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ねむるようにおよぐ

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Academic year: 2021

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ねむるようにおよぐ

教科・領域教育専攻 芸術系コース(美術) 田 中 千 晴 作品の要旨 1.制作の動機 筆者が絵画制作を行う理由は、印象に残っ た光景を形にして残しておきたいからである。 筆者が残したいと思う光景の多くは、例えば地 面に落ちた花びらや、カーテンの隙聞から差 し込む陽の光など、筆者にとってありふれたも のであることが多い。しかし、そういった光景が 時折、新鮮に自に映る時がある。ふとしたとき に何気なくみたもの、普段見慣れているけれど たまたま意識してみたもの等、きっかけはほん のささいなものだ。それなのに、不思議と目を 奪われてしまうし、ずっと見ていたくなる。だが、 偶然目に留まっただけで、今後同じものを見 たからとし、って必ず心惹かれるという保証はな い。もしかすると、一瞬のうちに消え去ってしま うかもしれない。そんな不安定な状態だからこ そ、強く印象に残ったその光景と感覚を、描く ことで手元に置き、いつでも眺められるようにし たい。 それに加えて、筆者の心に残る光景たちを 他者と共有したいという願望もある。いいものを 見つけたことを誰かに打ち明けたいし、共感し てもらえたらとても嬉しい。そう思うような光景は、 作品にしているもの以外にも数多くある。印象 に残るという点だけで雷えば、花火やイルミネ ーションなどの非日常的な光景もそうだ。人の 心を揺さぶるような力強い美しさがあり、筆者 の記憶にもはっきりと刻み込まれている。それ ならばなぜ、ありふれた光景ばかりを描いてい るのかというと、日常生活の中で見つけるふと 指 導 教 員 鈴 木 久 人 した美しい瞬間には、ほっと安らぐような、心を 穏やかにする力があると考えているからだ。大 きな感動とは違う、静かでじんわりとした感動は、 筆者の心を日々癒している。それこそが、最も 誰かに伝えたいと願う光景であり、作品を通し て相手を癒すことができればと考えている。 印象に残った心安らぐ光景を、形にして残し たい。また、それを他者と共有したい。この

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つ の目的のため、絵画による制作研究や発表を 行う。 ll.制作のテーマ 今回の作品では、よく通っていた水族館で 目撃したトドをモチーフとしている。彼らは大抵 の場合、日向に集まり団子のようになって寝て いるか、元気よくピュンピュンと水槽を泳ぎ回っ ている。しかしある日、客のまばらな水族館で 目撃したのは、自を閉じ体をほとんど動かさず、 まるで眠っているかのように悠々と泳ぐ姿だ、っ た。おおらかで、うつくしく、ずっと留めていた いと思うほど静諮な光景だ、った。 モチーフとなる光景は、穏やかなもの、心が 安らぐようなものが多い。筆者の求めているも のでもあり、また、鑑賞者の心を癒すような作 品を目指して制作している。

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制作方法 和紙や岩絵具、水干、墨等を用いた日本画 の制作を行う。道具はどれも動植物や鉱物か ら出来ており、それ自体に力を感じる。筆者が 選ぶモチーフは自然のものであることが多い

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− 338 − ため、自然物の力を利用できる日本画材が一 番適していると考える。 再現した光景を、実際に触ることのできそう な現実味のある質感にするため、綿密描写を 基本とする(図 1)。しかし、画面全体に手を入 れるとあまりにも密度が高くなり、窮屈さを感じ てしまう。そこで、のびのびとした心地よさを生 むために、背景に大きく余白を取ることにした。 描きこみが無い分、胡粉や自士、雲母を何層 にも重ねることで、光の反射を美しく見せたい (図2)

lV.制作のまとめ 筆者はこれまで、描く行為がただ好きだとい うだけで、表現したいものがあり制作を行って きたわけではなかった。それに気づいたのは 大学に入学してからで、課題が出されるたび に、何を描くべきなのかをずっと考えていた。も しかすると、筆を動かしている時間よりも、悩ん でいる時間の方が長かったのカもしれない。し かし、ここ数年でようやく、本当に描きたいもの や表現したい想いが定まってきた。人より遅い スタートではあるが、やっと作品に向き合うこと ができ、今、制作をしていることがとても楽しい。 どうすれば伝わるのか、どうすれば納得がいく のかを問い、この制作への意欲や楽しみを絶 やすことなく、生涯をかけて研究を続けていき たい。 また、日本画では古くから伝わる道具を守り ながらも、現代の技術や材料を吸収し、年々 新しい画材が生み出されている。伝統的な美 しさを持ちながらも柔軟性があり、研究の楽し みが無限に広がる、魅力的な分野であると考 えている。様々な道具を食欲に試し、新たな表 現方法を追求したい。 図1 ねむるようにおよぐ(部分) 図2 ねむるようにおよぐ(全体) 図3 ねむるようにおよぐ{下図)

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