博 士 ( 医 学 ) 中 島 淳 太 学 位 論 文 題 名
Anti − tumor activity of ESXl on cancer cells ●
harboring oncogenlC あ 卜 粥 CZSmutation
(腫瘍原性K‑ras 変異を有する癌細胞に対するESX1 の抗腫瘍効果)
学位論文内容の要旨
【背景と日的】
ESXl (exuaembryonic,spermatogenesis,homeoboxl homolog)はヒトX染色体Xq22.1上のESX1遺伝子に よルコードされる全長65 kDaのpaiI司一likeホメオドメイン蛋白である。細胞内においてESXlはプロ リンに富む反復領域をもつ20kDaのC端断片とホメオドメ インを含む45kI)aのN端断片に分解され る。 その 後、N端 断片 は核 内 に移 行し尽鰡遺伝子の 第一イントロン内のP3配列(1AArGTTATTA; REK;RepressorEernentof彫.′甜)に特異的に結合し転写リプレッサーとして機能する。K・RasはRasフ ァミリー蛋白のーっで、機能獲得型K‐Rasは細胞癌化に必須の異常増殖シグナルを生成する。この遺 伝子異常は細胞癌化だけではなく癌形質の維持にも必須であると推察されK‐ぬsは癌治療における分 子標的療法の有カな標的のー っと考えられてきたこれまでの研究で培養腫瘍細胞に異所性発現させ たESXlは尽鰡リプレッサー機 能を介して腫瘍尿陸K..Ras蛋白発現を抑制し、器珊遺伝子変異をも つ腫瘍細胞の増殖を抑制でき ることが報告されている。 本研究ではESX1のの抗腫瘍効果を肌yめに おいて検討することを目的とした。
【材料と方法】
プラスミド: pcDNA3nいESXlはび:DNA3/ESXRl・△C上のE鍬}U‐ムCd)NA終端直後にユニバーサ′レ タ ーミネータを挿入し作成し た。ET16b・TAT/N―ESX1は大 腸菌発現ベクターpET‐16bにmV−1L虹 蛋 白の膜移行罐瀏紐TD:pro晒n恤峪membmnedomain)とその下流にM巨5瓰cDへMを挿入し作成した。
安定発現株:H(T矧ヒト大腸癌細胞株H〔汀116細胞にテトラサイクリン依存的に任意の遺伝子を発現 さ せ る 転 写 因 子m、A( 刪erse倣mcydine缸 脚 ぬvalor) を 安 定 発 現 さ せ た 細 胞 株 ) に pC卿 匝HヨSD贓SX1(M驪 瓰c蹴4をpCrE. ‐BSDベ クタ ー に挿 入) を導 入 し選 択培 地で 培養 し N‐E§Xl安定 発現 株 を樹 立し た。ウェスタン ブロット法:細胞溶解液の 上精をサンプルとして SDS−PA.(週にて分離後、免疫ブロットを行っ也コロニー形成抑制法:蛋白発現プラスミドとピュー ロマイシン耐性遺伝子ベクターを細胞内に導入し、ピューロマイシンを含む培地で培養した。ルシフ ェ ラーゼアッセイ:蛋白発現 ベクターとともにレポーターベクター、pRImくをりン酸カルシウム法 で ヒト骨肉腫細胞株U2て峪内 に導入し24時間後デュアルルシフェラーゼァッセイにて解忻した。リ jンビ ナン ト 蛋白 精製 :BL21q)E3)大 腸 齢にTATnq・ESX1発現ベクター を導入、04mMP11Gにて 蛋白発現を誘導しNi−NI、Aビーズで蛋白を精製した。Xロlogra轟態say:6週齢のBALBdf6`Jdnu/nu(ヌ ー ドマウス)の背側にHCT‐tetまたはN‐ESX1安定発現株1xlず個を皮下接種し腫瘍径を観察した。
0.17州TA:r/N‐ESXlまたは △TAlm−BX1を含む培地で48時間培養したHCT116細胞をヌードマウ
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ス の両 背 側 に1カ所 に っ き1X l06個皮 ―F接 種 し月 黜 着 の 有 無を 観 察 し た。 免疫染 色法 :トラ ンスフ ェ ク シ ョ ン 後24時 間 に 細 胞 を 固 定 、 免 疫 染 色 を 行 い 観 察 は 共 焦 ー 制 頭 微 鏡 で 行 っ た 。
【結果 】
こ れ ま で の 研究 で 使 用 し てい たESXRl‑ACの3 末端 にユニ バーサ ルター ミネ ータを 挿入しESXRl‑△Cの C端 末 尾 のpcDNA3由 来 の35ア ミ ノ 酸 を4ア ミ ノ 酸 に 減 らし たN―ESXlを 作三成 した。HCT116に一 過性導 入 し たN‐ESX1は 細胞 核内 に発現 し、ウ ェスタ ンブロ ット でKーRas蛋白の 発現抑 制が確 認され た。 また pGL3珊Dm0缸 ベ クタ ー に3XREKi己 歹IJを 挿 入し た レ ポ ー タ ーの ル シフ ェラー ゼ活陸 の抑制 を認め 、コ ロ ニ ー 形 成 抑制 試 験 で 器 恥変 異 を 持 つ 大 腸癌 細 胞 株 駲 ゾ480、HCT116の 増殖抑 制を認 めた。 以上 より N・ESX1はESXR1― △Cと同 等の 生物学 的活陸 を有す ると結 諭づ けられ た。次 にテト ラサ イクリ ン誘導 陸 IこN―ESX1を 発 現す るHCTl16細 胞 株を 樹 立し よう と試み たが、 樹立し た細胞 株は いずれ も薬剤 非依存 的 にNIESX1を 発 現し た た め 、 これ をN‐ESX1構 成 的発 現 株 と し 研究 を進め た。ヌ ード マウス の背側 の 左 側にHCT―tet( 親株) 、右側 にN‐ESX1安定発現株を接種し腫瘍の増殖を比較したところ、HCT―tetは安 定 発 現 株 と 比べ て 明 らかに 腫瘍 増大率 が大き かった 。安定 発現 株はN―ESX1の 発現 量も弱 くK・RaSの発 現 抑 制 も 軽 度で あ っ た が 加vn´ 〇 の 結果 よ りN‐ESXによるK馳s蛋 白の発 現抑制 は軽度 でも十 分に 腫瘍 原 陸 を 抑 え ると 考 え ら れ た。 次 にNESX1の 癌 治 療応 用 を 考 え 、大 腸 菌 発 現 系を 用 い てmV・1W`T蛋 白 の 膜 移 行 領 曦(PID) の下 流 にN―ESXlを 融合 さ せ たTA:r爪 ―ESX1蛋 白を作 成、精 製した 。TAFPTDは そ の 下 流 に 任意 の 蛋 白 を 融合 さ せ る こ と により 蛋白を 細胞内 に直接 移入 するこ とが知 られて いる 。ま た 、 コ ン ト ロ ー ル と し てTA1甲TD領 域 を 持 た な い △W汀 /MSX1を 作 成 し た 。 免 疫 染 色 法 に て
△TAT/MSX1はH( 汀116細 胞 内 に は 検出 さ れな かった が、n灯膩 ―ESX1は 細胞内 に入る こと が確認 され た 。MTTア ッ セ イ に お いて もTA1、 ′N―ESXlは 増殖抑 制を示 したこ とよ りTAT膩―ESX1は沈vむmにおい てH( 汀116細 胞 内 に 入り 増 殖 抑 制 を 来す こ と が 示 され た 。 さ ら にTAT烈 ・ESX1で 鵠時 間 培 養 さ れた H〔汀116は △W`T/N―ESX1で培 養さ れた細 胞、お よびコ ントロ ール と比較 してヌードマウスヘの生着率 が 有意に 抑制 された 。
【 考 察 】
こ れ まで ア ン チ セ ンス オ リ ゴ ヌ クレ オ チ ド や フ ラネ シ ル ト ラ ンスフ ェラー ゼ阻害 剤な どのRasを標 的 と し た抗 腫 瘍 剤 を 用い た 治 療 戦 略が 精 力 的 に 研 究さ れ て き た が、K‑ras遺伝 子の 転写調 節を分 子標的 療 法 の標 的 と し た 研究 は 知 ら れ てい な い 。今回 の研究 ではESX1のN端断片 をK‑rasリプ レッサ ーとし て と ら えK‑ras変 異 をも つ腫 瘍に対 する沈vivoにお ける抗 腫瘍効 果を 検証し た。分 子標的 療法を 考え る上 で 、N―ESX1を 細 胞内 に効 率よく 導入す る手法 が望ま れる が、ウ イルス ベクタ ーを 用いた 方法な どでは 遅 発 陸に 自 血 病 を 誘発 す る な ど 重篤 な 副 作 用 が 問題 と な る 。HIV‑1のTAT蛋 白の 膜 移 行制菰TAT‑PTD) にN―ESX1を融 合 さ せ たTAT/N・ESX1はin vivoの 実験に おい てK‑ras変異を もつ 癌細胞 の増殖 を抑制 す る こ とを 見 出 し た。 本研究 から 、K‑rasリプレ ッサー とし てのESX1を用い た新規 分子標 的癌治 療の 開発 へ の 道が 開 か れ た と考 え る 。
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学 位 論 文 審 査 の 要 旨
学位論文題名
Anti ― tumor activity of ESXl on cancer cells ●
harboring oncogenlCi 卜 ガ 鯲 mutation
(腫瘍原性‑ras 変異を有する癌細胞に対するESX1 の抗腫瘍効果)
論 文 の 内 容 は ヒ ト X 染 色 体 Xq22.1 上 の ESX1 遺 伝 子 に よ ル コ ー ド さ れ る ESX1 (extraembryonic ,spermatogenesis ,homeoboxl homolog) のN 端断片がK‑ras 遺伝子の第一イン トロン内のP3 配列(TAATGTTATTA; REK; Repressor Element of K‑ras )に特異的に結合し、
転写 リプレッサーとして機能することを介して腫瘍原性K‑ras 変異をもつ腫瘍細胞の増殖 を面 vitro において抑制すること を背景に、この抗腫瘍効果を加vivo において検討するこ と を目 的 とし たも ので あっ た。 これ まで 研究 に用 いら れて 来た ESX1 . △C を改変した N‑ESXl がESX1 ‐△C とほぽ同等の 抗腫瘍効果を血vitro におい て示すことを確認した後、
以後 の実験に用いていた。N‑ESXl 構成的安定発現細胞株を用 いた実験において、N‑ESXl の ヌ ー ド マ ウ ス 生 体 内 に お け る 抗 腫 瘍 効 果 を 示 し 、 HIV‑1 の TAT 蛋 白 の 膜 透 過領 域 TAT‑PTD と N‑ESXl の融 合蛋 白を 用い て 細胞 内に N‑ESXl を 導入 し、 血ガ ぬり における抗 腫瘍効果および、ヌードマウス生体内における抗腫瘍効果を明らかにした。この論文におけ る 研究 は 、K‑ras 遺伝 子を 分子 標的 と して N‑ESXl のK‑ras リプレッサー機能を利用し、
K‑ras の転写抑制を介した腫瘍原 生K‑ras 変異を有する癌細胞 に対する抗腫瘍効果を利用 し た 新 規 治 療 戦 略 の 開 発 の 可 能 性 を 初 め て 示 唆 す る も の で あ っ た 。 申 請者はこれらの内容をスライドにまとめ約15 分の発表を行った。発表においては論文 には掲載されていなかったデータも含め提示し、論文の内容を補足していた。発表の後、副 査の 浅香教授より、このN . ESX1 が臨床応用された場合、膵癌を含む固形癌における複数 の遺 伝子異常に対してKt 設s リプ レッサー機能だけで果たして単剤で治療効果が得られる のか 、またESX1 のりプレッサー機能は他の遺伝子にも影響し ており、この抗腫瘍効果に ついては他の遺伝子の影響もあるのではないか、との質問があった。これに対し申請者は、
これ までの研究および本研究から腫瘍原性ぱ7 賀s 変異に生存を強く依存している腫瘍に対 して ESX1 は特異的に抗腫瘍効果を発揮すると推察され、他の 遺伝子の転写を抑制するこ とや 腫瘍自体が他の遺伝子異常を有する場合においてもこれらを考慮せず単剤で治療効果 が得られることが予想されると回答した。っづいて副査、小池教授より全身投与する場合、
癌種に特異的な薬剤投与の治療戦略(Drugdeliverysystem )はあるのかとの問いがあり、申 請者 は血管造影などを利用した動脈注射などによる至近距離からの投与を検討していると 回答 した。さらに主査、秋田教授よりEG 珊遺伝子異常や口む・2 白eU 遺伝子増幅などによ っ てRas 上流 から の異 常増殖亢進シグナルが 存在し、ぬ館遺伝子が野生型である場合に
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俊 博
夫
弘 正
隆
田 香
池
秋 浅
小
授 授
授
教 教
教
査 査
査
主 副
副
N‑ESXl は効 果がある のか、 またK‑Ras 蛋白質 発現の抑 制の程度 が軽度にもかかわらず著 明な抗腫瘍効果を示していたのはなぜかと言う質問に対し、申請者は先の柳原らの論文の実 験で、 野生型 K‑ras 遺伝 子をも つ腫瘍に 対して は ESX1 .△C によ るK‑Ras 発現抑制は他の Ras フ ァミリ ーによる 代償作 用により 抗腫瘍効 果を示 さなかっ たことを引用し、野生型 K‑ras 遺伝 子 を 持つ 場 合 、 N‑ESXl よ ってK‑Ras 蛋白質 発現を抑 制して も他のRas ファ ミ リーによって代償され下流にシグナルは伝わる可能性があることや、Ras より上流からの増 殖シグ ナルは 必ずしも Ras‑MAPK 経路を 介するものだけではなく他のシグナル経路を経由 する場 合もあ るため、 Ras よ り上流か らの増殖 シグナ ルに対し ては N‑ESXl は効果がない かあっ ても部 分的なものであることが予想されると回答した。また、K‑Ras 蛋白の発現抑 制が軽 度であ っても、今回の実験に用いた腫瘍細胞は腫瘍原性K‑Ras 蛋白質に生存を強く 依存し ており (K‑Ras addiction) 、極少量そのK‑Ras の発現を阻害するだけで、addiction の 状 態 を 解 除 さ せ 、 腫 瘍 増 殖 を 抑 制 し う る 可 能 性 が あ る と 回 答 し た 。 この論文は、腫瘍原性K‑r ロs 変異をもつ腫瘍に対する新規治療戦略開発への可能性を示 した点で高く評価され、今後の研究の発展が期待される。
審査員一同は、これらの成果を高く評価し、大学院課程における研鑽や取得単位なども併 せ 申請 者 が 博士 ( 医 学) の 学 位 を受 け る のに 充 分 な資 格 を 有する ものと 判定した 。
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