Posted at the Institutional Resources for Unique Collection and Academic Archives at Tokyo Dental College, Available from http://ir.tdc.ac.jp/
Title
№6:東京歯科大学口腔がんセンターにおける放射線治
療選択患者の検討
Author(s)
栗原, 絹枝; 鈴木, 大貴; 三條, 祐介; 吉田, 佳史; 野
口, 沙希; 齊藤, 朋愛; 酒井, 克彦; 石崎, 憲; 山本,
信治; 佐藤, 一道; 山内, 智博; 野村, 武史; 髙野, 正
行; 片倉, 朗; 柴原, 孝彦; 青柳, 裕; 髙野, 伸夫
Journal
歯科学報, 114(3): 285-295
URL
http://hdl.handle.net/10130/3353
Right
目 的:今 回 我 々 は,Hemoglobin Cheverly 患 者 の 全身麻酔を経験したので報告する。 症例:患者は20歳男性,顎変形症に対して下顎骨矢 状分割術を全身麻酔下に予定した。12歳時に蜂刺症 で医療機関を受診した際に,SpO2が80%であった ため精査を行った結果,本邦で初めて Hemoglobin Cheverly と診断された。術前診察において,空気 吸入下で SpO2は79%,動脈血酸素分圧(PaO2)は 100mmHg と解離が見られた。その他の検査結果等 において異常所見は認めなかった。麻酔中は,通常 のモニタリングに加え,動脈血液ガス分析を適宜 行った。導入にはプロポフォール,フェンタニル, ロクロニウムを用い,経鼻挿管した。維持は酸素, 空気,デスフルラン,レミフェンタニルで行った。 麻 酔 時 間 は4時 間29分 で あ っ た。入 室 時 の SpO2 は,空気吸入下で80%であり,麻酔中の FIO2は0.4 で SpO2は84−88%,PaO2は221−250mmHg であっ た。動脈血液ガス測定において,麻酔導入直後の乳 酸値が0.8mmol/L と正常であったが,麻酔開始約 3時間後では2.8mmol/L と高値を示した。その他 の事項については,周術期において特記事項は認め なかった。 結果および考察:不安定ヘモグロビン症は,ヘモグ ロビンの質的異常を示す疾患である。Hemoglobin Cheverly は,ヘモグロビンの吸光度の異常により SpO2は低値を示すが,酸素結合能は正常に近いと されている。このような患者において,SpO2の信 頼性は低く,術中の定期的な血液ガス酸素分圧の測 定が重要であると考える。また,乳酸値の上昇は, 組織の虚血や,低還流によって生じるとされてい る。不安定ヘモグロビン症においても,アロステ リック効果により酸素供給が問題なく行われると考 えていたが,組織への酸素供給が正常に行われてい ない可能性や,全身麻酔という特殊な環境において 心拍出量の低下など,酸素需給バランスが変化して いる可能性が考えられた。今後,同患者において, 抜釘術が予定されているため,動脈圧心拍出量測定 装置を用いて心拍出量の評価を行う予定である。 目的:東京歯科大学口腔がんセンターでは手術療法 を主体とし,National Comprehensive Cancer Net-work のガイドラインにほぼ準じた治療方針を提供 している。一方,手術適応であっても高齢による医 学的問題点,予後の問題,あるいは患者の希望によ り一次治療として放射線治療を選択する症例が増え ている。今回我々は,今後の治療方法選択の一助と するために一次治療で放射線治療を行った症例の治 療効果を検討した。 方法:平成18年7月開設した口腔がんセンターの一 次症例352例のうち,放射線治療を選択した男性27 例,女性19例の計46例(平均年齢は77歳)を対象と した。それらの症例の部位,stage,治療法別の生 存率,有害事象を検討した。 結果および考察:46例は全例,基礎疾患を有してお り,組織型は扁平上皮癌であった。部位別では舌14 例,下顎歯肉12例,頬粘膜7例,口底6例,上顎歯 肉4例,口唇2例,硬口蓋1例,stage 分類では, stageⅠ∼Ⅲが11例,stageⅣA が30例,stageⅣB が5例であった。治療法は放射線単独療法が14例, 化学放射線療法が32例であった。 StageⅠ∼Ⅲの3年生存率は放射線単独療法で0 %,化学放射線療法で71.4%であった。StageⅣA の3年生存率は放射線単独療法で38.9%,化学放射 線療法で43.8%と群間の有意差は認めなかったが, いずれの stage においても化学放射線療法の3年生 存率が高い傾向にあった。なお stageⅣB 症例では 化学放射線療法のみ行なわれ,2年生存率は40%で あった。また stageⅣA 症例における局所制御率は 放射線単独療法が25.7%であったのに対し,化学放 射線療法では58.9%と高い傾向にあった。部位別に 2年生存率を比較したところ,舌が83.3%と最も高 い結果であった。治療に伴う有害事象は下顎歯肉癌 で最も多く,約70%の症例で骨髄炎や顎骨壊死,膿 瘍形成などがみられた。今回の結果より,放射線治 療には化学療法を併用することで治療成績が改善す る傾向にあったが,下顎歯肉癌に代表される口腔の 機能障害が問題となる有害事象も散見された。口腔 癌の治療方法の選択は施設の設備や環境もその検討 要因であり,今回の結果は当センターで放射線治療 の選択を検討する際の有用なデータとなった。