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アメリカザリガニの生態をふまえての有効な駆除手法

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Academic year: 2021

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日本甲殻類学会 Symposium Report

Carcinological Society of Japan

Cancer 27: 139–141 (2018)

シンポジウム報告

アメリカザリガニの生態をふまえての有効な駆除手法

Effective capturing methods of an invasive crayfish species Procambarus clarkii in relation to its

ecology

中田和義

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Kazuyoshi Nakata

はじめに ア メ リ カ ザ リ ガ ニ(Procambarus clarkii) は, 1927年に北米から日本に移入された外来種である. 現在までに本種は,北海道から沖縄までの全国各地 の水域で定着が確認されている(中田,2015).雑 食性のアメリカザリガニは,侵入先の水域で希少種 を含むさまざまな在来生物を摂食するなど,在来生 態系に多大な悪影響を及ぼすことが報告されている (例えば,苅部・西原,2011;高橋ら,2017など). また,本種が掘る巣穴が水田漏水を引き起こすな ど,農業被害も確認されている(若杉,2013). これらのことから,アメリカザリガニは,2015 年に環境省と農林水産省が公表した「我が国の生態 系等に被害を及ぼすおそれのある外来種リスト(生 態系被害防止外来種リスト)」では,緊急対策外来 種に選定された.このため,本種による被害が生じ ている水域では,早急な駆除対策が求められてい る. そこで,著者の研究室(岡山大学大学院環境生命 科学研究科水生動物学分野)では,1)アメリカザ リガニの効率的な捕獲駆除手法の開発と,2)日本 に定着したアメリカザリガニの生活史の解明を目的 として研究を進めており,これまでに得られた研究 成果の一部については学術雑誌に公表してきた(中 田 ら,2017; 白 石 ら,2015; 牛 見 ら,2015a, 2015b).本種の捕獲駆除手法に関する著者らの研究 では,市販のものを用いた簡易な手法として,好適 サイズの人工巣穴(牛見ら,2015a, 2015b),篭と使 用 餌(白 石 ら,2015),ペットボトル製トラップ (中田ら,2017)などについてこれまでに検討した. 本稿では,これらの研究成果を基に,アメリカザリ ガニの生態をふまえた有効な駆除手法について紹介 する. 1)好適サイズの人工巣穴 巣穴や礫の間隙等の隠れ家に隠れる習性をもつザ リガニ類は,隠れ家サイズに対して選好性をもつこ とが知られている.例えば在来種のニホンザリガニ (Cambaroides japonicus)の場合,内径と長さの異な る塩ビ管を人工巣穴として与えた実験結果では,特 定の巣穴サイズに対する選好性が確認され,全長と 好適サイズの巣穴内径の間で有意な回帰式が得られ たとともに,全長の3倍以上の巣穴長を好むことが 明らかとなっている(Nakata et al., 2001). そこで著者らは,アメリカザリガニにとっての好 適サイズの人工巣穴(塩ビ管)を定着場所に仕掛け て隠れ家として利用させて回収することで,本種を 効率的に捕獲駆除できるのではないかと考えた.そ して,アメリカザリガニによる人工巣穴サイズ選好 性実験を実施した(牛見ら,2015a).本種の駆除の 現場では,塩ビ管で製作した人工巣穴を使用する捕 1 岡山大学大学院環境生命科学研究科700–8530 岡山県岡山市北区津島中3–1–1

Graduate School of Life and Environmental Science, Okayama University, 3–1–1 Tsushima-naka, Okayama 700–8530, Japan

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Cancer 27 (2018) 中田和義 獲 事 例 は 既 に 報 告 さ れ て い た が(苅 部・ 西 原, 2011;芦澤・藤本,2012),使用する塩ビ管のサイ ズの詳細については考慮されていなかった. 実験で得られたデータを解析した結果,アメリカ ザリガニの全長をX(mm),好適サイズの人工巣穴 内径をY(mm)とすると,Y=0.58X+4.26という 有意な回帰式が得られた.また,巣穴長について は,本種は全長の4倍を好むことが明らかとなっ た.これらの結果をふまえて,著者らは,アメリカ ザリガニの捕獲駆除に用いる人工巣穴サイズを提案 した(牛見ら,2015a). 著者らはさらに,内径と長さが異なる好適サイズ の人工巣穴を5本束ねて(図1左),本種が定着・増 殖している池に設置する野外実験を実施した.その 結果,抱稚仔メスを含む多数のアメリカザリガニが 捕獲され,好適サイズの人工巣穴が本種の捕獲駆除 に有効であることが示された(牛見ら,2015b). 2)篭と使用餌 白石ら(2015)は,アメリカザリガニの捕獲に有 効な篭と使用餌の種類について検討することを目的 とし,本種が定着・増殖している池で,実験1:篭 の種類による捕獲個体数の比較実験と,実験2:篭 に用いる餌の種類による捕獲個体数の比較実験を実 施した.実験1では,エビ篭・アナゴ篭・カニ篭を アメリカザリガニの定着水域に同時に仕掛けて捕獲 個体数を比較する実験を行ったところ,カニ篭に比 べてエビ篭とアナゴ篭で捕獲数が多かった.また, エビ篭では,小型個体から大型個体を含む幅広い体 サイズの個体が捕獲された.これらの結果から,ア メリカザリガニの捕獲では,実験に用いた3種の篭 の中ではエビ篭が最も有効と結論した(白石ら, 2015)(図1中央). 次に実験2では,市販の練り餌(マルキュー社製, 寄せ太郎)・チーズかまぼこ・アメリカザリガニの 冷凍個体(切断して使用)をそれぞれ単独でエビ篭 に誘引餌として入れ,アメリカザリガニの定着場所 に同時に仕掛けて捕獲個体数を比較する実験を実施 した.その結果,練り餌を用いた場合で捕獲個体数 が最大となった. 以上,実験1と2の結果から,市販の漁具と餌を 用いてアメリカザリガニの駆除を効率的に行う上で は,練り餌を餌としてエビ篭を用いるのが良いと結 論した(白石ら,2015).一方,アメリカザリガニ の冷凍個体を餌とした場合でも,本種を捕獲でき た.駆除したアメリカザリガニを餌として用いるこ とで,練り餌ほどの捕獲数は期待できないものの, 駆除に要するコストを低下できるというメリットが ある. 3)ペットボトル製トラップ 淡水魚を対象とした研究では,2Lの角型ペット ボトルの上部を切断し,この切断部分を逆さまにし て下部に挿入することで製作したペットボトル製ト ラップ(図1右)を使用した調査例がある(例えば, 中西ら,2009;渡部ら,2016).そこで著者らは, アメリカザリガニの新たな駆除手法の1つとして, ペットボトル製トラップに着目した.そして,アメ リカザリガニの駆除の現場で用いるペットボトル製 トラップを開発することを目的とし,以下の実験を 実 施 し た(中 田 ら,2017).まず,夜間における ペットボトル製トラップによる本種の捕獲有効性を 検証し,同時にペットボトルの色の違いが捕獲個体 数に与える影響について検討した(実験1).次に, 実験1でペットボトルの色により捕獲個体数の違い が認められたため,日中にも実験を行い,同様の結 果が得られるかを検証した(実験2). ペットボトルの色は黒・白・透明の3色とし,色 の異なる3個のペットボトルを1セットとし,針金 を用いて固定した.各ペットボトルには練り餌を 図1.  アメリカザリガニの捕獲駆除に用いるト ラ ッ プ. 左: 好 適 サ イ ズ の 人 工 巣 穴, 中 央:エビ篭,右:ペットボトル製トラップ.

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Cancer 27 (2018) 外来種アメリカザリガニの駆除手法 25 gずつ入れ,実験1では夜間に,実験2では夜間 と日中に各実験地点にトラップを1セットずつ設置 した. 実験1と2で得られた結果の概要は,以下のとお りである: 1)ペットボトル製トラップでアメリカ ザリガニを捕獲できた,2)黒に比べ,白と透明で 捕獲個体数が多かった,3)3色のいずれにおいて も,日中よりも夜間で捕獲個体数が多かった.以上 の結果から,アメリカザリガニの捕獲駆除では,夜 行性の本種が活発に活動する夜間に,白か透明の ペットボトル製トラップを用いることが有効と結論 した(中田ら,2017).手間とコストをかけずに製 作して使用するという点では,透明のペットボトル を着色せずにそのまま用いるのが現実的であろう. おわりに 本稿で紹介した1~3の駆除手法は,それぞれメ リットとデメリットがある.1~3の駆除手法の中 では,最も多くのアメリカザリガニを捕獲できるの はエビ篭である.しかし,高さのあるエビ篭の設置 には一定以上の水深が必要となり,水田などの浅い 水域では設置できない.一方,人工巣穴とペットボ トル製トラップについては,いずれも水深の浅い水 域でも設置可能であるが,エビ篭ほどの捕獲個体数 は期待できない.人工巣穴は,捕獲できる個体数は ペットボトル製トラップよりも少ないが,餌が不要 でコストを抑えられるとのメリットはある. 以上をふまえて,アメリカザリガニの駆除におい ては,現場の事情に応じて使用漁具を使い分けるか 併用することが望ましいだろう.なお,本稿で紹介 したトラップについては,都道府県の内水面漁業調 整規則等により設置には許可が必要となる場合があ るので,注意が必要である. 謝 辞 本稿で紹介したアメリカザリガニの駆除手法に関 する知見は,著者の研究室の卒業生である牛見悠奈 氏・白石理佳氏・竹原早恵氏による卒業論文または 修士論文研究で主に得られた成果である.これらの 研究成果は,学術雑誌に論文として公表済みである (参考文献参照). 参考文献 芦澤 淳・藤本泰文,2012.ため池におけるアメリカ

ザリガニProcambarus clarkii (Girard)のカニ籠等を 用いた個体数抑制と侵入防止.伊豆沼・内沼研究 報告,6: 27–40. 苅部治紀・西原昇吾,2011.アメリカザリガニによる 生態系への影響とその駆除手法.エビ・カニ・ザ リガニ:淡水甲殻類の保全と生物学(川井唯史・ 中田和義編), 生物研究社,東京,pp. 313–328. 中西康介・田和康太・蒲原 漠・野間直彦・沢田裕 一,2009.栽培管理方法の異なる水田間における 大型水生動物群集の比較.日本環境動物昆虫学会 誌,20: 103–114. 中田和義,2015.都市の水環境に定着した外来ザリガ ニが在来生態系に及ぼす影響.用水と廃水,57: 49–54.

Nakata, K., Hamano, T., Hayashi, K., Kawai, T., & Goshima, S., 2001. Artificial burrow preference by the Japanese crayfish Cambaroides japonicus. Fisheries Science, 67: 449–455. 中田和義・竹原早恵・白石理佳,2017.外来種アメリ カザリガニの駆除に用いるペットボトル製トラッ プの検討.日本ベントス学会誌,71: 90–101. 白石理佳・牛見悠奈・中田和義,2015.外来種アメリ カザリガニの駆除に用いる篭と使用餌.応用生態 工学,18: 115–125. 高 橋 清 孝・ 長 谷 川 政 智・ 久 保 田 龍 二・ 藤 本 泰 文, 2017.アメリカザリガニによる魚類への影響―ゼ ニタナゴ,シナイモツゴ,メダカなど希少魚の繁 殖が脅かされている―.よみがえる魚たち(高橋 清孝編),恒星社厚生閣,東京,45–52. 牛見悠奈・宮武優太・筒井直昭・坂本竜哉・中田和 義,2015a.外来種アメリカザリガニの駆除に用い る人工巣穴サイズ.応用生態工学,18: 79–86. 牛見悠奈・白石理佳・中田和義,2015b.好適なサイ ズの人工巣穴を用いた外来種アメリカザリガニの 駆除効果.応用生態工学,18: 139–145. 若杉晃介,2013.アメリカザリガニによる水田漏水の 実態と対策.農業と園芸,88: 795–806. 渡部恵司・森 淳・小出水規行・竹村武士,2016.水田 においてペットボトルトラップと金網トラップで 採捕したドジョウ個体数の比較.農業農村工学会 論文集,84: IV_7–IV_8.

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