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農薬適用一覧表2017年版蘭騰
【 = =農薬適用一覧表
一 子 喚 勿 年 9 州 加 1 1 現 打 切17年唖 ”17 較 剛 ” A u 本 棚 物 防 疫 醤 会付録CD-ROM:農薬適用一覧DB(検索ソフト付き)
『農薬適用一覧表』は,平成29年9月30日現在
の 作 物 ・ 病 害 虫 別 の 殺 虫 剤 ・ 殺 菌 剤 作 物 別 の 除 草
剤,使用目的別の植物成長調整剤について,適用情
報を一覧表形式で掲載します。
また,稲用の殺虫・殺菌剤種子処理・箱施用剤
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2 0 1 7 -Ⅱ 本 柚 物 防 疫 協 会 A5判,本体9.000円十消費税 送 料 サ ー ビ ス 9『農薬要覧』は,わが国の農薬生産や出荷に関す
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TEL03-5980-2183FAX03-5980-6753
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口絵① 左:葉の初期病徴 中:葉の輪紋症状 右上:多発圃場における枯れ上がり 右下:がくの病徴 口絵② 上段:アカホシカメムシ;下段:ベニホシカメムシ;いずれも左からオス背面, オス腹面,メス背面,メス腹面 (河野,2017 https://sites.google.com/site/kohnolaboratory/) 口絵① 日本産アカホシカメムシ類:左からアカホシカメムシ,ヒメアカホシカメムシ, シロジュウジホシカメムシ(黒頭型)(KohnoandBuiThi,2005 を改変)
アカホシカメムシ類の防除における種特異的捕食性天敵
ベニホシカメムシへの期待:Bt ワタ普及による熱帯アジアの
棉作害虫相の変化に伴って
(本文 2 ページ参照,いずれも転載許諾済)和歌山県におけるトマト褐色輪紋病の発生と防除対策
(本文 42 ページ参照,菱池政志氏原図)!
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一一 一一 バイエルクロップサイエンス株式会社 東京都千代田区丸の内1-6-5〒100-8262www・bayercropscience.co.ipお客様相談室画面O120-575-0789:00主1省q稲:腰7:CO
アカホシカメムシ類の防除における種特異的捕食性天敵ベニホシカメムシへの期待: Bt ワタ普及による熱帯アジアの棉作害虫相の変化に伴って ………河野 勝行 … 1 国内侵入が懸念されるポスピウイロイドの種子伝染 ………松下陽介・柳澤広宣・津田新哉 … 6 8 種ポスピウイロイドの同時検出技術の開発と利用 ………柳澤広宣・津田新哉・松下陽介・志岐悠介 …11 イチゴ苗の蒸熱処理技術について ………高山 智光 …16 静岡県のイチゴ栽培における蒸熱処理技術を基幹としたIPM の構築 ………片山 晴喜 …22 DNA を用いた捕食性天敵の捕食歴解析について ………三浦 一芸 …25 岡山県の水稲乾田直播水田におけるシハロホップブチル抵抗性ヒメタイヌビエに対する防除対策の構築 ………那須英夫・伊藤一幸 …30 畦内土壌中での薬剤分布を把握するための蛍光塗料の利用 ………福田 健・重水 剛・森 清文 …35 根こぶ1 個からの迅速・簡便なネコブセンチュウ DNA 抽出と種同定法 ………岩堀 英晶 …39 和歌山県におけるトマト褐色輪紋病の発生と防除対策 ………菱池 政志 …42 世代間ローテーションを基礎とした新たな殺虫剤抵抗性管理戦略とIRAC の活動 ………島 克弥 …45 リレー連載:農薬製剤・施用技術の最新動向⑱ドリフト防止(防除機,ノズル)∼その現状と今後の展望∼ ………宮原 佳彦 …58 農林水産省プレスリリース(29.8.16 ∼ 29.9.12) ………34 新しく登録された農薬(29.8.1 ∼ 8.31) ……… 10 登録が失効した農薬(29.8.1 ∼ 8.31) ……… 5 発生予察情報・特殊報(29.8.1 ∼ 9.1) ………15
植 物 防 疫
Shokubutsu bōeki (Plant Protection)平 成
29 年 10 月 号
目
次
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⑧ は 登 録 商 標 で 戒 ●使用前にはラベルをよく読んでください,●ラベルの記載以外には使用しないでください。●小児の手の届く所には置力)ないでください ●空袋 、空容器は圃場等に放迩せず適切に処理してください。識
〒104-B260東京都中央区新」''2丁目27番1号お客様相談室雪。O570-O5B-669 ナ セ ア イ ” ロ 農業支援サイトE↑ユ塵力https://wwwルnou「yokucom 大 地 の め ぐ み 、 ま つ ず ぐ 人 へ SCGGROUP◇ 住 友 化 学
は じ め に 我が国の棉作は明治期に経済栽培が途絶えてしまった こともあり(永原,1990),ワタ Gossypium spp.(Malva-ceae,アオイ科)は普段あまり注目されていない作物で ある。しかし,収穫物である綿花は極めて重要な天然繊 維素材であり,今なお世界で最も重要な繊維作物であ る。世界最大の綿生産国はインドで,2015/2016 年にお ける生産量は 574.8 万トンで,中国の 479.0 万トン,米 国の 280.6 万トン,パキスタンの 152.4 万トン,ブラジ ルの 128.5 万トン,ウズベキスタンの 82.7 万トン,トル コの 57.7 万トン,オーストラリアの 56.6 万トンと続く (Statista, 2016)。 ワタ害虫の種類は多いが,なかでも莢や種子を食害す るものは経済的な被害が大きい。主要な莢や種子の害虫 としてオオタバコガ Helicoverpa armigera,アメリカタ バコガ H. zea,ニセアメリカタバコガ Heliothis virescens ワタアカミムシガ Pectinophora gossypiella,ワタミゾウ ムシ Anthonomus grandis 等があげられる(総説として, FITT, 1994;LUTTRELL, 1994;LUTTRELL et al., 1994;RAMALHO,
1994;SUGONYAEV, 1994)。アカホシカメムシ類 Dysdercus spp.(カメムシ目:ホシカメムシ科)も古くからワタの 莢や種子の害虫として知られているが,上記の害虫と比 べると重要性は低かったと考えられ,上記総説ではほと んど言及されていない。 かつてこれらの重要害虫に対して多量の殺虫剤が使用 されていたが,これらの害虫に対抗するため遺伝子組換 体の Bt ワタがモンサント社によって開発され,米国で は 1993 年に実地試験が承認され,1995 年に商業利用が 承認された。中国では 1997 年から Bt ワタが栽培されて おり,オオタバコガなどが問題にならなくなったため殺 虫剤の使用が激減した(WU and GUO, 2005)。ところがそ の後,かつては重要度がそれほど高くなかったカスミカ メムシ類が大発生する問題が出てきた(LU et al., 2010)。 インドにおいても 2002 年以降 Bt ワタが栽培されており, 2010/2011 年 に は 90% 以 上 が Bt ワ タ に な っ て い る (KOSHY, 2011)。2015 年には全世界のワタの 75%が Bt ワ タになっている(Statista, 2015)。 筆者がかかわったアカホシカメムシ Dysdercus cingu-latusやそれに対する種特異的な捕食性天敵であるベニ ホシカメムシ Antilochus coquebertii(カメムシ目:ホシ カメムシ科)の研究(KOHNO et al., 2002;KOHNO, 2003;
KOHNO et al., 2004;KOHNO and BUI THI, 2004;2005)につ
いて,2013 年春ぐらいからインドやパキスタンのワタ 害虫の研究者から問い合わせが来るようになり,近年に なってアカホシカメムシ類のワタ害虫としての重要性が 高まり,生物的防除資材としてのベニホシカメムシが期 待されていることを知った。 本稿では,アカホシカメムシ類とベニホシカメムシに ついて紹介するとともに,ベニホシカメムシを生物的防 除資材として使用したアカホシカメムシ類の防除につい ての今後を展望したい。 I アカホシカメムシ類 アカホシカメムシ類は全世界の熱帯・亜熱帯を中心に 数多くの種が知られている。一般に中型から大型で,赤, 黒,白を基調とした警告色の目立つ種が多いため古くか ら研究されているが,分類学的な問題を含む種群があ り,正確な種数は不明である。寄主植物として APG 分 類体系のアオイ科(従来のクロンキスト分類体系のキワ タ科 Bombacaceae,アオギリ科 Sterculiaceae,シナノキ 科 Tiliaceae を含む)と深いかかわりを持ち,棉作地域 では重要な害虫となっている種があり,主要作物ではオ
A Prospect for the Control of Cotton Stainer Bugs, Dysdercus spp. (Heteroptera : Pyrrhocoridae), Using a Specific Predator y Bug
Antilochus coquebertii (Heteroptera : Pyrrhocoridae): in Relation to the Transition of the Cotton Pest Fauna in Tropical Asia Associated with the Spreading Cultivation of Bt Cotton. By Katsuyuki KOHNO
(キーワード:Bt ワタ,害虫相,アカホシカメムシ類,ベニホシ カメムシ,生物的防除)
アカホシカメムシ類の防除における
種特異的捕食性天敵ベニホシカメムシへの期待:
Bt ワタ普及による熱帯アジアの棉作害虫相の
変化に伴って
河 野 勝 行
農研機構 野菜花き研究部門 総 説クラ Abelmoschus esculentus,ケナフ Hibiscus cannabinus も加害する(AHMAD and SCHAEFER, 1987)。分類学的研究
として,アフリカ,ヨーロッパ,アジア,オセアニアの 種については FREEMAN(1947),南北アメリカの種につ いては DOESBURG(1968)の総説がある。従来我が国に おいては南西諸島のみから知られていたが,2007 年 10 月に鹿児島県大隅半島の垂水市のオクラとアオギリから アカホシカメムシが確認された(鹿児島県病害虫防除所, 2008)。 アカホシカメムシ類によるワタに対する加害様式は, 吸汁による莢の正常な発達の阻害,種子吸汁による発芽 能力の阻害,排泄物による綿繊維の汚染,莢に感染する 病原微生物の媒介等がある(WITHYCOMBE, 1924;BALLARD
and EVANS, 1928;WILLIAMS, 1934)。いずれも収穫物が被
害を受ける点で,低密度でも経済的な被害は大きい。 寄主植物の生態的特性の違いにより,それぞれの植物 種に依存するアカホシカメムシ類の生活史特性が異な り,生活史型の類型化が試みられている(DERR et al., 1981)。それによれば,非移住者(non-colonizer)は小 型であり,顕著な休眠性や移住性を示さず,空間的にも 時間的にも最も一様に存在する多年生草本あるいは矮性 木本の種子で繁殖する。汎移住者(generalist migrant colonizer)は中型であり,休眠性を示さず,典型的な木 本より種子の脂肪含量が少ないが,時間的により一様に 存在する種子を生産する様々な灌木や木本で繁殖する。 特異的移住者(specialist migrant colonizer)は大型であ り,時間的空間的に限られて存在するものの脂肪分が豊 富な大型の種子を生産する典型的な木本で繁殖し, 条 件が不適になると移動するか休眠する。 我が国に分布する種では,矮性木本であるキンゴジカ Sida rhombifoliaを寄主植物とするヒメアカホシカメム シ D. poecilus(Herrich-Schäffer)は典型的な「非移住者」 である。オオハマボウ Hibiscus tiliaceus とサキシマハマ ボウ Thespesia populnea に強く依存し冬季に繁殖を停止 するシロジュウジホシカメムシ D. decussatus は「特異的 移住者」の特徴を多く示す。南西諸島で時おり採集され る大型種のオオアカホシカメムシ D. fuscomaculatus は詳 しく調べられていないが「特異的移住者」だと思われ,国 内では典型的な木本であるアオギリ Firmiana simplex で の繁殖が前園泰徳博士によって奄美大島で観察されてい る。アカホシカメムシはサキシマフヨウ Hibiscus makinoi, トックリキワタ Ceiba speciosa,オオハマボウ等様々な 寄主植物のそれぞれ異なった結実期に応じて,それぞれ の寄主植物で休眠せずに繁殖する典型的な「汎移住者」 である(図―1;口絵①;KOHNO and BUI THI, 2005)。害虫 として問題になりえるのはアカホシカメムシなどの「汎 移住者」である。 アジアにおいてワタ害虫として問題になっているの は,アカホシカメムシとニセアカホシカメムシ(仮称) D. koenigiiである。両種とも体長 15 mm 前後で,脚の 色彩に若干の違いが認められる程度で,外部形態のみに よる正確な同定は困難であるが,オス把握器の形態の差 異は明瞭である(FREEMAN, 1947 の Figs. 38,39)。 この 2 種は熱帯アジアにおいて地理的にある程度棲み 分けており,ニセアカホシカメムシはより西方のアフガ ニスタン,パキスタン,インド,スリランカ,ミャンマ ーに分布し,アカホシカメムシはより東方のインドから オーストラリア北部に至る東洋区に広く分布し,分布の 図−1 石垣島におけるアカホシカメムシ類 3 種の季節的な寄主植物の利用の推移(概念図) 帯の幅の広さは繁殖の旺盛さを表す(KOHNO and BUI THI, 2005 を改変). 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 月 シロジュウジホシカメムシ ヒメアカホシカメムシ アカホシカメムシ オオハマボウ・サキシマハマボウ サキシマフヨウ ブッソウゲ ムクゲ トックリキワタ・キワタノキ キンゴジカ オオハマボウ・サキシマハマボウ 繁殖休止 繁殖休止 KOHNO and BUI THI(2005)を改変
北端は中国南部,台湾,日本に至る(KERZHNER, 2001)。 インドからミャンマーに至る地域では両種が共存してい ると思われるが,共存地における 2 種の種間関係の詳細 は不明である。 アカホシカメムシは多くの野生寄主植物を持つため, ワタ圃場だけで防除を行っても,野生寄主植物で繁殖し た個体が次々と侵入してくると考えられ,効率的な防除 が難しい。寄主植物の種類によって発育特性は異なり, KOHNO and BUI THI(2004)は室内での飼育実験による生 存率と発育速度をもとに,トックリキワタは極めて好 適,オクラ,リュウキュウトロロアオイ Abelmoschus moschatus,サキシマフヨウ,サキシマハマボウ Thespesia
populnea,アジアワタ Gossypium arboreum は好適,オ
オハマボウはあまり好適ではなく,タカサゴイチビ Abutilon indicumはかなり不適な と判断した。最も好 適なトックリキワタでの発育速度はタカサゴイチビでの それの 2 倍以上である。 寄主植物上では 2 齢以降の幼虫と成虫しか見られず (KOHNO and BUI THI, 2005),野外で卵や 1 齢幼虫はなか なか見つからないが,卵塊は地上の石や木片の下から見 つかった。おそらく主に土の割れ目などの地中に産卵さ れるのだと思われる。卵は淡い黄色で互いに固着してお らず,ゆるい塊になっている。1 齢幼虫は を摂らず, おそらく 2 齢に脱皮してから地上に出現し,その後植物 から吸汁するようになる。 ニセアカホシカメムシの野生種を含む寄主植物の利用 についての報告は見つけられないが,重要なワタ害虫と して位置付けられていることから,アカホシカメムシと 同様に「汎移住者」としての生活史特性を持つものと思 われる。 効率的な防除にあたっては,圃場近辺はもとより,周 辺地域を含めたアカホシカメムシ類による野生寄主植物 の利用状況を把握する必要があろう。東南アジアでもよ く植栽されているキワタ類(Bombax 属,Ceiba 属等) の多くはアカホシカメムシ類にとって好適な寄主植物と 思われるので,棉作地域では植栽を避けるのが望ましい と思われる。 II ベニホシカメムシ ベニホシカメムシ Antilochus coquebertii はインドから インドネシアに至る東洋区,中国南部,台湾,日本に分 布する(KERZHNER, 2001)。我が国では八重山諸島の石垣 島のみから知られていたが,近隣の竹富島からも記録さ れた(河野,2003)。外見は一見アカホシカメムシに似て いるが,全体に艶があってより鮮やかで,アカホシカメ ムシでは黒色の小盾板が本種では地色と同じ赤色である。 体長もアカホシカメムシよりやや大きく 17 mm 前後で, 体型がやや幅広い(口絵②)。食性が詳しく知られるま で国内ではまれな種だと思われていたが,アカホシカメ ムシやシロジュウジホシカメムシが旺盛に繁殖している アオイ科の群落で頻繁に発見されることがわかった。 ホシカメムシ科には植物種子吸汁者が多いが,Dindy-mus属やベニホシカメムシを含む Antilochus 属など,一 部に捕食性が知られている(SCHAEFER, 1999)。ベニホシ カメムシが捕食性であることは古くから知られていたが (例えば,CORBETT, 1923),植食性であると誤認される例
も少なくなかった(例えば,SINGH and TOMAR, 1977)。そ
の背景には,色彩や斑紋等の外見がアカホシカメムシと 似ていることが考えられる。外見が互いに似ており,両 者が食う食われるの関係にある種は,ツツジグンバイ
Stephanitis pyrioidesとグンバイカスミカメ Stethoconus
japonicusの関係(HENR Y et al., 1986;NEAL et al., 1991)な
どが知られているが,互いにホシカメムシ科である例は, ほかにダイフウシホシカメムシ Melamphaus faber とニシ ダホシカメムシ Raxa nishidai の関係がある(NISHIDA et
al., 2001)。 岩田久二雄(1906 ∼ 1994)は第二次世界大戦中,中 国海南島でワタ害虫の研究に従事し,アカホシカメムシ やベニホシカメムシの研究を行ったが,終戦後の混乱の ため資料が行方不明で学術論文となっていない。しか し,一般向けの書籍でアカホシカメムシとそれを捕食す る ベ ニ ホ シ カ メ ム シ に つ い て 記 述 し て い る(岩 田, 1975;1978 a;1978 b)。それによれば,アカホシカメム シを捕食するとき,はじめに背後から 個体に乗りかか って触角窩を口吻で刺し,最初の一撃でアカホシカメム シは麻痺してほとんど動かなくなり,その後じっくり体 液を吸う。筆者の石垣島における観察でも同様であっ た。岩田(1975)によれば,ベニホシカメムシはアカホ シカメムシだけでなくシロアリも食べるとされている が,筆者の観察によれば,ベニホシカメムシとシロアリ 類の典型的な棲息環境は大きく異なっているので,野外 で捕食するかどうかには疑問を感じている。 筆者らはベニホシカメムシの食性について,アカホシ カメムシとの外見の類似性に着目し,赤と黒を基調とし た警告色で外見が似ている複数の科の種を含む 6 科 18 種のカメムシがベニホシカメムシの攻撃の対象になるか を実験室内で調べた。その結果,外見の類似性に関係な く,供試したホシカメムシ科(暗褐色の地味な色彩のダ ルマホシカメムシ Armatillus verrucosus を含む)とホソ ヘリカメムシ科(いずれも暗褐色の地味な色彩)の種す
べてを攻撃したが,ホシカメムシ科に極めて近縁なオオ ホシカメムシ科や,マダラナガカメムシ科,ヘリカメム シ科,ヒメヘリカメムシ科の警告色の種は攻撃しなかっ た(KOHNO et al., 2002)。このことから,ベニホシカメム シが捕食者としてはあまり例がない,極めて狭い食性を 持つことが明らかになった。このことは,本種を生物的 防除資材として利用する際の長所(標的外の種への影響 が小さい)とも短所(代替 種が少ない)ともなりえる。 KOHNO(2003)によれば,本種は低温発育臨界温度が 13℃前後と比較的高いが,高温域では 30℃になると生 存率がやや低下する。アカホシカメムシを として十分 与えた場合のふ化から羽化までの有効積算温度は 607.5 日℃で,25℃では約 10 日の産卵前期間を加えると約 50 日で 1 世代を経過するので,発育は比較的早い。アカホ シカメムシ成虫を毎日 1 匹 として与えた場合,約 100 日(最大 186 日)の間に平均 55 卵(最大 91 卵)からな る卵塊を平均 10 回(最大 20 回)産卵し,平均約 600 卵 (最大 990 卵)産んだ。産卵数に対する 量の影響は調 べられていないが,産卵数は比較的多い。 KOHNO et al.(2004)の野外観察と室内実験によれば, 本種は発育段階に応じて,若齢は若齢の を,成虫や老 齢は成虫や老齢の を好んで捕食する。幼虫の各齢期で 捕食する の数は, が小さければ多く,大きければ少 なく,各齢で捕食する の量には限界がある。成虫が生 涯に捕食する 個体数は調べられていない。 筆者はまだ野外で卵や 1 齢幼虫を観察する機会を得て いない。おそらくアカホシカメムシと同様に地中に産卵 し,2 齢に脱皮してから地上に出現するものと思われる。 III 今 後 の 展 望 ベニホシカメムシの基本的な生活史特性や捕食特性に ついては,これまでの筆者らの報告に加え,最近インド からも報告が出始めた(MUTHUPANDI et al., 2014;EVANGELIN
et al., 2015)。しかしながら,いずれも室内実験に基づ くもので,圃場での防除効果の検討はこれからの課題で ある。 圃場に放飼して防除効果を検討するためには人工的な 大量増殖が必要だと考えられるので,まずその技術を確 立する必要がある。野外の であるアカホシカメムシを にして飼育することは容易であるが(KOHNO, 2003), 大量に飼育するためにはアカホシカメムシを大量増殖す る技術を確立する必要がある。しかし,アカホシカメム シの発育は特に速いとは言えないので(KOHNO and BUI THI, 2004),効率的とは思えない。したがって,代替 や人工飼料を開発する必要があると思われる。 ベニホシカメムシは外見に関係なく特定の分類群のカ メムシ種しか攻撃せず,攻撃の際, 個体の特定の場所 を攻撃することから,捕食行動の解発には の匂いの関 与が示唆されるが(KOHNO et al., 2002),詳細は不明のま まである。そのままでは にならないカメムシ種にその 匂いを付加することにより になる可能性が考えられる し,人工飼料の開発においてもその匂いが重要になる可 能性がある。 筆者らによる飼育の経験では共食いが問題になるとは あまり感じなかった。しかし,主にホシカメムシ科を専 門に捕食するベニホシカメムシ自身がホシカメムシ科で あるため,共食いの問題,例えばどの程度共食いが生じ るのか,あるいは共食いが起こりにくいとすれば,どの ように共食いが避けられているのか,等を明らかにする のも興味深い検討課題である。 南アジアの主要な害虫種であるニセアカホシカメムシ の野生寄主植物での発育や動態に関する報告もないの で,これらについても明らかにする必要がある。 お わ り に アカホシカメムシ類とベニホシカメムシに関する筆者 の研究の多くの部分は,筆者が当時所属していた(独) 国際農林水産業研究センター沖縄支所への外国人研究者 招聘制度で招聘されたベトナム Research Institute for Cotton and Fiber Crops(当時)の BUI Thi Ngan 博士と
の共同研究によっている。前任者の榊原充隆博士と同僚 (当時)の高橋敬一博士からも様々な情報をいただいた。 鹿児島県病害虫防除所(当時)の上門隆洋氏には大隅半 島のアカホシカメムシ発生地をご案内いただいた。前園 泰徳博士には奄美大島におけるオオアカホシカメムシの 繁殖の情報をご提供いただいた。ベトナムにおける調査 で は Research Institute for Cotton and Fiber Crops の 各 氏 な ら び に South Fruit Research Institute(当 時)の HUYNH Tri Duc 氏にお世話になった。また,ベニホシカ
メムシの生物防除資材としての研究が行われるようにな ったことは,パキスタン Central Cotton Research Insti-tute(現在 中国農業大学博士課程)の Syed Ishfaq Ali SHAH氏 お よ び イ ン ド St. Xavier s Collage の Kitherian
SAHAYARAJ博士からの情報提供によって知ることができ
た。農研機構野菜花き研究部門の武田光能博士には投稿 前の本稿に対してコメントをいただいた。この場を借り てお礼申し上げる。
引 用 文 献
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登録が失効した農薬
(29.8.1 ∼ 8.31)
掲載は,種類名,登録番号:商品名(製造者又は輸入者)登録失効年月日。 「殺虫剤」 MPP 乳剤 12989:T−7.5 バイセフト乳剤 50(井筒屋化学産業)17/8/10 MPP 油剤 15823:マウントT−7.5A 油剤(井筒屋化学産業)17/8/10 15824:マウントT−7.5B 油剤(井筒屋化学産業)17/8/10 MEP 乳剤 17141:井筒屋スミパイン乳剤(井筒屋化学産業)17/8/10 メタアルデヒド・NAC 粒剤 22221:野菜ひろばS(富士グリーン)17/8/10 チオジカルブ水和剤 22233:ラービンフロアブル(バイエルクロップサイエンス) 17/8/27 「殺虫殺菌剤」 フィプロニル・イソプロチオラン・ピロキロン粒剤 20235:ローヌ・プーランピカピカ粒剤(BASF ジャパン) 17/8/27 「除草剤」 インダノファン・ピラゾスルフロンエチル・ベンゾビシク ロン粒剤 21530:協友ボス1 キロ粒剤(協友アグリ)17/8/17 インダノファン・ベンスルフロンメチル水和剤 20223:日農クサストップL フロアブル(日本農薬)17/8/24 20224:クサストップL フロアブル(デュポン・プロダクシ ョン・アグリサイエンス)17/8/24 インダノファン・ピラゾスルフロンエチル粒剤 20225:三菱キリフダ1 キロ粒剤(日本農薬)17/8/24 20227:ヤシマキリフダ1 キロ粒剤(協友アグリ)17/8/24 インダノファン水和剤 20233:トレビエース水和剤(日本農薬)17/8/27 DCMU 水和剤 22235:デュポン カーメックスD(アダマ・ジャパン)17/8/27 カフェンストロール・ベンゾビシクロン剤 21542:テロス250 グラム(クミアイ化学工業)17/8/31 21543:SDS テロス 250 グラム(エス・ディー・エス バイオ テック)17/8/31は じ め に 2006 年に広島県のトマトでトマト退緑萎縮ウイロイ ド(TCDVd)(MATSUSHITA et al., 2008),2008 年に福島県 のトマトでジャガイモやせいもウイロイド(PSTVd) (MATSUSHITA et al., 2009)による我が国未発生のウイロイ ド病が相次いで確認された。これら新規ウイロイド病害 は,我が国の重要な農作物であるナス科植物を中心とし て様々な植物に感染し,その多くが無病徴感染であるこ とから,海外から輸入された農作物種苗類を介して国内 に侵入したと疑われている。このことから,TCDVd お よび PSTVd または近縁種の国内未発生のポスピウイロ イドが輸入農作物種苗を介して再び我が国へ侵入するこ とが危惧される。近年の PSTVd をはじめとするポスピ ウイロイドの発生は汚染種子に起因すると示唆されてい るが,これまでに主要品目におけるポスピウイロイドの 種子伝染を網羅的に解析した報告はなく,実際の種子伝 染による感染拡大リスクについては不明であった。ここ ではこれら侵入警戒を要するポスピウイロイドの概要と それらの種子伝染についての研究成果を紹介する。 I 侵入警戒されるポスピウイロイド ウ イ ロ イ ド(viroid)は 環 状 1 本 鎖 の RNA(246 ∼ 399 塩基)のみからなる最小の植物病原体である。ウイ ロイドは感染した宿主植物細胞の遺伝子転写系に依存し て親 RNA から子孫 RNA を自律的に複製・増殖する。 また,ウイルスとは異なり,RNA を包む外被タンパク質 をもたず,その RNA はタンパク質を一切コードしてい ない(佐野,2007)。国際ウイルス分類委員会の第 8 次 報告(International Committee on Taxonomy of Viruses) では,現在のところウイロイドは 2 科,7 属,28 種に分 類されている(佐野,2007)。その中でポスピウイロイ ド科ポスピウイロイド属には,トマト退緑萎縮ウイロイ ド(TCDVd),ジャガイモやせいもウイロイド(PSTVd),
Tomato apical stunt viroid(TASVd),Tomato planta macho viroid(TPMVd),Mexican papita viroid(MPVd),カン
キツエクソコーティスウイロイド(CEVd),キク矮化 ウ イ ロ イ ド(CSVd),Columnea latent viroid(CLVd),
Pepper chat fruit viroid(PCFVd),Iresine viroid 1(IrVd)
があり,これらは IrVd を除き,すべてトマトに感染す る(SINGH et al., 2006)。これらのうち日本国内既発生の ウイロイドは PSTVd および TCDVd,CEVd,CSVd で あ る(日 本 植 物 病 理 学 会 植 物 ウ イ ル ス 分 類 委 員 会, 2014)。し か し な が ら,国 内 未 発 生 種 で あ る TASVd, TPMVd,CLVd,PCFVd は日本へ種苗を輸出している 国において発生しており,汚染種苗に紛れて日本へ侵入 するリスクが高く,種子を介した侵入警戒が必要とされ ている。 1 ジャガイモやせいもウイロイド(PSTVd) PSTVd に感染したジャガイモは塊茎に奇形が生じ, また塊茎収量が減少するなどの病徴を示す。本ウイロイ ドは,我が国の植物防疫法に元づき検疫有害動植物の一 つとして規制対象病害にされている。我が国では,2008 年に福島県のトマトで初めて確認された(MATSUSHITA et al., 2010)。宿主範囲はヒユ科,キク科,ナス科,ムラサ キ科,キキョウ科,ナデシコ科,ヒルガオ科,マツムシソ ウ科,ムクロジ科,ゴマノハグサ科,オミナエシ科等広 範囲にわたる(SINGH et al., 2004;MATSUSHITA et al., 2009)。
近年では,トマトやその他のナス科の園芸植物から多数 検 出 さ れ て い る(LING et al., 2010;MAR N et al., 2012;
2013;HENNING et al., 2013)。トマトに感染すると葉の黄
化や退緑等を示すが,系統によっては極めて軽微な病徴 しか示さない系統もあり(OWENS et al., 1992),外観だけ
では本ウイロイドの病害診断は難しい。 2 トマト退緑萎縮ウイロイド(TCDVd) TCDVd の感染によって引き起こされるトマト退緑萎 縮病は,上位葉の退緑,黄化,えそを伴う葉巻症状,さ らに節間の萎縮による矮化等を生じる。TCDVd は 1999 年に世界で初めて確認された(SINGH et al., 1999)。その 後,米国やインド,英国等から報告が続き,我が国では 2006 年 に 初 め て 広 島 県 の ト マ ト で 確 認 さ れ た (MATSUSHITA et al., 2008)。本病は,ハサミなどの器具に
Seed Transmission of Pospiviroids Concerned to Watch the Inva-sion to Japan. By Yosuke MATSUSHITA, Hironobu YANAGISAWA and
Shinya TSUDA (キーワード:ポスピウイロイド,輸入種子,トマト,ペチュニア)
国内侵入が懸念されるポスピウイロイドの種子伝染
国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 野菜花き研究部門 国立研究開発法人農業・食品産業技術総合研究機構 中央農業研究センター松 下 陽 介
柳 澤 広宣・津田 新哉
研究報告よる栽培管理作業で容易に伝染する。感染トマトの汁液 を健全トマトに接種すると約 3 ∼ 4 週間で縮葉し始め, 黄化症状が顕在化する。これまでの TCDVd の接種試験 ではトマトにおいて PSTVd よりも激しい病徴を示す傾 向にあるが,その発症程度には品種間で差異があり,中 には感染しても激しい病徴を示さない品種もある(広島 県,2010)。 3 (TASVd) TASVd は コ ー ト ジ ボ ア ー ル で 発 見 さ れ,そ の 後, 1987 年に激しい病徴を示すインドネシア系統(DDBJ accession no. X06390)が 報 告 さ れ た(CANDRESSE et al.,
1987)。TASVd に感染したトマトは頂芽の伸長停止や葉 の黄化等を引き起こす。宿主範囲はキク科やナス科等が 知られている(MATSUSHITA et al., 2009)。近年では 2002 年にイスラエルのトマトで,2007 年にセネガルのトマ トで発生が報告されている(CANDRESSE et al., 2007)。さ らに,TCDVd 同様にマルハナバチ(Bombus terrastris) による伝染も確認されている(ANTIGNUS et al., 2007)。
4 (CLVd) CLVd は イ ワ タ バ コ 科 の 植 物 で あ る コ ル ム ネ ア (Columnea erythrophae)から分離されたウイロイドで (HAMMOND et al., 1989)である。CLVd はコルムネアでは 無病徴であるが,ジャガイモでは PSTVd に似た病徴, トマトでは葉の黄化と葉のねじれ等が生じる(NIXON et al., 2009)。CLVd の宿主範囲はトマトやジャガイモのほ かに,Gynura aurantiaca(キク科),Brunfelsia undulata (ナス科),Columnea erythropha(イワタバコ科),Nema-tanthus wettsteinii(イワタバコ科)等が知られている (VERHOEVEN et al., 2004)。 5 (TPMVd) TPMVd は 1974 年に初めて報告され,トマトに感染 すると植物全体の激しい萎縮や葉のねじれ等が生じるこ とが報告されている(GALINDO et al., 1982)。また,バレ イショでは塊茎の奇形が生じ,ピーマンでは果実が変形 する(YANAGISAWA and MATSUSHITA, 2017)。最近になって
MPVd と TPMVd は 90%以上の塩基配列の相同性があ り,この二つのウイロイドは一つの種とすべきとの提案 がなされている(VERHOEVEN et al., 2011)。MPVd としては,
2009 年にカナダおよびメキシコにおいて初めてトマト で発生が確認された(LING et al., 2009 a;2009 b)。
6 (PCFVd)
PCFVd は 2006 年にオランダの甘唐辛子(Capsicum
annuum)から分離・同定された(VERHOEVEN et al., 2009)。
その後,オーストラリアのトマトから検出されている (CHAMBERS et al., 2013)。PCFVd に感染した甘唐辛子は, 果実が小さくなり,生育不良になる。PCFVd に感染し たトマトは葉柄がネクロシスとなり,植物全体が矮化す る。また,バレイショでは塊茎の奇形が生じ,ピーマン では果実が小型化し,ペピーノでは植物全体が矮化する (YANAGISAWA and MATSUSHITA, 2017)。最近になって初めて
同定されたこともあり,国内での発生例はまだないが, 本ウイロイドはピーマンで種子伝染することから今後の 侵入警戒を要する病原体である(VERHOEVEN et al., 2009)。 II ポスピウイロイドの種子伝染 ポスピウイロイドの種子伝染についてはこれまでに, トマトでは品種 Rutgers で伝染率が 4.3%(KR YCZYBSKI et al., 1988),品種 Sheyenne で 2 ∼ 23%に達すると報 告されている(SINGH, 1970)。また,バレイショの種子 伝染では 35 ∼ 66%に達すると報告されている(SINGH
et al., 1970)。TASVd はトマトで(ANTIGNUS et al., 2007),
PCFVd は甘唐辛子(Capsicum annuum)での種子伝染 が確認されている(VERHOEVEN et al., 2009)。我々はウイ ロイド 6 種(PSTVd,TCDVd,CLVd,TASVd,TPMVd, PCFVd)について,種子輸入量が多く,重要品目であ る感染宿主となった植物種について種子伝染評価を実施 した(表―1)。各植物にウイロイドを接種し,感染を確 認した後に開花させて種子を回収した。いずれの植物に おいても温室内での自然交配で種子を得た。種子伝染試 験は,試験種子を健全土に直接播種し,発芽苗を 30 ∼ 40 日育成して,ウイロイド感染の有無を RT―PCR 検定 によって調べた。また,RT―PCR 検定において陽性とな った苗の一部をトマト品種 Rutgers へ戻し接種してウ イロイド感染の確認を行った。その結果,PSTVd はト マト,ピーマン,シシトウ,シュンギク,ペチュニア, TCDVd ではペチュニア,CLVd ではトマト,TPMVd お よび PCFVd ではペチュニアにおいてそれぞれ種子伝染 が確認された(表―1,MATSUSHITA et al., 2016;YANAGISAWA
and MATSUSHITA, 2017)。PSTVd とトマトの組合せを見る と,種子伝染率における品種間差が見られた。また,非 常に低率ではあるがピーマンやシシトウ,シュンギクに おいても PSTVd の種子伝染が確認された。一連の接種 試験において,トマトで CLVd や TPMVd,PCFVd の種 子伝染が確認されたことから,既報の種子伝染事例を含 めると PSTVd をはじめとするほとんどのポスピウイロ イドがトマトにおいて種子伝染することが示された。 III ポスピウイロイドの種子伝染の機構 ウイロイドの種子伝染機構についてはこれまで全く知 られておらず,種子形成時におけるウイロイドの動態お
よび汚染種子におけるウイロイドの感染部位については 不明であった。我々は PSTVd に感染したペチュニアを 用いて,花芽形成から受粉後の種子形成に至るまでのウ イロイドの分布について明らかにした(MATSUSHITA and TSUDA, 2014)。材料として PSTVd に感染したペチュニア の花芽から種子までの各発達過程のサンプルを用い, FAA(Formalin/Acetic acid/Alcohol)によって固定して パラフィン切片を作製した。PSTVd 特異的プローブを 用いた in situ hybridization により,その切片における ウイロイドの感染分布を光学顕微鏡で観察した。その結 果,PSTVd は花芽形成時においてすでに分裂組織以外 の組織に感染していた(図―1B)。発達中の花芽では未 分化の胚のう組織を除くすべての組織で PSTVd の感染 が認められ,開花期においては胎座および胚珠といった 生殖組織での感染が認められた(図―1C,D)。さらに胚 の元となる卵細胞がすでに感染しており(図―1E),こ のことが PSTVd の種子伝染の要因の一つであると思わ れた。受粉後の過程においては,まず胚のう組織が発達 し始める過程においてはまだその組織内には PSTVd の シグナルが見えないが(図―1F),種子形成期に発生し た胚や胚乳において徐々に PSTVd の感染が認められ (図―1G),成熟した種子では胚と一部の胚乳組織でその 存在が観察された(図―1H)。したがって,PSTVd の種 子伝染は胚が汚染されることによって生じることが示さ れた。 次にペチュニアにおける花粉伝染時の種子発達過程に おける PSTVd の組織局在性を明らかにするために健全 個体に感染花粉を受粉させ,上記と同様の方法で受粉直 後から種子形成までの過程を in situ hybridization によ り観察した。その結果,PSTVd 汚染花粉を受けた個体 の 受 粉 前 の 胚 珠 お よ び 受 粉 直 後 の 胚 珠 に お い て は PSTVd の感染は見られなかったが,胚と胚乳の発達に 伴い,それら組織において PSTVd の感染が見られた。 したがって,ペチュニアにおける PSTVd の花粉伝染は, 花粉由来の PSTVd が胚に感染して起こる伝染であるこ とが示された。ところで,次世代の組織である胚および 胚乳では PSTVd の感染が種子発達後期においても見ら れたが,雌由来の組織である柔細胞や種皮においては PSTVd の感染は確認されなかった。これは,花粉由来 の PSTVd は次世代組織には感染するが,雌由来の組織 には侵入しないことを示していると考えられる。 一般的にウイルスにおいては,①初めからウイルスが 卵細胞に感染しており,卵細胞が発達して生じた胚がウ イルスに感染したまま,種子伝染するパターン(間接侵 入)と,②卵細胞や胚珠等にはウイルスは感染しておら ず,ウイルスが周辺細胞から受精後の胚へ直接侵入する ことで胚が汚染され,種子伝染するパターン(直接侵入) の 2 パ タ ー ン が 知 ら れ て い る(MINK, 1993)。今 回 の 表− 1 PSTVd,TCDVd,TASVd,CLVd,TPMVd,PCFVd に感染した植物における種子伝染 植物種 品種 ウイロイド PSTVd No. EU862231 TCDVd No. AB329668 CLVd No. AM777161 TASVd No. AY373446 TPMVd No. GQ131573 PCFVd No. HQ731652 トマト A 6/136 34/638 0/783 13/297 3/182 B 1/11 C 0/6 0/141 0/468 D 67/91 10/10 E 37/41 2/4 0/92 0/407 0/392 F 0/232 0/214 G 0/103 0/153 ナス A 0/1014 B 0/223 0/243 ピーマン 4/1105 0/1105 0/46 0/46 トウガラシ 0/559 シシトウ 3/566 シュンギク 10/805 0/970 0/911 0/1107 フレンチマリーゴールド 0/151 0/42 ペチュニア A 15/29 22/126 26/155 B 94/116 7/28 C 15/31 0/51 a DDBJ accession no. b PCR 陽性個体数/PCR 検定個体数. a b
PSTVd の種子伝染機構の解明により,PSTVd 種子伝染 は間接侵入による種子伝染であることが判明した。 また,花粉を介した病原体の伝染方法は垂直伝染と水 平伝染とあり,前者は汚染花粉を介して後代へ病原体が 伝染することを指し,後者は汚染花粉を介して受粉した 母体が病原体に感染することを意味する(CARD et al., 2007)。本試験では汚染受粉を受けた個体からは PSTVd は検出されなかったことから,ペチュニアにおいては PSTVd の花粉を介した垂直伝染は起こるが,水平伝染 は起こらないと考えられた。一方で,TPMVd に感染し たペチュニアでは水平伝染が確認されており(柳澤ら, 2016),ウイロイド種と感染植物種との組合せ次第では 水平伝染が起こる可能性が示唆された。 お わ り に 本試験によりトマトやペチュニア等においてポスピウ イロイドは高率に種子伝染することが示された。海外か ら日本へ膨大な量の種子が輸入されていることから,ポ スピウイロイドの侵入を防ぐためには輸入種子の検査が 必要である。ウイロイドは種子の内部に感染しているこ とから,種子の破壊検査は必須であることがわかる。し たがって,輸入種子検査に対応したウイロイド検査系の 導入が必要となる。検査系の開発については本号の別項 にて紹介する。また,今回は垂直伝染について紹介した が,水平伝染によるウイロイドの伝染についてはほとん ど情報がない。ウイロイドは自然界においては種子伝染 以外に伝播する手段がないことを考えると,花粉を介し た水平伝染はウイロイドにとって重要な伝播手段である と考えられる。したがって,花粉の水平伝染を通じたポ スピウイロイドの圃場内における伝播についても留意す る必要がある。 本記事は,平成 23 年度レギュラトリーサイエンス新 技術開発事業(課題番号:2309)「我が国の重要な農作 物に被害を与えるウイロイド病の侵入リスク管理措置の 確立」および農林水産省平成 27 年度委託プロジェクト 研究「温暖化適応・異常気象対応のための研究開発」「有 害動植物の検出・同定技術の開発」によって実施された 成果の一部を掲載している。 引 用 文 献
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新しく登録された農薬
(29.8.1 ∼ 8.31)
掲載は,種類名,登録番号:商品名(製造者又は輸入者)登録年月日,有効成分:含有量,対象作物:対象病害虫:使用 時期等。ただし,除草剤・植物成長調整剤については,適用作物,適用雑草等を記載。 「殺虫剤」 フルオピラム粒剤 23961:ビーラム粒剤(バイエルクロップサイエンス)17/8/9 23962:ネマクリーン粒剤(日本農薬)17/8/9 フルオピラム:0.50% ばれいしょ:ジャガイモシストセンチュウ:植付前 かんしょ:ネコブセンチュウ:植付前 だいこん:ネグサレセンチュウ:は種前 にんにく:イモグサレセンチュウ:植付前 「除草剤」 ベンタゾン粒剤 23963:日農バサグラン粒剤(ナトリウム塩)(日本農薬)17/8/9 ベンタゾン:11.0% 移植水稲:マツバイ,ホタルイ,ウリカワ,ミズガヤツリ, ヘラオモダカ,オモダカ,クログワイ,エゾノサヤヌカグ サ,シズイ,水田一年生雑草(イネ科を除く) 直播水稲:水田一年生雑草(イネ科を除く),マツバイ,ホ タルイ,ウリカワ,ミズガヤツリ,ヘラオモダカ ベンタゾン液剤 23964:日農バサグラン液剤(ナトリウム塩)(日本農薬)17/8/9 ベンタゾン:40.0% 移植水稲:マツバイ,ホタルイ,ウリカワ,ミズガヤツリ, ヘラオモダカ,オモダカ,クログワイ,コウキヤガラ,エ ゾノサヤヌカグサ,シズイ,クサネム,水田一年生雑草(イ ネ科を除く) 直播水稲:水田一年生雑草(イネ科を除く),マツバイ,ホ タルイ,ウリカワ,オモダカ,ミズガヤツリ,ヘラオモダ カ,クログワイ たまねぎ(春播移植栽培),たまねぎ(秋播移植栽培),らっ きょう,いんげんまめ,えんどうまめ,実えんどう,さや えんどう,とうもろこし,飼料用とうもろこし,ソルガム, 麦類(小麦を除く),小麦,はとむぎ,べにばないんげん, せり:一年生雑草(イネ科を除く) グルホシネート液剤 23965:バスタ プロ液剤(バイエルクロップサイエンス) 17/8/30 グルホシネート:18.5% 小麦,大麦,そば,いちじく,キャベツ,はくさい,きゅうり, なす,ピーマン,とうがらし類,トマト,ミニトマト,い ちご,すいか,ねぎ,たまねぎ,ブロッコリー,ズッキーニ, にがうり,だいこん,はつかだいこん,たかな,ほうれん そう,みつば,みしまさいこ,メロン,レタス,非結球レ タス,かぼちゃ,ごぼう,にんじん,オクラ,アスパラガス, さといも,やまのいも,かんしょ,こんにゃく,ばれいし ょ,豆類(種実、ただし、だいずを除く),だいず,えだ まめ,なばな,かぶ,にら,さやいんげん,さやえんどう, 実えんどう,未成熟そらまめ,しろうり,ほうきぎ,にん にく,しょうが,葉しょうが,食用ぎく,水田作物,水田 作物(水田刈跡),セルリー,しそ(花穂),食用桑(葉), 食用桑(果実),パセリ,もりあざみ,ふき,ふき(ふき のとう),たけのこ,たらのき,なたね,茶,花き類・観 葉植物,樹木類,日本芝(こうらいしば),たばこ,桑: 一年生雑草 かんきつ,りんご,ぶどう,なし,おうとう,かき,もも, 小粒核果類,ネクタリン,ブルーベリー,びわ,キウイフ ルーツ,いちょう(種子),くり,水田作物(水田畦畔), 水田作物(休耕田),さんしょう(果実),樹木等:一年生 雑草,多年生雑草は じ め に 我が国の園芸作物のうちトマトは生産量がもっとも多 く重要な作物である。トマトを含むナス科作物にはほか にもバレイショ,ピーマン,ナス等の主要な作物が含ま れている(農林水産省「野菜生産出荷統計」)。これらナ ス科作物の減収を生じさせる要因として病害があり,多 数の病原体の存在が知られている。植物病原体の一種で あるウイロイドは,ポスピウイロイド科とアブサンウイ ロイド科に大別される。そのうち,ポスピウイロイド科 のポスピウイロイド属に分類されるウイロイドはジャガ イモやせいもウイロイド(PSTVd)を代表種としてこれ までに 10 種類が報告されている(SERIO et al., 2014)。そ れらのほとんどはナス科作物に感染し,日本を含め多く の国々で被害が報告され,トマト生産にも世界的に大き な被害をもたらしている。これらウイロイドの主な伝染 経路には,接触伝染,接ぎ木伝染等の物理的伝染のほか に,種子伝染,または花粉伝染により感染拡大すること が知られている。農作物の安定生産には,第一に健全な 種苗を用いることが重要なポイントであり,万が一ウイ ロイドが混入した種子を使用した場合には感染苗のみの 被害ではとどまらず,圃場内での芽掻きなどの管理作業 により周辺の健全苗に伝染し被害を拡大させる恐れがあ る。そのため,種子がウイロイドに汚染されていないこ とをチェックすることが重視されてくるようになった。 ウイロイドはウイルスと異なり,環状一本鎖の RNA のみから構成される病原体であるため,これまでの検出 法は RNA をターゲットとした RT―PCR 法が主に用いら れてきた。これまで開発されてきた検出法はいずれもポ スピウイロイド属の一部のウイロイド検出法でしかなか った。しかしながら,ポスピウイロイド属に分類するす べてのウイロイドがトマトに感染するため,一部を対象 とした検出法ではほかのウイロイドを見逃してしまう危 険性が生じる。したがって,なるべく多くのポスピウイ ロイドを検出することが求められている。 これまでの検出法は感度の向上や省力化を目的に改良 されてきた。リアルタイム PCR 法を基盤とした検出法 も複数存在する。しかし,これらの検出法は先述したと おりポスピウイロイドの一部の種は検出できるが,全種 をカバーするものではなかった。そのため,異なるポス ピウイロイドの検出系を組合せることで全種類のポスピ ウイロイドの検出に対応してきた。これらの検出系のう ちのいくつかは一回の検査で複数種のウイロイドを同時 に検出することができるが,いずれもウイロイド種まで 同定できない。したがって,種の確定までを必要とする 植物防疫の現場などでは塩基配列まで解析しなければな らなかった。 以上のことから,トマトに感染し被害を引き起こす 8 種のポスピウイロイドを検出し,さらに特別な機器を必 要とせずウイロイドの種類までを同時に特定する新たな 検出系を開発したので本稿で紹介する。 I トマトにおけるポスピウイロイドの 近年の発生状況 ポスピウイロイド属には,PSTVd,トマト退緑萎縮ウ イロイド(TCDVd),キク矮化ウイロイド(CSVd),カ ンキツエクソコーティスウイロイド(CEVd),Tomato
apical stunt viroid(TASVd),Tomato planta macho viroid
(TPMVd),Mexican papita viroid(MPVd),Columnea
latent viroid(CLVd),Peper chat fluit viroid(PCFVd),
Iresine viroid 1 の計 10 種がこれまで報告されたが,そ の後 VERHOEVEN et al.(2011)により TPMVd と MPVd は 遺伝子配列および宿主範囲に相違がないことから同種と する提案がなされており,本誌では TPMVd に MPVd を含め以降の説明を行うこととする。 これらウイロイドはいずれがトマトに感染しても,退 緑,葉巻症状を伴いながら著しく矮化を引き起こし,最 終的には,果実形成を阻害し甚大な経済的被害をもたら す。近年において,世界各地のトマト生産圃場でポスピ
Development and Availability of Detection Methods of Eight Pospiviroids. By Hironobu YANAGISAWA, Shinya TSUDA, Yosuke
MATSUSHITA and Yusuke SHIKI
(キーワード:ポスピウイロイド,同時検出,トマト,種子)