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6 一TuliposideB の全合成並びに構造活性相関研究

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Academic year: 2021

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(1)

博 士 ( 農 学 ) 重 冨 顕 吾

学 位 論 文 題 名

6 −TuliposideB の全合成並びに構造活性相関研究 学位論文内容の要旨

  近年 、チューリップの葯 に特異的に存在す る化合物、6‑tuliposideB

く6‑0‑[(3 S)‑3 ,4 ‑dihydroxy‑2  ‑methylenebutanoyl] ‑D‑glucose)が数種の薬剤耐性菌を含む、グラム 陽 性 菌 や グ ラ ム 陰 性 菌 に 対 し て 広 い 抗 菌 ス ペ ク ト ル を 持 っ こ と が 近 年 明 ら か に さ れ た 。 本 研 究 で は 本 化 合 物 の 抗 菌 活 性 作 用 機 序 の 解 明 及 び 抗 菌 剤 と し て の 展 開 を 目 指 し 、 そ の 全 合 成 と アナロ グ合成、及びそれら を用いた構造活性 相関研究を行った 。

lactonizatoin

OH

                         Tulipalin B

図 1     6‑Tuliposide Bおよ (‑)‑tulipalin B.

  6‑TuliposideBの全合成にはBaylis‑Hillman反応を鍵反応として用いた。4'位水酸基の保 護基と してTBDMS基、ア ノマー 水酸基の保護基として2‑trimethylsilylethyl基を用いた。

これに より低収率の原因となる側鎖のラクトン化を抑制した、効率的な6‑tuliposideBの合 成に初めて成功した(図2)。さらにその全合成過程において、6‑tuliposideBの3 エピマーと それぞれのB‐メチル配糖体を得た。

    0

TBDI噛SO丶丶`′人H

図26‑TuliposideBの全合成.

    ―1258―

(+)‑6‑Tuliposide B (1)       96 %

(2)

  また、確立した合成ルートを鋳型として、4 ‑deoxy型アナログ、hexanoyl型アナログを合 成 した。さらにKatsuki‑Sharplessの速度論的分割を利用することで、amide6‑tuhposide B、側鎖 のメチ ルエステ ル、12‑dideoxy型アナログおよび6‑tuliposideBa‑methyl配糖体 の合成も達成した。

  市 販のtulipalinA及 ぴ、そ れぞれの非天然型アナログを含めた計25種の化合物について 8種の菌 株に対 する抗菌 活性を評 価し、構造活性相関について検討した。Amide型のアナロ グ を含め、tuhpalinBを形成しないアナログは全て活性を示さなかった。このことから、活 性本体はtulipalinBであり、また、6‑tuhposideB自身は不活性な構造であると考えられた。

活 性のあっ たアナ ログにつ いては 薬剤耐性 菌であるMRSAに対し ても0.2‑0.5 mMの 範囲で 完全生育阻害活性を示した。′rulipalinAtulipalinBに比べて1/10程度の活性しか示さな か った。このことからtulipalinBの3位水酸基が本化合物の持つ特異的な活性に寄与してい る と考えられた。また、tulipalinBについては3位の立体配置によって大きな差は見られな かった(図3)。

MIC02mM 03 mM

4'‑Deoxy‑type

  n.d. Amide‑type

 n.d.

    OH  O  O HO 、 メ pOM. も

 IWipalin B       l,Z‑Dideoxy‑type             Methyl ester    0.2 mM       0.3 mM      0.3 mM

Tulipalin A    3.4 mM

3合成 した代表 的なアナ ログと それぞれ の大腸 菌ほcoli)に対するMIC値.

  それぞ れの活 性化合物 について ヒト自 血病細胞K562を用いた細胞毒性試験に供した。B 系 列の 化 合 物は 、 い ずれ も抗菌 活性に おけるMICを下 回る100 VM80%の細胞 毒性を 示 した。 一方、tulip alinAは同じ100 VMにおいても20%と軽微な毒性を示すのみであり、細 胞毒性 試験においても、3位水酸基が活性に大きく寄与していることが確認された。一方、

tuliposideBと同じpY−dihydroxy‑a‑methylenebutano ate構造を持つ天然物cnicInが、細菌の細 胞 壁 合 成 酵 素MurAを 特 異 的 に 阻 害 す る と い う 報 告 も な さ れ て 抬 り 、 こ の こ と か ら 6tuHp08ideB.tuhpali11Bにも同様のバクテリア特異的な阻害機序が存在することが示唆さ れる。 今後、ヒ ト細胞 に対する 毒性を抑制し、MurA阻害に特化したアナログを合成するこ とで、新たな作用機序を持つ抗生剤の開発が期待される。

1259 ‑

(3)

学位論文審査の要旨

学 位 論 文 題 名

6 一TuliposideB の全合成並びに構造活性相関研究

本論文は、邦文97頁、図23、表6、7章からなり、参考論文2編が付されている。

  6―TuliposideBは、ユリ科植物に広く分布する二次代謝産物であるtuliposide類のーっであ る。近年、6ーtuliposideBの持つ薬剤耐性菌を含めた広い抗菌スペクトルが報告された。本研究 では、その報告を基に、6−tuliposideBの抗菌剤としての展開と抗菌剤作用機序の解明を目的と して、6−tuliposideBの全合成と、類縁体合成、並ぴにそれらを用いた構造活性相関研究を行つ ている。多くの薬剤耐性菌の発生は臨床の現場などにおいて非常に深刻な問題となっており、新 たな作用機序を持つ抗菌剤の開発が必要とされている。本研究は、天然から取得される新たな抗 菌剤開発への足掛かりとなる点において非常に有益である。

  6―TuliposideBの全合成はpーヒドロキシ‑ a‑メチレンエステル構造を単段階で構築可能な Baylis―Hillman反応を主軸に展開されている。Tuliposide類は60年以上前から知られている天 然物であるが、その全合成については試みが二例報告されているのみであり、達成された例は無 い。この理由として著者はtuliposideB側鎖の不安定さに着目し、保護基の選択について酵素 法や化学法などについて詳細に検討している。結果として、酸性条件で脱保護可能なシリル系の 保護基並びに2ートリメチルシリル基を用いることで最終段階におけるラクトン化を抑制しなが ら、効率的な脱保護条件を見出し、初の全合成を達成している。

  次に、全合成経路を鋳型として6―tuliposideBのC―6型類縁体、4 ―deoxy型類縁体を合成し^

加えて6−tuliposideB並びに合成したtulipalinB両者を水素添加することでそれぞれの還元 型類縁体についても合成している。さらに、香月ーシャープレスの速度論的分割法を利用するこ とで、6−TuliposideBのエステル結合をアミド結合へと変換した類縁体についても合成している。

さらに、6−tuliposideBのa―メチルグルコシドや1,2―デオキシ型の類縁体についても同様に合 成し、その他にも6−tuliposideBのp−メチルグルコシド、tuliposideB側鎖のメチルエステル など、多くの類縁体を合成している。

  合成した24種の化合物と、市販のtulipalinAを合わせた合計25種の化合物について薬剤耐 性菌3種を含む8種の菌株を用いて抗菌活性測定を行い、構造活性相関について検討している。

前述の様にtuliposide類は古くから知られている化合物であるが、このように多くの類縁体を 用い て網羅的 に研究を 行った例 はこれま でに無く、 評価に値する。抗菌活性測定の結果、

6−tuliposideBの抗菌活性本体がラクトンであるtulipalinBであることを見出すとともに、そ れらが院内感染において問題となっているMRSAについても生育阻害活性を持っことを明らかに している。また、構造活性相関の結果から6ーtuliposideB自身が抗菌活性においては不活性な

‑ 1260 ‑

信 之

助 潤

   

   

方 床

田 端

(4)

形体であることが示唆されており、その植物生理学的な役割についても有意義な情報を見出して いる。

  その活性作用機序については、tulipalinBが活性本体であるという結果とSteinbachらの報 告から、バクテリアの細胞壁合成酵素のーっであるMurAに対する1,3付加型の阻害であると考 察している。MurAの阻害剤としては現在fosfomycinが実際に使用されているが、tuliposideB 並ぴにtulipalinBの抗菌活性は(ターゲットこそ同じであるが)これとは異なる作用機序であ る た め 、 新 た な 範 疇 の 抗 菌 剤 と し て 展 開 さ れ る 可 能 性 が 見 出 さ れ た 。   この様に著者は天然物6一tuliposideBの初の合成を達成するとともに、その抗菌活性本体と 作用機序について明らかにした。さらに現在、共同研究として本論文で合成した化合物をプロー ブに用いて、tuliposide類の植物生理学的機能の解明が行われており、本研究の高い発展性につ いても評価に値する。

  これらの 研究結果 のうち、 原著論文二 報が学術 雑誌であ るHeterocycles、Tetraheron Asymmetryに受理さ れた(そ れぞれ2006年69巻63−67頁、2008年19巻1444−1449頁) 。

  よって、審査員一同は、重冨頭吾が博士(農学)の学位を受けるのに十分な資格を有するもの と認めた。

1261

図 1     6‑Tuliposide B およ (‑)‑tulipalin B.   6‑TuliposideB の全合成には Baylis‑Hillman 反応を鍵反応として用いた。 4' 位水酸基の保 護基と してTBDMS 基、ア ノマー 水酸基の保護基として 2‑trimethylsilylethyl 基を用いた。 これに より低収率の原因となる側鎖のラクトン化を抑制した、効率的な6‑tuliposideB の合 成に初めて成功した(図 2 )。さらにその全合成過程において、6‑tuliposi

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