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(シンポジウム スポーツ医学の現在と未来)スポーツと老化

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シンポジウム

スポーツ医学の現在と未来

スポーツと老化

東京女子医科大学   イ    トウ

  伊 藤

整形外科学教室 タツ    オ

達 雄

(受付平成6年2月5日)  1.はじめに  スポーツというと一般にはテレビ,新聞などに 報道される華やかな競技スポーツと,ジョギング, テニス,ゴルフなど身近に参加できる運動として のスポーツを思い浮かべます.スポーツを辞書で 調べると「日常生活を離れて楽しむ諸種の運動・ 球技や登山など」(三省堂),他に運動競技,狩り, 釣り,楽しみ,気晴し,娯楽などの意味もありま す.我々整形外科医にとっては,①過度の専門的 な運動による骨・関節疾患などのいわゆるスポー ツ障害,②趣味的に楽しむスポーツのほかに,③ 各個人の体力・体格に合った適度な運動療法とし てのスポーツ,すなわち障害の原因と,健康維持 の手段としてのものであります.ここでは体力・ 気力の維持,あるいぼ老化による衰えの予防と いった見地でスポーツをとりあげます.  ところで1993年10月10日,体育の日の新聞には 全国の小学校1年生から59歳までの約7万6,000 人を対象とした体力,運動能力の文部省調査が報 じられました.その結果9年前に比較して小学生 では瞬発力の目安とされる走る,跳ぶ,投げるの いずれの体力も低下しており,十代は身体の柔軟 性が失われ,壮年でも体力アップは頭打ちとのこ とでありました.栄養および生活環境の改善によ り体格は向上しているのに対し,運動能力,体力 はむしろ低下しつつあり,その原因として都会で は広場が少なくなって走りまわる・キャッチボー ルなど日常生活中での戸外の運動機会が少なく なっていることが指摘され,また壮年層に対して はバランスのとれた運動が必要との指摘もされて いる.  2.年齢とからだの変化  ヒトの体力・体格の加齢性の変化を図1に示し た.平衡性・敏しょう性・持久力は10歳代にピー クがあり,筋力・体格は20歳代にピークがあり, 35歳をすぎるといずれの能力も下降線を描いてく る.手指の能力,巧緻性などは20∼40歳でピーク に達し,50歳を越えると低下が目立って来る.視 力も50歳より老眼が目立ち,60歳を過ぎると耳の 能力と共に低下が顕著となる.知的・精神的にも 30玉代での充実から50歳を越えて低下が始まり, 70歳を過ぎると気力の衰えが明らかとなり痴呆も 始まる.つまり,知的能力が比較的高齢まで保た れるのに対し,運動能力は40歳頃を境に,年齢と 共に下落傾向は強くなります.  整形外科的にこれら加齢性変化をみると,一つ は骨・関節・筋・腱・靱帯など運動器の退行変性 であり,これは通常変形性関節症と呼ばれる.特 に問題となる部位は股・膝・足関節などの荷重関 節と,腰椎・頸椎部を中心とする脊柱(脊椎症あ るいは変形性脊椎症と呼ばれる)である.他の一 つは骨粗髪症であり,これは骨量の減少と共に脆 Tatsuo ITO〔Department of Orthopedic Surgery, Tokyo Women’s Medical College〕:Sports and aging changes

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年齢とからだの変化  3三11・・』 心身機能・運動機能の変化  男性一 女性一 ■持久力

㍉ 嘔持久力 ■敏しょう性 塞平衝性 騒平衝性 曝筋 力 贋筋 力 ●気力が失われやすい  ●白内随などの眼の病冤の  ○老眼がはじまる     ■視ヵが低下しはじめる ●視力のピーク      ●道徳的に、良い悪いの  ●単語が ●日常会話にも大声が   罹(り)患率が90%に(70歳) ●耳が還くなりはじめる   ●総合的・システム的な ●記憶力が強い      判断ができるようになる   書えるようになる 必要になる      ●老眼鏡が手ばなせなくなる ●早起きになる      創造ヵが強い    ●直感、ひらめきのピーク  ●腕、肩などの筋肉の調節 ●つかまり歩きが ●水遭のカランやドアノブ ●高い音が聞き取りにくくなる ●寒がりになる      ●肉体的、精神的な   (15∼20歳〉      能力が急速に伸びる   できるようになる が回しづら(なる   ●行動がスローベースになる ●手作彙の効睾が低下する 持久力が強い   ■細かい手作業やスピー ●杖や壁に頼って歩行する ●浴槽の出入りに手すりが       ディな作巣の効串が最大        必要になる       図1 年齢とからだの変化 弱化し,転倒などの軽微な外傷により大腿骨頸部 骨,脊椎圧迫骨折をもたらし,現在社会問題とな りつつある.  3.歩かない生活  現代の日本は高度に発達した文明社会にあると いえ,日常生活中での移動は,自動車,電車など 乗物を用い,建物内での上下の動きもエレベー ター,エスカレーターを利用し,連続して30分間 歩くことは非常に少ない.また仕事のうえでも高 度に分業した作業を同一姿勢で行っていることが 多く,動物という視点から考えると極めて偏った

動作を長時間行っていることとなる.これは

チャップリン製作による映画「モダンタイムズ」 に描かれていたごとく人間が社会という大きな機 械の中の一つの歯車となっているのと同様であ る.すなわちバランスのとれた運動をこなしてい るとはいえない.以上のごとく歩かない,そして 一定の作業のみをこなす現代人では運動不足は否 めない事実であり,ここに加齢による運動能力の 欠除,栄養の過多が加わり,肥満,筋力低下が促 進される.結果的に歩かない生活は下肢の筋力低 下のみならず全身の筋萎縮,スタミナ不足,関節 機能低下など運動器の老化および,気力低下,心 肺機能低下,骨:量減少を生じ,ひいては高血圧, 心臓病,糖尿病などの疾患を発生あるいは増悪を もたらすこととなり,ますます全身的な老化を促 進させ,心理的な影響と共に老け込み,悪循環を 形成する(図2).  スポーツは競う楽しみ,終了後には心地よい疲 労感と共に闘争心あるいは記録への満足感,気 力・体力の充実感などの心身への楽しみの要素が ある.一方記録への挑戦,勝負への執着は時とし て過激な:スポーツ活動へと導き,運動器の障害へ 発展する.特に成長時;期での無理な練習,試合は まだ完成してない骨・関節を損傷し,将来の芽を 摘み取ることになるので,かならず十分な休息と 回復期間を与えつつスポーツ活動に参加させるこ とが重要となる.成人においても同様であり,例

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ノ∫日 齢 健康状態の悪化 心臓病・高血圧など  痛み・苦しみ さらに運動量が減る 運動量の減少 身体の活力の低下 体脂肪量の増加  筋肉の衰え  桂会的・心理的な老化   老けたと自覚する 年齢相応にふるまおうとする   不安が高まる   自信がなくなる 図2 加齢と運動量の減少という悪循環 えぽプロ選手にみられる野球肘,ジャンパー膝な どいわぽ職業病となる可能性を含んでいる.しか し十分な休息,全身の運動器をバランスよく用い る適度なスポーツの継続は,心肺機能を含めた運 動能力の低下を防ぐのみならず,心理面での好影 響もあり,老化防止,健康維持に有用となる.す なおちスポーツは「両刃の刃」的な側面を持つ.  4.運動療法  一口に運動療法といっても,その内容は広く, 対応する英語ではtherapeutic exercise, physical exercise, medical exercise, corrective therapy など種々あり,ニュアンスも少しずつ異なる.特 殊な疾患に対する治療的な面あるいは,術後管理 的な面の強いものから,疾患の予防あるいは健康 維持のためのもの,あるいぼ特殊な運動能力を獲 得するものなどまで多岐にわたる.従って筋力増 大,関節可動性増大,巧緻性獲得など運動の目的 も多様となる.  一般に運動療法の対象側の段階としては,①感 受性のある段階:ある疾患にかかりやすい感受性 または危険因子が存在する状況であり,生活環境 よりζれらの因子を除去すると共に,適度の身体 運動により抵抗力を強め,疾病予防に役立てる. 第一次予防である.②無症状でも病理変化のある 段階:自覚症状は無くとも,すでに病理変化が生 じている状況で,早期発見,早期治療により進行 を止めるあるいは遅らせることがでぎる.第二次 予防である.1③症状も明らかとなる段階:疾病治 療のための全身的な安静強制により心身機能の低 下(廃用性症候群)を招くことがあり,疾患の治 療に支障のない範囲での適度な運動により試用性 機能低下の軽減,進行防止を悟る.④疾病による 能力低下が生じた段階:障害された機能の回復あ るいは代償機能の獲得であり,いわゆるリハビリ テーション医療の段階であり,専門職による機能 訓練を中心とする運動療法が行われるD.  老化予防,健康維持という見地からのスポーツ を運動療法の見地で考えると前述の①,②および ③の一部までの段階までが適応となり,その後の 段階は医療機関での専門治療になる.  また運動には自動運動(active exercise)と他 動運動(passive exercise)があり,前者は自己の 関節作動筋の収縮による運動をいい,後者は他人 を含む他の筋力により動くことを示し,治療的側 面が大きい.以下自動運動を主体にトレーニング につき述べる.  1)筋力トレーニング  筋線維は3種類に大別される2).SO線維(slow oxidative飾er:type I)は収縮速度は遅いが持久 性にすぐれており,エネルギーは有酸素性である. FG線維(fast glycolytidber:type Ilb)は速く 収縮し,収縮力も大きいが疲労しやすく,非乳酸+

乳酸性である.FOG線維(fast oxidative−

glycolytidber:type Ila)1ま前二者の中間の性質 を有している.一つの筋ではこれらのタイプの異 なる筋線維が混在しており,一般に抗重力筋,呼 吸筋など耐久性が要求される筋ではSO線維が多 く,赤筋とも呼ばれる.一方手指などの素早い運 動を要求される筋ではFG線維の比率が多く,白 血と呼ばれる.最大筋力の20%以下の弱い力を要 する場合はSO線維が主体となり,最大筋力を要 する場合は最初よりFG線維が働くとされる.筋 は廃用により萎縮を,運動負荷により肥大を示す が,これは個々の筋線維が萎縮,肥大を生じた結 果であり,筋線維数の増減は起こらない.そして FG線維は萎縮,肥大が生じやすく,SO線維は面

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に萎縮,肥大などの変化を示しにくい特徴を有し ている.一般に筋肉は最大収縮力の20∼30%を発 揮していれば萎縮を生じないものとされる.また 筋力は筋の断面積に比例しており,四肢の周径測 定,あるいはCTなどにより筋力の増減を予測可 能である.  運動療法としての筋力トレーニングは以下の3 方法に分けられる2).  (1)三尺性トレーニング(isometric exer− cise):筋肉の長さの変化を伴わない筋収縮であ り,当然関節運動を伴わない.代表的なものは大 腿四頭筋セッティング運動である.この方法の長 所は特別な装置を必要としなく,訓練時間も少な く,二次的な筋損傷を生じにくく,また関節に痺 痛などの問題があっても可能であることである. しかし関節運動を伴わないことは運動能力の向上 には有用とならない短所を持つ.1回目収縮は最 大筋力の30∼40%以上,5秒程度がよい.  (2)等張性トレーニング(isotonic exercise): 一定の筋緊張力のもとで関節運動を伴う筋収縮で あり,通常手や足に重三をもたせて関節運動を行 う.本法の長所は関節運動を伴うので動作の巧緻 性の改善など運動能力の向上,関節可動域の向上 をもたらすこと,および訓練者の意欲を高めるこ とである.短所は関節障害があれぽ施行困難とな ること,二次的筋損傷を生じやすいことである. 筋力増大のためには最大筋力の2/3以上の負荷を 与える必要があるとされる.  (3)等運動性トレーニング(isokinetic exer− cise):一定の角速度での筋収縮であり,専用の特 殊な器械(cybex machineなど)を必要とする. この器械には筋力の大小に関わりなく一定の角速 度で動くように設定できるアームがあり,訓練者 はこのアームを押したり,引いたりしながら運動 する.この方法は前二者の特徴を合わせもつとさ れ,長所としては関節可動域の全範囲にわたって 筋に十分な抵抗力を加えることができ,また角速 度を速く設定すれぽ十分な筋力増大を企てること ができ,高度な要求に応じることが可能となる, 短所は高価な器械を必要とすることであり,訓練 する筋ごとに条件をセットしなければならないこ とである.  2)水中運動  水中での運動は水の浮力により,特に下肢など の関節への体重負荷による悪影響がほぼ解消さ れ,自由な運動が可能となり,また水平姿勢を取 ることが可能で,抗重力筋のリラクゼーションが 得られやすくなる.そして水中での歩行を含め, すべての運動は大きな水の抵抗力により大きな運 動量を必要とするため,筋力強化としての効果が 大きくなるのみならず,エネルギー消費も大きく なり,体重減少にも有用となる.そのうえ水中運 動は左右対称,上下肢,体幹を含む全身運動であ り,ある一定の部位に過剰な負担をかけることの ない,バランスのとれた有酸素運動である.また 水圧を克服する努力呼吸により呼吸機能向上,お よび水温調節により温熱効果あるいは冷却効果が 得られるなど,地上の運動とは異なる利点を持つ. その結果,患部の骨関節,および筋腱などの運動 器の二次的損傷の危険性が少なくなる鋤.  水中運動としては,地上での準備体操につづい て水中での関節授動運動,軟部組織ストレッチ運 動,水中歩行などの有酸素運動,ジャンプ,キッ クなどの筋力増強運動,水泳などからなる(図3).  3)変形性関節症に対する運動  運動器の老化現象は荷重関節の変形性関節症と して生じやすい.関節軟骨の変性,滑動性の低下, 軟骨山骨の硬化,関節周辺の骨棘増成などを伴い つつ,関節痛,関節周辺の違和感,可動域制限, 運動時の異音や軋音,関節水腫などの症状を呈し て来る.特に下肢荷重関節では歩きはじめの癖痛 が特徴的であり,やがて歩行痛,階段昇降時の吐 気,歩行困難となり,膝の屈伸,起立時の困難感 などに発展し,正座不能などに至る.本疾患を生 じやすい素因として,加齢,体重,活動性など全 身性の因子の他に,当該関節の先天異常,外傷, 炎症,隣接関節の疾患の有無など局所性因子存在 の関与も大きい.  股関節,膝関節など下肢荷重関節を中心に述べ る.原因の多くは関節周辺,特に大轡筋,中二筋, 大腿四頭筋など下肢重三筋の筋力低下に基づく関 節不安定性,関節の屈曲,内転拘縮と,体重増加

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      1 ■  陛1 鋳i 書受重ノ,運重力 ①クロスサイドステップ   ②股関鰍糊ト運動 (大殿筋,中殿筋の陣張)   (内転筋群,内側広筋の伸張) ρ      ・塵= 2.軟部組織伸彊運動   ①たまご浮き (大殿筋,広背筋,膝屈筋 の伸張) 織、 蓑 ” 距 ②大腿四頭筋ストレッチング   (大腿四頭筋の伸張) ◎

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頭筋の強化)        腓腹筋の強化) 図3 水中運動 エ’盗 QQ  ヲ き 、㌃ 4.有酸索・性運動   ①パックキック (腹直筋,大殿筋,大腿四頭筋, 広背筋の強化) 奪 麹 弾 、) ②ビートフロントウォーク (全身のウォームアップと  クールダウン)    r/    1   ノ   ノ  〆/.\、 1「 1 / /、、劉    、、  r ノ

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へき 膝屈筋群・アキレス腱のストレッチ運動      股内転筋のストレッチ運動       図4 股および膝関節のストレッチ運動

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である.運動としては,①股および膝関節のスト レッチ運動(図4),②伸筋群,外転筋群の筋力強 化,を行いつつ,体重減少を目指し,食事,運動 のコントロールを行い,関節痛のため体動困難が あれば杖などを用いる.  具体的には入浴あるいはホットパックにて局所 を暖めた後,股関節の外転,伸展および,膝の伸 展,屈曲のストレッチ運動を行う.次いで筋力強 化に移る.  膝の主動作筋である大腿四頭筋の訓練は,椅子 に腰掛けて,左右片方ずつ足をあげ,膝を完全に 伸展する(等張性運動).この時伸展はカー杯行い, 大腿前面にある四頭筋が硬くなることを手で触れ て確認し,5秒つづけたら,対側にうつると筋力 増強効果はさらに高まる.また床上などにて初め から膝を伸展した肢位にて足関節を背屈しつつ, 膝を絞るような感じで膝関節を完全伸展する運動 を大腿四頭筋セッティング運動といい,これは等 尺運動であり,関節運動を伴わないため,いつで もどこでも行える簡便な運動である.これも筋収 縮を触れつつ5秒間ずつ左右交互に行う(図5).  股関節の主動二筋である中二筋,大三筋は二二 起立位にて足を外方,あるいは後方へ振り出し, 5秒間維持する.また膝伸展のまま側臥位にて下 肢の外方挙上,背臥位にて前方挙上,腹臥位での 後方挙上はさらに筋力増強効果が大きい.これら の下肢筋力増強運動は,各方向への運動10回を1 セットとして,少な:くとも起床時,入浴後,就寝 前など1日3セットを,ストレッチ体操と共に行 うことが望ましい.さらに筋力増強を考えるなら ぽ,1日5セット位にすると共に,.足部に1∼5kg 位の重量物(靴,スキー靴,砂袋など)を付加す ることにより達成される.  水中運動は,これら下肢関節症の予防,治療に 大きな効果がある.水中での関節ストレッチ運動 としてクロスサイドステップ,股関節開排,膝曲 げ運動を行い,サイドキック,プール底からのジャ ンプ,水中歩行など下肢筋力増強運動を行う.そ の後,ゆっくりした水泳,ビート板利用のバタ足 などの有酸素運動が効果的とされる.これらは 30∼60分間の運動と15∼30分間の水泳などより成 り,1週間に1∼2回位が適当である(図3).  その他下肢運動としては自転車こぎも関節への 負担が比較的少ないので適している.  4)五十肩,肩関節周囲炎に対する運動  この疾患は人体のうちで最も可動域が大きく, 運動種類が屈曲・伸展・外転・内転,外旋・内旋 など多くにわたり,かつ使用頻度の高く,靱帯・ 腱の重要性の高い関節である肩関節に生ずる変性 疾患である.50歳代よりよくみられ,肩周辺の腱, 靱帯,関節包の外傷,変性などに基づく有痛性の 炎症であり,癒着を伴い関節拘縮に陥りやすい.

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図5 大腿四頭筋等張運動(左)と大腿四頭筋等尺運動(大腿四頭筋セッティング運  動)

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洗髪,整髪動作,ベルト通し動作,物を持ち上げ る動作などが落痛のため困難となる.治療は可動 域を増加させる運動が主体となり,激痛があれぽ ブロック,投薬も用いる.  まずは局所にホットパック,入浴などにて温熱 を加えた後に,立位にて手を前後方向へ振る.そ して可能ならぼ内外側への振り子運動を行う.こ の際に1∼3kgの重錘,アイロンなどを握りながら 運動を痛みのこらえられる範囲にて行う(コッド マン体操;図6).これらの体操は10分間を1セッ トとし,1日3∼5回行う.また,肩巾位の棒を 両手に握り,痛くない方の上肢にて押したり,引 いたりしながら患側上肢の挙上運動,背臥位での バンザイにて枕の上まで両上肢を持っていく運動 なども効果がある.いずれにせよ肩の運動として は,立位にて常に下垂している上肢を頭上に挙上 させることが主体となる.その他,手を背中へま わす運動,外旋運動も有用となります.これら肩 関節の運動はラジオ体操,テレビ体操などにかな らず取り入れられているので,予防あるいは機能 維持のためには朝夕の10分間のテレビ体操が最適 です.  5)腰痛に対する運動  2本足で立位を保つ人間にとって腰椎への負担 Codman体操 ’  !  ノ  ノ ’ ! ノ ! 1  ノ ! ノ 目 N 写ヨ 、 , 、 \ 、、 \ \ 、  \\ 、

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ドアに患l111iの rをかけ 両膝を曲げる (入浴後) 葛、 の る ↓ 1・、1 両肘を直角にして.ヒ体を ドアにもたれかからせる (人浴後)

移 1 田1 、 1  外旋運動 俸を持ち健側の手で 患側の手を押す 図6 五十肩の運動療法  二二運動   [嗜 r1【li手で棒を持って 後方へ押し上げる \

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畢 A 骨盤傾斜を減らす (境. 、あ一:拶. ノ

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B 上体挙上訓練

⇔.昭く・. 」 ’ 1 ∼9 , 岱 ω. C 腰背筋ストレッチ  図7 腰痛体操

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によって生ずる各種の腰痛は宿命的なものとい え,一生の間に腰痛を自覚する人は80%に達する といわれる.そして職業を問わず加齢と共に腰痛 症は増加傾向にある.腰痛の多くは椎間板および 椎間関節の変性と共に生じ,前屈位の姿勢,重量 物の扱いなどにて増悪し,時に下肢への癖痛,脱 力などの神経症状を伴うこともある.これに対し, 腰椎伸筋群のストレッチ,屈筋群の筋力増強,姿 勢の矯正が目的となる.まず十分な高さの膝枕を 用いつつ股・膝関節屈曲位でリラクゼーションを 得たのち,膝抱え込み運動にて腰背筋をストレッ チさせる.また股・膝関節のストレッチも有用と なる.次いで背臥位にて腹上に置いた手を押しつ つ腹を凹ませ,背を床におしつける骨盤傾斜運動, 上半身を挙上させる腹筋運動など,腰椎の屈筋群 を中心に筋力増強運動を行う(図7)5).上記運動 は10∼15分間かけてゆっくり行い,朝夕2回が適 当である.  水中ではたまご浮きなどでストレッチを,前歩 き,横歩き,後ろ歩きなどの水中運動にて筋力増 強のほか,キック,クロールなどの水泳を週に1 ∼2回行う.  6)骨粗籟症に対する運動  骨粗髪症は,骨量:が減少した状態であり,加齢, 運動量と活動性減少による生理的なもの,すなわ ち老人性骨総髪症が多いが,ホルモン異常,骨代 謝異常などによるものもみられ,閉経後の女性に 圧倒的に多い.骨粗面化は全身の骨組織に出現し, それのみでは無症状であるが,骨の脆弱化をもた らすため,脊柱においては圧迫骨折に伴い腰背部 痛,円背,亀背などの不良姿勢,大腿骨頸部,手 関節部などにおいては病的骨折を生ずる原因とな る.  骨心懸症の予防・治療には適度な運動,若い時 から継続しているスポーツが有効であることが良 く知られており,1日5,000∼10,000歩の歩行は Ca摂取や薬物投与より効果があるとされる.一般 に歩行,ランニング,テニスなど荷重負担のかか る運動が骨壷維持に有用とされているが,水泳な どにてもその効果はあるとされる.  高齢者ではマイペースでできる運動が良いた め,最低5,000歩/日の歩行,ジョギング15分程度,

週1∼2回のテニス,水泳,月1∼2回目ゴルフ

(7∼8km歩行)などが適当となる.これらの運動 は楽しみをもちつつ行うことが長期間継続させる コッとなります.その丸腰背筋,腹筋のストレッ チ,および筋力増強運動と共に,良い姿勢を保つ ことも基本的に大切となります.  同時に肥満を予防し,Ca摂取を高める食事のコ ントロールも必要となります.  5.40歳からのスポーツ,生涯スポーツ  中年以後は,社会的地位ならびに収入も高くな り,仕事に忙しく,暇もなくなり,楽な文化的生 活に身を委ね,おいしい食物を食べる傾向が強く なります.モータリゼーションなど高度に発達し た文明社会にあっては,身体の活動性が減少し, 栄養過多となりますので,肥満傾向が目立ち,そ れは低年齢化しつつあります.そこで栄養摂取, 体重コントロールに注意すると共に,体力低下を 防ぐためにスポーツの必要性が生じてきます.40 歳からのスポーツでは,健康を損ねないため,長 く継続して行うために以下の点に注意して行いま す(石河利寛著,.スポーツとからだ)6). ①自分をきたえようとは思わない.体力の低下 する時期ですので,体力の向上を目的とせず,体 力の維持あるいは体力の衰え防止のためのスポー ツと割り切る.  ②定;期的に行うこと.1ヵ月1回のゴルフでは 運動と休息の間が大きすぎ役に立ちません.毎日

行える運動スポーツのほか,週に1∼2回のテ

ニス,ジョギング,水泳など定期的に行えるスポー ツが大切となります. ③勝負にこだわらないこと.勝負にこだわると 交感神経系の緊張が高まり,血圧を上昇させます. 日常生活の緊張から逃れ,リラックスしてスポー ツを楽しむ心懸けが大切です. ④寒い所では無理して行わない.寒風吹きすさ ぶ所での戸外のスポーツは,血圧,呼吸器に悪影 響が出ます.その場合日中暖かい所あるいは室内 で楽しむことです. ⑤十分な準備体操を行う.特にアキレス腱など ストレッチを行い,身体のウォームアップの後に

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スポーツを楽しまないと事故のもとになります.  ⑥体調の悪い時は無理しない.寝不足,風邪気 味など体調の悪い時には休息し,体調を整えてか ら行うことです.  40歳からのスポーツ,運動としては,10分間以 上継続してもあまり疲れないで行えるものが良 く,具体的には歩行,ジョギング,ハイキング, ラジオ体操などに始まり,無理をしなく,楽しむ 程度であれぽ,テニス,野球,バレーボール,バ ドミントンなども良く,ゴルフも歩くという意味 で有用となります,それに対しラグビー,格闘技, 競泳,跳躍スポーツなどは一一般に適しません,  例えば朝夕のラジオ(TV)体操,10∼15分間の 80m/分(汗ばむ程度の速歩)の歩行などが適当で あり,これに適当な球技などを1∼2回/週,ある いは,下肢,体幹,上肢の筋力増強運動の組み合 わせなどが良いとされます7).  また若い時からの継続した生涯にわたるスポー ツを行うことは,筋力・体力低下を防止し,関節 機能を維持し,心・肺・末梢循環系の維持に有用 であるのみでなく,peak bone massを増加し, 骨粗霧症を予防し,知的,精神的衰えの防止にも 役立ちます.  適当な食生活,運動,休息が健康維持のキーワー ドになります.       文  献  1)中村隆一:整形外科領域における運動療法の理論    と実際.日整会誌 67:866−873,1993  2)蜂須賀研二:筋力強化と運動処方.整災外 31:   903−908, 1988  3)赤嶺卓哉,田ロ信教,鶴田英二ほか:女性の下肢   変形性関節症に対する水中運動療法の効果。整災   外36:1187−1193,1993  4)武藤芳照:関節疾患への運動処方.最新医学   43:2258−2263, 1988  5)Kirkaldy−Wills WH:Managing LowBack   Pain,Churchill Livingstone, Edinburgh(1988>  6)石河利寛:スポーツとからだ.p466,岩波新書,   東京(1972)  7)池田義雄:内科的疾患(肥満・糖尿病)に対する   運動処方.整災外 31:909−915,1988

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