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研究論文企業規模の拡大とインターナルコミュニケーションの組織的取組みの変化 12 ケースの質的調査に基づく比較分析 Transition of Internal Communication Practices to Increase Employees Satisfaction in Accorda

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(1)

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企業規模の拡大とインターナルコミュニケーションの組

織的取組みの変化

―12 ケースの質的調査に基づく比較分析―

Transition of Internal Communication Practices to Increase

Employees’ Satisfaction in Accordance with the Organizational

Development

-Qualitative Research Based on 12 Cases-

早稲田大学大学院商学研究科 古屋 光俊 早稲田大学大学院 東出 浩教

要旨

インターナルコミュニケーションは、社内コミュ ニケーションという言葉で広く使われるが、国内の 中小・成長ベンチャー企業を対象として、従業員の 満足度に焦点を当てて実証的に研究された例は少な い。 本稿では、1980 年代より米国を中心に発展した インターナルコミュニケーション満足度研究を利用 して、国内の中小・成長ベンチャー企業を対象に、 企業規模の拡大過程におけるインターナルコミュニ ケーション満足度を高めるような組織的な取組みと は何かについて、探索的に調査した。 12 ケースの社長、ミドルへのインタビュー調査と 従 業 員 に 対 す る Communication Satisfaction Questionnaire (CSQ) サーベイを同時並行的に行 い、重層的に深く調査し、比較分析した。 結果として、社長のコミュニケーション意識や組 織的な取組みの違いによって、CSQ のディメンジョ ンスコアに影響があること、ベンチャー企業を急成 長させるには、企業規模の拡大に従い、組織的な取 組みを変化させていく必要性があることを発見した。 キーワード:インターナルコミュニケーション満足 度、企業規模、CSQ

Abstract

This article discusses the importance of employees’ internal communication satisfaction (“ICS”) on the organizational development. Internal communication (“IC”), or organizational communication, has not been empirically researched in relation to ICS, organizational

communication practices (“Practices”) and organizational development in Japan. This is the originality of this article.

The author proposed a model to manage IC effectively for the successful organizational development in the course of venture growth. The model explains how Practices as well as top management consciousness in communication (“Consciousness”) impact on the employees’ ICS. As previous researches showed ICS impacted on positive factors for growth, such as job satisfaction (“JS”), the model integrates the Consciousness, the Practices, ICS and the factors for growth.

Qualitative researches were conducted through 12 cases of small, medium and large sized venture companies in Japan (theoretical samples), which employee numbers are 30 to 3000 in various industries. Semi-structured interviews with top management and middle managers were conducted, in order to explore the Consciousness and the Practices for successful organizational development. Communication Satisfaction Questionnaire (“CSQ”) was utilized as a measurement instrument of ICS, which reliability and validity have been confirmed by various past empirical researches mainly in U.S.A.

As the result, successful venture companies showed high ICS scores owing to various Practices to increase ICS under the initiative of top management. The Consciousness and the Practices impacted on OP (Organizational Perspective), CC (Communication Climate), MQ

(2)

(Media Quality) and HC (Horizontal Communication). RC (Recruiting Communication), 9th dimension of ICS was also identified in this

research. With limitations, the author showed the future research area and practical utilization of IC, which may enhance and affirm organizational development of the venture growth in various stages.

Key words : IC, ICS, Job Satisfaction, CSQ, Organizational development

1 はじめに

1.1 社内コミュニケーションの大事さと実態 古典的ではあるが、経営の神様である松下(1979) は、“人を活かす”ことの大切さを説き、「心を一つ にして」と題して、「互いに心をつなぎ、力を寄せあ って、共通の使命、一つの目標に取り組んでいく。 そういうところに、生き生きとした活動の姿、好ま しい成果というものももたらさせてくるのではない かと思われる。」と記す。 「企業内コミュニケーションの実態に関する調 査」(NTT レゾネント株式会社・株式会社三菱総合 研究所, 2006)(1 によれば、社内コミュニケーショ ンが「十分取れている」「大体取れている」は合計で 45.9%しかない。そして、60%以上が「経営層と一 般社員間」、「部署を超えた社員同士間」のコミュニ ケーション不足を訴える。企業におけるコミュニケ ーションは、昔も今も、解決すべき重要なテーマで ある。 1.2 ベンチャーの成長とインターナルコミュニケ ーション これまで、社内コミュニケーション(本稿では、 「インターナルコミュニケーション」という。)とい うと、組織の大きな大企業での課題が取り上げられ てきた。しかし、筆者は、むしろ、社長と従業員が 一丸となって成長を目指す中小・ベンチャー企業の 方が、インターナルコミュニケーションの重要性は 高いと考える。 社長が従業員全員に直接コミュニケーション出来 る数10 名の小規模組織から、成長ステージにある 100 名、数百名、1,000 名規模の成長ベンチャー企 業へと組織が発展すると、従業員と社長との直接的 なコミュニケーションは少なくなる。代わりに、ミ ドルを通じた間接的なコミュニケーションが増加す る。一方、成長ベンチャー企業では、中途や新卒採 用により毎年従業員が増大する。そこでは、社長の メッセージの伝達遅延、正確に伝達されないリスク や企業文化が希薄になるリスクが増大する。企業規 模が急拡大するベンチャー企業にとって、ミドルを 含めたインターナルコミュニケーション全体を組織 的に適切に管理することは、成長を失速させないた めにも重要な経営課題と言える。では、中小・ベン チャー企業は、その成長過程において、どのように インターナルコミュニケーションを実践すべきであ ろうか。 1.3 日本におけるインターナルコミュニケーショ ン研究 日本におけるインターナルコミュニケーション 研究は、1990 年代に組織コミュニケーションのあ り方について、効率的、効果的な情報伝達に対する 欧米での研究例が紹介されたが(狩俣, 1992)、数え るほどしかない(宮原, 2011)。米国では、組織コミ ュニケーション研究が1920 年代に生まれて以来、 既に約 90 年が経過しているのに対し、日本では、 1990 年代に入ったころから紹介され始めた程度で ある(宮原, 2011)。 コミュニケーション研究としては、大企業の事例 研究による伊丹(1999, 2005)の「場」の論理や、 中小企業研究による宮田(2003, 2004)の研究があ る。宮田は、社長の経営理念が独自性を生み、組織 に浸透していくプロセスを通じた成長モデルを提 起した。このように、インターナルコミュニケーシ ョンに関する研究は行われてきたが、その研究は発 展途上である。国内では汎用的なインターナルコミ ュニケーション満足度の測定尺度も確立していな い。現時点では、企業で一般的に行われる従業員満 足度調査の中で、職場や上司との社内コミュニケー ションについて簡単な質問が用意されている程度 である(リクルートマネジメントソリューションズ, 2009)。 日本におけるインターナルコミュニケーション 研究はこれからであり、研究の余地は大きい。特に、 中小・ベンチャー企業の組織の発達や成長との関係 性において、インターナルコミュニケーションの組 織的取組みを研究した例は見当たらない(古屋, 2010a, 2010b)。

(3)

(Media Quality) and HC (Horizontal Communication). RC (Recruiting Communication), 9th dimension of ICS was also identified in this

research. With limitations, the author showed the future research area and practical utilization of IC, which may enhance and affirm organizational development of the venture growth in various stages.

Key words : IC, ICS, Job Satisfaction, CSQ, Organizational development

1 はじめに

1.1 社内コミュニケーションの大事さと実態 古典的ではあるが、経営の神様である松下(1979) は、“人を活かす”ことの大切さを説き、「心を一つ にして」と題して、「互いに心をつなぎ、力を寄せあ って、共通の使命、一つの目標に取り組んでいく。 そういうところに、生き生きとした活動の姿、好ま しい成果というものももたらさせてくるのではない かと思われる。」と記す。 「企業内コミュニケーションの実態に関する調 査」(NTT レゾネント株式会社・株式会社三菱総合 研究所, 2006)(1 によれば、社内コミュニケーショ ンが「十分取れている」「大体取れている」は合計で 45.9%しかない。そして、60%以上が「経営層と一 般社員間」、「部署を超えた社員同士間」のコミュニ ケーション不足を訴える。企業におけるコミュニケ ーションは、昔も今も、解決すべき重要なテーマで ある。 1.2 ベンチャーの成長とインターナルコミュニケ ーション これまで、社内コミュニケーション(本稿では、 「インターナルコミュニケーション」という。)とい うと、組織の大きな大企業での課題が取り上げられ てきた。しかし、筆者は、むしろ、社長と従業員が 一丸となって成長を目指す中小・ベンチャー企業の 方が、インターナルコミュニケーションの重要性は 高いと考える。 社長が従業員全員に直接コミュニケーション出来 る数10 名の小規模組織から、成長ステージにある 100 名、数百名、1,000 名規模の成長ベンチャー企 業へと組織が発展すると、従業員と社長との直接的 なコミュニケーションは少なくなる。代わりに、ミ ドルを通じた間接的なコミュニケーションが増加す る。一方、成長ベンチャー企業では、中途や新卒採 用により毎年従業員が増大する。そこでは、社長の メッセージの伝達遅延、正確に伝達されないリスク や企業文化が希薄になるリスクが増大する。企業規 模が急拡大するベンチャー企業にとって、ミドルを 含めたインターナルコミュニケーション全体を組織 的に適切に管理することは、成長を失速させないた めにも重要な経営課題と言える。では、中小・ベン チャー企業は、その成長過程において、どのように インターナルコミュニケーションを実践すべきであ ろうか。 1.3 日本におけるインターナルコミュニケーショ ン研究 日本におけるインターナルコミュニケーション 研究は、1990 年代に組織コミュニケーションのあ り方について、効率的、効果的な情報伝達に対する 欧米での研究例が紹介されたが(狩俣, 1992)、数え るほどしかない(宮原, 2011)。米国では、組織コミ ュニケーション研究が1920 年代に生まれて以来、 既に約90 年が経過しているのに対し、日本では、 1990 年代に入ったころから紹介され始めた程度で ある(宮原, 2011)。 コミュニケーション研究としては、大企業の事例 研究による伊丹(1999, 2005)の「場」の論理や、 中小企業研究による宮田(2003, 2004)の研究があ る。宮田は、社長の経営理念が独自性を生み、組織 に浸透していくプロセスを通じた成長モデルを提 起した。このように、インターナルコミュニケーシ ョンに関する研究は行われてきたが、その研究は発 展途上である。国内では汎用的なインターナルコミ ュニケーション満足度の測定尺度も確立していな い。現時点では、企業で一般的に行われる従業員満 足度調査の中で、職場や上司との社内コミュニケー ションについて簡単な質問が用意されている程度 である(リクルートマネジメントソリューションズ, 2009)。 日本におけるインターナルコミュニケーション 研究はこれからであり、研究の余地は大きい。特に、 中小・ベンチャー企業の組織の発達や成長との関係 性において、インターナルコミュニケーションの組 織的取組みを研究した例は見当たらない(古屋, 2010a, 2010b)。 1.4 筆者の問題提起 筆者は、これまで、インターナルコミュニケーシ ョン満足度(以下、「ICS」という。)の測定尺度の 国内での妥当性、信頼性の検証(古屋, 2012)、従業 員規模30 名から 300 名規模の中小企業の社長に対 するインタビュー調査による ICS の高さと社長の 意識の関係の解明(Furuya, 2013a)、従業員規模が 急拡大するベンチャー企業におけるインターナル コミュニケーションプロセスモデルの提示(古屋, 2013b)を行ってきた。その過程で、中小・ベンチ ャー企業における ICS のサーベイ方法の有効性や インタビューによる実証研究の方法も検証してき た。 2012 年の調査から、探索的にデータ数を着実に 増やすことによって、30 名から 650 名規模の企業 において、規模が拡大するにつれ、インターナルコ ミュニケーションの組織的な取組みがどのように 変化するか、その実態が明らかになって来た。中小 企業が、世界に通用する大規模な成長ベンチャー企 業に発展するためには、それぞれの規模における固 有の課題を、社長の意識や、組織的な取組みによっ て解決する必要がある。後述するように、Daft (2001) の組織の発達モデルで指摘される次の段階 に進むためには、インターナルコミュニケーション をうまく活用して段階ごとの壁を乗り越えること、 そのためにも社長が ICS に意識的に取り組むこと の重要性が見えてきた。 本稿では、従来の調査よりも企業規模が大きく 3,000 名規模に拡大している成長ベンチャー企業に 調査の範囲を広げた。規模が大きくなれば、より組 織的な取組みが行われていると考えたからである。 これまでの調査データと今回の調査データを企業 規模別に比較分析することで、30 名から 3,000 名ま での企業ケースにおいて、ICS を高めるために、そ れぞれの段階でどのようなインターナルコミュニ ケーション上の組織的な取組みを行っているかを 分析し、企業規模の拡大過程における取組みの違い を明確にすることとした。

2 先行研究

2.1 インターナルコミュニケーションの定義 本稿では、図1 のような組織内部の全ての縦、横 のコミュニケーションをインターナルコミュニケー ションと定義する。インターナルコミュニケーショ ンの結果変数が、従業員のICS である。ICS は、イ ンターナルコミュニケーションに対する従業員の主 観的な感じ方、満足度である。では、ICS の原因は 何か。筆者は、組織内部のインターナルコミュニケ ーションの取組みがICS の原因と考えた。更に、組 織的な取組みは、社長がそもそもインターナルコミ ュニケーションをどのようにしたいかという意識の もと企業内部で運営されるため、社長の意識→組織 的な取組み→ICS の関係があると考え、これまでの 研究をベースに、本稿では図2 のモデルを提示する。 図 1 インターナルコミュニケーション(筆者作成) 図 2 インターナルコミュニケーションにおける 社長の意識、組織的取組み、満足度のモデル (筆者作成) 2.2 インターナルコミュニケーション満足度に関 する研究 インターナルコミュニケーション満足度に関す る研究は、1980 年代から米欧を中心として始まっ た。従業員のICS を測定する尺度(満足度調査票) を開発し、満足度調査票の妥当性、信頼性を検証し ながら、ICS と仕事の満足度等の他の変数との相関 性に関する実証的な量的研究がほとんどである。こ れまで米欧の多くの企業、政府機関、大学等の組織 で調査が実施され、調査票の妥当性、信頼性が検証 された。そして、ICS は、様々な変数と直接的な正 ①社長のコミュニケーション ②ミドルのコミュニケーション ③一般従業員のコミュニケーション ④ 専門部門のコミュニケーション [図中の矢印は コミュニケーションの流れ] 社長 ミドル 一般従業員 専門 部門 インター ナルコミ ュニケー ションに 対する社 長の意識 インター ナルコミ ュニケー ション上 の組織的 な取組み 従業員の ICS の 変化

(4)

の関係性があることが分かった(古屋, 2010b)。変 数としては、仕事の満足度(Downs & Hazen, 1977; Kongchan, 1985; Pincus, 1986; Gregson, 1987; Goris, 2007; Farr-Wharton & Brunetto, 2007; Carriere & Bourque, 2009)、生産性(Clampitt & Downs, 1993; Farr-Wharton & Brunetto, 2007)、 組織コミットメント(Putti, Aryee & Phua, 1990; Varona, 1996; Carriere & Bourque, 2009)、信頼 (Zeffane, Tipu & Ryan, 2011; Amine, Chakor & Alaoui, 2012)、エンパワーメント(Loughman, Snipes & Pitts, 2009)、仕事のパフォーマンス (Pincus, 1986; Goris, 2007)がある。

組織規模の発達や企業成長との関係については、 ICS、仕事の満足度共に、直接的な関係性について の実証的研究は見当たらない。しかし、仕事の満足 度は、企業成長に繋がる顧客満足度(Van der Wiele, Boselie & Hesselink, 2002; Fazlzadeh, Faryabi, Darabi & Zahedi, 2012)、組織コミットメント (Rashid, Sambasivan & Johari, 2003; Amine, Chakor & Alaoui, 2012)、従業員ロイヤルティ (Eskildsen & Nuessler, 2000)といった様々な変 数に影響を与えることは実証的研究によって証明さ れている。 先行研究を整理すると、図3 に示すように ICS の 向上→仕事の満足度の向上→組織の発達や企業成 長に繋がる変数群の向上というモデルが提示でき る。ICS の向上は、組織の発達にとって重要な出発 点であると言える。 図 3 インターナルコミュニケーションの満足 による組織の発達モデル(筆者作成) 2.3 CSQ ICS の代表的測定尺度である CSQ は、7 点リカ ートスケールによる質問形式(一部自由回答形式も 含む)の調査である。ICS、仕事の満足度(以下、 「JS」という。)、生産性(以下、「Pro」という。) を測定する。ICS は全 40 問の質問項目から構成さ れ、以下の8 つのディメンジョンに分解(各 5 個の 質問項目)されて測定される(Downs, 1988; Downs & Adrian, 2004)。測定時間は、15 分程度である。 CSQ は、インターナルコミュニケーションを網羅的 に測定する。 [CSQ による ICS の 8 つのディメンジョン] 1. Organizational Perspective (OP):会社の情報

伝達の満足度

2. Organizational Integration (OI):部門の情報伝 達の満足度

3. Communication Climate (CC):コミュニケー ションの風土作りの満足度

4. Media Quality (MQ):メディア品質の維持の満 足度

5. Relationship with Supervisor (SC): 上司との コミュニケーション満足度

6. Relationship with Subordinate (Sub):部下と のコミュニケーション満足度

7. Horizontal and Informal Communication (HC):横のコミュニケーション満足度 8. Personal Feedback (PF):評価のフィードバッ ク満足度 OP は、社長によるコミュニケーションで、会社 の価値観、ビジョン、方向性、財務状況、変化等に 関する従業員へのメッセージに対する満足度であ る。OI は、部門長による、部門のビジョン、方向性、 目標、予算や変化等のメッセージに対する満足度で ある。CC は、社内のコミュニケーションのしやす さ、雰囲気やムード、従業員のコミュニケーション 能力に対する満足度である。MQ は、対面、文書、 会議等のメディアの品質やコミュニケーションの 量に対する満足度である。SC は、上司と部下の間 のコミュニケーションを、部下からみた満足度であ り、Sub は、上司から見た満足度である。HC は、 部門内、部門間の横のコミュニケーションに対する 満足度である。PF は、部下からみた個人の評価の フィードバックに対する満足度である。 CSQ 以外にも、ICS を測定する尺度は提唱されて いるが(Hargie & Tourish, 2009)、CSQ は他の測 定尺度と比較して実証例も多く、簡便な測定方法で あり、国内での運用に適する(古屋, 2012)。 2.4 組織の発達段階モデル 中小・ベンチャー企業の規模の拡大について、 従業員の ICS の向上 従業員の仕 事の満足度 の向上 組織の発達 や企業成長 に繋がる変 数群の向上

(5)

の関係性があることが分かった(古屋, 2010b)。変 数としては、仕事の満足度(Downs & Hazen, 1977; Kongchan, 1985; Pincus, 1986; Gregson, 1987; Goris, 2007; Farr-Wharton & Brunetto, 2007; Carriere & Bourque, 2009)、生産性(Clampitt & Downs, 1993; Farr-Wharton & Brunetto, 2007)、 組織コミットメント(Putti, Aryee & Phua, 1990; Varona, 1996; Carriere & Bourque, 2009)、信頼 (Zeffane, Tipu & Ryan, 2011; Amine, Chakor & Alaoui, 2012)、エンパワーメント(Loughman, Snipes & Pitts, 2009)、仕事のパフォーマンス (Pincus, 1986; Goris, 2007)がある。

組織規模の発達や企業成長との関係については、 ICS、仕事の満足度共に、直接的な関係性について の実証的研究は見当たらない。しかし、仕事の満足 度は、企業成長に繋がる顧客満足度(Van der Wiele, Boselie & Hesselink, 2002; Fazlzadeh, Faryabi, Darabi & Zahedi, 2012)、組織コミットメント (Rashid, Sambasivan & Johari, 2003; Amine, Chakor & Alaoui, 2012)、従業員ロイヤルティ (Eskildsen & Nuessler, 2000)といった様々な変 数に影響を与えることは実証的研究によって証明さ れている。 先行研究を整理すると、図3 に示すように ICS の 向上→仕事の満足度の向上→組織の発達や企業成 長に繋がる変数群の向上というモデルが提示でき る。ICS の向上は、組織の発達にとって重要な出発 点であると言える。 図 3 インターナルコミュニケーションの満足 による組織の発達モデル(筆者作成) 2.3 CSQ ICS の代表的測定尺度である CSQ は、7 点リカ ートスケールによる質問形式(一部自由回答形式も 含む)の調査である。ICS、仕事の満足度(以下、 「JS」という。)、生産性(以下、「Pro」という。) を測定する。ICS は全 40 問の質問項目から構成さ れ、以下の8 つのディメンジョンに分解(各 5 個の 質問項目)されて測定される(Downs, 1988; Downs & Adrian, 2004)。測定時間は、15 分程度である。 CSQ は、インターナルコミュニケーションを網羅的 に測定する。 [CSQ による ICS の 8 つのディメンジョン] 1. Organizational Perspective (OP):会社の情報

伝達の満足度

2. Organizational Integration (OI):部門の情報伝 達の満足度

3. Communication Climate (CC):コミュニケー ションの風土作りの満足度

4. Media Quality (MQ):メディア品質の維持の満 足度

5. Relationship with Supervisor (SC): 上司との コミュニケーション満足度

6. Relationship with Subordinate (Sub):部下と のコミュニケーション満足度

7. Horizontal and Informal Communication (HC):横のコミュニケーション満足度 8. Personal Feedback (PF):評価のフィードバッ ク満足度 OP は、社長によるコミュニケーションで、会社 の価値観、ビジョン、方向性、財務状況、変化等に 関する従業員へのメッセージに対する満足度であ る。OI は、部門長による、部門のビジョン、方向性、 目標、予算や変化等のメッセージに対する満足度で ある。CC は、社内のコミュニケーションのしやす さ、雰囲気やムード、従業員のコミュニケーション 能力に対する満足度である。MQ は、対面、文書、 会議等のメディアの品質やコミュニケーションの 量に対する満足度である。SC は、上司と部下の間 のコミュニケーションを、部下からみた満足度であ り、Sub は、上司から見た満足度である。HC は、 部門内、部門間の横のコミュニケーションに対する 満足度である。PF は、部下からみた個人の評価の フィードバックに対する満足度である。 CSQ 以外にも、ICS を測定する尺度は提唱されて いるが(Hargie & Tourish, 2009)、CSQ は他の測 定尺度と比較して実証例も多く、簡便な測定方法で あり、国内での運用に適する(古屋, 2012)。 2.4 組織の発達段階モデル 中小・ベンチャー企業の規模の拡大について、 従業員の ICS の向上 従業員の仕 事の満足度 の向上 組織の発達 や企業成長 に繋がる変 数群の向上 Daft(2001)は、組織の発達段階モデルを提示し、 組織が、起業者段階、共同体段階、公式化段階、精 巧化段階と発達するためには、表1 のように、次の 段階に進むために、乗り越えるべき壁があるとする。 表 1 組織の発達段階モデル (Daft (2001)をもとに筆者作成) 段階 説明 乗り越える べき壁 1 起 業 者 段階 創業者の式のみ(ワンマン)で行わ れる。有能なミドルの雇用が必要。 リーダーシップ の発現 2 共 同 体 段階 強力なリーダーシップのもと、明確 な目標と方向性に向けて成長する。 ミドルへの 権限委譲 3 公 式 化 段階 公式なシステムやルールにより、ミ ドルが中心に業務運営する。 官僚主義への 対処 4 精 巧 化 段階 官僚主義を打破するためにチーム ワークで運営する。 新たな活性化 Daft のモデルで提示された乗り越えるべき壁の 解決には、インターナルコミュニケーションが重要 であり、その組織的な取組みの巧拙が、課題解決を 促進し、或いは阻害する。筆者は、Daft のモデルの 乗り越えるべき壁を乗り越える方策として、ICS の 向上は具体的に有効であると考えた。そこで、Daft のモデルと ICS の分析フレームワークの組合せに よって、組織の発達の課題を解決するインターナル コミュニケーションとは何かを探求することとした。 2.5 リサーチクエスチョン 筆者の問題意識と先行研究結果から、リサーチク エスチョンを定義する。 [リサーチクエスチョン] 1. 従業員数の増加率が高い 3,000 名規模の成長ベ ンチャー企業でも、これまでの30~650 名規模の 中小・ベンチャー企業と同様に、CSQ サーベイ結 果によるICS-JS の正の相関関係は成り立つか。 CSQ サーベイは成長ベンチャー企業でも有効か。 成長ベンチャー企業のICS、JS は高いか。 2. 3,000 名規模の成長ベンチャー企業のインターナ ルコミュニケーションの組織的な取組みや社長の 意識には、他のケースと比べてどのような違いが あるか。それらの違いは、ICS の 8 つのディメン ジョンにどのような影響を与えるか。 3. ICS を向上させるための組織的取組みは、組織の 発達モデルにおける乗り越えるべき壁を乗り越え るために有効か。

3 研究デザイン

3.1 研究手順とデータ収集方法 インターナルコミュニケーションの組織的な取組 みや社長の意識は、過去の研究例もほとんどないた め、社長、ミドル、関係部門のインタビューによる 質的データを収集し、探索的に調査することとした (Bryman, 2008)。図 4 に、研究デザインを示す。 図 4 研究デザイン(筆者作成) 質 的 研 究 の サ ン プ リ ン グ 法 を 整 理 し た Neergaard & Ulhoi (2007) による類型区分を参考 にして、企業規模や従業員の増加率の異なる複数の 企業サンプルを理論的な基準に従って飽和するまで サンプリングする方法とした。調査は、CSQ サーベ イ(量的データの収集)と社長、ミドル、専門部門 への半構造化されたインタビュー(質的データの収 集)を同時並行的に実施した。こうすることで、ICS の高い群(High、H 群)と低い群(Low、L 群)の 2 つのグループに分けて、組織的な取組みや社長の 意識がどのように ICS に影響を与えるかを比較分 析出来る。結果として、サンプリングの理論的な精 度が高まり、早期に理論的な飽和に達すると考えた (Furuya, 2013a)。更に、量的データと質的データ という一つの対象に対する異なったタイプのデータ を同時に収集し、トライアンギュレーションするこ とでデータの信頼性を高めることも出来ると考えた (Creswell, 2007; 古屋 2013b)。 インタビューは、図1 の組織内のインターナルコ ミュニケーション全体を網羅できるように、組織の 3 階層のうち、社長、ミドル、専門部門に対して個 別に実施した。但し、企業規模が小さい場合、調査 上の制約からミドルや専門部門のインタビューは実 理論的サンプリング:調査協力企業(12 ケース) 企業規模、従業 員の増加率(公 表データ、イン タビュー) ICS (CSQ の スコア) インターナルコミュニケーショ ンの社長の意識と組織的な取組 み(インタビューとCSQ の自由 回答) 規模、増加率、ICS で分類(HighとLow 群) ケースの比較分析

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施出来ないケースもあった。一般従業員については インタビューではなく、CSQ サーベイのインターナ ルコミュニケーションに対する自由回答欄の記述を、 従業員の声として補完的に利用した。 3.2 調査対象企業 2012 年の調査開始以来、思考錯誤しながら、以下 のコントロール変数に基準を設定し調査対象企業を 選定した。 (1) コントロール変数 1 : 企業規模 社長が組織的なインターナルコミュニケーション を意識し始める規模である30名程度を下限と設定し た。2012 年から従業員数を増加させながら、調査を 繰り返してきた。今回は、3,000 名規模の企業を調査 した。 [企業規模基準] 1. 大:301 名から 3,000 名 2. 中:101 名から 300 名 3. 小:30 名から 100 名 (2) コントロール変数 2: 規模の拡大スピード 企業規模が拡大するスピードは、5 年前(或は 4 年前)と調査時点における従業員数の増加率を用い て以下の基準で判断した。 [従業員数の増加率の基準] 1. 増加率大の企業 (High) : 従業員数が5 年間で 100%以上(2 倍)に増加し ている企業。 2.増加率中の企業(Middle): 5 年間で 0%から 100%未満増加している企業。 3.増加率マイナスの企業(Low) : 5 年間で減少している企業。 (3) コントロール変数 3: 経営者 アントレプレナーによる創業ベンチャー企業か、 2 代目、3 代目のオーナー経営企業とした。社長が イニシアチブを取り、会社と従業員に影響を与えら れる状況でなければ、積極的なインターナルコミュ ニケーションを実施することは難しいと考えたか らである。更に長期的な視点から、社長の在任期間 が、通算で5 年以上である社長とした。年齢的にも、 人とのコミュニケーションの重要性を意識できる 年齢として、一つの基準として40 歳以上の社長と した。 [経営者の基準] 1. 創業者、2 代目、3 代目 2. 社長としての経験 5 年以上 3. 40 歳以上 (4) コントロール変数 4: 業種 コミュニケーションのあり方には業界特性があ るとも考えられる。例えば、製造業と流通業の現場 のコミュニケーションのあり方は異なる。従って、 統計的分析を実施する場合には、業種を特定して調 査する方法が望ましい。しかしながら、本稿は、探 索的に社長やミドルが実践する組織的な取組みを 調査することが目的であるから、敢えて、業種を限 定せず、広く様々な業種で調査協力企業を探すこと とした。但し、従業員数の増加率が大きい企業を含 む必要があるため、業種は、規模拡大スピードの速 い、小売業、サービス業、技術力のある製造業、IT 関連企業とした。なお、所在地は、調査のアクセス の点から、東京、或は関東地方とした。 [業種の基準] 小売業、サービス業、製造業、IT 関連企業 3.3 サンプリング (1) サンプリング方法と母集団 研究の品質を左右するサンプリングについては、 慎重にデザインした。質的研究ではインタビューの 成否が研究の質に大きく影響する。本研究は、これ まで行われたことのない先導的な内容であり、探索 的なフェーズであることから、調査対象企業の組織 の 3 階層(社長、ミドル、従業員)の全てに対し、 広く、かつ深い調査が必要である。従って、サンプ ル数よりも、それぞれのケースにおいて、深い調査 を可能とする協力関係が必要である。そして実際の インタビューにおいては、インタビュー対象者(特 に社長)から本音を引き出し、必要とするデータを 収集するためには、筆者とインタビュー対象者との 相互の信頼関係の構築も重要となる。リサーチクエ スチョンに答えるためには、 企業規模や ICS の違 いがある複数のケースを調査する必要もある。 2012 年(第 1 回)、2013 年(第 2 回)、2013 年(今 回、第3 回)の 3 回にわたる調査においては、一社 ずつ個別に理論的にサンプリングする方法ではなく、 信頼関係のある組織体に所属する企業を母集団とし て、基準に合致する個別企業に、直接或は、当該組 織体や日本ベンチャー学会経由調査協力依頼を行っ

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施出来ないケースもあった。一般従業員については インタビューではなく、CSQ サーベイのインターナ ルコミュニケーションに対する自由回答欄の記述を、 従業員の声として補完的に利用した。 3.2 調査対象企業 2012 年の調査開始以来、思考錯誤しながら、以下 のコントロール変数に基準を設定し調査対象企業を 選定した。 (1) コントロール変数 1 : 企業規模 社長が組織的なインターナルコミュニケーション を意識し始める規模である30名程度を下限と設定し た。2012 年から従業員数を増加させながら、調査を 繰り返してきた。今回は、3,000 名規模の企業を調査 した。 [企業規模基準] 1. 大:301 名から 3,000 名 2. 中:101 名から 300 名 3. 小:30 名から 100 名 (2) コントロール変数 2: 規模の拡大スピード 企業規模が拡大するスピードは、5 年前(或は 4 年前)と調査時点における従業員数の増加率を用い て以下の基準で判断した。 [従業員数の増加率の基準] 1. 増加率大の企業 (High) : 従業員数が5 年間で 100%以上(2 倍)に増加し ている企業。 2.増加率中の企業(Middle): 5 年間で 0%から 100%未満増加している企業。 3.増加率マイナスの企業(Low) : 5 年間で減少している企業。 (3) コントロール変数 3: 経営者 アントレプレナーによる創業ベンチャー企業か、 2 代目、3 代目のオーナー経営企業とした。社長が イニシアチブを取り、会社と従業員に影響を与えら れる状況でなければ、積極的なインターナルコミュ ニケーションを実施することは難しいと考えたか らである。更に長期的な視点から、社長の在任期間 が、通算で5 年以上である社長とした。年齢的にも、 人とのコミュニケーションの重要性を意識できる 年齢として、一つの基準として40 歳以上の社長と した。 [経営者の基準] 1. 創業者、2 代目、3 代目 2. 社長としての経験 5 年以上 3. 40 歳以上 (4) コントロール変数 4: 業種 コミュニケーションのあり方には業界特性があ るとも考えられる。例えば、製造業と流通業の現場 のコミュニケーションのあり方は異なる。従って、 統計的分析を実施する場合には、業種を特定して調 査する方法が望ましい。しかしながら、本稿は、探 索的に社長やミドルが実践する組織的な取組みを 調査することが目的であるから、敢えて、業種を限 定せず、広く様々な業種で調査協力企業を探すこと とした。但し、従業員数の増加率が大きい企業を含 む必要があるため、業種は、規模拡大スピードの速 い、小売業、サービス業、技術力のある製造業、IT 関連企業とした。なお、所在地は、調査のアクセス の点から、東京、或は関東地方とした。 [業種の基準] 小売業、サービス業、製造業、IT 関連企業 3.3 サンプリング (1) サンプリング方法と母集団 研究の品質を左右するサンプリングについては、 慎重にデザインした。質的研究ではインタビューの 成否が研究の質に大きく影響する。本研究は、これ まで行われたことのない先導的な内容であり、探索 的なフェーズであることから、調査対象企業の組織 の3 階層(社長、ミドル、従業員)の全てに対し、 広く、かつ深い調査が必要である。従って、サンプ ル数よりも、それぞれのケースにおいて、深い調査 を可能とする協力関係が必要である。そして実際の インタビューにおいては、インタビュー対象者(特 に社長)から本音を引き出し、必要とするデータを 収集するためには、筆者とインタビュー対象者との 相互の信頼関係の構築も重要となる。リサーチクエ スチョンに答えるためには、 企業規模や ICS の違 いがある複数のケースを調査する必要もある。 2012 年(第 1 回)、2013 年(第 2 回)、2013 年(今 回、第3 回)の 3 回にわたる調査においては、一社 ずつ個別に理論的にサンプリングする方法ではなく、 信頼関係のある組織体に所属する企業を母集団とし て、基準に合致する個別企業に、直接或は、当該組 織体や日本ベンチャー学会経由調査協力依頼を行っ た。組織体の社会的信用を利用して調査対象企業と 接触でき、相互の信頼関係の構築を早期に実現する ためである。実際の調査において利用した組織体は、 以下の3 つである。 [組織体] ① 三菱-UFJ 青年経営者セミナー(MES) 三菱東京UFJ 銀行をメインバンクとし、財務的 に健全な創業オーナー又は歴史あるファミリー 企業。小・中規模の組織(会員約400 社)。 ② 一般社団法人東京ニュービジネス協議会 (NBC) ベンチャービジネスを代表する団体。毎年の IPO 大賞受賞企業(ルーキー部門、グロース部 門)は、事業に新規性、革新性があり、中・大規 模の成長性の高いベンチャー企業である。 ③ アントレプレナーオブザイヤージャパン (EOY) 新たな事業領域に挑戦する起業家の努力と功績 を称える国際的な表彰制度。規模を急拡大する ベンチャー企業である。 (2) サンプル数と調査協力企業 探索的調査における理論的サンプリングでは、モ デルとしての類型化が可能になり、新しい発見がも う出なくなり理論が飽和するまで調査することが 前提となる。但し、調査協力企業を探すための時間 的制約もあり、Eisenhardt(1989)が提唱する、分 析のために必要な現実的なサンプル数4〜10社を参 考に、表2 の 12 ケースに決定した。 表 2 調査協力企業の概要(筆者作成) 企 業 名 業種 上 場 従業員 (人) 規 模 売上 (億円) 増 加 率 回答者 数 (人) 調査 時期 K IT 非 2850 大 300 H 26 2013.8 L 小売業 上 2600 大 300 H 144 2013.9 J IT 上 650 大 152 H 240 2013.6 H 製造業 上 310 中 82 L 59 2013.4 B サービス 非 300 中 15 M 19 2012.8 F 製造業 上 290 中 55 L 36 2012.7 I F社同上 上 290 中 55 L 38 2013.5 C 小売業 非 260 中 32 M 19 2012.8 D 製造業 非 140 中 30 M 23 2012.9 E 物流・製造 非 90 小 7 M 20 2012.6 A 製造業 非 40 小 11 M 13 2012.6 G 製造業 非 30 小 5 M 10 2012.9 注1) 企業名は、匿名のケース名で記す。ケース名に意味はない。 注2) 数字は調査時期の前年度のものである。 注3) ケースF とI は同一企業 (2012 年、2013 年の継続調査)。 注4) 従業員の増加率がH(High)のケースJ、K、L は、この4-5 年間で従業員数が2 倍以上に増加している(2。 注5) 回答者数は、CSQ サーベイの有効回答数である。 調査協力企業に、Daft のモデルを適用すると、表 3 のように、起業者段階から公式化段階までのケー スに当てはまる。それぞれの段階で乗り越えるべき 壁をインターナルコミュニケーションの視点から 分析することとする。 表 3 Daft のモデルと調査協力企業 段階 規模 ケース 乗り越えるべき壁 1 起業者段階 小 G, A, E リーダーシップの発現 2 共同体段階 中 D, C, I, F, B, H ミドルへの権限委譲 3 公式化段階 大 J, K, L 官僚主義への対処 4 精巧化段階 なし なし 新たな活性化 3.4 データの分析方法 (1) スコアの算出 ケース毎の回答者のスコアの総平均から、ケース としてのJS、Pro、ICS の 8 つのディメンジョンス コア、ICS 総合スコア(8 つのスコアの総平均、以 下、「ICS」は総合スコアを示す。)を算出した(3 (2) インタビューデータと CSQ の自由回答 12 ケースのデータをクロスケースで比較するた めに、社長、ミドル、専門部門のインタビューデー タ、CSQ の自由回答から得られた従業員の声を、ケ ースごとに整理し、横並びで、社長のコミュニケー ションの意識と組織的な取組みを比較した。

4 CSQ の調査結果

4.1 CSQ スコア 表4に、12ケースのCSQサーベイの結果を示す。 企業規模(従業員数)順に上から並べてある。従業 員数の増加率、ICS、JS、Pro の数値を示す。数値 の横に記載する(H)、(L)は、12 ケースの平均値(ICS = 4.0、JS = 4.7、Pro = 4.0)と比較して、平均値以 上の場合はHigh (H)、平均値未満はLow (L)とした。

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今回調査した大規模成長ベンチャー企業(ケースK とL)を網掛けした。 表 4 12 ケースの CSQ サーベイ結果 会社 規模 増加率 ICS JS Pro K 大 H 4.7 (H) 5.6 (H) 4.1 (H) L 大 H 4.3 (H) 4.9 (H) 4.2 (H) J 大 H 4.0 (H) 4.5 (L) 4.2 (H) H 中 L 4.1 (H) 4.3 (L) 4.4 (H) B 中 M 4.2 (H) 5.1 (H) 4.1 (H) F 中 L 3.3 (L) 3.8 (L) 3.5 (L) I 中 L 3.8 (L) 4.6 (L) 3.7 (L) C 中 M 3.8 (L) 5.0 (H) 3.9 (L) D 中 M 3.7 (L) 4.3 (L) 4.2 (H) E 小 M 3.5 (L) 4.1 (L) 3.8 (L) A 小 M 4.2 (H) 5.2 (H) 4.1 (H) G 小 M 4.1 (H) 4.5 (L) 3.9 (L) 平均 4.0 4.7 4.0 表4 をもとに、ICS-JS、ICS-Pro の散布図を図 5 に示す。ICS-JS と ICS-Pro を比較できるように、 縦軸、横軸のスケールをほぼ等しく記載した。 図 5 ICS-JS、ICS-Pro の散布図(筆者作成) (単位:7 点リカートスケール) ICS ICS 筆者は、2012 年の調査結果 (古屋, 2013a)、2013 年の調査結果(古屋, 2013b)において同様の散布図 を発表したが、ケース数が増加するに従って、ICS とJSの相関関係がより明確になることが分かった。 今回、大規模で従業員の増加率がHigh のケース K とケースL を追加したことにより、データは直線上 に並び、ICS-JS の強い相関関係は図 5 に示すよう に鮮明になった。12 ケースと限定的なサンプル数で はあるが、30〜3,000 名規模の企業において、 ICS-JS の相関関係は規模に関係なく成り立つこと が分かる。 一方、ICS-Pro については、ICS-JS と比較して 相関関係は弱いことが分かった。ケース K の Pro は、予想としてはPro = 4.7〜5.0 であったが、Pro = 4.1 とかなり低い。これは、CSQ サーベイにおける Pro の質問方法のためと考える。質問は、「周囲は、 あなたの生産性をどう評価していますか。」であり、 回答者は、「とても高い = 7」から「とても低い = 1」 を選ぶ。プロ意識の高いケースK の従業員は、低め の数値を選んだと考えられる。Pro の調査方法につ いては、検討が必要かも知れない。 ここで、得られたデータの信頼性について検証す る。Downs(2004)は、統計的なデータの信頼性基 準として、CSQ 調査の組織規模別回答者数を規定す る。12 ケースのうち、Downs の基準を満足するのは、 ケースJ のみである。ケース J の回答数は 240 人と Downs の基準である 212 人より多い。 しかしながら、本稿におけるCSQ スコアは、ケー スの分類のみに利用し、統計的な分析には利用しな い。その意味で、必ずしもDowns の基準を満足する 必要は無い。更に、回答数が少ないケースでも20 名 以上の回答者(従業員数が少ないケースG や A では 20 名未満であるが Downs の基準の 33%以上の回答 者数)は確保している。回答者の分布も、企業の組 織の実態と大きく離れないように注意して回収した。 図5 をみても、ケース J だけでなく他のケースも、 ICS-JS は強い相関関係を示している。これらの考察 から、質的データを補完する相対的なケースの分類 (H 群と L 群)という目的で利用する範囲において は、調査データは十分な信頼性があると言える。 4.2 ICS-JS の関係(個別ケースの考察) ICS-JS の関係をケース単位で分析する。表 4 に おいて、ケースJ、G、H は、ICS = H であるが、 JS = L である。図 5 を見ても、他のケースと比較し て、少し下に外れている。 ケースJ は、ソフトウェア開発業である。クリエ イティブな仕事のようで、単調なプログラミング作 業を行っている従業員が多いのかも知れない。従業 員は急増しており、1 年以内に入社した人が多い。 Pro JS

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今回調査した大規模成長ベンチャー企業(ケースK とL)を網掛けした。 表 4 12 ケースの CSQ サーベイ結果 会社 規模 増加率 ICS JS Pro K 大 H 4.7 (H) 5.6 (H) 4.1 (H) L 大 H 4.3 (H) 4.9 (H) 4.2 (H) J 大 H 4.0 (H) 4.5 (L) 4.2 (H) H 中 L 4.1 (H) 4.3 (L) 4.4 (H) B 中 M 4.2 (H) 5.1 (H) 4.1 (H) F 中 L 3.3 (L) 3.8 (L) 3.5 (L) I 中 L 3.8 (L) 4.6 (L) 3.7 (L) C 中 M 3.8 (L) 5.0 (H) 3.9 (L) D 中 M 3.7 (L) 4.3 (L) 4.2 (H) E 小 M 3.5 (L) 4.1 (L) 3.8 (L) A 小 M 4.2 (H) 5.2 (H) 4.1 (H) G 小 M 4.1 (H) 4.5 (L) 3.9 (L) 平均 4.0 4.7 4.0 表4 をもとに、ICS-JS、ICS-Pro の散布図を図 5 に示す。ICS-JS と ICS-Pro を比較できるように、 縦軸、横軸のスケールをほぼ等しく記載した。 図 5 ICS-JS、ICS-Pro の散布図(筆者作成) (単位:7 点リカートスケール) ICS ICS 筆者は、2012 年の調査結果 (古屋, 2013a)、2013 年の調査結果(古屋, 2013b)において同様の散布図 を発表したが、ケース数が増加するに従って、ICS とJSの相関関係がより明確になることが分かった。 今回、大規模で従業員の増加率がHigh のケース K とケースL を追加したことにより、データは直線上 に並び、ICS-JS の強い相関関係は図 5 に示すよう に鮮明になった。12 ケースと限定的なサンプル数で はあるが、30〜3,000 名規模の企業において、 ICS-JS の相関関係は規模に関係なく成り立つこと が分かる。 一方、ICS-Pro については、ICS-JS と比較して 相関関係は弱いことが分かった。ケース K の Pro は、予想としてはPro = 4.7〜5.0 であったが、Pro = 4.1 とかなり低い。これは、CSQ サーベイにおける Pro の質問方法のためと考える。質問は、「周囲は、 あなたの生産性をどう評価していますか。」であり、 回答者は、「とても高い = 7」から「とても低い = 1」 を選ぶ。プロ意識の高いケースK の従業員は、低め の数値を選んだと考えられる。Pro の調査方法につ いては、検討が必要かも知れない。 ここで、得られたデータの信頼性について検証す る。Downs(2004)は、統計的なデータの信頼性基 準として、CSQ 調査の組織規模別回答者数を規定す る。12 ケースのうち、Downs の基準を満足するのは、 ケースJ のみである。ケース J の回答数は 240 人と Downs の基準である 212 人より多い。 しかしながら、本稿におけるCSQ スコアは、ケー スの分類のみに利用し、統計的な分析には利用しな い。その意味で、必ずしもDowns の基準を満足する 必要は無い。更に、回答数が少ないケースでも20 名 以上の回答者(従業員数が少ないケースG や A では 20 名未満であるが Downs の基準の 33%以上の回答 者数)は確保している。回答者の分布も、企業の組 織の実態と大きく離れないように注意して回収した。 図5 をみても、ケース J だけでなく他のケースも、 ICS-JS は強い相関関係を示している。これらの考察 から、質的データを補完する相対的なケースの分類 (H 群と L 群)という目的で利用する範囲において は、調査データは十分な信頼性があると言える。 4.2 ICS-JS の関係(個別ケースの考察) ICS-JS の関係をケース単位で分析する。表 4 に おいて、ケースJ、G、H は、ICS = H であるが、 JS = L である。図 5 を見ても、他のケースと比較し て、少し下に外れている。 ケースJ は、ソフトウェア開発業である。クリエ イティブな仕事のようで、単調なプログラミング作 業を行っている従業員が多いのかも知れない。従業 員は急増しており、1 年以内に入社した人が多い。 Pro JS CSQ の自由回答記述にも職場環境や仕事の内容に ついて、入社までの期待と異なり満足感が得られて いないとの回答が多い。一方、同じソフトウェア開 発業のケースK は、JS = H であり、従業員は自分 で仕事の面白さを探し出し、日々、クリエイティブ な活動を実感することで、仕事に満足し、やりがい、 働きがいを感じていることが分かる。 ケースH やケース G は、製造業であり、回答者 は工場の製造現場の従業員が多く、単調な工場の作 業に仕事の満足度が得られないのかも知れない。但 し、同じ製造業でもケースA は JS = H であり、一 概に業種の理由だけでは無い。 このように、ICS = H でも、個別の企業の状況に よってJS に差がでることは、インターナルコミュ ニケーションの組織的な取組みのやり方によっては、 ICS は向上しても、JS の向上にうまく繋がらない場 合があることを意味する。組織的な取組みの改善の 必要性を示唆している。5 クロスケース分析でより 深く分析する。 4.3 ICS-Pro の関係(個別ケースの考察) Pro は、自分の生産性について他人はどう見てい るかという質問に対する自己評価である。そのため、 自信がある人は高い点をつけ、自信がない人、控え めな人、或いは高い目標設定をしている人は、低い 点をつける。 先に述べたように、図5 で、ケース K は、もっと 大きなPro になると予想したが、Pro = 4.1 と平均程 度である。これは、ケースK の従業員は、目標が高 くプロフェッショナルを目指している集団であるた め、逆に自分に厳しい点を付けたためである。 一方、ケースH は、Pro = 4.4 と最も高いスコア を示す。これは、製造業として絶えず工場としての 生産性向上に邁進し結果を出しているという自負心 とも見える。ケースH の社長は、確かに、モノづく りに対するプライドを高めるインターナルコミュニ ケーションに積極的に取り組んでおり、その効果が 出ている。 4.4 ICS のディメンジョン単位の考察 次に、ICS をディメンジョン単位で分析する。表 5 は、12 ケースの ICS の 8 つのディメンジョンご との個別スコアとICS(総合スコア、8 つのディメ ンジョンの平均)を示す。ICS が高い順に上から並 べてある。 最もスコアが高い企業は、ケースK である。表 5 には、ケースK とその他のケースのスコア差も示し、 どのディメンジョンでケース K との差が大きいか を分析した。スコア差が大きいディメンジョンに編 みかけをしてある。結果として、差が大きいディメ ンジョンは、コミュニケーションの風土作り(CC)、 メディア品質の維持 (MQ)、横のコミュニケーショ ン (HC)である。また、ICS が低いケース(G、J、 C、D、E)では、会社情報の伝達 (OP)も差が大き くなることが分かる。 CC、MQ、HC、OP で、何故スコア差が大きい のか、5 クロスケース分析にてその原因について探 求することとする。 表 5 ICS ディメンジョン単位のスコア差 OP OI CC MQ SC Sub HC PF ICS K 4.61 4.51 4.59 4.93 4.95 4.80 5.18 4.32 4.74 差 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 0.00 L 4.32 4.10 4.13 4.37 4.89 4.41 4.33 3.80 4.29 差 -0.28 -0.40 -0.46 -0.56 -0.05 -0.39 -0.85 -0.52 -0.45 A 4.74 4.28 3.83 4.09 4.40 3.87 4.08 3.94 4.17 差 0.13 -0.23 -0.76 -0.84 -0.55 -0.93 -1.10 -0.38 -0.56 B 4.46 4.28 3.98 3.96 4.32 4.23 4.15 4.07 4.17 差 -0.15 -0.23 -0.61 -0.97 -0.63 -0.57 -1.03 -0.25 -0.56 H 4.12 4.25 3.89 4.12 4.47 4.1.6 4.35 3.79 4.13 差 -0.49 -0.26 -0.70 -0.81 -0.47 -0.64 -0.84 -0.52 -0.60 G 3.86 4.14 3.98 4.04 4.42 4.20 4.00 4.06 4.09 差 -0.75 -0.37 -0.61 -0.89 -0.53 -0.60 -1.18 -0.26 -0.64 J 3.80 4.02 3.83 4.02 4.61 4.19 4.08 3.77 4.04 差 -0.81 -0.49 -0.76 -0.91 -0.34 -0.61 -1.10 -0.55 -0.69 I 3.89 3.88 3.39 3.41 4.36 4.45 3.64 3.64 3.83 差 -0.72 -0.62 -1.20 -1.52 -0.58 -0.35 -1.55 -0.67 -0.90 C 3.24 4.02 3.45 3.44 3.93 4.29 3.53 3.82 3.76 差 -1.37 -0.49 -1.14 -1.49 -1.02 -0.51 -1.65 -0.50 -0.97 D 3.49 3.62 3.31 3.61 4.21 4.08 3.60 3.86 3.70 差 -1.12 -0.89 -1.28 -1.32 -0.74 -0.73 -1.58 -0.45 -1.04 E 3.19 3.48 3.25 3.47 3.87 3.94 3.48 3.69 3.52 差 -1.42 -1.03 -1.34 -1.46 -1.08 -0.86 -1.70 -0.63 -1.22 F 3.24 3.38 2.62 2.92 3.38 4.08 3.27 3.19 3.25 差 -1.37 -1.13 -1.97 -2.01 -1.56 -0.72 -1.92 -1.13 -1.49 平均 3.91 4.00 3.69 3.87 4.32 4.22 3.97 3.83 3.97 差 -0.70 -0.51 -0.90 -1.07 -0.63 -0.58 -1.21 -0.49 -0.77 注) ICS(総合スコア、8 つのディメンジョンの平均)のスコア差 より大きなスコア差があるディメンジョンに網掛けしてある。

5 クロスケース分析

5.1 12 ケースの組織的な取組み結果 社長、ミドル、専門部門とのインタビューデータ とCSQ の自由回答記述(従業員の声)を利用して、 インターナルコミュニケーションの組織的な取組み と社長の意識について比較分析する。 初めに、ICS の 8 つのディメンジョンを、「発し 手」と「受け手」の関係から表 6 のように整理し、 社長、ミドルが、発し手として、どのようにコミュ ニケーションに取り組んでいるかを抽出した。企業 規模、ICS スコアの順に表 7 の形式に整理し、関係 するICS のディメンジョンを( )で記載した。

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表の一番下の行にある採用のコミュニケーション は、8 つのディメンジョンには存在しないため、(な し)と記載した。 表 6 ICS の 8 ディメンジョンの整理(筆者作成) ディメンジョン 発し手 受け手 会社情報の伝達(OP) 会社(社長) ミドル/従業員 部門情報の伝達(OI) ミドル 部下 コミュニケーション風土作り (CC) 会社(社長/上司) ミドル/従業員 メディアの品質維持(MQ) 会社(社長/上司/同僚) ミドル/従業員 上司とのコミュニケーション (SC)(部下視点) ミドル(上司)/従業員(部下) 従業員(部下)/ ミドル(上司) 部下とのコミュニケーション (Sub)(上司視点) ミドル(上司)/従業員(部下) 従業員(部下)/ ミドル(上司) 横のコミュニケーション(HC) ミドル/従業員(同僚) ミドル/従業員 (同僚) 評価のフィードバック(PF) ミドル(上司) 従業員(部下) 表 7 企業規模、ICS スコアによる組織的な取組みの 比較(筆者作成) 企業規模 小 中 大 ICS 総合スコア L H L H H コミュニケーション 取組み 評価 会社の理念、方向性、 財務情報の伝達、ムー ド醸成 (OP,CC,MQ) 社長による情熱的な全社 集会の開催 △ ◎ △ ◎ ◎ 社長による幹部会の開催 △ ◯ △ ◯ ◯ 社長のメッセージ伝達 (OP, CC, MQ) 対面による直接伝達 △ ◎ △ ○ ◎ Web による伝達 △ ◎ 社長への社員の理解度 のフィードバック (OP, CC, MQ) 月報、ミドルによる報告 ◎ 対面/の会議 ◎ △ ◎ 社長とのランチ会 △ △ 社長のコミュニケーシ ョン(OP, CC, MQ) 社長との飲み会 △ ◯ △ ◯ ◯ 社員旅行や合宿 △ △ ◎ 社員間、横のコミュニ ケーション(HC) 全社イベントの開催 △ ◯ △ ◯ ◎ サークル活動 △ ○ 飲み会の飲食費補助 ○ 専門スタッフの活動 △ ◎ 社内報(紙) △ ◎ ミドルのランチ会 ◎ 従業員同士の勉強会 ◎ 業務連絡 (OI, CC, MQ, SC, Sub, HC) 会議 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ 対面での会話 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ メール ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ グループウェア ◯ ◯ ◯ ◯ 評価 (PF) 個人面談 ◯ ◯ ◯ ◯ ◯ 表彰イベント △ △ ◎ 採用(DIM は、なし) 社長の活動(対面/Web) ◎ 注1) インタビュー内容から判定:◎:非常に効果的 ◯:効果的 △:あまり効果は出ていない 注2) 大規模、ICS = H のケースで、◎に当たる取組みは、網掛け してある。 5.2 組織的取組みとディメンジョンへの影響 表7 を利用して、組織的な取組みと ICS のディメ ンジョンへの影響関係を考察する。インタビューの 発言に基づく非常に効果的(◎)な項目に着目し、 以下の考察では、関係するインタビューの内容を適 宜リアルな言葉(『 』)で引用する。 (1) 規模に共通な取組みと影響されるディメンジ ョン 初めに、企業規模を問わず、ICS に影響する組織 的な取組みを分析すると、社長による情熱的な全社 集会と社長のメッセージ伝達、社員の理解度のフィ ードバックの仕組みであることがわかる。ICS = H 群の社長は、情熱的な全社集会を開催し、全従業員 に直接のメッセージを送る。対面を重視し、そのメ ッセージが全員にきちんと届いたかを確認する仕組 み(フィードバック)を持っている。 『週報だとか、いろんなところで集めているのは、 僕の経営の舵取りのためであって、(中略)自分の言 ったことが全然伝わっていないと分かると、全体会 議の時に、それを話します。』(大規模 ICS =H ケ ースK の社長) 『理解しているかは、相手の顔色を見ていると分 かる。顔色、反応が見える範囲で。それ以上は会議 に呼べない。』(小規模 ICS = H ケース A の社長) ICS = H のケースでは、社長は、自分のメッセー ジ伝達の効果をコントロールしながら、言い放しに ならないように細心の注意を払っている。これは ICS のディメンジョンでは、会社情報の伝達(OP)、 コミュニケーションの風土作り(CC)、メディア品 質の維持(MQ)に影響を与える。 (2) 規模によって変化する取組みと影響されるデ ィメンジョン 次に、規模によって変化する取組みとしては、全 社イベントの開催、社内報といった社員間のコミュ ニケーションを活性化する取組みがある。組織が大 きくなると、直接のコミュニケーションがだんだん 取りにくくなる。そこで、全社イベントや社内報を 利用して、その隙間を埋め一体感の醸成に努力する。 この取組みは、横のコミュニケーション(HC)に 影響する。ケースL の社長は、強制的なコミュニケ ーションの重要性を、ケースK の社長は、組織的な コミュニケーションの活性化に力を入れていると明 言する。

参照

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