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博 士 ( 理 学 ) 佐 々 木 克 徳 学 位論 文 題 名 Analysis of Ocean and Sea― Ice Variability on Interannual to Decadal Timescales

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Academic year: 2021

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博 士 ( 理 学 ) 佐 々 木 克 徳

     学 位論 文 題 名

Analysis of Ocean and Sea ― Ice Variability on     Interannual to Decadal Timescales

(海洋・海氷の経年から十年スケールの変動の解析)

学 位 論 文 内 容 の 要 旨

  海洋や海氷の変動は,地球の気候システムの変動に対して重要な役割を担っている,そ こで海洋,特に海表面高度と海氷の経年から十年変動について解析を行った.本研究では 次の3つのテーマ, 南太平洋の海表面高度変動と,オホーツク海の海氷変動,べーリング 海の海氷変動についてそれぞれ解析を行った.

  1970から2003年の南太平洋の海表面高度変動とそれに伴う海洋の変動について,渦解像 度海洋大循環モデルの再現実験結果と,潮位計と衛星高度計による観測データを用いて解 析を行った.渦解像度海洋大循環モデルの海表面高度偏差を用いた経験的直交関数解析の 第1モードは,南太 平洋中央部から西部にかけて大きな正の偏差を持つ.これに対応する 時間関数は1970年代後半の急峻な海表面高度低下と,1990年代後半の急峻な海表面高度上 昇を伴う十年スケールが卓越し,これらの変動は潮位計と衛星高度計のデータと整合的で ある.この十年スケールの海表面高度変動は1000m深での南太平洋の亜熱帯循環の変動と,

南太平洋西部のタスマンフロントでの東西流と渦活動の変動を伴う.この海表面高度変動 のメカニズムについても解析を行い,南太平洋西部のタスマン海での海表面高度変動は,

ニュージーランドの影響を考慮することによって,風応カカールにより駆動した長波ロス ビー波により説明されることがわかった.またこの海表面高度変動に対応する大気の変動 は,El Nino‑Southem Oscillation (ENSO)の十年変動に伴う大気変動であることがわかった.

したがって,南太平洋中央部から西部にかけての海表面高度の十年スケール変動は,ENSO の十年変動と関連している.

  オホーツク海の冬季の海氷の経年から十年変動と大気変動の関係を,海氷密接度と,大 気の3成分(lOOOhPa等圧面高度上の東西風・南北風,850hPa等圧面高度上の気温)を結合 させたデータとの間で特異値分解解析を行い調査した.この結果,秋季(10‑11月)の大気変 動は秋季から冬季にかけての海氷変動に強く影響することが示された.オホーツク海の正 の海氷偏差に対し,秋季の大気は大陸からオホーツク海にかけての負の気温偏差と大陸か らオホーツク海上に吹き込む風の偏差を示す.この大気変動はオホーツク海上での海洋か ら大気への熱フラックス偏差と,負の海表面温度偏差を生じ,これは秋季の大気変動が海 洋上層に蓄えられた熱偏差を通じて海氷に影響することを示唆する.また秋季の大気変動

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は,1980年から1990年代中頃までのオホーツク海の海氷面積の減少傾向に大きく寄与して いることがわかった,この秋季大気と冬季海氷の強い関係から,海氷面積が最大となる2一3 月平均の海氷を10−11月平均の大気の情報から季節予測する式を提案し,213月平均の海氷 面積の分散の45%を説明した.

  最後に,べーリング海の海氷の経年から十年変動とその大気変動との関係について,海 氷密接度と1000 hPa等圧面高度上の風速の間で特異値分解解析を用いて,冬季と春季の海 氷 変動についてそれぞれ調査した.冬季と春季の両方の海氷変動について,それぞれ1ケ 月 先行した風との間で統計的に有意な2つの特異値分解モードが同定された,これらの特 異値分解モードの空間構造から,第1モードはべーリング海の北東部の海氷変動を説明し,

北 西風偏差と関係している,これに対し特異値分解第2モードは,べーリング海の北西部 の海氷の変動を説明し,北風偏差と関係している.この海氷変動と大気変動の関係は,2つ のモードのうち,一方のモードはアリュー一シャン低気圧の関係する大規模な大気変動と関 係しており,もう一方のモードはアラスカ上に気圧の偏差を持つ,比較的局所的な大気の 変動と関係している.これらの結果はべーリング海の海氷の経年から十年変動を知るため には,べーリング海上での風の変動を詳しく知る必要があることを示唆するものである.

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学位 論文審査の要旨 主査

副査 副査 副査

教 授    見 教 授    日 准教授    稲 准教授    知

延庄 士郎 置 幸 介 津    將 北 和 久

     学位論文題名

Analysis of Ocean and Sea ―Ice Variability on     Interannual to Decadal Timescales

(海洋・海氷の経年から十年スケールの変動の解析)

  海 洋や 海氷 は地 球の 気候 シス テム に 対して重要な役 割を担っている.すなわち,海洋 はそ の循 環に より 大量 の熱 を輸 送し , また大気と比較 して非常に多くの熱を蓄え,地球 の熱 バラ ンス に大 きく 影響 する .一 方 ,海氷の存在は 大気―海洋間の熱交換に大きく影 響す るこ とに 加え ,海 氷は 海洋 に比 ベ アルベドが大き く地球の放射バランスにも大きな 影響 を与 える .し たが って 海洋 や海 氷 の変動の理解は ,気候システムの変動の理解に重 要で ある .こ のよ うな 背景 の下 で本 研 究は,海洋と海 氷の経年から十年変動についての 解析 を行 った .特 に次 の3つ のテ ーマ ,南 太平 洋の 海表 面高 度変 動 ,オホーツク海の海 氷 変 動 , べ ー リ ン グ 海 の 海 氷 変 動 に 注 目 し , そ れ ぞ れ 解 析 を 行 っ た も の で あ る .   1970か ら2003年 の南 太平 洋の 海表 面高 度変 動 とそ れに 伴う 海洋 の変 動に っい て, 渦 解像 度海 洋大 循環 モデ ルの 再現 実験 結 果と,潮位計と 衛星高度計による観測データを用 いて 解析 を行 った .渦 解像 度海 洋大 循 環モデルの海表 面高度偏差を用いた経験的直交関 数解 析の 第1モ ード は, 南太 平洋 中央 部か ら西 部に かけ て大 きな 正 の偏差を持つ.これ に 対 応 す る時 間関 数は ,1970年 代後 半の 急峻 な 海表 面高 度の 低下 と,1990年代 後半 の 急峻 な海 表面 高度 の上 昇を 伴う 明瞭 な 十年スケールを 示した.これらの大循環モデルで 得ら れた 変動 は, 潮位 計お よび 衛星 高 度計のデータと 整合的である.この十年スケール の海 表面 高度 変動 は,1000m深で の南 太平 洋の 亜熱 帯循 環の 変動 と ,南太平洋西部のタ スマ ンフ ロン トで の東 西流 と渦 活動 の 変動を伴うこと が示された.この海表面高度変動 は, 風応 カカ ール によ り励 起さ れる 長 波ロスビー波に より説明されることが明らかとな った .特 に, 南太 平洋 西部 のタ スマ ン 海での変動は, ニュージーランドがロスビー波に 及ぼ す影 響を 考慮 する こと で十 分説 明 される.またこ の海表面高度変動に対応する大気 の変動は,El Nino‑Southem Oscillation (ENSO)の十年変動に伴う大気変動であることが判 明し た. した がっ て, 南太 平洋 中央 部 から西部にかけ ての海表面高度の十年スケール変

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動は,ENSOの十年変動と関連して生じていたと結論できる.

  オホーツク海の冬季の海氷の経年から十年変動と大気変動の関係を,海氷密接度と,

大気の3成分(lOOOhPa等圧面高度上の東西風・南北風,850hl:)a等圧面高度上の気温1を 結合させたデータとの間で特異値分解解析を行い調査した.この結果,秋季(10‑11月)

の大気変動は秋季から冬季にかけての海氷変動に強く影響することが示された.オホー ツク海の正の海氷偏差に対し,秋季の大気は大陸からオホーツク海にかけての負の気温 偏差と大陸からオホーツク海上に吹き込む風の偏差を示す.これらの大気変動はオホー ツク海上での海洋から大気への熱フラックス偏差と,負の海表面温度偏差を生み出す.

このことは,秋季の大気変動が海洋上層に蓄えられた熱偏差を通じて海氷に影響するこ とを示唆するものである.また秋季の大気変動は,1980年から1990年代中頃までのオ ホーツク海の海氷面積の減少傾向に大きく寄与していることが判明した.この秋季大気 と冬季海氷の強い関係から,海氷面積が最大となる2一3月平均の海氷を10111月平均の 大気の情報から季節予測する式を提案し,2一3月平均の海氷面積の分散の45%を説明し た・

  最後に,べーリング海の海氷の経年から十年変動とその大気変動との関係について・

海氷密接度と1000 hPa等圧面高度上の風速の問で特異値分解解析を用いて,冬季と春季 の海氷変動についてそれぞれ調査した.冬季と春季の両方の海氷変動について,それぞ れ1ケ月先行した風との間で統計的に有意な2つの特異値分解モードが同定された.こ れらの特異値分解モードの空間構造から,第1モードはべーリング海の北東部の海氷変 動を説明し,北西風偏差と関係するものである.これに対し特異値分解第2モードは,

べーリング海の北西部の海氷の変動を説明し,北風偏差と関係する.この海氷変動と大 気変動の関係は,2つのモードのうち,ー方のモードはアリューシャン低気圧の変動を 含む大規模な大気変動と関係しており,もう一方のモードはアラスカ上に気圧の偏差を 持つ比較的局所的な大気の変動と関係している.これらの結果はべーリング海の海氷の 経年から十年変動を知るためには,べーリング海上での風の変動を詳しく知る必要があ ることを示唆するものである.

  これら一連の研究は,海洋および海氷の経年から十年スケール変動の研究に,先端的 なまた大きな貢献をしたものと高く評価できる.よって,本論文の著者は,北海道大学 博士(理学)の学位を授与される資格あるものと認める.

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