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ドジョウの遺伝地図作成とそれを用いた

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Academic year: 2021

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博 士 ( 水 産 科 学 ) 森 島    輝

学 位 論 文 題 名

ドジョウの遺伝地図作成とそれを用いた      特 殊 な 卵 形 成 機 構 の 解 析

学位論文内容の要旨

  遺 伝 地 図 は 育 種 お よ び 基 礎 遺 伝 学 の 分 野 で 重 要 と さ れ 、 近 年 、 魚 類 を 含 む 様 々 な 生 物 種 に お い て 、 作 成 が 進 め ら れ て い る 。 遺 伝 地 図 が 作 成 さ れ る と 、 遺 伝 マ ー カ ー を 利 用 し た 効 率 的 選 抜 育 種 や 有 用 遺 伝 子 の 単 離 が 可 能 と な る ば か り か 、 異 な る 種 間 に お け る ゲ ノ ム 構 成 の 相 同 性 ( シ ン テ ニ ー ) が 解 明 で き 、 進 化 に 関 し て 有 用 な 情 報 を 与 え る 。

  本 研 究 で は 、 小 型 の 淡 水 魚 ド ジ ョ ウMisgurnus angtullicaut恥 の 遺 伝 地 図 作 成 を 目 指 し て 、DNAマ ー カ ー の 開 発 を 行 っ た 。 各 マ ー カ ー に つ い て 遺 伝 様 式 を 調 べ た 後 、 そ の 一 部 に っ い て 染 色 体 の 動 原 体 か ら の 地 図 距 離 を 推 定 し た 。 そ し て 、 の 丶PPCR法 に よ り 得 た マ ー カ ー と 色 彩 形 質 を 含 む52マ ー カ ー ( 遺 伝 子 ) 座 間 の 連 鎖 関 係 を 、 戻 し 交 配 家 系 の 分 析 に よ り 調 査 し 、 遺 伝 地 図 作 成 を 試 み た 。 ま た 、 遺 伝 地 図 よ り 得 た 情 報 を 非 還 元 卵 な ら び に 異 数 性 卵 の 形 成 機 構 に 関 す る 遺 伝 学 的 解 析 に 応 用 し た 。

  本 論 文 は5っ の 章 よ り 構 成 さ れ 、 第1章 で は83の マ イ ク ロ サ テ ラ イ ト 領 域 を 単 離 し 、 そ れ ら の 塩 基 配 列 よ り63の マ イ ク ロ サ テ ラ イ ト に っ い て 遺 伝 的 多 型 解 析 用 プ ラ イ マ ー を 設 計 し た 。 良 好 な 増 幅 断 片 が 得 ら れ 、 か つ 調 査 家 系 の 中 で 多 型 性 を 示 し た30の マ ー カ ー 座 中 、29の 座 が 共 優 性 で あ り 、 メ ン デ ル の 法 則 に 従 う こ と が 確 認 で き た 。 以 上 の 遺 伝 様 式 と 多 型 性 に 関 す る 結 果 か ら 、 ド ジ ョ ウ に お い て も マ イ ク ロ サ テ ラ イ ト マ ー カ ー は 遺 伝 地 図 作 成 に 好 適 な マ ー カ ー で あ る こ と が 判 明 し た 。 さ ら に 、 遺 伝 地 図 を 補 完 す る マ ー カ ー と し て29の ( 強PPCRマ ー カ ー を 開 発 し 、 そ れ ら が メ ン デ ル 遺 伝 の 様 式 に 従 い 、 連 鎖 解 析 に 利 用 可 能 で あ る こ と を 示 し た 。

  2章 に お い て は 、 染 色 体 操 作 法 に よ り 作 出 し た 第 二 極 体 放 出 阻 止 型 雌 性 発 生 二 倍 体 家 系 を 材 料 と し て マ ー カ ー と 動 原 体 間 に お け る 組 換 え 率 の 解 析 を 行 い 、 マ イ ク ロ サ テ ラ イ ト の 動 原 体 か ら の 地 図 距 離 を 推 定 し た 。15の マ イ ク ロ サ テ ラ イ ト マ ー カ ー 座 の マ ー カ ー ― 動 原 体 間 組 換え 率( カは 、O.06O95と 推定 さ れ、

こ れ ら は 動 原 体 か ら の 地 図 距 離345cMの 広 い 範 囲 に あ る こ と が 判 っ た 。 従 つ て 、 マ イ ク ロ サ テ ラ イ ト マ ー カ ー 座 は 、 染 色 体 の 動 原 体 近 傍 か ら テ ロ メ ア 近 傍 ま で の 広 い 領 域 に 分 布 す る こ と が 判 明 し た 。 ま た 、 ほ ぼ100% ( 尸1) の マ ー カ ー

― 動 原 体 間 組 換 え 率 を 示 す マ ー カ ー 座 が4つ 観 察 さ れ た こ と か ら 、 ド ジ ョ ウ の 染 色 体 に お い て 非 常 に 強 い キ ア ズ マ 干 渉 が 働 い て い る こ と が 示 唆 さ れ た 。 こ れ ら

(2)

のテロメア側マーカー座におけるホモ接合型から、クローンの素材となる第一 卵割 阻 止型 雌 性発 生 二倍 体 (完 全ホ モ接合体) 作出の成功 が判定でき た。

  

3

章では体色の形質を含む52 マーカー(遺伝子)の連鎖関係の分析から遺伝 地図作成を試みた。その結果、13 の連鎖群が明らかになり、4 連鎖群は複数のマ イクロサテライトマーカーを含んでいた。ヒドジョウ体色形質は、CAP‑PCR マー カー

(cap13)

と連鎖していた。

  

4

章では、第1‑‑3 章において得られた情報をもとに、一部のドジョウが産す る特殊な非還元性二倍体卵の形成機構解明を行った。新潟県広神村産ドジョウ の生む非還元性二倍体卵から紫外線照射精子の受精により誘起した雌性発生二 倍体は母親とは異なるマイクロサテライトマーカー型を示すことから、「減数 分裂前核内有糸分裂(Premeiotic endomitosis) 」により非還元卵が形成されてい ることが推定された。一方、北海道女満別町産ドジョウの産む非還元性ニ倍体 卵に由来する人為雌性発生子孫は、母親と全く同一のマイクロサテライトマー カー型とDNA フアンガープリント像を示すことから、「無配偶生殖(Apomixis) 」 の機構により非還元卵が形成されていることが示唆された。また、これらの非 還元卵は通常に受精した場合、二倍体子孫に精子の遺伝的関与が無いことから、

単性的にクローンとして生殖していることが示された。さらに、同地の野生集 団のマイク ロサテライトマーカーと

DNA

フアンガープリント分析から、自然三 倍体は、クローン二倍体の産する非還元性二倍体卵と精子核ゲノムの偶発的取 り込みに由来することが示された。

  

5

章で は、女満別産の自然三倍体雌の産する異数性配偶子形成に関する遺 伝学的解析 を行った。三倍体雌親魚の3 っの対立遺伝子がそれぞれ区別可能で あった

6

つのマイクロサテライトマーカーにより分析したところ、異数性の配 偶子(卵)では、3 対立遺伝子の1 っが分配される場合(子孫は二染色体性マー カー型)と

2

っが分配される場合(子孫は三染色体性マーカー型)があること がわかった。さらに、対立遺伝子の分離には、極端な偏りが観察された。対立 遺伝子の分 離の様式より、三倍体に含まれるクローン由来の

2

っの相同染色体 の片方は、精子由来の相同染色体とは対合しにくいことが示唆され、三倍体の 起 源 と な っ た ク ロ ー ン 系 統 は 異 質 二 倍 体 で あ る と 考 え ら れ た 。

  

本 研究によル ドジョウのDNA マーカーの動原体からの地図距離と連鎖関係を 明らかにすることができ、さらに作成された遺伝地図を利用して一部に見られ る特殊な卵形成機構を明らかにすることができた。これらの結果は水産育種の ための基礎的知見となるばかりか、本種における自然倍数体、クローン集団、

単 性 集 団 の 起 源 と 成 立 機 構 に つ い て 重 要 な 示 唆 を 与 え た 。

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学位論文審査の要旨 主 査    教授    荒井克 俊 副 査    教授    嵯峨直 恆 副査   助教授   山羽悦郎

学 位 論 文 題 名

ドジョウの遺伝地図作成とそれを用いた      特 殊 な 卵 形 成 機 構 の 解 析

  遺 伝 地 図 が 作 成 さ れ る と 、 遺 伝 マ ー カ ー を 利 用 し た 効 率 的 選 抜 育 種 や 有 用 遺 伝 子 単 離 が 可 能 と な る ぱ か り か 、 ゲ ノ ム 解 析 に 有 用 な 基 礎 情 報 が 得 ら れ る 。 し か し な が ら 、 魚 類 に お い て は こ の 方 面 の 研 究 は 、 他 の 産 業 種 に 比 べ 乏 し い 。 本 研 究 は 、 繁 殖 ・ 飼 育 法 な ら び に 染 色 体 操 作 法 が 確 立 し て い る 小 型の 淡 水 魚ド ジ ョウTvIisgurn us  anguillica uda tus に つ い て マ イ ク ロ サ テ ラ イ ト を 中 心 と し た DNAマ ー カ ー を 開 発 し 、 マ ー カ ー ― 動 原 体 間 組 換 え 率 分 析 と 連 鎖 解 析 に よ る 遺 伝 地 図 作 成 を 行 う と と も に 、 さ ら に 、 得 た 遺 伝 地 図 情 報 を 用 い て 、 本 種 に 見 ら れ る 特 殊 な 非 還 元 卵 な ら び に 異 数 性 卵 の 形 成 機 構 を 解 析 す る こ と を 目 的 に 行 わ れ 、 以 下 の 成 果 が 得 ら れ た 。

1) ド ジ ョ ウ 核 ゲ ノ ム よ り83の マ イ ク ロ サ テ ラ イ ト 領 域 を 単 離 し 、 そ れ ら の 塩 基 解 析 結 果 よ り 遺 伝 変 異 を 解 析 す る た め の プ ラ イ マ ー セ ッ ト を63組 設 計 し 、 多 型 的 な29マ ー カ ー 座 が 共 優 性 で メ ン デ ル 遺 伝 の 様 式 に 従 う こ と を 示 し た 。 さ ら に 、 補 完 的 な DNAマ ー カ ー と し て 29CAP‑PCRマ ー カ ー を 開 発 し 、 実 験 的 に 作 成 し た 家 系 に お け る こ れ ら の 遺 伝 様 式 の 分 析 か ら 連 鎖 分 析 に 利 用 可 能 で あ る こ と を 示 し た 。 2) 紫 外 線 照 射 精 子 と 第 2極 体 放 出 阻 止 を 用 い た 人 為 雌 性 発 生 二 倍 体

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家系を材料とした、遺伝マーカーと染色体動原体間の組換え率(カの 解析から、15 マーカー座はゾニニ 0.06 〜 0.95 を示し、動原体からの地図 距離 3 ‑ 45cM の範囲にあること、すなわち動原体近傍からテロメア近 傍の広い領域に位置することを示した。また、ゾニニ1 に近い組換え率を もつ座の存在から強いキアズマ干渉の存在を示唆した。このようなテ ロメア側マーカー座におけるホモ接合型から、クローン作出の素材と なる第一卵割阻止による雌性発生二倍体において、完全ホモ接合個体 作出の成否判定が可能なことを示した。

3 )戻し交配家系における体色を含む52 マーカー(遺伝子)の連鎖解析 か ら 13 の連鎖群が示され、そのうち4 連鎖群は複数のマイクロサテラ イ トマーカーからなることを明らかにした。体色形質はCAP‑PCR マー カー座のーっと連鎖することを示した。

4 )遺伝地図情報をもとに、新潟県広神村と北海道女満別町のニっの 産地由来のドジョウの産む非還元卵にっいて各々解析したところ、前 者ではマイクロサテライ卜マーカー型に変異があること、後者では全 く変異が無く母親の体細胞と遺伝的に同一であることが示され、前者 の非還元卵形成過程には Premeiotic endomitosis の機構が関与し、後 者 は Apomixis により 形成されることが 示唆できた。また、女満別の 非還元卵は、精子の遺伝的関与無しに母親、同胞と遺伝的に同一なク ローンとして発生するが、精子核ゲノムを取り込んだ卵は三倍体とな ることを明らかにした。

5 )二倍体クローンと半数性精子の受精からできた三倍体は、異数性 卵を産むことが示され、 3 っのマーカー対立遺伝子のうち、卵ヘ1 っが 分配される場合と2 っが分配される場合があることが明らかになった。

さらに、異数体卵への対立遺伝子の分配には偏りがあること、および 組換え型の存否から、クローン自体が異なる遺伝的特性を持つ集団間 の異質二倍体に起源することを示唆した。

   申請者による以上の成果は、遺伝地図を基礎とした魚類育種の進展

に寄与するばかりか、本種を含む魚類における非還元配偶子および異

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数性配偶子の形成、自然倍数体、単性生殖、およびクローン集団の起 源と成立機構の解明に重要な示唆を与えるものであり、審査員一同は、

本研究が博士(水産科学)の学位を授与される資格のあるものと判定

した。

参照

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