Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
№15:房室ブロックに対して一時的に体外式ペースメ
ーカーを装着して全身麻酔下に顎矯正手術を行った1症
例
Author(s)
星野, 立樹; 小鹿, 恭太郎; 岡田, 玲奈; 寺島, 玲子;
橘, 継国; 大内, 貴志; 小板橋, 俊哉
Journal
歯科学報, 120(2): 209-209
URL
http://hdl.handle.net/10130/5143
Right
Description
目的:房室ブロックは,心房まで伝わった心臓収縮 の為の電気刺激が心室にうまく伝わらず,全身に血 液を送る心室のリズムが遅延,停止する,徐脈性不 整脈の一つである。伝導障害の程度により,Ⅰ∼Ⅲ 度に分けられる。Ⅰ度・Ⅱ度房室ブロックは電気刺 激の伝導に通常より時間を有し,時折上手く伝わら ない状態であり,Ⅲ度房室ブロックは電気刺激が全 く伝わらない状態である。Ⅱ度・Ⅲ度房室ブロック は失神や突然死につながる恐れがありペースメー カー埋め込みによる治療が必要となる場合がある。 今回,術前診察でⅡ度房室ブロックが発見され,周 術期において高度徐脈をきたすリスクを考慮して, 一時的に体外式ペースメーカーを装着し全身麻酔下 に顎矯正手術を行った症例を経験したので報告す る。 症例:27歳女性,身長163cm,体重56.7kg。顎変形 症に対して Le FortⅠ型骨切り術および下顎枝矢状 分割術が予定された。既往歴は特になかったが,全 身麻酔の術前検査において,心電図でⅡ度房室ブ ロックが認められた。本人は週に1,2回風呂上り に立ち眩み,失神経験があるとのことであった。当 院循環器内科医と協議のうえ,体外式ペースメー カーを入院時に装着し手術に臨む方針とした。 入院当日,右側内頚静脈よりペーシングリードを 留置し,体外式ペースメーカーを装着した。設定 は,Mode:心 室 抑 制 型 ペ ー シ ン グ(VVI),Set Rate:50bpm で 行 っ た。手 術 は 予 定 通 り 施 行 さ れ,術中の循環動態を含め特記すべき問題はなく終 了して,術後はハイケアユニット(HCU)へ入室 した。HCU で 夜 間 入 眠 時 に 心 拍 数 が40台 と な り ペーシング波形が10回出現したが,覚醒時は完全に 自脈で循環動態も安定していたため,経過観察を行 い当院循環器内科の判断のもと術後2日目にペース メーカーリードを抜去した。その後,術後7日目に 経過良好につき軽快退院した。 成績および考察:房室ブロックの原因は心筋梗塞, 心筋症などの基礎心疾患に伴う場合や,基礎疾患の ない突発性の場合がある。本症例では基礎心疾患を 認めなかったが,術中の循環動態の変化や電解質異 常,手術操作での迷走神経への刺激などで起こる可 能性が考えられる。また,全身麻酔薬により徐脈性 不整脈が惹起される可能性もある。したがって,本 症例のように術前検査でⅡ度房室ブロックが発見さ れた場合は,手術部位や手術侵襲の大きさ,手術時 間等を考慮し,術前に体外式ペースメーカーの適応 を検討することは手術をより安全に行ううえで重要 であると考える。