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原 著
〔東女医大誌 第58巻 第4・5号頁 391∼393 昭和63年5月〕マウスB細胞の免疫応答に対するアスピリンの影響
東北歯科大学 歯科保存学第一講座
カマ ガタ ユウ スケ鎌 形 有 祐
東京女子医科大学 微生物学教室
ウチ ヤマ タケ ピコ内 山 竹 彦
(受付 昭和63年1月8日)
Effect of Aspir量n on Mouse B Cell Immune Response
Yusuke KAMAGATA
The First Department of Conservative Dentistry, Tohoku Dental University
Takehiko UCHIYAMA
Department of Microbiology, Tokyo Women’s Medical College
In vitro effect of aspirin on lipopolysaccharide(LPS)一induced mouse B cell immune response was studied using spleen cells obtained from C57BL/6 mice. When different concentration of aspirin were added to the culture of spleen cells in the presence of LPS, dose−dependent suppression of polyclonal antibody production was observed. However, LPS4nduced B cell proliferation was relatively resistant
to aspirin.
These results suggested that aspirin suppresses a differentiation step of mouse B cells and has iittle inhibitory effect on B ceH activation and proliferation.
緒 言
アスピリンは非ステロイド系の消炎,鎮痛,解
熱剤であるが1),生体の免疫応答におよぼす影響
については:明らかにされていない.
われわれは今回,マウスB細胞マイトジェンと
して細菌内毒素であるlipopolysaccharide(LPS)
を用いて2),マウスB細胞の免疫応答におよぼす
アスピリンの影響を調べたところ,LPSによるB
細胞のポリクローナル抗体産生をアスピリンが強
く抑制することを認めた.このことはアスピリン
の薬理作用のみならず,B細胞の増殖,分化をも
解明する手段となり得ると考えられるので報告す
る.材料と方法
1.動物
C57BL/6マウスを日本チャールズリバー株式
会社(神奈川)より購入し,6週齢から8週齢の
ものを使用した.2.アスピリン
アスピリン(日本化薬株式会社,東京)原末を
Click培養液を用いて5mg/mlとなるように調整
して使用した.3.LPS
LPSはEs罐6γ∫6屠αoo1疹0111二B4株からフェ
ノール法で抽出したLPS(Difco Laboratories,
U.S.A.)をさらにフェノール法により再抽出した
ものを使用した.
4.細胞培養
細胞培養は炭酸ガス浮卵器を用いて5%CO2,
37℃条件下で10%牛胎児血清(Gibco Labora−
tories, U.S.A.),5×10−5M 2−mercaptoethanol(和
光純薬,大阪),ペニシリン(万有製薬,東京)100
U/ml,ストレプトマイシン(明治製菓,東京)100
μg/ml含有Click培養液を用いて行なった3).
一391一
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5.マウス脾細胞の調整
マウスより摘出した脾臓をハンクス液(日水製
薬,東京)中でピンセットを用いて圧迫し,ステ
ンレスメッシュにより組織片を除去して脾細胞浮
遊液を得た.6.抗体産生細胞数の測定
既述の方法に従ってプラーク形成細胞(plaque
forming cell, PFC)を抗体産生細胞として下記の
式により測定した4).抗trinitrophenyl(TNP,和光純薬,大阪)抗
体産生細胞数=抗TNP一ウマ赤血球抗体産生細胞
数一抗ウマ赤」血球抗体産生細胞数
7.アスピリンの抗体産生抑制作用の測定
アスピリンの抗体産生抑制作用の測定は下記の
式に従ってその抑制率を測定した.
抑制率(%)= アスピリン添加群における抗TNP抗体産生細胞数〔・ アスピリン非添加群における抗TNP抗体産生細胞数×100
〕8.LPSによる脾細胞増殖反応の測定
脾細胞を96well丸底マイクPプレート(Nunc,
Denmark)に5×105/well,1実験群につき3well
ずつ分注し,LPSを最終濃度1μg/ml,または5μg/
mlになるように加えて72時間培養した.培養終了
15時間前に3H−thymidine 1μCiを各we11に添加
して培養終了後,セルハーベスター(ラボサイエ
ンス社,東京)を用いて細胞を回収して溶体シン
チレーションカウンター(アロカ社,東京)によ
り,3H−thymidineの細胞内のDNAへの取り込み
を測定してcpmとして表わした5}.
9.アスピリンの脾細胞増殖反応抑制作用の測
定アスピリンの脾細胞増殖反応抑制作用の測定は
下記の式に従ってその抑制率を測定した.
抑制率(%)=〔1一〕・・00
結 果
1.正PSにより活性化されたマウスB細胞の
ポリクローナル抗体産生におよぼすアスピリンの
影響
脾細胞(5×106/ml)にLPSを1μg/ml,または
5μg/m1加え,さらに各種濃度のアスピリンを添
加して72時間培養後のTNPに対する脾細胞中の
B細胞のポリクローナル抗体産生を調べた
(Table 1).アスピリン濃:度50μg/mlにおいて,LPS 1μg/mlの場合に33%, LPS 5μg/lnlの場合
に25%の抗体産生抑制率を示し,以後アスピリン
の濃度依存性に抑制率の増加が認められた.デー
タには示していないが,本実験に使用したアスピ
リンの脾細胞に対する傷害活性は認められなかっ
た.2.LPSにより活性化されたマウスB細胞の
増殖反応におよぼすアスピリンの影響
次にアスピリンがポリクローナル抗体産生の場
Table l The effect of aspirin on LPS induced polyclonal antibody production
Anti−TNP PFC/culture
a渦
LPS
} 1μ9/ml 5μ9/mI 0 T0 Q50 T00 55 S5 Q0 P0 745 T00(33%*) Q75(63%) W5(89%) 1010 V60(25%) T95(51%) P65(84%) * %InhibitionMouse spleen cells(5×106/ml)were cultured with LPS in the presence of various concentrations of aspirin for 72hr.
Table 2 The effect of aspirin on LPS induced mouse B cell proliferation
cpm
Aspirin iμ9/ml)LPS
』 1μ9/ml 5μ9/ml 0 T0 Q50 T00 5122 T042 S802 R110 21266 P9484(8%*) P6444(23%) P1438(46%) 40527 R5976(11%) R4565(15%) P7111(58%)一392一
卓 %InhibitionMouse spleen cells(5 x 105/well)were cultured with LPS in the presence of various concentrations of aspir−
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合と同様にLPSにより活性化されたマウスB細
胞の増殖反応を抑制し得るかについて実験をおこ
なった.脾細胞(5×105/well)にLPSを1μg/ml,
または5μg/ml加え,さらに各種濃:度のアスピリ
ンを添加して72時間培養し,脾細胞中のB細胞の
増殖反応を調べた(Table 2).アスピリン濃度50
μg/mlから濃度依存性にB細胞の増殖反応の抑
制を認めたが,抑制率はLPSによるポリクロー
ナル抗体産生の抑制率(Table 1)と比較すると大
幅な低下を示していた.この実験結果はLPSに
よるB細胞増殖反応はLPSによるポリクローナ
ル抗体産生に比較して,アスピリンの抑制効果に
対して抵抗性であることを示唆している.
考 察
われわれは本実験において,アスピリンが濃度
依存性にLPSにより活性化されたマウスB細胞
のポリクローナル抗体産生をLPSによる増殖反
応に比較して強く抑制することを示した.
細菌内毒素であるLPSはマウスB細胞を直接
刺激して活性化と引き続く増殖反応を惹起させ,
ポリクローナル抗体産生細胞へB細胞を分化さ
せることが明らかにされている6)7>.本実験では
LPSによる増殖反応よりもLPSによるポリク
ローナル抗体産生が強く抑制されたことから,ア
スピリンのマウスB細胞の免疫応答に対する抑
制効果はB細胞が抗体産生細胞へ分化する段階
で発現する可能性が示唆された.アスピリンがB
細胞の抗体産生細胞への分化を抑制する具体的な
作用機序に関しては今後の検討を射たねぽならな
い.LPSに対するB細胞の免疫応答をアスピリン
が抑制する機序の一つとして,アスピリンがB細
胞以外の免疫担当細胞であるT細胞,マクロ
ファージを介して抑制作用を惹起していることも
考えられることから,T細胞,マクロファージに
対するアスピリンの作用についても調べる必要が
あると思われる.
リウマチ性炎症の治療にアスピリンを使用する
場合,血中濃:度が250∼350μg/mlに達する必要が
あると考えられている8).本実験においてアスピ
リン濃度50μg/mlからマウスB細胞の免疫応答
が抑制されたことは,アスピリンの服用がヒトの
免疫機能に影響する可能性を示唆しており,今後,
アスピリンのヒトの免疫応答に対する作用につい
ても研究を進めたい.
稿を終えるにあたり,貴重な御助言を戴きました東
北歯科大学歯科保存血第一講座,飯田正人主任教授に
深く感謝いたします.文 献
!)斉藤秀哉,南 勝,首藤 勇:新薬理学講義, pp264−266,南山堂,東京(1984)2)Uchiyama T, Kamagata Y, Yoshioka M: Mechanism of lipopolysaccharide−induced im・ munosupPression:Immunological activity of B cell subsets responding to T−dependent or T・independent antigens in lipopolysaccharide
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3)Uchiyama T: B cell tolerance=Bcells ren− dered tolerant are present in the immune sys・ tem in a potentially responsive form. Micro− biol Imrnunol 24:!211−1222, 1980
4)Uchiyama T, Yamamura N, Maeda R:Char−
acterization of background anti−trinitrohenyl plaque−forming cells observed in several strains of mice. Jpn J Microbiol 20:45−52,1976
5)鎌形有祐:インターロイキンー1に対するマウス
胸腺細胞の反応性にみられる系統間の差異の解
析.東女医大誌 56:599−605,1986
6)Noma T, Sideras P, Naito T et al=Cloning of
cDNA encoding the murine IgGI induction
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Nature 319:640−646,1986
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8)Flower RJ, Moncada S, Vane JR:鎮痛一下 熱剤,抗炎症薬,及び痛風治療薬,「グッドマン・
ギルマン薬理書[上]」(大森義仁,高木敬次郎,
藤原元始ほか監訳),pp823−881,廣川書店,東京
(1986)