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減数分裂期におけるヒストン脱アセチル化の生理的機能とその制御機構

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減数分裂期におけるヒストン脱アセチル化の

生理的機能とその制御機構

東京大学 大学院新領域創成科学研究科

先端生命科学専攻 資源生物制御学分野

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Table of Contents

目次

要旨 1 緒言 3 材料と方法 7 1. 卵減数分裂期におけるヒストン脱アセチル化の生理的機能 結果 11 考察 15 2. 卵減数分裂期におけるヒストン脱アセチル化の制御機構 結果 20 考察 24 結論 28 謝辞 29 参考文献 30 図表 35

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Abstract

要旨

本研究では、減数分裂の調節に重要な役割を持つと考えられるヒストンの脱 アセチル化について、その生理的機能を明らかにすることを目的とし、解析を 行った。さらに、その制御機構を明らかにするためにヒストン脱アセチル化へ のp34cdc2活性およびタンパク質合成の関与を調べた。 第一章では、卵減数分裂期おけるヒストン脱アセチル化の生理的機能につい て調べた。マウス卵減数分裂期のヒストン脱アセチル化酵素 (HDAC) 活性を Trichostatin A (TSA) により阻害し、ヒストンの脱アセチル化を抑制しても、減 数分裂進行および着床前発生に影響しないことが分かった。そこで、着床後の 胚発生への影響を調べるために、TSA 処理により減数分裂期のヒストン脱アセ チル化を阻害した胚を偽妊娠マウスに移植した。その結果、産仔数は著しく少 なく、出生後致死になるものも一部に見られた。また、胚移植を行った受容雌 マウスについて妊娠 11.5 日後に着床した胚の数を調べたところ、着床した胚の 半数以上が再吸収されているかすでに死んでいるかのどちらかであった。この 結果、減数分裂期のヒストン脱アセチル化を抑制した胚は着床後早期に致死に なることが示された。これらの異常には、染色体異常が関係しているのではな いかと仮定し、1 細胞胚分裂期での染色体数を調べたところ、減数分裂期を TSA 処理したときでは、異常な染色体数の胚が顕著に多かった。したがって、ヒス トンの脱アセチル化は減数分裂期において染色体の分配を調節する機構に関わ っていることが明らかになった。さらに、高齢マウスの卵減数分裂期について ヒストンのアセチル化状態を免疫染色法により調べたところ、アセチル化が残 存していた。この結果から、高齢期の卵では、ヒストンの脱アセチル化機構に 異常が生じ、それが染色体不分離を高頻度で起こす原因であることが示唆され

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Abstract た。 第二章では、卵減数分裂期おけるヒストン脱アセチル化の制御機構について 調べた。減数分裂期におけるH4K12 のアセチル化状態の変動を抗アセチル化 H4K12 抗体を用いた免疫染色法により調べた結果、第一および第二分裂期には 脱アセチル化されており、その間期では一時的にアセチル化された状態に戻る ことが確認された。これらのヒストン脱アセチル化状態の変動は減数分裂期の p34cdc2活性の変化パターンに類似していたため、第一および第二分裂期に起こ るp34cdc2の活性化をroscovitineにより阻害したところ、H4K12 は脱アセチル化 されなかった。このことから、減数分裂期におけるヒストンの脱アセチル化に はp34cdc2活性が必要であることが示された。さらに、p34cdc2活性がヒストンア セチル化酵素 (HAT) とHDACのどちらに影響を及ぼしているのかを調べるた めに、H4K12 が脱アセチル化された後にp34cdc2活性を阻害した。もし、p34cdc2活 性を阻害して、いったん脱アセチル化されたH4K12 が再びアセチル化されたら、 p34cdc2活性はHAT活性を抑えているということになる。しかし、実験の結果で は、H4K12 は脱アセチル化された状態のままであった。したがって、p34cdc2活 性は、HDACを活性化することにより、ヒストンを脱アセチル化させているこ とが示された。Cycloheximideを用いてタンパク質合成を阻害し、同様の実験を 行ったところ、第一および第二分裂期に起こるH4K12 の脱アセチル化は阻害さ れた。この結果から、減数分裂期に合成されるタンパク質がヒストンの脱アセ チル化に関わっていることが示された。さらに、H4K12 が脱アセチル化された 後、roscovitine処理では戻らなかったアセチル化がcycloheximide処理により回復 した。したがって、減数分裂期に合成されるタンパク質がHAT活性を抑制し、 ヒストンの脱アセチル化に関与していることが明らかになった。

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Introduction

緒言

有性生殖を行う生物は、生殖細胞である卵と精子を融合させ、全能性をもつ 受精卵を作り出すことにより、次世代の子孫へそのゲノムを正確に伝達させる ことで種の存続をなし得る。その有性生殖過程にある減数分裂は、母由来と父 由来の相同染色体を分離させることにより染色体数を半減させ、配偶子を形成 する重要なプロセスである。 哺乳類の卵減数分裂において、ゲノムの構造や性質は大きく変化する。はじ めに、体細胞分裂により増殖を繰り返した雌生殖細胞は、減数分裂 S 期に入り DNA 合成を行った後、第一減数分裂前期に進行し、卵母細胞となる。この第一 減数分裂期の前期は染色体の形態から、レプトテン期(細糸期)、ザイゴテン期 (合糸期)、パキテン期(太糸期)、ディプロテン期(複糸期)、およびディアキ ネシス期(移動期)に分類され、この間に相同染色体が対合し、体細胞で見ら れない高頻度な遺伝子の組換えが起こり、染色体が交差しキアズマが形成され る。ディプロテン期まで進行した卵母細胞はいったん減数分裂を停止する (Bachvarova, 1985)。次に、減数分裂を停止した卵母細胞は、性成熟するまで、 容積を 100 倍以上にも増加させ、その間に、発生に必要なエネルギー源、タン パク質、mRNA を蓄積する。注目すべきことに、この時期核の大きさも増加し、 卵核胞 (germinal vesicle: GV) と呼ばれる核を持つ GV 卵となる。そして、ホル モン刺激により、染色体の凝集、核膜の崩壊 (germinal vesicle breakdown: GVBD) が起こり、連続した二回の核分裂を行う減数分裂が再開される。第二減数分裂 は体細胞分裂で見られる有糸分裂とよく似た様式で行われるが、第一減数分裂 は有糸分裂と大きく異なった特徴を示す。有糸分裂では姉妹染色分体の分離が 起こるのに対し、第一減数分裂においては、キアズマを形成した父方および母

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Introduction 方由来の相同染色体間の分離が行われる。最後に、卵は第二減数分裂中期で凝 集した染色体を維持し、受精を迎える (Roberts, 1990)。 このように体細胞分裂と大きく異なる減数分裂進行におけるゲノムおよび染 色体構造の変化には、クロマチン構造や機能に減数分裂特異的な変化が必要で あると考えられる。真核生物のDNA は、ヌクレオソームを基本単位とするクロ マチン構造を形成してヒストンとともに高度に折り畳まれており、遺伝子の転 写制御やDNA 合成、組換え、修復を行うのには抑制的に働くと考えられている (Wolffe, 1997)。そのため、ヒストンの翻訳後修飾であるアセチル化、リン酸化、 メチル化、ユビキチン化などによってクロマチン構造が変化することが体細胞 では知られている (Fischle et al., 2003)。これらの修飾の作用により、化学的な構 造変換が生じてクロマチン構造が変化し、クロマチンリモデリング因子や転写 因子が結合しやすくなると考えられる。また近年、修飾部位が他のタンパク質 の認識部位になるという報告も数多くなされている (Lachner et al., 2001; Agalioti et al., 2002; Turner et al., 2002)。

ヒストンのアセチル化はクロマチン構造を変化させるもっとも研究のなされ ている修飾の一つである。ヒストンアセチル化酵素 (HATs) とヒストン脱アセチ ル化酵素 (HDACs) の力関係により、コアヒストンにおけるアミノ末端のリジン 残基のアセチル化状態が制御され、クロマチンの構造が可逆的に変換される (Wada, 2001)。一般に、ヒストンのアセチル化は、DNA とヒストンの結合を電気 的に中和し、クロマチン構造を “ゆるんだ” 状態にして、DNA への転写因子の 結合を容易にし、遺伝子の発現を活性化すると考えられている。以前の報告に より、活性化した遺伝子におけるヒストンH3 および H4 は、高度にアセチル化 されており、逆に、活性していない遺伝子ではアセチル化レベルが低いことが 明らかにされた (Clarke et al., 1993; O’Neill and Turner, 1995; Grunstein, 1997)。そ

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Introduction のアセチル化は、ヒストン H4 のリジン残基 16 番 (H4K16) に始まり、続いて H4K8 または H4K12、最後に H4K5 において起こる (Turner and Fellows, 1989; Thorne et al., 1990; O’Neill and Turner, 1995)。ヒストン H3 のリジン残基 9 番 (H3K9)および H3K14 についても、遺伝子が転写活性を持つときプロモーター領 域においてアセチル化していることが報告された (Agalioti et al., 2002)。また、 これらのヒストンのアセチル化は、体細胞において、遺伝子の転写制御のみな らず、DNA 複製、組換え、修復の際に大きな役割を果たすことが知られている (Waterborg, 2002)。 しかし、卵減数分裂進行における、クロマチン修飾の変化についてはほとん ど分かっておらず、その構造変化の役割や調節機構を明らかにすることは、減 数分裂機構を解明するために非常に興味深く意義のあることである。近年、マ ウス卵を用いた実験により、体細胞分裂期において維持される H3K9, H3K14, H4K8, H4K12, H4K16 のアセチル化が、減数分裂期ではグローバルに消去される ことが明らかになった (Kim et al., 2003)。このことはヒストンのアセチル化が、 体細胞における機能や制御以外に、減数分裂特異的な役割を持ち、また特異的 な調節機構によって制御されていることを示唆している。 減数分裂と体細胞分裂の調節機構は、多くの点で異なっている。細胞周期の 点からみると、体細胞分裂ではS期とM期が交互に起こるのに対し、減数分裂で はS期が欠如してM期が連続して起こる。この減数分裂に特異的な細胞周期には、 p34cdc2キナーゼ活性が体細胞分裂と異なる制御を受けていることが関係してい る。体細胞分裂では、間期にcyclin Bと結合したp34cdc2キナーゼは、いったんリ ン酸化されて不活性な状態にあり、脱リン酸化されることにより急激に活性化 され、分裂期に進入する (Draetta and Beach, 1988; Morla et al., 1989; Meijer et al., 1991)。一方、減数分裂では、p34cdc2キナーゼはcyclin Bと結合すると、リン酸化

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Introduction されることなく脱リン酸化状態のまま活性化される (Choi et al., 1991; Choi et al., 1992)。また、体細胞分裂期ではタンパク質の合成は減少するが、卵子減数分裂 期には、活発にタンパク質が合成され、卵成熟に重要な役割を果たしている (Schlutz and Wassarman, 1977; Shultz et al., 1979; Van Blerkom, 1981)。減数分裂期に おけるタンパク質合成を阻害すると、p34cdc2キナーゼ活性やMAPキナーゼ活性が 阻害され、減数分裂期の進行が停止することが知られている (Hashimoto and Kishimoto, 1988; Sobajima et al., 1993)。そのため、タンパク質合成が減数分裂期 特異的な現象に関わっている可能性がある。

本研究では、まず、減数分裂の調節に重要な役割を持つと考えられるヒスト ン脱アセチル化について、その生理的機能を明らかにすることを目的とし、解 析を行った。さらに、その制御機構を明らかにするためにヒストン脱アセチル 化へのp34cdc2キナーゼ活性およびタンパク質合成の関与を調べた。

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Materials and Methods

材料と方法

GV 卵の回収と体外成熟

第1 減数分裂前期で停止しているGV卵を回収するために、3 週齢のBDF1 雌マ ウス (CLEA Japan, Inc., Tokyo, Japan) またはddY雌マウス (SLC, Shizuoka, Japan) に5 IUのPMSGを腹腔内投与し、過排卵処理した。PMSG投与 47 時間後に頚椎 脱臼し、屠殺した後、マウスから卵巣を取り出し 20 mM HEPESを含むWhitten 培地 (Whitten, 1971) に移した。卵巣を注射針で突いて卵胞を破壊し、その中か らGV卵を得た。GV卵は、減数分裂を進行させるためにWhitten培地に移して炭 酸ガスインキュベータ内で培養した。減数分裂後に体外受精を行う場合は、GV 卵をWaymouth培地 (GIBCO, Life Technologies,Grand Island, NY) 中で培養し、減 数分裂を進行させた。培養は全て、5 % CO2/95 % air, 38 °Cの条件下で行った。

体外受精

精子は、リタイアICR雄マウス (SLC) の精巣上体尾部から採取し、HTF培地 (Quinn et al., 1984) 中で 1 時間培養をして、受精能を獲得させた。Waymouth培 地中で18 時間培養し、第二減数分裂中期に達した卵を精子存在下のHTF培地に 移し、体外受精させた。受精3 時間後、受精卵をKSOM培地 (Lawitts and Biggers, 1993) に移して培養を継続した。培養は全て、5% CO2/95% air, 38°Cの条件下で 行った。

阻害剤処理

卵胞から取り出してから受精3 時間後までの卵を、Trichostatin A (TSA: Sigma Biosciences, St. Louis, MO) を含むWaymouth培地およびHTF培地中で処理するこ

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Materials and Methods とにより、減数分裂期に起こるヒストンの脱アセチル化を阻害した。その後、 受精卵をKSOM培地で洗浄しTSAを除去して、培養を継続した。対照処理として、 TSAを含まないWaymouth培地中で体外成熟させ、ヒストンの脱アセチル化を起 こした卵を受精直後から受精後3 時間の間のみTSA処理して、その後KSOM培地 で洗浄しTSAを除去し、培養を継続した。H2Oを溶媒としたTrichostatin Aはスト ック濃度を10 mg/mlとし、使用直前にWaymouth培地に溶かし、最終濃度を 100 ng/mlとした。

Roscovitine (Sigma) は、最終濃度を 100 µM として用いた。溶媒に DMSO を用 いて、ストック濃度を 62.5 mM とした roscovitine は、使用直前に 100 µM roscovitine, 0.16% (v/v) DMSO となるように Whitten 培地に溶かした。GV 卵を roscovitine 処理する際は、100 µM roscovitine 及び卵核胞の崩壊を防ぐ 0.2 mM 3-Isomethylbutil 1-methylxisantin (IBMX) を含む Whitten 培地中で 1 時間の前培養 を行った。1 時間の前培養の後、卵を Whitten 培地で洗浄し IBMX を除去して、 100 µM roscovitine を含む Whitten 培地に移し減数分裂の誘発を再開した。対照処 理として、0.16% (v/v) DMSO を含む Whitten 培地を用いた。

Cycloheximide (Sigma) は、最終濃度を 10 µg/ml として用いた。DMSO を溶媒 とし、ストック濃度を10 mg/ml とした cycloheximide は、使用直前に Whitten 培 地に溶かした。GV 卵を cycloheximide 処理する際は、10 µg/ml cycloheximide 及 び0.2 mM IBMX を含む Whitten 培地中で 1 時間の前培養を行った。前培養の後、 卵を Whitten 培地で洗浄し IBMX を除去して、10 µg/ml cycloheximide を含む Whitten 培地に移し減数分裂の誘発を再開した。

胚移植と着床胚の観察

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Materials and Methods のICR 雌マウス (SLC) を胚移植する受容雌として用いた。体外培養し 2 細胞期 となった胚を 0.5 日前に交配させた受容雌の卵管に移植した。妊娠 19.5-20.5 日 後に産まれてきた産仔の数と体重をその後の成長を追って毎週記録した。妊娠 20.5 日の正午までに自然分娩しない受容マウスは、頚椎脱臼により屠殺し、帝 王切開により産仔を得た。また、受容マウスを妊娠 11.5 日後に屠殺し、再吸収 されている胚とそうでない胚の数を調べた。再吸収されていない胚については、 心臓の鼓動の有無により生死を判定した。 1 細胞分裂期受精卵の染色体分析 受精卵は、受精後11 時間から 0.1 µg/ml colcemide の添加した HTF 培地に移し 6 時間培養して、1 細胞期胚の分裂期で停止させた。その後、受精卵を 0.9% sodium citrate 溶液中に移し、室温で 10 分間低張処理を行った。低調処理した受精卵を スラドグラス上に移し、固定液 (methanol 3 : acetic acid 1) を滴下して染色体標本 を作製した。染色体は 2%ギムザ染色液で 10 分間染色した後、光学顕微鏡 (Olympus BX-51) で観察した。 高齢マウス由来の第二減数分裂期卵の回収 高齢マウスとして、36-37 週齢の ICR 雌マウス(埼玉実験動物)を用いた。高 齢マウスに、5 IU の PMSG を腹腔内投与し、その 48 時間後に 5 IU の hCG を投 与し、過排卵処理した。hCG 投与後、16 時間後に頚椎脱臼して屠殺したマウス の卵管膨大部より第二減数分裂期卵を採取した。なお、卵の周囲に付着してい る卵丘細胞は、卵をhyaluronidase (Sigma) を含む KSOM 培地中で 5 分培養する ことにより取り除いた。対照の若齢マウスとして、3-4 週齢の ICR 雌マウス(埼 玉実験動物)を用いた。

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Materials and Methods 免疫染色

実験を行った卵は、抗アセチル化 H4K12 抗体 (Upstate Biotechnology, Inc., Lake Placid, NY) を用いて免疫染色した。3.7% paraformaldehyde により 4°C で一 晩固定した卵を0.5% Triton X-100 で室温 15 分間処理し、細胞膜を可溶化した。 その後、抗アセチル化H4K12 抗体を含む PBS 中に卵を移し、室温で 1 時間反応 さ せ た 。 卵 に 結 合 し た 抗 体 は FITC-conjugated anti-Rabbit IgG (Jackson ImmunoResearch, West Grove, PA)により標識した。対比染色として DNA を 4, 6-diamidino-2-phenylindole (DAPI) により標識した。蛍光観察は共焦点レーザー 顕微鏡 (Leica TCS SP2) を用いて行った。

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Chapter 1

1. 卵減数分裂期おけるヒストン脱アセチル化の生理的機能

結果

減数分裂進行への影響 まず、マウス卵減数分裂期におけるヒストンの脱アセチル化を阻害したとき、 減数分裂の進行に影響するかどうかを調べた。減数分裂期のヒストンの脱アセ チル化はHDAC の活性化により起こるため、卵胞から取り出した GV 卵を HDAC 活性阻害剤であるTSA を含む培地中で 18 時間培養し、ヒストンがアセチル化さ れた状態のまま減数分裂を進行させた。TSA 処理し第二減数分裂中期に到達し た卵において、ヒストンのアセチル化が維持されていることを抗アセチル化 H4K12 抗体を用いた免疫染色法により確認した (Fig. 1-1)。TSA 処理したすべて の卵はGVBD を起こし、そのうち 66%の卵が第一極体を放出し、第二減数分裂 中期に到達した (Table 1)。この結果は、TSA を含まない培地中で卵減数分裂を 進行させたときとほとんど差が見られなかった。これらの結果から、減数分裂 期においてHDAC 活性を阻害しヒストンの脱アセチル化を抑制しても減数分裂 の進行には影響しないことが示された。 着床前初期発生への影響 次に、着床前初期発生に対する、卵減数分裂期におけるヒストンの脱アセチ ル化を阻害したときの影響を調べた。卵胞から取り出した後、TSA を含む培地 中で18 時間培養し第二減数分裂中期に到達した卵を受精させて、その後の発生 を調べた (Table 2)。TSA 処理は第二極体を放出し減数分裂を完了する受精後 3 時間まで行い、対照処理として、受精直後から受精後3 時間の間のみ TSA 処理 を行った。対照処理を行った卵では、TSA 処理をせずに体外成熟させたことか

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Chapter 1 ら、減数分裂期にヒストンの脱アセチル化が起きている。このような卵を受精 させて得られた胚では、61%が胚盤胞期まで発生した。一方、減数分裂期のヒス トン脱アセチル化をTSA 処理により阻害した卵でも、受精後 72%の胚が胚盤胞 期まで発生した。したがって、卵減数分裂期におけるヒストンの脱アセチル化 を阻害しても着床前までの初期発生には影響しないことが明らかになった。 着床後の発生および出生後の成長への影響 着床前初期発生には機能していないと見られる卵減数分裂期のヒストンの脱 アセチル化が着床後の胚発生にどのような役割を果たしているかを調べた。体 外成熟により減数分裂を進行させて第二減数分裂中期に到達した卵を受精させ、 2 細胞期まで体外培養した。その後、2 細胞期胚を偽妊娠させた雌マウスの卵管 に移植し、母胎内で発生させた。減数分裂期にTSA を処理せずに 2 細胞期まで 発生させた胚を移植した場合では、平均して 8.3 匹の健康な仔が妊娠 19.5 日に 産まれた (Fig. 1-2)。しかしながら、TSA 処理により減数分裂期のヒストンの脱 アセチル化を阻害した胚を移植した雌マウスからは、平均して3.7 匹の仔しか産 まれなかった (Fig. 1-2)。しかも、7 回実験を行ったうち、正常に妊娠 19.5 日に 出産したのは2 回だけで、3 回は妊娠 20.5 日に自然分娩により出産し、2 回は妊 娠20.5 日の正午までに出産しなかったため、帝王切開により仔を得た。さらに、 減数分裂期のヒストンの脱アセチル化を阻害した胚を移植した雌マウスから出 産したマウスの中には、出生直後死亡するもの、あるいは産まれて 2, 3 週間ま でに死に至るものが28 匹中 5 匹いた (Fig. 1-3)。しかし、その他のマウスには異 常が見られず、減数分裂期にヒストンが脱アセチル化された胚を移植して産ま れたマウスと成長速度に差は見られなかった (Fig. 1-4)。 次に、減数分裂期におけるヒストン脱アセチル化の阻害による産仔数の減少

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Chapter 1 の原因を明らかにするために、移植した胚が着床後に子宮内で死んでいるかど うかを調べた。胚移植を行ったマウスについて妊娠 11.5 日に子宮を開け、着床 した胚の数を数えた。減数分裂期のヒストン脱アセチル化を起こした胚を移植 したマウスでは、着床した胚はほとんどが正常に発生していた (Fig. 1-5)。しか しながら、TSA 処理し減数分裂期のヒストン脱アセチル化を阻害した胚を移植 した場合では、着床した胚の半数以上が再吸収されているかすでに死んでいる かのどちらかであった (Fig. 1-5)。 減数分裂期におけるHDAC 活性の阻害は染色体数の異常を引き起こす 減数分裂期におけるヒストン脱アセチル化を阻害した胚の着床後早期におけ る胚性致死、および出生後の異常には、卵の染色体異常が関係しているのでは ないかと仮定し、体外成熟により減数分裂を進行させて第二減数分裂中期に到 達した卵を受精させ、1 細胞胚分裂期での染色体数を染色体標本を作製して調べ た (Fig. 1-6A)。減数分裂期を TSA 処理しなかった場合では、染色体数に異常が あった胚は 21%であったのに対し、TSA 処理したときでは、異常な染色体数の 胚が62%にも達した (Fig. 1-6B)。異常な胚の染色体数については、正常な 40 本 より数が多いものと少ないものが同程度に観察された。これらの結果から、卵 減数分裂期のヒストンの脱アセチル化を阻害すると染色体数の異常を起こし、 胚性致死に至ることが示された。 高齢マウスにおいて、減数分裂期のヒストンの脱アセチル化は抑制される ヒトやマウスでは、高齢になるほど、卵減数分裂期の染色体分配に異常が起 きることが知られている (Hassold et al., 1980; Smith et al., 1987; Catala et al., 1988)。そこで、高齢マウスとして 36-37 週齢マウスを用い、若齢マウスとして

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Chapter 1 3-4 週齢マウスを用いて、第二減数分裂中期に達した卵におけるヒストンのアセ チル化状態を抗アセチル化H4K12 抗体を用いた免疫染色法により調べた。その 結果、若齢マウスでは、すべての卵でヒストンは完全に脱アセチル化していた のに対し、高齢マウス由来のほとんどの卵では、ヒストンのアセチル化がわず かに残存していた。さらに、高齢マウスの卵の中には、ヒストンが顕著にアセ チル化しているものも一部にあった (Fig. 1-7)。この結果から、高齢期の卵では ヒストンの脱アセチル化機構に異常が生じ、それが染色体不分離を高頻度で起 こす原因になることが示唆された。

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Chapter 1

考察

本研究において、TSA 処理をすることによりマウス卵減数分裂期に起きるヒ ストンの脱アセチル化を阻害すると、染色体数の異常が高率で引き起こされる ことが明らかになった。また、減数分裂期のヒストン脱アセチル化を阻害した 胚は、その半分以上が着床後早期に致死になることが示された。 ヒトでは、25%もの受精卵において染色体数に異常があると推定され、早期流 産の主たる原因であると考えられている。さらに、出産した新生児の 0.3%にお いても染色体数に異常がみられる (Hassold and Hunt, 2001)。染色体数の異常が及 ぼす影響はその染色体の種類により異なっている。ヒトの43 組の染色体のうち、 21 番染色体に異常が起こると、発生した胎児はダウン症を患うことになる。ま た、X 染色体あるいは Y 染色体の異常はそれぞれターナー症とクラインフェル ター症を引き起こすことが知られている (Tyler and Edman., 2004)。さらに深刻な ことに、これら以外の染色体の数に異常が起こった場合は、その結果生み出さ れる胚(胎児)は正常に発生することなくほとんどの場合早期に流産してしま う。また、マウスをモデルとした、染色体数の変化が引き起こす異常について 調べた報告も数多くあり、ほとんどがヒトの場合と同様に早期流産や出生後致 死になることが分かっている (Magnuson et al, 1985; Hernandez and Fisher, 1999)。 このような染色体数の異常は卵減数分裂期における染色体分配の異常が主な原 因であると考えられているが、どのような機構で卵減数分裂期の染色体分配に 異常が起こるのかほとんど分かっていない。本研究により、マウス卵減数分裂 期においてHDAC 活性を阻害し、ヒストンの脱アセチル化を抑制すると、染色 体数の異常を引き起こし胚性致死に至ることが示された。このことから、減数 分裂期において、ヒストンの脱アセチル化によるクロマチン構造の変化が、正

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Chapter 1 常な染色体分配に必要なことが示唆された。 それでは、卵減数分裂期において、染色体が正常に分配されるためにヒスト ンの脱アセチル化はどのような役割を果たしているのであろうか? 減数分裂 では第一減数分裂と第二減数分裂の連続した二回の核分裂が行われる。第二減 数分裂は体細胞分裂に見られる姉妹染色分体の分離が起こるのに対し、第一減 数分裂においては、父方と母方由来の相同染色体の分離が行われ、体細胞分裂 と大きく異なる特徴を示す。したがって、体細胞分裂期では起こらず、減数分 裂期特異的に起きるヒストンの脱アセチル化は、第二減数分裂ではなく第一減 数分裂における相同染色体の分離を正確に行うことに関わっていることが示唆 される。このことは、TSA 処理をせずに第一減数分裂から第二減数分裂中期ま で到達させ、第二減数分裂が完了する受精時にのみTSA 処理した胚における染 色体数の異常率が、体外成熟させた卵における染色体数の異常率を調べた過去 の報告 (Cukurcam et al., 2003; Mailhes et al., 2004) とほとんど変わらず、第一減 数分裂期から第二減数分裂期の完了まで継続してTSA 処理をした胚では異常な 染色体数が著しく多かったことからも支持される。 第一減数分裂では相同染色体の分配が起こるが、その分配が正確に行われる ためには、相同染色体間の物理的な結合であるキアズマが重要な役割を果たす。 すなわち、第一減数分裂前期で遺伝子組換えによって形成されたキアズマが、 相同染色体を紡錘体両極から引っ張られる力に対抗する力を生み出し、この力 のバランスにより、細胞は反対極に分配すべき相同染色体を認識し、正確に分 離させることができる。近年、様々な真核生物において、このキアズマの形成 にヒストンの翻訳後修飾が関わっているという報告がなされている。線虫の減 数分裂期の組換えに関与するhim-17 の変異体では、キアズマの形成に異常が起 こり、ヒストンH3 のリジン 9 番のメチル化レベルが低下していることが明らか

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Chapter 1 にされた (Reddy and Villeneuve, 2004)。また、出芽酵母においては、ヒストン H3 のリジン 4 番のメチル化酵素である SET1 やヒストン H2B のユビキチン化酵 素であるRad6 を欠損させると、減数分裂期の組換えに異常が起こることが分か った (Sollier et al., 2004; Yamashita et al., 2004)。さらに、ヒストンのアセチル化に 関しても、分裂酵母における減数分裂組換え部位ではヒストンH3 や H4 が高度 にアセチル化していることが報告されている (Yamada et al., 2004)。しかしなが ら、これらの報告はキアズマの形成時におけるヒストンの翻訳後修飾を調べた ものであり、キアズマが実際に機能を果たすと考えられている相同染色体の分 離が起こる分裂期にクロマチン修飾がどのように変化し機能しているのかにつ いては今のところ全く分かっていない。本研究において、TSA 処理により減数 分裂期のHDAC 活性を抑制しヒストン脱アセチル化を阻害したところ、染色体 数の異常が見られたことから、ヒストンの脱アセチル化は相同染色体分離のバ ランスに重要であると考えられるキアズマの形成後の維持に関与し、相同染色 体が正常に反対極に分離されるために必要なクロマチン修飾であるのかもしれ ない。あるいは、抗アセチル化抗体を用いた免疫染色の結果、減数分裂期にお けるヒストンの脱アセチル化はゲノム全体で起きているため、このヒストンの 脱アセチル化はキアズマだけでなく染色体全体のクロマチン構造を変化させ、 減数分裂特異的な相同染色体の分離に関わっている可能性も残されている。最 近、マウス卵をTSA 処理すると、染色体の配置に異常が起こり、一部の卵で減 数分裂の進行が阻害されたという報告がなされている (De La Fuente et al., 2004)。 本研究においては、同様の処理で減数分裂の進行自体には異常が見られなかっ たが、この違いの原因は不明である。しかし、ヒストンの脱アセチル化は、本 研究で示した染色体の分離以外にも減数分裂期において様々な役割を担ってい る可能性があり、実験系の違いがそれらに何らかの影響をもたらしたのかもし

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Chapter 1 れない。

ヒトの高齢女性では、卵の染色体不分離による胎児のトリソミーの頻度が増 加し、自然流産児における染色体異常率は母体の加齢に伴って高くなる傾向が あることが知られている (Hassold et al., 1980)。また、21 番染色体トリソミーで あるダウン症児の出生率も母親の年齢とともに増加する (Mizuno and Sato, 1984)。マウスにおいても、染色体数の異常の頻度が母体の年齢に影響されるこ とが数多く報告されている (Smith et al., 1987; Catala et al., 1988)。このことは、 加齢に伴い卵の質が低下することが原因であると考えられているが、高齢の母 体から得られた卵の異常は分子レベルでほとんど分かっていない。本研究にお いて、若齢マウスでは、卵減数分裂期のヒストンは完全に脱アセチル化されて いたのに対し、高齢マウスのほとんどの卵では、ヒストンのアセチル化がわず かに残存しており、その中には、ヒストンが顕著にアセチル化されているもの も一部にあった。これらの結果から、高齢期の卵ではヒストンの脱アセチル化 機構に異常が生じ、それが染色体不分離を高頻度で起こす原因となることが示 唆された。 減数分裂期に起きるヒストンの脱アセチル化をTSA 処理により阻害した胚を 移植したマウスから産まれてきた仔のほとんどが、ヒストンが脱アセチル化さ れた対照群の胚を移植して産まれたマウスと出生後の成長速度に差は見られな かった。しかしながら、ヒストンの脱アセチル化を阻害した胚を移植した雌マ ウスから出産したマウスの中には、出生直後死亡するもの、あるいは産まれて 2, 3 週間までに死に至るものが一部に見られた。ヒトおよびマウスでは、性染色 体の数に異常があっても致命的ではないことが知られている。現在、マウスに おいて、19 本あるすべての常染色体のトリソミーがもたらす異常について調べ られており、ほとんどが出生前に死んでしまう (Hernandez and Fisher, 1999)。ま

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Chapter 1 た、常染色体のモノソミーに関しては、そのほとんどが胚性致死に至ることが 分かっている (Magnuson et al, 1985)。マウスにおいて、異常が起こると出生後に 致死になることが知られている常染色体は19 番染色体のみである (Lorke, 1994)。 この19 番染色体の数が一本多いマウスは、分娩された後 2-3 週間しか生存でき ない。したがって、本研究において出生後致死になったマウスについては、減 数分裂期にTSA 処理をすることにより、19 番染色体の不分離が起っていた可能 性がある。しかし、19 番染色体に異常が起こるとマウスの体重は顕著に減少し ていくのに対し (Lorke, 1994)、本研究における出生後致死になったマウスの体 重は他のマウスと差がなく成長し、出生後3 週間で突然死んだものもいるため、 現在までに分かっていない染色体異常が起きている可能性も考えられ、今後の 研究により明らかにしていく必要がある。 本研究では、TSA 処理をすることにより、マウス卵減数分裂期における HDAC 活性を阻害し、ヒストンの脱アセチル化を抑制すると、染色体数の異常を引き 起こし胚性致死をもたらすことを示した。このことから、減数分裂期における ヒストンの脱アセチル化が、正常な染色体分配に重要な役割を果たしているこ とが示唆された。そして、このメカニズムを解明することは、高齢出産におい て高頻度で起こり、ダウン症など重篤な疾患をもたらす染色体異常の根本的な 治療に大きく貢献できると考えられる。

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Chapter 2

2. 減数分裂期におけるヒストン脱アセチル化の制御機構

結果

減数分裂期におけるH4K12 のアセチル化状態の時間的変化 マウス卵の減数分裂期においてH4K12 が脱アセチル化されることが以前報告 されている (Kim et al., 2003)。そこで、抗アセチル化 H4K12 抗体を用いた免疫 染色法により、減数分裂期進行におけるH4K12 のアセチル化状態の時間的変化 を調べた (Fig. 2-1A)。卵胞から取り出した直後の GV 卵においては強いシグナ ルが確認されたが、2 時間経ち分裂期の染色体を形成し始めた卵では、そのシグ ナルが弱くなった。H4K12 のアセチル化シグナルは 5 時間後には完全に消え、7 時間後においても検出されなかった。ところが、9 時間後において、実験を行っ た内のいくつかの卵に蛍光シグナルが確認された。このとき、全体の 36%の卵 が第一極体を放出し、第一減数分裂を完了していたが、これらすべての卵にア セチル化シグナルが検出された。逆に第一極体を放出していない卵においては シグナルを確認することはできなかった。13 時間後、アセチル化シグナルは再 び消失し、17 時間後まで検出されなかった。 第一減数分裂の完了がH4K12 のアセチル化に関係しているのかどうか調べる ために、8 時間後にすでに第一極体を放出している卵を取り除き、9 時間後に第 一極体を放出していた卵を回収した。こうして細胞周期を同調させ、1 時間以内 に第一極体を放出した卵について H4K12 のアセチル化シグナルを調べた結果、 すべての卵でシグナルが検出された (Fig. 2-1B)。さらに回収後 2 時間経った卵 においてはシグナルを確認することができなかった。これらの結果から、H4K12 は第一および第二減数分裂期においては脱アセチル化し、その間期ではいった

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Chapter 2 減数分裂期におけるH4K12 の脱アセチル化とp34cdc2の関係 H4K12 の脱アセチル化状態の変動が、減数分裂期におけるp34cdc2キナーゼ活 性の変化パターン (Choi et al., 1991) に類似していたため、このキナーゼ活性が 第一および第二減数分裂期におけるH4K12 の脱アセチル化に関与しているかを 調べた。まず、第一減数分裂期のp34cdc2キナーゼ活性とH4K12 の脱アセチル化 の関係を調べるために、サイクリン依存性キナーゼ活性阻害剤であるroscovitine を添加した培地中でGV卵を 4 時間培養した。これらの卵において、核膜の崩壊 は起こらず、アセチル化H4K12 を示す蛍光シグナルは検出された (Fig. 2-2A)。 次に、第二減数分裂期におけるp34cdc2キナーゼ活性とH4K12 の脱アセチル化の 関係を調べた。まず、卵胞から取り出してから 8 時間まで卵を培養し、第一減 数分裂期の後期に到達させた。このときH4K12 のアセチル化シグナルは消えて いた (Fig. 2-2B)。そして、第二減数分裂期に起こるp34cdc2キナーゼ活性を阻害す るために、卵をroscovitineを含む培地に移し、さらに 9 時間培養した。その結果、 間期に入ったために核が形成されたが、これらの卵においてアセチル化シグナ ルが検出された (Fig. 2-2B)。したがって、第一および第二減数分裂において、 H4K12 の脱アセチル化にはp34cdc2キナーゼ活性が大きく関わっていることが分 かった。 さらに、第二減数分裂期で完全にH4K12 のアセチル化が消えた状態の卵にお いて、roscovitine処理がH4K12 のアセチル化を引き起こすかどうかを調べた。ま ず、卵胞から取り出した卵を 11 時間培養し、第二減数分裂期まで進行させ、 H4K12 のアセチル化を消えた状態にした (Fig. 2-2C)。次に卵をroscovitineにより 6 時間処理した。その結果、H4K12 は脱アセチル化された状態のままだった (Fig. 2-2C)。したがって、これらの結果により、p34cdc2は第一および第二減数分裂期 においてH4K12 の脱アセチル化を引き起こすのには不可欠であるが、その状態

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Chapter 2 維持には必要ないことが示唆された。 減数分裂期に新たに合成されるタンパク質がH4K12 の脱アセチル化状態の維持 に必要である 上記の結果は、p34cdc2キナーゼが減数分裂期におけるH4K12 の脱アセチル化 に重要な役割を果たしていることを示唆している。p34cdc2キナーゼは減数分裂期 だけでなく体細胞分裂期においても活性化されるが、H4K12 の脱アセチル化は 減数分裂期特異的であり、体細胞分裂期には起こらない (Kim et al., 2003)。した がって、減数分裂期特異的な因子がこのH4K12 の脱アセチル化に関わっている と考えられる。減数分裂期中には特異的に多くのタンパク質が合成されること が知られているため (Schultz and Wssarman, 1997; Schultz et al., 1979; Van Blerkom, 1981)、H4K12 の脱アセチル化とタンパク質合成の関連を調べた。まず、 GV卵をcycloheximideを含む培地中で 4 時間培養し、第一減数分裂期のタンパク 質合成を阻害した。これらの卵は核膜の崩壊を起こし、凝集した染色体を形成 するが、H4K12 のアセチル化は維持された状態のままだった (Fig. 2-3A)。第二 減数分裂期のタンパク質合成を阻害するために、卵胞から取り出して 8 時間後 の第一減数分裂後期に達した卵を 6 時間cycloheximide処理し、H4K12 のアセチ ル化状態を調べた。その結果、これらの卵は核を形成し、アセチル化シグナル を検出することができた (Fig. 2-3B)。このことから減数分裂期に新たに合成さ れるタンパク質がH4K12 の脱アセチル化に関与していることが示唆されたが、 cycloheximide処理によりcyclin Bの合成が阻害され、その結果p34cdc2キナーゼが 不活性化された可能性は残された。 次に、完全にH4K12 のアセチル化が消えた状態の卵に対する、cycloheximide 処理の効果を調べた。まず、卵胞から取り出した卵を第二減数分裂期まで進行

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Chapter 2 させるために11 時間培養し、H4K12 を脱アセチル化した状態にした (Fig. 2-3C)。 その後、6 時間cycloheximide処理し、H4K12 のアセチル化シグナルを調べた結果、 驚くべきことにroscovitine処理では検出されなかったのに対し (Fig. 2-2C)、 cycloheximide存在下ではアセチル化が回復した (Fig. 2-3C)。これらの結果から、 減数分裂期中にはHATsが存在しているが、p34cdc2キナーゼと関係のない新たに 合成されるタンパク質により不活性化されていることが示唆された。

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Chapter 2

考察

本研究では、マウス卵においてH4K12 が、第一減数分裂期に脱アセチル化さ れ、第一減数分裂期が完了すると一時的にアセチル化を回復し、第二減数分裂 期に入ると再び脱アセチル化されることを示した。また、p34cdc2キナーゼ活性ま たはタンパク質合成の阻害により、減数分裂期特異的な脱アセチル化が抑制さ れた。さらに、第二減数分裂期のタンパク質合成阻害により、アセチル化が回 復することが明らかになった。 減数分裂期におけるH4K12 のアセチル化状態のダイナミックな変動は、HAT と HDAC が減数分裂期特異的な制御を受けていることを示唆している。H4K12 の脱アセチル化は、減数分裂期にHAT が機能せず、HDAC だけが機能している ために起こると考えられる。なぜなら、HDAC の阻害剤である Trichostatin A に より減数分裂期のHDAC 活性を抑制してもヒストンのアセチル化が起きないか らである (Kim et al., 2003)。もし、このとき HAT が活性を持つならば、Trichostatin A 処理するとアセチル化レベルが上昇するはずである。一方、体細胞分裂期に おいては、HAT も HDAC も染色体に結合できないため、ヒストンをアセチル化 および脱アセチル化できないという報告がある (Kruhlak et al., 2001)。したがっ て、HAT は体細胞分裂期および減数分裂期の両方で機能することができないが、 HDAC は減数分裂期だけで機能し、グローバルなヒストンの脱アセチル化をも たらす (Kim et al., 2003)。しかしながら、本研究により、H4K12 のアセチル化が 第一減数分裂期と第二減数分裂期の間で一時的に起きることが明らかになり、 染色体が凝集した状態のままであるのにもかかわらず、この時期にHAT が機能 していることが示された (Fig. 2-1B)。この結果により、HAT は分裂間期の染色 体に結合することができるが、分裂期特異的な因子がその結合を抑制している

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Chapter 2 ことが示唆された。あるいは、体細胞分裂期と減数分裂期とではHAT の結合力 という点でクロマチンの形態に差異があるかもしれない。 減数分裂期におけるヒストンアセチル化状態の時間的変化はp34cdc2キナーゼ 活性の変化パターンと一致していた。以前の実験により、p34cdc2キナーゼ活性は 第一減数分裂後期まで徐々に増加し、第一極体の放出にともない急激に減少し、 第二減数分裂に入ると再び上昇することが分かっている (Choi et al., 1991)。本研 究において、H4K12 のアセチル化は、第一減数分裂期では徐々に減少し、第一 極体の放出時に一時的に回復し、第二減数分裂期に入ると再び消失した (Fig. 2-1)。これらの結果から、p34cdc2キナーゼ活性が減数分裂期のH4K12 の脱アセチ ル化を制御していることが示唆された。これはroscovitineによりp34cdc2キナーゼ 活性を抑制すると第一および第二減数分裂期に起こる脱アセチル化が阻害され たことからも支持される (Fig. 2-2)。 したがって、p34cdc2キナーゼ活性がHDACを活性化させることにより減数分裂 期におけるH4K12 の脱アセチル化を引き起こしていると考えられる。一般にヒ ストンのアセチル化状態はHATとHDACの力関係により制御されている。以前の 報告で、ヒストンがすでに脱アセチル化された状態の卵をHDAC阻害剤である Trichostatin Aで処理したところ、ヒストンは脱アセチル化されたままだったので、 グローバルな脱アセチル化はHATの不活性化ではなく、HDAC活性の上昇による ものであることが明らかにされた (Kim et al., 2003)。つまり、第一および第二減 数分裂期においてはHATではなくHDACが機能している。しかしながら、本研究 において、第一減数分裂期と第二減数分裂期の間でHATが一時的に機能してい ることを明らかにした (Fig. 2-1)。第二減数分裂期に入りH4K12 が完全に脱アセ チル化された状態の卵をroscovitine処理した結果、H4K12 は脱アセチル化された ままだった。このことはp34cdc2キナーゼ活性がHAT活性に影響していないことを

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Chapter 2 示唆している。なぜなら、もしp34cdc2キナーゼ活性がHAT活性を阻害して脱アセ チル化を起こしているならば、p34cdc2キナーゼ活性を抑制したときにH4K12 の アセチル化レベルが上昇するはずである。したがって、p34cdc2キナーゼはHATで はなくHDACを活性化させているようだ。P34cdc2キナーゼによる減数分裂期特異 的なHDACの活性化の機構については更なる研究が必要である。 cycloheximideを用いた実験により、減数分裂期におけるタンパク質合成が H4K12 の脱アセチル化に重要な役割を果たすことが明らかになった。GV卵を cycloheximideで 4 時間処理したところ、核膜の崩壊と染色体の凝集が起きたが、 H4K12 のアセチル化は維持された状態だった。以前の報告によると、GV卵にお いて、すでに少量のcyclin Bがp34cdc2キナーゼと結合していることが示唆されて いる (Choi et al., 1992)。このことは、p34cdc2キナーゼがタンパク質合成を必要と せずに、脱リン酸化されて活性化し、核膜の崩壊と染色体凝集を起こすことを 示している。つまり、cycloheximide処理したGV卵では、核膜の崩壊に示される とおりp34cdc2キナーゼは活性化されている。しかしH4K12 の脱アセチル化は起 こらなかった。これらの結果から、H4K12 の脱アセチル化にはp34cdc2キナーゼ 活性とタンパク質合成の両方が必要であることが示唆された。あるいは、この 脱アセチル化には、高いレベルのp34cdc2キナーゼ活性が必要なのかもしれない。 つまり、cycloheximide処理した卵では、p34cdc2キナーゼ活性がH4K12 の脱アセチ ル化を引き起こすほど十分ではないのかもしれない。 第 二 減 数 分 裂 期 に 入 りH4K12 が完全に脱アセチル化された状態の卵を cycloheximide処理した結果、H4K12 は凝集した染色体の状態でアセチル化され た (Fig. 2-3C)。このことは、新たに合成されるタンパク質がHAT活性を抑制し ていることを示している。逆に、roscovitine処理した卵では、H4K12 は脱アセチ ル化された状態のままだった (Fig. 2-2C)。これらの結果から、p34cdc2キナーゼ活

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Chapter 2 性には関係のない新生タンパク質が、減数分裂期におけるH4K12 の脱アセチル 化状態の維持に関わっていることが示唆された。 本研究により、減数分裂期において、p34cdc2キナーゼ活性がHDACを活性化さ せることによりH4K12 の脱アセチル化を引き起こし、その脱アセチル化状態の 維持にHAT活性を抑制する新生タンパク質が関与していることを明らかにした (Fig. 2-4)。

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Conclusion

結論

本研究では、TSA処理をすることにより、マウス卵減数分裂期におけるHDAC 活性を阻害し、ヒストンの脱アセチル化を抑制すると、染色体数の異常を引き 起こし胚性致死および出生後致死をもたらすことを示した。このことから、減 数分裂期におけるヒストンの脱アセチル化が、正常な染色体分配に重要な役割 を果たしていることが示唆された。また、卵減数分裂期におけるヒストン脱ア セチル化の制御機構について調べたところ、p34cdc2活性によってHDACが活性化 され、さらに新しく合成されたタンパク質によってHATが不活性化されること により、この時期特異的な脱アセチル化が起こることが示唆された。

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Acknowledgements

謝辞

本論文を終えるにあたり, 研究及び論文の作製を終始親身に御助言・御指導 頂きました東京大学大学院 新領域創成科学研究科 先端生命科学専攻 資源生 物制御学分野 青木不学 助教授に深く感謝致します。また研究を進める上で 様々な御助言を頂きました同大学大学院同分野 永田昌男 教授に感謝致します。 実験の進行におきまして多大なる技術的指導・専門的知識および様々な御助 力を頂きました同大学大学院同分野の諸先輩方に感謝致します。 また様々な苦労および困難にも励ましの言葉を頂いた同大学大学院同分野の 同期生・後輩の皆様に感謝致します。 最後に、本研究を円滑に進めるように素晴らしい環境を提供して頂いた家族 ならびに本研究に関わったすべての人に感謝致します。

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(37)

Tables and Figures

Table 1. Trichostatin A (TSA) により減数分裂期のヒストン脱アセチル化を阻害したとき の減数分裂進行

No. of oocytes

cultured GVBD MII

TSA - 159 159 (100) 107 (67.3)

TSA + 122 122 (100) 80 (65.6)

(38)

Tables and Figures

Table 2. Trichostatin A (TSA) により減数分裂期のヒストン脱アセチル化を阻害したときの

着床前初期発生

No. of embryos

examined 2-cell 4-cell Morula Blastocyst TSA - 33 29 (87.9) 24 (72.7) 22 (66.7) 20 (60.6) TSA + 50 46 (92.0) 42 (84.0) 40 (80.0) 36 (72.0) Condition No. (%) of embryos developed into

(39)

Tables and Figures

AcH4K12

DAPI

MII

MII

TSA- TSA+

GV

Fig. 1-1. Trichostatin A (TSA) による減数分裂期のヒストン脱アセチル化の阻害 減数分裂期中の卵を抗アセチル化H4K12抗体 (AcH4K12) により免疫染色した。抗体 はFITC標識二次抗体 (green) を用いて可視化した。DNAをDAPI (blue) により染色し た。GV卵 (GV) を卵胞から取り出してから、TSAを含む培養液中 (TSA +)、または TSAを含まない培養液中 (TSA -) で18時間培養し、第二減数分裂中期 (MII) まで到達 させた。実験は2回行い、同様の結果が得られた。

(40)

Tables and Figures

0

1

2

3

4

5

6

7

8

9

10

1 2 N u mb er o f o ffs p ri n g TSA - TSA + Fig. 1-2. 減数分裂期のヒストン脱アセチル化の阻害は着床後の胚発生および出生後の成長に影響する TSA処理せずに体外成熟させ、受精時のみTSA処理した2細胞期胚 (TSA -) と減数分裂期再開から受精 時までTSA処理した2細胞期胚 (TSA +) を移植した雌マウスから産まれてきた仔の数を数えた。実験は それぞれ7回行い、移植する胚の数を14-22個にしたが、いずれの場合も減数分裂期のヒストンの脱ア セチル化を阻害したほう(TSA +) がヒストンの脱アセチル化を起こした場合 (TSA -) に比べ、著しく 産仔数が少なかった(Student’s t-test, P < 0.005)。エラーバーは標準誤差を示す。

(41)

Tables and Figures

Fig. 1-3. 減数分裂期再開から受精時までTSA処理した胚を移植した雌マウスから出産し、出生後に異

常のあったマウス。生後1日において出生日よりも体重が軽くなっていた (right)。正常に発育した生後 1日のマウス (left)。

(42)

Tables and Figures 0 5 10 15 20 25 30 1 2 3 4 TSA -TSA + 0 2 4 6 W eig h t ( g )

Weeks after birth

Fig. 1-4. TSA処理せずに体外成熟させ、受精時のみTSA処理した2細胞期胚 (TSA -) と減数分裂期再開

から受精時までTSA処理した2細胞期胚 (TSA +) を移植した雌マウスから産まれてきた仔の平均体重を 6週間後まで測定した。 測定したマウスの数は、n = 37 (TSA -), n = 25 (TSA +) とした。TSA + では、 途中で5匹死亡したが、死亡しなかったものはTSA - と成長速度に差は見られなかった。エラーバーは 標準誤差を示す。

(43)

Tables and Figures

0

2

4

6

8

10

12

1 2

live

resorbed or dead

TSA - TSA + N u m b er of off spr in g

Fig. 1-5. TSA処理せずに体外成熟させ、受精時のみTSA処理した2細胞期胚 (TSA -) と減数分裂期再開

から受精時までTSA処理した2細胞期胚 (TSA +) を移植した雌マウスを妊娠11.5日後に屠殺し、子宮を 開き着床胚を観察した。減数分裂期のヒストンの脱アセチル化を阻害したほう(TSA +) が脱アセチル 化を起こした場合(TSA -) に比べ、再吸収された胚やすでに死んでいる胚の数が著しく多かった。

(44)

Tables and Figures 0 20 40 60 80 100 1 2

euploidy

aneuploidy

Fig. 1-6. 減数分裂期のヒストン脱アセチル化を阻害した受精卵は染色体数に異常を起こす TSA処理せずに体外成熟させ、受精時のみTSA処理した受精卵 (TSA -) と減数分裂期再開から受精時 までTSA処理した受精卵 (TSA +) の染色体の状態を調べた。 (A) 1細胞期分裂期における受精卵の凝集 した染色体。点線により雌雄の前核由来の染色体を示している。染色体が1本多く全部で21本ある前 核を矢印により示している。(B) 1細胞期分裂期胚の染色体の数を調べた。実験は3回行い、データを 合計して示した。調べた胚の数は、n = 34 (TSA -), n = 29 (TSA +)とした。 染色体数に異常のあった 胚の割合は、TSA + の胚の方がTSA – の胚よりも有意に多かった (x2- test, p < 0.005)。

TSA - TSA + Pe rc en t (% )

B

A

One-cell zygotes TSA- TSA+ One-cell zygotes TSA- TSA+

(45)

Tables and Figures AcH4K12 DAPI 3 W 36 W Fig. 1-7. 高齢マウスの卵減数分裂期におけるヒストンのアセチル化状態 高齢マウスとして、36週齢 (36 W) のICRマウスを用い、対照の若齢マウスとして、3週齢 (3 W) の ICRマウスを用いた。マウスの卵管膨大部から取り出した第二減数分裂期卵を、抗アセチル化H4K12 抗体(AcH4K12) により免疫染色した。抗体はFITC標識二次抗体 (green) を用いて可視化した。DNA をDAPI (blue) により染色した。若齢マウスでは、すべての卵でヒストンのアセチル化は完全に消え ていたのに対し、高齢マウスでは、ほとんどの卵でヒストンのアセチル化が残存していた。図は顕 著にシグナルが検出されたものを示している。実験は2回行い、同様の結果が得られた。

(46)

Tables and Figures

A

B

AcH4K12 DAPI 8 h 9 h 11 h AcH4K12 DAPI GV 2 h 5 h 7 h 9 h 13 h 17 h Fig. 2-1. 減数分裂期におけるヒストンH4のリジン12番 (H4K12)のアセチル化状態の時間的変化 減数分裂期中の卵を抗アセチル化H4K12抗体により免疫染色した。その抗体をFITC標識二次抗 体(green) を用いて可視化した。DNAをDAPI (blue) により染色した。(A) GV卵 (GV) を卵胞か ら取り出してから、それぞれ図に示す時間まで培養し回収した。9時間においては、約36%の卵 が第一極体を放出し、これらの卵では蛍光シグナルが検出された。実験は2回行い、同様の結果 が得られた。(B) 卵胞から取り出し8時間後にすでに第一極体を放出している卵を取り除き、9時 間後に第一極体を放出していた卵を回収することにより、卵の細胞周期を同調させた。同調さ せた卵をそれぞれ示す時間に回収し、免疫染色した。実験は3回行い、同様の結果が得られた。

A

B

AcH4K12 DAPI 8 h 9 h 11 h AcH4K12 DAPI GV 2 h 5 h 7 h 9 h 13 h 17 h Fig. 2-1. 減数分裂期におけるヒストンH4のリジン12番 (H4K12)のアセチル化状態の時間的変化 減数分裂期中の卵を抗アセチル化H4K12抗体により免疫染色した。その抗体をFITC標識二次抗 体(green) を用いて可視化した。DNAをDAPI (blue) により染色した。(A) GV卵 (GV) を卵胞か ら取り出してから、それぞれ図に示す時間まで培養し回収した。9時間においては、約36%の卵 が第一極体を放出し、これらの卵では蛍光シグナルが検出された。実験は2回行い、同様の結果 が得られた。(B) 卵胞から取り出し8時間後にすでに第一極体を放出している卵を取り除き、9時 間後に第一極体を放出していた卵を回収することにより、卵の細胞周期を同調させた。同調さ せた卵をそれぞれ示す時間に回収し、免疫染色した。実験は3回行い、同様の結果が得られた。

(47)

Tables and Figures GV 4 h ros 4 h 8 h 17 h 8 h + ros 9 h

A

B

AcH4K12 DAPI

Fig. 2-2. 減数分裂期におけるroscovitine (ros) のヒストンH4のリジン12番 (H4K12) に対する影響

減数分裂期中の卵を抗アセチル化H4K12抗体により免疫染色した。その抗体をFITC標識二次抗体 (green) を用いて可視化した。DNAをDAPI (blue) により染色した。(A) GV卵を卵胞から取り出しroscovitineまた はDMSOおよびIBMXを含む培養液中で1時間前培養した。続けて、その卵をroscovitine (ros 4 h) または DMSO (4 h) を含む培養液中で4時間を培養した。(B) 卵胞から取り出した卵を培養液中で8時間培養し、 第一減数分裂期後期まで進行させ、その後、roscovitine (8 h + ros 9 h) またはDMSO (17 h) を含む培養液 中で9時間培養した。 (C) 卵胞から取り出した卵を培養液中で11時間培養し、第二減数分裂期まで進行さ せ、その後、roscovitine (11 h + ros 6 h) またはDMSO (17 h) を含む培養液中で6時間培養した。実験は3 回行い、同様の結果が得られた。 AcH4K12 DAPI 11 h 17 h 11 h + ros 6 h

C

AcH4K12 DAPI

(48)

Tables and Figures GV 4 h cx 4 h 8 h 17 h 8 h + cx 9 h

A

B

AcH4K12 DAPI AcH4K12 DAPI Fig. 2-3. 減数分裂期におけるcycloheximide (cx) のヒストンH4のリジン12番 (H4K12) に対する影響 減数分裂期中の卵を抗アセチル化H4K12抗体により免疫染色した。その抗体をFITC標識二次抗体 (green) を用いて可視化した。DNAをDAPI (blue) により染色した。(A) GV卵を卵胞から取り出しcycloheximideお よびIBMXを含む培養液中で1時間前培養した。続けて、その卵をcycloheximide (cx 4 h) または (4 h) を含 む培養液中で4時間を培養した。(B) 卵胞から取り出した卵を培養液中で8時間培養し、第一減数分裂期後 期まで進行させ、その後、cycloheximide含む培養液中 (11 h + cx 9 h)、またはcycloheximide含まない培養 液中(17 h) で9時間培養した。 (C) 卵胞から取り出した卵を培養液中で11時間培養し、第二減数分裂期ま で進行させ、その後、cycloheximide含む培養液中 (11 h + cx 6 h)、またはcycloheximide含まない培養液中 (17 h) で6時間培養した。実験は3回行い、同様の結果が得られた。 11 h 17 h 11 h + cx 6 h

C

AcH4K12 DAPI

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