて 侵襲 的で あり 臨床 例の 評 価に は適 さな い.また ,磁気共鳴画像法QVtRDに心 筋夕ギン グ 法を 応用 する こと により ,心筋局所機能を評価することは可能であるが,時間分 解能が十 分 では ない こと に加 え,心 周期後半でのタグ格子の減衰や心電図同期多心拍合成法 に伴う時 相 的ず れに より ,拡 張期と くにその後半の詳細な分析は困難である.最近,超音波 組織ドプ ラ 法で 得ら れる 心筋 各所の 速度情報に基づき,非侵襲的かつ良好な時間分解能で, 心筋各所 の 伸 縮 速 度 を 算 出 し , 画 像 化 で き る ス ト レ イ ン レ ー ト イ メ ー ジ ン グ が 開 発 さ れ た .

【 目的 ]

  本 研 究 の 目 的 は, スト レイ ンレ ート イヌ ージ ング を用 いて ,HCM患者 にお ける 左室 全体 機 能や 局所 の壁 厚と 心筋 局所 の 拡張 機能 との 関係 を明 らか にす ると もに ,この方 法による HCM患 者 の 心 筋 局 所 機 能 評 価 の 臨 床 的 意 義 を 検 討 す る こ と で あ る .

【 方法 ]

  対 象 は ,HCM患者25名 (男 性18名, 平均 年 齢58土13歳) ,お よぴ これ と年 齢を 合わ せた 正 常対 照20名( 男性11例 ,平 均 年齢56土11歳 )で ある .

  左室 全体 の拡 張機 能の 指標 と して ,カ ラーMモ ードドプラ法により,拡張早期の 左室流入 血 流 伝 播 速 度(FPV)を計 測し た. 断層 心エ コ ー法 では ,心 尖部 二腔 断面 像と 四腔 断面 像を 用 いた2断面 ディ クス 加算 法に より ,左 室駆 出分 画を計測した.また,左室を,二 腔像の前 壁 と下 壁お よぴ 四腔 像の心 室中隔と側壁に,さらに心尖部,心室中部および心基部 側の計12 区 域 に 区 分 し , これ らの 各区 域で 壁厚(wDを 計測 した .そ の結 果に 基づ き,HCM患 者の300 心 筋 区 域 を ,WTが11mm以 下 と 正 常 範 囲 に あ っ た137の 非 肥 厚(NH)区 域 ,WTが12mm以 上15mm以 下 で あ っ た87の 軽 度 肥 厚 (MH) 区 域 , お よ びWTが16mm以 上 で あ っ た76の 高 度 肥 厚 (SH)区 域 に 分 類 し た . 正 常 対 照 例 の240区 域 のWTは す べ て11mm以 下 で あ り , 対 照(C)区域 とし た.

    ‑ 568―

(2)

  

さらに,心尖部二腔断面像および四腔断面像のストレインレートイメージから,左室12 区域の各々にっき,収縮期ピークストレインレート(SSR),拡張早期ピークストレインレー ト(ESR),拡張後期ピークストレインレート(ASR),心電図のQRS開始からSSRまでの時間

(TSSR)

およぴESRまでの時間(TESR)を計測した.これらの心筋局所機能指標と左室全体 機能との対応を検討するために,

SSR

,ESRおよびASRにっいては12区域の数値の平均値を,

またTSSRと'IESRについては12区域の数値の変動係数を求めた.また,上述の壁厚に基づく 区 域 分 類 に 基 づ き , 心 筋 局 所 機 能 指 標 と 壁 厚 と の 関 係 を 検 討 し た .

[結果】

  HCM

群では,正常対照群に比し,SSR,ESR,ASRおよびESR/ASRの各々の12区域平均値が 有意に低下し,

TSSR

とLESRの各々の変動係数は有意に大であった.ESRとESR/ASRの12区域 平均値は,FPVとの間に有意の正相関(r=0.80,r=0.63)を示し,TESRの12区域の変動係数 は,FPVとの間に有意の負相関

(r=‑0.63

)を示した.ASRは,FPVとの間に有意の相関を認 めなかった.なお,SSRの12区域平均値のおよぴTSSRの12区域の変動係数は,いずれも左 室 全 体 収 縮 機 能 の 指 標 で あ る 左 室駆 出 分 画 と の 間 に 有 意の 相関 を認 めな かっ た.

  ESR

は ,

HCM

NH

区 域 ,MH区域 およ びSH区域 のす べて にお いて ,

C

区 域よ り有 意に 低 下し ていた .ま たESRは ,MH区域 ではNH区域 より,またSH区域ではMH区域より有意 に 低下 してい た.

ASR

は,

NH

区 域と

C

区域 との 間に有意差を認めず,MH区域ではC区域 と

NH

区 域より ,ま たSH区域ではMH区域より有意に低下していた.一方,ESR /ASRは,

NH

区 域 ,

MH

区 域 ,

SH

区 域 お よ ぴ

C

区 域 の 間 に 有 意 差 を 認 め な か っ た .

【考案]

  

カラーMモードドプラ法を用いて非侵襲的に計測されるFPVは,HCMを含む多様社心疾 患の患者の左室拡張機能を正確に評価できる指標であることがわかっている,本研究におい て,拡張早期ピークストレインレート(ESR)の12区域平均値が

FPV

と良好に相関し,かつ,

その相関は他の局所拡張機能の指標(ASR,ESR/ASR,TESRの変動係数)よりも良好であった.

また,ESRは局所拡張機能指標の中で唯一,明瞭な壁肥厚がないHCMのNH区域で,正常対 照のC区域より有意に低下していた.以上の結果は,HCMにおける左室拡張障害の機序と して,従来から指摘されてきた拡張期のasynchronyよりも局所心筋の弛緩障害が重要である こと,また,ESRが鋭敏な局所拡張機能指標として臨床的に有用であることを示唆すると考 えられた.

  

通常,左室全体としては,拡張早期の弛緩障害は拡張後期の心房収縮の増強によって代償 されるが,HCMの心筋局所におけるその関係は,従来明らかではなかった.本研究において,

ESR

は,

C

区域 ,

NH

区域 ,

MH

区域 ,

SH

区域 の順 に低下したが,ASRは代償的に増大を示 さず,MH区域やSH区域ではむしろ低下し,ESR/ASRは4区域間に有意差を認めなかった.

すなわち,局所心筋レベルでは,拡張早期の弛緩障害に対する拡張後期の代償は明瞭ではな く,壁肥厚や弛緩障害の増強にっれて,拡張後期の心筋伸展も低下することが考えられた.

【結論】

  HCM

患者において,左室心筋の拡張早期ピークストレインレートは,壁肥厚が明瞭では ない部位でも障害され,また

HCM

患者の左室全体拡張機能と最も密接な関係を示した.ス

569 ‑

(3)

トレインレートイメージングを用いて非侵襲的に計測されるこの指標は,HCM患者の早期診 断 や 経 過 観 察 に お け る 心 筋 機 能 障 害 の 早 期 検 出 に 有 用 性 が 期 待 さ れ る .

‑ 570

(4)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

肥大型心筋症患者の左室局所における拡張機能:

左室全体における拡張機能との関係およびその臨床的意義

  肥大 型 心筋 症(HCM)は, 左室 心筋 の 不均一な肥厚と左室拡張障害を特徴とする原発性心 筋疾 患であり、その心筋病変には部位による差が大きいこと が知られている.HCMの左室拡 張 障害 の 機序 とし て, 心筋 局所 の拡 張障 害の 重合 と弛 緩時 相の 部位による差,すなわち asynchronyの2っが考えられる.しかし,これらの機序が左室全体の拡張機能にどう関与する かの比較検討は,十分なされていない.最近開発されたストレインレートイメージングは,心 筋 各所 の 伸縮の速度,すなわちストレ インレート(SR)の高時間分解能での非侵襲的計測を 可能 とした.本研究では,この方法を用いてHCM患者における左室全体の拡張機能と心筋局 所の 拡張機能との関係を明らかにするともに,ストレインレ ートイメージングによるHCM患 者の 心筋局所機能評価の臨床的意義を検討した.

  対象 は , HCM患者25例と正常対照20例であった.左室全体の拡張機能の指標として,カ ラ ーMモ ード ドプラ法により拡張早期の左室流入血流伝播速度(FPV)を計測した.断層心エ コー 法では,2断面ディクス加算法により左室駆出分画を計測した.また,心尖部二腔像の前 壁と 下壁およぴ四腔像の心室中隔と側壁の各々を心尖部,心室中部,基部側に区分した合計 12区域 で 壁厚を計測した.これに基づ き,HCM患者の300区域を,非肥厚区域,軽度肥厚区 域, およぴ高度肥厚区域に分類し,正常対照の240区域を対照区域とした.さらに,心尖部二 腔 およ ぴ 四腔SR像から,左室12区域の 各々で,収縮期ピークSR (SSR),拡張早期ピークSR (ESR), 拡張 後期 ピー クSR (ASR), 心 電図 のQRS開 始か らSSRまで の時間(TSSR)およぴESR まで の時間(TESR)を計測した・

  HCM群 では ,正 常対 照群 に比 し,SSR,ESR,ASRおよぴESR/ASRの各々の12区域平均値が 有意 に低下し,TSSRと'IESRの各 々の12区域変動係数は有意に大であった.ESRとESR/ASRの 12区 域平均値は,FPVと有意の正 相関(r=0.80,r=0.63)を示し,IESRの12区域変動係数は,

FPVと有意の負相関(r=‑0.63)を 示した.ASRは,FPVと有意の相関を認めなかった.また,

局 所的 に みた 拡張 期SR指標 と壁 厚と の関 係に っい て,ESRは ,HCMの非肥厚区域を含むす     ‑ 571−

之 明

裕 秀

井 口

筒 川

授 授

教 教

査 査

主 副

(5)

べての心筋区域で対照区域より低下し,また壁肥厚の程度が強いほど低下していた.ASRは,

非肥厚区域では対照区域と差がなかったが,壁肥厚が強い区域ほど低下した.ESIJASRは,対 照区域とHCM各区域群間に有意差を認めなかった・

  以 上 の 結 果 か ら ,HCMに おけ る 左 室拡 張 障 害 は, 心 筋 局所 の 弛 緩障 害 と 弛緩 時 相 の asynchronyの双方によってきたされるが,前者により強く規定されると考えられた.また,ESR は,HCM患者の心 筋に生 じた拡張 障害を 鋭敏かっ正確に検出できる指標と考えられ,SRイメ ージ ングに より非侵 襲的に 計測され る心筋 局所の拡 張早期SRは,HCM患者の 早期診断 や経 過 観 察 に お け る 心 筋 機 能 障 害 の 早 期 検 出 に 有 用 性 が 期 待 さ れ る と 考 え ら れ た ・   口頭発表 に際し,副査の玉木教授から,@従来の血流ドプラ法による左室拡張機能指標と SR計測によ る心筋 局所の拡 張機能と の関係,(HCMの病型による心筋局所拡張機能の差異の 有無,◎心肥大が明瞭でない部位の局所拡張機能,@高血圧性左室肥大例の心筋局所拡張機能 にっいて質問がなされた.次いで,副査の川口教授から,@この研究が主眼とするテーマの確 認,@左室全体機能ではなく心筋局所機能指標を使うことの臨床的意義,◎局所機能の計測部 位による 差,@HCMに おける左 室駆出 分画と心 筋局所収 縮機能 との乖離の理由などについて 質問がなされた.最後に,主査の簡井教授から.@心筋局所拡張機能評価の今後の実地臨床へ の応用の方向,@拡張障害の原因として肥大の成因と左室心筋重量の何れがより強く影響する かにっいて,質問がなされた.いずれの質問に対しても,申請者は研究結果と文献的知識に基 づき,概ね適切な回答を行った・

  この論文は,肥大型心筋症患者における左室全体拡張機能とJc丶筋局所機能との関係を明らか にし,ストレインレートイメージングによる心筋局所の拡張機能評価の有効性を示した研究と して,審査員一同は,これらの成果を高く評価し,大学院課程における研鑚や取得単位なども 併せ , 申 請者 が 博 士( 医 学 )の 学位を 受けるの に充分な 資格を 有するも のと判 定した.

572 ‑

参照

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