子宮頚がんの検診とワクチンのお話し
2012.9.20
第35回
市民公開がん講座
市立函館病院
産婦人科
西岡
嘉宏
婦人科癌:具体的には?
卵管
卵管癌
卵巣癌
卵巣
体部
頸部
腟
外陰
子宮体癌
子宮頸がん・体癌・卵巣癌
子宮頸がん
国内の年間罹患数
約
9000
例
死亡数
約
3000
例
子体がん
年間罹患数
約
9000
例
死亡数
約
2000
例
卵巣がん
国内の罹患数
約
8000
例
死亡数
約
4500
例
部位別年齢調整死亡率(女性)
※
グラフ中の
’
子宮
’
は
頸がんと体がんを含む
子宮がん(頸がん
+
体がん)の
死亡率は低下傾向
卵巣癌は漸増傾向
子宮頸がんの特徴は?
発生にウイルス
(
パピローマウイルス
:HPV)
が関与
主に性交渉でウイルス感染が成立
若年女性
(20-30
歳代
)
の罹患率・死亡率が上昇している
検診が確立している
(2次予防)
前癌状態や上皮内癌での発見が可能
予防ワクチンが開発された(1次予防)
日本における年代別子宮頸癌罹患率
0
10
20
30
40
50
60
70
0-4 5-9 10-14 15-19 20-24 25-29 30-34 35-39 40-44 45-49 50-54 55-59 60-64 65-69 70-74 75-79 80-84 85以上1985
2005
25~44歳
罹患率(
対人口
10
万人)
診断年齢(歳)
国立がんセンターがん対策情報センター 地域癌登録全国推計によるがん罹患データ(1990年~2005年)日本における
20
~
30
歳代の女性特有の癌の
罹患率・死亡率 年次推移
羅患率(
対人口
10
万人)
死亡率(
対人口
10
万人)
1990
1990
1990
1990
1993
1993
1993
1993
1996
1996
1996
1996
1999
1999
1999
1999
2002
2002
2002
2002
2005
2005
2005
2005
0
0
0
0
10
10
10
10
20
20
20
20
30
30
30
30
40
40
40
40
0
0
0
0
1
1
1
1
2
2
2
2
3
3
3
3
1990
1990
1990
1990
1993
1993
1993
1993
1996
1996
1996
1996
1999
1999
1999
1999
2002
2002
2002
2002
2005
2005
2005
2005
*
上皮内癌を含む
国立がんセンターがん対策情報センター 地域癌登録全国推計によるがん罹患データ(1975年~2005年)より作図 国立がんセンターがん対策情報センター 人口動態統計によるがん死亡データ(1958年~2007年)より作図子宮頸癌
*
乳癌
*
卵巣癌
子宮体癌
がん検診(頸がん検診)は有効ですか?
浸潤子宮頸癌の年齢調整発生率と
検診の受診率(英国、1980~1995年)
1980
1985
1987
1990
1995
0
10
12
14
16
18
National Call/Recall System
*
の導入
100
80
60
40
20
0
(%)
検診受診率
10
万人あた
り
の
発
生率
発生率
検診受診率
* 家庭医の登録リストから受診対象者名簿を作成し、それをもとに個人へ受診勧奨を行う仕組み
Quinn M, Babb P, Jones J, Allen E. BMJ.1999;318:904–908. Adapted with permission from the BMJ Publishing Group.
83.5
79.4
78.6
75.6
72.8
72.4
71.0
70.6
70.5
69.6
69.4
65.3
0
20
40
60
80
100
米国
1英国
1ス
ウ
ェ
ーデ
ン
1ノ
ル
ウ
ェ
ー
1カ
ナ
ダ
2フ
ラ
ン
ス
2ア
イ
ス
ラ
ン
ド
1ニ
ュ
ー
ジ
ーラ
ン
ド
1フ
ィ
ン
ラ
ン
ド
1オ
ラ
ン
ダ
1デ
ン
マ
ーク
2ベ
ル
ギ
ー
1(%)
62.2
60.6
41.7
38.5
24.5
ア
イ
ル
ラ
ン
ド
1オ
ー
ス
ト
ラ
リ
ア
1ル
ク
セ
ン
ブ
ル
ク
1イ
タ
リ
ア
1日本
2子宮頸癌検診
受診率
1 Programme data. 2 Survey data.Health Care Quality Indicators Project, OECD 2009. OECD Health Data 2009 (cervical screening)
世界各国の子宮頸癌検診受診率
例:アメリカでのスクリーニング
中学~高校生の初交経験率 (
2005
年)
(%)
都性研
2008年児童・生徒の性意識性行動調査一部改変(東京都幼小中高心性教育研究会(都性研)が、1981年以来、
3年毎に都内各校種、各学年の男女500人以上の児童・生徒を対象に実施してきた性意識・性行動の実態調査
50
40
30
20
10
0
男性
女性
初交経験率
高3
高2
高1
中3
中2
35.7
44.3
23.5
26.4
12.3
14.6
4.3
9.8
1.4
5.1
0.4
0.9
中1
5.6
21.2
30.2
32.0
24.4
16.3
7.0
1.5
0
10
20
30
40
20-24
25-34
35-44
45-54
55-64
65-74
75-84
85以上
(%)
子宮癌検診受
診率
(歳)
日本における年代別子宮癌検診受診率
国民生活基礎調査 平成19年 http://www.mhlw.go.jp/toukei/saikin/hw/k-tyosa/k-tyosa07/toukei.html全体の低受診率もさることながら
若年者の検診率が低いことが問題
検診により早期発見ができれば、子宮を守ることもできます。
0
期
子宮頸部の
上皮内に
がん細胞が
とどまっている
Ⅰ期
Ⅱ期
Ⅲ期
Ⅳ期
がん細胞が
子宮頸部のみ
にある
がん細胞が
子宮頸部を
超えて、周囲に
広がってきて
いる
がん細胞が
子宮頸部を超え
て、骨盤壁や
腟の下部まで
達している
がん細胞が
子宮を超えて、
膀胱や直腸まで
広がっている
この時期に発見できれば、子宮を温存する治療ができ、
治療後の妊娠や出産も可能です。
レーザーや高周波ループなどを使用して
がんのできているところを含めて子宮頸部の
一部を円錐状に切除する方法です。
開腹せずに腟から行い、15~30分ほどで終
了します。
卵
管
卵
巣
切除範囲
病
巣
円錐切除手術
頸がん予防ワクチンとは?
●
まずはパピローマウイルス
:HPV
について
白澤浩. VIRUS REPORT2008;5(1):40-48 より改変100以上の“型(タイプ)”
皮膚に疣贅を引き起す皮膚型と、性器周辺に感染
する粘膜型(約40種類)に大別
発癌性のある高リスク型と、良性腫瘍を引き起こす低リス
ク型
●
高リスク型
:
16, 18, 31, 33, 35, 39, 45, 51, 52,
56, 58, 59, 68型など
●
低リスク型
:
6, 11型など
子宮頸癌の約70%は、HPV16型または18型が原因
尖圭コンジローマの90%以上は、HPV6型または11型
が原因
HPV
の感染経路
性的接触
性交渉、口と性器
1–3
・
コンドームを適切に使用しても完全には感染を防御できない
4
母子感染
出産時に母体から新生児へ感染する
5
報告はHPV6,11型に多い
1. Winer RL et al. Am J Epidemiol.2003;157:218–226. 2. Fairley CK et al. Epidemiol Infect.1995;115:169–176. 3. Herrero et al. J Natl Cancer Inst.2003;95:1772–1783. 4. Manhart LE et al. Sex Transm Dis.2002;29:725–735. 5. Smith EM. et al. Sex Transm Dis.2004;31:57–62.
高リスク型の
HPV
に感染すると、
その一部ががん細胞へと進行することがあります。
HPVに感染しても、多くの場合免疫力によってウイルスは体から排除され
ます。しかし、この機能がうまく働かずに、長い間感染が続いた場合に、
数年かけてがん細胞へと進行することがあります。
正常細胞
高リスク型
HPVに感染
多くの場合
自然に
排除される
ウイルスが
排除されれば
正常に戻る
がんに進まない
ものもある
一部は
感染が持続
がん細胞
この段階では
細胞に異常が生じていても、
自覚症状はない
前がん病変
HPV
感染から子宮頸がんへの過程
1
)
CIN = Cervical intraepithelial neoplasia
子宮頸がん/CIN3
HPV感染/CIN1
正常な子宮頸部
エピソーム
新たな感染性ウイルス粒子
核周囲の空胞化
(コイロサイトーシス)
組み込まれた
ウイルスDNA
感染性ウイルス粒子
Copyright © 2003 Massachusetts Medical Society. All rights reserved. 1)Goodman A and Wilbur DC:N Engl J Med. 2003;349(16):1555–1564.
笹川寿之:臨床と微生物2009; 36(1):55-62.より改変