原 著 〔書編楢、。欝臨62劉撮〕
解離性大動脈瘤の予後規定因子
一主としてCT所見に基づく検討一
東京女子医科大学 循環器内科学教室(主任 広沢弘七郎教授) タイラ アツ コ 平 敦 子 (受付 昭和62年6月29日)Prognostic Factors of Aortic Dissecting Aneurysm −Fate of the Dissecting L㎜en by CT Study−
Atsuko TAIRA
Departlnent of Cardiology(Director:Prof. Koshichiro HIROSAWA) Tokyo Women’s Medical Collage
Survival and complication士ates of 118 patients with dissecting aneurysm were studied
retrospectively for an average period of 54.4 months. During this period computed tomographic scans(CT)was performed in 102 patients. The patients were classified on the basis of Stanford
uniVerSity’S CIaSSi丘CatiOn.
1.Survival rate was lower and rates of severe complications were higher in patients of
Stanford A type than in those of B type.
2.Change of the aortic diameter was studied using CT scans during medical treatments. More than 5mln increase or decrease of the diameter was considered as signi丘cant change. The aortic diameter was decreased in 14 cases, was unchanged in 47 cases and was increased in 22
cases. Its increase was more frequently in the patients of A type.
3.The pathological change of the dissecting part of the aorta was most important factor deciding the diameter change during medical follow・up. The diameter tended to increase in the dissecting aorta with larger false lumen,
4.The false lumen was filled with thrombus even in the early stage in case with clotted
falses lumen. In more than half of these patients, the false lumen disappeared later.
5.The survival rate was higher in cases with small false I㎜en, with early fQrmation of
thrombus in the false lumen and with decreasing dialheter of the aorta during medical follow−up.
目 次 はじめに 対象および方法 1.対象症例 2.CT検査 結 果 1.病型別にみた経過および治療成績 1)Stanford A型 (1)急性期 (2)亜急性期 (3)遠隔期 2)Stanford B型 (1)急性期 (2)亜急性期 (3)遠隔期 2.合併症 1)Stanford A型 (1)急性期
(2)亜急性期および遠:隔期 2)Stanford B型 (1)急性期 (2)亜急性期および遠隔期
3.CT所見
1)解離部大動脈の径変化 2)径変化と初回検査時のCT径 3)真魚に対する偽腔の割合と経過中の大動脈径 変化 4)偽腔内血栓 5)解剖所見と経過中の大動脈径変化 4.CT所見と臨床症状との対比 1)血圧コントロール 2)亜急性期および遠隔期合併症 3)解離腔の進展 5.CT所見と予後との対比 1)径変化と予後 2)真鯖偽腔比と予後 3)偽腔内血栓と予後 考 察 1.治療成績と合併症 1)Stanford A型 2)Stanford B型 2,大動脈径の変化と予後 3.大動脈解離部位の解剖所見と解離の進展 結 論 文 献 はじめに 解離性大動脈瘤の予後は内科的降圧療法の徹 底Dと外科治療の進歩2)∼10)に伴い著しく改善し た.しかし,病型・病期により異なるもののなお死亡率は高く,予後不良な疾患とされてい
る1)11)∼16). 予後不良にしている原因をみると,発症早期に は急性心筋梗塞,大動脈破裂,心タンポナーデの ために死亡する症例がみられ,また遠隔期にも再 解離,大動脈破裂ほか種々の合併症が出現するた めである14)17).この合併症の出現を事前に把握し 対処できれぽ死亡率を下げることが可能と考えら れる.合併症の出現を予測する上で特に大切なの は解離腔の進展の状態を的確に掌握しておくこと である.解離腔の経時的な変化を迅速かつ正確に 把握し,適切な治療法を選択することが予後改善 に役立つと考えられる. 近年,解離性霊動脈瘤の診断技術は向上し,従来からの単純胸部X線検査やRI angiography
ら18)による診断に加え超音波診断法,CT
(computed tomography)カミ普及し,同時に解像 力が改善するのに伴い,より簡便に早期に正確な 診断がなされるようになった. 超音波診断法はベッドサイドで検査がでぎ早期 診断に適している.本法は上行大動脈および腹部 大動脈の解離の診断に優れているが,大動脈弓よ り胸部下行大動脈にかけての解離の診断には限界 がある19)∼2D. CTの有用性に関しては多く報告されており, 解離性大動脈瘤の正診率が非常に高い検査法であ る22)∼32>.造影剤を用いたdynamic CTにより,詳 細な真腔偽腔の鑑別も可能であるが,分枝血管と の関連を総て正しく評価することは困難なことも 多い22)33).外科治療を考える上では交通孔の位置, 分枝血管の状態をみるためcineangiographyあるいはDSA(digital subtraction angiography)34) と合わせた検討が必要となる.最近,急性期に超 音波検査,CTそして必要に応じて血管造影を行 い緊急手術に踏み切る症例も増え,外科治療の進 歩と相撃って今後更に死亡率の低下が期待できる 状態になってきた. 解離性理動脈瘤の予後は偽腔の変化によるとこ ろが大きい.種々の検査法の中でCTは偽腔の状 態を把握するのに適し,偽腔内血栓の評価に優れ ている.また病態の判断に特に大切な大動脈径の 計測にはなくてはならない検査法であり,非観血 的に繰り返し行える点からも経過を追う上で最も 有用な検査方法と思われる. これまでにCTの経時的変化の報告は外科治療 例の術後の遺残解離腔の状態に関するものはみら れるようになってきたものの27)35)∼38),内科治療例 の報告は少なく22)39)∼42),ことに上行大動脈の解離 の進展に関する報告やCTを用いて解離腔を経時 的に追い臨床症状と対比した報告はない. そこで,当施設に入院し,血管造影,CTあるい は剖検:により確診が得られた解離性大動脈瘤118 症例について,急性期・亜急性期・遠隔期の予後
および合併症を調べ,CTとの対比を行った.さら にCT所見から,病態の把握,解離腔の推移の予 知,さらに治療法の選択に関して検討を加えた. 対象および方法 1.対象症例 多 ノ
TYPE A
誕
1 ㌘ TYPE B謹
図1 Stanford分類31) Stanford A型:上行大動脈に解離腔を有するもの. intimal tearは1∼3いずれの部位にも有り得る. Stanford B型:解離腔が下行大動脈に限局している もの 昭和50年11月から,昭和61年10月までの11年間 に当施設に入院した解離性大動脈瘤118症例を対 象とした.病型分類はStanford分類を用いた43) (図1).Stanford A型は,上行大動脈にも解離腔 のあるもの,B型は下行大動脈に解離腔が限局し ているものである.Stanford A型は67例, B型は 51例にみられた.男75例,女43例,年齢は24∼80 歳,平均52.0±13.5歳である.この118例に対し1 ∼132ヵ月,平均54.4ヵ月にわたる予後調査を行っ Tソ9\
図2 CT所見よりみた真腔偽一戸(T/F) 解離部大動脈最大径における真腔に対する偽腔の割 合.T:真言, F:偽層置====盟『
写真1 CT所見よりみた偽腔内血栓の程度 A:偽腔内血栓無し,B:一部に血栓を認める, C:血栓で満たされている T:真腔,F:偽腔, TH:血栓た.これらの症例を発症後2週間以内の急性期, 発症後2週間から退院までの亜急性期,退院以降 の遠隔期に分けて経過,治療成績,合併症につい て検討を加えた.
2.CT検査
これらの症例うちCT検査を行い得た102例,総 CT施行回数448回の検:査所見の経時的変化と臨 床像を対比検討した. (1)CTによる大動脈径の測定方法 解離部の大動脈径すなわちStanford A型につ いては上行および下行大動脈,Stanford B型につ いては下行大動脈の最大径を計測した. (2)真腔偽腔の測定方法(図2) 上行大動脈および下行大動脈の解離部のうち, 最大径を示した部位において,真腔に対する偽腔 の割合を求め真腔偽腔比とした、 (3)血栓の測定方法(写真1) 偽腔内にみられる血栓の程度を,偽腔内に血栓 が全く認められないもの,一部に血栓が存在する もの,書類がほぼ血栓で満たされているものの3 段階に分類した. 結 果 1.乳型別にみた経過および治療成績 1)Stanford A型(表!) (1)急性期 表1Stanford A民心の治療別経過表 1.急性期一翻・王∵◎㌔瀕
2.亜急性期lll∴∴ご{:1:1::1
3.遠隔期∵∵
生 存 16例一[死亡瀦.謝
発症2週間以内の急性期に入院し治療を受けた 症例は51例で,内3例に手術を行った. 非手術例は48例でうち7例(14.6%)が死亡し た.死因は急性心筋梗塞3例,心タンポナーデ3 例,胸腔内破裂1例で,これらの症例の多くは解 離性大動脈瘤の診断に至る前に死亡した. 急性期に手術した3例は全て心タンポナーデ例 の緊急手術であり,全例救命し得た. (2)亜急性期 急性期に入院したが外科治療なしで2週間以上 生存した41例と発症2週間以降に入院した16例, 合わせて57例を検討対象とした. 非手術例は25例で,このうち3例(12,0%)が 死亡した.死因は心タンポナーデ1例,胸腔内破 裂1例,腸管の穿孔1例であった.32例に手術を行った.手術例の死亡は8例
(25。0%)であった. (3)遠隔期 非手術例22例の遠隔期の予後は,生存16例,死 亡6例(27.3%)であった.死因は腹腔内破裂1 例隣接臓器への破裂と考えられる吐血1例,脳血 管障害1例,突然死2例と原疾患によると考えら れる例が多かった. 手術例27例の遠隔期の予後は生存23例,死亡4 例(14.8%)であった.死因は大動脈の腹腔内樋 表2 Stanford B旧例の治療別経過表 手 術 27例 非手術 22例 1.急性期一欝王∴究集
2,亜急性期難1:旺
3.遠隔旨 旨 術 11例 非手術 31例手術一
一…
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生 存 10例 死亡1例(9ユ%) 生 存 26例 死亡3例(9.7%) 不 明 2例裂1例,突然死2例,喀血死1例であった. 2)Stanford B型(表2) (1)急性期 急性期治療例は35例でうち手術例は1・例のみ で,切迫破裂と考える例に緊急手術を行い救命し 得た.非手術例34例のうち死亡は1例(2.9%)で 死因は胸腔内破裂であった. (2)亜急性期 急性期に入院し2週間以上生存した非手術例33 例と発症2週間以降に入院した16例を合わせた49 例を検討対象とした.このうち17例に手術を行っ た.非手術例は32例で,うち1例(3.1%)が多臓
器障害で死亡している.手術例は17例中7例
(41.2%)が死亡している. (3)遠隔期 遠隔期予後は,非手術例31例中生存26例,死亡 3例(9。7%)不明2例で,死因は大動脈の胸腔内 破裂2例,突然死1例であった. 手術例11例中生存10例,死亡1例(9.1%)で, 死因は腎不全であった. 2.合併症 1)Stanford A型 (1)急性期(表3) 急性期治療例51例のうち合併症を表3に示し た.胸腔内破裂で1例が死亡した.この他解離腔 の進展,それに伴う分枝の閉塞などによる合併症 がみられた.冠動脈虚血が関係したと考えられる 例が10例にみられ,このうち急性心筋梗塞が8例 ありうち4例が死亡している.心タンポナーデ例 が9例あり,3例が死亡していた.この他,大動 脈弁閉鎖不全27例,脳血管障害3例,四肢の虚血 症状5例,腎梗塞1例であった. (2)亜急性期および遠隔期(表4) 亜急性期から遠隔期にかけての合併症をまとめ て検討した.57例中,3例が胸腔内破裂で死亡し ている.この他にも解離腔の悪化を認めたものが 10例あり,うち2例が死亡した.また胸水の新た な出現あるいは増量を認めたものが7例,うち2 例が死亡した.これら問題を起こした例の血圧コ ントロール状況を見ると必ずしも不良とは言えな かった 表3 急性期合併症Stanford A型 Stanford B型 冠動脈虚血症状 團團国里帰日□□[コロ1 心タンポナーデ 図四國□ロロ義理ロ9 大動脈弁閉鎖不全 ■囲煽動□日□□□□ mコ[コロロロロロロロロ 鴻鴻香mコ[コ[]口27 造出遺訓1]5 脳血管障害 □□□3 胸腔内破裂 團1 図1 四肢虚血症状 囮□□□□5 □[]E]3 腎梗塞 □1 []□□3 腹腔動脈血栓 □[コ2 □生存例 圖死亡例 表4 亜急性期および遠隔期合併症
Stanford A型 Stanford B型 冠動脈虚血症状 □爆鳴□4 心タソポナーデ 国1 脳血管障害 国幣□[コ[コロ6 解離腔の悪化 図圏□[コロロロロロロ1 □□2 胸水の増悪 圖一閲□目□□7 囮□□□4 胸腔内破裂 国團国3 図團2 四肢虚血症状 〔11 脊髄虚血症状 □1 腎梗塞・腎不全 國□2 口1 腸管の穿孔 圖1 □生存例 國死亡例 この他,冠動脈の虚血による症状が4例あり, うち急性心筋梗塞が2例にみられた.脳血管障害 6例(死亡2例),上肢の壊死1例,腎梗塞1例, 解離範囲の進展にともなう腎不全1例であり,こ の他に田圃ンポナーデと腸管の穿孔が各々1例で あった. 2)Stanford B型 (1)急性期(表3) 急性期治療例35例の内1例が胸腔内破裂で死亡 した.この他の合併症としては四肢の虚血症状3 例,腎梗塞3例,脾梗塞1例,腹腔動脈血栓1例 (第26駐日に多臓器障害で死亡)がみられた.大動 脈弁閉鎖不全の5例はMarfan症候群の大動脈弁 輪拡大と大動脈炎に伴うものであった. (2)亜急性および遠隔期(表4) Stanford B型の亜急性期から遠隔期にかけて
の治療49例では,亜急性期には合併症はみられず, 遠隔期に解離腔の悪化2例,胸水の増悪4例(1 例死亡),大動脈瘤の破裂死2例がみられた.これ らのうち血圧コントロール不良例は1例のみで あった.この他に脊髄虚血症状1例,腎不全1例 があった. 3.CT所見 解離を有する大動脈の最大径を計測し,同時に 真弓に対する偽腔の割合,偽腔内血栓の有無を検 討した.検討対象は内科的治療期間中にCTを施 行したStanford A型51例の上行大動脈所見と, (mm) 70 60 →く 50 嗜 蚕 40 灘 30 20 属 圓Stanford A型上行大動脈 ←一●St呂nford A型下行大勤脈 冨一属St昌nford B型下行大動脈
・磁鳳騨螺
ot_一一一一一一一一一一一一一一一一一一 1 2 発症からの期間(年) 図3 病型別にみた部位別の大動脈径の推移28.宕日hM
2s.日日「1回 _28 8eM鱈 写真2 CT所見よりみた大動脈径の変化 上:縮小例,A:発症3日目, B:2年1ヵ月後,下:拡大例, A:発症2年4ヵ月目, B:Aから1年10ヵ月後,T:真腔, F:偽腔,(レ):intimal Hap,数値の単位はmmそのうち下行大動脈にも解離を有する44例の下行 大動脈所見,それに加えてStanford B型44例の 下行大動脈所見を基に検討した. 1)解離部大動脈の径変化 内科的治療期間中,経時的に2回以上CT検査 を施行し得た症例の径変化を検討した.
Stanford A型上行および下行大動脈, Stanford B型下行大動脈の解離部の最大径について発症か らどのように変化するかをみた.全例をまとめる と図3にみるように有意な変動を認めないが, 個々の症例をみると全体径が縮小あるいは拡大す るもの,偽腔が消失するもの,新たな解離腔が出 現するものなどがあり,これらの変化の背景を明 らかにするために3つの変化群に分けた. 径の変化は5mm以上増加および減少したもの を有意な変化とし,各々拡大群・縮小群とし,5mm 未満の変化を不変群とした(写真2). 大動脈径の縮小群・不変群・拡大群は,各々14 例・47例・22例であった(表5).病眼別にみると, Stanford A型の上行大動脈径は28例中縮小5 例・不変14例・拡大9例(32、1%)で,下行大動
脈径では23例中縮小3例・不変13例・拡大7例
(30.7%)であった.これに対しStanford B型の 下行大動脈径は32例中縮小6例・不変20例・拡大 表5 病目別にみた解離腔の各径変化物の症例数 径変化 a型 縮小 不変 拡大 1 纃s大動脈:28 @ i 5例 14例 9例i32.1%) Stanford A L コ行大動脈i23 @ i 3 13 7 i30.7) Stanford B トコ行大動脈132@ 1 6 20 6i18.8) 計 14 47 22 6例(18.8%)で,Stanford A型はB型に比べる と拡大する例の割合が多かった. 2)径変化と初回検査時のCT径 病二二・径変化愛別に初回検査時のCT径をみ るとStanford A型の上行大動脈では縮小群56.7 mm,不変群50.5mm,拡大群53.8mmであり,下 行大動脈では縮小群35.1mm,不変群43.3mm,拡 大群39.7mmであった. Stanford B型の下行大動 脈では縮小群40.9mm,不変群44.8mm,拡大群 35.8mmであった(表6).上行大動脈が下行大動 脈に比べて全体に大きかったが,大動脈の解離腔 が経過を追って生じる変化と,初期の大動脈径と の間には有意差はみられなかった. 3)真腔に対する偽腔の割合と経過中の大動脈 径変化 真腔偽腔比1以下すなわち偽腔の割合が大きい 例は135例中101例(74.8%)であった.この割合 は上行大動脈と下行大動脈で差はなかった.しか し,これを経過観察中の径の変化で分けて検討す ると(表7)真腔偽軸比が1以下の斜向の大きな 例のうち縮小した例は10.7%,拡大した例は 32.1%にみられ,真中偽腔比が1以上の偽腔が小 さい例では縮小した例は29.6%,拡大した例は 14.8%にみられた.偽腔の小さい例で大動脈径が 縮小,静聴の大きい例で径が拡大する例の割合が 多かった.このように真腔偽腔比はその後の大動 脈径の変化の方向を決める大切な因子であると考 えられる. 4)偽腔内血栓 偽腔内にみられる血栓の程度を,偽腔内に血栓 が全く認められないもの,一部に血栓が存在する もの,縫外がほぼ血栓で満たされているものの3 段階(写真1)に分け急性期と亜急性期以降とで の比較を行った. 表6 病型別にみた各国変化群の初回CT径 劇変化 a型 縮小 不変 拡大 上行大動脈 56.7mm 50,5mm 53.8mm Stanford A 下行大動脈 35.1 43.3 39.7 Stanford B 下行大動脈 40.9 44.8 35.8 表7 真腔偽腔比と各径変化群の症例数 径変化 ^腔偽腔比 縮小 i14) 不変 i47) 拡大 i22) …561以下 … 6例 i10.7%) 32例 i57.1) 18例 i32,2) 1以上 :…27 : 8 i29.6) 15 i55.6) 4 i14.8)藩幅雌 轡
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写真3 血栓閉鎖型のCTおよび大動脈造影所見 上:CT所見, A, C:発症2日目, B, D:1年5ヵ月後, T:真腔, TH:偽腔内血栓,下:大動脈造影所見, E:発症早期の左前斜位像,F:正面像, Eでulcer−like projection(→)がみられたが偽腔は造影されなかった.臨床上,激痛で発症し炎症反応を伴った.発症早期の大動脈造影では偽腔は造影されなかったが,CTで大動脈 周辺に造影剤の入らない三日月型陰影が上下にラセン状に連続してみられ,血栓閉鎖型と考えられた.発症1年
急性期では,血栓のない群34例,一部に血栓の ある群3例,血栓でほぼ満たされている群17例で あった.亜急性期以降になると各々57例,25例, 28例となっていた. 急性期に血栓が存在しなかった34例のうち14例 はその後も血栓の出現はみなかった.これに対し て急性期に偽腔がほぼ血栓で満たされていた17例 のうち,その歌調腔が消失したものが8例あった. 血栓の程度と径変化との比較を行えた47例につ いてみると,急性期に血栓が認められなかった例 では径が縮小したものはなく,不変あるいは拡大 していた.これに対して,偽腔がほぼ血栓で満た されていた例は半数以上が縮小した(表8).偽腔 が血栓で満たされていたにも関わらず径が拡大し た2例は後に述べる血栓閉鎖型から解離腔の悪化 を認めた例である. 5)解剖所見と大動脈径の経過中の変化 血管造影を行いentryの位置や解離範囲など解 離腔の解剖と大動脈径の変化について検討した. 以下の説明の中で血栓閉鎖型とは,臨床症状,所 見から解離性大動脈瘤が疑われるが血管造影では 偽腔が確認できず,CTで解離腔が認められ,偽腔 が.血栓で完全に閉鎖している症例を指す(写真 3).また逆行性解離とは解離腔がentryより中枢 側に及んでいるものを言う.逆行性の解離範囲は 狭いものから広いものまで症例によりぼらつきが あるが,ここでは上行大動脈遠位部にentryがあ り解離が大動脈弁直上まで及ぶもの,左鎖骨窩動 脈直下にentryがあり上行大動脈に及ぶもの,胸 部下行大動脈遠位部にentryがあり近位側に及ぶ ものなど逆行性の解離範囲が広いものについての み検討した. 偽腔内血栓の状態を見ると血栓閉鎖型は勿論, 逆行性解離例のentryより近位側の偽腔内は血栓 化していることが多かった.大動脈径の変化は縮 小ないし不変で,拡大した例はな:かった(表9). このように病理形態がその後の径変化を規定する 一因となっていると考えられた. 4.CT所見と臨床症状との対比 1)血圧コントロール 大動脈径の変化を追えた83例の内,発症初期に 表8 偽腔内血栓の有無と各径変化群の症例数 径変化 }性期偽腔内血 縮小i9) 不変 i24) 拡大 i14) 無 し 127 「 0例 15例 12例
少量 i3
0 3 0 多量 i17 1 9 6 2 表9 解剖所見と経過中の大動脈径変化 径変化 }性期解剖所見 縮小 i14) 不変 i47) 拡大 i22) 血栓閉鎖型 5例 4例 0例 逆行性解離 ientryより近位側の変化) 4 5 0 表10 急性期の血圧コントロール状況と各径変化群 の症例数 径変化血圧 縮小 i14) 不変 i47) 拡大 i22) 血圧・ン陣一・レ良好i40 8例 23例 9例 弓勢鞭銚細43 F 6 24 13 表11亜急性期以降の血圧コントロール状況と各径 変化群の症例数 径変化 縮小 不変 拡大 血圧 (14) (47) (22) I food 347 6例 27例 14例 r 1 Fair ほ2 3 7 2 1 匝 ooor l 23 5 12 6 1 1 Unknown :1 0 1 0 1 入院し降圧治療を受け,急性期の収縮期血圧が110mmHg以下にコントロールされていた例を血圧
コントロール良好例とした.血圧コントロール良 否と径変化の間に相関はなかった(表10). 亜急性期以降の血圧コントロール状況を収縮期 血圧で130mmHg以下をgood,130∼140をfair, 140以上をpoorに分けてみたが,径変化との間に 一定の傾向はみられなかった(表11).しかし,拡 大群の中には降圧剤を自己中止し,著明に拡大し た例も含まれていた. 2)亜急性期および遠隔期合併症(表12) 亜急性期および遠:隔期合併症は,CTで大動脈表12 大動脈径変化と合併症 径変化 合併症出現例 縮小(14) 1(7.1%) 不変(47) 10(21.3) 拡大(22) 5(22.7) 表13大動脈径変化と解離腔の進展 径 変 化 解離腔進展蕪 蒸 小(14) 2(14.3%) 不 変(47) 7(14.9) 拡 大(22) 9(40.9) 径の変化をみることができた83例のうち16例にみ られた.合併症は縮小群14例中1例(7.1%),不 変群47例中10例(21.3%),拡大群22例中5例 (22.7%)と縮小群に少なく,不変群・拡大群に多 かった. 3)解離腔の進展(表13) CT上新たな解離腔(写真4)が出現あるいは解 離範囲の拡大をみた例や,臨床上痛みや炎症反応 の悪化を伴って胸水が増量あるいは新たに出現し た例は再解離を疑わせる.再解離を疑わせる例が 17例あったが,これを径変化群別にみると縮小群 14例中2例(14.3%),不変群47例中7例(14.9%), 拡大群22例中9例(40.9%)と縮小群・不変群に 少なく,拡大群に多かった. 5.CT所見と予後との対比(表14) 内科治療期間中にCTを2回以上施行しだ83例 の内,その後手術となった例を除いた44例につい てCT所見と予後との対比を行った. _こε eg門H 写真4 再解離例 A,C:再解離前, B, D:再解離5日目, T:真腔, F:偽腔, TH:偽腔内血栓,串:新たな解離腔 A,Cに比べてB, Dは偽腔内血栓が増加しており,Bでは後方にDでは前方中枢側に新たな解離腔がみられ, 同時に胸水が出現している.CTのより細かいスライスからB, Dの新解離腔は上下に連続した同一腔であること が確認された.
表14 内科治療例でのCT所見と予後との 対比 1)径変化と予後 径縮小 11例…死亡0例 径不変 30例…死亡6例(20.0%) 径拡大 16例…死亡3例(18.7%) 2)真腔偽腔比と予後 1以下 1以上 45例…死亡14例(31.1%) 30例…死亡7例(23.3%) 3)偽腔内血栓と予後 く急性期偽腔内血栓と予後〉 無し 少量 多量 21例…死亡5例(23.8%) 2例…死亡0例 16例…死亡2例(12.5%) 〈慢性期偽腔内血栓と予後〉 無し 少量 多量 20例…死亡6例(30.0%) 17例…死亡5例(29.4%) 17例…死亡2例(1L8%) <御調消失例と予後> 13例…死亡1例(7.7%) 1)径変化と予後 径縮小群では死亡例はみられず,不変群・拡大 群では各々20.0%・18.7%が死亡していた. 2)真腔偽腔比と予後 死亡例の占める割合は真腔胸腔比が1以下の半 弓の大きい例では31.1%と1以上の23.3%に比べ てやや多かった. 3)偽腔内血栓と予後 急性期・亜急性期以降とも,偽腔内に血栓がな いか少量のみの例は,多量に存在する例に比べて 死亡例が多かった.また,経過中に偽腔が消失し た13例での死亡は1例のみであった. 考 察 1.治療成績と合併症 解離性大動脈瘤の予後を決めているのぱ解離腔 の進展に伴う分枝血管の閉塞心タンポナーデ, 大動脈弁閉鎖不全などの合併症と解離腔の進展に よる大動脈破裂が主である.これらの変化を三型 別に分けて検討した. 1)Stanford A型 Stanford A型では,その病変の広がりから冠動 脈の虚血,心タソポナーデ,大動脈弁閉鎖不全, 脳血管障害など多彩で重篤な合併症がみられる. (1)急性心筋梗塞,心タンポナーデ,大動脈弁 閉鎖不全 今回の検討でも合併症は急性期治療51例中38例 (74.5%)と高頻度に認められ,ことに急性心筋梗 塞と心タンポナーデは急性期死亡の大半を占めて いた.これらの中には入院時には既に合併症が出 現しており解離性癖動脈瘤と確定し得ないまま死 亡した例も多かった.しかし心タンポナーデ例の 中には入院時ショック状態で,心嚢穿刺にて ショヅク状態から抜け出した例や緊急手術にて救 命した例もあり早期に病態を把握し,注意深く観 察し,早急な対処をする必要があると考えられた. 大動脈弁閉鎖不全は血管造影上Seller’s分類2 度以上の例,あるいはLevine 2/6以上の拡張期逆 流性雑音を聴取した例とした.大動脈弁閉鎖不全 の合併頻度はHirstは全体例の23%14),山口は 37%にみられたと報告している44>.またDorogh− aziはproximal dissectionの3分の2にみられ たと報告している17).今回の検討でStanford A 型の急性期治療51例中27例と高頻度にみられた. これら大動脈弁閉鎖不全を合併した症例のうちの 死亡例をみると大動脈弁閉鎖不全が直接の原因で はなく,むしろ合併した急性心筋梗塞あるいは心 事ンポナーデによるものであった.大動脈弁閉鎖 不全は進行する心不全が懸念されるところではあ るが,亜急性期以降に外科手術を行えば対処可能 である.Doroghaziは合併症のうち大動脈弁閉鎖
不全はsurvivalに影響しないと報告してい
る王7).全身状態などから非手術例となった4期中 1例が突然死したものの,進行する左心不全を呈 した例や心不全による死亡はなかった.大動脈弁 閉鎖不全が軽度な例では,急性期を乗り越えれば 内科治療でコントロール可能と思われる. (2)解離腔の進展と大動脈破裂 前述の合併症とともに,予後を決める大切な要 因として解離腔の進展とそれに伴う大動脈破裂が ある.Glendyらによると解離性大動脈瘤の死亡剖 検例13例の内,瘤の破裂死が6例となっている12). また,Doroghaziらによれぽ急性期治療52例の内 11例が死亡しているが,その内7例は再解離ある いは破裂によるものであったと報告している17). 急性期降圧療法の有用性は当施設の検討でも述べられているが45),急性期に破裂した1例は一過性 に血圧が上昇した直後に起こっており,急性期予 後を改善する上では降圧療法も重要と考えられ た. 合併症は亜急性期あるいは遠隔期においても出 現しており,CTあるいは血管造影で再解離を確 認あるいは疑った例も多かった.遠隔期の死亡例 も多く,いずれも原疾患によると思われたが,合 併症の出現と血圧コントロール状況の良否との関 連はみられなかった. (3)手術適応 Stanford A型は致命的合併症を生じ易いため 手術をすべきだと考えられている1)11).Wheatは 手術適応として,(1)A型解離,(2)大動脈弁閉 鎖不全,(3)限局性あるいは切迫破裂,(4)解離 性血腫の進行,(5)主要分枝の閉塞,(6)急性嚢 状動脈瘤,(7)心嚢あるいは胸腔の出血,(8)癖 痛の持続,(9)4時間以内に血圧および心収縮力 がコントロールできないものを挙げている. 亜急性期の手術死亡率は決して低くはないが非 手術例の遠隔期死亡率が更に悪くなっているこ と,亜急性期・遠隔期にも種々合併症が起こり得 ることを考えると,術式を選択し積極的に対処す る必要があると思われる. 2)Stanford B型 Stanford B型は慢性化する例が多く11),予後良 好といわれている15)17). 今回の結果も同様で,非手術例の入院中死亡は 比較的少なく,急性期死亡の1例は一過性血圧上 昇時に破裂した例であった.急性期治療53例中, 分枝血管の虚血症状がみられたのは延べ8例で, 死亡例も1例とStanford A型に比べて有意に少 なかった. 亜急性期の手術死亡の割合は41.2%と高くなっ ているが,このうち半数以上の症例では合併する 大動脈弁輪拡大他,瘤以外の部位の手術を同時に 行わざるを得ないため,手術侵襲が大きかったこ とが死亡例を多くしていると考えられる.亜急性 期以降の合併症に関しても例数は少なく,解離腔 の悪化を疑おせる例もStandord A型にくらべ少 なかった.非手術例の遠隔期死亡は9.7%で,いず れも原疾患によると考えられた. 以上のことを考え合わせると,B型に関しては 手術適応を厳重に選択する必要があるものと考え られる. 2.大動脈径の変化と予後 大動脈に生じた解離が今後進展するのかあるい は縮小するのはか予後を規定する最も大きな要因 である.解離腔が更に拡大すると考えられるとき は大動脈の破裂による死亡の危険が高く,同時に 解離の進展に伴う分枝の閉塞等の合併症の発現も 高いこととなる. 大動脈径の変化は5mm以上を有意としてみる と,5mm以下の変化に留まる不変群が半数以上 あり,残りは拡大群が縮小群をやや上回っていた. 病型別にみるとStanford A型では上行・下行大 動脈ともStanford B型に比べ,拡大を示す例の 割合が多くなっていた.A型は前述のごとく合併 症の出現頻度も高く,外科治療が必要と考えられ た. 一般に大動脈瘤の径の拡大に関与するのは血圧 の上昇と安静度であると考えられているが,今回 の検討では血圧コントロール状況と径変化の関係 は急性期・亜急性期以降とも明かではな:かった. しかし,高血圧を長年放置し著明に拡大した例も みられ,高血圧も偽腔拡大の一因となりうると考 えられた. 臨床上不定の疹痛を訴え,解離の進行に伴う症 状か否か判断しがたいことも多い.症状出現時に CTを再度行い前回と比較することにより病態を 把握することが可能である.血管造影あるいは CTで新たな解離腔の出現あるいは解離範囲の進 展を認めた例のCT所見をみると,再解離前後の 径変化は大部分の例が拡大していた.CT等で明 らかな解離腔の変化はなくても胸水の増悪のみを 認める例がある.再解離直後にCTを施行した5 例は全例その時期に胸水の新たな出現あるいは増 悪を認めたことを考えると,そのような例は再解 離が強く疑われる.以下の所見がみられるときに は再解離を疑って対処すべきであると考えてい る. (1)落痛,(2)炎症反応の悪化,(3)縦隔影の
拡大,(4)胸水の増悪,(5)新たな解離腔の出現, (6)解離範囲の進展. 非手術例の予後を径変化と比較すると,径の縮 小群では死亡例はみられず,偽腔が小さい例や偽 腔内に血栓が多量にみられる例では死亡例が少な く生命予後は良好と考えられるが,それらの中に も後に合併症が出現する例もあり,引き続き注意 深い観察が必要と思われる. 3.大動脈解離部位の解剖所見と解離の進展 急性期の降圧療法の必要性は既に述べられてい ることではあるが1)45),十分な降圧療法の下でも解 離腔の悪化をきたす例をしばしぼ経験する.解離 腔の運命は血圧コントロールだけではなく,主に その解剖学的変化,すなわち病変の範囲・entry, re−entryの位置・解離の方向・偽腔の大きさ・偽腔 内の血流や血栓の程度・主要分枝血管の状態など 種々の因子が大きく関与していると考えられる. 解離部での解剖学的変化として特に大切なのが 解離腔の大きさである.解離部最大径での真腔偽 単比を見ると1以下すなわち真腔が小さく偽腔が 大きい例が4分の3を占めていた.その後の径変 化を見ると偽腔が小さい例で径が縮小し,偽腔が 大きい例で拡大する例が多くなっており,真腔潮 曇比はその後の大動脈径の変化の方向を決める大 切な因子であると考えられた. 一方,偽腔内血栓の程度は偽腔内の血流量と血 流速度を反映していると考えられる.血栓の推移
に関する報告は山口らによれぽ,De Bakey III型 の内科治療例13例の内2例に血栓の進行,4例に 偽腔の縮小・消失をみたとしている4ω,今回の検討 では急性期と亜急性期以降とで偽腔内血栓の推移 を観察し得た37例中,急性期に血栓がみられない 例の半数近くは亜急性期以降にもみられず,こと に上行大動脈では血栓形成が進んだ例はみられな かった.これに対し,急性期から偽腔が血栓でほ ぼ満たされていた例が17例ありその半数近くはそ の後偽腔が消失していた. また偽腔内血栓の程度と径変化との関係を見る と血栓がみられない例の割合は不変群・拡大群で 多く,縮小群では全例偽腔が血栓で満たされてい た. このように,偽腔内の血栓ぱ偽腔内を流れる血 流の多さと関係しており,血栓が形成されている 例は予後が良いことが多いと考えられる. 径変化を解剖学的変化との関係でみると,血栓 閉鎖型あるいは逆行性解離での血栓化した近位側 の大動脈径は縮小する例が多くなっていた.血栓 閉鎖型は解離の発症機序を考える上で興味深い病
態と思われる.HirstおよびWilsonはintimal
tearがみられない例が各々4%,13%あったと報 告している14)36).山田はCTを行った例の26%が 内膜非破綻性大動脈解離であったと述べ42),高宮 はDSAを併用し急性期の53%,慢性期を含め全 体で23%がこの型であったと報告している47).今 回の症例のなかではCTで経過を追った例の11% を血栓閉鎖型と診断した.この型の多くは偽腔内 血栓が縮小し,後に偽善が消失した例もみられた. しかし,発症直後に偽腔が血栓で満たされていた にも拘らず後日偽腔内に血流を確認した例を2例 経験した.他施設からも血栓閉鎖した解離腔が経 過中に真腔との交通孔を有し,逆行性解離を伴い 広範な解離早大動脈瘤になった例48)や,血栓で閉 鎖した解離腔が拡大した例42)が報告されている. 血栓閉鎖型の機序に関しては一旦形成された解離 がreentryができる前に偽腔内で血栓化が急速に 進みintimal tearを閉鎖したとする説がある が49),脆弱化した中膜においてvasa vasorumの 破綻から解離が生じるのであって,intimal tear は二次的なもので必ずしも必要ではないとの説が ある42)46)50).これら血栓閉鎖型の悪化例は後者の 説を裏付けるものではないかと考えている.今後, 急性期からCTを繰り返し行うことにより血栓閉 鎖型の経過,さらには解離博大動脈瘤の発症につ いてのより詳しい知見が得られるものと思われ る, 逆行性解離の頻度に関しては山口は52%にみら れたとしているが44>,今回の検討は広範囲に及ぶ ものだけを対象としており頻度は遙かに少なかっ た.entryより近位側においては解離腔が盲端と なっており,血流の少ないことを反映して偽腔内 が血栓で満たされ,後に径が縮小したものが多 かった.以上のことから病理形態がその後の径変化を規定する一因となっていると考えられた. 結 論 1.Stanford A型の予後は不良で急性期に重篤 な合併症が起こる頻度も高く,外科治療の適応と なる症例が多い.一方,Stanford B型の予後は良 好で合併症の頻度も低く,外科治療の適応は慎重 を要する. 2.CTは,経過を追う上で有用な検査方法であ り,ことに径の計測・偽腔内血栓の程度について 有用性が高かった.Stanford A型はB型に比べ て径が5mm以上拡大する例が多かった. 3.解離腔の進展を認める要因として特に大切 なのが解離腔の大きさである.真腔と偽腔の対比 で偽腔が小さい例で径が縮小し,偽腔が大きい例 で拡大する例の割合が多かった.偽腔内血栓は偽 腔内を流れる血流と関係があると考えられ,急性 期にみられない例ではその半数近くは亜急性期以 降にもみられず,これらの中には径が縮小した例 はなかった.上行大動脈で1血栓が進行した例はな かった.一方,急性期から藤野がほぼ血栓で満た されていた例の半数以上が経過中に偽腔が消失 し,径が縮小した例が多かった. 4.血栓閉鎖型は一般に予後良好であるが,一部 解離の進展をみた例もあった. 5.CTと予後との対比では偽腔が小さい例偽 腔内血栓が多い例,径が縮小した例で予後が良好 であった. 以上から,解離性大動脈瘤においてCTは解離 腔の推移および予後を予測する上で有用な手段で あることが認められた. 稿を終るに臨み,ご懇篤なるご指導,ご検閲を頂き ました広沢弘七郎教授,また直接ご指導を頂きました 木全心一助教授に深謝申し上げます.また終始ご指導 ご助言を賜った雨宮邦子先生に心から感謝の意を表 します. 文 献
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