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1.はじめに

医薬品・医療機器産業は日本の成長牽引役とし て更なる成長・発展が見込まれる産業分野であり, 昨年 6 月に閣議決定された「日本再興戦略」にお いても健康長寿産業を戦略的分野の一つに位置づ けている.医薬品・医療機器産業の活性化により 世界最高水準の革新的な医薬品・医療機器・再生 医療等製品を早期に創出し,国民に迅速に提供す ることが期待されている.また,医療機器につい ては,我が国のものづくりの強みを生かし,国際 競争力を持って医療機器の開発を進めることが産 業を活性化するために必要である. 医療機器は薬事法により規制されているが,規 制の観点からも革新的な医療機器の開発促進等の ため,医療機器の特性を踏まえた規制となるよ う,平成25年11月に薬事法改正が国会で成立した ので,本稿では医療機器に関する法改正内容につ いて説明したい. 厚生労働省保険局医療課 〒100–8916 東京都千代田区霞が関1–2–2

特集(薬事法改正等)

医療機器の薬事法改正

Amendment of Pharmaceutical Affairs Law

安川 孝志

Takashi YASUKAWA

Abstract

Based on the amendment of Pharmaceutical Affairs Law (PAL) which is to be implemented on 25 November 2014, the Ministry of Health, Labour and Welfare is introducing regulations taking into account characteristics of medical device, which will result in acceleration of medical device market-ing under more rational regulations. The name of PAL is changed to “Act on Securmarket-ing Quality, Effi-cacy and Safety of Pharmaceuticals, Medical Devices, Regenerative and Cellular Therapy Products, Gene Therapy Products, and Cosmetics (PMD Act)”. This change intends to clarify the scope of PMD Act includes medical device.

抄  録

厚生労働省では,医療機器の迅速な実用化と規制の合理化を行うため,平成26年11月25日に施行され る薬事法改正により,医療機器の特性を踏まえた制度とする予定.薬事法の名称は「医薬品,医療機器 等の品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律(医薬品医療機器等法)」に改正され,医療機器の 法律であることが明確になる.

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2.医療機器の特性を踏まえた薬事法改正

(1)薬事法の改正(図1) 医療機器は,品質,有効性及び安全性を確保 し,人に対する健康被害を未然に防止することが 必要であり,このため市販前の承認審査や市販後 における不具合等の情報収集,安全対策などを 行っているのは医薬品と同様である. 一方で,医療機器は医師等が使う道具であるこ とから,使い勝手の向上など医療現場のニーズを もとに改良・改善を繰り返しながら開発を進めて いくものであり,薬理作用がある化学物質を探索 することで開発が進められる医薬品とは実用化の プロセスが異なるものである.また,有効性・安 全性を確認すべき内容や,実際に製品を製造する 製造管理・品質管理についても医薬品とは考え方 が異なるものである.さらに,医療機器の種類は 医療材料から装置系の機器など多種多様であり, 一律の規制により取り扱うことは困難である. 現在,医療機器は薬事法の下で規制されている が,薬事法は医薬品を基にした規制となっている ことから,医療機器の特性を踏まえた規制となる よう,薬事法を改正することとし,「薬事法等の 一部を改正する法律」が平成25年11月27日に公布 された.施行は「公布の日から 1 年を超えない範 囲内において政令で定める日」とされており,具 体的には平成26年11月25日に施行される. (2)医療機器の議員立法(図2) このほか,医療機器の研究開発及び普及の促進 に関する施策を総合的かつ計画的に推進するた め,議員立法により「国民が受ける医療の質の向 上のための医療機器の研究開発及び普及の促進に 関する法律」が平成26年 6 月27日に公布された. この法律では施策の基本となる基本計画を作成 し,具体的な目標や達成状況を示していくほか, 基本的な施策として,法制上,財政上,税制上の 措置などを行うこととしており,このうち法制上 図 1  薬事法等の一部を改正する法律の概要(平成25年法律第84号)

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の対応が薬事法改正に該当する.

3.薬事法改正の内容

(1)法改正の概要 薬事法改正の概要は図 1 のとおりであるが,大 きく分けて 3 つの柱から成り立っている. 1 つ目 は添付文書の届出義務の創設などによる医薬品, 医療機器等に係る安全対策の強化, 2 つ目は登録 認証機関による認証範囲の拡大などによる医療機 器の特性を踏まえた規制の構築, 3 つ目は iPS 細 胞など再生医療の進歩に伴い,再生医療等製品を 新たに法律上定義することや条件及び期限付承認 制度の創設など再生医療等製品の特性を踏まえた 規制の構築である. (2)医療機器の特性を踏まえた規制の 具体的内容(図3) ①医薬品とは別個の章の新設,法律の名称の改正 法改正では法律の構成を改正している.法律に おける製造販売業・製造業に関する章では,医薬 品と医療機器が同様の規定となっているが,医薬 品とは章を区分して規定することで,医療機器の 特性に応じた規制を設けることができる取扱いと した.体外診断用医薬品についても,法律上の分 類は医薬品であるが,製造販売業・製造業に関す る事項は医療機器の規制の考え方を導入している ことから,体外診断用医薬品も医療機器と同じ章 で取り扱うこととした. また,薬事法の名称を「医薬品,医療機器等の 品質,有効性及び安全性の確保等に関する法律」 (略称:医薬品医療機器等法)に改正し,医療機 器に関する法律であることを明示することとした. ②民間の第三者機関を活用した認証制度の拡大  (図 4 ) 医療機器はリスクの程度に応じた規制となって おり,リスクの低いものから一般医療機器,管理 医療機器,高度管理医療機器に分類されている. 現行制度では,医療機器を流通させようとする場 合(製造販売しようとする場合),(ⅰ)高度管理 図 2  国民が受ける医療の質の向上のための医療機器の研究開発及び普及の促進に関する法律の概要 (平成26年法律第99号)

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医療機器は厚生労働大臣の承認(独立行政法人医 薬品医療機器総合機構(PMDA)による審査), (ⅱ)管理医療機器のうち基準を定めたものは厚 生労働大臣の登録を受けた民間の第三者機関(登 録認証機関)による認証,それ以外の管理医療機 器は厚生労働大臣の承認,(ⅲ)一般医療機器は 図 3  医療機器の特性を踏まえた規制の構築

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厚生労働大臣への届出が必要となっている. 法改正では,これまで管理医療機器のみであっ た認証品目について,基準を定めた高度管理医療 機器にも拡大することとしている.これにより, PMDA の審査は,革新的な新医療機器などに重 点化することが可能になり,審査の迅速化が期待 できる. 一方で,よりリスクの高い医療機器を登録認証 機関が審査することになるので,実際に高度管理 医療機器の承認審査を担当している PMDA が登 録認証機関に対する立入検査をできるようにする ことや,登録認証機関に対して認証基準の審査に 関するトレーニングを実施することなど,適切に 認証審査ができるよう登録認証機関に対する行政 の監督を強化することとしている. ③単体プログラムの位置づけの明確化 情報通信技術の急速な発達により医療分野にお いても様々なソフトウェアの開発が進められてお り,ソフトウェアを利用している医療機器は数多 く存在する.現行制度では,ソフトウェアのみで は薬事法の規制対象としておらず,端末などハー ドウェアに組み込んだ形で規制されているが,欧 米では単体で流通するソフトウェアも医療機器と して位置づけていることを踏まえ,我が国でも医 療機器の範囲に加えることとした(法律上の用語 は「プログラム」).これにより,ソフトウェアの みでも医療機器の承認・認証を取得することが可 能になる. プログラムとして規制される医療機器は,これ までの有体物である医療機器と異なり無体物であ るため,法律上の規制をどのように取り扱うべき か整理が必要となる.例えば,流通段階の取扱い として,販売業に関してプログラムでは法律上「電 気通信回線を通じて提供」することの規定が加 わったが,これはダウンロードによりプログラム 図 4  医療機器の分類と規制

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を提供する場合などを想定している.プログラム に関する具体的な取扱いは今後示す予定である. なお,プログラムは無体物として流通するほか, CD-ROM などの記録媒体に記録して流通する場 合があるので,そのようなプログラムが記録され た記録媒体も医療機器として取り扱うことになる. ④製造業の登録制 現行制度における医療機器・体外診断用医薬品 の製造業は,国内製造所は許可制,外国製造所は 認定制となっているが,法改正により登録制に改 めることとした.登録のための要件は簡素化する こととしており,これまで製造業では構造設備の 要件が課されていたが,登録制ではその要件を除 外し,許可・認定制における製造区分も廃止する ことで,改正法では製造所ごとに「医療機器の製 造業の登録」又は「体外診断用医薬品の製造業の 登録」を受けることにした. また,登録が必要な範囲を具体的に定めること とし,医療機器の場合,「設計」「主たる組立てそ の他の主たる製造工程」「滅菌」「国内における最 終製品の保管」を行う場合は登録対象としてい る.医療機器や体外診断用医薬品の開発に当たっ ては,設計管理が重要となることから,今回の改 正では,「設計」を新たに製造所の対象にしている. ⑤ QMS 調査の見直し 医療機器・体外診断用医薬品の承認・認証に係 る製造管理及び品質管理の基準(QMS)への適 合性調査においては,従前の製造所ごとの調査を 改め,製品の製造工程全体を一つの単位として調 査し,当該製品についての QMS の適合性を確認 することとした. これに併せて,製造所ごとの遵守事項とされて いる QMS を製造販売業者の遵守事項とするほか, 製造販売業許可要件を見直し,製造管理又は品質 管理に係る業務を行う体制を要件として確認する こととした. また,品質管理監督システムについて,構造, 特性等が類似したものであれば,通常,共通の品 質管理監督システムが適用されることから,医療 機器等を製品の構造,特性等に応じて製品群に分 類し,これまで製品ごとの QMS 調査であったも のを製品群単位で調査を実施することとした. ⑥使用成績評価の導入 現行制度では,新医療機器が承認された場合に は,市販後に有効性・安全性を確認する調査を法 律で定められた一定期間実施し,その調査結果を もとに再審査を受けることになっている.これは 医薬品と同様の制度であるが,医療機器の場合は 短期間で改良・改善が行われるので再審査を受け るときには対象となる医療機器が市場からなくなっ ていることや,患者の体内に長期間留置する製品 については,継続的に使用患者からの情報収集が 必要な場合などがある. このような状況から再審査・再評価に代えて, 厚生労働大臣が指定する医療機器について,製品 の特性に応じて期間を設定し,当該期間中に使用 成績に関する調査を行うことで,有効性や安全性 を確認する制度を設けることとした. ⑦添付文書の取扱い 医薬品,医療機器等の安全対策の強化として, 添付文書の位置付けを見直し,医薬品,医療機器 等の製造販売業者は,最新の知見に基づき添付文 書を作成し,厚生労働大臣に届け出ることとした. 医療機器で対象となるのはクラスⅣの医療機器と なっている.併せて,迅速な情報提供を行う観点 から,届け出た添付文書を直ちに PMDA のホー ムページに掲載することとした. また,医療機器等の販売業者等が医療機関等に 販売する際に,PMDA のホームページに情報が 掲載されていること等の条件を満たし,かつ,販 売先の医療機関等の承諾を得ている場合に限り, これらの添付文書の製品への添付を省略できるこ ととした.

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4.行政組織の改正

法改正では医療機器の特性を踏まえた改正を 行っているが,行政組織については,平成26年 7 月11日付けで医療機器の審査管理業務を担う医療 機器審査管理室を格上げし,室のトップに課長ク ラスの大臣官房参事官(医療機器・再生医療等製 品審査管理担当)を置く組織改正を行った.これ により,医薬品の審査管理業務を担う審査管理課 と同格となり,行政組織の面でも医療機器の充実 強化を行っている.

5.終わりに

医療機器の開発は日本の得意な「ものづくり」 力を活かすことが可能であり,他業種からの参入 も期待できる.医療機器の規制は国民の安全を守 るために必要な制度であるが,過剰になりすぎる と,新規参入の企業にとってはハードルが高いも のとなってしまい,実用化まで時間を要すること になるばかりか,場合によっては開発を断念せざ るを得なくなるので,合理的な規制とすることが 必要である. 他方,審査や市販後において一定のルールによ る規制を行い,品質,有効性及び安全性を確保す ることで,国民の健康被害を未然に防ぐことが必 要である.また,革新的な医療機器の国際展開を 考える上では,日本において有効性・安全性を評 価できる適切なデータがないことには諸外国で評 価されないことになる. このような様々な観点を考慮して制度を構築し ていくことは,まさにレギュラトリーサイエンス そのものである. 今回の法改正により法令上は医療機器の特性を 踏まえた改正とされたが,重要なのは実際の運用 方法である.法改正の施行までの期間も非常に短 いことから,行政側としても速やかに通知等で具 体的な方針を示し,企業側では法改正対応の準備 を進めていくことが必要となる.医療機器の法改 正を含む一連の取組により,医療機器の改良・改 善が円滑になるとともに,革新的な医療機器の早 期実用化が進むことで,結果として国民が受ける 医療の質が向上することを期待したい.

参照

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