個人研修テーマ・11月分 「アグロフォレストリー導入に取り組むマニコレの人々の様子・およびHANDSの取り組み」 [業務概要] 主に農業技術者について遠隔地の農園の視察。Nazare村ではカカオの苗の移植の手伝いな ども行った。 [体験したこと] ・遠隔地の農園の視察への同行。 トメアスーの日系農家およびマナウスのCEPLAC(政府のカカオ研究機関。アグロフォレストリー も含む。)にて研修を行っていた農業技術者、ジョナタス氏がマニコレに戻ってきたので、彼が遠隔 地にて農園の視察を行った際に同行させてもらった。 【Fatima 村】 農民へのミーティングおよび、作成されたヴィヴェイロ(苗を置いておく小屋のようなもの)の視察、 Vassoura de Bruxa に感染したカカオの枝の除去の仕方のデモンストレーションを行った。 共同で作ったというヴィヴェイロ Vassoura de Bruxa に感染した部位の切除。感染部位を見つけると、おもむろにリュックサックから 肥後神のようなナイフを出し、てきぱきと解説しながら枝を切り始めた。こういった実演が臨機応変 にできるあたりはさすがである。
【Sao Raimundo村】 Capana GrandeのSao Raimundo村の農民を訪ね、農民とのミーティングを行った。この コミュニティにはヴィヴェイロ(苗を置いておくための小屋のようなもの)が設置されているものの、屋 根がなく、強い日差しのせいか、枯れてしまっているアサイーなどの苗がみられた。 屋根のないヴィヴェイロ。 枯れてしまっているアサイーの苗。
ヴィヴェイロの屋根には、パーリャと呼ばれる櫛状のヤシの葉をいくつか被せて日陰を確保するこ とが多い。もちろん植物が発芽するためには日光が必要であるが、あまりにも日光が当たりすぎる と植物自体が日焼けしてしまったり、水をあげても土がすぐに乾いてしまってうまく育たない。(乾季 であると日照りが続くので、なおさらである。)また、川から水を引くポンプがない場合はバケツなど に水を汲んで持ってこなければならず、水やりに労力を費やすこともあるので、少しでも土がカラカ ラに乾いてしまわないようにする工夫は必要だと思った。 【Sao Francisco村(Capanazinho)】 CapanazinhoのSao Francisco村を訪問し、農民を集めミーティング、その後一人の農民 の農園を視察した。ミーティングでは、主にアグロフォレストリーについての説明がジョナタス氏から なされたが、やはりまだアグロフォレストリーについて知らない人も多いように感じた。 写真上で立って話をしているのは、Sao Franciscoに住むヘイナウド氏で、以前HANDSが 行った、トメアスーでのアグロフォレストリー研修に参加しており、自身の農園でもアグロフォレスト リーを実践している。他の農民の前で、「自分の農園を見て、アグロフォレストリーを実践している農 園を見てほしい!」と熱く語る姿が印象的であった。(ミーティング後の視察を行ったのは彼の農園 であった。) ミーティング終了後は写真上のように個別に質問しにくる姿も見られた。Jonatas氏はその際、 手にしているノートにそれぞれの農民が持っている農園の面積などのデータを記録していた。
農園の視察では、ヘイナウド氏が自身の農園を案内してくれた。 上はマラクジャ(パッションフルーツ)のプランテーションで、杭を打ち針金を張って、マラクジャを伝 わらせて育てる方法をとっている。 マラクジャとマラクジャの間には、マニーバ(マンジョッカ芋)やカカオが植えてある。カカオは日光に 弱いので、針金から垂れ下がったマラクジャが作る影を利用して、日光の量を調節するという形で 混生を試みていた。 マニーバ(マンジョッカ芋) カカオ
また、Reinaldo氏はアバカシ(パイナップル)を試験的に場所を確保して植えていたり、カカオの 根元に、腐らせたカカオの殻や、アサイーの実のなる房などを敷いて、肥料の実験を自発的に行っ ていた。 アバカシ(パイナップルの試験的な導入。植える間隔などを調整しているようであった。) カカオの殻を用いた肥料の実験(カカオ) アサイーの実のなる房を利用した肥料の実験(カカオ) (「肥料の実験か?」と聞くと「そうだ」と答えられたが、もしかするとカカオの周りに房を敷くことで 地面から水分が蒸発するのを軽減させる実験を行っているのかもしれない。枯葉を木の根元にか き集めて、水分の蒸発を防ぐ手法は存在する。)
【Nazare村】 CapanazinhoのNazare村の農民を訪れ、グレイ氏の農園の視察を行った。 以前のアグロフォレストリーレポートでも報告したとおり、グレイ氏はマラクジャのプランテーションを 持っているが、今回作ったカカオの苗は、このマラクジャのプランテーションに組み込む予定である そうである。 セメンテイラに種を撒いて発芽させたカカオを、土の入った苗袋に移植する作業 Sao Franciscoのヘイナウド氏の農園のように、マラクジャが作り出す影によって日光の量を 調節してやることができれば、このカカオともうまく混生させることができる。 [市街地郊外アグロフォレストリー実験農園の様子] 先月、カカオを入れたアグロフォレストリー実験農園の様子である。 一目見てわかるように、ずいぶんと緑が多くなっている。また、小さかった作物の芽も大きく育ち、 アグロフォレストリーの農園の特徴とも言える作物の列がだいぶはっきりとわかるようになってきた。 マニーバ(マンジョッカ芋)を植える際、こちらの農民にとっては適当に前に進みながら耕して植えて いくのが普通であることを知ったが、ここまで作物が大きくなってくれば、作物が列になって整頓さ れて植えられている姿に関心をもつのではないかと思う。 以下は先々月以降に植えた作物の成長具合である。先々月からのレポートの写真と比較すると その成長具合がはっきりとわかると思うので、参照されたい。
マニーバ(マンジョッカ芋)
陸稲
トウモロコシ
また、トウモロコシに至っては、人の背の高さより少し低いぐらいの高さまで成長しているもの、す でに実をつけているものも見られた。
(比較写真はバックパッキング中にマニコレを訪れた矢澤の友人。身長は○○cmほど。) 実をつけたとうもろこし 最近マニコレはようやく雨季に差し掛かったようで、何日かに一度はスコールが来るようになって る。マニーバ、陸稲、トウモロコシが非常によく育っているのは適度に水分を補給できているからで あろう。今後もテカ、アンジローバなどの作物を植えていく予定であるが、このまま順調に適度に雨 が振ってくれれば、乾燥にやられる可能性も低いのではないだろうか。 【感じたこと】 今月から遠隔地への出張の際、Jonatas氏について農園の視察に同行させてもらうことが多く なった。まだ22歳と若いが、農耕学校、トメアスーならびにマナウスのCEPLACでみっちりと研修 を行ってきただけあり、非常に的確なアドバイスをしている様子が印象的であった。
Sao Raimundoにて農民とのミーティング このSao Raimundoにはカカオがあるのだが、そのカカオを例にとってアグロフォレストリーを説 明していた。トメアスーでは日光に弱いカカオを育てるために、日陰を確保するためだけにバナナを 植えていたそうである。このバナナの実は鳥のエサや、肥料に利用されていたが、ここマニコレでは バナナも売り物とすることができ、カカオとバナナの2つの収入が得られると説明し、農民にとって 一番肝心ともいえる「収入」について言及していた。このような形で説明をされることで、興味を持 つ農民も多いのではないだろうか。 また、Sao Raimundoにあったカカオの木から何枚か葉を取って実際にカカオについて語る様 子も見られた。カカオは日光に弱いことはすでに述べたが、日光に当たりすぎたカカオの特徴として 「葉が異常に長くなる」ということであった。(彼によればそれに加え、葉が黄ばんで見えるそうであ るが、私にはわからなかった。)トメアスーでもマナウス(CEPLACはカカオの研究機関であるため か?)でも、カカオについての実用的な知識を学んできた、と語っているだけあり、カカオに関する知 識には長けているように思える。 また、彼にいくつかインタビューを行った際、「なぜカカオなのか?」とたずねると、「ここ(マニコレ) には多くのカカオが自生しているが、ありふれているせいか人々はあまり気にしない。だからこそカ カオについて知っておく必要がある。」とはっきり答えていた。確かにマニコレではカカオが多く自生 している姿はよく見られる。ということはカカオを育てるのに適した土地であるといえるから、病気や 手入れ、性質についての知識さえあれば農民にとっても「生きる」作物であるといえるだろう。よって、 実際にトメアスーやマナウスで研修を行い、Vassoura de Bruxa の除去などを実演できる人物がこ こマニコレにいるということは、非常に心強い存在であると思う。
また、ジョナタス氏は来年から、自身が生まれた遠隔地へのアグロフォレストリーのモデル農園の 作成を任されている。若干22歳という若さでマニコレでのアグロフォレストリー普及に大きな役割を 担う存在である。