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胸腺癌症例の臨床的検討 利用統計を見る

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Academic year: 2021

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胸腺癌症例の臨床的検討

山梨医科大学第2内科 西川圭一 大木善之助 成宮賢行 池田フミ

小澤克良 田村康二

同 第2外科 高橋渉 吉井新平

甲府城南病院胸部外科 松山謙

  はじめに 胸腺癌は比較的まれな疾患であるが、我が国ではShimosatoらの報告1)以来広く認識 されるに至っている。今回我々はこれまでに経験した胸腺癌症例6例につき、特に胸腺 腫との比較において臨床的検討を加えたので報告する。

 対象と結果

対象は1983年10月の山梨医科大学付属病院開院以来および甲府城南病院での組織学的 に確定診断された胸腺関連腫瘍症例は合計41症例であった。その内訳は胸腺腫が21例 (5L3%)と最も多く、次いで胸腺癌と奇形腫が各6例(14.6%)、胸腺嚢腫3例(7.3 %)、悪性リンパ腫2例(4.9%)の順であった(表1)。なお、胸腺カルチノイドは なかった。胸腺癌症例の内訳を表2に示した。症例1は65歳男性で上大静脈症候群で発 症し経皮生検で扁平上皮癌と診断し、病期(胸腺腫に対する正岡分類2)を胸腺癌に適用 したもの、以下同様)はIVaであった。放射線照射を50 Gy行ったが35ヶ月で死亡した。 症例2は77歳男性でやはり上大静脈症候群で発症、経皮生検で未分化癌と診断。病期は IVaで放射線照射を50 Gy行ったが6ヶ月で死亡した。症例3は78歳男性で高血圧症で 通院中、胸部レントゲン異常で発見された。手術の結果IVb期の小細胞癌で、術後50 Gyの放射線照射を行ったが12ヶ月で死亡した。症例4は72歳男性で背部痛で発見され、 経皮生検で扁平上皮癌と診断したが発見時すでに肺内転移があり、病期はIVbで化学療 法(CDDP+VP−16)を1コース行ったが効果なく12ヶ月で死亡した。症例5は54歳女性 で咳順、胸水貯留で発見され経皮生検で扁平上皮癌と診断した。病期はIVb期で化学療

法(CDDP+BLM+VLB)を4コース行ったが効果なく7ケ月で死亡した。症例6は62

歳男性で糖尿病で通院中に胸部レントゲン異常で発見され、手術の結果III期の扁平上 皮癌と診断し、術後54Gyの放射線照射を行った後、非担癌状態で経過観察中である。 症例5を除いてすべて高齢男性の重喫煙者で、6例すべてが1992年以降のここ3年間 に経験した症例であった。  胸腺癌の臨床像を胸腺腫のそれと比較すると、年齢は胸腺癌が平均68歳で胸腺腫の平 均56歳に比べ有意に高く、性別では胸腺癌が5:1と男性に多かったのに対し、胸腺腫 では女性に多い傾向があった(表3)。発見動機では胸腺癌は自覚症状で発見された症 例が6例中4例であったのに対し、胸腺腫では自覚症状による発見がll例、レントゲン 異常での発見例が10例とほぼ同数であった(表4)。なお胸腺腫の自覚症状発見症例ll

(2)

 表1

   胸腺関連腫瘍症例の内訳    (1983年10月∼1995年9月、     山梨医大および甲府城南病院。組織確診例のみ) 胸腺腫 胸腺癌 奇形腫 胸腺嚢腫 悪’性リンパ腫 その他 21イ列 (51.3%) 6イ列 (14.6%) 6イ列 (14.6%) 3イ列 (7.3%) 2イ列 (4.9%) 3イ列 (7.3%)

表5

臨床病期(正岡分類) 合計 41イ列 (100%) 胸腺癌  (n=6) 胸腺腫  (n=21) 1期 0 12(57.2%) ll期 0 1(4.8%) 川期 1(16.7%) 4(19.o%)

lVa期

2(33.3%) 2(9.5%)

lVb期

3(50.o%) 2(9.5%)

表2

胸腺癌症例の内訳 症例 年齢 性別 発症年 喫煙指数 発見動機 組織型 病期 治療 予後 1 65 男 1992 1000 上大静脈 ヌ候群 扁平 續迥 lVa 放治50Gy 35月 ?S 2 77 男 1993 1500 上大静脈 ヌ候群 未分化 @癌 lVa 放治50Gy 6月 ?S 3 78 男 1993 1200 XP異常 小細胞 @癌 lVb 手術+放治50Gy 12月 ?S 4 72 男 1994 1200 背部痛 扁平續迥 lVb 化療 iCDDP+VP−16,×1) 12月 ?S 5 54 女 1994 0 咳漱 扁平續迥 1Vb 化療 iCDDP+BLM+VLB,×4) 7月 ?S 6 62 男 1995 640 XP異常 扁平 續迥 川 手術+放治54Gy 10月 カ存

表3

年齢と性別

表4

発見動機

胸腺癌   (n=6) 胸腺腫   (n=21) 胸腺癌   (n=6) 胸腺腫   (n=21)

年齢

i54∼78)68.0歳     ★T6.4歳i26∼77) 自覚症状 4 (67%) 11(52%)

男女比

5:1

8:13

レ線異常 2(33%) 10(48%)

(3)

例中7例は重症筋無力症の症例であり、重症筋無力症非合併例に限ると自覚症状による 発見は14例中4例のみであった。臨床病期では胸腺癌では1、II期はなく、すべてIII、 IV期症例と進行例が多かったのに対し、胸腺腫では約60%が1、 II期であった。しかし III、 IV期症例も約40%あった(表5)。

症例呈示

 症例3は78歳男性で高血圧症で通院中に胸部レントゲン異常を指摘された。正面写真 では明らかな異常を指摘できないが、側面像では胸骨後方に異常陰影を認めた(図1)。 胸部CT(図2)では前縦隔に腫瘤を認め、臨床的に胸腺腫と診断し手術を行ったが、 腫瘍は大動脈、左腕頭静脈、左肺S3、心膜に浸潤しており、さらに左鎖骨窩リンパ節 転移を認めた。病理組織像(図3;HE染色)では類円形で胞体の乏しい裸核状の腫瘍 細胞の増殖が見られ、核は濃染し、核異型も著明であった。免疫組織染色ではCAM 5.2、 NSE、クロモグラニンAがいずれも陽性であり小細胞癌と診断した。手術後50グレイの 放射線照射を行ったが、12ヶ月で死亡した。 症例4は72歳男性で背部痛、嗅声を主訴に受診した。胸部レントゲン写真(図4)で は左第2弓に重なる類円形陰影、右S3の小円形陰影、左横隔膜の挙上を認めた。胸部 CT(図5)では前縦隔に内部に低吸収域を伴う腫瘤、右S3に直径15mmの結節病変が あり、臨床的には前縦隔腫瘍の肺内転移と診断した。CTガイド下の経皮生検を行い、 病理組織像(図6;HE染色)では、組織の大部分は壊死に陥っていたがその一部にク ロマチンに富む大型の核をもつ大小不同の異型細胞を認め、また一部に角化巣も認め、 扁平上皮癌と診断した。シスプラチンとエトポシドの併用による化学療法を1コース行っ たが効果なく、12ヶ月で死亡した。

考 察

胸腺癌は胸腺上皮性腫瘍のうち組織学的に悪性腫瘍の像を示すものであり、1977年に 我が国のShimosatoら1)によってはじめてまとまった報告がなされたが、それまでは胸 腺腫と明確に区別されないことが多かった。正岡ら3)によれば胸腺癌の占める割合は胸 腺関連腫瘍273例中9例(3.3%)、全縦隔腫瘍中2.2%と比較的まれな疾患である。組 織学的には扁平上皮癌が最も多くみられる。組織型に関してはいくつかの分類があるが、 現時点で最も・・一一一・一般的に用いられているのはSuster&Rosai 4)の分類である。彼らは胸腺 癌をlow,−grade histologyとhigh−grade histologyの2つのグループに分類し、両群間の予後 には大きな差があり、high−grade histologyの予後が極めて悪いとしている。また胸腺癌 の病期分類には一般的には正岡の分類が適用されいるが、この分類による病期と予後と は相関がみられる4)。治療は病期に応じて手術、化学療法、放射線治療などが選択され るが、特に遠隔転移のある場合にはシスプラチンを主体とした化学療法5)が行われるこ とが多いものの、現在のところ満足すべき成績は得られていない。  自験例では症例6を除いてすべて発症後6ヶ月から35ヶ月で死亡しており予後不良で あったが、これら5例はいずれも正岡分類でrVaまたはrVbと進行癌であった。胸腺と

(4)

図1症例3の胸部レントゲン像 図2 症例3の胸部CT像   図3 症例3の組織像 図4 症例4の胸部レントゲン像 図5 症例4の胸部CT像 嵩   ぷ 筆     s

       婚

図6 症例4の組織像

(5)

いう場所が特に病初期では胸部レントゲン写真正面像では確認が困難であること、組織 型によっては極めて進行が早いということが早期発見を妨げる大きな要因と思われる。 現に症例6(小細胞癌)は胸部レントゲン正面像では確認ができない時点で発見された にも関わらず、すでに左鎖骨窩リンパ節転移を認めていた。なお、本症例ではカルチノ イドとの鑑別が問題となったが、細胞異型が強いことから小細胞癌と診断した。  自験例の1つの特徴としては、6例全てがここ3年以内に経験した症例であるという ことで、それ以前の9年間には胸腺癌は1例も経験していない。あるいはこれは胸腺癌 が近年増加傾向にある可能性を示すものなのかも知れない。  まとめ 1.胸腺癌6例を経験した。いずれも最近3年以内の症例であった。 2.高齢男性で重喫煙者が6例中5例を占めた。 3.発見時進行癌が多く、最近のユ例を除き治療抵抗性で予後不良であった。  文 献 1)Shimosato Y, Kanaya T et aL:Squamous cell carcinoma of the thymus:An analysis of eight  cases. Am. J. Surg. PathoL l:109,1977 2)Masaoka A, Monden Y et al.:Follow−up study of thymomas with special reference to their clinical stages. Cancer 48:2485,1985 3)正岡 昭,門田康正:縦隔腫瘍並びに外科治療の対象となる胸腺疾患.外科治療44: 662,1982 4)Suster S, Rosai J:Thymic carcinoma. Cancer 67:1025,1991 5)Carlson RW, Dorfman RF et aL:Successful treatment of metastatic thymic carcinoma with cisplutin, bleomycin and etoposide chemotherapy. Cancer 66:2092,1990

参照

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