/46 氏名(生年月日) 本 籍
学位の種類
学位授与の番号 学位授与の日付 学位授与の要件学位論文題目
論文審査委員
(57)ケブカワケイイチ
癸生川恵一(昭和3
博士(医学) 乙第1403号平成5年11月19日
学位規則第4条第2項該当(博士の学位論文提出者)
経皮的冠動脈アテローム切除術による切除冠動脈病変の臨床病理学的検討
一とくに光顕的・免疫組織化学的検討から一(主査)教授細田 瑳一
(副査)教授 小柳 仁,村木 篁論 文 内 容 の 要 旨
目的 経皮的冠動脈アテローム切除術(directional coro- nary atherectomy;DCA)では,生体より得た切除冠 動脈病変の組織学的検索が可能となった.本研究では 臨床例の冠動脈病変を解析するために,DCAによる切 除組織を光顕的,免疫組織化学的に検討し,その病理 学的所見を臨床像と比較検討した. 対象および方法対象はDCAを施行した男性15例,女性2例の連続
17例(PTCA後の再狭窄6例を含む狭心症11例,心筋 梗塞6例)である.切除標本より連続薄切切片を作製 し,Masso’s trichrome染色, H.E染色, Vi6toria blue 染色を施し得られたすべての組織片を観察した.さら に切除組織の細胞成分およびその病態の解析のために 抗筋細胞アクチン抗体(HHF35),抗PDGF(platelet- derived growth factor)抗体,抗SM1(adult type of myosin heavy chain isoform)抗体,抗SMenlb (embryonic vascular smodth muscle myosin heavy chain isoform)抗体,抗PCNA(proliferating cell nuclear antigen)抗体および抗マクロファ’一ジ抗体 (HAM56)の6種類のモノクローナル抗体を用い免疫 組織化学染色を施行した. 結果 Masson’s trichrome染色を施した内膜組織は線維 性肥厚の性状および細胞成分の量から光顕的に以下の 4型に分類できた.1型:青く濃染される膠原線維が 主で細胞成分が少ない病変,II型:青く濃染される膠 原線維に多数の細胞成分が混在する病変,III型:薄く 染色される膠原線維に多数の細胞成分が混在する病 変,11V型:平野性病変.狭心症の病歴が6カ月以内の症例およびPTCA後
の再狭窄例ではIII型の内膜組織が認められた.このIII 型の内膜組織の増生細胞はHHF35陽性の平滑筋細胞 であり,PDGF, SM1, SMemb陽性で,特に再狭窄病変にはPCNA陽性の平滑筋細胞が認められた.狭心
症の病歴が長い症例ではIII型の内膜組織は認められ ず,1型,II型の内膜組織が主体であった. HAM56陽 性のマクロファージは平滑筋細胞と混在しII型の内膜 組織のみに認められた.IV型は全切除内膜組織中僅か に1.2%に認められた. 考察および結論 DCAによる切除組織を光顕的,免疫組織化学的に検 討し,各症例の臨床像と対比することにより冠動脈病 変の新旧の程度の判定が可能であった.III型の内膜組 織の平滑筋細胞は免疫組織化学的に比較的幼若で増生 が盛んであり,III型の内膜組織は非常に新しい病変で, 次いでII型,1型の順に古い病変であると考えられた.また,PTCA後の再狭窄の進行過程には,マクロ
ファージの関与は少ないと考えられた. 一752一147