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99mTc ―GSA を用いたラット肝血行遮断モデルにおける 肝血流量の評価

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Academic year: 2021

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学 位 論 文 題 名

博 士 ( 医 学 ) 平 口 悦 郎

99mTc ―GSA を用いたラット肝血行遮断モデルにおける 肝血流量の評価

学位論文内容の要旨

I. 目 的

  近年,肝臓外 科の進歩に伴い,肝切除術が広く行われるようになり,術前の肝予備能の正確な評 価がますます重 要になっている。一方,近年,肝細胞の細胞膜表面に存在するアシアロ糖蛋白受容 体に特異的に結合するガラクトシル人血清アルプミンジェチルトリアミン五酢酸テクネシウム(‐叩c― DTPA−galactosyl―human serum albumin:以下GSA)注射液が開発され,これを 用いたシンチグ ラフィが可能と なった。アシアロ糖蛋白受容体は肝疾患の病態によって減少することが知られてお り,GSAの肝への 集積率および血中からの消 失率を解析することによって,既存の検査法とは異な る観点から肝疾 患の病態や肝機能の評価が可 能になると期待されている。GSAの体内分布,代謝経 路などにっいて は,これまでにも多くのモデ ルによる検討が行われているが,肝血流の変化がGSA の肝集積に及ば す影響にっいての詳細な検討はいまだなされていなぃ。そこで,本研究では肝血行 遮断がGSAの肝集 積に及ばす影響を解析し,GSAによる肝血流評価の有用性を明らかにする目的で,

正常肝ラットお よび四塩化炭素投与によって作成した肝障害ラットの肝血行遮断モデルを用いて,

GSAの血中消失お よび肝集積をあらわすパラ メータを測定し,レーザードップラ一血流計によって 測定された肝組織血流量との相関性にっいて検討を行った。

II. 方 法

1.実験動物

Wistar系雄性 ラットを用い,以下の2群に 分けた。

    1)正常肝 群:体重300g前後の未処置 のラットを用いた。

    2)肝障 害群:体重150g前後のラット を用い,フェノバルビタール水溶液35mg7dE自由飲水下     に ,四 塩化 炭 素と オリ ープ 油の 等 量混 合液 を0.2mE/100g体 重, 週2回,13週 間皮下注射     し,慢性 肝障害ラットを作成した。

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2.肝血行遮断モデルの作成

  エー テ ル 麻 酔下 に 開 腹 し, 以 下 の 操作 に よ っ て上 記 の両群 をさら に各々4亜群に 分けた 。     1) 単 開 腹(simple laparotomy: 以下LAP)亜 群  (正 常肝群n二ニ11, 肝障害 群n二二12)     2)肝動脈結紮(hepatic artery ligation:以下HAL)亜群(正常肝群n二ニ11,肝障害群n二ニ11)     3)門脈結紮(portal vein ligation:以下PVL)亜群  (正常肝群n二二二11,肝障害群n二ニ11)     4) 肝 動 脈 およ び 門 脈 結紮 ( 以 下HAL十PVL)亜 群  ( 正常肝 群n=10,肝 障害群n二二11) 3. GSAの投与,デー夕収集および解析

  GSA 50〃g/100g体 重を左大 腿静脈 より注 射し, ガンマ カメラ を用い て20秒/frame (128X128 matrix)で15分問データを収集した。データの解析には核医学専用コンピュータを用い,心臓およ び肝 臓に関 心領域 を設定 して時間放射能曲線(time activity curve:以下TAC)を作成し,以下の 4っのパラメータを算出した。

    1) 血 中 消 失率 の 指 標 とし て2分 後 に 対 する4分 後 の 心 臓の カ ウ ン ト比(H47H2:以 下HH4)     2) 肝摂取 率の指標 として4分後の 心臓十 肝臓のカウントに対する4分後の肝臓のカウント比     (IJ4/(H4十I亅4):以下LHI丿4)

    3) ´ 瀾 のTACを2指数 関 数 フ ィッ テ ィ ン グ処 理 し て 得ら れ る 第1相 の心 消 失係 数(Kd)     4) 肝 臓 のTACを 立 ち 上 がり 指数関 数フィッ ティン グ処理 して得 られる 肝摂取 係数(Ku) 4.肝組織血流量の測定

  肝組織血流量はレーザードップラー血流計を用い,肝外側左葉にプローブを固定し,肝血流遮断 前, 遮断後2分毎の組織血流量を測定した。結果は肝血流遮断前値に対する遮断後の値の変化率:

肝 組 織 血 流 変 化 率 (hepatictissueb100df10wratio: 以 下HTBFR) と し て 算 出 し た 。     m.結果

1. GSAパラ メー夕

  正 常 肝 群 のHH4LAPHALPVLお よ びHALPVL各 亜 群 で そ れ ぞ れ0.580.640850.97 あり ,LHL40.96O.94,0.72,0.34,Kdは0.53,0.46,0.27,0.13,Kuは0.37,0.32,0.24,0.19であった。

  肝障 害 群 で はHH40.700.830.90O.95であり ,LHL40.910.850.47,033,Kdは0.45,0.32 0.20,O.11,Ku0.230.180.13,0.11であっ た。

2.肝 組織 血流変 化率(HTBFR)

  血 行 遮 断 後 ,HTBFRは 速 や か に 減 少 し , そ の 後 安 定 し た 値 を 示 し た 。 各 亜 群 間 の 比 較 で は 正 常 肝     1

群 で も , 肝 障 害 群 に お い て も そ れ ぞ れLAPHAL PVLお よ びHLAPVLの 順 に 有 意 に 低 値 を 示 した 。

3. HTBFRとGSA´でラ メー タの相 関性

  正 常 肝 群 お よ び 肝 障 害 群 の 両 群 に お い て ,HTBFRHH4IHL4Kdお よ びKuと の 間 に は , い ずれ も有 意な高 い相 関が認 めら れた。

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IV.考 察

  肝 障害群 では肝 血行遮 断後,HTBFRの有意 な減少 に伴い ,LAP亜群 に比べ てHH4はHAL,PVL, HAL+PVL亜 群 の 順 に 有 意 に 増 加 し ,LHL4,Kdお よ びKuはHAL,PVL,HAL+PVL亜 群 の 順 に 有 意に低 値を示 した。 正常肝群においては,LAP亜群とHAL亜群との間には有意差を認めなかった が ,その 他の組 み合わ せの間 では,HH4,LHIA,KdおよびKuの値に肝障害群と同様な有意差が認 め ら れ た 。ま たHTBFRとHH4,LHL4,Kdお よびKuと の間に は正常肝 群,肝 障害群 のいず れにお い てもそれぞれ有意な高い相関が認められた。すなわち,今回検討したGSAパラメータは肝血流量 の 変化と有意に相関することが示された。正常肝群と肝障害群との比較でみると,LAP亜群では,

正 常 肝 群 と肝 障 害 群 との 聞 でHH4,LHL4,KdおよびKuのすべ てに有 意差を 認めてお り,GSAパ ラ メータは慢性肝障害による有効肝細胞数の減少を良く反映することが示唆された。またHAL亜群 で も正常 肝群と 肝障害 群との間で4っのパラメータすべてに有意差が認められたが,PVL亜群およ びHAL十PVL亜 群では 一部に 有意差が 認めら れなか った。 すなわ ちGSAパラ メータ は慢性 肝障害 による有効肝細胞数の減少を反映するが,極端に肝血流の減少した状態では肝障害度の差としては 評 価でき ない場 合もあ ること が示唆 された 。正常肝 群にお いてHAL亜群でHTBFRが20%低下して い るにも かかわ らず,LAP亜群との間でGSAパラメータの値に有意差が認められなかった理由とし て ,GSAの肝集積における濃度依存性の影響が考えられた。すなわち本研究における投与量が比較 的高濃度なため,20%前後の血流変化は肝細胞レセプター飽和に有意に影響しなかったのではない かと推測される。このことは,少量の肝血流変化を評価するためには,受容体活性を考慮にいれた 投与量の調節が必要となる場合もあることを示していると考えられた。

V. 結 語

1.GSAパラメータは正常肝においても慢性肝障害においても血行遮断による肝血流量の変化と有 意に相関することが示された。

2.GSAパラメータは慢性肝障害による有効肝細胞数の減少によっても影響されることが示された。

  しかし,門脈遮断および肝動脈門脈遮断といった極端に肝血流の減少した状態では慢性肝障害と 正常肝との差を評価することが困難な場合もあることが示唆された。

3.GSAパラメータによって少量の肝血流変化を評価するためには,受容体活性を考慮にいれた投 与量の調節が必要となる場合もあることが示唆された。

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学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

99mTc ― GSA を用いたラット肝血行遮断モデルにおける 肝血流量の評価

  近年,肝 細胞の 細胞膜表 面に存 在するア シアロ 糖蛋白受 容体に特異的に結合するガラク 卜シル人 血清ア ルブミン ジェチ ル卜リアミン五酢酸テクネシウム(以下GSA)注射液が開発 され,こ れを用 いたシン チグラ フィが可 能となっ た。ア シアロ糖蛋白受容体は肝疾患の病 態によっ て減少 すること が知ら れており ,GSAの 肝への 集積宰お よぴ血 中からの 消失率 を 解析する ことに よって, 既存の 検査法と は異なる 観点か ら肝機能の評価が可能になると期 待されて いる。 本研究で は肝血 行遮断がGSAの肝 集積に 及ほす影響を解析し,GSAによる肝 血流評価 の有用 性を明ら かにす る目的で ,正常肝 ラット およぴ四塩化炭素投与によって作 成した肝 障害ラ ッ卜の肝 血行遮 断モデル を用いて ,GSAの血中消 失およ び肝集積 をあら わ すパラメ ータを 測定し, レーザ ードップ ラー血流 計によ って測定された肝組織血流量との 相関性について検討を行った。

  実験動物にはWis tar系雄性ラッ卜を用い,体重300g前後の未処置のラッ卜(正常肝群),

およぴ体 重150g前後 のラッ卜 に四塩 化炭素とオリーブ油の等量混合液を0.2ml/100g体重,

週2回 ,13週 間 皮下 注 射 して 作成した 慢性肝障 害ラッ 卜(肝障 害群) の2群 に分けた 。両 群を ェ ー テル 麻 酔 下に 開 腹し ,以下の 操作によ ってさ らに各々4亜 群に分け た。1)単開 腹亜 群 (simple laparotomy:以下LAP),2)肝動脈 結紮亜 群(hepatic artery ligation

:以 下HAL),3) 門 脈 結紮 亜群 (portal vein ligation: 以下PVL),4)肝 動脈およ ぴ門 脈結紮亜群(以下HAL+PVL)

  開腹後た だちにレーザードップラー血流計のプローブを肝表面に固定し,肝血流遮断前,

遮断後2分毎 の組織血 流量を測 定した 。結果は 肝血流 遮断前値 に対す る遮断後 の値の変 化 率:肝組 織血流 変化事(hepatic tissue blood florv ratio:以下HTBFR)として算出した。

また,遮 断と同 時にGSA  50pg/100g体 重を左 大腿静脈 より注射し,ガンマカメラを用いて 20秒/f rame(128X128  matrix)で15分聞データを収集した。データの解析には核医学専用 コンピュ ータを 用い,心 臓およ ぴ肝臓に関心領域を設定して時間放射能曲線(time acti― vity curve: 以 下TAC)を作 成し,以 下の4つのパ ラメータ を算出 した。1)血中 消失率 の 指標 と し て2分 後 に対 す る4分 後 の 心 臓の カ ウ ン卜 比 (以下HH4),2)肝摂取 率の指 標と して4分 後の 心 臓 十肝 臓 のカ ウン1卜に対 する4分後の 肝臓のカ ウン卜 比(L4/(H4+L4):以 下LHL4),3)心 臓 のTACを2指数 関 数 フイ ッ テ イン グ 処理し て得ら れる第1相の心 消失係 数(Kd),4)肝臓のTACを立 ち上が り指数関 数フイ ッテイン グ処理 して得ら れる肝摂 取係 数(Ku)

  その結果 ,HTBFRは血行遮 断後. 速やかに 減少し ,その後 安定し た値を示 した。各 亜群 間の比較 では正 常肝群で も,肝 障害群に おいても それぞ れLAP,HAL,PVLおよ びHAL十PVL の順に有 意に低 値を示し た。ま た,正常 肝群のHH4はLAP,HAL,PVLおよびHAL十PVL各亜群

98‑

之 秀

紘 慶

藤 田

加 安

授 授

教 教

査 査

主 副

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でそれぞれ0.58,0.64,O.85,O.97であり,LHL4はO.96,O,94,O.72,O.34,Kdは0.53, O.46,0.27,O.13,Kuは0.37,0.32,O.24,O.19であった。一方,肝障害群ではHH4は O.70,O.83,O.90,O.95であり,LHL4は0.91,O.85,O.47,0.33,KdはO.45,O.32, O.20,O.11,Kuは0.23,O.18,O.13,O.11であった。肝障害群では肝血行遮断後,HTBFR の有 意な減少 に伴い,LAP亜群に比べてHH4はHAL,PVL,HAL十PVL亜群の順に有意に増加し.

LHL4,Kdお よ ぴKuはHAL,PVL,HAL十PVL亜群の 願に有 意に低値 を示し た。正常 肝群に お いて は,LAP亜群とHAL亜群 との間 には有意 差を認め なかっ たが,その他の組み合わせの間 で は ,HH4,LHL4,Kdおよ ぴKuの 値に肝障 害群と同 様な有 意差が認 められ た。またHTBFR とHH4,LHL4,Kdお よ ぴKuと の問 に は 正 常肝 群 , 肝障 害 群の いずれに おぃて もそれぞ れ 有 意な 高い相関 が認め られた。 すなわ ち,今回 検討したGSAパ ラメータ は肝血 流量の変 化 と有 意に相関 するこ とが示さ れた。 正常肝群と肝障害群との比較でみると,LAP亜群では,

正 常 肝群 と 肝 障害 群 と の問 でHH4,LHL4,Kdお よ びKuの すべ てに有意 差を認 めており . GSAパラメー タは慢 性肝障害 による 有効肝細胞数の減少を良く反映することが示唆された。

ま たHAL亜 群で も 正 常肝 群 と 肝障害 群との 問で4つのパ ラメータ すべてに 有意差 が認めら れ たが ,PVL亜 群およ ぴHAL+PVL亜 群では 一部に有 意差が 認められ なかっ た。すな わちGSA パラ メータは 慢性肝 障害によ る有効 肝細胞数 の減少を 反映す るが,極端に肝血流の減少し た 状 態 で は 肝 障 害 度 の 差 と し て は 評 価 で き な ぃ 場 合 も あ る こ と が 示 唆 さ れ た 。   以上の 結果より ,GSAパラメー タは正 常肝にお いても 慢性肝障 害におい ても血 行遮断に よ る肝 血流量の 変化と 有意に相 関する ことが示 された。 また,GSAパラ メータ は慢性肝 障 害にふもイj効肝細胞教の減少によっても影響されることが示された。

  口頭発 表におい て玉木 長良教授 より今 回のGSAバラメ ータの変 化におけ る肝血 行遮断に よ る肝 細胞自体 のダメ ージの影 響の有 無,また 長期的な 血行遮 断を行っ た場合 のGSAバ ラ メー タの変化 につい て,安田 慶秀教 授より従 来のレー ザード ップラー法による肝組織血流 測定 と比べて 有利な 点,肝の 特異的 な疾患を 評価する 新しい 診断法としての可能性に関し ての 質問があ ったが ,申請者 はおお むね妥当 な回答を した。 また玉木長良,安田慶秀両教 授にはさらに個別に審査をぃただき,合格と判定された。

  GSAに よる肝血 流評価 の有用性 に関し て,動物 実験モ デルを用 いて,従 来用い られてき たレ ーザード ップラ ー血流計 による 測定法と の比較を 加えて 詳細に検討した本研究の意義 は大きく,本論文は博士(医学)の学位授与に値するものと考える。

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