ビジネスマネジメント学群 2 年生の高得点取得の究明(1)
渡邉 勝仁
キーワード:TOEIC、リーディングセクション、誤答分析、BM 学群、正答率概要
近年、TOEIC テストは、企業などから高得点が要求される英語能力を測る重要かつ、 もっとも一般的なテストとなっている。それに伴い、多くの大学では TOEIC に関する授 業を設けて、高得点取得の対策がなされている。2013 年度より、桜美林大学ビジネスマ ネジメント(BM)学群でも前年度までの学生が必修科目であった TOEIC の授業が、1 年 間から 2 年間に延長された。このことから、BM 学群の TOEIC テストへの関心の高さが 伺える。本研究の目的は、BM 学群の 2 年生の必修科目である BM TOEIC の授業におい て、春学期・秋学期で期末試験として行われた、TOEIC の Practice Test 2 の結果の誤答 を分析し、その結果を今後の授業に反映し、学生の得点向上を狙うことである。本研究で は、リーディングセクションのみに限定し、各 Part(Part 5, 6, 7)の誤答を分析する。1.研究の背景
2013 年度より、桜美林大学ビジネスマネジメント(BM)学群の 2 年生の必修科目である BM TOEIC に関する授業が、1 年間から 2 年間に延長された。そして、学生の卒業時期に は、TOEIC テスト 600 点取得を目標としている。これにより、BM 学群の TOEIC に対 するさらなる関心の高さ、また、各学生に対する得点向上を期待していることが伺える。 このことから、各教員レベルで的確に今後の TOEIC の授業に対する傾向と対策また、各 Part のどの問題を重点的に教えるかが、今後高得点取得のため重要視される課題である。 TOEIC テストには、2 つのセクションがあり、リスニングセクション 100 問、リーディ ングセクション 100 問の合計 200 問で構成されている。時間は、リスニングが 45 分間、 リーディングが 75 分間の合計 2 時間である。本研究においては、リーディングセクショ ンにのみ限定して誤答分析を実施する。 分析方法に関しては、誤答が多かった問題に対し実際の問題を挙げ、文法、語彙、読解 能力などあらゆる面から先行研究の結果を基に、それらの誤答を分析する。最後に、誤答 分析の結果を今後の授業で反映し、学生の高得点取得を狙う。使用するデータは、2012 年 度秋学期に実施された、期末試験の結果である。使用したテストは、教科書の Tactics for TOEIC® Listening and Reading Test に付属している 2 つの模擬テストの 1 つ、Practice Test 2 であり、対象のデータは、90 人(4 クラス)分の学生の結果である。2.先行研究
TOEIC に関しては多くの研究が行われており、その研究分析の成果も多い。その多く は、受験者全員が終了可能な前半のリスニングセクションである。また、リーディングセ クションの結果も Part 5, 6 に関しては、多くの分析結果が存在する。高橋(2004)による と、Part 5 の結果として、時制に関する問題は、おおよそ 40%以上の正解率を出してい るのに対し、熟語や語彙、語法を問う問題の正解率が低い。さらに Part 6 でも、語法、 熟語の正解率が低かったことを挙げている。その結果、リーディング問題に関しては文 法、語彙問題(Part 5, 6)のほうが長文(Part 7)より正解率が低い分析結果を出している。 宮奥(2012)は結論として、Part 5 に関しては、基礎的な文法が理解できていない、また 基礎的な語彙力がない受験者(学生)が多かったとしている。與那嶺・Willcox(2005)の報 告によると、リーディングセクションにおいて問題量の多さから回答時間の足りなかった 受験生が続出した。学生のレベルを見極めながら、講義において速読力を養成していく必要があるとしている。これらの先行研究の学生のレベルは、BM 学群の学生と比較して、 大差はないと考えられる。例として、高橋(2004)と比較してみると、対象となった学生 は、高等専門学校の 4 年生ということであった。学生の年齢層はほぼ同じである。そし て、リーディングセクションの各 Part(5, 6, 7)の正答率の差は、Part 5 では、BM 学群が わずか 1.6% 高く、Part 6 では、BM 学群が 10.1% と大きく離したが、Part 7 では、本校 の学生が 8.4%下回った。このような結果から、大きな差はないと考えられる。 これらのような状況を踏まえて、本研究テーマとして、先行研究の結果とどのような類 似点、または相違点があるのかを分析調査し、その結果を今後の講義で反映する。その 後、次の 2 年生に同じテストを受けさせ、結果を比較分析する。
3.授業の背景
本研究内容を十分に理解するために、本大学の BM 学群の TOEIC の授業に関して説明 する必要がある。以下のデータは、2012 年度までの内容である。1 クラスは、25 名以下 に限定されていて、クラス数合計は 16 クラスであった。全 16 クラスはレベル分けされて いて、上級クラス 6 クラスと普通クラス 10 クラスに分けられていた。レベル分けの流れ は以下の通りである。 入学が決定した学生が入学以前に、各自個人で受講するオンラインの英語能力テスト CASEC テストの結果(点数)に基づき、1 年次の学生が受講する英語コアの授業のレベル 1・2・3 に振り分けられる。最初にレベル 1 及び 2 の学生を普通レベルの 10 クラス割り 振りし、レベル 3 の学生を高いレベルのクラスに振り分ける。その後、レベル 3 の学生の みでは、上級クラス 6 クラス分に満たないので、普通クラスの学生全体の中で、CASEC テストの結果が良かった上位の学生を上級クラスに移動させる。さらに、毎年 1 年次の学 年末に行われる 2 度目の CASEC テストの点数を 1 度目と比較した習熟度が高い学生は、 上級クラスへ移動する対象となる。そして、各クラスの男女数の平均を考慮しつつ最終的 なクラス振り分けが上級クラス 6 クラスと普通クラスの 10 クラスに実施される。2012 年度までは、2 年次の 1 年間(前期・後期)を 1 冊の教科書、Tactics for TOEIC® Listening and Reading Test を使用し授業を実施した。この教科書には、付属の Practice Test が 2 つあり、両方とも正規の TOEIC テストと同レベルの問題を集めている。この 問題を各学期 1 つずつ、Listening と、Reading に分けてクラス内で期末試験として実施 した。学生は、1 年間、各 1 人ずつの教員から週 1 コマずつ受講し、BM TOEIC クラス は主に TOEIC の Listening を、BM KENTEI クラスは主に Reading を勉強した。
4.方法
今回のデータは、2012 年度 BM 学群の 2 年生 4 クラス、上級クラス 1 クラス、普通ク ラス 3 クラスの合計 90 人分のものである。調査に使用した問題は、教科書(Tactics for TOEIC® Listening and Reading Test)に付属している TOEIC Practice Test 2 で、正規の TOEIC テストと同レベルのものである。各学期の最後に期末試験として、TOEIC Practice Test 1, 2(前期に 1、後期に 2)を 100 問ずつ半分に分けて、前半の Listening Section を BM TOEIC クラスで実施し、後半の Reading Section を BM KENTEI クラスで実施した。 本研究で分析に使用したデータは、TOEIC Practice Test 2 後半の、問 101 から問 200 ま での 100 問である。テスト時間は、正規テストの時間配分同様、75 分間をクラス内で実 施した。
5.結果
リーディングセクションの総合的な結果として、問題数 100 問、Part 5, 6, 7 に対し全 体平均誤答率は、全国平均を下回る結果となった。これは社会経験のない大学 2 年生にし ては、当然の結果だったといえる。90 名の受験者で、最低誤答数を解答したのは、上級 クラスの学生であった。普通クラス 3 クラス中の最低誤答数を解答した学生は、上級クラ スの学生と 8 問の差であった。そして 90 名の学生が、どの問題において誤答率が高いか を分析するため、各問題の誤答率を調査した。 5 - 1 Part 5この Part の問題は、短文穴埋め問題(Sentence Completion)40 問で構成されている。 最高誤答率は問 138 で、次に高かった誤答率の問題は、問 115 と問 137 で同率であった。 誤答率が極めて高かった問題は高い順に(問 138, 115, 137, 105)の合計 4 問であった。最低 誤答率の問題は、問 103 であった。この問題の誤答率は、次に低かった誤答率の問題、問 104 を大きく引き離した。このような結果から、Part 5 の誤答率には、大きなばらつきが あった。 5 - 2 Part 6 この Part の問題数は 12 問と少なく、4 つの長文(パッセージ)、各 1 つずつに 3 つの空 欄があり、それを埋めるのに適した答えを 4 つの選択肢から選ぶ、長文穴埋め問題(Text
Completion)である。平均誤答率は、3 つの Part の中で最も低い数字となった。最高誤答 率は、問 145 であり、最低誤答率は問 148 で、長文ごとの平均は、4 つの長文のうち 2 つ 目の問 144 〜 146 の誤答率が最も高いものとなり、低いものも長文 3 つ目の問 147 〜 149 であった。ばらつきもまた、3 つの Part で最小となった。
5 - 3 Part 7
この Part の問題は長文読解問題であり、各長文の文章は、1 つの文章(Single Passage) 28 問、2 つの文章(Double Passage)20 問の合計 48 問で構成されている。平均誤答率は、 3 つの Part で最も高い数値である。最高誤答率は、問 187 で、問 181 から最終問題である 問 200 までは、2 つの文章(Double Passage)で構成される問題である。誤答率ワースト 5 はすべて、Double Passage の問題からである。最低誤答率に関しては、Part 7 最初の問 題、問 153 が挙げられる。問 153 に次いで誤答率が低かった問題は、問 156 で数値にかな り大きな開きが観察される。
6.考察
6 - 1 Part 5 Part 5 では、全般的にどのような誤答率に関しての傾向があるか、問題全 40 問で分析 する。そして、表 1 にあるように誤答率が高かった上位 10 問を取り上げ、どのような問 題がその原因を引き起こしているのかを詳細に分析することにした。さらに、誤答率上位 4 位までの問題に関しては、実際の問題を挙げ詳細に分析する。 全般的には、語形(品詞)と語彙の問題の多さが目立った。今回のテストにおいては、 Part 5 で品詞の問題が 13 問、また語彙問題も 13 問であった。全 40 問中、半数以上の 26 問である。それに次いで多かった問題が、前置詞の問題 6 問であった。また、表 4 にある 誤答率が高かった上位 10 問の問題内容を見てみると、語法の問題 2 問、語形(品詞)の問 題 3 問、前置詞に関する問題 2 問が目立つ。 表1 Part 5 誤答率上位 10 問と問題内容 順位 1 2 2 4 5 5 7 7 9 10 問題番号 138 115 137 105 102 136 122 125 114 140誤答率が最も高かったのは、問 138 であった。問題は以下のとおりである。 138. To attract applicants who ………… might not be
interested, Phantom Chemical Laboratories is offering each new hire a relocation allowance.
(A)otherwise (B)except (C)whether (D)besides この問題はまれに出題される語法の問題で、節の要素(Element of Clause)を問われるも のである。ここでは、動詞節の動詞、下線部の interested を修飾する副詞が正確に選べ るかが、問題を解く鍵になっている。正解は、(A)の副詞、otherwise である。選択肢の 中に副詞は 1 つだけなので、問題の内容が理解できていれば、正しく答えた導き出せた問 題である。さらにこの問題は、学生が苦手とする複文の問題である。そのため多くの学生 が、正しい答えを導き出せなかったのではないかと推測される。 次に誤答率が高かったのが、問 115 である。問 138 との差は、わずか 1.1%であった。 問題は、以下のとおりである。
115. The manufacturer recommends machine-drying at low temperatures; high temperatures may result in excessive shrinkage and shorten the life of a ……… (A)garment (B)clothing (C)fabrication (D)fitting 正解は、(A)garment である。この問題の内容は、語彙問題であり特徴としては、可算 名詞と不可算名詞の知識が必要である。問題の空欄の直前に冠詞の a があるので、ここで 必要になる名詞は可算名詞である。しかしながら、答えの選択肢が全て名詞であるので、 1 つ 1 つの問題の正しい可能性を調べる必要がある。まず、(C)fabrication は、何か物を 作る時の工程であり、布などではないので、不正回答である。(D)fitting もまた、仮縫 い・ためし着など、意味的に正しくないので不正回答である。消去法から見てみると、 (A)garment と(B)clothing が残り、(A)garment は可算名詞、(B)clothing は不可算名
詞なので、正しい答えは、(A)garment である。
ある。
137. Construction on the bridge ………. the two cities has progressed more rapidly than anticipated. (A)was to link
(B)linking (C)linked (D)will be linked
この問題の正回答は(B)linking である。bridge を説明するため現在分詞の linking が相 応しい。下線部のある has が動詞であるので、(A)の was to link は be 動詞の過去形、 (C)linked も動詞の単純過去であるので間違った答えである。またこの問題は、毎回最低
1 問出題される問題に分類されていて、動詞形−準動詞の形であり、不定詞、動名詞と分 詞を正しく使い分ける。この問題もかなり複雑な問題であり、難易度がかなり高かったこ とが推察できる。
問 105 は、誤答率上位 4 位の問題である。
105. The Smithson Bank is well-known for the ……… welcome that it extends to all new employees. (A)warm (B)warmth (C)warmly (D)warmed この問題は、リーディングセクション Part 5, 6 で最も多く出題される 1 つである、語形 (品詞)の問題である。単純に下線部の welcome の品詞を知っているかどうかの問題であ る。この語の品詞は、名詞であるのでそれを修飾する形容詞は(A)warm である。(B) warmth は名詞であり、(C)warmly は副詞であるので誤答である。(D)warmed は形容詞 でもあるが、この場合 welcome を説明することはできないので、正しい答えではない。ま た、warm welcome はコロケーション(連結語句)であると考えられるので、これに関し ての学生の知識が低かったことも考えられる。この問題は、語形(品詞)の問題の中でも 選択肢に同じ品詞のものが存在するので、難易度が高めであったと推測できる。そこで、 この問題に対する学生の解答率を集計した結果、(A)18.9%(B)40%(C)22.2%(D)18.9% となった。その結果、(A),(D)の 2 つの形容詞で迷った形跡は見られなかった。しかし、 半数近くの学生が(B)を選択している理由は、2 つの形容詞とは関連がなさそうである。 結果として、単純に品詞に関しての理解力が低いと考えられる。 Part 5 の総合的な分析結果として、複雑な語法・文法を用いた複文構造問題の誤答率
が、特に高かった。表 1 にあるように、上位 3 つの問題がそれにあたる。さらに学生の語 形(品詞)の関係についての理解力も低いと見受けられた。また、語彙力の不足も誤答率 を上げている。そして、前置詞・接続詞に関しての問題においても理解力が不十分であ る。これらの点が、今後の課題である。学生に対してのアドバイスとして、神崎(2007) は、わからない問題に固執するのはよくない。わからない場合は、「なんとなくこれがよ さそうだ」と感じるものを選ぶと正解することもある。日頃の英語を読んだり、聞いたり した無意識の領域に記憶される語句もある。このようなアドバイスもまた、問題が解けな いときには良い方法である。 6 - 2 Part 6 この Part はリーディングセクションのパート 3 つの内で、最も問題数の少ない合計 12 問で構成されている。また、長文穴埋め(Text Completion)問題であり、4 つの長文 (passage)で構成されている。1 つの長文に 3 つの空欄があり、4 つの選択肢から正しい 回答を選ぶ問題である。(神崎 2007)によると、この Part の問題の特徴は、Part 5 の応 用型であり、空所を含む 1 文を読むだけで、正しい解答を導き出すことができる問題がほ とんどである。全 12 問中 8 〜 10 問は、このタイプの問題である。 表 2 Part6 誤答率順位と問題内容 順位 1 2 3 4 5 5 7 8 9 10 10 12 問題番号 145 143 142 146 144 147 141 152 150 149 151 148 問題内容 接続詞 語彙 -形容詞 語彙 - 名詞 語彙 - 名詞 動詞形 - 時制 語彙 - 形容詞 代名詞・ 疑問詞 前置詞 語彙 - 副詞 語形 - accurate 動詞形 - 時制 語形 - recruit 表 2 にあるように、語彙に関する問題は、12 問中もっとも多く 5 問で、語形(品詞)に 関する問題は 2 問、そして前置詞に関する問題が 1 問で合計 8 問である。上記にあるよう に、本研究のテストに関しては、全 12 問中 8 問が空所を含む 1 文をよむだけで、正しい 答えが導き出せる問題であった。誤答率か高かった上位 3 問を詳細に分析する。 もっとも誤答率が高かった問題は、表 2 のとおり問 145 である。この問題は正しい接続 詞を選択する問題で、前後の文を読む必要がある(参考資料 1 参照)。この問題の正解は、 (A)as である。ここでは筆者が間違いなく、ヘルメットを購入する前に damage してい ないという確信の理由から、as が正解である。(B)although,(D)but は、対比の意であ ることから、ここでは不正解である。また(C)so も以前の行動の結果を表す意であるこ とからここでは相応しくない。もっとも誤答率が高かった原因としては、やはり長文の理 解力が低いということが明らかである。さらに、解答の空欄から 3 語前の「prior」の意味
の理解度が低かったことも考えられる。結果として、空欄の前後の内容さらには、文章全 体的な意味の理解がきわめて重要であることが解かる。 次に誤答率が高かった問題は、問 143 である。問題内容は正確な形容詞の語彙を選択す る問題で、この問題もまた、空欄前後の文章をある程度理解していないと、解答するのに 困難である。正しい解答は(C)alternative で、この文章の内容は、garage 以外の別の駐 車スペースが、どこで見つかるかという問題である。したがって、別のという意味の alternative が最も適当である。誤答率が高かった原因として、文章の前後理解は、ある 程度できていたとしても、空欄に入る正しい語彙 alternative の意味を理解していない学 生が多かったと推測できる。この語の意味は「別の」、「代替」などがあるが、同じような 意味の other はほとんどの学生は、知っていたはずであるので、語彙力の低さが表れた問 題である。 上位 3 番目に誤答率が多かった問題は、問 142 である。この問題も、語彙問題で正しい 名詞を選ぶ問題である。この問題は、比較的容易に解答できる問題、空欄の前後を読むだ けで答えることができると考えられる。正しい答えは、(B)access である。この問題で は、従業員が駐車場に、進入禁止になるということを知らせる文章である。誤答率が高 かった要因として、正しい解答の access は、コンピュータ分野などで多く使われる単語 であることが推測され、学生の語彙理解として、「進入(entry)」などの意味としては、理 解に苦しんだ問題だったと考えられる。 Part 6 の総合的な分析結果として、Part 5 と同じように語彙力の不足が大きく誤答率 を上げている。全 12 問中、上位 2 〜 4 位の問題は、すべて、語彙問題であった。また、 数は少なかったが長い文章を理解したうえで、正しい解答を導き出す問題も学生の不得意 分野であることが考えられる。Part 6 の今後の課題としては、授業カリキュラムに長文 読解を主に導入する必要性が挙げられる。 6 - 3 Part 7 Part 7 の平均誤答率は、3 つの Part で最も低い数値となった。この結果の 1 つの要因 として、リーディングセクション最後の Part であるため、学生の解答時間が十分でな かったと推測される。学生の解答用紙を見ると、Part 7 の半分以降すべての解答欄に同 じ回答をしている学生がいた。これは、明らかに時間が足りなかったことを示す結果であ る。授業中にも学生に伝えたように、本研究に関する試験に向けての解答要領の内容の 1 つとして、「空欄は残さずすべての問題をマークすること」とした。その結果、多くの学 生がすべての問題を時間内に回答可能であったとは推測しがたい。したがって、すべての 問題の分析結果に信憑性があるとは考え難い。
長文読解問題には、シングルパッセージとダブルパッセージの問題がある。シングル パッセージは、1 つの文章または、グラフ・表などである。ダブルパッセージは、2 つの 文章または、1 つの文章とグラフ・表などから構成されている。長い文章や短い文章は、 必ずしも長い文章に難易度が比例するとは限らない。問 181 から最終問題である問 200 ま でダブルパッセージの問題である。これらは、1 つのダブルパッセージに対して、問題が 5 問ずつあり、学生は、たくさん読まなければいけない=難しい、という構図が頭の中に 確立されてしまっているのではないかと推測される。表 3 のとおり、もっとも誤答率が高 かった上位 5 問は、すべて問 181 から問 200 までであった(問 187、190、193、194、197)。 この Part での効率的な問題の解き方として、出題問題を Type 別に分けるということ である。Grant(2007)は、Part 7 の問題を解く際、出題問題を 4 つのタイプに分類するこ とを推奨している。4 つのタイプは、以下のとおりである。 1.Specific information(positive) 明確な情報(肯定文) 2.Vocabulary questions 単語の意味(同義語)
3.Main idea/inference questions 全体の意味・推測問題 4.Specific questions(negative) 明確な情報(否定文) このように問題を分類して、難易度の低い問題から解いていくことによって、より早くか つ効率的に解答できるということである。1 から 4 の数字の順番は、解答する順番でもあ る。この方法は、授業中に最低 4 回(4 コマ)、1 つ 1 つの項目に関して教えた。したがっ て、この方法が理解できている学生に限っては、今回のテストでより効果的に解答できた と思われる。また、小石(2010)も質問タイプを 5 つに分類する攻略法を挙げている。そ のタイプと順序は、以下のとおりである。 タイプ E 同義語問題 タイプ B 詳細情報をピンポイントで見つける タイプ A テーマを推測する タイプ D 本文と一致するものを選ぶ タイプ C 本文と一致しないものを選ぶ これらの方法を考慮しつつ、Part 7 の問題を分析する。しかしながら、問題全てを時間 内に回答した学生の数値は未知であるため、この Part に関しては、学生の能力の詳細分 析よりは、問題の傾向を観察し、事後の授業・研究に反映したい。この Part では誤答率 だけではなく、正答率の高かった問題も挙げ、このタイプ(Type)を考慮した解答方法を しているかどうかを観察する。 もっとも正答率が高かった問題は、Part 7 最初の問 153 である。(参考資料 3 参照)。比 較的難易度の低い問題で、問 153、154 の 2 つの問題から構成されている。問 153 は、
Type1 または、タイプ B の問題であるため、正しい答えを容易に答えることができたと 考えられる。また、選択肢が文章(sentence)ではなく、短い句であることも大きな要因 と推測できる。 次に正解率が高かったのは、問 166 である(参考資料 4 参照)。問題は、シングルパッ セージで比較的長い長文である。このパッセージの問題は 4 つで、そのうち 3 問は Part 7 平均以上である。その問 165、166、168 を調べてみると、すべて Type 1、またはタイ プ B の問題である。問 166 に関しては、選択肢が全て数字であり、問 168 は、選択肢が 全て 1 つの単語である。また、問 167 は、Type 4、タイプ C の問題で難易度が高いと推 測される問題ながら、選択肢が全て 2 語ずつと短かったため、平均を少し下回る数値が出 たと思われる。 最後に、誤答率が高かった問題グループを取り上げる(参考資料 5 参照)。このパッセー ジは、4 つの問、172 〜 175 で構成されていて、すべての問題の誤答率が高い数値を示し ている。ここで特筆すべき点は、すべての問は、Type 3、タイプ A, D, C の問題である。 また、パッセージは最も語数が多いものの中の 1 つであり、シングルパッセージである。 このことから、今回のテストの Part 7 で最も難易度の高い問題だったと考えられる。 Part 7 の全般的な傾向として、難易度の低い、グラフ・表などのパッセージに Type 1, 2、タイプ E, B の問題が、高い正答率を出した。さらに問題の選択肢が短い(数字、単語 など)と、更に正答率が高いということが解かった。また反対に、難易度の高い長文に対 しての、Type 3, 4、タイプ A, D, C の問題では、高い誤答率を出した。結果、パッセー ジの長さと問題タイプが正答率に深くかかわっているということが観察された。
7.まとめ
本研究の分析結果を踏まえ、学生の次の傾向が観察された。 1. Part ごとの平均誤答率は、あまり変わらなかった。分布範囲も約 5%であったと いう結果、あまり大きな開きは見られなかった。 2. Part 5, 6 を合わせ、総合的には複雑な語法・文法はもちろん、語形(品詞)・語彙 問題に理解力が十分ではない。 3. Part 7 に関しては、読解能力、特に長文読解能力の向上が望まれる。 今後の指導方法として、以下の点が挙げられる。 1. 語彙能力の向上に努める。TOEIC に関しての語彙は、本研究を通して全般的(Part 5, 6, 7)に非常に重要だということが理解できた。単語 1 つ 1 つを単に暗記させるのではなく、文章の中での意味、または語法なども含めながら指導する。 2. リーディングセクションでは、語形(品詞)の問題と語彙問題を合わせ、Part 5, 6 で 30 に近い問題数が平均して出題されることに重点を置き、この 2 つの項目を今 後指導する。 3. Part 7 の指導方法に関しては、音読などを用いた、長文の速読にも力を入れて指 導する。 今後、以上の項目について学生を指導し、次の研究にてその成果を比較報告する。今年 度の春学期に実施される TOEIC Practice Test の結果を再度同じ方法で分析し、本研究 の結果である 2012 年度のデータと 2013 年度(今年度)の結果を比較し、また研究報告を 行う。さらに、来年度にあたる 2014 年度の分析結果を 2013 年のそれと比較分析し、新た な結果を導き出すことを試みる。 最後に、本研究で行われた詳細分析からは、多くの情報を得た。対象の学生は、90 名 と決して多いものではなかったので、この結果を一般化するには注意を要する。しかしな がら、本大学の TOEIC に関する教員以外に向けた本研究での結果を共有する意義につい て、上記の「今後の指導方法」の 1, 2, 3 は、今後多分野で活用できる結果となったと確信 している。そして、このような TOEIC テストの指導を行う前の大前提として、やはり基 礎的な文法及び語彙力をつけるということは、明確である。 参考文献 1 エッセンス イングリッシュ スクール(2007)『新 TOEIC®TEST 特訓リーディング』語研 2 小石裕子(2010)『新 TOEIC®TEST 正攻法で攻めるパート 7 読解問題』語研 3 高橋真規子(2004)「函館工業高等専門学校 4 年生にみる TOEIC 模擬試験正答率分析」『函館工業高等 専門学校紀要』第 38 号 105 〜 116 ページ 4 宮奥正道(2012)「TOEIC IP テストの取り組み 選択科目「英語特論」と TOEIC IP テスト取り組み」 『独立行政法人国立高等専門学校機構大島商船高等専門学校紀要』 第 45 号 67 〜 77 ページ
5 與那嶺敦・D. Craig Willcox(2005)「沖縄県立看護大学における TOEIC の活用(第 1 報)」『沖縄県立 看護大学紀要』第 6 号 25 〜 31 ページ